(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記突起部の高さが6μm以上50μm以下であり、前記突起部の1/2の高さでの断面積が、前記頂面の下端の断面積に対し140%以下である請求項1又は2に記載の静電チャック装置。
前記載置面が、酸化アルミニウム−炭化ケイ素複合焼結体、酸化アルミニウム焼結体、窒化アルミニウム焼結体、または酸化イットリウム焼結体からなる請求項1〜4の何れか一項に記載の静電チャック装置。
前記載置面を平面視した面積に対し、複数の前記頂面の下端における断面積の総和が占める比率を0.1%以上20%以下とする請求項1〜6の何れか一項に記載の静電チャック装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい例を説明するが、本発明はこれら例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
本発明の静電チャック装置は、板状試料を静電吸着用電極により吸着するとともに前記板状試料を冷却する静電チャック装置であって、セラミック焼結体を形成材料とし、一主面が前記板状試料を載置する載置面である静電チャック部と、を有し、前記載置面には、前記板状試料を支持する複数の突起部が設けられ、前記突起部は、頂面で前記板状試料と接して前記板状試料を支持し、且つ前記頂面の高さ位置から下方に断面積が漸増しており、前記突起部の前記頂面の下端から0.6μm下方の断面積が、前記頂面の下端の断面積に対し110%以下である。
【0011】
この構成によれば、突起部の頂面の下端の断面積に対し、頂面から0.6μm下方の高さ位置の断面積が110%以下となっている。したがって、突起部の高さが0.6μm程度摩耗した場合であっても、突起部と板状試料との接触面積(即ち頂面の面積)の増加を抑制できる。したがって、突起部の摩耗が進んだ場合であっても、突起部と板状試料との接触面積が大幅に増加することがなく、熱伝導特性の変化を抑制できる。
【0012】
また、上記の静電チャック装置は、前記突起部の前記頂面の下端から2.6μm下方の断面積が、前記頂面の下端の断面積に対し120%以下であってもよい。
【0013】
この構成によれば、突起部の頂面の下端の断面積に対し、頂面から0.6μm下方の高さ位置の断面積が120%以下となっている。一般的に、突起部が摩耗し高さが1μm〜3μm程度減少した場合には、冷却ガスによる冷却効果の状態が変化することを懸念し、静電チャック部、又は静電チャック装置そのものの交換が行われる。したがって、頂面から2.6μm下方の高さ位置の断面積を120%以下とすることで、交換が行われるまでの接触面積の増加を十分に抑制できる。
【0014】
また、上記の静電チャック装置は、前記突起部の高さが6μm以上50μm以下であり、前記突起部の1/2の高さでの断面積が、前記頂面の下端の断面積に対し140%以下であってもよい。
【0015】
この構成によれば、突起部の頂面の下端の断面積に対し、突起部の高さの1/2の位置の断面積が140%以下となっている。したがって、突起部の高さの半分が摩耗した場合であっても、突起部と板状試料との接触面積(即ち頂面の面積)の増加を抑制できる。これにより、突起部の摩耗が進んだ場合であっても突起部と板状試料との熱伝導特性の変化を抑制できる。
【0016】
また、上記の静電チャック装置は、前記突起部の前記頂面は、前記突起部の頂点から下方に0.4μmまでの領域であってもよい。
【0017】
頂面は、突起部の先端において、板状試料と接触する領域である。突起部の頂面は、なだらかな曲面により形成されており、板状試料は頂面に沿って変形して支持されている。
板状試料の変形の度合いは、静電チャック装置の吸着力や冷却ガスの導入圧力等に依存するため、突起部と板状試料との接触面積もこれに伴い変化する。静電チャック装置の吸着力及び冷却ガスの導入圧力を調整することで、頂面を頂点から下方の0.4μmまでの領域とすることができ、このように頂面を設定することで、板状試料と突起部との接触面積を適当な大きさにすることができる。
【0018】
また、上記の静電チャック装置は、前記突起部の前記頂面の表面粗さRaが、0.03μm以下であり、前記載置面において、前記突起部が形成されていない底面の表面粗さRaが、1.0μm以下であってもよい。
【0019】
この構成によれば、突起部の頂面の表面粗さRaが、0.03μm以下とされていることにより、突起部と板状試料との接触が滑らかとなる。板状試料と突起部との摩擦が小さくなり、板状試料を静電チャックに吸着又は離脱させる際に、突起部の摩耗が進みにくくなる。したがって、突起部の高さが低くなりにくいのみならず、パーティクルの発生を抑制できる。
加えて、この構成によれば、載置面の底面の表面粗さRaが、1.0μm以下であることによって、板状試料の部分的な変形などにより、板状試料が底面に接触した場合であっても、パーティクルの発生を抑制できる。
【0020】
また、上記の静電チャック装置は、前記載置面を平面視した面積に対し、複数の前記頂面の下端における断面積の総和が占める比率を0.1%以上20%以下としてもよい。
【0021】
この構成によれば、載置面全体に対して突起部の頂面の下端の断面積の占める割合を20%以下とする。板状試料の温度制御は、突起部との熱伝導と、冷却ガスによる熱伝達とによって行われる。突起部の頂面の下端の断面積の占める割合を20%以下とすることで、板状試料と突起部との熱伝導の影響を小さくして、冷却ガスの熱伝達の影響を相対的に大きくできる。これにより、摩耗が進んだ場合の突起部と板状試料との接触面積の変化の影響を小さくできる。
また、この構成によれば、載置面全体に対して突起部の頂面の下端の断面積の占める割合を0.1%以上とする。これにより、過度に板状試料を変形させることのない十分な接触面積を確保して板状試料を突起部により支持できる。
【0022】
以下に、本発明の一実施形態である静電チャック装置1について、図面に基づき説明する。
以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
【0023】
<静電チャック装置>
図1は、静電チャック装置1の断面図であり、
図2は、静電チャック装置1の平面図である。
図1に示すように、静電チャック装置1は、円板状の静電チャック部2と、静電チャック部2を所望の温度に調整する厚みのある円板状の冷却ベース部3と、静電チャック部2の下面(他の主面)に接着された所定のパターンを有する接着材4と、接着材4の下面に接着された前記接着材4と同形状のパターンのヒータエレメント5と、冷却ベース部3の上面に接着材6を介して接着された絶縁部材7と、静電チャック部2の下面のヒータエレメント5と冷却ベース部3上の絶縁部材7とを対向させた状態でこれらを接着一体化する有機系接着剤等からなる樹脂層8と、を有している。
静電チャック装置1は、冷却ベース部3、樹脂層8、静電チャック部2がこの順に
図1の+Z方向(高さ方向)に積層された構造を有する。
【0024】
静電チャック装置1には、静電チャック部2、樹脂層8、絶縁部材7、接着材6、並びに冷却ベース部3を貫通する冷却ガス導入孔18が形成されている。冷却ガス導入孔18からは、He等の冷却ガスが供給される。冷却ガスは、静電チャック部2の載置面19と板状試料Wの下面との隙間を流れて、板状試料Wの温度を下げる働きをする。
【0025】
静電チャック部2は、上面(一主面)が半導体ウエハ等の板状試料Wを載置する載置面19とされた載置板11と、載置板11と一体化され前記載置板11を支持する支持板12と、これら載置板11と支持板12との間に設けられた静電吸着用内部電極13及び静電吸着用内部電極13の周囲を絶縁する絶縁材層14と、支持板12を貫通するようにして設けられ静電吸着用内部電極13に直流電圧を印加する給電用端子15と、を有している。
【0026】
図1、
図2に示すように、静電チャック部2の載置面19には、直径が板状試料Wの厚みより小さい突起部30が複数個形成されている。静電チャック装置1は、複数の突起部30が板状試料Wを支える構成になっている。突起部30の形状については、後段において詳細に説明する。
【0027】
また載置面19の周縁には、周縁壁17が形成されている。周縁壁17は、突起部30と同じ高さに形成されており、突起部30とともに板状試料Wを支持する。周縁壁17は、載置面19と板状試料Wとの間に導入される冷却ガスが漏れ出すことを抑制するために設けられている。
【0028】
載置板11および支持板12は、重ね合わせた面の形状を同じくする円板状のもので、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al
2O
3−SiC)複合焼結体、酸化アルミニウム(Al
2O
3)焼結体、窒化アルミニウム(AlN)焼結体、酸化イットリウム(Y
2O
3)焼結体等の機械的な強度を有し、かつ腐食性ガス及びそのプラズマに対する耐久性を有する絶縁性のセラミックス焼結体からなる。
【0029】
セラミックス焼結体中のセラミックス粒子の平均粒径は10μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましい。静電チャック部2の載置面19に設けられる突起部30の形成過程でサンドブラスト加工を行う。サンドブラスト工程は、載置面19の表面にダメージを与えて、掘削する工程であるため、突起部30の内部にクラックが残留する。クラックは、サンドブラスト工程の後に行われるバフ研磨によって、強制的に進行され、事前に除去される。
クラックは、セラミック焼結体中のセラミック粒子の粒界に形成される。したがって、セラミック粒子の粒径が大きい場合には、バフ研磨を経ることで、粒界に沿って大きく角部が除去される。セラミック粒子の粒径が大きくなるほど、突起部30はより丸みを帯びた形状となる。後述するように、本実施形態の突起部30は、高さ方向に断面積の変化がないことが好ましいため、突起部30は丸みを帯びていないことが好ましい。セラミックス粒子の平均粒径は10μm以下(より好ましくは2μm以下)とすることで、高さ方向に沿った断面積の変化を抑制した突起部30を載置面19に形成することができる。
【0030】
載置板11、支持板12、静電吸着用内部電極13及び絶縁材層14の合計の厚み、即ち、静電チャック部2の厚みは0.5mm以上かつ5.0mm以下が好ましい。静電チャック部2の厚みが0.5mmを下回ると、静電チャック部2の機械的強度を確保することができない。一方、静電チャック部2の厚みが5.0mmを上回ると、静電チャック部2の熱容量が大きくなり過ぎて、載置される板状試料Wの熱応答性が劣化し、さらには、静電チャック部2の横方向の熱伝導の増加により、板状試料Wの面内温度を所望の温度パターンに維持することが困難になる。
【0031】
特に、載置板11の厚みは、0.3mm以上かつ2.0mm以下が好ましい。載置板11の厚みが0.3mmを下回ると、静電吸着用内部電極13に印加された電圧により放電する危険性が高まる。一方、2.0mmを超えると、板状試料Wを十分に吸着固定することができず、したがって、板状試料Wを十分に加熱することが困難となる。
【0032】
静電吸着用内部電極13は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料Wを固定するための静電チャック用電極として用いられるもので、その用途によって、その形状や、大きさが適宜調整される。
静電吸着用内部電極13は、酸化アルミニウム−炭化タンタル(Al
2O
3−Ta
4C
5)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−タングステン(Al
2O
3−W)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al
2O
3−SiC)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タングステン(AlN−W)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タンタル(AlN−Ta)導電性複合焼結体、酸化イットリウム−モリブデン(Y
2O
3−Mo)導電性複合焼結体等の導電性セラミックス、あるいは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属により形成されている。
【0033】
静電吸着用内部電極13の厚みは、特に限定されるものではないが、0.1μm以上かつ100μm以下が好ましく、特に好ましくは5μm以上かつ20μm以下である。
厚みが0.1μmを下回ると、充分な導電性を確保することができない。一方、厚みが100μmを越えると、静電吸着用内部電極13と載置板11及び支持板12との間の熱膨張率差に起因して、静電吸着用内部電極13と載置板11及び支持板12との接合界面にクラックが入り易くなる。
このような厚みの静電吸着用内部電極13は、スパッタ法や蒸着法等の成膜法、あるいはスクリーン印刷法等の塗工法により容易に形成することができる。
【0034】
絶縁材層14は、静電吸着用内部電極13を囲繞して腐食性ガス及びそのプラズマから静電吸着用内部電極13を保護する。また、絶縁材層14は、載置板11と支持板12との境界部、すなわち静電吸着用内部電極13以外の外周部領域を接合一体化する。絶縁材層14は、載置板11及び支持板12を構成する材料と同一組成または主成分が同一の絶縁材料により構成されている。
【0035】
給電用端子15は、静電吸着用内部電極13に直流電圧を印加するために設けられた棒状のもので、給電用端子15の材料としては、耐熱性に優れた導電性材料であれば特に制限されるものではない。給電用端子15は、熱膨張係数が静電吸着用内部電極13及び支持板12の熱膨張係数に近似したものが好ましく、例えば、静電吸着用内部電極13を構成している導電性セラミックス、あるいは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、コバール合金等の金属材料が好適に用いられる。
【0036】
給電用端子15は、絶縁性を有する碍子23により冷却ベース部3に対して絶縁されている。
給電用端子15は支持板12に接合一体化され、さらに、載置板11と支持板12とは、静電吸着用内部電極13及び絶縁材層14により接合一体化されて静電チャック部2を構成している。
【0037】
冷却ベース部3は、静電チャック部2を所望の温度に調整し、厚みのある円板状である。
冷却ベース部3としては、例えば、その内部に水を循環させる流路(図示略)が形成された水冷ベース等が好適である。
冷却ベース部3を構成する材料としては、熱伝導性、導電性、加工性に優れた金属、またはこれらの金属を含む複合材であれば特に制限はなく、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅(Cu)、銅合金、ステンレス鋼(SUS)等が好適に用いられる。冷却ベース部3の少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理が施されているか、あるいはアルミナ等の絶縁膜が成膜されていることが好ましい。
【0038】
接着材4は、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性及び絶縁性を有し後述するヒータエレメント5と同一のパターン形状のシート状またはフィルム状の接着性樹脂であり、厚みは5μm〜100μmが好ましく、より好ましくは10μm〜50μmである。
接着材4の面内の厚みのバラツキは10μm以内が好ましい。接着材4の面内の厚みのバラツキが10μmを超えると、静電チャック部2とヒータエレメント5との面内間隔に10μmを超えるバラツキが生じる。その結果、ヒータエレメント5から静電チャック部2に伝わる熱の面内均一性が低下し、静電チャック部2の載置面19における面内温度が不均一となるので、好ましくない。
【0039】
ヒータエレメント5は、支持板12の下面に接着材4により接着固定されている。ヒータエレメント5は、幅の狭い帯状の金属材料を蛇行させた1つの連続した帯状のヒータパターンである。帯状のヒータエレメント5の両端部には、
図1に示す給電用端子22が接続され、給電用端子22は、絶縁性を有する碍子23により冷却ベース部3に対して絶縁されている。
【0040】
ヒータエレメント5のヒータパターンは、1つのヒータパターンにより構成してもよいが、相互に独立した2つ以上のヒータパターンにより構成してもよい。相互に独立した複数のヒータパターンを個々に制御することにより、処理中の板状試料Wの温度を自由に制御できる。
【0041】
ヒータエレメント5は、厚みが0.2mm以下、好ましくは0.1mm以下の一定の厚みを有する非磁性金属薄板、例えば、チタン(Ti)薄板、タングステン(W)薄板、モリブデン(Mo)薄板等をフォトリソグラフィー法により、所望のヒータパターンにエッチング加工することで形成される。
ヒータエレメント5の厚みを0.2mm以下とした理由は、厚みが0.2mmを超えると、ヒータエレメント5のパターン形状が板状試料Wの温度分布として反映され、板状試料Wの面内温度を所望の温度パターンに維持することが困難になる。
【0042】
また、ヒータエレメント5を非磁性金属で形成すると、静電チャック装置1を高周波雰囲気中で用いてもヒータエレメント5が高周波により自己発熱せず、したがって、板状試料Wの面内温度を所望の一定温度または一定の温度パターンに維持することが容易となるので好ましい。
また、一定の厚みの非磁性金属薄板を用いてヒータエレメント5を形成することで、ヒータエレメント5の厚みが加熱面全域で一定となる。これにより、ヒータエレメント5の発熱量を加熱面全域で一定とすることができ、静電チャック部2の載置面19における温度分布を均一化できる。
【0043】
接着材6は、冷却ベース部3の上面に絶縁部材7を接着し、接着材4と同様、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性及び絶縁性を有するシート状またはフィルム状の接着性樹脂であり、厚みは5μm〜100μmが好ましく、より好ましくは10μm〜50μmである。
接着材6の面内の厚みのバラツキは10μm以内が好ましい。接着材6の面内の厚みのバラツキが10μmを超えると、冷却ベース部3と絶縁部材7との間隔に10μmを超えるバラツキが生じる。その結果、冷却ベース部3による静電チャック部2の温度制御の面内均一性が低下し、静電チャック部2の載置面19における面内温度が不均一となるので、好ましくない。
【0044】
絶縁部材7は、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の絶縁性及び耐電圧性を有するフィルム状またはシート状の樹脂であり、絶縁部材7の面内の厚みのバラツキは10μm以内が好ましい。
絶縁部材7の面内の厚みのバラツキが10μmを超えると、厚みの大小により温度分布に高低の差が生じる。その結果、絶縁部材7の厚み調整による温度制御に悪影響を及ぼすので、好ましくない。
【0045】
絶縁部材7の熱伝導率は、0.05W/mk以上かつ0.5W/mk以下が好ましく、より好ましくは0.1W/mk以上かつ0.25W/mk以下である。
熱伝導率が0.1W/mk未満であると、静電チャック部2から冷却ベース部3への絶縁部材7を介しての熱伝導が起こりにくくなり、冷却速度が低下するので好ましくない。一方、熱伝導率が1W/mkを超えると、ヒータ部から冷却ベース部3への絶縁部材7を介しての熱伝導が増加し、昇温速度が低下するので好ましくない。
【0046】
樹脂層8は、静電チャック部2の下面と冷却ベース部3の上面との間に介在する。樹脂層8は、ヒータエレメント5が接着された静電チャック部2と冷却ベース部3とを接着一体化するとともに、熱応力の緩和作用を有する。
樹脂層8は、その内部や、静電チャック部2の下面、ヒータエレメント5の下面、並びに冷却ベース部3の上面との界面に空隙や欠陥が少ないことが望まれる。空隙や欠陥が形成されていると、熱伝導性が低下して板状試料Wの均熱性が阻害される虞がある。
【0047】
樹脂層8は、例えば、シリコーン系樹脂組成物を加熱硬化した硬化体またはアクリル樹脂で形成されている。樹脂層8は、流動性ある樹脂組成物を静電チャック部2と冷却ベース部3の間に充填した後に加熱硬化させることで形成することが好ましい。静電チャック部2の下面にはヒータエレメント5が設けられており、これにより凹凸が形成されている。
また、冷却ベース部3の上面及び静電チャック部2の下面は必ずしも平坦ではない。流動性の樹脂組成物を冷却ベース部3と静電チャック部2の間に充填させた後に硬化させて樹脂層8を形成することで、静電チャック部2と冷却ベース部3の凹凸に起因して樹脂層8に空隙が生じることを抑制できる。これにより、樹脂層8の熱伝導特性を面内に均一にすることが出来、静電チャック部2の均熱性を高めることが出来る。
【0048】
<突起部>
図3Aは、突起部30の平面図であり、
図3Bは、板状試料Wを支持する突起部30の側面図である。
図3A、
図3Bは、特徴部分を強調する目的で、実際の形状とは異なる寸法比率で図示されている。
突起部30は、載置板11の上面である載置面19に複数設けられており、載置面19の底面19aから上方に突出して形成されている。突起部30は、概ね円錐台形状を有しており、底面19aに沿う断面が円形状である。突起部30の形状は、円錐台形状に限定されることはない。また、突起部30の断面形状は、円形状に制限されず、矩形状、三角形状であってもよい。
突起部30は、高さH(即ち、底面19aから頂点41までの距離)が、6μm以上50μm以下に形成されていることが好ましく、6μm以上20μm以下に形成されていることがより好ましい。
【0049】
突起部30は、先端に位置する先端部31と、略一定の傾きで先端側に向かって断面直径を小さくしていく柱部32と、柱部32と底面19aとを緩やかな曲率で接続する裾野部34と、を有している。
【0050】
先端部31は、緩やかな曲面で盛り上がっており、先端部31の最先端には、頂点41が位置する。先端部31の表面は、先端部31の周縁において柱部32と滑らかに接続される角曲面31aと、角曲面31aの内側に位置する緩曲面31bと、を含む。
角曲面31aの曲率半径は1μm未満であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。また、緩曲面31bの曲率半径は、大きければ大きいほど好ましく、曲面となっていない平坦面であることが最も好ましい。
【0051】
先端部31は、板状試料Wと当接する。先端部31において、板状試料Wは、緩やかな曲面に追従して、変形した状態となる。先端部31において、板状試料Wと突起部30とが接触する領域を頂面40とする。
【0052】
頂面40は、突起部30において頂点41から下方に距離h1までの一定領域である。
頂面40の大きさは、板状試料Wの変形の度合いによって変化する。板状試料Wは、静電チャック装置1の吸着力と、板状試料Wの下面と底面19aとの間を流れる冷却ガスの圧力と、のバランスによって、変形の度合いが変わる。板状試料Wは、静電チャック装置1の吸着力が大きい場合、又は冷却ガス圧力が高い場合に、より沈み込む。したがって、頂面40の大きさは、静電チャック装置1の吸着力と冷却ガスの導入圧力に依存する。
一例として、頂面40は、突起部30の頂点41から下方に距離h1を0.4μmとする領域である。
頂面40は、吸着力やガス圧力によって、先端部31の緩曲面31bのみに形成されている場合と、緩曲面31b全体と角曲面31aの一部を覆う様に形成されている場合と、がある。
【0053】
頂面40の表面粗さRaは、0μm以上0.1μm以下とすることが好ましく、0μm以上0.05μm以下とすることがより好ましく、0μm以上0.03μm以下とすることがより一層好ましく、0μm以上0.015μm以下とすることが更により一層好ましい。頂面40の表面粗さRaを0μm以上0.1μm以下(より好ましくは0μm以上0.05μm以下、より一層好ましくは0μm以上0.03μm以下、更により一層好ましくは0μm以上0.015μm以下)とすることで、突起部30と板状試料Wとの摩擦を抑制できる。これにより、板状試料Wとの接触によって板状試料Wが損傷することを防止する。また、板状試料Wを静電チャックに吸着又は離脱させる際に、突起部30の摩耗が進みにくくなり、摩耗に起因するパーティクルの発生を抑制できる。
【0054】
表面粗さRaは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さlだけを抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にx軸を、縦方向にy軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、以下の式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【数1】
頂面40の面積が小さい場合には表面粗さRaを測定するための測定長さを十分に確保できない場合がある。この場合には、突起部30と同等の条件で形成した別の部位の測定により、頂面40の表面粗さRaを推定することができる。具体的には、載置面19の周縁に設けられた周縁壁17(
図1、
図2参照)の上面を測定することで、頂面40の表面粗さRaを推定できる。
【0055】
本実施形態の突起部30は、頂面40の下端40a(即ち、突起部30と板状試料Wの接触領域の境界)における断面形状が円形である。頂面40の下端40aにおける断面の直径d1は、100μm以上3000μm以下であることが好ましく、200μm以上2000μm以下であることがより好ましい。頂面40の下端40aにおける断面積は、直径d1を用いて、断面積はπ×(d1/2)
2として表される。したがって、頂面40の下端40aにおける断面積は、7.9×10
−3mm
2以上7.1mm
2以下であることが好ましく、3.1×10
−2mm
2以上3.1mm
2であることがより好ましい。
【0056】
柱部32は、先端部31に向かって底面19a側から、断面積が漸減するように形成されている。柱部32の断面積の変化率、すなわち柱部32の周面の傾きは高さ方向に沿って一定であってもよく、変化率(傾き)が高さ方向に沿って変わってもよい。
【0057】
裾野部34は、底面19aと柱部32とを緩やかに接続する。裾野部34を大きくする(即ち、側面図(
図3B)の視野における裾野部34の曲率半径を大きくする)ことにより、突起部30と載置板11との熱の移動量をより多くすることができる。したがって、裾野部34を大きくすることで、突起部30の熱応答性が高くなり、板状試料Wの温度制御の制御を高速に行うことができる。また、裾野部34を大きくすることにより、突起部30の摩耗等により生じたパーティクルが、底面19aと柱部32との間に滞留しにくくなるため、パーティクルの除去性を高めることができる。
【0058】
載置面19の底面19aは、突起部30が設けられていない領域に位置する。底面19aの表面粗さRaは、0μm以上1.0μm以下とすることが好ましく、0μm以上0.8μm以下とすることがより好ましい。これにより、板状試料Wの部分的な変形などにより、板状試料Wが底面19aに接触した場合であっても、パーティクルの発生を抑制できる。
【0059】
突起部30は、静電チャック装置1が板状試料Wの吸着と離脱を繰り返すことで摩耗する。
図4は、摩耗後の突起部130を示す図である。
図4において、摩耗前の突起部30を破線で示す。
摩耗後の突起部130には、摩耗前により新たな先端部131が形成されている。摩耗後の先端部131の形状は、摩耗により平坦化され、摩耗前の先端部31の形状と比較して、曲率半径が大きくなる場合や、曲率半径がほとんど変わらない場合等がある。
摩耗後の突起部130は、先端部131により板状試料Wを支持する。先端部131には、板状試料Wとの接触領域である新たな頂面140が含まれる。
【0060】
摩耗後の突起部130の頂面140は、摩耗前の突起部30の頂面40よりも下方に位置する。突起部30は、下方に断面積が漸増する円錐台形状を有しているため、摩耗後の頂面140は、摩耗前の頂面40より表面積が大きくなる。即ち、摩耗後の突起部130と板状試料Wとの接触面積は、摩耗前と比較して大きくなる。
【0061】
突起部30は、頂面40の下端40aからの高さ方向の距離h2=0.6μmでの断面積が、下端40aの断面積に対し100%以上110%以下とすることが好ましく、100%以上105%以下とすることがより好ましい。これにより、高さが0.6μm程度摩耗した後の突起部130は、摩耗前の突起部30と板状試料Wとの接触面積の増加を抑制できる。したがって摩耗が進んだ後であっても、突起部130と板状試料Wとの接触面積が大幅に増加することがなく、摩耗前後での熱伝導特性の変化を抑制できる。
本実施形態の突起部30において、頂面40の下端40aからの0.6μm下方位置での断面積は、頂面40の下端40aからの0.6μm下方位置の直径d2を用いて、断面積はπ×(d2/2)
2として表される。
【0062】
さらに、突起部30は、頂面40の下端40aからの高さ方向の距離h3=2.6μmでの断面積が、下端40aの断面積に対し100%以上120%以下とすることが好ましく、100%以上110%以下とすることがより好ましい。
一般的に、突起部30が摩耗し高さが1μm〜3μm程度減少した場合には、冷却ガスによる冷却効果の状態が変化することを懸念し、静電チャック部2、又は静電チャック装置1そのものの交換が行われる。したがって、頂面40から2.6μm下方の高さ位置の断面積を100%以上120%以下、より好ましくは100%以上110%以下とすることで、交換が行われるまでの接触面積の増加を十分に抑制できる。
本実施形態の突起部30において、頂面40の下端40aからの2.6μm下方位置での断面積は、頂面40の下端40aからの2.6μm下方位置の直径d3を用いて、断面積はπ×(d3/2)
2として表される。
【0063】
加えて、突起部30は、突起部30の高さHの半分(H/2)での断面積が、頂面40の下端40aの断面積に対し100%以上140%以下であることが好ましく、100%以上110%以下とすることがより好ましい。これにより、突起部30の高さHの半分が摩耗した場合であっても、突起部30と板状試料Wとの接触面積の増加を抑制できる。
本実施形態の突起部30において、突起部30の高さHの半分(H/2)での断面積、突起部30の高さHの半分(H/2)の位置の直径d4を用いて、断面積はπ×(d4/2)
2として表される。
【0064】
頂面40が構成される先端部31は、緩曲面31b及び角曲面31aを有する。緩曲面31b及び角曲面31aの曲率半径は、頂面40の下端40aの直径に対して十分に大きい。このことから、頂面40の表面積(即ち、突起部30と板状試料Wとの接触面積)は、頂面40の下端40aの断面積に近似できる。また、突起部30と板状試料Wとの間で伝熱する単位時間あたりの熱量は、接触面積に比例する。
したがって、
図4に示す摩耗前後の頂面40、140の下端40a、140aの断面積の変化は、摩耗前後の突起部30、130と板状試料Wとの間で単位時間あたりに伝わる熱量の変化と比例する。
【0065】
摩耗後の突起部130における頂面140の下端140aの断面積は、摩耗前における突起部30の頂面40の下端40aの断面積に対して、140%以下であることが好ましく、120%以下であることがより好ましく、110%以下であることがさらに好ましい。
これにより、摩耗後の突起部130と板状試料Wとの間に伝わる熱量を、摩耗前の突起部30と板状試料Wとの間に伝わる熱量と比較して、それぞれ、140%以下、120%以下、110%以下とすることができる。
【0066】
摩耗前後での単位時間当たりに伝わる熱量の変化が、140%以下であれば、冷却ガスの導入圧力を調整することで、板状試料Wの温度の変化を抑制できる。即ち、突起部30と板状試料Wとの熱伝導の変化を、冷却ガスと板状試料Wとの熱伝達により補い、調整することができる。したがって、摩耗が進んだ後であっても、当初と同様の温度制御が可能である。
また、摩耗前後での単位時間当たりに伝わる熱量の変化が、120%以下である場合には、板状試料Wの温度への影響が十分に小さく許容できる。したがって、冷却ガスの導入圧力を調整する必要なく、摩耗前と同様の温度制御が可能となる。
さらに、摩耗前後での単位時間当たりに伝わる熱量の変化が、110%以下である場合には、板状試料Wの温度への影響をほとんど無視できる。
【0067】
載置面19には、複数の突起部30が設けられ、各突起部30に対応して複数の頂面40が存在する。複数の頂面40の下端40aにおける断面積の総和は、載置面19を平面視した面積に対して0.1%以上20%以下とすることが好ましく、0.1%以上10%以下とすることがより好ましい。
板状試料Wの温度制御は、突起部30との熱伝導と、冷却ガスによる熱伝達とによって行われる。突起部30の頂面40の下端40aの断面積の占める割合を20%以下(より好ましくは10%以下)とすることで、板状試料Wと突起部30との熱伝導の影響を小さくして、冷却ガスの熱伝達の影響を相対的に大きくできる。これにより、摩耗が進んだ場合の突起部30と板状試料Wとの接触面積の変化の影響を小さくできる。
また、複数の頂面40の下端40aにおける断面積の総和が小さすぎる場合には、接触面積が不足して突起部30と接触する板状試料Wが過度に変形する虞がある。突起部30の頂面40の下端40aの断面積の占める割合を0.1%以上とすることで、過度に板状試料Wを変形させることのない十分な接触面積を確保して板状試料Wを突起部30により支持できる。
【0068】
次に、突起部30を載置板11の載置面19に形成する方法を、
図5A〜
図5Cを基に説明する。
突起部30は、例えば、砥石加工、レーザ彫刻等の機械的加工、あるいはサンドブラスト加工等を用いて行うことができる。また、仕上げとしての研磨は、微小砥粒とバフ材を用いたバフ研磨、または、微小砥粒と超音波とを用いた超音波研磨により、効率的に行うことができる。
また、突起部30の形成工程において、同様の工程を載置面19の周縁に施すことで、周縁壁17(
図1、
図2参照)を同時に形成できる。
本実施形態においては、サンドブラスト加工を行った後に研磨工程としてバフ研磨を行う場合について、説明する。
【0069】
まず、載置板11の上面である載置面19を研磨加工して平坦面とし、さらに洗浄する。洗浄は、例えば、アセトン、イソプロピルアルコール、トルエン等の有機溶剤で脱脂を行い、その後、例えば、温水で洗浄する。
【0070】
次いで、
図5Aに示すように、載置面19に所定のパターン形状のマスク51を形成する。マスク51のパターン形状は、
図2に示す突起部30及び周縁壁17を平面視したときのパターンと同一とする。マスク51としては、感光性樹脂や板状マスクが好適に用いられる。
【0071】
次いで、
図5Bに示すように、サンドブラスト加工を行い、マスク51によって覆われていない部分に凹部52を形成する。その結果として、マスク51によって覆われている部分が残って凸部53となる。凸部53の間であって凹部52の底には底面19aが形成される。
【0072】
次いで、マスク51を除去する。マスク51が感光性樹脂からなる場合には、例えば、塩化メチレン等の剥離液を用いてマスク51を除去できる。
【0073】
次いで、載置面19の全体に対し、微小砥粒とバフ材を用いたバフ研磨を行う。また、バフ研磨を行った後には、載置面19を洗浄する。洗浄は、例えば、アセトン等の有機溶剤で行い、脱脂する。脱脂後には、例えば、温水で洗浄する。
【0074】
バフ研磨工程を経ることで、載置面19の凸部53が、
図5Cに示すような突起部30となる。
前工程であるサンドブラスト工程は、載置面19の表面にダメージを与えて、マスク51の形成されていない部分を掘削するように除去する工程である。したがって、サンドブラスト工程により形成された凸部53の特に角部53a近傍には、表層部から内部に向かう表層クラックが残留している。表層クラックは、小さな応力で進行して剥離の起点となるため、パーティクル発生の原因となる。
バフ研磨を行うことで、サンドブラスト工程で形成された表層クラックを強制的に進行、剥離させ、表層クラックを除去できる。表層クラックを起点として剥離が進むことで、凸部53の上面53b及び角部53aが丸くなり、
図5Cに示すように、緩曲面31b及び角曲面31aが形成される。
【0075】
また、バフ研磨を載置面19の全体に行うことで、頂面40を含む突起部30の全体、及び載置面19の底面19aを同時に研磨できる。これにより、頂面40の表面粗さRaを0.03μm以下(より好ましくは0.015μm以下)とするとともに、突起部30の柱部32及び裾野部34の周面、並びに底面19aを頂面40の表面粗さに準ずる表面粗さとすることができる。頂面40は、バフ研磨工程においてバフ材が均一に当たるが、底面19aは、バフ材が届きにくい部分があるため、部分的に表面性状が粗くなる場合がある。このような部分も含めて、バフ研磨工程により、底面19aの表面粗さRaは、0.1μm以下とすることができる。
【0076】
サンドブラスト加工の条件、及びバフ研磨の条件について説明する。
サンドブラスト加工に使用されるメディアとしては、アルミナ、炭化珪素、ガラスビーズ等が好ましく、メディアの粒径は、400メッシュアンダー(300メッシュを通過したもの)とすることが好ましい。
サンドブラスト加工におけるメディアの吐出圧力は、例えば、0.1MPa以下とすることが好ましく、0.05MPa以下とすることがより好ましい。
従来のサンドブラスト工程では加工効率を考慮し、メディアの粒径を170メッシュアンダー、メディアの吐出圧力を0.2MPa程度としていた。従来と比較して本実施形態のサンドブラスト工程は、メディアの粒径を小さくし、吐出圧力を抑制して行うことが好ましい。
メディアの粒径を小さくし、且つメディアの吐出圧力を0.1MPa以下(より好ましくは0.05MPa以下)とすることで、表層クラックの発生を抑制することができる。
表層クラックは、バフ研磨工程により除去されるが、表層クラックが大量に発生していると考えられる場合には、バフ研磨工程を丹念に行う必要が生じ、柱部32の傾きが大きくなり高さ方向に沿った断面積の変化が大きくなる虞がある。
メディアの粒径を小さくし、且つメディアの吐出圧力を0.1MPa以下(より好ましくは0.05MPa以下)とすることで、表層クラックの発生を抑制し、バフ研磨工程を簡素化できる。これにより、バフ研磨における突起部30の研磨量が少なくなる。したがって、柱部32の傾きを小さくすることができる。即ち、突起部30の頂面40から下方への断面積の増加率を小さくすることができる。
【0077】
バフ研磨に用いる微小砥粒としては、粒径が、0.125μm以下のものを用いることが好ましい。これにより、よりソフトな条件で研磨工程を行い突起部30の頂面40から下方への断面積の増加率を小さくすることができる。また、前記のバフ材としては、特に限定されるものではなく、例えば、樹脂製のバフ材を用いることができる。
【0078】
バフ研磨に際しては、段階を踏む毎に、より微小な砥粒を用いて多段階に研磨することが好ましい。例えば、800メッシュの微小砥粒、1000メッシュの微小砥粒、1500メッシュの微小砥粒、の順にバフ研磨を行う等、段階を踏んで多段階に研磨するのが好ましい。
【0079】
実施形態の静電チャック装置1によれば、突起部30が摩耗に伴い、高さHが低くなった場合であっても、突起部30と板状試料Wとの間の接触面積の増加を抑制できる。したがって、摩耗前後での突起部30と板状試料Wとの熱伝導特性の変動を小さくすることができ、板状試料Wの温度制御を安定して行うことができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0081】
まず、従来の方法で、載置面19に突起部30が形成されていない静電チャック部2を作製した。
静電チャック部2は、内部に厚み約10μmの静電吸着用内部電極13が埋設されている。また、静電チャック部2の載置板11は、炭化ケイ素を7.8質量%含有する酸化アルミニウム−炭化ケイ素複合焼結体であり、直径は298mm、厚みは0.5mmの円板状であった。
また、支持板12も載置板11と同様、炭化ケイ素を7.8質量%含有する酸化アルミニウム−炭化ケイ素複合焼結体であり、直径は298mm、厚みは2mmの円板状であった。これら載置板11及び支持板12を接合一体化することにより、静電チャック部2の全体の厚みは2.5mmとなっていた。
【0082】
次に、載置板11の上面である載置面19を研磨加工して平坦面とし、さらに洗浄した。
次いで、載置面19に突起部30及び周縁壁17の形状に対応するマスク51を形成した(
図5A参照)。
次いで、サンドブラスト加工を行い、凸部53及び凹部52を形成した(
図5B参照)。
次いで、マスク51を除去した。
次いで、載置面19の全体に対し、微小砥粒とバフ材を用いたバフ研磨を行った。
次いで、載置面19を洗浄する。
以上の工程を経て、載置面19に約1万個の突起部30を形成した。
【0083】
これらの工程を経て形成された静電チャック部2において、サンドブラスト工程とバフ工程の条件を変えた実施例1〜4と比較例を作製した。比較例は、従来一般的に行われるサンドブラスト工程及びバフ工程で作製したサンプルである。
各工程の条件を表1に示す。表1において、比較例の各条件を100%として、実施例の条件を記載する。
【0084】
【表1】
【0085】
予備実験として、実施例1の静電チャック部2を用いて静電チャック装置1を構成し、板状試料Wとして、シリコンウエハを吸着した状態で冷却ガスを流した。この状態での突起部30と板状試料Wとの接触面積を確認した。これにより、突起部30の先端部31において、頂点41から下方に0.4μmの領域までが接触領域(即ち、頂面40)となっていることが確認された。
以下の試験結果において、突起部30の頂面40は、突起部30の頂点41から下方に0.4μmまでの領域であるとして、考察する。
【0086】
実施例1〜4と比較例の突起部30の形状を測定した結果を表2及び
図6に示す。形状の測定は、載置面19上に形成された所定位置の突起部30に対し、中心から外周に向かって複数点の測定を行った。
図6において、横軸が突起部30の高さ方向の値を示し、縦軸が突起部30の径方向の値を示す。
【0087】
【表2】
【0088】
表2及び
図6に示すように、比較例の突起部30は、頂面40の下端40aから下方に向かって断面積が大幅に増加してくことが確認された。これに対し、実施例1〜4の突起部30は、断面積の増加が少なくなっていることが確認された。
【0089】
次に、実施例1〜3のサンプルに対して、突起部30の頂面40に対応する周縁壁17の上面を測定した。測定は、周縁壁17の4か所を行い、これらの測定結果を平均した。
周縁壁17は、突起部30と同様の製造手順で形成されており、周縁壁17の上面の表面粗さを測定結果は、突起部30の頂面40の表面粗さを代替できる。
【0090】
【表3】
【0091】
表3に示すように、実施例1〜3の周縁壁17の上面は、表面粗さRaが0.010μm以下となっている。この結果から、実施例1〜3の突起部30の頂面40も、同等の表面粗さRaとなっていると推定される。今回の測定においては、実施例4の測定を省略したが、同等の表面粗さになっていると予想される。
【0092】
以上に示すように、実施例1〜4として、実施形態に対応する静電チャック装置1の静電チャック部2が作製できたことが確認された。
【0093】
以上に、本発明の様々な実施形態を説明したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。