(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、処理対象物を回転させながらレーザ装置を上下に移動させることで螺旋状の溝部を形成する方法が記載されている。しかし、特許文献1では、レーザを照射する間、処理対象物をどのように固定するかまでは記載されていない。
【0007】
また、処理対象物へのレーザの照射は、通常は1本毎に行う必要がある。従って、処理対象物を固定する処理及びレーザの照射後に固定を解除する処理は、頻繁に行う必要がある。従って、作業効率を向上させるために、これらの処理を簡単に行うことができる露光装置が望まれていた。
【0008】
なお、これらの課題は、露光装置に限られず、細長状の処理対象物を取り扱う処理装置全般に共通するものである。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、処理対象物の固定及び解除を簡単に行うことができるチャック及び処理装置を提供することにある。
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の第1の観点によれば、細長状の部材を処理対象物とし、当該処理対象物を挟んで固定するチャックにおいて、以下の構成が提供される。即ち、チャックは、第1部材と、第2部材と、弾性体と、を備える。前記第1部材は、前記処理対象物の長手方向で見たときに互いに向かい合うように配置された2つの対向部分を少なくとも有する。前記第2部材は、2つの前記対向部分の間に配置されている。前記弾性体は、
前記処理対象物
を弾性力により固定する。
前記第1部材の一方の前記対向部分と前記第2部材との間に前記処理対象物が挟み込まれるとともに、前記第1部材の他方の前記対向部分と前記第2部材とが前記弾性体で連結されていることで、前記第1部材の一方の前記対向部分と前記第2部材との間に前記処理対象物を弾性力により挟み込んで固定可能である。前記弾性体に力を加えて変形させることで、弾性力により前記処理対象物を固定する状態から、前記処理対象物に弾性力が掛からない状態に切替可能である。
前記処理対象物の固定状態と解除状態とを切り替える際に、前記第2部材が位置を変えずに前記第1部材が位置を変える
【0012】
これにより、弾性体を変形させるだけで処理対象物の固定を解除して処理対象物を取り外すことができるチャックが実現できる。そのため、このチャックが取り付けられた処理装置を用いることで、作業者の手間を減らし、作業効率を向上させることができる。
【0013】
前記のチャックにおいては、
前記第1部材は、2つの前記対向部分の端部同士を連結する部分を有しており、前記処理対象物の長手方向に垂直な平面で切った断面が略U字状
であることが好ましい。
【0014】
これにより、第1部材を押圧するだけで、処理対象物の固定を解除して処理対象物を取り外すことができる。つまり、簡単かつ素早い動作で作業を行うことができるので、作業効率を一層向上させることができる。
【0015】
本発明の第2の観点によれば、以下の処理装置が提供される。即ち、この処理装置は、ベース部と、チャック取付部と、前記のチャックと、を備える。前記チャック取付部は、前記ベース部に取り付けられる。また、前記チャック取付部と前記チャックとが磁力により固定される。
【0016】
これにより、工具を用いることなくチャックを交換することができる。従って、作業者の手間を減らし、作業効率を一層向上させることができる。
【0017】
前記の処理装置においては、前記チャック取付部と前記チャックのうち、一方が磁石を備え、他方が磁性を有する固定具を備えることが好ましい。
【0018】
これにより、固定具に、部材を固定する機能だけでなく、チャックを取り付ける機能を持たせることができるので、部品点数を削減できる。
【0019】
前記の処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記処理対象物の表面にはレジスト層が形成されている。処理装置は、前記チャックに固定された前記処理対象物に光を照射する露光部を備える。
【0020】
これにより、チャックに固定された処理対象物を露光して、処理対象物が所望の形状となるようにすることができる。
【0021】
前記の処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記チャックは、前記処理対象物の長手方向を回転軸方向として回転可能である。前記チャック又は前記露光部は、前記処理対象物の長手方向に移動可能である。
【0022】
これにより、処理対象物を回転させながら、かつ、チャック又は露光部を移動させながら光を照射することで、螺旋状の溝を形成することができる。
【0023】
前記の処理装置においては、前記処理対象物は、スプリング構造を有する通電検査用の接触子を作成するための部材であることが好ましい。
【0024】
これにより、作業効率の高い方法で、通電検査用の接触子を作成することができる。
【0025】
前記の処理装置においては、前記チャックは、前記処理対象物の両端に配置されていることが好ましい。
【0026】
このように処理対象物の両端を固定する場合、処理対象物を固定する作業をより多く行う必要がある。この点、本願の構成は処理対象物を簡単に固定できるので、本願の効果を一層有効に発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。初めに、
図1及び
図2を参照して、通電検査用の接触子を製造する工程について簡単に説明する。
図1及び
図2は、通電検査用の接触子を製造する工程を示す図である。なお、以下では、各工程を行う対象を「処理対象物10」と総称する。また、本願の図面では、視認性を向上させるために処理対象物10を実際よりも太く描いている。
【0030】
本処理では、心材11をベースにして処理を行う。心材11は、5μm以上の極細の金属線や樹脂線を用いることができる。金属線としてはステンレス又はアルミニウム等を用いることができ、樹脂線としてはナイロン樹脂又はポリエチレン樹脂等を用いることができる。
【0031】
初めに、一般的なメッキ処理により、心材11に金メッキ層12を形成する(
図1を参照、金メッキ層形成処理)。金メッキ層は、0.2μmから1μm程度の厚さであることが好ましい。
【0032】
次に、所定の洗浄処理を行った後に電鋳処理を行うことにより、金メッキ層12を覆うようにNi電鋳層13を形成する(Ni電鋳層形成処理)。Ni電鋳層13は、5μmから35μmの厚さであることが好ましい。
【0033】
次に、Ni電鋳層13を形成した処理対象物10をフォトレジスト液に所定時間だけ浸漬させることで、レジスト層14を形成する(レジスト層形成処理)。今回の説明ではポジ型のフォトレジスト液を用いるが、ネガ型のフォトレジスト液を用いても良い。
【0034】
次に、処理対象物10に螺旋状にレーザを照射する。具体的には、処理対象物10を回転させた状態で、露光装置(又は処理対象物10)を処理対象物10の長手方向に沿って移動させることで、螺旋状にレーザが照射される。なお、露光装置の詳細は後述する。
【0035】
そして、処理対象物10を現像液に浸漬させることで露光部分(螺旋状の部分)のレジスト層14を除去する。なお、ポジ型ではなくネガ型のフォトレジスト液を用いた場合、螺旋状以外の部分を露光させれば良い。
【0036】
次に、処理対象物10にエッチング処理を行うことにより、レジスト層14に覆われていない部分のNi電鋳層13を除去して金メッキ層12を露出させる(
図2を参照)。
【0037】
次に、処理対象物10を洗浄した後に、処理対象物10を所定のレジスト層除去液に浸漬させることで、レジスト層14を除去する(レジスト層除去処理)。その後、例えば超音波洗浄等を行うことにより、螺旋状の溝部分における金メッキ層12を除去する(金メッキ層除去処理)。
【0038】
次に、Ni電鋳層13の内側に位置している金メッキ層12を残したまま心材11のみを除去する(心材除去処理)。心材11の除去は、例えば心材11を変形させた後に引き抜く方法や、所定の溶液に心材11を浸漬させることで、心材11を溶解させる方法等を採用することができる。これにより、スプリング構造を有する部材(スプリング部材15)を製造することができる。
【0039】
次に、スプリング部材15の内部に導電性の接触ピン(プランジャ)16を挿入して溶接等により固定することで、スプリング構造を有する通電検査用の接触子17が完成する(ピン取付処理)。なお、集積回路等には、このスプリング部材15の先端の尖った部分を接触させる。
【0040】
次に、処理対象物10にレーザを照射する露光装置(処理装置)20について説明する。初めに、
図3を参照して、露光装置20の概要について説明する。
図3は、露光装置20の構成を模式的に説明する斜視図である。
【0041】
図3に示すように、露光装置20は、ベース部21と、チャック取付部22と、チャック23と、露光部24と、を備える。なお、本実施形態では処理対象物の両端を固定するため、ベース部21、チャック取付部22、及びチャック23を上下1組ずつ備える。
【0042】
ベース部21は、露光装置20の上端及び下端に配置される。それぞれのベース部21には、チャック取付部22が取り付けられている。具体的には、上端に配置されるベース部21には、下面にチャック取付部22が取り付けられており、下端に配置されるベース部21には、上面にチャック取付部22が取り付けられている。
【0043】
チャック取付部22は、チャック23を取り付けるための部材である。チャック取付部22は、取り付けたチャック23を鉛直方向(処理対象物10の長手方向)を回転軸として回転させることができる。
【0044】
チャック23は、チャック取付部22に着脱可能に取り付けられている。チャック23は、処理対象物10を保持可能に構成されている。なお、チャック23の詳細な形状については後述する。
【0045】
以上の構成により、チャック取付部22がチャック23を回転させることで、処理対象物10を、鉛直方向を回転軸方向として、回転させることができる。
【0046】
露光部24は、レーザ(光)を発生させて処理対象物10に照射することができる。処理対象物10のレジスト層を露光させることができればレーザの種類は任意であり、例えば半導体レーザやエキシマレーザを用いることができる。
【0047】
また、露光部24は、第1筐体24aと、第1支持部24bと、第2筐体24cと、第2支持部24dと、を備えている。
【0048】
第1筐体24aはレーザを発生させて照射することができる。また、第1筐体24aは、第1支持部24bに支持されており、図略の制御部の制御により、鉛直方向(処理対象物10の長手方向)に移動することができる。
【0049】
第2筐体24cは、第1筐体24aが照射したレーザを受け止める。また、第2筐体24cは、第2支持部24dに支持されており、制御部の制御により、第1筐体24aと一体的に鉛直方向に移動することができる。
【0050】
以上の構成により、チャック取付部22がチャック23を回転させて処理対象物10を回転させた状態で、第1筐体24a及び第1支持部24bが鉛直方向に移動しながらレーザを照射することで、処理対象物10に螺旋状の溝部を形成することができる。なお、ポジ型ではなくネガ型のフォトレジスト液を用いた場合、同様にして、螺旋状の溝部以外の部分を露光させれば良い。
【0051】
次に、チャック23の詳細な形状について
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は、チャック23の平面図及び正面図である。
図5は、処理対象物10を固定するときのチャック23の様子を示す図である。なお、以下の説明では、チャック23のうちチャック取付部22側を基端側と称し、その反対側を先端側と称する。
【0052】
図4に示すように、チャック23は、基端部40と、先端部50と、から構成されている。基端部40は、基端側に位置する部分である。基端部40は、筒状部材41と、固定具42と、を備えている。
【0053】
筒状部材41は、円筒状の部材である。固定具42は、筒状部材41に挿入して固定される。また、固定具42の少なくとも頭部は磁性を有している。
【0054】
チャック23は、この固定具42の頭部を用いてチャック取付部22に取り付けられる。具体的には、チャック取付部22は、基端部40を挿入可能に構成されており、固定具42の頭部と接触する位置に磁石22aを備えている。この構成により、チャック取付部22は、磁力によりチャック23を保持することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、チャック取付部22側が磁石を備える構成であるが、チャック23側が磁石を備えていても良いし、両方が磁石を備えていても良い。また、チャック23は、磁石22aと接触する位置に、磁性を有する部材が配置されていれば良いので、固定具42以外の部材によりチャック取付部22に取り付けられる構成であっても良い。
【0056】
このように、磁石を用いてチャック23を取り付ける本実施形態の構成は、ネジ溝等を利用してチャックを回して固定する構成と比較して、素早くかつ簡単にチャック23を取外しできる。従って、チャック23を交換する際に掛かる時間及び手間を大幅に低減することができる。
【0057】
先端部50は、基端部40よりも先端側に位置し、チャック取付部22に取り付けたときに当該チャック取付部22の外部に露出する部分である。先端部50は、挿入孔51と、キャピラリ52と、小径部(第2部材)53と、U字部材(第1部材)54と、バネ(弾性体)55と、を備える。
【0058】
挿入孔51は、先端部50の先端側から基端側に向けて形成された孔である。この挿入孔51には、キャピラリ52が挿入されている。キャピラリ52は、例えばセラミック製の筒状の部材であり、処理対象物10を挿入可能に構成されている。キャピラリ52は、例えば処理対象物10の直径に応じて交換可能である。
【0059】
小径部53は、先端部50の中央より基端側の部分であり、
図5の断面図に示すように、断面が矩形状である。小径部53は、先端部50の他の部分よりも断面積が小さく、
図4(b)における上側の面(接触面53a)を、チャック23の中心軸が通るようになっている。小径部53には、小径部53を覆うようにU字部材54が取り付けられている(
図5の断面図を参照)。
【0060】
U字部材54は、断面がU字状の部材である。言い換えれば、U字部材54は、向かい合うように配置された2つの部分と、これらの部分の端部同士を連結する部分と、から構成される。U字部材54は、この向かい合うように配置された2つの部分で小径部53を挟むように配置されている。
【0061】
バネ55は、小径部53とU字部材54とを接続するように取り付けられている。具体的にバネ55は、U字部材54が小径部53の接触面53aに接触するように、U字部材54を付勢する。従って、外力が掛かっていない場合、U字部材54は、接触面53aと接触する(
図5(a)を参照)。この状態から
図5(a)の矢印の方向に力を加えることで、バネ55が縮んで、接触面53aの反対側の面とU字部材54とが接触する(
図5(b)を参照)。なお、外力及びバネの弾性力により位置を変えるのはU字部材54だけであり、小径部53の位置は変わらない。
【0062】
次に、チャック23に処理対象物10を固定する方法及び固定を解除する方法を説明する。
【0063】
初めに、作業者は、U字部材54に力を加えることで、接触面53aからU字部材54を離す。そして、挿入孔51(キャピラリ52)に処理対象物10を挿入する。その後、作業者は、U字部材54から手を離す。これにより、接触面53aとU字部材54とで処理対象物10を固定することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、処理対象物10の両端を固定する構成なので、処理対象物10の両端に対して上記の処理を行う。なお、処理対象物10の両端を固定する構成は必須ではなく、処理対象物10の大きさ等により一方のチャックを省略することができる。
【0065】
一方、作業者は、処理対象物10の固定を解除する場合、U字部材54に力を加えることで、接触面53aからU字部材54を離す。その後、作業者は、処理対象物10を抜き取った後に、U字部材54から手を離す。
【0066】
このように、本実施形態では、作業者が片手でU字部材54に力を加えるだけで、処理対象物10の固定及び解除を行うことができる。特に、U字部材54はチャック23の表面に配置されているので、作業性も良好である。
【0067】
以上に説明したように、本実施形態では、チャック23は、細長状の部材を処理対象物10とし、当該処理対象物10を挟んで固定する。また、チャック23は、バネ55を有し、バネ55に力を加えて変形させることで、弾性力により処理対象物10を固定可能な状態(
図5(a))から、処理対象物10に弾性力が掛からない状態(
図5(b))に切替可能である。
【0068】
これにより、バネ55を変形させるだけで処理対象物10の固定を解除して処理対象物を取り外すことができる露光装置20が実現できる。そのため、作業者の手間を減らし、作業効率を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態のチャック23は、U字部材54と、小径部53と、を備える。U字部材54は、断面が略U字状である。小径部53は、U字部材54の向かい合う2つの部材の間に配置される。バネ55の弾性力によりU字部材54と小径部53との間に処理対象物10を固定する。
【0070】
これにより、U字部材54を押圧するだけで、処理対象物10の固定を解除して処理対象物10を取り外すことができる。つまり、簡単かつ素早い動作で作業を行うことができるので、作業効率を一層向上させることができる。
【0071】
また、本実施形態の露光装置20においては、チャック取付部22とチャック23とが磁力により固定される。
【0072】
これにより、工具を用いることなくチャック23を交換することができる。従って、作業者の手間を減らし、作業効率を一層向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態の露光装置20においては、チャック取付部22とチャック23のうち、一方(チャック取付部22)が磁石を備え、他方(チャック23)が磁性を有する固定具42を備える。
【0074】
これにより、固定具42に、部材を固定する機能だけでなく、チャック23を取り付ける機能を持たせることができるので、部品点数を削減できる。
【0075】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0076】
上記実施形態で説明した露光装置20は、例示であり、部材の形状等を適宜変更することができる。例えば、バネ55を弾性変形させることで処理対象物10を固定できる構成であれば、U字以外の部材を用いることができる。また、バネ55の位置を、接触面53aとU字部材54の間に配置することもできる。
【0077】
上記実施形態では、弾性体としてバネを利用した構成を説明したが、弾性力により処理対象物10を固定できればバネに限られず、例えばゴムを用いることができる。
【0078】
上記実施形態では、通電検査用の接触子を処理対象物10としたが、細長状の部材であれば、他の処理対象物にも本発明を適用することができる。
【0079】
上記実施形態では、スプリング部材15の両端をチャック23により固定する構成であるが、スプリング部材15の片側(例えば鉛直方向上側)のみをチャック23により固定することもできる。
【0080】
上記実施形態では、チャック23を備える処理装置として、露光装置20を例に挙げて説明したが、露光装置20以外にも本願のチャック23を適用することができる。例えば、
図1及び
図2で示す各処理(例えばエッチング処理)において、処理対象物10を掴んで移動させる装置にチャック23を採用することができる。