(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記極細繊維が、ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる極細繊維を含む請求項1〜3の何れか1項に記載のセシウム回収シート。
セシウムを含有する海水からセシウムを回収除去するための海水浄化材であり、請求項1〜6の何れか1項に記載のセシウム回収シートを含むことを特徴とする海水浄化材。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るセシウム回収シートは、例えば、
図1のセシウム回収シート10の拡大模式図に示すように、繊維1から形成された不織布5と
、紺青2を固着して繊維1の表面に付着す
るポリウレタン3とを含む。そして
、ポリウレタン3は、不織布5の通水性を保持させるために、内部空隙4を閉塞させないように存在している。
【0019】
不織布の繊維の種類は特に限定されない。その具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリトリメチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエステルエラストマー等のポリエステル系樹脂;ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド610,芳香族ポリアミド,ポリアミドエラストマー等のポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;オレフィン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂等繊維形成能を有する合成樹脂から形成された繊維や、各種天然繊維や半合成繊維等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。合成繊維の製造方法としては、樹脂材料を融点以上の温度で溶融させてエクストルーダーから押し出して溶融紡糸する方法や、ポリマー溶液を細孔より押し出し溶媒を蒸発させる乾式溶液紡糸する方法や、高分子溶液を非溶剤中に紡出する湿式溶液紡糸する方法等、とくに限定なく用いられる。
【0020】
上記各種繊維の中では、ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂から形成された繊維が、溶融紡糸性に優れていることに加えて、耐放射線性にも優れているために放射線による分解を抑制できる点から好ましい。
【0021】
不織布を形成する繊維の繊度は、平均繊度0.5デシテックス以下の極細繊維が繊維密度を緻密にできるために
、紺青の単位体積当たりの充填密度を高めることができる点や、吸水速度が速い点等から好ましい。
【0022】
不織布は、任意の繊維長(例えば18〜110mm)にカットしてステープル化した短繊維を、カード,クロスラッパー,ランダムウェッバー,絡合装置などを用いて絡合させて得られた短繊維の不織布;溶融紡糸ノズルから繊維形成性ポリマーを吐出した直後に高速気体で吹き飛ばして繊維を細くする、いわゆるメルトブロー法やフラッシュ紡糸などの方法を用いて得られた不織布;エレクトロスピニング法や抄紙法を使用してナノファイバーを作製して形成される不織布;スパンボンド法などにより紡糸した長繊維をカットすることなく、移動式ネットなどの捕集面上に堆積させて実質的に無延伸の長繊維からなる長繊維の不織布等、いずれの製造方法で得られた不織布でもよい。これらの中では、長繊維の不織布が繊維を緻密にすることができ、また、不織布の経時的な耐久性が高い点から好ましい。
【0023】
紺青は、通常、水に不溶または難溶の粒子である
。紺青は通常、粒子であり、その平均粒子径は特に限定されないが、0.01〜10μm、さらには0.01〜1μm、とくには0.02〜0.5μmであることが繊維表面に均一に付着し、脱落しにくい点から好ましい。
【0024】
ポリウレタンは、繊維表面や不織布内部の空隙
に紺青を固定できる樹脂であれば特に限定なく用いられる
。
【0025】
ポリウレタンは、不織布の通水性を維持するための内部空隙を閉塞しないように存在している。不織布の内部空隙を閉塞させた場合には、吸水性が低下し、その結果、セシウムイオンの回収効率が低下するためである。具体的な形態としては、
図1に示すように
、ポリウレタン3は、不織布5の繊維1表面に付着して粒子状に点在していたり、
図2に示すように、不織布5の内部空隙にその内部空隙4を閉塞させない程度に凝集体またはスポンジ状に存在していたりするような形態が挙げられる。これらの中では
、ポリウレタンを不織布の繊維表面に付着させて粒子状に点在させることが生産性の観点等から好ましい
。ポリウレタンを不織布の繊維表面に付着させて粒子状に点在させるためには、例えば、水乳化性ポリウレタンエラストマ
ーをポリウレタンとして用いることが特に好ましい。また、水乳化
性ポリウレタンは水を吸収しやすいために
、紺青とセシウムイオンを含有する水との接触性にも優れている。
【0026】
水乳化
性ポリウレタンには、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、炭素数3以下のポリアルキレングリコール基等の親水性基を有する単量体を共重合単位として含有させることにより、水に対する自己乳化性を付与することができる。そして、このような親水性官能基により
、紺青とセシウムイオンを含有する水との濡れ性が高まる。
【0027】
水乳化性のポリウレタンは、例えば、平均分子量500〜3000の高分子ポリオールと有機ポリイソシアネ−トと、必要に応じて鎖伸長剤とを、所定のモル比で含有し、親水性基を有する単量体を含む単量体成分を溶融重合法、塊状重合法、溶液重合法などにより重合させることにより得られる各種のポリウレタン系樹脂が挙げられる。
【0028】
高分子ポリオールの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,ポリテトラメチレングリコール,ポリ(メチルテトラメチレングリコール),ポリ(メチルペンタン)ジオール等のポリエーテル系ポリオール及びその共重合体;ポリブチレンアジペートジオール,ポリブチレンセバケートジオール,ポリヘキサメチレンアジペートジオール,ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)ジオール,ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンセバケート)ジオール,ポリカプロラクトンジオールなどのポリエステル系ポリオール及びその共重合体;ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(ポリヘキシレンカーボネートジオール),ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンカーボネート)ジオール,ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオールなどのポリカーボネート系ポリオール及びその共重合体;ポリエステルカーボネートポリオールなどが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ポリカーボネート系ポリオールが、耐放射線性に優れているために放射線による分解を抑制できる点から好ましい。
【0029】
なお、高分子ポリオールとしてポリエーテル系ポリオールを含む場合、高分子ポリオール中のポリオキシエチレン(−CH
2−CH
2−O−)単位の含有割合が、10meq/g以下であることが好ましい。ポリオキシエチレン(−CH
2−CH
2−O−)は耐放射線性が低いために、ポリオキシエチレン単位の含有割合が高すぎる場合には、セシウム回収シートの経時的な保管安定性が低くなる傾向がある。
【0030】
有機ポリイソシアネ−トの具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート,ノルボルネンジイソシアネート,水添メチレンジイソシアネート等の脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート(無黄変型ジイソシアネート)や、フェニレンジイソシアネート,2,4−トリレンジイソシアネート,2,6−トリレンジイソシアネート,4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート,キシリレンジイソシアネート等の芳香環ジイソシアネート等が挙げられる。
【0031】
鎖伸長剤の具体例としては、例えば、ヒドラジン,エチレンジアミン,プロピレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン,ノナメチレンジアミン,キシリレンジアミン,イソホロンジアミン,ピペラジンおよびその誘導体、アジピン酸ジヒドラジド,イソフタル酸ジヒドラジド等のジアミン類;ジエチレントリアミン等のトリアミン類;トリエチレンテトラミン等のテトラミン類;エチレングリコール,プロピレングリコール,1,4−ブタンジオール,1,6−ヘキサンジオール,1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン,1,4−シクロヘキサンジオールなどのジオール類;トリメチロールプロパン等のトリオール類;ペンタエリスリトール等のペンタオール類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ヒドラジン、ピペラジン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミンおよびその誘導体、エチレントリアミンなどのトリアミンの中から2〜4種類を組み合わせて用いること、とくに、ヒドラジン及びその誘導体は酸化防止効果を有するために、セシウム回収シートの経時的な保管安定性が向上する点から好ましい。
【0032】
また、水乳化
性ポリウレタンは、架橋構造を形成していることが好ましい。一般に、水乳化
性ポリウレタンが親水性官能基を有する場合には、水で膨潤しやすく吸水率が高くなる傾向がある。水に対する膨潤性が高すぎる場合には、経時的に膨潤によ
りポリウレタンが不織布から脱離しやすくなるおそれがある。このような場合には、水乳化
性ポリウレタンに架橋構造を形成させることにより、吸水率を制御して、水乳化
性ポリウレタンが膨潤しすぎることを抑制することができる
。水乳化性ポリウレタンの場合、ポリウレタンを形成するモノマー単位が有する官能基と反応し得る、官能基を分子内に2個以上含有する架橋剤や、ポリイソシアネート系化合物、多官能ブロックイソシアネート系化合物等の自己架橋性の化合物を添加することにより、架橋構造を形成させることができる。
【0033】
モノマー単位が有する官能基と架橋剤の官能基との組み合わせとしては、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とシクロカーボネート基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボニル基とヒドラジン誘導体またはヒドラジド誘導体などが挙げられる。これらの中では、カルボキシル基を有するモノマー単位とオキサゾリン基、カルボジイミド基またはエポキシ基を有する架橋剤と組み合わせ、水酸基またはアミノ基を有するモノマー単位とブロックイソシアネート基を有する架橋剤との組み合わせ、およびカルボニル基を有するモノマー単位とヒドラジン誘導体またはヒドラジド誘導体との組み合わせが、架橋形成が容易である点から好ましい。
【0034】
親水性
のポリウレタンは、130℃の熱水に対する膨潤度が0.3〜300%、さらには、1〜100%、とくには5〜50%であることが好ましい。このような親水性
のポリウレタンは水を吸水しやすいとともに、膨潤による不織布からの脱離を起こしにくいために
、紺青とセシウムイオンを含有する水との接触性を充分に維持しながら、保管性を維持することができる。
【0035】
また
、ポリウレタンは、必要に応じて、浸透剤、消泡剤、滑剤、撥水剤、撥油剤、増粘剤、増量剤、硬化促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、防黴剤、発泡剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物、染料、などを含有してもよい。
【0036】
不織布を形成する繊維の質量に対す
るポリウレタンの割合としては、0.01〜50質量%、さらには0.05〜30質量%、とくには0.5〜20質量%であることが好ましい
。ポリウレタンの割合が高すぎる場合には、不織布中の空隙の割合が少なくなることにより、吸水性が低下する傾向がある。また
、ポリウレタンの割合が低すぎる場合には、充分な量
の紺青を固着できなかったり
、紺青が脱落しやすくなったりする傾向がある。
【0037】
また、不織布を形成する繊維の質量に対す
る紺青の割合としては、0.00001〜50質量%、さらには0.001〜30質量%、とくには0.01〜20質量%であることが好ましい
。紺青の割合が低すぎる場合には、セシウムの回収効率が低下し
、紺青の割合が高すぎる場合には
、紺青を充分に固着させるために
はポリウレタンの割合も高める必要があり、その場合には、不織布中の内部空隙の割合が少なくなる傾向がある。
【0038】
また
、ポリウレタンの量(A)に対す
る紺青の量(B)の比率(B/A)としては
、1/3〜10/であ
る。B/Aが高すぎる場合には
、紺青の固着性が不充分になり、使用時や経時的
に紺青が脱落しやすくなる傾向がある。また、B/Aが低すぎる場合には、セシウムの回収効率が低下したり、充分な量
の紺青を付与する場合には不織布中の空隙の割合が少なくなり、吸水性が低下する傾向がある。
【0039】
不織布に
、紺青を固着し
たポリウレタンを、通水性を維持するための内部空隙を閉塞しないように存在させる方法としては、例えば
、紺青を分散させ
たポリウレタンエマルジョンを不織布に含浸させた後
、ポリウレタンを凝固させる方法等が挙げられる。不織布に高分子弾性体
のポリウレタンエマルジョンを含浸する方法としては、例えば、ナイフコーター、バーコーター、又はロールコーターを用いて、または、ディッピングする方法が挙げられる。
【0040】
なお
、紺青を固着し
たポリウレタンは、不織布の表層に偏在するように付着させた場合には
、紺青とセシウムを含有する水との接触性がより優れる。不織布の表層
に紺青を固着し
たポリウレタンを偏在するように付着させるためには、不織布
に紺青を分散させ
たポリウレタンエマルジョンを表面から塗布することにより含浸させた後、表面及び裏面から、好ましくは110〜150℃、0.5〜30分間程度加熱することにより
、紺青を分散させ
たポリウレタンエマルジョンを表面に移行させるマイグレーション処理を行うことが好ましい。
【0041】
ポリウレタンが点在している場合
、ポリウレタンの平均粒子径としては、100μm以下、さらには50μm以下、とくには、10μm以下、ことには5μm以下であることが好ましい。
【0042】
次に、本発明のセシウム回収シートの中でも、とくに好ましい形態である、極細繊維の不織布の繊維表面に
、紺青を固着したポリウレタンを付着させてなるセシウム回収シートの製造方法の一例について詳しく説明する。
【0043】
本製造方法においては、はじめに、混合紡糸方式や複合紡糸方式などの方法を用いて得られる海島型繊維のような極細繊維発生型繊維を溶融紡糸して、繊維ウェブを製造する。
【0044】
なお、本実施形態においては、極細繊維発生型繊維として海島型繊維を用いる場合について詳しく説明するが、海島型繊維以外の極細繊維発生型繊維を用いても、また、極細繊維発生型繊維を用いずに、直接極細繊維を紡糸してもよい。なお、海島型繊維以外の極細繊維発生型繊維の具体例としては、紡糸直後に複数の極細繊維が軽く接着されて形成され、機械的操作により解きほぐされることにより複数の極細繊維が形成されるような剥離分割型繊維や、溶融紡糸工程において花弁状に複数の樹脂を交互に集合させてなる花弁型繊維等が挙げられ、極細繊維を形成しうる繊維であれば特に限定されずに用いられる。
【0045】
海島型繊維の島成分であり、極細繊維を形成するための樹脂の具体例としては、上述したような、PET等のポリエステル系樹脂や、ポリアミド6等のポリアミド系樹脂が用いられる。
【0046】
なお、極細繊維を形成するための樹脂には、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、各種添加剤、具体的には、例えば、触媒,着色防止剤,耐熱剤,難燃剤,滑剤,防汚剤,蛍光増白剤,艶消剤,着色剤,光沢改良剤,制電剤,芳香剤,消臭剤,抗菌剤,防ダニ剤,無機微粒子等を必要に応じて配合してもよい。
【0047】
海島型繊維の海成分は、海島型繊維を極細繊維の繊維束に変換する際に、溶剤により選択的に抽出除去されたり、熱水または分解剤により選択的に分解除去されたりする成分である。海島型繊維の海成分を形成するための樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,エチレン−プロピレン共重合体,エチレン−酢酸ビニル共重合体,スチレン−エチレン共重合体,スチレン−アクリル共重合体,水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール(PVA)等のポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。これらの中では、極細繊維化後の繊維表面に皮膜を残存させることにより、得られるセシウム回収シートの吸水性を向上させる点から、PVAが特に好ましい。
【0048】
繊維ウェブ形成の方法としては、スパンボンド法などにより紡糸した海島型長繊維の長繊維をカットすることなく長繊維ウェブにする方法や、メルトブロー法等のように、溶融繊維を気流で延伸しながら吹き飛ばして、短繊維ウェブを形成する方法や、長繊維をカットして短繊維にした後、カード、クロスラッパー、ランダムウェッバーなどを用いて短繊維ウェブを形成する方法等であってもよい。これらの中では、長繊維ウェブが、繊維の嵩高性が抑制されて繊維密度が高くなるために
、紺青の含有濃度を高めることができ、また、緻密な不織布が形成されるために吸水性が向上する点から好ましい。本製造方法では、代表例として、長繊維を用いる場合について詳しく説明する。
【0049】
海島型繊維の長繊維ウェブの製造方法としては、例えば、海成分ポリマーと島成分ポリマーとを複合紡糸用口金から押出して海島型繊維を溶融紡糸し、口金から吐出された溶融状態の海島型繊維を冷却装置により冷却した後、エアジェットノズルなどの吸引装置を用いて、目的の繊度となるように1000〜6000m/分の引取速度に相当する速度の高速気流により牽引細化し、移動式ネットなどの捕集面上に堆積させることにより形成される。また、必要に応じて、得られたウェブをプレスすることにより部分的に圧着して形態を安定化させる処理をしてもよい。
【0050】
このようにして得られたウェブを複数枚重ね、クロスラッパー等を用いてラッピング処理することにより、海島型繊維の繊維ウェブが形成される。
【0051】
そして、海島型繊維の繊維ウェブを絡合処理することにより、海島型繊維の繊維絡合シートが形成される。具体的には、海島型繊維の繊維ウェブに、その両外側から同時または交互に少なくとも1つ以上のバーブが貫通する条件でニードルパンチ処理を行う。なお、絡合処理方法は、ニードルパンチの代わりに、水流を用いた水流交絡機で絡合する方法等を用いてもよい。このようにして、海島型繊維の繊維絡合シートが形成される。また、海島型繊維の繊維絡合シートは、必要に応じて熱収縮処理が施されてもよい。熱収縮処理することにより、絡合状態がさらに緻密化される。また、熱プレスすることにより、さらに緻密化してもよい。
【0052】
上述のようにして得られた海島型繊維の繊維絡合シート中に含まれる、海島型繊維を極細繊維化することにより、海島型繊維が極細繊維化され、極細繊維の不織布が形成される。具体的には、例えば、海島型繊維の繊維絡合シートを、島成分を形成する樹脂を溶解及び分解せず、海成分を形成する樹脂のみを選択的に溶解または分解するような溶剤または分解剤で処理する方法が挙げられる。
【0053】
極細繊維の平均繊度は0.5デシテックス以下であり、0.001〜0.5デシテックス、さらには0.05〜0.2デシテックスであることが好ましい。極細繊維の平均繊度が高すぎる場合には、繊維が嵩高くなって繊維密度が低くなり、吸水性
や紺青の担持性が低下す
る。また、極細繊維の平均繊度が低すぎる場合には繊維強力が低くなりすぎて得られるセシウム回収シートの機械的特性が低くなる。
【0054】
このようにして、極細繊維の不織布が得られる。極細繊維の不織布の目付は特に限定されないが、80〜800g/m
2、さらには150〜500g/m
2程度であることが好ましい。このような目付けの場合には
、紺青を高濃度で担持させることができ、また、経時的に劣化しにくい点から好ましい。なお、このようにして得られた不織布は、サーキュラー染色機中で70℃で30分間リラックスしたり、水流絡合機で処理する、あるいは起毛ブラシやサンドペーパーで起毛するなどの手段によって、繊維束状に形成された極細繊維の拘束を解いてばらばらにするのが好ましい。このような処理の後
にポリウレタンのエマルジョンを付与すると、繊維束の内部
にポリウレタンが充分に含浸する。その結果、繊維束の内部の極細繊維の表面に
も紺青を固着し
たポリウレタンが侵入するために
、紺青の充填密度を高めることができるとともに
、ポリウレタンが繊維束の内部に固定されることにより、不織布から脱離しにくくなる。
【0055】
そして、得られた極細繊維の不織布に
、ポリウレタンで紺青を固着させる
。ポリウレタンとしては、上述したよう
な紺青を繊維表面に固定できる樹脂であれば特に限定なく用いられるが、水乳化性ポリウレタ
ンが吸水性の点から特に好ましい。
【0056】
不織布
にポリウレタンで紺青を固着させる方法の具体例としては、例えば、所定量
の紺青の粒子を分散させ
たポリウレタンのエマルジョンを調整し、不織布に含浸させた後、乾燥することにより凝固させる。
【0057】
なお
、ポリウレタンのエマルジョンを不織布に含浸させて乾燥する場合、表面からエマルジョンの乾燥が進行するにつれて内層のエマルジョンを不織布の表層に移行させ、表層
にポリウレタンを遍在させる、所謂、マイグレーションをさせることが好ましい。マイグレーションを生じさせた場合、不織布の厚み方向において
、紺青の粒子を固着し
たポリウレタンの分布が表層に偏在することにより、セシウムの吸着性がより向上する。
【0058】
このようにして、不織布を形成する極細繊維の表面に
、ポリウレタンによ
り紺青が固着されてなるセシウム回収シートが得られる。
【0059】
なお、上述した製造方法においては、海島型繊維を極細繊維化した後
に紺青の粒子を含むエマルジョンを含浸付与する方法について説明したが、海島型繊維を極細繊維化する前
に紺青の粒子を含むエマルジョンを含浸付与し、その後に極細繊維化してもよい。海島型繊維を極細繊維化する前
に紺青の粒子を含むエマルジョンを含浸付与し、その後に極細繊維化した場合には、例えば、不織布を形成する繊維束間に形成される内部空隙
にポリウレタンに固定され
た紺青が閉じ込められたように固定される。このような形態で、不織布中
に紺青が固定された場合には
、紺青とセシウムを含有する水との接触性がさらに向上し、高い効率でセシウムを回収することができる。
【0060】
極細繊維の不織布の見かけ密度は、0.05〜1.2g/cm
3、さらには0.08〜0.7g/cm
3であることが繊維が緻密になり
、紺青の充填密度を高めることができ、その結果、セシウムの回収効率を向上させることができるとともに、セシウム回収シートの減容化も図ることができる点から好ましい。また
、紺青の粒子を固着し
たポリウレタンが閉じ込められて外部に脱落しにくくなる点からも好ましい。
【0061】
このようにして得られた極細繊維の不織布に
、紺青を固着したバインダ樹脂を固定させてなるセシウム回収シート
の紺青の充填密度は、特に限定されないが、例えばプルシアンブルーの場合、0.1〜1000mg/cm
3、さらには、0.1〜500mg/cm
3、とくには0.5〜250mg/cm
3、程度の高充填が可能になる。
【0062】
以上、説明した本実施形態のセシウム回収シートは、淡水中、海水中、土壌中等に拡散した放射性セシウムを効率的に回収することに用いられる。具体的には、放射性セシウムで汚染された、海、川、池、湖沼等に、本実施形態のセシウム回収シートを所定の時間浸漬して放射性セシウムを吸着させ、吸着が平衡吸着量に達した後に、セシウム回収シートを回収することにより、海、川、池、湖沼等に拡散した放射性セシウムを濃縮して回収することができる。また、回収されたセシウム回収シートは、焼却することができるために放射性廃棄物の減容化が可能である。
【0063】
なお、海水中には、セシウムイオン以外にナトリウムイオンやカリウムイオン等の他のアルカリ金属イオンが存在するが、本発明者らの実験では、本実施形態のセシウム回収シートは海水中においても淡水中と同様の効率でセシウムイオンのみを選択的に回収し、淡水中と同様の平衡吸着量に達することを確認した。一方、ゼオライト、シリカ、カーボンブラック等のような吸着材の場合には、海水中のセシウムイオン以外のアルカリ金属イオンも同等に吸着するために、セシウムイオンの選択的な吸着性が極めて低いことを確認した。具体的には、例えばプルシアンブルーの代わりに、ゼオライトを用いた場合、ゼオライトの海水中のセシウムイオンの吸着率はプルシアンブルーを用いた場合に比べて10分の1以下であった。従って、本実施形態のセシウム回収シートは海水からセシウムイオンを回収除去するための海水浄化材としても好ましく用いられる。
【0064】
また、本実施形態の回収シートは、担持させ
た紺青と水との接触性に優れているために吸着速度が速く、平衡吸着量に達する時間が短い。本発明者らの実験では、数分〜数十分の範囲で平衡吸着量に達した実験結果を得ている。この効果は
、紺青を不織布の繊維の外に均質に存在させていることに起因すると思われる。
【0065】
また、本実施形態のセシウム回収シートは、土壌中に拡散した放射性セシウムを効率的に吸着し、回収することにも用いられる。土壌を汚染した放射性セシウムは、セシウムイオンの形態で、土に含まれる粘土、有機物、無機物等と強く結びつく。本実施形態のセシウム回収シートは、土壌に敷設することで、土壌中のセシウムイオンを効率的に回収できる。土壌中の放射性セシウムイオンは、弱アニオン性の土壌中でイオン結合を介して補足されていると考えられており、その一部は水分でイオン化している
。紺青はセシウムイオンを吸着するが、アルカリ金属イオンの中でセシウムイオンのみを選択的に吸着することから、土壌よりも高い選択吸着性を有している。このため、セシウムイオンを吸着した土壌と本実施形態のセシウム回収シートとが接触した場合、乖離平衡
が紺青側に移動し、土壌中のセシウムイオン
が紺青に移動し、濃縮されると思われる。
【0066】
なお、土壌に敷設する場合には、水分を介在させることが回収効率を向上させる点から好ましい。従って、本実施形態のセシウム回収シートを土壌に敷設する場合には、土壌が乾燥している場合には、水を撒いてからセシウム回収シートを敷設するか、水を撒いた土壌にセシウム回収シートを敷設することが好ましい。また、この場合において、土壌中の水分をセシウム回収シート側に移行させるためには、極細繊維の不織布
に紺青を担持させたセシウム回収シートを用いることが、毛細管現象による高い吸水性により、セシウムを短時間で回収することができる点から好ましい。また、極細繊維の不織布に吸収された水分は、その毛細管現象により、速やかに面内に広がり、その表面から蒸散されやすいために、汚染水からセシウムイオンのみを回収し、水分を蒸散させるために、吸水の飽和が起こりにくい。
【0067】
また、本実施形態のセシウム回収シートは、水浄化用のフィルタとしても用いられる。福島県第1原子力発電所及びその周囲の地域においては、放射能の高さから、未だ、水道設備の復旧工事が充分に進行しておらず、多くの地域で水不足が常態化しており、水が貴重になっている。このような地域において、水の再利用は重要な課題になっている。本実施形態のセシウム回収シートは水浄化用のフィルタとしても効果的に用いられうる。具体的には、所定の形状に切断したセシウム回収シートを水浄化用のフィルターカートリッジに挿入し、水浄化装置の通水口から汚染水を供給し、出水口から処理水を放出する。このような浄水処理によれば、水浄化用のフィルタがセシウムを回収するために、汚染した水の再利用に寄与すると思われる。
【0068】
また、本実施形態のセシウム回収シートは、漏水遮蔽シートの保護基材等としても用いられる。福島県第1原子力発電所及びその周囲の地域で発生した放射性廃棄物は、焼却されて、廃棄物処分場に掘られた埋め立て穴に埋め立てられる。このような埋め立て穴には、廃棄物から漏出する汚染水が外部に漏れることを遮蔽するための複数層の漏水遮蔽シートが埋設される。通常、このような漏水遮蔽シートには、漏水検知器が張り巡らされており、漏水箇所の検知は可能ではある。しかし、漏水箇所が検知されても、その修復に相当の時間を要する。本実施形態のセシウム回収シートを漏水遮蔽シートの保護基材として用いた場合には、漏水検知から修復までのタイムラグの間に、放射性セシウムが外部に漏出することを抑制することができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0070】
[実施例1]
水溶性熱可塑性PVA系樹脂を海成分に用い、イソフタル酸変性度6モル%のPETを島成分とし、繊維1本あたりの島数が25島で、海成分/島成分が25/75(重量比)となるような溶融複合紡糸用口金を用い、260℃で海島型のフィラメントを口金より吐出した。そして、紡糸速度が3700m/minとなるようにエジェクター圧力を調整し、平均繊度2.1デシテックスの海島型長繊維をネット上に捕集した。そしてネット上に捕集された海島型長繊維を表面温度42℃の金属ロールで軽く押さえることにより表面の毛羽立ちを抑えてネットから剥離し、さらに、表面温度75℃の格子柄の金属ロールとバックロールとの間を通過させて熱プレスすることにより、表面の極細繊維が仮融着した目付31g/m
2の長繊維ウェブを得た。
【0071】
そして、得られた長繊維ウェブをクロスラッピングすることにより8枚重ね、これに、針折れ防止油剤をスプレーした。そして、針先端からバーブまでの距離が3.2mmの6バーブ針を用い、針深度8.3mmで両面から交互に3300パンチ/cm
2のパンチ密度でニードルパンチングすることにより、目付320g/m
2の絡合された長繊維ウェブを得た。
【0072】
そして、長繊維ウェブを巻き取りライン速度10m/分で70℃の熱水中に14秒間浸漬することにより熱収縮させた。さらに95℃の熱水中でディップニップ処理を繰り返すことにより変性PVAを溶解除去することにより、平均繊度0.1デシテックスの極細長繊維を25本含む繊維束が3次元的に交絡した極細繊維の不織布が得られた。そして、不織布は、スライス及びバフィング処理することにより見かけ密度が0.62g/cm
3で、厚み0.82mmの不織布に調整された。
【0073】
一方、ポリウレタンエマルジョンに、平均粒子系0.08μmのプルシアンブル
ー(紺青、大日精化(株)製の商品名:MILORIBLUE905)を、プルシアンブルー/ポリウレタン固形分=1/3の質量比で分散させた。なお、ポリウレタンエマルジョンは、130℃における熱水膨潤率が9質量%であり、ソフトセグメントがポリへキシレンカーボネートジオールとポリメチルペンタンジオールの70:30の混合物からなり、ハードセグメントが主として水添メチレンジイソシアネートからなるポリオキシエチレン単位の含有量が0meq/gの架橋を形成する水乳化性ポリウレタンのエマルジョンであった。
【0074】
なお、130℃における熱水膨潤率は、厚さ200μmのポリウレタンフィルムを加圧下130℃で60分間熱水処理し、50℃に冷却後、ピンセットで取り出した。そして表面に付着した水をろ紙でふき取り、重量を測定した。浸漬前の重量に対する増加した重量の割合を熱水膨潤率とした。
【0075】
そして、厚み調整された不織布にプルシアンブルーを分散させたエマルジョンを不織布に対しポリウレタン固形分で6質量%になるように含浸付与し、乾燥した。このようにして、極細繊維の不織布と、極細繊維の表面にプルシアンブルーを固着して付着するポリウレタンとを含むセシウム回収シートを得た。このセシウム回収シートのプルシアンブルー
の充填密度は12.5mg/cm
3であった。また、極細繊維は繊維束を形成しており、繊維束の内部にプルシアンブルーを固着して付着するポリウレタンが含浸していた。得られたセシウム回収シートのSEM写真を
図3に示す。このようにして得られたセシウム回収シートを以下の方法に従って評価した。
【0076】
[塩化セシウム水溶液中のセシウムイオンの回収評価]
5×5mmに切り出したセシウム回収シートを10ppmの塩化セシウム水溶液、または0.01ppmの塩化セシウム水溶液に浸漬した。そして、平衡吸着量に達するまでの時間、及び、そのときのセシウムイオン濃度を測定した。そして、不織布の体積1cm
3あたりに吸着されたセシウムイオンの量を算出した。なお、吸着されたセシウムイオン濃度は誘電結合プラズマ発光分光分析器を用いて測定した。
【0077】
10ppmの塩化セシウム水溶液の場合には、約15分間で平衡吸着量の1/2に達し、そのときの不織布1cm
3あたりに吸着されたセシウムイオン量は、64.5μg/cm
3であった。また、0.01ppmの塩化セシウム水溶液の場合には、約20分間で平衡吸着量の1/2に達し、そのときの不織布1cm
3あたりに吸着されたセシウムイオン量は、6.2μg/cm
3であった。
【0078】
[塩化セシウムを溶解させた海水からのセシウムイオンの回収評価]
上記「塩化セシウム水溶液中のセシウムイオンの回収評価」において、10ppmの塩化セシウム水溶液を調製する際に、真水に塩化セシウムを溶解する代わりに、瀬戸内海で採取した海水に塩化セシウムを溶解した以外は同様にして、10ppmの塩化セシウム(海)水溶液を調製した。そして、この塩化セシウム(海)水溶液を用いた以外は同様にして、平衡吸着量に達するまでの時間、及び、そのときのセシウムイオン濃度を測定した。そして、不織布の体積1cm
3あたりに吸着されたセシウムイオンの量を算出した。その結果、真水を用いたときとほぼ同様に、約15分間で平衡吸着量の1/2に達し、そのときの不織布1cm
3あたりに吸着されたセシウムイオン量は、68.3μg/cm
3であった。
【0079】
[汚染水中の放射性セシウムの回収評価]
5×5mmに切り出したセシウム回収シートの所定量の断片を円筒状のカラムに充填した。なお、セシウム回収シートの総量は単位時間あたりに汚染水がシートに接触する時間の逆数で表される空間速度(SV)がSV=6になるような量に調整した。そして、カラムに、福島県から入手した343Bq/Lの放射性セシウムを含む汚染水を7時間連続通水した。7時間連続通水後の不織布1cm
3あたりに吸着された放射性セシウムの量は2.7Bq/cm
3であった。
【0080】
[汚染土壌中の放射性セシウムの回収評価]
セシウム回収シートに霧吹きで水分を付与した後、主にセシウム137とセシウム134に起因すると思われる汚染土壌(最大7.4μシーベルト/時の放射線量を示す)を覆い数日間放置した後、土壌改良シートの覆いを除くと、土壌の放射線量がおよそ3.5μシーベルト/時に低下した。
【0081】
[プルシアンブルーの固着性評価]
摩擦に対する染色堅牢度試験方法 JIS L 0849規定の方法により測定した。判定は、添付白布の試験前後の色差と、汚染用グレースケールの各色票間に見られる色差を比較し判定した。
【0082】
以上の結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
[実施例2]
ポリウレタンエマルジョンに、プルシアンブルー/ポリウレタン固形分=1/3の質量比でプルシアンブルーを分散させる代わりに、同量のポリウレタンエマルジョンにプルシアンブルー/ポリウレタン固形分=10/3の質量比になるようにプルシアンブルーを分散させた以外は実施例1と同様の工程及び条件により、セシウム回収シートを得た。そして、得られたセシウム回収シートを実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
[実施例3]
130℃における熱水膨潤率が9質量%である水乳化性ポリウレタンのエマルジョン代わりに、130℃の熱水に対する膨潤度が2質量%である溶剤系ポリウレタンに代えた以外は実施例1と同様の工程及び条件により、セシウム回収シートを得た。なお、溶剤系ポリウレタンは、ハードセグメントが4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートとエチレングリコールの反応物からなり、ソフトセグメントが主としてポリヘキサメチレンカーボネートジオールからなり、イソシアネート含有割合が、元素分析での窒素の質量%として3.4%の樹脂であった。そして、得られたセシウム回収シートを実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0085】
[比較例]
実施例1において、平均繊度3.5デシテックスのPET長繊維をネット上に捕集し、見かけ密度の0.06g/cm
3の不織布を得た。実施例1の平均繊度0.1デシテックスの極細繊維の不織布に代えて、この不織布を用いた以外は実施例1と同様にして、セシウム回収シートを得た。そして、得られたセシウム回収シートを実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0086】
表1の結果から、実施例1〜実施例3で得られたセシウム回収シートはいずれも高い効率でセシウムを回収していることがわかる。また、セシウム濃度が0.01ppmのような低濃度であっても、10ppmの高濃度の場合に比べて、平衡吸着に到達する時間が大幅に低下しないことがわかる。また、海水中であっても、淡水中と同程度にセシウムを回収していることがわかる。
【0087】
なお、実施例1〜実施例3のセシウム回収シートは、いずれも、極細繊維の不織布を用いているために、比較例の通常の繊度の不織布を用いたセシウム回収シートに比べて、プルシアンブルーが高充填されている。その結果、セシウムの吸着量が極めて多くなっていることがわかる。
【0088】
また、実施例3は、実施例1の130℃の熱水に対する膨潤度が9質量%である水乳化性ポリウレタンの代わりに、130℃の熱水に対する膨潤度が2質量%である溶剤系ポリウレタン
をポリウレタンとして用いた例である。実施例1と実施例3とを比べると、熱水膨潤度の高い水乳化性ポリウレタンを用いた実施例1の方が、明らかにセシウムの吸着量が多くなっていることがわかる。