(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マスク走査方向に第3の長さ(L3)にわたって延びる第3のパターン(PAT3)及び該マスク走査方向に対して垂直な前記方向に前記第1の幅と同一の第3の幅を含み、前記基板上で前記第2のパターン区域(PA2)と反対に該マスク走査方向に前記第1のパターン区域に隣接する第3のパターン区域(PA3)、
を更に含み、
前記第3の長さ(L3)は、前記第1の長さ(L1)よりも小さく、前記第3のパターンは、前記第1のパターンの対応部分に同一であり、該対応部分は、該第3のパターンに対して前記マスク走査方向に該第1の長さ(L1)だけオフセットされ、かつ該第3の長さ(L3)と同一の長さ(CPL3)を有する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマスク。
投影対物系の像平面の領域に配置された感放射線基板を該投影対物系の物体平面の領域に配置された請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のマスクのパターンの少なくとも1つの像を用いて露光する走査投影露光方法であって、
前記パターン(PAT)が置かれた前記平面(OS)にスリット形断面を有する照明ビームを発生させる段階であって、定められた時点での照明スリット(ILS)の有効長さ及び幅寸法が、光源(S)と前記マスクの間の照明系(ILL)に設けられたレチクルマスキングデバイス(RMD)によって制御される前記照明ビームを発生させる段階と、
前記投影対物系の前記物体平面内で前記照明ビームに対して前記マスクを移動し、かつ同時にそれぞれの走査方向に該投影対物系の前記像平面内で投影ビームに対して前記基板を移動することにより、走査作動において該基板上の露光区域を漸進的に露光する段階と、
を含み、
前記基板は、第1の露光区域(EA1)と前記走査方向に該第1の露光区域に隣接する第2の露光区域(EA2)とを含み、
前記第1の露光区域(EA1)全体と該第1の露光区域に隣接する前記第2の露光区域(EA2)の第1の部分(P1)とが、第1の走査方向の1回の単一の連続的な第1の走査作動において露光され、
前記第1の走査作動は、前記第2の露光区域(EA2)全体が完全に露光される前に、該第2の露光区域が単に部分的に露光されるように停止される、
ことを特徴とする方法。
放射線線量が、前記第1の部分(P1)に受光される放射線線量が第1の放射線線量プロフィールに従って前記第1の露光区域(EA1)に隣接する側から該第1の露光区域と反対の前記第2の露光区域の第2の部分(P2)に向けて連続的に減少するように、前記第1の走査作動中に制御されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
前記レチクルマスキングデバイス(RMD)は、照明スリット全長で完全に開いたままに留まり、該レチクルマスキングデバイス上への光束が、更に別の放射線が前記第1の部分(P1)上に入射しないように、前記第1の走査作動の終了時に停止されることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の方法。
前記光束は、光源を消灯することにより、又は該光源と前記レチクルマスキングデバイスの間に配置されたシャッターを閉じることにより停止されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
前記第2の露光区域(EA2)は、第2の走査方向の第2の走査作動において更に露光され、露光線量が、該第2の露光区域(EA2)が該第2の走査作動が完了した後に均一な露光線量が該第2の露光区域に受光されるように前記第1の走査作動において受光された前記放射線線量に対して相補的な第2の放射線線量を受光するように、該第2の走査作動中に制御されることを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
前記第2の露光区域(EA2)上の前記第2の走査作動は、少なくとも1回の第3の走査作動が前記基板上で実行された後に実行されることを特徴とする請求項7から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
前記基板は、前記第1の走査作動が完了した後に前記露光区域の幅に対応する長さだけ前記第1の走査方向と垂直にステップ作動において移動されることを特徴とする請求項7から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
投影対物系の像平面の領域に配置された感放射線基板を該投影対物系の物体平面の領域に配置されたマスクのパターンの少なくとも1つの像を用いて露光するように構成された走査投影露光系であって、
作動波長λ付近の波長帯域からの放射線を放出する放射線源(S)と、
前記放射線源からの前記放射線を受光し、かつ照明放射線を成形して前記マスクの前記パターン上に向けられる照明ビームを形成し、定められた時点で該マスク上に入射する照明放射線の照明スリット(ILS)の有効長さ及び幅寸法を定めるように構成されたレチクルマスキングデバイス(RMD)を含む照明系(ILL)と、
前記パターンの像を前記基板上に投影する投影対物系(PO)と、
を含み、
請求項7の方法に従って前記基板を露光するように構成される、
ことを特徴とする走査投影露光系。
【背景技術】
【0002】
マイクロリソグラフィ投影露光方法及びマイクロリソグラフィ投影露光系は、現在、半導体構成要素及び他の微細パターン付き構成要素を製作するのに使用されている。マイクロリソグラフィ露光工程は、結像される構造パターンを担持又は形成するマスク(レチクル)を使用する段階を有する。パターンは、投影露光系内で照明系と投影対物系の間の投影対物系の物体平面の領域に位置決めされる。1次放射線源によって1次放射線が供給され、照明系の光学構成要素によって変換され、照明視野内のマスクのパターンに向けられる照明放射線が生成される。パターンによって修正された放射線は、投影対物系を通過し、露光される基板が配置された投影対物系の像平面にパターンの像を形成する。基板は、通常は感放射線層(フォトレジスト)を担持する。
【0003】
マイクロリソグラフィ投影露光系が集積回路の製造に使用される場合には、マスク(レチクル)は、集積回路の個々の層に対応する回路パターンを含む場合がある。このパターンは、基板として機能する半導体ウェーハ上の露光区域上に結像することができる。露光区域を時に「ターゲット区域」、「ショット区域」、又は「ダイ」と呼ぶ。集積回路製作の状況でのダイは、定められた機能回路がその上に製作された半導体材料の小さい矩形ブロックである。単一のウェーハは、典型的に、パターンの像に逐次露光される多数の隣接ダイ(露光区域)を含む。ダイは、典型的に行と列に配置される。
【0004】
典型的な従来のマスクは、結像される1つの完全なパターンを含む1つのパターン区域を含む。パターン付き部分の縁部には、望ましくない放射線が投影対物系に入射するのを阻止するために、幅狭の遮光帯を配置することができる。従来のマスクは、2つの同一の完全パターンを含むことができる(US 5,854,671の
図16Aを参照されたい)。
【0005】
マイクロリソグラフィ投影露光系の1つの部類では、各露光区域は、マスクのパターン全体を露光区域上に1回で露光することによって照射される。そのような装置は、一般的にウェーハステッパと呼ばれる。
【0006】
一般的にステップ−アンド−スキャン装置又はウェーハスキャナと呼ばれる別の露光系では、各露光区域は、走査作動において、投影対物系の物体平面内で照明ビームに対してマスクを移動し、かつ同時に投影対物系の共役な像平面内で投影ビームに対して基板をそれぞれの走査方向に移動することによって漸進的に照射される。一般的にマスクは、投影対物系の物体平面と平行なマスク走査方向に移動可能なマスクホルダによって固定される。一般的に基板は、像平面と平行に移動可能な基板ホルダによって保持される。投影対物系の設計に基づいて、マスクの走査方向と基板の走査方向は、例えば、互いに平行又は互いに逆平行とすることができる。走査作動中に、マスクの移動速度と基板の移動速度は、縮小投影対物系では1よりも小さい投影対物系の拡大比(絶対値|β|)によって相互に関連する。
【0007】
走査露光系では、照明系は、パターンが置かれた平面内でスリット形の断面を有する照明ビームを発生させるように構成される。断面は、例えば、矩形又は弓形(弧形)とすることができる。定められた時点で照明することができる区域を本明細書の状況では「照明スリット」で表している。
【0008】
走査作動では、照明系は、定められた時間においてパターンのうちのスリット形の部分を照明する。照明スリットの走査方向の長さは、1回の走査で照明されるパターン全体の長さの何分の一かである。走査方向に対して直交する走査直交方向の照明スリットの幅は、照明スリットの長さよりも大きく、マスク上のパターンの幅よりも小さくはない。
【0009】
通常、照明系内には、定められた時点での照明スリットの有効長さ寸法と有効幅寸法とを定めるためにレチクルマスキング(REMA)デバイスが設けられる。一般的にレチクルマスキングデバイスは、場合によってREMAブレードで表す2対の可動ブレードを含む。第1のブレード対は、走査方向に対して直交又はそうでなければ横断するように位置合わせされた縁部を有する。これらの縁部の間の走査方向の距離は、定められた時点での照明スリットの有効長さを決定する。第1の対のブレードは、互いに独立して走査方向に直線移動することができる。第2のブレード対は、第1の対の縁部に対してほぼ横向きの縁部を有する。これらの縁部の間の走査直交方向の距離は、照明スリットの有効幅を決定する。
【0010】
深紫外(DUV)又は真空紫外(VUV)のスペクトル範囲の放射線を用いて作動するマイクロリソグラフィのための露光系では、レチクルマスキングデバイスの好ましい場所は、マスクが置かれた平面と光学的に共役な照明系内の中間視野平面である。レチクルマスキングデバイスとマスクの間には、定められた拡大率(多くの場合に1:2と6:1の間)を有する光学結像系が挿入され、この光学結像系は、ブレードの縁部をマスク上に鮮明に結像する。これに代えてレチクルマスキングデバイスのブレードは、マスクの直前に配置することができる。時としてこの配置は、スペクトルのうちで極紫外(EUV)範囲の放射線を用いて作動するマイクロリソグラフィのための露光系において採用される。EUV系は反射マスクを使用する。
【0011】
第1のブレード対のブレードは、走査作動で移動する基板上の各特定点の上に入射する放射線エネルギの線量を可動シャッター機構方式で制御するのに重要な役割を果たす。走査サイクルが始まる前には、ブレードは実質的に閉じられ、放射線がマスク上に当たるのを防止する。マスクの走査移動が始まると、ブレードは、定められた走査作動における照明スリット全長である最大距離まで開けられる。走査サイクルの終了時には、ブレードは再度閉じ、いずれかの望ましくない放射線がマスク上に当たるのを阻止する。開放移動は、前部ブレード、すなわち、移動するマスク上のパターンの前縁と同期する走査移動の前方方向のブレードによって実施される。閉鎖移動は、移動するマスクのパターンの後縁と同期する後部ブレードによって実施される(例えば、US 5,854,671の
図6及び対応する説明を参照されたい)。それによって露光区域の各部分が同じ放射線エネルギ線量によって露光されることを確実にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の1つの目的は、高いスループットを可能にするステップ−アンド−スキャン投影露光方法及び系のためのマスクを提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、高いスループットを可能にするステップ−アンド−スキャン投影露光方法及び系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記及び他の目的に対処するために、本発明の一形式により、本発明は、請求項1に記載のマイクロリソグラフィのためのマスクを提供する。
【0016】
別の形式により、本発明は、請求項7に記載の走査投影露光方法を提供する。
【0017】
別の形式により、本発明は、上記の方法を実施するのに適する請求項15に記載の投影露光系を提供する。
【0018】
マイクロリソグラフィのための新しいマスクは、基板と、マスク走査方向に第1の長さにわたって延びる第1のパターン及びマスク走査方向に対して垂直な方向の第1の幅を含む基板上の第1のパターン区域と、マスク走査方向に第2の長さにわたって延びる第2のパターン及びマスク走査方向に対して垂直な方向の第1の幅と同一の第2の幅を含み、基板上でマスク走査方向に第1のパターン区域に隣接する第2のパターン区域とを含む。第2の長さは、第1の長さよりも小さく、第2のパターンは、第1のパターンの対応部分に同一であり、対応部分は、第2のパターンに対してマスク走査方向に第1の長さだけオフセットされ、かつ第2の長さと同一の長さを有する。
【0019】
一般的に、このマスクのパターン付き部分は、同じパターンを担持する従来のマスクのパターン付き部分よりも走査方向に大きい。従って、新しいマスクにおける製造コストは、対応する従来のマスクにおけるものよりも高い可能性がある。しかし、追加のコストは、このマスクを利用することによって可能になる高いスループットによって十分過ぎるほど補われる。
【0020】
追加の長さは、第1の長さと第2の長さの間の長さ比である長さ比L1/L2によって定量化することができる。一部の実施形態において、この比の分子L1及び分母L2において66mm≦L1≦132mm及び16mm≦L2≦32mmという条件がそれぞれ成り立つ。好ましくは、長さ比は、132/16から132/32までの範囲にある。
【0021】
上述の形式によって包含される典型的な場合は、第1のパターン区域が、単一の露光区域(又はダイ)を露光するのに必要とされる単一の完全なパターンを形成する単一の第1のパターンを含むマスクである。この場合に、第1のパターンの一部分(又は何分の一か)であるように構造化される第2のパターンは、単一の露光区域を露光するのに必要とされるパターン要素の何分の一かのみを含む不完全なパターンに対応する。
【0022】
例外的な場合では、第1のパターンは、各々が小さいサイズの1つの完全露光区域を露光するのに適する走査方向に周期的に位置合わせされた2つ又はそれよりも多くの小さいサイズの完全パターンで構成することができる。これらの場合では、第2のパターン区域は、更に別の完全パターンを含むことができる。これらの場合では、本発明の開示によるマスクは、工業規格に対応する従来のマスク上のパターン付き部分の全長よりも大きいパターン付き部分の全長L1+L2によって認識することができる。具体的には、これらの場合には、L1+L2>132mmという条件が満たされることになる。
【0023】
多くの場合に、パターンの片側にある単一の第2のパターン区域で十分とすることができる。マスクに、基板上でマスク走査方向に第2のパターン区域と反対に第1のパターン区域に隣接する第3のパターン区域が設けられ、この第3のパターン区域が、マスク走査方向に第3の長さにわたって延びる第3のパターンと、マスク走査方向に対して垂直な方向の第1の幅と同一の第3の幅とを含む場合には、必要とされるスキャン及びステップ作動のシーケンスに関して追加の自由度を得ることができる。第3の長さは、第1の長さよりも小さく、第3のパターンは、第1のパターンの対応部分に同一であり、対応部分は、第3のパターンに対してマスク走査方向に第1の長さだけオフセットされ、かつ第3の長さと同一の長さを有する。好ましくは、第2の長さは、第3の長さに対応し、すなわち、L2=L3である。
【0024】
一部の実施形態において、マスクは反射マスクである。マスクのパターン付き区域は、EUV放射線を反射するのに有効な反射コーティングを有することができる。反射コーティングは、例えば、モリブデン/シリコン二重層又はモリブデン/ベリリウム二重層のような交替する高屈折率材料と低屈折率材料とからなる積層層を含むことができる。反射マスクは、DUV放射線又はVUV放射線が高度に反射されるように構成することができる。
【0025】
他の実施形態では、マスクは透過マスクであり、特に深紫外(DUV)放射線又は真空紫外(VUV)放射線を使用するマイクロリソグラフィのための透過マスクである。この場合に、マスク基板は、例えば、合成石英(溶融シリカ)又はカルシウムフッ化物で製造することができる。
【0026】
投影対物系の像平面の領域に配置された感放射線基板を投影対物系の物体平面の領域に配置されたマスクのパターンの少なくとも1つの像で露光するための走査投影露光方法では、マスクのパターンが置かれた平面内でスリット形断面を有する照明ビームが生成される。定められた時点での照明スリットの有効長さ寸法及び有効幅寸法が、光源とマスクの間の照明系内に設けられたレチクルマスキングデバイスによって制御される。基板上の露光区域は、走査作動において、投影対物系の物体平面内で照明ビームに対してマスクを移動し、かつ同時に投影対物系の像平面内で投影ビームに対して基板をそれぞれの走査方向に移動することによって漸進的に露光される。基板は、第1の露光区域と、走査方向に第1の露光区域に隣接する第2の露光区域とを含む(一般的に基板は、走査方向に互いに近い第1の露光区域と第2の露光区域とからなる多くの対を含む多数の露光区域を含む)。第1の露光区域全体と、第2の露光区域のうちで第1の露光区域に隣接する第1の部分とが、第1の走査方向の1回だけの連続的な第1の走査作動において露光される。第1の走査作動は、第2の露光区域が部分的にしか露光されないように、第2の露光区域全体が完全に露光される前に停止される。
【0027】
従来の走査露光方法におけるものとは異なり、1回だけの走査の開始時点と終了時点の間で1つよりも多い露光区域を露光するのに1回の連続的な走査作動が実施される。これに代えて、部分的にでしかないが第2の露光区域も同じ走査において露光される。
【0028】
実施形態において、放射線線量は、第1の部分内で受光される放射線線量が、第1の露光区域に隣接する側から第2の露光区域のうちで第1の露光区域と反対の第2の部分に向けて第1の放射線線量プロフィールに従って連続して減少するように、第1の走査作動中に制御される。一般的に第1の放射線プロフィールは、受光放射線の線形勾配に対応する。一般的に第2の部分は、未露光状態に留まり、すなわち、第1の走査作動ではいかなる露光放射線も受光しない。
【0029】
好ましくは、レチクルマスキングデバイスは、照明スリット全長で完全に開いた状態に留まり、更に別の放射線が第1の部分の上に入射しないように、第1の走査作動の終了時にレチクルマスキングデバイス上への光束が停止される。それによって光源から放出されてレチクルマスキングデバイス上に入射するあらゆる放射線を基板を露光するのに有効に使用することが可能になる。言い換えれば、レチクルマスキングデバイスのブレードが開かれ、各1回の走査作動の終了時に再度閉じられる従来方法と比較した場合に、光損失を有意に低減することができる。
【0030】
連続光源が使用される場合に、光束は、光源とレチクルマスキングデバイスとの間に配置されたシャッターを閉じることによって停止することができる。これに代えて、第1の走査作動の終了時に、光源を一時的に消灯することができる。この手段は、パルス放射線源を使用する系においていかなる構成的修正も必要としない。例えば、DUV、VUV、又はEUVの範囲で作動する走査露光系は、一般的にパルス放射線源を使用する。走査作動中に、定められたパルス繰り返し数にあるパルスシーケンス(バースト)を生成することができる。パルスの放出は、バーストを用いて第1の露光区域を露光し、かつ走査サイクルの終了時に第2の露光区域の第1の部分を露光した後に一時的に停止することができる。
【0031】
1回の走査作動は、部分的にしか露光されない第2の露光区域をもたらす。第2の露光区域は、第2の走査方向の第2の走査作動において更に露光することができ、露光線量は、第2の露光区域が、第1の走査作動において受光された放射線線量に対して相補的な第2の放射線線量を受光し、それによって第2の走査作動が完了した後に、第2の露光区域内で均一な露光線量が受光されるように、第2の走査作動中に制御することができる。言い換えれば、第2の露光区域を完全に露光するのに、異なる時間において実施される2つの別々の走査作動が使用される。全体工程の詳細に基づいて、第2の走査方向は、第1の走査方向と反対に向けることができ、又は第1の走査方向と同じ方向とすることができる。
【0032】
第2の走査作動を第1の走査作動の終了直後に始めることは可能であろうが、第1の走査作動と第2の走査作動の間に1回又はそれよりも多い割り込み走査作動が実施されることが好ましい。この場合に、第2の露光区域上での第2の走査作動は、基板上で少なくとも1回の第3の走査作動が実施された後に実施される。従って、基板の全ての必要露光区域を露光するのに、基板は、全体工程中の定められた時点で1つ又はそれよりも多くの部分的に露光される露光区域を含むことができる。この場合に、露光の完了は、後の時点において全体工程が完了する前に達成される。完全露光段階及び部分露光段階のこの時間的空間的な配分は、高いスループットを有する非常に効率的な全体工程に寄与する。
【0033】
一般的に、第1の露光と第2の露光の間には1回又はそれよりも多いステップ作動が実施される。例えば、第1の走査作動が完了した後に、ステップ作動において、第1の走査方向と垂直に露光区域の幅に対応する長さだけ基板を移動することができる。それによって次の走査作動の前に、それまで未露光であった新しい露光区域に到達することができる。スキャン及びステップ作動のシーケンスは、変えることができる。
【0034】
新しい方法に従って及び/又は新しいマスクを利用することによって基板を露光することができる走査投影露光系は、一般的に、作動波長付近の波長帯域からの放射線を放出することができる放射線源と、放射線源からの放射線を受光し、照明放射線を成形してマスクのパターン上に向けられる照明ビームを形成するように構成された照明系と、パターンの像を基板上に投影するための投影対物系とを含む。照明系は、定められた時点においてマスク上に入射する照明放射線の照明スリットの有効長さ寸法と有効幅寸法とを定めるように構成されたレチクルマスキングデバイスを含む。走査投影露光系は、上記及び以下に説明する方法及びマスクによって基板を露光するように構成及び制御することができる。
【0035】
一部の場合には、構成的修正を伴わずに従来の系を使用することができる。例えば、レチクル台が、新しい型のマスクを利用するほど十分な移動長さを与える場合には、レチクル台における修正は不要である。更に、従来のレチクルマスキングデバイスへの構成的修正は不要である。新しい方法は、作動時に系の作動を支配する制御プログラムのそれぞれの部分を変更することによって実施することができる。
【0036】
以上の及び他の特質は、特許請求の範囲だけでなく本明細書及び図面においても見ることができ、個々の特性は、本発明の実施形態として及び他の分野において単独又は部分結合のいずれかで使用することができ、かつ有利で特許可能な実施形態を個々に表すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、投影リソグラフィをステップ−アンド−スキャンモードに用いて大規模集積半導体構成要素を製作するために与えられたウェーハスキャナWSの形態にあるマイクロリソグラフィ投影露光系を略示している。
【0039】
投影露光系は、193nmの作動波長を有するエキシマレーザを含む1次放射線源Sを含む。放射線源からの放射線を光学的に放射線源の下流に配置された照明系ILLが受光し、照明系ILLは、光学的にその下流に配置された投影対物系POの物体平面OSに対応する平面内で照明視野IFを均一に照明する。照明系ILLは、可変コヒーレンス度を有する従来の軸上照明、軸外照明、特に、環状照明(照明系の瞳面内に環形の照明区域を有する)、二重極照明、又は四重極照明のような異なる照明モードを設定するためのデバイスを含む。
【0040】
照明系の下流には、マスク上に形成されたパターンPATが投影対物系POの物体平面OS内に位置するようにマスクMを保持して操作するためのデバイスRSTが配置される。従って、物体平面を「マスク平面」又は「レチクル平面」で表す場合もある。通常「レチクル台」と呼ぶマスクを保持して操作するためのデバイスRSTは、マスクホルダと、走査作動中にマスクを投影対物系の物体平面OSと平行に(すなわち、投影対物系及び照明系の光学軸と垂直に)走査方向(Y方向)に移動することを可能にするスキャナドライバとを含む。
【0041】
縮小投影対物系POは、マスクによって与えられるパターンの像を4:1の縮小スケール(倍率│β│=0.25)でフォトレジスト層で被覆されたウェーハWの形態にある感光基板上に結像するように設計される。他の縮小比、例えば、5:1又は8:1が可能である。
【0042】
感光基板として機能するウェーハWは、フォトレジスト層を有する巨視的に平坦な基板面SSが投影対物系の像平面ISと実質的に一致するように配置される。ウェーハは、それをマスクMと平行に同期して移動するためのスキャナドライバを含むデバイスWST(ウェーハ台)によって保持される。
【0043】
図1の挿入図に略示すように、照明系ILLは、矩形形状を有する照明視野IFを生成するように構成される。照明視野のサイズ及び形状は、マスク上のパターンの像を投影対物系の像平面に投影するために実際に使用される投影対物系の有効物体視野のサイズ及び形状を決定する。
【0044】
照明視野は、走査方向と平行に長さAを有し、走査方向に対して垂直な走査直交方向に幅B>Aを有し、投影対物系の光学軸OAを含まない(変形視野)。これらの寸法は、アスペクト比AR=B/A>1によって定めることができる。多くの実施形態において、アスペクト比は、例えば、2:1から10:1までの範囲にあるとすることができる。像平面内の矩形の有効像視野は同じアスペクト比を有するが、絶対寸法は、投影対物系の縮小比を用いてスケーリングされる。
【0045】
照明視野は、対物系の「設計物体視野」で表す円形区域OFD内に内接する。設計物体視野OFD内では、物体平面の全ての視野点が、意図するリソグラフィ工程に対して十分に良好な結像忠実性を有する。
【0046】
投影対物系POは、略示するレンズを複数個含むことができ(レンズの一般的な個数は、多くの場合に、10又は15よりも大きいレンズ個数)、適切な場合は他の透過光学構成要素を含むことができる。投影対物系は屈折投影対物系とすることができ、この場合に、屈折力を有する全ての光学要素が透過レンズである。反射屈折投影対物系が形成されるように、投影対物系は、レンズに加えて、少なくとも1つの凹ミラーのような少なくとも1つのパワー保有ミラーを含むことができる。投影対物系は、完全に反射性(反射)のものとすることができる。
【0047】
照明視野IFは、照明することができる区域である。特定の工程において実際に使用される照明スリットの寸法は、照明視野のそれぞれの寸法を超えない場合がある。照明視野よりも小さい照明スリットを使用することができる。
【0048】
照明系ILL内には、定められた時点での照明スリットの有効長さ寸法と有効幅寸法とを定めるために、レチクルマスキング(REMA)デバイスRMDが設けられる。
図2は、実施形態の略軸線方向図を示している。レチクルマスキングデバイスは、本出願では「REMAブレード」とも呼ぶ2対の可動不透過(遮光)ブレードを含む。第1のブレード対Y1、Y2は、走査方向(Y方向)に対して直交して位置合わせされた直線ブレード縁部EY1、EY2を有する。以下では、これらのブレードを「Yブレード」で表している。Yブレードの縁部の間の走査方向の距離EDYは、定められた時点での照明スリットの有効長さを決定する。第1の対のブレードは、互いに独立して走査方向に直線移動することができる。第2のブレード対X1、X2(「Xブレード」とも表す)は、第1の対の縁部EY1、EY2に対して直交する直線縁部EX1、EX2を有する。これらの縁部の間の走査直交方向(X方向)の距離は、照明スリットの有効幅を決定する。ブレードコントローラBCが、ブレードの移動を制御する。一般的な走査作動ではXブレードが静止状態にあるのに対して、Yブレードは、走査作動中にマスク及び基板の移動と同期して移動することができる。
【0049】
レチクルマスキングデバイスRMDのブレードは、照明系内で、マスクパターンが置かれた平面OSと光学的に共役な中間視野平面IFPに配置される。レチクルマスキングデバイスのブレードとマスクの間には、定められた拡大比を有する光学結像系OBが挿入される。時にREMA対物系で表すこの対物系は、ブレードの縁部をマスク上に鮮明に結像するように構成される。
【0050】
第1のブレード対(Yブレード)のブレードY1、Y2は、走査作動において移動している基板上の各特定点上に入射する放射線エネルギの線量を可動シャッター機構方式で制御するのに重要な役割を果たす。ここで従来の作動モードを
図3に関して詳細に説明する。
【0051】
図3は、レチクルマスキングデバイスRMDのブレードY1、Y2と、パターン区域PA内にパターンPATが設けられたマスクMと、露光される基板Wとの相対位置を示す非常に概略的な図面である。基板は、互いに直交する行と列で配置された複数の矩形露光区域を含む。基板上の1つの露光区域EAが略示されている。YブレードY1、Y2は、投影対物系の物体平面OSと光学的に共役な照明系の中間視野平面IFPに配置される。パターンPATは、物体平面OS内でマスクの投影対物系に対面する側に配置される。基板面SSは、物体平面OSと光学的に共役な投影対物系の像平面ISに配置される。
【0052】
走査工程の理解を容易にするために、
図3には、レチクルマスキングデバイスのブレードをマスク上に結像する光学結像系OB、及びマスクのパターンを基板上に結像する投影対物系を示していない。同じくこの簡略化した表現形式は、中間視野平面IFPと物体平面OSの間に配置された光学結像系が、通常はブレードの移動方向とマスクの移動方向とを逆転させることも示していない。更に、この簡略化した表現形式は、一般的に基板上にパターンの縮小像を生成し、多くの場合に、走査作動中にマスクと基板を逆平行方向に移動することを必要とする投影対物系の効果を割愛している。
【0053】
簡略化の結果として、マスクMと基板Wの両方は、Y方向と平行な走査作動中に図の右手側から左手側に移動する。
【0054】
図3の概略図面は、照明スリットの直接投影がマスク上に当たるように、放射線伝播方向に見てマスクの前にあるレチクルマスキング系のブレードを示すことに注意されたい。この場合に、照明スリットは、ブレード縁部の影によって範囲が限られる(
図9を参照されたい)。レチクルマスキングデバイスの平面とマスクの間に結像対物系が存在する場合には、ブレード縁部の像がマスク上に当たる。両方の場合を
図3に関する説明で網羅するように意図している。
【0055】
マスクM上のパターンPATは、走査方向に対して直交する直線前縁FE及び直線後縁REと、走査方向と平行な直線側縁(図示せず)とによって境界が定められた単一の矩形パターン区域内に露光区域EA上に結像しなければならない全ての構造を含む。
【0056】
破線に示すのは、走査作動中の照明スリットILSのY方向の最大長さである照明スリット全長FISLである。
【0057】
走査サイクルが始まる前では、放射線がマスクに向けてブレード縁部の間を通過することができないように対向するブレード縁部EY1とEY2の間の距離EDYがゼロ又はゼロの近くになるように、第1の対のブレードY1、Y2は実質的に閉じられている。走査方向のマスクの走査移動が始まると、パターンPAの前縁FEは、閉じたスリットのブレード縁部の位置に位置合わせされた位置に来る。この状況を
図3Aに示している。
【0058】
マスクが継続してマスク走査方向に(左に)前進すると、照明スリットは開き始める(
図3B)。この目的を実現するために、ブレードコントローラBCは、YブレードY2のブレード縁部EY2がパターンの前縁FEに位置合わせされて留まるように、第2のYブレードY2の走査方向の移動を開始する。同時に、対向するYブレードY1は静止状態に留まる。その結果、照明スリットは開き、縁部距離EDYは、マスクの走査方向の移動速度と比例する速度で増大する。
【0059】
左手側のYブレードY2は、パターンの前方でパターンと共に走査方向に移動するので、このブレードを「先行ブレードY2」とも表し、対応する縁部EY2を「先行縁部」で表している。一方、対向する縁部EY1は、最初は静止状態に留まり、従って、走査方向に遅れる。従って、このブレードを「追随ブレードY1」で表す場合があり、このブレードは「追随縁部EY1」を含む。
【0060】
図3Bは、照明放射線がマスク上に当たり、投影対物系を通過して基板上に投影されるように、照明スリットILSが照明スリット全長FISLの何分の一かまで開いた状況を示している。
図3Bに示す時点では、露光部分EX1が、一部の露光放射線を既に受光している。露光部分内の各単位面積が受光する露光線量は、一般的に、単位面積が放射線を受光した期間の長さに比例する。従って、露光区域EAの前縁FEEAに最も近い部分は、前縁から遠く離れた部分よりも多い放射線を受光している。露光区域内の部分によって既に受光された放射線の量を
図3に「0」から「4」までの整数で略示している。大きい数字は、一般的に、既に受光された高い放射線線量を意味し、ゼロ(0)は、未露光部分を示している。図における整数は、それぞれの露光の後、すなわち、基板が更に先に進む前に受光された放射線線量に対応する。この概略図が示唆していないものとして、パルス光源が利用される場合の小さい線量量子化効果を除き、前縁FEEAと、露光区域のうちで追随縁部EY1に位置合わせされた部分との間に受光放射線線量の走査方向の連続勾配が存在する。
【0061】
先行ブレードは、先行縁部EY2と追随縁部EY1の間の距離がY方向の照明スリット全長FISLに対応する最終位置まで、マスクと同期して更に移動される。この状況を
図3Cに示している。この時点で、露光区域の前縁FEEAの近くの領域は、更に多くの露光放射線を受光している。同時に、基板上の露光部分EX1は、Y方向のサイズが増大している。この段階では、露光区域EAのうちで、依然としていかなる露光放射線も受光しておらず、従って、放射線線量が依然としてゼロ(0)であるいくつかの部分が依然として存在する。
【0062】
先行縁部EY2の前進は、追随縁部EY1までの距離EDYが照明スリット全長に対応すると停止する。この段階では、露光区域のうちで露光されていないいくつかの部分が依然として存在する。露光区域の新しい未露光部分が照明スリットから放射線を受光するように、マスクと基板とは両方共にそれぞれの走査方向に更に移動される。
図3Dは、パターンPATの後縁REが、追随ブレードY1の追随縁部EY1に位置合わせされた時点での状況を示している。この段階で、露光区域EAの各部分は、限られた放射線線量を受光している。前縁FEEAに近い部分は、既に照明スリットの外側に移動してしまっており、必要とされる最大放射線線量(4という数字で表す)を受光している。実際の受光放射線レベルは、照明スリットの区域内で左から右に連続して低下する。
【0063】
先行縁部EY2の前進はここで停止するが、マスク及び基板の前進は中断されない。しかし、ブレードコントローラBCは、追随縁部EY1が、移動するマスク上のパターンの後縁REに位置合わせされると直ちにその後のYブレードY1の移動を開始する。追随ブレードの移動の開始をきっかけに、ブレード縁部の間の距離EDYは減少し、それによって照明スリット長さが、照明スリット全長よりも小さい値に減少する。
図3Eは、静止状態にある先行ブレードY2と移動する追随ブレードY1とを有する中間の状況を示している。露光区域EA全体が既に放射線エネルギを受け入れている。移動方向に照明スリットよりも大きい部分は、既に全ての必要放射線線量を受光しており、それに対して照明スリット内で放射線を依然として受光する残りの部分では、受光放射線の線量は、左から右に減少する。
【0064】
最後に
図3Fに示すように、追随ブレードY1の縁部EY1は、静止状態にある先行縁部EY2の近くまで走査方向に前進するか又はそれと接触し、それによって照明スリットは閉まる。閉鎖移動中には、露光区域の最終部分が、照明スリットの完全な閉鎖時に露光区域の各単位面積が実質的に同じ放射線線量を受光する程度まで減少した量の放射線を受光する。それによって均一な露光線量を受光した露光区域EAに対する走査サイクルが終了する。
【0065】
従来的には、次に、露光された露光区域EAの隣に置かれた次の露光区域が類似の方式で露光される。この目的を実現するために、基板ホルダは、基板を走査直交方向と平行に(作図面と垂直に)露光区域の走査直交方向の幅に実質的に対応する移動長さだけ移動する。基板のこのステップ作動は、未露光区域をこの時点では依然として閉じられている照明スリットの隣に運ぶ。次に、次の露光区域に対する新しい走査作動が開始される。この走査作動では、マスク及び基板は、
図3に関して記載した第1の露光区域に対する走査作動と比較してそれぞれ反対の方向に移動する。先行Yブレードの役割と追随Yブレードの役割とが逆転する。
【0066】
図3及び対応する説明から、従来の走査作動における露光区域EA上のパターンPATの1回の走査は、基板を露光区域の走査方向の長さと、投影対物系の像平面に現れる照明スリット全長に対応する長さとの和に対応する移動長さにわたって移動することを必要とする。各露光後にREMAブレードが閉じることに起因して、露光部分の走査方向の全長は移動長さよりも小さい。かなりの放射線量がブレードによって遮光され、基板を露光することに寄与しない。言い換えれば、放射線のうちで露光に使用することができる部分が「廃棄」される。
【0067】
マイクロリソグラフィのための新型のマスク及び走査露光系の修正された作動モードが使用される場合には、(高価な)光の使用及びスループット(単位時間当たりの完全に露光される露光区域の個数)に関する改善を得ることができる。
【0068】
図4は、本発明の第1の実施形態によるマスクMの概略平面図を示している。マスクの基板SUBは、上部にパターンPATが形成された平面基板面を有する。マスクが、深紫外放射線(DUV)又は真空紫外放射線(VUV)を使用するマイクロリソグラフィのための透過マスクである場合には、基板は、例えば、合成石英(溶融シリカ)又はカルシウムフッ化物で製造することができる。パターンは、マスクを通過する放射線の一部を遮光するのに適するクロム又は他の材料によって形成することができる。これに代えてマスクは、位相シフトマスクとすることができる。マスクは、EUV系内に使用するべき場合に必須である反射マスクとすることができる。
【0069】
マスクは、投影露光系のY方向と平行なマスク走査方向に走査される走査作動に使用されるように構成される。パターンPATは、マスク走査方向と平行な全長TLと、それに対して垂直な走査直交方向の幅W1とを有する全体として矩形の形状を有する。パターンのパターン構造を特定の機能を有する3つのパターン区域に再分割することができる。第1のパターン区域PA1は、マスク走査方向と平行に第1の長さL1にわたって延び、それと垂直に第1の幅W1を有する。長さと幅の間のアスペクト比L1/W1は1よりも大きく、露光工程において走査中に露光されることになる対応する露光区域(又はダイ)の長さと幅の間のアスペクト比に対応する。長さ方向及び幅方向の絶対寸法は、露光区域のそれぞれの寸法よりも1/|β|倍大きく、ここで|β|は、投影対物系の拡大比の絶対値である。拡大比|β|は、例えば、1/4又は1/5とすることができる。
【0070】
第2のパターン区域PA2は、マスク走査方向に第1のパターン区域PA1の直近の基板上に形成される。矩形の第2のパターン区域は、マスク走査方向に第2の長さL2にわたって延び、それに対して第2の幅は第1の幅W1と同一である。長さと幅の間のアスペクト比が、第1のパターン区域PA1内では1よりも大きく、第2のパターン区域PA2内では1よりも小さくなるように、第2の長さL2は、第1の長さL1よりも実質的に小さい。
【0071】
第2のパターン区域PA2内に形成された第2のパターンPAT2は、第1のパターン区域PA1内に形成された第1のパターンPAT1のうちで対応する部分CPに構造的と同一である。対応部分CPは、第2のパターンPAT2に対してマスク走査方向に第1の長さL1だけオフセットされる。対応部分CPは、第2の長さL2に対応する長さCPLを走査方向に有する。
【0072】
第1のパターンPAT1は、露光区域上に形成される層の構造全体に対応するが、第2のパターンPAT2は、同じ構造のうちの特定の分量又は部分領域にしか対応しない。言い換えれば、第1のパターンPAT1は完全なパターンであり(単一の露光区域を完全に露光するのに適する)、それに対して第2のパターンは不完全なパターンである。
【0073】
第2のパターン区域PA2のこのマスク走査方向の絶対寸法は、マスクが使用される投影露光系のマスク平面に照明系によって生成される照明スリットの全長に対応するようになっている。
【0074】
照明スリットが矩形である場合には、照明スリットの全長は、マスク走査方向と平行に延びる矩形の短辺の長さに対応する。照明スリットが弧形状を有する場合には、照明スリットの全長は、マスク走査方向に照明スリットの2つの弓形境界線の間で測定された距離に対応する。
【0075】
パターン区域の絶対寸法及び相対寸法に対しては、以下の数値例から更に深く理解することができる。現在最新の投影露光系及び投影露光工程は、一般的に、走査方向に33mmの最大長さを有する基板上の露光区域(ダイ)を露光するように適合されている。4:1の縮小比を有する投影対物系が使用される場合には、この長さは第1の長さL1=33×4=132mmに対応する。その一方、マスクのパターンが置かれた平面内で測定された最大照明スリット長さは、例えば、基板が配置された像平面内の4mmと8mmの間のスリット長さに対応する16mmと32mmの間にあるとすることができる。従って、典型的な場合に、第1のパターン区域PA1及び第2のパターン区域PA1それぞれの長さの間の長さ比L1/L2は、例えば、132/16から132/32までの範囲にあるとすることができる。一般的に、L1に対して66mm≦L1≦132mmという条件が成り立つものとし、L2に対して16mm≦L2≦32mmという条件が成り立つとすることができる。
【0076】
次に、本発明の実施形態によるマスクを利用する走査工程を
図5及び
図7に関して説明する。この説明は、
図3に関する走査工程の説明と部分的に同様である。従って、可能な場合には、同じか又は類似の参照識別名及び術語を使用する。部分
図5Aから部分
図5Cの各々は、YブレードY1、Y2を有するレチクルマスキングデバイスRMD、投影対物系の物体平面OSに位置決めされるように配置されたパターンPATを担持するマスクM、及び投影対物系の像平面ISに配置された平坦な基板面を有する半導体ウェーハの形態にある基板Wの断面を示している。YブレードY1、Y2は、
図3の従来系におけるYブレードと物理的に同じとすることができる。
【0077】
図5Aに示す状況は、
図3Aに示す状況に対応し、この場合に、ブレード縁部EY1、EY2は互いに接触状態にあり、又は非常に近いので、ブレードは閉じられ、放射線はマスクに向けて伝播することができない。マスクMは、
図4のマスクMと類似の構成、又はその変形を有することができる。具体的には、マスクM上のパターンPATは、走査方向に第1の長さL1にわたって延びる矩形の第1のパターン区域PA1と、走査方向に第1のパターン区域の直近の第2のパターン区域PA2とを有する。第2のパターン区域の第2の長さL2は、第1のパターン区域の長さL1よりも有意に小さい。
【0078】
第1のパターン区域PA1内に含まれる第1のパターンは、基板の露光区域(ダイ)上に形成される層の構造全体に対応する。それとは対照的に、第2のパターン区域PA2内に形成された第2のパターンは、このパターン全体の一部分にしか対応しない。具体的には、第2のパターンは、第2のパターンからオフセットされて第2のパターン区域PA2から離れた第1のパターン区域PA1の前方部分の内部に位置する対応部分CPのパターン構造に対応する。この図では、同一の構造を有する部分を記号「X」に示している。
【0079】
基板Wは、走査方向と平行な行と、それに対して垂直な列とに位置合わせされた複数の矩形露光区域を含む。
図5は、走査方向に互いに直近する2つの露光区域、すなわち、第1の露光区域EA1と第2の露光区域EA2を示している。第1の露光区域と第2の露光区域は、長さ方向と幅方向の両方で同一の寸法を有する。
図3の表現形式の場合と同様に、露光区域の選択される単位面積内で受光される放射線線量を数字で表しており、この場合に、数字「0」は、
図5Aに示す状況では放射線がそれぞれの部分によって受光されていないことを示している。
【0080】
図5Aは、走査サイクルのまさに開始時点の状況を示しており、この場合に、YブレードY1、Y2は依然として閉じられている。マスクMは、第1のパターン区域PA1の直線前縁FEPA1が、照明スリットの縁部と同一平面にあるブレードの縁部との整列状態にある開始位置にある。照明スリットは破線によって範囲が限られ、照明スリット全長FISLを有する。同じく基板Wは、第1の露光区域の前縁FEEA1がパターンPATの前縁FEPA1に位置合わせされた開始位置にある。言い換えれば、パターン区域PA1の前縁FEPA1の像が、第1の露光区域FEEA1の前縁FEEA1上に当たる。
【0081】
マスクM及び基板がそれぞれの走査方向(右から左、矢印を参照されたい)に前進すると、照明スリットは開き始める。照明スリットの開放は、第2のYブレードY2の走査方向の移動によって行われ、同時に第1のYブレードY1は静止状態に留まる。第2のブレードの移動速度は、照明スリットが完全に開けられ、それによってブレードの縁部EY1、EY2の間の距離が照明スリット全長FISLに対応するまで、移動する板Y2の縁部EY2が第1のパターン区域の前縁FEPA1に位置合わせされて留まるようにマスク及び基板の移動速度に対して調節される。次に、第2のYブレードの開放移動は停止され、一方、マスク及び基板は、
図3B及び
図3Cに関して記載したものと類似の方式で走査方向に前進し続ける。
【0082】
図5Bは、第1のパターン区域PA1の後縁REPA1が、静止状態の第1のYブレードY1の縁部EY1に位置合わせされるような程度までマスクが走査方向に前進した状況を示している。この状況は、
図3Dに示す状況に対応する。この段階で、第1の露光区域EA1のうちで第1の露光区域の前縁FEEA1に近い部分が既に完全に露光されており(数字3に示す)、一方、照明スリットに配置された残りの部分はある放射線線量を受光しており、線量は、走査方向に前方の部分から第1の露光区域の後縁REEA1に向けて連続して減少する。この時点で、第2露光区域EA2は依然として完全に未露光状態にある。
【0083】
従来の走査サイクルでは、次の走査サイクルが始まるまで照明スリットを閉じていずれかの放射線が第2の露光区域EA2上に当たるのを阻止するように、第1のブレードY1(追随ブレード)は、前縁EY1を第1の露光区域の後縁REEA1に位置合わせされて保つために基板の移動速度に対応する速度で第2のブレードY2に向けてこの時点で移動し始めると考えられる。
【0084】
しかし、新しい走査工程の場合はそうではない。代わりに新しい走査工程は、照明スリットがこの時点で開いた状態に留まり、その間にマスク及び基板がそれぞれの走査移動を継続することによって特徴付けられる。その結果、マスクの第2のパターン区域PA2が照明スリット内に進入し、同時に第2の露光区域EA2の第1の部分EA2−1が照明スリット内に前進し、それによって第2のパターン区域PA2内に含まれる第2のパターンの像が、第2の露光区域EA2の第1の部分P1上に形成される。
図5では、
図5Bと
図5Cの間の移行が、照明スリットが照明スリット全長FISLで開いた状態に留まり、その間にマスクと基板とが同期して前進し、それによって
図5で説明する走査サイクルでは、第1の露光区域EA1全体と、第2の露光区域EA2のうちで第1の露光区域に隣接する第1の部分P1とが、第1の走査方向の1回だけの連続的な第1の走査作動において露光されることを示している。
【0085】
マスクが走査方向に進み、それによって第2のパターン区域の後縁REPA2が、静止状態にある追随ブレードY1のブレード縁部EY1に位置合わせされた状態で、マスクM及び基板Wの前進は停止される。
【0086】
同時に、更に別の放射線が、レチクルマスキングデバイスRMDの対向するブレード縁部の間に形成された開放スリット上に当たるのが停止される。この目的を実現するために、この時点で1次放射線源を一時的に消灯することができる。これに代えて、いずれかの放射線がレチクルマスキングデバイス上に当たることを阻止するために、光源とレチクルマスキングデバイスの間に配置されたシャッターを閉じることができる。その結果、ブレード縁部の間に形成された開放スリットを通って更に別の放射線が基板に到達することはない。
【0087】
一般的にDUV又はVUV又はEUVの範囲で作動する走査露光系は、パルス放射線源を使用する。例えば、VUV系では、一般的にパルスレーザ光源が利用される。従来、1つの露光区域を露光するのに、定められたパルス繰り返し数での一連のパルス(バースト)が使用される。各バーストの後に、次の露光区域を露光するために次のバーストが放出される前のステップ作動を実施することを可能にするために、休止期間(パルスのない時間間隔)が導入される。バースト間の休止期間を含む断続的作動は、光源の過熱を回避するためにも好ましい。本工程では、パルスの放出は、バーストを用いて第1の露光区域を露光し、更に走査サイクルの終了時に第2の露光区域EA2の第1の部分P1を露光した後に一時的に停止される。
【0088】
この走査サイクルでは、1回の走査中のマスクMの移動長さは、基本的に第1のパターン区域PA1内に含まれる走査ターゲットパターンの走査方向の長さと、マスク平面内での照明スリット全長FISLとの和に対応する。しかし、従来の走査作動よりも多い放射線が基板を露光することが可能になり、それによって第1の露光区域EA1全体が均一かつ完全に露光され、更に、第2の露光区域EA2の部分P1も、部分的のみであるが露光される。従って、基板の露光区域のサイズと基板の必要移動長さとの間の比が、従来の工程におけるものよりも高い。
【0089】
上述したように、第1の走査移動は、第2の露光区域EA2全体が完全に露光される前に停止され、従って、第2の露光区域は部分的にしか露光されない。基板上のそれぞれの部分によって受光される放射線線量の空間配分を更に例示するために、
図6は、2つの隣接露光区域EA1、EA2を含む基板面上の略斜視図と、走査方向(Y方向)の異なる場所の上で受光される放射線線量Dを示すグラフとを示している。
【0090】
直前に説明した第1の走査作動中に、照明スリットは、基板に対して第1の走査方向SD1に移動する。実際の工程では、照明スリットの場所は空間的に固定された状態に留まり、それに対してマスク及び基板が、照明スリットに対して反対方向に移動することに注意されたい。
【0091】
図6では、第1の走査作動中に受光される放射線線量を実線D1によって表している。第1の露光区域EA1が均一に露光されること、すなわち、第1の露光区域内の各場所が同じ放射線線量を受光していることが明らかである。第2の露光区域EA2の第1の部分P1も一部の放射線量を受光しており、それに対して第2の露光区域EA2の残りの第2の部分P2は依然としていかなる放射線も受光しておらず、従って、第1の走査作動の後には残りの部分は未露光(露光されていない)状態である。第1の部分P1内で受光される放射線線量は、第1の露光区域EA1に隣接する側から第1の露光区域EA2に対向する第2の露光区域EA2の第2の部分P2に向けて第1の放射線線量プロフィールD1に従って連続して(線形勾配で)減少することが明らかである。
【0092】
次に、本発明の実施形態によるステップ−アンド−スキャン手順の更に別の作動を
図7に関して説明する。部分
図7Aから部分
図7Gの各々は、走査方向と平行な行R1、R2等と、それに対して垂直なX方向の列C1、C2等とに配置されたいくつかの矩形露光区域を含む基板面の一部分の上の概略平面図を示している。上述したように、基板は、走査作動においてY方向と平行に移動される。ステップ作動は、露光区域の異なる行の間で切り換えを行うために、基板を走査方向に対して垂直なX方向に移動する。これらの概略図では、照明スリットILSの位置をハッチングされた矩形で表している。露光区域アレイ内の露光区域の場所は、露光区域のそれぞれの行と列で定めることができる。例えば、
図7Aにおいて、行R1及び列C1内の第1の露光区域EA1をR1−C1とも表し、それに対して走査方向に近い第2の露光区域EA2をR1−C2で表している。
【0093】
図7Aは、
図5及び
図6に関して記載した第1の走査作動の終了時の状況を示している。第1の露光区域EA1(R1−C1)は完全に露光される(「2」に示す)。第2の露光区域EA2(L1−C2)の第1の部分P1は部分的に露光され、それに対して第2の露光区域の残りの部分は未露光状態(「0」に示す)。照明スリットILSは第1の部分P1の上にある。
【0094】
この時点で、すなわち、第1の走査移動の終了時に、更に別の放射線が第1の部分P1の上に入射しないように、レチクルマスキングデバイス上への光束は、例えば、光源を消灯すること又は光源とレチクルマスキングデバイスの間に配置されたシャッターを閉じることによって停止される。Yブレードは、照明スリット全長で完全に開いた状態に留まることに注意されたい。
【0095】
ここでウェーハ台は、照明スリットILSが今度は第2の行R2内で近い露光区域R2−C2上に当たる(
図7Bを参照されたい)ようにステップ作動を実施する。この時点で、光がレチクルマスキングデバイスの完全に開いたブレードを通って当たるように光源を点灯すること又はシャッターを開くことによって次の走査作動が始まる。この場合に、走査作動は、第1の行R1に使用された走査方向とは反対の走査方向に基板を移動することによって実施される。走査移動の移動長さは、露光区域の全長に走査方向の照明スリット全長を加えた和に対応し、従って、走査移動が停止された後に、照明スリットILSは、完全に露光された露光区域R2−C1の右隣に置かれる。露光区域R2−C2の第1の部分P1は、必要な全線量の一部分しか受光していない(
図7Cを参照されたい)。
【0096】
次に、照明スリットを第2の行R2の直近の第3の行R3の露光区域の上にシフトさせるために、X方向と平行な基板の更に別のステップ作動が実施される。それに続いて、第1の行R1に対する走査作動と同じ走査方向に走査作動が実施される。基板の全体の移動が蛇行形状を有するように、スキャン及びステップ作動は交替する。露光区域の1つ置きの行の走査作動は同じ方向にあり、それに対して互いに直近にある行における走査移動は反対方向にある。
【0097】
スキャン及びステップ作動は、第1の露光区域の列(例えば、列C1)全体が完全に露光されるまで交替して繰り返され、一方、それに近い第2の列C2内の全ての露光区域は、第1の露光区域の近くに位置するそれぞれの第1の部分P1内で部分的にしか露光されない。
【0098】
次に、基板は、第2の列C2の部分的に露光された露光区域の露光を完了するために実施される第2の走査作動セットに向けて開始位置に移動される。照明スポットILSが露光区域R4−C2の未露光の第2の部分P2の直近に位置決めされる開始位置を
図7Dに示している。この走査サイクルの開始時点で、放射線がレチクルマスキングデバイスの開いたyブレードを通過することを可能にするために、照明光が点灯される(又はシャッターが開く)。次に、照明スリットILSが部分的に露光された露光区域R4−C2にわたって完全に露光された隣の露光区域R4−C1に向けて基板に対して移動するように、基板が走査方向(Y方向)に移動される。
【0099】
この走査作動の終了時(
図7Eを参照されたい)には、第2の露光区域R4−C2の各部分は同じ放射線線量を受光しており、完全な露光状態(「2」)にある。次に、光が消灯され又はシャッターが閉じられ、その後に、基板がステップ作動を実行して、照明スリットILSを部分的に露光された露光区域R3−C2の第1の部分の
図7Fに示す位置の中にもたらす。次に、この露光区域に対する走査作動が、最初に光を点灯し(又はシャッターを開き)、次に、露光区域R3−C2が、前の走査作動において露光された隣の露光区域R4−C2の走査方向と反対の方向に走査されるように、基板をY方向と平行に移動することによって実施される。
【0100】
次に、第2の列C2内の全ての露光区域が完全かつ均一に露光され、その全ての部分内で必要とされる放射線線量を受光し終えるまで、ステップ段階とスキャン段階が交互に繰り返される。
【0101】
図7の概略平面図表現は、この図で解説した第1及び第2の列C1、C2内の露光区域に隣接する露光区域で何が起こるかを詳細に示していない。しかし、照明スリットILSが基板の一部分の上に位置決めされ、光源によって照明される場合には、必ず露光区域の一部分が部分的に露光されることは明らかである。言い換えれば、露光区域全体が、走査作動の終了時にレチクルマスキングブレードを閉じることなく走査作動で露光される場合には、必ず隣の露光区域が部分的に露光されることになる。説明した工程では、これを後に用いて、部分的に露光された露光区域の露光をその後の第2の走査作動で完了する。例えば、
図7F、
図7Gに示すように、走査作動は、照明スリットが露光される露光区域の外側に位置する状態で始まる必要はない。代わりに、走査の開始前の照明スリットの開始位置は、露光される露光区域の完全に内側にあるとすることができる。
【0102】
この例示的なステップ−アンド−スキャン作動から、各第2の露光区域(例えば、
図7AのEA2)は、第2の走査作動が同じ第2の露光区域EA2上に実施される前の何回かのその後の走査作動中に部分的にしか露光されない状態に留まることになることは明らかである。第2の走査作動では、第2の露光区域EA2は、第1の走査方向に受光した放射線線量に対して相補的な放射線線量を受光し、それによってこの第2の走査作動が完了した後に、第2の露光区域が第1の露光区域内で受光された露光線量に対応する均一な露光線量を受光し終えるように露光線量が第2の走査作動中に制御される中で、第2の露光区域EA2は、第2の走査方向の走査によって更に続いて露光される。第2の走査作動は、第1の走査方向SD1と反対の第2の走査方向SD2に向く(
図6を参照されたい)、又は同じ方向に向く(
図7F及び
図7Gを参照されたい)場合がある。
【0103】
図6に示すように、第2の露光区域EA2の第1の部分P1は、放射線線量D1及びD2が各回に線形線量勾配を生成するように走査方向に変化する2回で露光される。第1及び第2の走査作動において生成される勾配は、受光される全線量(ΣD1D2)が、1回の走査で隣接部分EA1(線量D1)及びP2(線量D2)内で受光される露光レベルに対応するように相補的である。
【0104】
新しい工程の一部の利点は、以下のように理解することができる。1回の走査の完了後に閉じるレチクルマスキングブレードを使用する従来の走査工程では、露光される露光区域の全長に照明スリットの長さに対応する長さを加えたものにわたって基板を移動することを必要とする。ブレードは走査作動の一部分で閉じられるので、部分的な光損失がもたらされる。更に、露光区域の完全な露光は、露光区域上である一定量の放射線を受光することを必要とするので、部分光損失が、工程全体のスループットを低下させることになる。一方、新しい工程により、ブレードは、特定の露光区域に対する走査作動が完了した後に閉じられない。その代わりに隣接露光区域が部分的に露光される。部分的に露光された露光区域の露光は、後で第2の露光区域も必要とされる放射線線量で完全に露光されるように、相補的な放射線線量プロフィールを与える第2の走査作動において完了する。
【0105】
新しい方法の利点は、基本的には、対応部分CPのパターン構造の複製を含む第2のパターン区域PA2を第1のパターン区域PA1の片側に有する基本的に
図4に示すマスクに対応するマスクを用いて得ることができる。半導体ウェーハのような基板上の露光区域の行と列に沿って露光を行うために、スキャン及びステップ作動からなる特定のシーケンスを使用することができる。
【0106】
図8の平面図に略示する第2の実施形態による別のタイプのマスクを用いて、スキャン及びステップ作動において必要とされる移動シーケンスに関して更なる自由度を得ることができる。このマスクは、
図4に関して記載したものと類似の第1のパターンPAT1を含む第1のパターン区域PA1と、第2のパターンPAT2を含む第2のパターン区域PA2とを含む。従って、ここでは、それぞれの説明を繰り返さない。これに加えて、マスクは、基板SUB上でマスク走査方向(Y方向)に第1のパターン区域PA1に近い第3のパターン区域PA3を含む。第3のパターン区域PA3は、マスク走査方向に第3の長さL3にわたって延びる第3のパターンPAT3を含む。走査直交方向(X方向)の第3の幅は、第1及び第2のパターン区域PA1、PA2の第1の幅と同じである。第3の長さL3は、第2の長さL2に対応する。第3のパターンPAT3は、第1のパターンPAT1のうちで対応する部分CP3に等しく、この対応部分は、第3のパターンPAT3に対してマスク走査方向に第1の長さL1だけオフセットされ、第3の長さL3と同一の長さCPL3を有する。
【0107】
言い換えれば、第3のパターンPAT3は、第1のパターンPAT1のうちで第2のパターンPAT2に近い部分CP3の複製である。一般的に、第2のパターンPAT2と第3のパターンPAT3は同一ではない。しかし、ある一定のパターンでは、これらは同一とすることができる。オリジナルパターンPAT1の両方の側にオリジナルPAT1のうちで対応する部分の複製を有するマスクは、基板全体に対する露光を完了するのに必要とされるスキャン及びステップ作動のシーケンスに関してより多くの柔軟性を可能にする。
【0108】
本発明の一部の実施形態を上記に詳細に記載した。しかし、本発明の開示は、これらの実施形態に限定されない。例えば、他の実施形態において、例えば、約248nm、157nm、又は126nmで放出する他の1次放射線源を使用することができる。完全に反射性の(反射)光学系及び反射マスクに関しては、極紫外(EUV)スペクトル範囲のための放射線源を使用することができる。
図9に関してEUVリソグラフィのための実施形態を説明する。
【0109】
図9は、投影リソグラフィをステップ−アンド−スキャンモードに用いて大規模集積半導体構成要素を製作するためのウェーハスキャナWSの形態にあるEUVマイクロリソグラフィ投影露光系の構成要素を略示している。
【0110】
投影露光系は、極紫外(EUV)スペクトル範囲の放射線を放出する1次放射線源RSを含む。1次放射線源は、レーザプラズマ光源、ガス放電光源、又はシンクロトロン放射線を使用する放射線源とすることができる。EUV放射線源は、例えば、5nmと15nmの間の波長の1次放射線を供給することができる。EUV放射線は、屈折光学要素によって影響を及ぼすことができないので、照明系ILL及び投影対物系POの全ての光学要素は反射光学要素である。
【0111】
放射線源RSから放出された1次放射線RADは、コレクターCによって集光され、照明系ILL内にもたらされる。照明系は、混合ユニットMIXと、テレスコープ光学系TOと、視野形成ミラーFFMとを含む。照明系は、放射線を形成し、投影対物系の物体平面OS内又はその直近に位置決めされた照明視野IFを照明する。照明視野は、一般的にスリット形のものであり、かつ矩形形状又は弧形状を有することができる。混合ユニットMIXは、第1のファセットミラーFAC1と、その下流にあるファセットミラーFAC2とからなる。第1のファセットミラーは、投影対物系の物体平面OSに光学的に共役な位置に存在する。第2のファセットミラーFAC2は、投影対物系の瞳平面に光学的に共役な照明系の瞳平面に配置される。第1のファセットミラーFAC1の単一のファセットからの放射線は、第2のファセットミラーFAC2と、テレスコープ光学系TOの構成要素と、かすめ入射で作動される視野形成ミラーFMとを含む光学結像サブ系によって投影対物系の物体平面に結像される。従って、第1のファセットミラーにおける空間強度分布は、照明視野IF内の空間強度分布を決定する。第2のファセットミラーFAC2における空間強度分布は、照明視野IF内の照明角度分布を決定する。
【0112】
系の作動中に、反射マスクMは、マスク上に形成されたか又はマスクによって生成されたパターンが物体平面OSに位置決めされるように、投影対物系の物体平面OS又はその近くに配置される。投影対物系POは反射(全反射性)投影対物系であり、マスクのパターンPATを基板Wの感放射線基板面SS上に結像するために合計で6つの曲面ミラーM1からM6を含む。
【0113】
縮小投影対物系POは、パターンマスクMの像を4:1の縮小スケール(倍率│β│=0.25)で感光基板上に結像するように設計される。他の縮小比、例えば、5:1又は8:1が可能である。
【0114】
照明系の下流には、マスクMを保持して操作するためのデバイスRSTが、パターンが投影対物系POの物体平面OS内に位置するように配置される。従って、物体平面を「マスク平面」又は「レチクル平面」で表すことができる。通常は「レチクル台」と呼ばれるマスクを保持して操作するためのデバイスRSTは、マスクホルダと、走査作動中に投影対物系の物体平面OSと平行(すなわち、投影対物系の基準軸AXに対して垂直)な走査方向(Y方向)にマスクを移動することを可能にするスキャナドライバSCMとを含む。
【0115】
感光基板Wは、フォトレジスト層を有する巨視的に平坦な基板面SSが投影対物系の像平面ISと実質的に一致するように配置される。ウェーハは、それをマスクMと同期してマスクMと平行に移動するためのスキャナドライバSCWを含むデバイスWST(ウェーハ台)によって保持される。
【0116】
露光系の全ての光学構成要素は、投影系の作動が真空下に実施されるように排気されたハウジングHに含まれる。
【0117】
この一般構造を有するEUVマイクロリソグラフィ投影露光系は、例えば、WO 2009/100856 A1又はWO 2010/049020 A1に示されている。これらの文献の開示内容は、引用によって本明細書に組み込まれている。
【0118】
定められた時点で反射マスクM上の照明スリットの有効長さ寸法と有効幅寸法とを定めるために設けられたレチクルマスキングデバイスRMDは、マスクMのパターン付きの反射側の直前に配置された2対の可動遮光ブレード(REMAブレード)を含む。平面図は、
図2に示すものと同様とすることができる。
図9には、各々が系のy方向と平行に移動可能なYブレードY1及びY2を略示している。移動は、系の中央制御ユニットCUに接続されたか又はその一部であるブレードコントローラBCによって制御される。ブレードとマスクのパターン付きの面との間の距離は、物体平面OS内のマスク上に形成されたブレード縁部EY1、EY2の影がマスク上の照明スリットのY方向の境界を鮮明に定めるように、1ミリメートル又は2ミリメートル程度又はそれ未満とすることができる。同じことは、直交するX方向のXブレードにも適用される。従って、レチクルマスキングデバイスのブレードとマスクの間には結像対物系(中継系)は存在せず、レチクルマスキングブレードの縁部によって範囲が限られた開口の投影がマスク上に当たって照明スリットを形成する。
【0119】
EUV投影露光系の他の実施形態は、レチクルマスキングデバイスのブレードとマスクの間に反射中継光学系を含むことができる。この一般構成を有するEUV投影系は、例えば、US 2002/0054660 A1に示されている。
【0120】
マスクMのパターンは、本発明の実施形態に従って構成される。具体的には、パターンは、
図4又は
図8に関する説明に従って構成することができる。この説明のそれぞれの部分は、反射マスクのパターン構造を説明するために本明細書に組み込まれたものである。レチクルマスキングデバイスのブレードと移動するマスク及び基板との協働作動は、
図5から
図7に関して説明した作動と同じか又は類似である場合がある。