【実施例】
【0073】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0074】
(評価方法)
(1)撥液性の評価
実施例および比較例の板状試験片の表面に2.0gの金属片を載せ、これを1800℃まで昇温可能な加熱システムを備えた接触角測定装置に取り付けた。金属は、アルミニウム、銀、金の3種類を用いた。
【0075】
次に、アルミニウムの場合は690℃、金の場合は1300℃、銀の場合は1250℃に昇温して金属を溶融した。金属溶融時の板状試験片と金属融液の接触角を接触角測定装置で測定し、接触角が90°以上であれば撥液の傾向を持つと判断した。
【0076】
接触角の測定後、室温まで空冷して金属を凝固させた。冷却後、金属が板状試験片に溶着しなかったものについては、同様の昇温・冷却の操作を50回繰り返し、50回目の昇温時に、1回目と同様の方法で金属溶融時の板状試験片と金属融液の接触角を測定した。冷却後、金属が板状試験片に溶着したものについては、その時点で評価を中止した。
【0077】
(2)るつぼの耐久寿命及び金属回収性評価
実施例および比較例のるつぼに2.0gの金属を秤量し、抵抗式加熱炉で金属を溶融した。金属は、アルミニウム、銀、金の3種類を用い、アルミニウムの場合は690℃、金の場合は1300℃、銀の場合は1250℃に昇温して金属を溶融した。
【0078】
溶融後、抵抗式加熱炉内を自然冷却し、金属を凝固させた。冷却後、金属のるつぼへの溶着も、るつぼの損傷も目視で確認されなかった場合、使用後も再利用可能であると判断し、○と評価した。一方、金属のるつぼへの溶着、または、るつぼの損傷が目視で確認された場合、使用後は再利用不可能であると判断し、×と評価した。るつぼの再利用の可否の評価は、上記の昇温・冷却の操作を50回まで繰り返して行った。
【0079】
また、50回使用後のるつぼの再利用の可否評価が○であった場合、金属をるつぼから取り出し、その重量を測定した。
【0080】
<実施例1>
(板状試験片)
純度98%、平均粒径1.0μmの窒化ケイ素粉末を13質量%、純度99.99%、平均粒径1.0μmの非晶質二酸化ケイ素粉末を4質量%、平均粒子径5μmの熱分解性樹脂粒子(積水化成工業株式会社製、テクポリマー「SSX−105」;架橋ポリメタクリル酸メチル)を17質量%、純水に溶かして2質量%の濃度に調整したポリビニルアルコール溶液を66質量%となるように秤量し、ボールミルを用いて24時間混合し、ペーストとした。
【0081】
次に、板状試験片の基材となる□40mm×厚さ1mmの酸化アルミニウム基板(表面粗さ:Ra5μm)の表面に、市販のエアガンを用いて、作製したペーストを塗布した。エアガンには4kg/cm
2に加圧した窒素を流し、この圧力を利用して混合液を吐出した。
【0082】
この板状試験片を300℃に保持した電気炉で10分間乾燥した。さらに、これを高温電気炉に入れ、0.1L/分の窒素気流中で、昇温速度200℃/時で1500℃まで加熱し、1500℃で1時間加熱保持した後、降温速度150℃/時で室温まで冷却した。冷却後に板状試験片を電気炉から取り出し、窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層が形成された板状試験片を得た。板状試験片上に形成された窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層の厚みをノギスで測定したところ、その厚みは500μmであった。また、窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層は、その表面に、60%の孔占有面積割合で、平均円相当径5μmの大きさの孔が存在することが確認された。走査型電子顕微鏡で、窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層の断面を観察したところ、孔の深さは50μmであった。
【0083】
この板状試験片の撥液性を評価した。結果を表1に示す。いずれの金属も100°を超える接触角を示し、良好な撥液性を維持していた。
【0084】
(るつぼ)
板状試験片の場合と同様の方法でペーストを作製し、これを、外径40mm(内径Φ30mm)×高さ30mm(深さ25mm)の酸化アルミニウム製るつぼの内面全体に、エアガンを用いて塗布した。このるつぼを板状試験片と同様の条件で乾燥、焼成し、窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層が形成されたるつぼを得た。るつぼ内面に形成された窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層の厚みをノギスで測定したところ、その厚みは500μmであった。また、窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層は、その表面に、60%の孔占有面積割合で、平均円相当径5μmの大きさの孔が存在することが確認された。走査型電子顕微鏡で、窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層の断面を観察したところ、孔の深さは50μmであった。このるつぼの耐久寿命及び金属回収性の評価を行った。結果を表1に示す。るつぼは50回の昇温・冷却後も再利用可能であり、溶融した金属は容易に回収することができた。評価に用いた金属の回収量はAl:1.9g、Ag:2.0g、Au:2.0gであり、回収率はそれぞれ95%、100%、100%であった。また、目視でるつぼへの金属の残留は認められなかった。
【0085】
<実施例2>
板状試験片およびるつぼ基材を、酸化アルミニウムから窒化アルミニウムに変更する以外は、実施例1と同様に板状試験片およびるつぼを作製し、撥液性、耐久寿命、金属回収性を評価した。結果を表1に示す。
【0086】
いずれの金属も100°を超える接触角を示し、るつぼは50回の昇温・冷却後も再利用可能であった。金属は容易に回収することができ、回収率はAl:95%、Ag:100%、Au:100%で、目視でるつぼへの金属の残留は認められなかった。
【0087】
<実施例3>
(板状試験片)
純度99%、平均粒径1.0μmの窒化アルミニウムを53質量%、酸化イットリウムを1質量%、エチルセルロースを20質量%、テルピネオールを25質量%、界面活性剤(第一工業製薬株式会社製、商品名「プライサーフ」)を1質量%となるように秤量し、撹拌脱法装置(クラボウ製、商品名「マゼルスター」)によって10分間混合し、ペーストとした。
【0088】
次に、板状試験片の基材となる□40mm×厚さ1mmの黒鉛基板の表面に、作製したペーストを、その厚さが50〜100μmになるように刷毛を用いて塗布した。
【0089】
この板状試験片を300℃に保持した電気炉で10分間乾燥した。さらに、これを高温電気炉に入れ、0.1L/分の窒素気流中で、昇温速度200℃/時で1700℃まで加熱し、1700℃で1時間加熱保持した後、降温速度150℃/時で室温まで冷却した。
【0090】
得られた板状試験片の上に実施例1と同様の方法で窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層を形成することで、窒化アルミニウム焼結体層を介して窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層が形成された板状試験片を得た。
【0091】
この板状試験片の撥液性を評価した。結果を表1に示す。いずれの金属も100°を超える接触角を示し、良好な撥液性を維持していた。
【0092】
(るつぼ)
板状試験片の場合と同様の方法で窒化アルミニウム焼結体層作製用のペーストを作製し、これを、外径40mm(内径Φ30mm)×高さ30mm(深さ25mm)の黒鉛製るつぼの内面全体に、刷毛を用いて塗布した。このるつぼを板状試験片と同様の条件で乾燥、焼成した後、窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層を形成することで、窒化アルミニウム焼結体層を介して窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層が形成されたるつぼを得た。このるつぼの耐久寿命及び金属回収性の評価を行った。結果を表1に示す。るつぼは50回の昇温・冷却後も再利用可能であり、金属は容易に回収することができた。金属の回収率はAl:100%、Ag:100%、Au:100%で、目視でるつぼへの金属の残留は認められなかった。
【0093】
<実施例4>
(板状試験片)
純度99%、平均粒径1.0μmの酸化アルミニウムを54質量%、エチルセルロースを20質量%、テルピネオールを25質量%、界面活性剤(第一工業製薬株式会社製、商品名「プライサーフ」)を1質量%となるように秤量し、撹拌脱法装置(クラボウ製、商品名「マゼルスター」)によって10分間混合し、ペーストとした。
【0094】
次に、板状試験片の基材となる□40mm×厚さ1mmの黒鉛基板の表面に、作製したペーストを、その厚さが50〜100μmになるように刷毛を用いて塗布した。
【0095】
この板状試験片を300℃に保持した電気炉で10分間乾燥した。さらに、これを高温電気炉に入れ、0.1L/分の窒素気流中で、昇温速度200℃/時で1500℃まで加熱し、1500℃で1時間加熱保持した後、降温速度150℃/時で室温まで冷却した。
【0096】
得られた板状試験片の上に実施例1と同様の方法で窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層を形成することで、酸化アルミニウム焼結体層を介して窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層が形成された板状試験片を得た。
【0097】
この板状試験片の撥液性を評価した。結果を表1に示す。いずれの金属も100°を超える接触角を示し、良好な撥液性を維持していた。
【0098】
(るつぼ)
板状試験片の場合と同様の方法で酸化アルミニウム焼結体層作製用のペーストを作製し、これを、外径40mm(内径Φ30mm)×高さ30mm(深さ25mm)の黒鉛製るつぼの内面全体に、刷毛を用いて塗布した。このるつぼを板状試験片と同様の条件で乾燥、焼成した後、窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層を形成することで、酸化アルミニウム焼結体層を介して窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層が形成されたるつぼを得た。このるつぼの耐久寿命及び金属回収性の評価を行った。結果を表1に示す。るつぼは50回の昇温・冷却後も再利用可能であり、溶融した金属は容易に回収することができた。金属の回収率はAl:100%、Ag:100%、Au:100%で、目視でるつぼへの金属の残留は認められなかった。
【0099】
<実施例5>
板状試験片およびるつぼ基材を、黒鉛から石英に変更する以外は、実施例3と同様に板状試験片およびるつぼを作製し、撥液性、耐久寿命、金属回収性を評価した。結果を表1に示す。
【0100】
いずれの金属も100°を超える接触角を示し、るつぼは50回の昇温・冷却後も再利用可能であった。溶融した金属は容易に回収することができた。金属の回収率はAl:100%、Ag:100%、Au:100%で、目視でるつぼへの金属の残留は認められなかった。
【0101】
<実施例6>
板状試験片およびるつぼ基材を、黒鉛から石英に変更する以外は、実施例4と同様に板状試験片およびるつぼを作製し、撥液性、耐久寿命、金属回収性を評価した。結果を表1に示す。
【0102】
いずれの金属も100°を超える接触角を示し、るつぼは50回の昇温・冷却後も再利用可能であった。溶融した金属は容易に回収することができた。金属の回収率はAl:100%、Ag:100%、Au:100%で、目視でるつぼへの金属の残留は認められなかった。
【0103】
<比較例1>
実施例1と同じ□40mm×厚さ1mmの酸化アルミニウム基板、および外径40mm(内径Φ30mm)×高さ30mm(深さ25mm)の酸化アルミニウム製るつぼを用いて、窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層を形成せずに、そのままの状態で、撥液性、耐久寿命、金属回収性を評価した。結果を表1に示す。
【0104】
いずれの金属も、接触角は撥液の目安である90°を超えることがなく、凝固後は板状試験片およびるつぼに溶着した。溶着した金属を、るつぼに損傷を与えることなく取り去ることができなかったため、るつぼを繰り返し利用することはできなかった。金属の残量も測定できなかった。
【0105】
<比較例2>
板状試験片およびるつぼの材質を、酸化アルミニウムから窒化アルミニウムに変更する以外は、比較例1と同様に、撥液性、耐久寿命、金属回収性を評価した。結果を表1に示す。
【0106】
いずれの金属も、接触角は撥液の目安である90°を超えることがなく、凝固後は板状試験片およびるつぼに溶着した。溶着した金属を、るつぼに損傷を与えることなく取り去ることができなかったため、るつぼを繰り返し利用することはできなかった。金属の残量も測定できなかった。
【0107】
<比較例3>
板状試験片およびるつぼの材質を、酸化アルミニウムから黒鉛に変更する以外は、比較例1と同様に、撥液性、耐久寿命、金属回収性を評価した。結果を表1に示す。
【0108】
いずれの金属も、接触角は撥液の目安である90°を超えることがなく、凝固後は板状試験片およびるつぼに溶着した。溶着した金属を、るつぼに損傷を与えることなく取り去ることができなかったため、るつぼを繰り返し利用することはできなかった。金属の残量も測定できなかった。
【0109】
<比較例4>
板状試験片およびるつぼの材質を、酸化アルミニウムから石英に変更する以外は、比較例1と同様に、撥液性、耐久寿命、金属回収性を評価した。結果を表1に示す。
【0110】
いずれの金属も、接触角は撥液の目安である90°を超えることがなく、凝固後は板状試験片およびるつぼに溶着した。溶着した金属を、るつぼに損傷を与えることなく取り去ることができなかったため、るつぼを繰り返し利用することはできなかった。金属の残量も測定できなかった。
【0111】
<比較例5>
(板状試験片)
平均粒径1.0μmの窒化ケイ素粉末を16質量%、純度99.99%、平均粒径1.0μmの非晶質二酸化ケイ素粉末を4質量%、純水に溶かして2質量%の濃度に調整したポリビニルアルコール溶液を80質量%となるように秤量し、ボールミルを用いて24時間混合した。
【0112】
次に、板状試験片の基材となる□40mm×厚さ1mmの酸化アルミニウム基板の表面に、市販のエアガンを用いて、作製したペーストを塗布した。エアガンには4kg/cm
2に加圧した窒素を流し、この圧力を利用して混合液を吐出した。
【0113】
この板状試験片を300℃に保持した電気炉で10分間乾燥した。さらに、これを高温電気炉に入れ、0.1L/分の窒素気流中で、昇温速度200℃/時で1500℃まで加熱し、1500℃で1時間加熱保持した後、降温速度150℃/時で室温まで冷却した。冷却後に板状試験片を電気炉から取り出し、多孔質ではない窒化ケイ素を含む焼結体層が形成された板状試験片(実施例1の窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層を、多孔質ではない焼結体層とした板状試験片)を得た。板状試験片上に形成された窒化ケイ素を含む焼結体層の表面走査型電子顕微鏡で観察したところ、1μmを超える孔は見られなかった。この板状試験片の撥液性を評価した。いずれの金属も、接触角は撥液の目安である90°を超えることがなく、凝固後は板状試験片に溶着した。
【0114】
(るつぼ)
板状試験片の場合と同様の方法でペーストを作製し、これを、外径40mm(内径Φ30mm)×高さ30mm(深さ25mm)の酸化アルミニウム製るつぼの内面全体に、エアガンを用いて塗布した。このるつぼを板状試験片と同様の条件で乾燥、焼成し、多孔質ではない窒化ケイ素を含む焼結体層が形成されたるつぼ(実施例1の窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層を多孔質ではない焼結体層としたるつぼ)を得た。るつぼ内面に形成された窒化ケイ素を含む焼結体層の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、1μmを超える孔は見られなかった。このるつぼの耐久寿命及び金属回収性の評価を行った。結果を表1に示す。いずれの金属も凝固後はるつぼに溶着した。溶着した金属を、るつぼに損傷を与えることなく取り去ることができなかったため、るつぼを繰り返し利用することはできず、金属の残量も測定できなかった。
【0115】
<比較例6>
板状試験片およびるつぼの材質を、酸化アルミニウムから窒化アルミニウムに変更する以外は比較例5と同様にして、板状試験片およびるつぼを作製し、撥液性、耐久寿命、金属回収性を評価した。結果を表1に示す。
【0116】
いずれの金属も、接触角は撥液の目安である90°を超えることがなく、凝固後は板状試験片およびるつぼに溶着した。溶着した金属を、るつぼに損傷を与えることなく取り去ることができなかったため、るつぼを繰り返し利用することはできず、金属の残量も測定できなかった。
【0117】
<比較例7>
(板状試験片)
純度99%、平均粒径1.0μmの窒化アルミニウムを53質量%、酸化イットリウムを1質量%、エチルセルロースを20質量%、テルピネオールを25質量%、界面活性剤(第一工業製薬株式会社製、商品名「プライサーフ」)を1質量%となるように秤量し、撹拌脱法装置(クラボウ製、商品名「マゼルスター」)によって10分間混合し、ペーストとした。
【0118】
次に、板状試験片の基材となる□40mm×厚さ1mmの黒鉛基板の表面に、作製したペーストを、その厚さが50〜100μmになるように刷毛を用いて塗布した。
【0119】
この板状試験片を300℃に保持した電気炉で10分間乾燥した。さらに、これを高温電気炉に入れ、0.1L/分の窒素気流中で、昇温速度200℃/時で1700℃まで加熱し、1700℃で1時間加熱保持した後、降温速度150℃/時で室温まで冷却した。
【0120】
得られた板状試験片の上に比較例5と同様の方法で窒化ケイ素を含む焼結体層を形成することで、窒化アルミニウム焼結体層を介して多孔質ではない窒化ケイ素を含む焼結体層が形成された板状試験片(実施例3の窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層を、多孔質ではない焼結体層とした板状試験片)を得た。この板状試験片の撥液性を評価した。結果を表1に示す。いずれの金属も、接触角は撥液の目安である90°を超えることがなく、凝固後は板状試験片に溶着した。
【0121】
(るつぼ)
板状試験片の場合と同様の方法で窒化アルミニウム焼結体層作製用のペーストを作製し、これを、外径40mm(内径Φ30mm)×高さ30mm(深さ25mm)の黒鉛製るつぼの内面全体に、刷毛を用いて塗布した。このるつぼを板状試験片と同様の条件で乾燥、焼成した後、窒化ケイ素を含む焼結体層を形成することで、窒化アルミニウム焼結体層を介して多孔質ではない窒化ケイ素を含む焼結体層が形成されたるつぼ(実施例3の窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層を、多孔質ではない焼結体層としたるつぼを得た。このるつぼの耐久寿命及び金属回収性の評価を行った。結果を表1に示す。いずれの金属も凝固後はるつぼに溶着した。溶着した金属を、るつぼに損傷を与えることなく取り去ることができなかったため、るつぼを繰り返し利用することはできず、金属の残量も測定できなかった。
【0122】
<比較例8>
板状試験片およびるつぼの材質を黒鉛から石英に変更する以外は、比較例7と同様に板状試験片およびるつぼを作製し、撥液性、耐久寿命、金属回収性を評価した。結果を表1に示す。
【0123】
いずれの金属も、接触角は撥液の目安である90°を超えることがなく、凝固後は板状試験片およびるつぼに溶着した。溶着した金属を、るつぼに損傷を与えることなく取り去ることができなかったため、るつぼを繰り返し利用することはできず、金属の残量も測定できなかった。
【0124】
<比較例9>
(板状試験片)
平均粒径1.0μmの酸化アルミニウム粉末を54質量%、エチルセルロースを20質量%、テルピネオールを25質量%、界面活性剤(第一工業製薬株式会社製、商品名「プライサーフ」)を1質量%となるように秤量し、撹拌脱法装置(クラボウ製、商品名「マゼルスター」)によって10分間混合し、ペーストとした。
【0125】
次に、板状試験片の基材となる□40mm×厚さ1mmの黒鉛基板の表面に、作製したペーストを、その厚さが50〜100μmになるように刷毛を用いて塗布した。
【0126】
この板状試験片を300℃に保持した電気炉で10分間乾燥した。さらに、これを高温電気炉に入れ、0.1L/分の窒素気流中で、昇温速度200℃/時で1500℃まで加熱し、1500℃で1時間加熱保持した後、降温速度150℃/時で室温まで冷却した。
【0127】
得られた板状試験片の上に比較例1と同様の方法で窒化ケイ素を含む焼結体層を形成することで、酸化アルミニウム焼結体層を介して多孔質ではない窒化ケイ素を含む焼結体層が形成された板状試験片(実施例4の窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層を、多孔質ではない焼結体層とした板状試験片)を得た。この板状試験片の撥液性を評価した。結果を表1に示す。いずれの金属も、接触角は撥液の目安である90°を超えることがなく、凝固後は板状試験片に溶着した。
【0128】
(るつぼ)
板状試験片の場合と同様の方法で酸化アルミニウム焼結体層作製用のペーストを作製し、これを、外径40mm(内径Φ30mm)×高さ30mm(深さ25mm)の黒鉛製るつぼの内面全体に、刷毛を用いて塗布した。このるつぼを板状試験片と同様の条件で乾燥、焼成した後、窒化ケイ素を含む焼結体層を形成することで、酸化アルミニウム焼結体層を介して窒化ケイ素を含む焼結体層が形成されたるつぼ(実施例4の窒化ケイ素を含む多孔質焼結体層を、多孔質ではない焼結体層としたるつぼ)を得た。このるつぼの耐久寿命及び金属回収性の評価を行った。結果を表1に示す。いずれの金属も凝固後はるつぼに溶着した。溶着した金属を、るつぼに損傷を与えることなく取り去ることができなかったため、るつぼを繰り返し利用することはできず、金属の残量も測定できなかった。
【0129】
<比較例10>
板状試験片およびるつぼの材質を黒鉛から石英に変更する以外は、比較例9と同様に板状試験片およびるつぼを作製し、撥液性、耐久寿命、金属回収性を評価した。結果を表1に示す。
【0130】
いずれの金属も、接触角は撥液の目安である90°を超えることがなく、凝固後は板状試験片およびるつぼに溶着した。溶着した金属を、るつぼに損傷を与えることなく取り去ることができなかったため、るつぼを繰り返し利用することはできず、金属の残量も測定できなかった。
【0131】
<比較例11>
(板状試験片)
平均粒径3.0μmの炭化ケイ素粉末を54質量%、エチルセルロースを20質量%、テルピネオールを25質量%、界面活性剤(第一工業製薬株式会社製、商品名「プライサーフ」)を1質量%となるように秤量し、撹拌脱法装置(クラボウ製、商品名「マゼルスター」)によって10分間混合し、ペーストとした。
【0132】
次に、板状試験片の基材となる□40mm×厚さ1mmの黒鉛基板の表面に、作製したペーストを、その厚さが50〜100μmになるように刷毛を用いて塗布した。
【0133】
この板状試験片を300℃に保持した電気炉で10分間乾燥した。さらに、これを高温電気炉に入れ、0.1L/分の窒素気流中で、昇温速度200℃/時で1500℃まで加熱し、1500℃で1時間加熱保持した後、降温速度150℃/時で室温まで冷却した。
【0134】
得られた板状試験片の上に比較例1と同様の方法で窒化ケイ素を含む焼結体層を形成することで、炭化ケイ素焼結体層を介して窒化ケイ素を含む焼結体層が形成された板状試験片(比較例7の窒化アルミニウム焼結体層を介する窒化ケイ素を含む焼結体層を、炭化ケイ素焼結体層を介するとした板状試験片)を得た。この板状試験片の撥液性を評価した。結果を表1に示す。いずれの金属も、接触角は撥液の目安である90°を超えることがなく、凝固後は板状試験片に溶着した。
【0135】
(るつぼ)
板状試験片の場合と同様の方法で炭化ケイ素焼結体層作製用のペーストを作製し、これを、外径40mm(内径Φ30mm)×高さ30mm(深さ25mm)の黒鉛製るつぼの内面全体に、刷毛を用いて塗布した。このるつぼを板状試験片と同様の条件で乾燥、焼成した後、窒化ケイ素を含む焼結体層を形成することで、炭化ケイ素焼結体層を介して窒化ケイ素を含む焼結体層が形成されたるつぼ(比較例7の窒化アルミニウム焼結体層を介する窒化ケイ素を含む焼結体層を、炭化ケイ素焼結体層を介するとしたるつぼ)を得た。このるつぼの耐久寿命及び金属回収性の評価を行った。結果を表1に示す。いずれの金属も凝固後はるつぼに溶着した。溶着した金属を、るつぼに損傷を与えることなく取り去ることができなかったため、るつぼを繰り返し利用することはできず、金属の残量も測定できなかった。
【0136】
<比較例12>
(板状試験片)
平均粒径5μmの炭化チタン粉末を54質量%、エチルセルロースを20質量%、テルピネオールを25質量%、界面活性剤(第一工業製薬株式会社製、商品名「プライサーフ」)を1質量%となるように秤量し、撹拌脱法装置(クラボウ製、商品名「マゼルスター」)によって10分間混合し、ペーストとした。
【0137】
次に、板状試験片の基材となる□40mm×厚さ1mmの黒鉛基板の表面に、作製したペーストを、その厚さが50〜100μmになるように刷毛を用いて塗布した。
【0138】
この板状試験片を300℃に保持した電気炉で10分間乾燥した。さらに、これを高温電気炉に入れ、0.1L/分の窒素気流中で、昇温速度200℃/時で1500℃まで加熱し、1500℃で1時間加熱保持した後、降温速度150℃/時で室温まで冷却した。
【0139】
得られた板状試験片の上に比較例1と同様の方法で窒化ケイ素を含む焼結体層を形成することで、炭化チタン焼結体層を介して窒化ケイ素を含む焼結体層が形成された板状試験片(比較例7の窒化アルミニウム焼結体層を介する窒化ケイ素を含む焼結体層を、炭化チタン焼結体層を介するとした板状試験片)を得た。この板状試験片の撥液性を評価した。結果を表1に示す。いずれの金属も、接触角は撥液の目安である90°を超えることがなく、凝固後は板状試験片に溶着した。
【0140】
(るつぼ)
板状試験片の場合と同様の方法で炭化チタン焼結体層作製用のペーストを作製し、これを、外径40mm(内径Φ30mm)×高さ30mm(深さ25mm)の黒鉛製るつぼの内面全体に、刷毛を用いて塗布した。このるつぼを板状試験片と同様の条件で乾燥、焼成した後、窒化ケイ素を含む焼結体層を形成することで、炭化チタン焼結体層を介して窒化ケイ素を含む焼結体層が形成されたるつぼ(比較例7の窒化アルミニウム焼結体層を介する窒化ケイ素を含む焼結体層を、炭化チタン焼結体層を介するとしたるつぼ)を得た。このるつぼの耐久寿命及び金属回収性の評価を行った。いずれの金属も凝固後はるつぼに溶着した。溶着した金属を、るつぼに損傷を与えることなく取り去ることができなかったため、るつぼを繰り返し利用することはできず、金属の残量も測定できなかった。
【0141】
【表1】