【実施例】
【0047】
以下に、実施例により、本発明の特徴をより一層明確にする。本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0048】
実施例1
(Na
2Ti
3O
7の製造方法)
硫酸チタニル水和物(TiOSO
4・xH
2O,xは2から5)6.25gを95%硫酸7mlを含む硫酸水溶液200mlに加えて溶解し、最終的に蒸留水を加えて250mlとした。この水溶液を丸底の3つ口フラスコに入れ、撹拌用のプロペラで撹拌しながら、オイルバスで85℃に加熱した。硫酸チタニルの自己加水分解によって白濁が生じた。加熱開始から1時間30分後にオイルバスから3つ口フラスコを取り出し、流水で冷却した。得られた白濁の固形物を遠心分離器で分離し、蒸留水による洗浄を3回繰り返し、60℃、1昼夜乾燥し、Na
2Ti
3O
7製造のチタン原料とした。
【0049】
得られたチタン原料は、X線粉末回折によりアナターゼ型TiO
2のピーク位置にブロードなピークを有する非晶質の酸化チタンであることがわかった。また、熱重量分析により、100℃付近に脱水に伴う明確な重量減少と吸熱反応が認められ、酸化チタン水和物であることが明らかになった。さらに、粉体であり、BET比表面積測定により、比表面積は153m
2/gで、平均細孔直径が3.7nm、細孔容積が0.142cm
3/gである多孔体であることが明らかとなった。さらに、走査型電子顕微鏡(SEM)観察より、1から5μmの球状粒子が凝集していることが明らかとなった(
図2)。
【0050】
この多孔性酸化チタン水和物約1gを、216g/lのNa
2CO
3水溶液100ml(pH11.3)に懸濁し、超音波分散を5分間行い、細孔内及び表面をNa
2CO
3水溶液によって十分に膨潤させた後、フィルター濾過により水溶液と分離し、60℃、1昼夜乾燥した。予め、多孔性酸化チタン水和物のNa
2CO
3水溶液の含浸量を計測しており、Na
2CO
3水溶液の濃度はNa
2Ti
3O
7の化学組成を与える濃度とした。走査型電子顕微鏡(SEM)観察より、1から5μmの球状粒子が凝集している状態は原料とした酸化チタン水和物と同じであり、含浸したNa
2CO
3の結晶が析出している様子は観察できなかった(
図3)。また、エネルギー分散型X線分光装置を用いた分析によれば、個々の粒子にNa元素とTi元素の両方が存在していたことから、ほとんどのNa
2CO
3は粒子内部の細孔内に存在するか、粒子表面に微粒子の状態で存在していることが明らかとなった。これをアルミナ製ボートに充填し、電気炉を用いて、空気中、高温条件下で加熱した。焼成温度は、800℃で、焼成時間は10時間とした。その後、電気炉中で自然放冷し、試料1を得た。
【0051】
このようにして得られた試料1は、X線粉末回折により、良好な結晶性を有するNa
2Ti
3O
7の単一相であることが明らかとなった(
図4)。また、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、直径が0.1から0.4μm、長さが1から5μmの針状粒子がイガグリのとげのように集まった2から10μmの二次粒子が更に凝集し、凝集体を形成していることが明らかになった(
図5)。多孔性酸化チタン水和物の1から5μmの球状の一次粒子が、その細孔内及び表面に含浸したNa
2CO
3との反応により、多数の針状形態のNa
2Ti
3O
7粒子を形成し、この針状粒子が集まることにより、二次粒子が生成したものであることが明らかとなった。さらに、BET比表面積測定により、この粉体の比表面積は1.8m
2/gであり、ほとんど細孔がない中実な粒子であることが明らかとなった。
凝集粒子の実測の最小サイズは1.4μmであり、最大値は35.7μmであり、平均粒子サイズは9.9μmであった。なお、凝集しても比表面積にはほとんど影響は出ない。
【0052】
(プロトン交換体H
2Ti
3O
7の製造方法)
上記で得られたNa
2Ti
3O
7(試料1)を出発原料として用い、0.5N塩酸水溶液に浸漬し、60℃の条件下で3日間保持して、プロトン交換処理を行った。交換処理速度を上げるために24時間毎に塩酸水溶液を交換した。1回ごとの塩撒水溶液の使用量は、Na2Ti3O7試料0.75gに対し、200mlとなる量とした。その後、水洗し、空気中60℃で1昼夜乾燥を行い、目的物であるプロトン交換体を得た。
【0053】
このようにして得られたプロトン交換体は、X線粉末回折により、H
2Ti
3O
7の単一相であることが明らかとなった(
図6)。また、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、出発原料のNa
2Ti
3O
7の形状が保持され、針状形態のH
2Ti
3O
7粒子が集まった二次粒子の凝集したものであることが明らかとなった。
【0054】
(チタン酸化物H
2Ti
12O
25の製造方法)
次に、上記で得られたH
2Ti
3O
7を、アルミナるつぼに充填した後に、空気中280℃で5時間熱処理することによって、試料2を得た。
【0055】
このようにして得られた試料2は、X線粉末回折により、過去の報告にあるようなH
2Ti
12O
25に特徴的な回折パターンを示すことが明らかとなった(
図7)。また、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、出発原料のNa
2Ti
3O
7やプロトン交換体H
2Ti
3O
7の形状が保持され、針状形態のH
2Ti
12O
25粒子が集まった二次粒子の凝集したものであることが明らかとなった(
図8)。
この針状粒子の一次粒子の重量平均長軸径は2.30μmであり、重量平均短軸径0.46μmであり、アスペクト比は5.0であった(測定個数:100個)。凝集粒子の実測の最低値は1.4μmであり、最大値は20.7μmであり、平均粒子サイズは7.2μmであった。
上記において、アスペクト比は(重量平均長軸径/重量平均短軸径)により求めたものである。また、重量平均長軸径及び重量平均短軸径は、100個の粒子の長軸径、短軸径を計測し、それらの粒子をすべて角柱相当体と仮定し、下記式によって算出した値である。
重量平均長軸径=Σ(Ln・Ln・Dn
2)/Σ(Ln・Dn
2)
重量平均短軸径=Σ(Dn・Ln・Dn
2)/Σ(Ln・Dn
2)
上記式中、nは計測した個々の粒子の番号を表し、Lnは第n番目の粒子の長軸、Dnは第n番目の粒子の短軸径をそれぞれ示す。
【0056】
(リチウム二次電池)
このようにして得られたH
2Ti
12O
25(試料2)を活物質として、導電剤としてアセチレンブラック、結着剤としてポリテトラフルオロエチレンを重量比で5:5:1となるように配合して電極を作製し、対極にリチウム金属を用いて、6フッ化リン酸リチウムをエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒(体積比1:1)に溶解させた1M溶液を電解液とする、
図9に示す構造のリチウム二次電池(コイン型セル)を作製し、その電気化学的リチウム挿入・脱離挙動を測定した。電池の作製は、公知のセルの構造・組み立て方法に従って行った。
【0057】
作製されたリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、3.0V?1.0Vのカットオフ電位で電気化学的にリチウム挿入・脱離試験を行ったところ、1.6V付近に電圧平坦部を有し、可逆的なリチウム挿入・脱離反応が可能であることが判明した。リチウムの挿入・脱離に伴う電圧変化を、
図10に示す。試料2のリチウム挿入量は、H
2Ti
12O
25の化学式当たり9.04に相当し、活物質重量当たりの初期挿入量は248mAh/gでTiO
2(B)とほぼ同程度であり、等方形状のH
2Ti
12O
25の236mAh/gより高い値であった。試料2の初期充放電効率は89%であり、TiO
2(B)の50%より高く、等方形状のH
2Ti
12O
25とほぼ同等であった。また、試料2の初期サイクルの容量維持率は94%であり、TiO
2(B)の81%より高く、等方形状のH
2Ti
12O
25とほぼ同等であった。さらに、50サイクル後においても216mAh/gの放電容量を維持可能であることが明らかになった。以上から、本発明の異方性構造を有するH
2Ti
12O
25活物質は、TiO
2(B)と同等の高容量で、かつ等方形状のH
2Ti
12O
25とほぼ同等の可逆性の高いリチウム挿入・脱離反応が可能であり、リチウム二次電池電極材料として有望であることが明らかとなった。
【0058】
比較例1
市販のTiO
2(高純度化学製、ルチル型、平均粒径2μm、比表面積2.8m
2/g)1gを、216g/lのNa
2CO
3水溶液100ml(pH11.3)に懸濁し、超音波分散5分間を行った後、フィルター濾過により試料と水溶液を分離した。その後、試料を60℃、1昼夜乾燥した。これをアルミナ製ボートに充填し、電気炉を用いて、空気中、高温条件下で加熱した。焼成温度は、800℃で、焼成時間は10時間とした。その後、電気炉中で自然放冷した。得られた試料は、X線粉末回折により、ルチル型TiO
2が主成分で一部にNa
2Ti
6O
13が生成したものであった。このことより、得られた試料はNa
2Ti
3O
7を含まないことがわかった。
【0059】
比較例2
実施例1で合成された酸化チタン水和物を、乾燥させずに回収し、1回の合成で得られた全量(60℃、乾燥後の重量約0.5g)を216g/lのNa
2CO
3水溶液50mlに室温で懸濁・撹拌した。半日経った後に、濾過し、60℃で一昼夜乾燥した。これをアルミナ製ボートに充填し、電気炉を用いて、空気中、高温条件下で加熱した。焼成温度は、800℃で、焼成時間は10時間とした。その後、電気炉中で自然放冷した。得られた試料は、X線粉末回折により、主相であるNa
2Ti
3O
7以外にNa
4Ti
5O
12の回折ピーク(○印)が見られ、最強ピーク(Na
2Ti
3O
7は10.5°、Na
4Ti
5O
12は14.0°)強度比は約0.4倍と相当量が含まれていた(
図11)。また、それ以外にも未同定なピークが多数現れており、Na
2CO
3の酸化チタン水和物への含浸が不均一であることがわかった。
【0060】
実施例2
硫酸チタニル水和物(TiOSO
4・xH
2O, xは2から5)6.25gを95%硫酸7mlを含む硫酸水溶液200mlに加えて溶解し、最終的に蒸留水を加えて250mlとした。この水溶液をビーカーに入れ、20〜25℃の温度で、マグネチックスターラーで撹拌しながら、240g/lのNa
2CO
3水溶液を滴下してゲル状の沈殿を得た。Na
2CO
3水溶液の滴下速度は10〜25ml/hで、pHが6になった時点で終了とした。
これを遠心分離器で分離し、蒸留水による洗浄を3回繰り返したものを250mlの蒸留水に懸濁し、丸底フラスコに入れて液体窒素温度で凍結した。これをロータリーポンプで真空に引いて凍結乾燥法によって、1昼夜乾燥したものをNa
2Ti
3O
7製造のチタン原料とした。
【0061】
得られたチタン原料について、X線粉末回折により、アナターゼ型TiO
2のピーク位置にブロードなピークを有する非晶質の酸化チタンであることがわかった。また、熱重量分析により、100℃付近に脱水に伴う明確な重量減少と吸熱反応が認められ、得られたチタン原料が酸化チタン水和物であることが明らかになった。さらに、BET比表面積測定により、この粉体の比表面積は439m
2/gで、平均細孔直径が3.3nm、細孔容積が0.360cm
3/gである多孔体であることが明らかとなった。さらに、走査型電子顕微鏡(SEM)観察より、やや角張っているが、比較的等方的な1から5μmの粒子が凝集していることが明らかとなった(
図12)。
【0062】
このチタン原料約1gを、216g/lのNa
2CO
3水溶液100ml(pH11.3)に懸濁し、超音波分散を5分間行った後、フィルター濾過により試料と水溶液を分離した。その後、試料は、60℃で1昼夜乾燥した。これをアルミナ製ボートに充填し、電気炉を用いて、空気中、高温条件下で加熱した。焼成温度は800℃、焼成時間は10時間とした。その後、電気炉中で自然放冷し、試料3を得た。
【0063】
このようにして得られた試料3は、X線粉末回折により、良好な結晶性を有するNa
2Ti
3O
7の単一相であることが明らかとなった(
図13)。また、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、直径が1から5μm程度の比較的等方的な粒子の存在やそれらが凝集していることが明らかになった(
図14)。
【0064】
上記で得られたNa
2Ti
3O
7を出発原料として用い、これを0.5N塩酸水溶液に浸漬し、60℃の条件下で3日間保持して、プロトン交換処理を行った。交換処理速度を速めるために24時間毎に塩酸水溶液を交換して行った。1回ごとの塩酸水溶液の使用量は、Na
2Ti
3O
7試料0.75gに対し、200mlとなる量とした。その後、水洗し、空気中60℃で1昼夜乾燥を行い、目的物であるプロトン交換体を得た。
【0065】
このようにして得られたプロトン交換体は、X線粉末回折により、H
2Ti
3O
7の単一相であることが明らかとなった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、出発原料のNa
2Ti
3O
7の形状が保持され、比較的等方性粒子又はその凝集体であることが明らかとなった。
【0066】
次に、上記で得られたH
2Ti
3O
7を、アルミナるつぼに充填した後に、空気中280℃で5時間熱処理することによって、試料4を得た。このようにして得られた試料4は、X線粉末回折により、過去の報告にあるようなH
2Ti
12O
25に特徴的な回折パターンがほとんどであるが、矢印に示した部分にH
2Ti
6O
13の痕跡からの回折ピークが認められた(
図15)。また、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、出発原料のNa
2Ti
3O
7やプロトン交換体H
2Ti
3O
7の形状が保持され、比較的等方性の粒子であること又はその凝集体であることが明らかとなった。
【0067】
(リチウム二次電池)
このようにして得られたH
2Ti
12O
25(試料4)を活物質として用い、導電剤としてアセチレンブラックを、結着剤としてポリテトラフルオロエチレンを、重量比で5:5:1となるように配合して電極を作製した。この電極と、対極にリチウム金属を用いて、6フッ化リン酸リチウムをエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒(体積比1:1)に溶解させた1M溶液を電解液とする、
図9に示す構造のリチウム二次電池(コイン型セル)を作製し、その電気化学的リチウム挿入・脱離挙動を測定した。電池の作製は、公知のセルの構造・組み立て方法に従って行った。
【0068】
作製されたリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、3.0V?1.0Vのカットオフ電位で電気化学的にリチウム挿入・脱離試験を行ったところ、1.6V付近に電圧平坦部を有する、可逆的なリチウム挿入・脱離反応に伴う電圧変化を、
図16に示す。試料4のリチウム挿入量は、H
2Ti
12O
25の化学式当たり9.44に相当し、活物質重量当たりの初期挿入量は259mAh/gでTiO
2(B)とほぼ同程度であり、等方形状のH
2Ti
12O
25の236mAh/gより高い値であった。ただし、試料4の初期充放電効率は81%であり、TiO
2(B)の50%よりは高いが、等方形状のH
2Ti
12O
25よりは低い値であった。また、試料4の初期サイクルの容量維持率は85%であり、TiO
2(B)の81%よりは高いが、等方形状のH
2Ti
12O
25よりは低い値であった。これは一部に痕跡として含まれているH
2Ti
6O
13による負荷逆なリチウムの挿入に基づくものである。
【0069】
実施例3
硫酸チタニル水和物(TiOSO
4・xH
2O, xは2から5)6.25gを95%硫酸7mlを含む硫酸水溶液200mlに加えて溶解し、尿素30gを溶解した後に蒸留水を加えて250mlとした。この水溶液を丸底の3つ口フラスコに入れ、撹拌用のプロペラで撹拌しながら、オイルバスで95℃に加熱した。尿素の加水分解によってアンモニアが生成し、それを沈殿剤として白濁が生じた。加熱開始から1時間30分後にオイルバスから3つ口フラスコを取り出し、流水で冷却した。得られた白濁の固形物を遠心分離器で分離し、蒸留水による洗浄を3回繰り返し、室温で、1昼夜真空乾燥し、チタン原料とした。
【0070】
得られたチタン原料について、X線粉末回折により、アナターゼ型TiO
2のピーク位置にブロードなピークを有する非晶質の酸化チタンであることがわかった。また、熱重量分析により、100℃付近に脱水に伴う明確な重量減少と吸熱反応が認められ、得られたチタン原料が酸化チタン水和物であることが明らかになった。さらに、BET比表面積測定により、この粉体の比表面積は60m
2/gで、平均細孔直径が3.1nm、細孔容積が0.05cm
3/gである多孔体であることが明らかとなった。さらに、走査型電子顕微鏡(SEM)観察より、1から3μmの球状粒子が凝集していることが明らかとなった(
図17)。
【0071】
このチタン原料約0.2gを、200g/lのLiOH・H
2O水溶液20ml(pH11.0)に懸濁し、超音波分散5分間を行った後、フィルター濾過により試料と水溶液を分離した。その後、試料は、60℃、1昼夜乾燥した。これをアルミナ製ボートに充填し、電気炉を用いて、空気中、高温条件下で加熱した。焼成温度は800℃、焼成時間は10時間とした。その後、電気炉中で自然放冷し、試料5を得た。
【0072】
このようにして得られた試料5は、X線粉末回折により、良好な結晶性を有するLi
4Ti
5O
12の単一相であることが明らかとなった(
図18)。また、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、直径が1から3μm程度のやや角張った等方的な粒子の存在やそれらが凝集していることが明らかになった(
図19)。さらに、BET比表面積測定により、この粉体の比表面積は0.4m
2/gであり、ほとんど細孔がない中実な粒子であることが明らかとなった。
【0073】
実施例4
実施例3で合成された酸化チタン水和物約0.2gを、400g/lのK
2CO
3水溶液20ml(pH12.1)に懸濁し、超音波分散5分間を行った後、フィルター濾過により試料と水溶液を分離した。その後、試料は、60℃、1昼夜乾燥した。これをアルミナ製ボートに充填し、電気炉を用いて、空気中、高温条件下で加熱した。焼成温度は800℃、焼成時間は10時間とした。その後、電気炉中で自然放冷し、試料6を得た。
【0074】
このようにして得られた試料6は、X線粉末回折により、良好な結晶性を有するK
2Ti
4O
9の単一相であることが明らかとなった(
図20)。また、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、直径が1から3μm程度のやや角張った等方的な粒子の存在やそれらが凝集していることが明らかになった(
図21)。さらに、BET比表面積測定により、この粉体の比表面積は1.8m
2/gであり、ほとんど細孔がない中実な粒子であることが明らかとなった。
【0075】
実施例5
実施例3で合成された酸化チタン水和物0.2gを、400g/lのNaNO
3水溶液20mlに0.4mlの25%NH
3を加えてpHを10.8に調整した溶液に懸濁し、超音波分散5分間を行った後、フィルター濾過により試料と水溶液を分離した。その後、試料は、60℃、1昼夜乾燥した。これをアルミナ製ボートに充填し、電気炉を用いて、空気中、高温条件下で加熱した。焼成温度は800℃、焼成時間は10時間とした。その後、電気炉中で自然放冷し、試料7を得た。
【0076】
このようにして得られた試料7は、X線粉末回折により、良好な結晶性を有するNa
2Ti
3O
7の単一相であることが明らかとなった(
図22)。また、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、直径が1から3μm程度のやや角張った等方的な粒子の存在やそれらが凝集していることが明らかになった(
図23)。
【0077】
比較例3
実施例3で合成された酸化チタン水和物0.2gを、400g/lのNaNO
3水溶液20mlにpHを調整せずに懸濁し(pH6.2)、超音波分散5分間を行った後、フィルター濾過により試料と水溶液を分離した。その後、試料は、60℃、1昼夜乾燥した。これをアルミナ製ボートに充填し、電気炉を用いて、空気中、高温条件下で加熱した。焼成温度は800℃、焼成時間は10時間とした。その後、電気炉中で自然放冷した。得られた試料は、X線粉末回折により、アナターゼ型のTiO
2が主相であり、Na
2Ti
3O
7とは一致しない不明な小さなピークが確認された(
図24)。また、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、直径が1から3μm程度の球状の粒子が存在し、それらが凝集しており、原料である酸化チタン水和物の形状のままであることが明らかになった。