(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材と、この基材の少なくとも片面に形成された粘着層とを備えた粘着性物品であって、この粘着層が請求項1〜5のいずれか1項記載のシリコーン粘着剤組成物を、基材の少なくとも片面に塗工し、硬化させることによって得られる粘着性物品。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)成分]
(A)下記平均組成式(1)で表され、1分子中に少なくとも2つのアルケニル基含有有機基を有するオルガノポリシロキサン100〜40質量部。
【化4】
(式中、R
1は同一又は異種の炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、R
1のうち少なくとも2つは炭素数2〜10のアルケニル基含有有機基を含む。aは2以上の整数、bは1以上の整数、cは0以上の整数、dは0以上の整数で、50≦a+b+c+d≦15,000である。)
【0013】
R
1は同一又は異種の炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、R
1のうち少なくとも2つは炭素数2〜10のアルケニル基含有有機基を含む。1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基等が挙げられ、さらに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はその他の基で置換されていてもよく、置換基としては、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が例示される。中でも、飽和の脂肪族基又は芳香族基が好ましく、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0014】
アルケニル基含有有機基としては炭素数2〜10のものが好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基等のアクリロイルアルキル基、及びメタクリロイルアルキル基、シクロヘキセニルエチル基等のシクロアルケニルアルキル基、ビニルオキシプロピル基等のアルケニルオキシアルキル基等が挙げられる。中でもビニル基が好ましい。
【0015】
(A)に含まれるアルケニル基の量は、オルガノポリシロキサン100gあたり0.005〜0.08molであるものが好ましく、0.008〜0.06molがより好ましい。
【0016】
aは2以上の整数、bは1以上の整数、cは0以上の整数、dは0以上の整数で、50≦a+b+c+d≦15,000であり、200≦a+b+c+d≦12,000が好ましい。a+b+c+dが50より小さいと、架橋点が多くなりすぎることで反応性が低下するおそれがあり、15,000より大きいと、組成物の粘度が非常に高くなるため撹拌混合しにくくなる等、作業性が悪くなるおそれがある。
【0017】
(A)成分は、通常、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状低分子シロキサンを、触媒を用いて開環重合させて製造するが、重合後は原料である環状低分子シロキサンを含有しているため、これを加熱及び減圧下で、反応生成物中に不活性気体を通気させながら、留去したものを用いることが好ましい。
【0018】
(A)成分としては、下記一般式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
R
1-1R
1-22SiO(R
1-22SiO)
pSiR
1-22R
1-1
R
1-1R
1-22SiO(R
1-22SiO)
p(R
1-1R
1-2SiO)
qSiR
1-22R
1-1
R
1-23SiO(R
1-22SiO)
p(R
1-1R
1-2SiO)
qSiR
1-23
R
1-13SiO(R
1-22SiO)
p(R
1-1R
1-2SiO)
qSiR
1-13
R
1-1R
1-22SiO(R
1-22SiO)
p(R
1-1R
1-2SiO)
qSiR
1-22R
1-1
(式中、R
1-1は同一又は異種のアルケニル基含有有機基であり、R
1-2は同一又は異種の炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、p≧50、q≧1である(但し、分子中に(R
1-1R
1-2SiO)q以外にR
1-1を有しない場合はq≧2である。)。)
R
1-1,R
1-2としては、上記R
1で例示されたものが挙げられる。なお、50≦p≦15,000が好ましく、1≦q≦1,000が好ましく、2≦q≦1,000がより好ましい。
【0019】
より具体的な(A)成分としては、下記一般式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のMe,Vi,Phはそれぞれメチル基、ビニル基、フェニル基を示す。
【0021】
[(B)成分]
R
23SiO
1/2単位(式中、R
2は独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1〜10の1価炭化水素基又は炭素数2〜6のアルケニル基を示す。)及びSiO
4/2単位を含有し、(R
23SiO
1/2単位)/(SiO
4/2単位)で表されるモル比が、0.5〜1.0であるポリオルガノシロキサンである。このモル比が0.5未満では、粘着力やタックが低下するおそれがあり、1.0を超える場合には、粘着力や保持力が低下するおそれがある。なお、上記モル比は0.6〜0.9が好ましく、0.65〜0.9がより好ましい。
い。
【0022】
R
2は独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1〜10の1価炭化水素基又は炭素数2〜6のアルケニル基を示し、炭素数1〜10の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数2〜6のアルキル基、フェニル基、トリル基等の炭素数6〜10のアリール基が好ましい。炭素数2〜6のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が好ましい。
【0023】
(B)成分はR
2以外にシラノール基や加水分解性のアルコキシ基
やフェノキシ基を含んでいてもよく、その含有量は(B)成分の総質量の0.01〜4.0質量%となるのが好ましく、0.05〜3.5質量%となるのがより好ましい。上記含有量が0.01質量%よりも少ないと粘着剤の凝集力が低くなるおそれがあり、4.0質量%よりも多いと粘着剤のタックが低下するおそれがある。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ
基等を挙げることができ、使用する場合にはメトキシ基が好ましい。
【0024】
(B)成分は2種以上を併用してもよい。また、本発明の特性を損なわない範囲でR
22SiO
3/2単位、R
2SiO
2/2単位を(B)
成分に含有させることも可能である。
【0025】
(B)成分は、触媒存在下において縮合反応させて得てもよい。これは、表面に存在する加水分解性基同士を反応させる作業であり、粘着力の向上等の効果が見込める。アルカリ性触媒を用い、室温〜還流下で反応させ、必要に応じて中和すればよい。
【0026】
アルカリ性触媒としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素塩;ナトリウムメトキシド、カリウムブトキシド等の金属アルコキシド;ブチルリチウム等の有機金属;カリウムシラノレート;アンモニアガス、アンモニア水、メチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の窒素化合物等が挙げられるが、アンモニアガス又はアンモニア水が好ましい。縮合反応の温度は、室温から有機溶剤の還流温度で行えばよい。反応時間は、特に限定されないが、0.5〜20時間、好ましくは1〜16時間とすればよい。さらに、反応終了後、必要に応じて、アルカリ性触媒を中和する中和剤を添加してもよい。中和剤としては、塩化水素、二酸化炭素等の酸性ガス;酢酸、オクチル酸、クエン酸等の有機酸;塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸等が挙げられる。アルカリ性触媒としてアンモニアガス又はアンモニア水、低沸点のアミン化合物を用いた場合は、窒素等の不活性ガスを通気し留去してもよい。
【0027】
(A)成分の配合量は100〜40質量部、(B)成分の配合量は60〜0質量部であって、(B)成分が含まれない場合もある。(A),(B)成分の配合質量比は、(A)/(B)=100/0〜40/60であり、フィルム又はテープ等で使用する際の粘着力の点から、100/0〜70/30が好ましく、100/0〜80/20がより好ましく、100/0〜90/10がさらに好ましい。(B)成分の割合が60を超えると、密着性が悪くなる場合がある。
【0028】
[(C)成分]
下記平均組成式(2)
R
3eH
fSiO
(4-e-f)/2 (2)
(式中、R
3は独立に非置換又は置換の炭素数1〜10の1価炭化水素基を示し、e>0、f>0であり、さらに0<e+f≦3である。)
で表され、1分子中に少なくとも3つのSi−H基を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン。
【0029】
R
3の炭素数1〜10の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基等が挙げられる。さらに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はその他の基で置換されていてもよく、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が例示される。中でも、飽和の脂肪族基又は芳香族基が好ましく、メチル基、フェニル基がより好ましい。上記平均組成式(2)中、e>0、f>0であり、0<e+f≦3である。
【0030】
(C)成分としては、下記一般式(8)のものを例示することができるが、これに限定されるものではない。
R
253Si−O−(R
262Si−O)
t−(R
27HSi−O)
u−SiR
283
(8)
(式中、R
25,R
28は炭素数1〜10の1価炭化水素基又は水素原子を示し、R
26,R
27は炭素数1〜10の1価炭化水素基を示し、tは0≦t≦100であり、uは3≦u≦80である。)
【0031】
R
26,R
27の炭素数1〜10の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基等が挙げられる。さらに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はその他の基で置換されていてもよく、置換基としては、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。R
26,R
27としては、飽和の脂肪族基又は芳香族基が好ましく、メチル基、フェニル基がより好ましい。R
25,R
28は炭素数1〜10の1価炭化水素基又は水素原子である。R
25,R
28の炭素数1〜10の1価炭化水素基としては、上記と同様のものが例示され、tは0≦t≦100であり
、uは3≦u≦80であり、5≦u≦70が好ましい。
【0032】
一般式(8)におけるtは0≦t≦100を満たす整数で、好ましくは0≦t≦80又は0<t≦80である。一般式(8)におけるuは3≦u≦80を満たす整数で、好ましくは4≦u≦70である。
【0033】
(C)成分は、通常、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状低分子シロキサンとテトラメチルシクロテトラシロキサン等のSi−Hを含有するシロキサンを、酸触媒を用いて開環重合させて製造するが、重合後は原料である環状低分子シロキサンを含有しているため、これを加熱及び減圧下で、反応生成物中に不活性気体を通気させながら、留去したものを用いることが好ましい。
(C)成分の具体的な構造を表したものとしては以下に示すようなもの等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のMeはそれぞれメチル基を示す。
【0035】
(C)の成分の配合量は、(A),(B)成分の合計アルケニル基に対し、Si−H基がモル比(Si−H基/アルケニル基)で0.2〜15となる量であり、0.5〜10の範囲となるように配合することが好ましい。0.2未満では架橋密度が低くなり、これにより凝集力、保持力が低くなるおそれがある。一方、15を超えると架橋密度が高くなり適度な粘着力及びタックが得られないことがある。
【0036】
[(D)成分]
(D)成分は、(A),(B)成分のアルケニル基及び
(C)成分のSi−H基をヒドロシリル化付加して硬化させるための白金族金属系触媒である。この触媒の中心金属としては、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム等が例として挙げられ、中でも白金が好適である。白金触媒としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物等が挙げられる。
【0037】
(D)成分の配合量は、上記(A)〜(C)成分の総量に対し、金属量として1〜500ppmであり、2〜450ppmが好ましい。1ppm未満だと、反応が遅く、硬化不十分となることにより粘着力や保持力の各種特性が発揮されないおそれがあり、500ppmを超えると、硬化物の柔軟性が乏しくなる場合がある。
【0038】
[(E)成分]
(E)1分子中に、下記式(3)で表される繰り返し単位を1つ以上、Si−H基を1つ以上有する化合物。
【化7】
[式中、R
4〜R
11は、互いに同一又は異種の水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又は炭素数1〜6の1価炭化水素基であり、Xは下記式(4)
【化8】
(式中、R
12〜R
13は互いに同一又は異種の水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又は炭素数1〜6の1価炭化水素基であり、gは1以上の整数である。)
で表される2価の有機基から選ばれ、Yは独立に炭素数1〜6の
2価の炭化水素基であり、構造中にエーテル基を有していてもよい。]
【0039】
上記式(3)中、R
4〜R
11は、互いに同一又は異種の水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又は炭素数1〜6の1価炭化水素基である。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられ、炭素数1〜6の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。中でも、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましい。
【0040】
Xは上記式(4)より選ばれる2価の有機基であり、R
12〜R
13は互いに同一又は異種の水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又は炭素数1〜6の1価炭化水素基である。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられ、炭素数1〜6の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。これらの中では、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基が好ましく、特に、水素原子、メチル基が好ましい。gは1以上の整数であり、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜5である。gが8よりも大きい場合には、繰り返し単位の中に占めるアルキル基が多くなることによって、基材との密着性が悪くなる場合がある。
【0041】
Yは独立に炭素数1〜6の
2価の炭化水素基であり、構造中にエーテル基を有していてもよい。炭素数1〜6の2価の炭化水素基としては下記のようなものが挙げられる。
【0043】
また、分子中にエーテル基を含んでいてもよく、下記のようなものが挙げられる。
【化10】
【0044】
式(3)の具体的な構造を表したものとしては以下に示すようなもの等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のMeはメチル基を示す。
【化11】
【0045】
Si−H基を有する基としては、例えば、後述する平均組成式(9)で表される1分子中に少なくとも2つのSi−H基を有する化合物、具体的には下記化合物から、水素原子を少なくとも1つ取り除いた基(但し、少なくとも1つのSi−H基を有する)が挙げられる。(E)成分は、Si−H基を含む基を分子末端に有するとよい。
【化12】
【0046】
(E)成分としては、例えば、以下に示すようなもの等が挙げられるが、これらに限定されない。Z1,Z2は0〜10であり、0〜4が好ましい。
【0049】
(E)成分は、シリコーン硬化性組成物用基材密着向上剤であり、シリコーン樹脂と基材の密着性を向上させる主成分である。(E)中に存在する式(3)のセグメントが基材密着に有効であると考えられており、特に芳香環が機能していると推測される。基材がプラスチックの場合、プラスチック中にも芳香環が含まれており、その芳香環のπ電子同士が作用し、スタッキング効果により密着性を向上させているものと思われる。さらに、芳香環セグメント近傍にSi−H基を有するセグメントが存在し、Si−H基と基材表面の官能基による結合生成も密着性向上に寄与していると考えられる。
【0050】
(E)成分の配合量としては、(A)〜(C)成分の総量に対し、0.01〜10質量部であり、0.05〜5質量部がより好ましく、0.1〜3質量部がさらに好ましく、0.1〜1質量部が特に好ましい。配合量が0.01質量部未満だと、十分な密着向上効果が得られず、一方、10質量部を超えると、シリコーン粘着剤組成物中のSi−H基が多くなることで、被着体への粘着剤の移行が生じる場合がある。
【0051】
(E)成分は、例えば、下記式(6)で表される有機化合物(E1)と、1分子中に少なくとも2つのSi−H基を有する化合物(E2)を、触媒存在下でヒドロシリル化付加することによって得ることができる。
【化15】
(式中、R
15〜R
22は互いに同一又は異種の水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又は炭素数1〜6の1価炭化水素基であり、Wは下記式(7)より選ばれる2価の有機基であり、Zは独立に炭素数1〜6の炭化水素基であり、構造中にエーテル基を有していてもよい。
【化16】
(式中、R
23〜R
24は互いに同一又は異種の水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又は炭素数1〜6の1価炭化水素基であり、mは1以上の整数である。)
【0052】
上記式(6)中、R
15〜R
22は互いに同一又は異種の水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又は炭素数1〜6の1価炭化水素基である。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられ、炭素数1〜6の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。中でも、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましい。
【0053】
Wは上記式(7)より選ばれる2価の有機基であり、R
23〜R
24は互いに同一又は異種の水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又は炭素数1〜6の1価炭化水素基である。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられ、炭素数1〜6の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。これらの中では、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましい。mは1以上の整数であり、1〜8が好ましく、1〜5がより好ましい。mが8よりも大きい場合には、繰り返し単位の中に占めるアルキル基が多くなることによって、基材との密着性が悪くなる場合がある。
【0054】
Zは独立に炭素数1〜6の2価の炭化水素基であり、構造中にエーテル基を有していてもよい。炭素数1〜6の2価の炭化水素基としては以下のようなものが挙げられる。
【0056】
また、分子中にエーテル基を含んでいてもよく、以下のようなものが挙げられる。
【化18】
【0057】
(E1)成分の具体的な構造を表したものとしては以下に示すようなもの等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のMeはそれぞれメチル基を示す。
【化19】
【0058】
(E2)は1分子中に少なくとも2つのSi−H基を有する化合物であるが、下記平均組成式(9)で表される。
R
29vH
wSiO
(4-v-w)/2 (9)
(式中、R
29は独立に非置換又は置換の炭素数1〜10の1価炭化水素基を示し、v>0、w>0であり、さらに0<v+w≦3である。)
【0059】
R
29の炭素数1〜10の1価炭化水素基としては、具体的には、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基等が挙げられる。さらに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はその他の基で置換されていてもよく、置換基としては、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が例示される。R
29としては、飽和の脂肪族基あるいは芳香族基が好ましく、メチル基、フェニル基がより好ましい。
(E2)成分の具体的な構造を表したものとしては以下に示すようなもの等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のMeはそれぞれメチル基を示す。
【0061】
(E)は、(E1)と(E2)をヒドロシリル化付加することによって得られる化合物であるが、これは(E1)が有するアルケニル基と(E2)が有するSi−H基を付加させるものである。このとき、(E2)が有するSi−H基はすべて反応させずに、少なくとも1つ以上は残しておかなければならない。これは、シリコーン硬化性組成物に本発明の化合物を添加して使用する場合に、当該組成物に付加させるための官能基を残存させるためであり、付加することによって組成物に本発明の化合物の機能が付与される。
【0062】
(E1)のアルケニル基と(E2)のSi−H基について、それぞれのモル数をme1,me2とすると、反応させるときのモル比は1<(me2)/(me1)<14とし、好ましくは1<(me2)/(me1)<10であり、より好ましくは1<(me2)/(me1)<8である。(me2)/(me1)が1より小さい場合には、付加のときに必要なSi−H基が残存せず、(m
e2)/(m
e1)が14より大きい場合には、(
E)中の(
E1)由来の繰り返し単位が少なくなることで、十分な機能が発揮できない場合がある。
【0063】
(E1)のアルケニル基と(E2)のSi−H基をヒドロシリル化付加して硬化させるためには白金族金属系触媒が必要であり、中心金属としては白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム等が例として挙げられ、中でも白金が好適である。白金触媒としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物等が挙げられる。
【0064】
白金族系触媒の量としては、(E1)と(E2)の総量に対し、金属量が0.1〜200ppmとなるような量が好ましく、0.3〜180ppmがより好ましい。0.1ppm以下になると、反応が遅く十分に進行しない場合があり、200ppm以上になると、反応終了後の触媒除去が不十分となることで化合物中に触媒が残存し、保存安定性が悪くなる場合がある。
【0065】
(E1)のアルケニル基と(E2)のSi−H基をヒドロシリル化付加による(E)製造は、常法によって行われる。すなわち、反応容器内にアルケニル基を有する(E1)と白金族系触媒を仕込み、Si−H基を有する(E2)を加えて加熱混合することにより製造される。反応終了後は減圧留去により不純物を除去して精製する。製造において、任意で溶剤を使用してもよく、具体的には、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素系溶剤、工業用ガソリン、石油ベンジン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤等が使用可能である。
【0066】
[(F)成分]
(F)成分は、シリコーン粘着剤組成物に添加することで、組成物の架橋ネットワークにシロキサンのペンダントをつくるための成分であり、シロキサンのペンダントが存在することにより、被着体への粘着力が経時で上昇するのを抑制する役割を果たすことができる。シリコーン硬化性組成物を、粘着性物品の接着剤として使用する場合には、被着体への粘着力が経時で上昇するが、(F)成分を用いることにより、基材密着が良好になると同時に、被着体への粘着力上昇を抑制することができる。
【0067】
具体的には(F)下記平均組成式(5)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(但し、上記(C)成分を除く)を添加することができる。
【化21】
(式中、R
14は同一又は異種の炭素数1〜10の1価炭化水素基である。hは1以上の整数、iは1以上の整数、jは1以上の整数、k及びlは0以上の整数で、5≦h+i+j+k+l≦500である。)
【0068】
上記式(5)中、R
14は同一又は異なっていてもよい炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基等が挙げられる。さらに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はその他の基で置換されていてもよく、置換基としては、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が例示される。中でも、飽和の脂肪族基あるいは芳香族基が好ましく、メチル基、フェニル基がより好ましい。
【0069】
hは1以上の整数であり、1〜3が好ましく、h=1がより好ましい。分子末端のみにSi−H基を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンが好ましく、分子末端にひとつSi−H基を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンがより好ましい。(F)成分は、前述のような点から、ポリシロキサンの末端に架橋ができるSi−H基を有する構造のものが有効で、1分子中に1つのSi−H基を有するポリシロキサンが特に好適である。iは1以上の整数、jは1以上の整数、k及びlは0以上の整数で、5≦h+i+j+k+l≦500であり、好ましくは7≦h+i+j+k+l≦300であり、より好ましくは8≦h+i+j+k+l≦200である。h+i+j+k+lが5よりも小さい場合には、前述のようなペンダントの効果が十分に発揮されず、h+i+j+k+lが500よりも大きい場合にはペンダント部分が長すぎてペンダント同士での分子の絡み合いが生じることで粘着力上昇の抑制が不十分となることがある。
【0070】
(F)成分の具体的な構造を表したものとしては、以下に示すようなもの等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のi−Pr,n−Buは、それぞれイソプロピル基、ノルマルブチル基を示す。Aは4〜300であり、4〜100が好ましく、Bは1〜10である。
【化22】
【0071】
(F)成分の配合量は、上記(A)〜(C)成分の総量に対し0.01〜100質量部であり、0.05〜50質量部が好ましく、0.1〜20質量部がより好ましく、0.5〜10質量部がさらに好ましい。配合量が0.01質量部よりも少ないと、前述の粘着力上昇抑制効果が弱くなり、添加量が100質量部よりも多いと、シリコーン粘着剤組成物中のSi−H基が多くなることで、被着体への粘着剤の移行が生じる場合がある。
【0072】
[(G)成分]
(G)成分は制御剤であり、制御剤は、シリコーン粘着剤組成物を調合ないし基材に塗工する際に、加熱硬化の以前に付加反応が開始して処理液が増粘やゲル化を起こさないようにするために添加するものである。反応制御剤は付加反応触媒である白金族金属に配位して付加反応を抑制し、加熱硬化させるときには配位がはずれて触媒活性が発現する。付加反応硬化型シリコーン組成物に従来使用されている反応制御剤はいずれも使用することができる。具体例としては、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、エチニルシクロヘキサノール(1−エチニル−1−シクロヘキサノール)、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ブチン、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ペンチン、3,5−ジメチル−3−トリメチルシロキシ−1−ヘキシン、1−エチニル−1−トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2−ジメチル−3−ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン、マレイン酸エステル、アジピン酸エステル等が挙げられる。
【0073】
(G)制御剤の配合量は、(A)〜(C)成分の総量に対し0.01〜5質量部が好ましく、0.05〜2質量部がより好ましい。
【0074】
[その他]
(溶剤)
前述の成分をすべて混合すると、粘度が高くなりハンドリングが困難になることがあるため、希釈するために溶剤を任意で加えてもよい。溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素系溶剤、工業用ガソリン、石油ベンジン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、2−メトキシエチルアセタート、2−エトキシエチルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、2−ブトキシエチルアセタート等のエステルとエーテル部分を有する溶剤、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシロキシ)シラン等のシロキサン系溶剤、又はこれらの混合溶剤等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0075】
[粘着性物品]
上記シリコーン組成物を基材の少なくとも片面に塗工し、硬化させることによって、基材と、基材の少なくとも片面に形成された粘着層とを備えた粘着性物品とすることができる。
【0076】
シリコーン粘着剤を塗工する基材としては紙やプラスチック製のプラスチックフィルム、ガラス、金属が選択される。紙としては、上質紙、コート紙、アート紙、グラシン紙、ポリエチレンラミネート紙、クラフト紙等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム等が挙げられる。ガラスについても、厚みや種類等について特に制限はなく、化学強化処理等をしたものでもよい。また、ガラス繊維も適用でき、ガラス繊維は単体でも他の樹脂と複合したものを使用してもよい。金属としては、アルミ箔、銅箔、金箔、銀箔、ニッケル箔等が例示される。
【0077】
これらの基材の中でも、本発明のようなシリコーン粘着剤は、プラスチックフィルムを基材として使用されることが好ましい。各種プラスチックフィルムを基材として作製される粘着テープや粘着シートは様々な用途に使用される。被着体としては、ガラス、金属、プラスチック等が挙げられる。粘着性物品としては、各種ディスプレイの保護フィルム、電気絶縁テープ、マスキングテープ、スプライシングテープ、皮膚への貼り付け等に用いられる。ディスプレイとしては、テレビ受像機、コンピューター用モニター、携帯情報端末用モニター、監視用モニター、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話、携帯情報端末、自動車等の計器盤用ディスプレイ、種々の設備・装置・機器の計器盤用ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、自動券売機、現金自動預け払い機等の文字や記号、画像を表示するための種々のタッチパネルやフラットパネルディスプレイ(FPD)等が挙げられる。
【0078】
基材、特に基材フィルムの厚みは限定されないが、1〜200μmが好ましく、5〜150μmがより好ましい。基材フィルムの場合は、基材フィルムと、基材フィルムの少なくとも片面に上記シリコーン組成物を塗工し、硬化させて形成された粘着層とを備えた粘着フィルムが得られる。
【0079】
基材と粘着層の密着性を向上させるためにプライマー処理、コロナ処理、エッチング処理、プラズマ処理、サンドブラスト処理したものを用いてもよい。好ましくはコロナ処理がよい。プライマー処理はなくてもよく、プライマー層のない構成とし得る。
【0080】
基材の粘着層面と反対面には、傷つき防止、汚れ防止、指紋付着防止、防眩、反射防止、帯電防止等の処理等の表面処理されたものが好ましい。基材に粘着層を塗工してから上記の各表面処理をしてもよいし、表面処理してから粘着層を塗工してもよい。
【0081】
傷つき防止処理(ハードコート処理)としては、アクリレート系、シリコーン系、オキセタン系、無機系、有機無機ハイブリッド系等のハードコート剤による処理が挙げられる。
【0082】
防汚処理としては、フッ素系、シリコーン系、セラミック系、光触媒系等の防汚処理剤による処理が挙げられる。
【0083】
反射防止処理としては、フッ素系、シリコーン系等の反射防止剤の塗工によるウェット処理や、蒸着やスパッタリングによるドライ処理が挙げられる。帯電防止処理としては、界面活性剤系、シリコーン系、有機ホウ素系、導電性高分子系、金属酸化物系、蒸着金属系等の帯電防止剤による処理が挙げられる。
【0084】
塗工方法は、公知の塗工方式を用いて塗工すればよく、例えばコンマコーター、リップ
コーター、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッド
コーター、キスコーター、グラビアコーター、スクリーン塗工、浸漬塗工、キャスト塗工
等が挙げられる。
【0085】
塗工量について特に制限はないが、硬化した後の粘着剤層の厚みとして0.1〜300μmとすることができ、好ましくは0.5〜200μmである。
【0086】
一般的に、シリコーン粘着剤には触媒は混合されていないことがほとんどである。触媒は、実際に使用する前に均一に混合して使用する。硬化条件としては、80〜150℃で20秒〜10分とすればよいがこの限りではない。
【0087】
硬化後のシリコーン粘着剤組成物の粘着力は、0.01〜12.0N/25mmの範囲が好ましく、0.01〜10.0N/25mmがより好ましく、0.01〜8.0N/25mmがさらに好ましい。0.01N/25mm以上で被着体により貼りつき、12.0N/25mm以下とすることで、リワークがよりしやすくなる。
【実施例】
【0088】
以下、製造例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。また、Meはメチル基、Viはビニル基、n−Buはノルマルブチル基を表す。
【0089】
<(E)成分の製造例>
[製造例1:(E)成分]
撹拌装置、温度計、滴下ロート、還流冷却管を取り付けた500mLのセパラブルフラスコに、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン144.3g(0.6mol)、トルエン144.3g、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金(0)錯体の白金分を0.5質量%含むトルエン溶液を0.03g仕込んで混合撹拌し、60〜65℃程度まで加熱した。そこへ、滴下ロートより2,2−ビス(4−アリルオキシフェニル)プロパン61.7g(0.2mol)を滴下し、滴下終了後80〜85℃程度まで加熱し、この温度にて1時間反応させた。反応終了後、触媒である白金を除去するため活性炭を0.3g加え2時間混合した後、ろ過により活性炭を取り除いた。得られた液体を90℃/8時間減圧濃縮を行うことで、無色透明の液体を得た。調べたところ、以下に示す化合物の混合物であることがわかり、z1=0〜4でz1=2の化合物が主成分であった。
【0090】
【化23】
【0091】
[製造例2:(E)成分]
撹拌装置、温度計、滴下ロート、還流冷却管を取り付けた500mLのセパラブルフラスコに、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン96.2g(0.4mol)、トルエン96.2g、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金(0)錯体の白金分を0.5質量%含むトルエン溶液を0.03g仕込んで混合撹拌し、60〜65℃程度まで加熱した。そこへ、滴下ロートより2,2−ビス(4−アリルオキシフェニル)プロパン61.7g(0.2mol)を滴下し、滴下終了後80〜85℃程度まで加熱し、この温度にて2時間反応させた。反応終了後、触媒である白金を除去するため活性炭を0.3g加え2時間混合した後、ろ過により活性炭を取り除いた。得られた液体を90℃/8時間減圧濃縮を行うことで、無色透明の液体を得た。調べたところ、上記製造例1で示した化合物の混合物であることがわかり、z1=0〜4でz1=3の化合物が主成分であった。
【0092】
[製造例3:(E)成分]
撹拌装置、温度計、滴下ロート、還流冷却管を取り付けた500mLのセパラブルフラスコに、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン192.4g(0.8mol)、トルエン72.2g、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金(0)錯体の白金分を0.5質量%含むトルエン溶液を0.03g仕込んで混合撹拌し、60〜65℃程度まで加熱した。そこへ、滴下ロートより2,2−ビス(4−アリルエーテルフェニル)プロパン61.7g(0.2mol)を滴下し、滴下終了後80〜85℃程度まで加熱し、この温度にて1時間反応させた。反応終了後、触媒である白金を除去するため活性炭を0.3g加え2時間混合した後、ろ過により活性炭を取り除いた。得られた液体を90℃/8時間減圧濃縮を行うことで、無色透明の液体を得た。調べたところ、上記製造例1で示した化合物の混合物であることがわかり、z1=0〜3でz1=0の化合物が主成分であった。
【0093】
[比較製造例1]
撹拌装置、温度計、滴下ロート、還流冷却管を取り付けた500mLのセパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン86.54g(0.7mol)とメチルビニルジメトキシシラン52.89g(0.4mol)と、メタノール8.00gを仕込み、滴下ロートより2種類のシランの合計の50ppmの量となるKOHと蒸留水100gを滴下し、メタノール還流下で2時間反応させた後に60℃/4時間減圧濃縮を行うことで、末端がシラノール又はメトキシ基で封鎖されたビニル基含有のシロキサンを得た。得られたオイルと、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを、質量比で50/50となるように室温で1時間ほど混合撹拌することによって、化合物を得た。
【0094】
<シリコーン粘着剤組成物>
[実施例1]
(A)下記平均組成式(a)で表されるビニル基を有するポリジメチルシロキサン90質量部、
【化24】
(B)Me
3SiO
1/2単位及びSiO
2単位を含有し、(Me
3SiO
1/2単位)/(SiO
2単位)のモル比が0.85であるポリオルガノシロキサンの60質量%トルエン溶液を不揮発分として10質量部、
(C)下記平均組成式(c−1)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン0.29質量部、
【化25】
(C)平均組成式(c−2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン0.41質量部、及び
【化26】
(G)エチニルシクロヘキサノール0.16質量部を混合し、トルエンで希釈して有効成分60質量%の混合物を得た。
得られた混合物100質量部にトルエン50質量部を加え、(D)1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金(0)錯体の白金分を0.5質量%含むトルエン溶液0.5質量部と、本発明の密着向上成分である(E)成分として製造例1により得られた化合物を2質量部添加し、シリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0095】
[実施例2]
製造例1により得られた化合物を0.5質量部とすること以外は実施例1と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0096】
[実施例3]
製造例1により得られた化合物を0.4質量部とすること以外は実施例1と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0097】
[実施例4]
製造例1により得られた化合物を0.3質量部とすること以外は実施例1と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0098】
[実施例5]
製造例1により得られた化合物を0.2質量部とすること以外は実施例1と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0099】
[実施例6]
平均組成式(c−1)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン0.06質量部、平均組成式(c−2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン0.08質量部とすること以外は実施例2と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0100】
[実施例7]
平均組成式(c−1)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン0.46質量部、平均組成式(c−2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン0.66質量部とすること以外は実施例2と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0101】
[実施例8]
製造例1で得られた化合物を、製造例2により得られた化合物0.5質量部にすること以外は実施例2と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0102】
[実施例9]
製造例1で得られた化合物を、製造例3により得られた化合物0.5質量部とすること以外は実施例2と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0103】
[実施例10]
実施例2で作製したシリコーン粘着剤組成物に、さらに(F)成分として下記平均組成式(f−1)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサンを2.0質量部加え、シリコーン粘着剤組成物を作製した。
【化27】
【0104】
[実施例11]
実施例2で作製した試験溶液に、さらに(F)成分として下記平均組成式(f−2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサンを2.0質量部加え、シリコーン粘着剤組成物を作製した。
【化28】
【0105】
[実施例12]
実施例2で作製した試験溶液に、さらに(F)成分として下記平均組成式(f−3)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサンを2.0質量部加え、シリコーン粘着剤組成物を作製した。
【化29】
【0106】
[実施例13]
実施例2で作製した試験溶液に、さらに(F)成分として下記平均組成式(f−4)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサンを2.0質量部加え、シリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0107】
【化30】
【0108】
[実施例14]
平均組成式(f−2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサンを1.0質量部加えた以外は、実施例11と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0109】
[実施例15]
平均組成式(f−2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサンを4.5質量部加えた以外は、実施例11と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0110】
[実施例16]
(A)下記平均組成式(a)で表されるビニル基を有するポリジメチルシロキサン100質量部、
【化31】
(C)下記平均組成式(c−1)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン0.32質量部、
【化32】
(C)平均組成式(c−2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン0.46質量部、及び
【化33】
(G)エチニルシクロヘキサノール0.18質量部を混合し、トルエンで希釈して有効成分60質量%の混合物を得た。
得られた混合物100質量部にトルエン50質量部を加え、(D)1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金(0)錯体の白金分を0.5質量%含むトルエン溶液0.5質量部と、本発明の密着向上成分である(E)成分として製造例1に記載の密着向上剤0.5質量部を添加し、シリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0111】
[実施例17]
(F)下記平均組成式(f−2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサンを2.0質量部加えた以外は、実施例16と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製した。
【化34】
【0112】
[実施例18]
(A)下記平均組成式(a)で表されるビニル基を有するポリジメチルシロキサン80質量部、
【化35】
(B)Me
3SiO
1/2単位及びSiO
2単位を含有し、(Me
3SiO
1/2単位)/(SiO
2単位)のモル比が0.85であるポリオルガノシロキサンの60質量%トルエン溶液を不揮発分として20質量部、
(C)下記平均組成式(c−1)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン0.26質量部、
【化36】
(C)平均組成式(c−2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン0.36質量部、及び
【化37】
(G)エチニルシクロヘキサノール0.18質量部を混合し、トルエンで希釈して有効成分60質量%の混合物を得た。
得られた混合物100質量部にトルエン50質量部を加え、(D)1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金(0)錯体の白金分を0.5質量%含むトルエン溶液0.5質量部と、本発明の密着向上成分である(E)成分として製造例1に記載の密着向上剤0.5質量部を添加し、シリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0113】
[実施例19]
(F)下記平均組成式(f−2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサンを2.0質量部加えた以外は、実施例18と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製した。
【化38】
【0114】
[実施例20]
(A)下記平均組成式(a)で表されるビニル基を有するポリジメチルシロキサン60質量部、
【化39】
(B)Me
3SiO
1/2単位及びSiO
2単位を含有し、(Me
3SiO
1/2単位)/(SiO
2単位)のモル比が0.85であるポリオルガノシロキサンの60質量%トルエン溶液を不揮発分として40質量部
(C)下記平均組成式(c−1)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン0.19質量部、
【化40】
(C)平均組成式(c−2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン0.27質量部、及び
【化41】
(G)エチニルシクロヘキサノール0.18質量部を混合し、トルエンで希釈して有効成分60質量%の混合物を得た。
得られた混合物100質量部にトルエン50質量部を加え、(D)1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金(0)錯体の白金分を0.5質量%含むトルエン溶液0.5質量部と、本発明の密着向上成分である(E)成分として製造例1に記載の密着向上剤0.5質量部を添加し、シリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0115】
[実施例21]
(F)下記平均組成式(f−2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサンを2.0質量部加えた以外は、実施例20と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製した。
【化42】
【0116】
[比較例1]
製造例1により得られた化合物を加えないこと以外は実施例1と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0117】
[比較例2]
製造例1により得られた化合物の代わりに、2,2−ビス(4−アリルオキシフェニル)プロパンを用いた以外は実施例2と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0118】
[比較例3]
2,2−ビス(4−アリルオキシフェニル)プロパンの添加量を0.3質量部とすること以外は比較例2と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0119】
[比較例4]
製造例1により得られた化合物の代わりに、比較製造例1により得られた化合物を用いた以外は実施例2と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0120】
[比較例5]
製造例1により得られた化合物の代わりに、平均組成式(f−2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサンを、2.0質量部を用いた以外は実施例1と同様にしてシリコーン粘着剤組成物を作製した。
【0121】
上記のシリコーン粘着剤組成物について、下記方法で密着性と粘着力を評価した。
<密着性>
上記有効成分60質量%の混合物100質量部に対し、硬化触媒と前述にて説明した(E),(F)成分を添加して素早く混合撹拌した処理浴を作製し、これを厚み23μm、幅25mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、アプリケーターを用いて硬化後の粘着剤層の厚みが30μmとなるよう設定して塗工した。これを130℃の乾燥機で1分間風乾させて作製した粘着性物品を一定の条件下に静置した後、粘着層を爪やカッター等の突起物で引っ掻き傷をつけ、この部分を指の腹で擦って下記のように評価した。なお、粘着性物品を静置した条件は、室温で1日、60℃/90%RHで1日、85℃/85%RHで1日、60℃/90%RHで7日の4条件とした。結果を下記基準で示す。
(基準)
○:粘着層が基材から剥離しない
×:粘着層が基材から剥離する
【0122】
<粘着力>
有効成分60質量%の混合物100質量部に対し、硬化触媒と前述にて説明した(E),(F)成分を添加して素早く混合撹拌した処理浴を作製し、これを厚み23μm、幅25mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、硬化後の厚みが30μmとなるようにアプリケーターを用いて塗工した後、130℃/1分の条件で加熱し硬化させ、粘着テープを作製した。この粘着テープをガラス板に貼りつけ、重さ2kgのゴム層で被覆されたローラーを2往復させることにより圧着した。粘着テープを貼り合わせたガラス板を一定の湿度と温度がかかる恒温槽へ所定日数入れた後に取り出し、引っ張り試験機を用いて300mm/分の速度で180゜の角度でテープをガラス板から引き剥がすのに要する力(N/25mm)を測定した。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
実施例1〜21においては、基材密着性はいずれも良好であり、これは(E)成分のフェニル基と基材とπ電子のスタッキング効果により界面で相互作用が働くことにより発現しているものと考えられる。しかし、同時に経時でガラスへの粘着力が上昇しており、これはフェニル基を有することでガラス表面のシラノール基とも相互作用が働くためと考えられる。そこで、平均組成式(f−1)〜(f−4)に示すような、分子末端にひとつSi−H基を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンを併用することにより、経時での被着体への粘着力上昇を抑制することができた。この要因は前述の通り、架橋のネットワークにシロキサンのペンダントが形成されることで離型性が向上し、粘着力上昇抑制に効果を示したと推測される。
【0126】
一方、密着向上剤を添加しない比較例1では密着性が確保できなかった。比較製造例1を用いた場合は、初期のみ密着性が確保できたが、経時での密着性が不十分という結果であった。また、(E)成分の原料となる2,2−ビス(4−アリルオキシフェニル)プロパンを用いた比較例2,3についても密着性は不十分であり、この要因としては原料だけでは分子量が小さいために、基材との相互作用が部分的にしか機能しなかったのではないかと考えられた。製造例1〜3で製造したように、ある程度分子量の大きなものを使用することで効果を発揮するのではないかと思われる。粘着力の測定では粘着層がガラスへ移行してしまい、硬化が不十分であることも示唆された。また、(F)成分は経時での粘着力上昇
の抑制には効果があるが、単独で使用しても密着性向上はできなかった。