特許第6168255号(P6168255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6168255シーラントフィルム及びラミネートフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6168255
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】シーラントフィルム及びラミネートフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20170713BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20170713BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20170713BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   B32B27/00 A
   B32B27/18 C
   B32B27/32 E
   B32B7/12
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-506560(P2017-506560)
(86)(22)【出願日】2016年3月15日
(86)【国際出願番号】JP2016058106
(87)【国際公開番号】WO2016148130
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2017年2月23日
(31)【優先権主張番号】特願2015-53406(P2015-53406)
(32)【優先日】2015年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】松原 弘明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 芳隆
(72)【発明者】
【氏名】庄司 賢人
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5569659(JP,B1)
【文献】 特開2014−4760(JP,A)
【文献】 特開2002−240214(JP,A)
【文献】 特開2006−7529(JP,A)
【文献】 特開2010−214910(JP,A)
【文献】 特表平11−513623(JP,A)
【文献】 特開2009−101606(JP,A)
【文献】 特開2009−202350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に貼り合わせて使用されるシーラントフィルムであって、ポリオレフィン系樹脂(a1)と防曇剤とを含有するシール層(A)の片面に、環状ポリオレフィン系樹脂(b1)を50質量%以上含有する樹脂層(B)を有し、一方の表層が前記シール層(A)であり、他方の表層が前記基材と貼り合わされる表層であることを特徴とするシーラントフィルム。
【請求項2】
前記シール層(A)中の防曇剤の含有量が0.2〜5質量%であり、前記シール層の厚みが30μm以下である請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項3】
前記樹脂層(B)の厚みが3〜30μmである請求項1又は2に記載のシーラントフィルム。
【請求項4】
前記樹脂層(B)が、環状ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂層である請求項1〜3のいずれかに記載のシーラントフィルム。
【請求項5】
前記樹脂層(B)が、環状ポリオレフィン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂(b2)を5〜50質量%含有する請求項1〜3のいずれかに記載のシーラントフィルム。
【請求項6】
前記樹脂層(B)が、環状ポリオレフィン系樹脂(b1)中に、環状ポリオレフィン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂(b2)が層状に分散した相分離構造を有する請求項5に記載のシーラントフィルム。
【請求項7】
前記樹脂層(B)の前記シール層(A)を有する面と他方の面に、環状構造を有さないポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層(C)を有する請求項1〜6のいずれかに記載のシーラントフィルム。
【請求項8】
前記ポリオレフィン系樹脂(a1)が環状構造を有さないポリオレフィン系樹脂である請求項1〜7のいずれかに記載のシーラントフィルム。
【請求項9】
前記シール層(A)の厚みが9μm以下である請求項1〜8のいずれかに記載のシーラントフィルム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のシーラントフィルムのシール層(A)とは他方の表面に、接着剤層を介して基材が積層されたラミネートフィルム。
【請求項11】
前記基材が樹脂フィルムである請求項10に記載のラミネートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と積層して使用される防曇性のシーラントフィルム及び当該シーラントフィルムを基材と積層した防曇性のラミネートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品等を包装する包装材において、青果物、惣菜等の内容物の視認性を高めるための防曇性が求められている。包装材に防曇性を付与する方法としては、樹脂をフィルム状に成形したのちに、少なくとも内容物に接する面に防曇剤を塗布する方法(例えば、特許文献1参照)、防曇剤を包装材料に用いる樹脂中に練り込み、これをフィルム状に成形した後、各種包装材用に二次成形する方法(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−248880号公報
【特許文献2】特開平04−047936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防曇剤を含む塗液をフィルム表面に塗布する方法は、塗膜の乾燥工程が必要となるため生産効率が低く、また、内容物からの水分の蒸散により塗布面の防曇剤が流されてしまい、防曇効果の持続性が低下する問題があった。一方、防曇剤を樹脂に練り込む方法においても、防曇剤が多層フィルム中で移動しやすい性質を有することから、防曇性の効果が一定ではなく、効果に持続性がないという問題があった。持続性を重視すると、防曇剤の添加量が増加し、シール性の阻害等が発生していた。
【0005】
本発明は、曇りを防止する防曇性を持続的に実現できるシーラントフィルム及びラミネートフィルムを提供することにある。
【0006】
また、従来のシーラントフィルムでは、接着剤層を介して基材を貼り付けてラミネートフィルムとした場合、接着剤成分がシール面表面に溶出する場合があった。当該接着剤成分の溶出は、欧州での食品包装材料の規制に対応できない場合や、シール強度を低下させる場合があることから、接着剤を使用した際にも接着剤成分のシール面への溶出の抑制が望まれている。さらに、食品包装材料としては内容物が好適に視認可能な透明性の付与も求められている。
【0007】
本発明は、上記課題に加え、さらに接着剤成分の溶出抑制が可能で、かつ、透明性に優れたシーラントフィルム及びラミネートフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材に貼り合わせて使用されるシーラントフィルムとして、ポリオレフィン系樹脂(a1)と防曇剤とを含有するシール層(A)の片面に、環状ポリオレフィン系樹脂(b1)を50質量%以上含有する樹脂層(B)を有するシーラントフィルムにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシーラントフィルムは、防曇剤を含有するシール層の片面に環状ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂層を有することで、防曇剤の層間の移動を抑制でき、好適な防曇性を持続的に発現できる。また、接着剤を介して基材を貼り付けた際にも、当該接着剤成分のシール層表面への溶出を抑制でき、好適なシール性を保持できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のシーラントフィルムは、延伸基材等に貼り合わせて使用されるシーラントフィルムとして、ポリオレフィン系樹脂(a1)と防曇剤とを含有するシール層(A)の片面に、環状ポリオレフィン系樹脂(b1)を50質量%以上含有する樹脂層(B)を有するシーラントフィルムである。
【0011】
[シール層(A)]
本発明のシーラントフィルムに使用するシール層(A)は、ポリオレフィン系樹脂(a1)と防曇剤とを含有する層であり、加熱等によりシール層間や被着対象と溶着する層である。当該シール層(A)は、単層であっても、ポリオレフィン系樹脂(a1)と防曇剤とを含有する層が複数積層されたシール層であってもよい。
【0012】
シール層(A)に使用するポリオレフィン系樹脂(a1)としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン−アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー等やポリプロピレン系樹脂が挙げられ、単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。
【0013】
なかでも、環状構造を有さないポリオレフィン系樹脂を好ましく使用でき、特に環状ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂層(B)との接着性が高く、該層と共押出した際、製膜安定性を高めるために低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MLDPE)等のポリエチレン樹脂が好ましい。
【0014】
LDPEとしては高圧ラジカル重合法で得られる分岐状低密度ポリエチレンであれば良く、好ましくは高圧ラジカル重合法によりエチレンを単独重合した分岐状低密度ポリエチレンである。
【0015】
LLDPEとしては、シングルサイト触媒を用いた低圧ラジカル重合法により、エチレン単量体を主成分として、これにコモノマーとしてブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン等のα−オレフィンを共重合したものを好ましく使用できる。LLDPE中のコモノマー含有率としては、0.5〜20モル%の範囲であることが好ましく、1〜18モル%の範囲であることがより好ましい。
【0016】
前記シングルサイト触媒としては、周期律表第IV又はV族遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウム化合物及び/又はイオン性化合物の組合せ等のメタロセン触媒系などの種々のシングルサイト触媒が挙げられる。また、シングルサイト触媒は活性点が均一であるため、活性点が不均一なマルチサイト触媒と比較して、得られる樹脂の分子量分布がシャープになるため、フィルムに成膜した際に低分子量成分の析出が少なく、シール強度の安定性や耐ブロッキング適性に優れた物性の樹脂が得られるので好ましい。
【0017】
エチレン系樹脂の密度は0.880〜0.970g/cmであることが好ましい0.900〜0.965g/cmの範囲。密度がこの範囲であれば、適度な剛性を有し、ヒートシール強度や耐ピンホール性等の機械強度も優れ、フィルム成膜性、押出適性が向上する。また、融点は、一般的には60〜130℃の範囲であることが好ましく、70〜120℃がより好ましい。融点がこの範囲であれば、加工安定性や層(B)との共押出加工性が向上し、更に柔軟性もあることから、耐ピンホール性も良好となる。また、エチレン樹脂のMFR(190℃、21.18N)は2〜20g/10分であることが好ましく、3〜10g/10分であることがより好ましい。MFRがこの範囲であれば、フィルムの押出成形性が向上する。
【0018】
プロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン・α―オレフィンランダム共重合体、例えば、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。望ましくはプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であり、特にメタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体が好ましい。
【0019】
また、これらのポリプロピレン系樹脂は、MFR(230℃)が0.5〜30.0g/10分で、融点が110〜165℃であるものが好ましく、より好ましくは、MFR(230℃)が2.0〜15.0g/10分で、融点が115〜162℃のものである。MFR及び融点がこの範囲であれば、得られるフィルムの寸法安定性が良好で、更にフィルムとする際の成膜性も向上する。
【0020】
本発明に使用するシール層(A)中のポリオレフィン系樹脂(a1)の含有量は特に制限されるものではないが、シール層(A)に含まれる樹脂成分中の主成分がポリオレフィン系樹脂(a1)を主成分とすることが好ましく、樹脂成分中の90質量%以上含有することがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、樹脂成分が実質的にポリオレフィン系樹脂からなることが特に好ましい。ポリオレフィン系樹脂以外の他の樹脂成分としては、ポリオレフィン系樹脂と共押出可能な各種樹脂を使用できる。
【0021】
シール層(A)に使用する防曇剤としては、一般的にオレフィン系樹脂へ添加され防曇性を付与するものとして知られているものであれば、とくに限定されるものではなく、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を使用することができる。なかでも、ノニオン系界面活性剤を用いることが・・・のため好ましい。
【0022】
具体的には、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンジベヘネート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンジラウレート等のソルビタン系界面活性剤;グリセリンモノラウレート、グリセリンジラウレート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンジパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンジラウレート等のグリセリン系界面活性剤;ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノパルミネート等のポリエチレングリコール系界面活性剤;トリメチロールプロパンモノステアレート等のトリメチロールプロパン系界面活性剤;ラウリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミド等のジエタノールアルキルアミン系およびジエタノールアルキルアミド系界面活性剤;ペンタエリスリトールモノパルミテート等のペンタエリスリトール系界面活性剤およびポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンジステアレート、ソルビタン- ジグリセリン縮合体のモノおよびジステアレートなどが挙げられる。これらは、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
前記シール層(A)中の防曇剤の含有量は、当該層の全質量に対して0.2〜5質量%の範囲であることが好ましく、0.3〜4質量%の範囲であることがより好ましく、0.4〜3.5質量%であることがさらに好ましい。防曇剤の含有量を当該範囲とすることで、好適な防曇性を得やすく、また、シール層(A)表面への防曇剤のブリードによる透明性の低下を抑制しやすい。更に、シール性の阻害やシール強度の低下を抑制しやすい。
【0024】
[樹脂層(B)]
本発明に使用する樹脂層(B)は、環状ポリオレフィン系樹脂(b1)を50質量%以上含有する樹脂層(B)を有する樹脂層であり、防曇剤を含有するシール層(A)の片側に設けられる。当該樹脂層(B)をシール層(A)の片面に有することで、防曇剤の層間の移行を抑制でき、好適な防曇性を持続的に発現できる。また、他の基材と接着剤を介して積層した際に接着剤成分の移行も好適に抑制できる。当該樹脂層(B)は、シール層(A)のシール面とは他方に設けられていればよく、シール層(A)と樹脂層(B)との間に他の層が設けられていてもよいが、直接積層されていることが好ましい。
【0025】
樹脂層(B)に使用する環状ポリオレフィン系樹脂(b1)としては、その構造においては特に限定されるものではなく、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」という。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のオレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」という。)等が挙げられる。さらに、COP及びCOCの水素添加物は、特に好ましい。また、環状オレフィン系樹脂の重量平均分子量は、5,000〜500,000が好ましく、より好ましくは7,000〜300,000である。
【0026】
前記ノルボルネン系重合体の原料となるノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を有する脂環族系単量体である。このようなノルボルネン系単量体としては、例えば、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、エチリデテトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、ジメタノテトラヒドロフルオレン、フェニルノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、メトキシカルボニルテトラシクロドデセン等が挙げられる。これらのノルボルネン系単量体は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0027】
前記ノルボルネン系単量体と共重合可能なオレフィンとを共重合したノルボルネン系共重合体に使用するオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素原子数2〜20個を有するオレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエンなどが挙げられる。これらのオレフィンは、それぞれ単独でも、2種類以上を併用することもできる。
【0028】
前記環状ポリオレフィン系樹脂として用いることができる市販品として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(COP)としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア(ZEONOR)」等が挙げられ、ノルボルネン系共重合体(COC)としては、例えば、三井化学株式会社製「アペル」、ポリプラスチックス社製「トパス(TOPAS)」等が挙げられる。
【0029】
本発明に使用する樹脂層(B)においては、これら環状ポリオレフィン系樹脂のうち、ガラス転移温度が160℃以下の環状ポリオレフィン系樹脂を50質量%以上使用することで低吸着性と好適な耐破袋性能とシール強度を兼備しやすくなる。ガラス転移温度が130℃以下の環状オレフィン系樹脂がその質量%以上含まれることにより、樹脂層(A)との層間強度が良好となり、高いシール強度を得やすくなる。
【0030】
ガラス転移温度が130℃以下の環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系単量体の含有比率が75質量%以下の非晶性環状ポリオレフィン系樹脂を好ましく使用でき、より好ましくは当該単量体の含有比率が70質量%以下の環状ポリオレフィン系樹脂である。
【0031】
本発明に使用する樹脂層(B)は、樹脂成分が環状ポリオレフィン系樹脂(b1)のみからなる樹脂層(B)であっても、環状ポリオレフィン系樹脂(b1)と他の樹脂成分とを含有する樹脂層(B)であってもよい。樹脂成分が環状ポリオレフィン系樹脂(b1)のみからなる場合には、防曇剤の移行抑制効果に特に優れるため好ましい。また他の樹脂成分を含有する場合には、樹脂層(A)等の他の層との密着性向上、剛性の調整、柔軟性の付与、コスト低減等を実現しやすくなるため好ましい。
【0032】
本発明に使用する樹脂層(B)における樹脂成分中の環状ポリオレフィン系樹脂(b1)の含有量は50質量%以上とすることで、環状ポリオレフィン系樹脂(b1)が樹脂層(B)のマトリクスを形成でき、好適に防曇剤の移行を抑制できる。特に好適な防曇持続性を得る場合には、環状ポリオレフィン系樹脂(b1)の含有量が60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
【0033】
環状ポリオレフィン系樹脂(b1)の含有量の上限は特に制限されるものではなく、特に高い防曇性を得たい場合には樹脂層(B)に含まれる樹脂成分が環状ポリオレフィン系樹脂(b1)のみであってもよい。また、コスト低減や他の特性を付与するに際しては、他の樹脂を併用することも好ましく、他の樹脂を併用する場合には、防曇性を保持しつつ他の層との密着性向上、剛性の調整、柔軟性の付与、コスト低減等を好適に発現させやすいことから、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
【0034】
環状ポリオレフィン系樹脂(b1)と他の樹脂成分とを併用する際の当該他の樹脂成分としては、環状ポリオレフィン系樹脂と共押出可能な各種樹脂を使用でき、例えば、環状ポリオレフィン以外の他のポリオレフィン系樹脂(b2)等を好ましく使用できる。環状ポリオレフィン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂(b2)(以下、ポリオレフィン系樹脂(b2)と称する場合がある。)としては、上記シール層(A)に使用されるポリオレフィン系樹脂(a1)として例示した樹脂と同様の樹脂を好ましく使用でき、単独の樹脂を用いても、複数の樹脂種を併用してもよい。
【0035】
なかでも、ポリエチレン系樹脂やプロピレン系樹脂を特に好ましく使用できる。当該プロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体あるいはその他のオレフィンとの共重合体であってもよく、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、たとえばプロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。望ましくはプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であり、特にメタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体が好ましい。これらのプロピレン系樹脂を用いた場合には、フィルムの耐熱性が向上し、軟化温度を高くすることができるため、100℃以下のボイル、あるいはホット充填、または100℃以上のレトルト殺菌等の蒸気・高圧加熱殺菌特性に優れた包装材としても用いることが出来る。
【0036】
ポリオレフィン系樹脂(b2)を使用する際の樹脂層(B)中のポリオレフィン系樹脂(b2)の含有量は、0〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましく、5〜30質量%であることがさらに好ましい。当該範囲とすることで、ポリオレフィン系樹脂(b2)が、環状ポリオレフィン系樹脂(b1)中に層状に分散した相分離構造を実現しやすくなる。
【0037】
なお、本発明に使用する樹脂層(B)においては、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層との密着性向上、剛性の調整、柔軟性の付与、コスト低減等を目的に、上記環状ポリオレフィン系樹脂(b1)及びポリオレフィン系樹脂(b2)以外の樹脂を適宜使用してもよい。他の樹脂成分を併用する場合には、樹脂層(B)中の樹脂成分中の20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0038】
樹脂層(B)に使用する環状ポリオレフィン系樹脂(b1)として、ポリオレフィン系樹脂(b2)よりもメルトフローレート値が小さいポリオレフィン系樹脂(b2)を使用することが好ましい。ポリオレフィン系樹脂(b2)よりもメルトフローレート値が高い環状ポリオレフィン系樹脂(b1)を使用することで、環状ポリオレフィン系樹脂(b1)のマトリクス中にポリオレフィン系樹脂(b2)が分散した相分離構造を実現しやすくなり、フィルム中の防曇剤の移行や移動の効果的な抑制と、柔軟性の付与や層間接着性のアップとを実現しやすくなる。また、好適な透明性を実現しやすくなる。当該相分離構造は、環状ポリオレフィン系樹脂(b1)のマトリクス中にポリオレフィン系樹脂(b2)のドメインが分散した海島状の相分離構造を好ましく例示できる。
【0039】
環状ポリオレフィン系樹脂(b1)のメルトフローインデックスMFR(260℃、21.18N)は相分離構造を形成しやすいことから、1〜50g/10分であることが好ましく、2〜40g/分であることがより好ましい。特にこのようなMFRのノルボルネン系重合体は、ポリオレフィン系樹脂(b2)との組み合わせにおいて、目的とする相分離構造を容易に発現しやすくなる。
【0040】
環状オレフィン系樹脂(b1)と組み合わせて使用するポリオレフィン系樹脂(b2)は、メルトフローレートMFR(230℃、21.18N)が1〜20g/10分であることが好ましい。また、前記環状オレフィン系樹脂(b1)のMFR(230℃、21.18N)との差が、35g/10分以下であることが好ましい。両樹脂のMFRの差を設けることによって、自発的な相分離構造を発現させやすくなる。
【0041】
また、環状ポリオレフィン系樹脂(b1)のガラス転移温度Tgは、ポリオレフィン系樹脂(b2)との組み合わせにおいて、70〜160℃であることが好ましく、相分離構造を容易に形成できる観点から130℃以下であることがより好ましい。なお、本発明におけるガラス転移温度Tgは、DSCにて測定して得られる値である。
【0042】
また、ポリオレフィン系樹脂(b2)の融点は、110〜165℃であるものが好ましく、融点が115〜162℃のものがより好ましい。融点がこの範囲であれば、フィルムの成膜性を向上させやすくなる。
【0043】
環状ポリオレフィン系樹脂(b1)とポリオレフィン系樹脂(b2)とが層状の相分離構造を形成した樹脂層(B)は、シーラントフィルムあるいはラミネートフィルムとなった状態のフィルムの断面を走査透過電子顕微鏡にて観測することによって確認することが可能である。環状ポリオレフィン系樹脂(b1)のマトリクス中にポリオレフィン系樹脂(b2)のドメインが分散している場合、その1つのドメインの厚みとしては、5〜100nm程度であり、このような環状ポリオレフィン系樹脂(b1)が破断なくマトリクスを形成してなることによって、防曇剤の移行や接着剤の溶出を特に好適に抑制できる。
【0044】
[シーラントフィルム]
本発明のシーラントフィルムは、ポリオレフィン系樹脂(a1)と防曇剤とを含有するシール層(A)の片面に、環状ポリオレフィン系樹脂(b1)を含有する樹脂層(B)を有する。当該構成とすることで、防曇剤の層間の移行を抑制でき、好適な防曇性を持続的に発現できる。
【0045】
本発明のシーラントフィルムは、前記樹脂層(B)上に他の層が多層されていてもよい。当該他の層としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層(C)を好ましく例示できる。当該ポリオレフィン系樹脂としては、前記シール層(A)に用いられるポリオレフィン系樹脂を好ましく使用でき、なかでも、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)等のポリエチレン樹脂を好ましく使用できる。
【0046】
なお、樹脂層(C)中のポリオレフィン系樹脂の含有量は、当該樹脂層(C)を形成するために用いる樹脂成分の全質量に対し、50質量%以上で当該特定の樹脂を含有することが好ましく、好ましくは60質量%以上含有することがより好ましい。樹脂層(C)中には、上記ポリオレフィン系樹脂以外の他の成分を含有してもよく、当該他の成分としては、ポリオレフィン系樹脂と共押出可能な各種樹脂を使用できる。
【0047】
本発明のシーラントフィルムは、上記のとおり、少なくとも前記シール層(A)と前記樹脂層(B)とが(A)/(B)構成で含まれていればよく、各種層を適宜積層して使用できる。なかでも、上記樹脂層(C)を使用した構成としては、好適なシール強度と優れた低吸着性を得やすく、また寸法安定性や成膜性を向上させやすいことから、(A)/(B)/(C)、(A)/(B)/(C)/(B)等の構成を好ましく例示できる。
【0048】
本発明のシーラントフィルムの厚さとしては、剛性と防曇性、シール性、加工適性、透明性とのバランスの観点より、15〜150μmの範囲とすることが好ましく、特に30〜100μmの範囲にすることが好ましい。
【0049】
本発明のシーラントフィルムにおいて、シール層(A)の厚みは50μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下である。樹脂層(A)の厚みを50μmとすることで、高いシール強度と、好適な防曇性を得やすくなる。
【0050】
本発明のシーラントフィルムにおいて、樹脂層(B)の厚みは30μm以下であることが好ましく、より好ましくは25μm以下である。樹脂層(B)の厚みを30μm以下とすることで、ラミネート後の防曇性が得やすく、高いシール強度を得やすくなる。
【0051】
また、樹脂層(C)を使用する場合には、樹脂層(C)の厚みは120μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがラミネート適性等の上記樹脂層(C)を使用した際の効果を得やすいためより好ましい。
【0052】
なお、上記各層はシーラントフィルム中に複数層同じ層を設けてもよいが、同層を複数層設ける場合には、各層の総厚みを上記範囲とすることが好ましい。また、本発明の効果を奏する範囲であれば、上記各層の厚さの下限は特に制限されるものではないが、各層とも2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
【0053】
また、層構成を(A)/(B)/(C)の3層構成とする場合には、好適なシール性や加工適正等を得やすいことからシール層(A)の全厚に対する厚み比率が10〜50%であることが好ましく、10〜40%であることがより好ましい。また、樹脂層(B)の全厚に対する厚み比率を5〜40%であることが好ましく、5〜30%であることがより好ましい。
【0054】
前記の各樹脂層(A)、(B)、(C)には、必要に応じて、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤等の成分を本発明の目的を損なわない範囲、一般的には、各層に使用する樹脂成分100質量部に対し10質量部以下の範囲で添加することができる。特に、フィルム成形時の加工適性、充填機の包装適性を付与するため、シーラントフィルムの表面の摩擦係数は1.5以下、中でも1.0以下であることが好ましいので、シーラントフィルムとした場合の表層に相当する樹脂層には、滑剤やアンチブロッキング剤や帯電防止剤を適宜添加することが好ましい。
【0055】
また、本発明で用いるシーラントフィルムにおいて、表層の樹脂層の表面(片面および/または両面)を処理し、表面の表面張力を35〜45mN/mとすることが好ましい。この様な処理方法としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。この様な表面処理を行なうことにより、当該シーラントフィルムに印刷や接着剤塗布等の後工程を施す場合の、インキや接着剤の塗工性が良好となり、インキや接着剤等との密着性に優れ、脱落やデラミ等の問題を回避することが容易となる。
【0056】
本発明で用いるシーラントフィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、各層に用いる樹脂、あるいは樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出法が挙げられる。この共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れたフィルムが得られるので好ましい。また、本発明で用いる環状オレフィン系樹脂を含有する層(B)の両外面層にエチレン系樹脂を用いた場合には、両者間で融点とTgとの差が大きいため、共押出加工時にフィルム外観が劣化したり、均一な層構成形成が困難になったりする場合がある。このような劣化を抑制するためには、比較的高温で溶融押出を行うことができるTダイ・チルロール法が好ましい。
【0057】
シーラントフィルムの製造方法として、多層空冷インフレーション法を用いる場合、一般に市場で使用されている装置で構わない。一般的な空冷インフレーション装置は、押出機、環状ダイ、冷却リング、ブロワー、ガイド板、ピンチロール、コロナ処理装置、巻取装置等から構成されており、多層の場合、複数の押出機とスパイラル型の多層ダイが装備されている。多層インフレーション法による製造条件は、本発明の特徴を損なわない限り特に限定されないが、環状ダイから押し出した際のバブルの安定性を保持できる特性の樹脂を使用することが好ましい。層(B)の両面に層を形成する場合、前述したオレフィン系樹脂と同様な、エチレン系樹脂、或いはプロピレン系樹脂を用いることができるが、バブルの安定性の点で特定のMFRの樹脂を用いることが望ましい。エチレン系樹脂の場合、MFR(190℃、21.18N)は0.1〜20g/10分が好ましく、0.5〜15g/10分がより好ましい。プロピレン系樹脂の場合、MFR(230℃、21.18N)は0.1〜20g/10分が好ましく、0.5〜15g/10分がより好ましい。両表層に用いる樹脂のMFRがこの範囲であれば、環状オレフィン系樹脂(a1)は前述した特性の樹脂をそのまま使用しても、バブルが安定し、押出成形性が向上する。
【0058】
また、3層構成の多層構成を前述の共押出積層法を用いて積層した後、高ヒートシール強度、ホットタック性や高速の包装スピードが必要な場合には、更に基材と貼りあわせる側と反対の表面に、上記性能を満足する特殊なヒートシール性樹脂を塗工するか特殊なヒートシール性樹脂を有するフィルムをラミネートしヒートシール層を形成するか、特殊なヒートシール性樹脂を有するフィルムを押出ラミネートして、ヒートシール層を形成させても良い。
【0059】
[ラミネートフィルム]
本発明のシーラントフィルムは、シール層表面とは他方の表面に他の基材を貼りあわせてラミネートフィルムとして使用する。当該基材としては、特に限定されるものではないが、本発明の効果を容易に発現させる観点から、プラスチック基材、特には二軸延伸された樹脂フィルムを用いることが好ましい。また透明性を必要としない用途の場合はアルミ箔またはアルミ蒸着したプラスチック基材を単独あるいは組み合わせて使用することもできる。
【0060】
延伸された樹脂フィルムとしては、例えば、二軸延伸ポリエステル(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリアミド(PA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を中心層とした共押出二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)をコートした共押出二軸延伸ポリプロピレン等が挙げられる。これらは、単独あるいは複合化して使用しても良い。
【0061】
本発明のラミネートフィルムは、上記の製造方法によって得られたシーラントフィルムに前記基材を積層してなるフィルムであり、積層方法としては、例えば、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーション等の方法で接着層を介して積層する。
【0062】
前記ドライラミネーションで用いる接着剤としては、例えば、ポリエーテル−ポリウレタン系接着剤、ポリエステル−ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。また各種の粘着剤を使用することもできるが、感圧性粘着剤を用いることが好ましい。感圧性粘着剤としては、例えば、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、これらの混合物をベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサンのような有機溶剤に溶解したゴム系粘着剤、或いは、これらゴム系粘着剤にアビエチレン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・インデン共重合体などの粘着付与剤を配合したもの、或いは、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n−ブチル共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体などのガラス転移点が−20℃以下のアクリル系共重合体を有機溶剤で溶解したアクリル系粘着剤などを挙げることができる。
【0063】
ラミネート用の接着剤は、ポリオール/イソシアネートによる硬化が一般的であり、レトルト用途等の高機能用途には多く利用されている。また従来、貼り合わせはアルミ箔とシーラントフィルムの組み合わせが一般的であった。ところが、透明蒸着技術の登場によりバリア性と透明性を兼備した各種の透明蒸着フィルムが市販されるようになっており、加えて内容物の視認性向上の要求から、透明蒸着フィルムとシーラントフィルムの貼り合わせが多くなっている。
【0064】
そのために、これらシーラントフィルムと蒸着フィルムとの密着性を付与するために、接着剤にはエポキシシランやアミノシランシラン等のシランカップリング剤を添加することが一般的となっている。
【0065】
しかしながら、密着性を保持するためにエポキシシランを増量すれば、エポキシシランの食品への溶出は増大する。さらに、同じ接着剤を蒸着のないフィルムのラミネートに使用するとシランカップリング剤の溶出は蒸着構成の場合より多くなり、構成により接着剤を交換する必要性が出てくる。
【0066】
ラミネート用接着剤に用いられるポリオールとしては、例えば、後述するポリオールそのもの、或いはポリオールと後述するポリカルボン酸類とを反応させて得られるポリエステルポリオール、或いは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の活性水素原子を2個有する化合物類を開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のモノマー類を付加重合したポリエーテル類等が挙げられる。
【0067】
前記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ダイマージオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等のグリコール類、プロピオラクトン、ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の活性水素原子を2個有する化合物類を開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のモノマー類を付加重合したポリエーテル類等が挙げられる。
【0068】
前記ポリカルボン酸類としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成性誘導体;p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体、ダイマー酸等の多塩基酸類が挙げられる。
【0069】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、イソシアネート基を分子内に少なくとも2つ有する有機化合物が挙げられる。有機ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのポリイソシアネート;これらのポリイソシアネートのアダクト体、これらのポリイソシアネートのビュレット体、または、これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート体などのポリイソシアネートの誘導体(変性物)などが挙げられる。
【0070】
また、前記イソシアネートと前記ポリオールとをイソシアネート基が過剰となる混合比で反応したものを用いてもよい。
【0071】
接着剤において、前記ポリオールの水酸基当量と前記ポリイソシアネートのイソシアネート当量との当量比ポリオール/イソシアネートが0.5〜5.0であることが好ましい。
【0072】
前記エポキシシランとしては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリルシラン系シランカップリング剤;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0073】
<欧州の規制について>
スイスでは、Swiss Ordinance SR817.023.21として、食品に接触しないインキやコーティング剤に関する溶出規制を法制化しており、現状では世界で唯一の食品非接触材料のポジティブリスト(PL)となっている。本PLでは、物質の毒性データが既知であるか、未知であるかで区分され、各々Specific Migration Limit(SML)が設けられている。エポキシシランは毒性データが未知であり、SMLは10μg/kg−food未満とされている。
【0074】
本発明のラミネートフィルムは、各種包装材とて好ましく用いることができる。前記包装材としては、食品、薬品、化粧品、サニタリー用品、工業部品、雑貨、雑誌等の用途に用いる包装袋、容器、容器の蓋材等が挙げられる。特に、好適な防曇性を有し、また、内容物への接着層からの溶出を効果的に抑制できる点から、内容物の見える、視認性が必要な、食品や医薬品用等に好適に用いることができる。
【0075】
前記包装袋は、本発明のラミネートフィルムの内面(シール層)を重ねてヒートシール、あるいは内面と基材とを重ね合わせてヒートシールすることにより、内面を内側として形成した包装袋であることが好ましい。例えば当該積層体2枚を所望とする包装袋の大きさに切り出して、それらを重ねて3辺をヒートシールして袋状にした後、ヒートシールをしていない1辺から内容物を充填しヒートシールして密封することで包装袋として用いることができる。さらには自動包装機によりロール状のフィルムを円筒(ピロー)形に端部をシールした後、上下をシールすることにより包装袋を形成することも可能である。
【0076】
また、内面層とヒートシール可能な別のフィルム、シート、容器とヒートシールすることにより包装袋・容器・容器の蓋を形成することも可能である。その際、使用する別のフィルムとしては、比較的厚みのあるポリエチレン、ポリプロピレン、EVA,PET等のフィルムやシートを用いることができる。
【0077】
本発明の積層体を用いた包装材には、初期の引き裂き強度を弱め、開封性を向上するために、シール部にVノッチ、Iノッチ、ミシン目、微多孔などの任意の引き裂き開始部を形成してもよい。
【実施例】
【0078】
(調製例1)
[プロピレン−エチレン共重合体をベースとする防曇剤マスターバッチの調製]
プロピレン−エチレン共重合体(MFR(230℃)7g/10min、融点130℃〕と、理研ビタミン株式会社製ノニオン系界面活性剤リケマールO−71−Dとを質量比が90/10となるように混合し、押出機で溶融混練したのち、造粒機で防曇剤マスターバッチペレットを得た。(以下、防曇剤(1)とする)
【0079】
(調製例2)
[直鎖状ポリエチレンをベースとする防曇剤マスターバッチの調製]
直鎖状ポリエチレン(MFR(190℃)4g/10min、密度0.905g/cm)と、理研ビタミン株式会社製ノニオン系界面活性剤リケマールO−71−Dとを質量比が80/20となるように混合し、押出機で溶融混練したのち、造粒機で防曇剤マスターバッチペレットを得た。(以下、防曇剤(2)とする)
【0080】
(調製例3)
[プロピレン−エチレン共重合体をベースとする防曇剤マスターバッチの調製]
プロピレン−エチレン共重合体(MFR(230℃)7g/10min、融点130℃)と、理研ビタミン株式会社製ノニオン系界面活性剤リケマールO−71−Dとを質量比が80/20となるように混合し、押出機で溶融混練したのち、造粒機で防曇剤マスターバッチペレットを得た。(以下、防曇剤(3)とする)
【0081】
(調製例4)
[プロピレン−エチレン共重合体をベースとする防曇剤マスターバッチの調製]
プロピレン−エチレン共重合体(MFR(230℃)7g/10min、融点130℃)と、理研ビタミン株式会社製ノニオン系界面活性剤ポエムDL−100とを質量比が90/10となるように混合し、押出機で溶融混練したのち、造粒機で防曇剤マスターバッチペレットを得た。(以下、防曇剤(4)とする)
【0082】
(実施例1)
環状ポリオレフィン樹脂層(B)用樹脂として、メタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(MRCPP(1))(密度:0.900g/cm、融点135℃、MFR:4g/10分(230℃、21.18N))20質量部と、ガラス転移温度(Tg)78℃、MFR10g/10分(230℃、21.18N)のノルボルネン系モノマーの開環重合体(COC(1))80質量部の樹脂混合物を用いた。樹脂層(C)用樹脂としてMRCPP(1)を用いた。シール層(A)用樹脂としてメタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(MRCPP(2))(密度:0.900g/cm、融点125℃、MFR:4g/10分(230℃、21.18N))80質量部と、防曇剤(1)20質量部を混合して用いた。
【0083】
これらの樹脂をそれぞれ、環状ポリオレフィン樹脂層(B)用押出機(口径50mm)、シール層(A)用押出機(口径50mm)、樹脂層(C)用押出機(口径50mm)に供給して200〜250℃で溶融し、その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)にそれぞれ供給して共溶融押出を行って、フィルムの層構成が樹脂層(C)/環状ポリオレフィン樹脂層(B)/シール層(A)の3層構成で、40℃の水冷金属冷却ロールで冷却した。各層の厚み比率樹脂層(C)/環状ポリオレフィン樹脂層(B)/シール層(A)が15/6/9μmの全厚30μmのシーラントフィルムを得た。次いでコロナ処理をラミネート層に実施し、濡れ張力は40mN/mであった。
【0084】
得られたフィルムについて、流れ方向に垂直方向、及び水平方向の断面についてSTEM観察を行い、分散状態を観察した。得られた共押出フィルムと二軸延伸ポリエステルフィルム12μmとをポリウレタン系接着剤〔DIC株式会社製ディックドライLX510/KR90〕で貼り合わせ、ラミネートフィルムを得た。
【0085】
(実施例2)
環状ポリオレフィン樹脂層(B)用樹脂として、メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状中密度ポリエチレンMLDPE(1)(密度:0.935g/cm、MFR:4g/10分(190℃、21.18N))40質量部及びCOC(1)60質量部の樹脂混合物を用いた。シール層(A)用樹脂としてメタロセン触媒を用いて重合された直鎖状低密度ポリエチレンLLDPE(1)(密度:0.905g/cm、MFR:3g/10分(190℃、21.18N)、)90質量部と、防曇剤(2)10質量部を混合して用いた。樹脂層(C)用樹脂としてLLDPE(1)を用いた。
【0086】
実施例1と同様にして、各層の厚み比率樹脂層(C)/環状ポリオレフィン樹脂層(B)/シール層(A)が15/9/6μmの全厚30μmのシーラントフィルムを得た。次いでコロナ処理を樹脂層(C)に実施し、濡れ張力は40mN/mであった。得られたシーラントフィルムを用いて、実施例1と同様に接着剤でラミネートを実施してラミネートフィルムを得た。
【0087】
(実施例3)
環状ポリオレフィン樹脂層(B)用樹脂として、メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状中密度ポリエチレンMLDPE(1)30質量部及びCOC(1)70質量部の樹脂混合物を用いた。樹脂層(C)用樹脂としてMLDPE(1)を用いた。シール層(A)用樹脂としてLLDPE(1)90質量部と、防曇剤(2)10質量部を混合して用いた。実施例1と同様にして、各層の厚み比率樹脂層(C)/環状ポリオレフィン樹脂層(B)/シール層(A)が24/3/3μmの全厚30μmのシーラントフィルムを得た。次いでコロナ処理を樹脂層(C)に実施し、濡れ張力は40mN/mであった。得られたシーラントフィルムを用いて、実施例1と同様に接着剤で二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)20μmとのラミネートを実施してラミネートフィルムを得た。
【0088】
(実施例4)
環状ポリオレフィン樹脂層(B)用樹脂として、COC(1)60質量部とガラス転移温度(Tg)125℃、MFR7g/10分(230℃、21.18N)のノルボルネン系モノマーの開環重合体(COC(2))40質量部の樹脂混合物を用いた。樹脂層(C)用樹脂としてMLDPE(1)を用いた。シール層(A)用樹脂としてLLDPE(1)90質量部と、防曇剤(2)10質量部を混合して用いた。実施例1と同様にして、各層の厚み比率は樹脂層(C)/環状ポリオレフィン樹脂層(B)/シール層(A)が21/3/6μmの全厚30μmのシーラントフィルムを得た。次いでコロナ処理を樹脂層(C)に実施し、濡れ張力は40mN/mであった。得られたシーラントフィルムを用いて、実施例1と同様に接着剤で二軸延伸ポリアミドフィルム(ONY)15μmとのラミネートを実施してラミネートフィルムを得た。
【0089】
(実施例5)
環状ポリオレフィン樹脂層(B)用樹脂として、MLDPE(1)10質量部とCOC(1)90質量部の樹脂混合物を用いた。樹脂層(C)用樹脂としてMRCPP(1)を用いた。シール層(A)用樹脂としてLLDPE(1)90質量部と、防曇剤(2)10質量部を混合して用いた。実施例1と同様にして、各層の厚み比率は樹脂層(C)/環状ポリオレフィン樹脂層(B)/シール層(A)が22/5/3μmの全厚30μmのシーラントフィルムを得た。次いでコロナ処理を樹脂層(C)に実施し、濡れ張力は40mN/mであった。得られたシーラントフィルムを用いて、実施例1と同様に接着剤でラミネートを実施してラミネートフィルムを得た。
【0090】
(実施例6)
シール層(A)用樹脂としてMRCPP(2)80質量部と、防曇剤(3)20質量部を混合して用いた以外は、実施例1と同様にして、各層の厚み比率、樹脂層(C)/環状ポリオレフィン樹脂層(B)/シール層(A)が15/6/9μmの全厚30μmのシーラントフィルムを得た。次いでコロナ処理を樹脂層(C)に実施し、濡れ張力は40mN/mであった。得られたシーラントフィルムを用いて、実施例1と同様に接着剤でラミネートを実施してラミネートフィルムを得た。
【0091】
(実施例7)
シール層(A)用樹脂としてMRCPP(2)80質量部と、防曇剤(4)20質量部を混合して用いた以外は、実施例1と同様にして、各層の厚み比率、樹脂層(C)/環状ポリオレフィン樹脂層(B)/シール層(A)が15/6/9μmの全厚30μmのシーラントフィルムを得た。次いでコロナ処理を樹脂層(C)に実施し、濡れ張力は40mN/mであった。得られたシーラントフィルムを用いて、実施例1と同様に接着剤でラミネートを実施してラミネートフィルムを得た。
【0092】
(実施例8)
環状ポリオレフィン樹脂層(B)用樹脂として、MRCPP(1)20質量部及びCOC(2)80質量部の樹脂混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、各層の厚み比率、樹脂層(C)/環状ポリオレフィン樹脂層(B)/シール層(A)が15/6/9μmの全厚30μmのシーラントフィルムを得た。次いでコロナ処理を樹脂層(C)に実施し、濡れ張力は40mN/mであった。得られたシーラントフィルムを用いて、実施例1と同様に接着剤でラミネートを実施してラミネートフィルムを得た。
【0093】
(実施例9)
各層の厚み比率、樹脂層(C)/環状ポリオレフィン樹脂層(B)/シール層(A)を9/10/6μmとした以外は実施例1と同様にして、全厚25μmのシーラントフィルムを得た。次いでコロナ処理を樹脂層(C)に実施し、濡れ張力は40mN/mであった。得られたシーラントフィルムを用いて、実施例1と同様に接着剤でラミネートを実施してラミネートフィルムを得た。
【0094】
(実施例10)
各層の厚み比率、樹脂層(C)/環状ポリオレフィン樹脂層(B)/シール層(A)を35/5/10μmとした以外は実施例1と同様にして、全厚50μmのシーラントフィルムを得た。次いでコロナ処理を樹脂層(C)に実施し、濡れ張力は40mN/mであった。得られたシーラントフィルムを用いて、実施例1と同様に接着剤でラミネートを実施してラミネートフィルムを得た。
【0095】
(比較例1)
シール層(A)の樹脂として、融点127℃、MFR10g/10分(230℃、21.18N)のプロピレン−エチレン共重合体(COPP(1))50質量部と、防曇剤(1)50質量部を混合して用いた。シール層(A)用押出機(口径50mm)に供給して200〜250℃で溶融し、その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)にそれぞれ供給して共溶融押出を行って、フィルムの層構成がシール層の1層構成で、全厚30μmのシーラントフィルムを得た。次いでコロナ処理を実施し、濡れ張力は40mN/mであった。得られたシーラントフィルムを用いて、実施例1と同様に接着剤でラミネートを実施してラミネートフィルムを得た。
【0096】
(比較例2)
樹脂層(B)用樹脂として、融点160℃、MFR10g/10分(230℃、21.18N)のホモポリプロピレン(HOPP)を用い、シール層(A)用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)(密度:0.920g/cm、MFR:10g/10分(190℃、21.18N))90質量部と、防曇剤(2)10質量部を混合して用いた。実施例1と同様にして、各層の厚み比率、ポリオレフィン樹脂層(B)/シール層(A)が20/10μmの全厚30μmのシーラントフィルムを得た。次いでコロナ処理を樹脂層(B)に実施し、濡れ張力は40mN/mであった。得られたシーラントフィルムを用いて、実施例1と同様に接着剤で二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)20μmとのラミネートを実施してラミネートフィルムを得た。
【0097】
(比較例3)
樹脂層(B)用樹脂として、融点125℃、MFR15g/10分(190℃、21.18N)の高密度ポリエチレン(HDPE)、シール層(A)の樹脂として、COPP(1)99.9質量部と、防曇剤(1)0.1質量部を混合して用いた。樹脂層(B)用押出機(口径50mm)、シール層(A)用押出機(口径50mm)に供給して200〜250℃で溶融し、その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)にそれぞれ供給して共溶融押出を行って、フィルムの層構成がポリオレフィン樹脂層(B)/シール層の2層構成で、各層の厚み比率が20/10μmの全厚30μmのシーラントフィルムを得た。次いでコロナ処理を樹脂層(B)に実施し、濡れ張力は39mN/mであった。得られたシーラントフィルムを用いて、比較例2と同様に接着剤でラミネートを実施してラミネートフィルムを得た。
【0098】
(比較例4)
樹脂層(B)用樹脂として、HOPP60質量部と、COC(1)40質量部の樹脂混合物を用いた。シール層(A)の樹脂として、COPP(1)80質量部と、防曇剤(1)20質量部を混合して用いた。樹脂層(B)用押出機(口径50mm)、シール層(A)用押出機(口径50mm)に供給して200〜250℃で溶融し、その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)にそれぞれ供給して共溶融押出を行って、フィルムの層構成がポリオレフィン樹脂層(B)/シール層の2層構成で、各層の厚み比率が35/15μmの全厚50μmのシーラントフィルムを得た。次いでコロナ処理を樹脂層(B)に実施し、濡れ張力は39mN/mであった。得られたシーラントフィルムを用いて、実施例1と同様に接着剤でラミネートを実施してラミネートフィルムを得た。
【0099】
(比較例5)
環状ポリオレフィン樹脂層(B)用樹脂として、COPP(1)70質量部及びCOC(1)30質量部の樹脂混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、各層の厚み比率、樹脂層(C)/環状ポリオレフィン樹脂層(B)/シール層(A)が15/6/9μmの全厚30μmのシーラントフィルムを得た。次いでコロナ処理を樹脂層(C)に実施し、濡れ張力は40mN/mであった。得られたシーラントフィルムを用いて、実施例1と同様に接着剤でラミネートを実施してラミネートフィルムを得た。
【0100】
上記実施例及び比較例で得られた積層フィルムにつき、以下の評価を行った。得られた結果は表中に示した。なお表中の各層の配合成分の含有量は、層中の質量比である。
【0101】
[エージング後のフィルム外観評価]
共押出法により、Tダイから押出されたフィルムの38℃、48時間エージングしたサンプルの外観を目視により確認した。
○:防曇剤ブリードによる堆積・白化はほとんど見られず
×:防曇剤ブリードによる堆積・白化が多く、フィルムのべとつきあり
【0102】
[ラミネート強度の評価]
得られたラミネートフィルムのフィルム延伸基材/シーラントフィルム間のラミネート強度の挙動について、引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/minの速度で剥離したときの状態を以下の基準で評価した。
○:十分なラミネート強度の保持により、フィルム延伸基材とシーラントフィルム間で強固な接着を確認。
×:ラミネート強度の不足により、フィルム延伸基材とシーラントフィルム間で容易な剥離を確認。
【0103】
[ラミネート前後の防曇効果確認試験]
ラミネート前のシーラントフィルム及びラミネート後の得られたラミネートフィルムを、40℃環境下48時間エージングを実施した後、8cm×8cmに切り出して、40℃の水30mlを入れた71φインジェクション容器(東光株式会社製)とヒートシールした後(圧力64kgf/cup、温度150℃、時間0.8秒)、目視により以下の判定基準を利用して低温室3℃で3時間保管し、防曇効果を確認した。
同様な評価をラミネート前のシーラントフィルムに於いても実施した。
○:フィルム表面に連続的な水膜が形成され、視認性良好
△:フィルム表面に細かい水滴付着も視認性良好
×:水滴付着有、視認性悪化
【0104】
[ラミネート後の透明性確認試験]
ラミネート後の得られたラミネートフィルムを、40℃環境下48時間エージングを実施した後、8cm×8cmに切り出して、透明度をJIS K7105に準拠して測定した。
○:透明性 15%以下視認性良好
×:透明性 15%以上視認性悪化
【0105】
[包装機械適性]
実施例、比較例で作成したラミネートを実施したラミネートフィルムを自動包装機にて、下記縦ピロー包装を行い、製袋した。
包装機:合理化技研株式会社 ダイケン株式会社 ダイケンDK240V
横シール:速度30袋/分、縦ヒートシール温度150℃、エアーゲージ圧4kg/cm、横ヒートシール温度130℃から170℃まで10℃刻みで変更しながら樹脂層(C)同士をシールした。縦200mm×横150mmの平袋とした。
【0106】
上記条件で製袋したフィルムを23℃で自然冷却後、15mm幅の短冊状に試験片を切り出した。この試験片を23℃、50%RHの恒温室において引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/分の速度で180°剥離を行い、ヒートシール強度を測定した。得られたヒートシール強度の値から、下記の基準によってヒートシール性を評価した。
○:ヒートシール強度が500g/15mm幅以上。
×:ヒートシール強度が500g/15mm幅未満。
【0107】
上記で評価した結果を以下にまとめる。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
上記表から明らかなとおり、本願実施例1〜5の本発明のシーラントフィルムは好適な防曇性を有し、シール強度に優れたものであった。