(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溝は、前記フィンの形成位置に対応する位置に配置され、断面において、前記第1の流路および前記第2の流路内にはみ出した前記伝熱部材は、前記フィンの一部を切り欠くように配置されることを特徴とする請求項1記載の熱交換器。
前記第1の流路および前記第2の流路内において、流体の流れる方向に併設される前記フィン同士が、流体の流れる方向に略垂直な方向にずれて配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱交換器。
断面において、前記第1の流路および前記第2の流路を構成するベース部内面から、前記第1の流路および前記第2の流路の内部側に、前記伝熱部材の周長の半分以上がはみ出して配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱交換器。
前記第1の流路および前記第2の流路には、それぞれ流体入り口と、流体出口とが設けられ、前記流体入り口または前記流体出口の少なくとも一方には、流体の流路断面積が大きくなるヘッダ部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の熱交換器。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車内の暖房を行うためには、車内に噴出するエア等を加熱する加熱手段が必要となる。例えば、暖房装置内を循環する熱媒体をヒータ等で加熱して、高温の熱媒体とエアとを熱交換させながら、温風を車内に送風する。
【0003】
このような暖房システムにおいては、熱源となる自動車の駆動部の熱を、車内の暖房用に利用する方法がある。このようにすることで、駆動源などの熱源で発生した熱を効率良く利用し、他の加熱ヒータ等によるエネルギー使用量を削減することができる。
【0004】
このような冷却回路から加熱回路への熱の輸送には、熱交換器が使用される。一般的な熱交換器は、受熱または放熱するためのフィンを有し、熱の移動にはヒートパイプなどの伝熱部材が用いられる。このようにフィンと伝熱部材とを組み合わせることで、受熱部と放熱部との熱の移動を容易にし、受熱部と放熱部とで効率良く熱交換を行うことができる。
【0005】
このような熱交換器としては、例えば、冷却用熱交換器と加熱用熱交換器とをヒートパイプを介して熱的に一体化して一個の熱交換器を作り、加熱用熱交換器へのエンジン冷却水の供給量を制御することで、空気に対する熱付加量を調整して吹出温度のコントロールを行う熱交換器がある(特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような自動車で用いられる熱交換器としては、よりコンパクトであり、より高い効率で熱輸送が可能な熱交換器が要求されている。特に、フィンと伝熱部材との間の熱の移動に対して、高い効率が望まれる。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、伝熱部材とフィンとを有する熱交換器において、フィンと伝熱部材との間で高い効率で熱交換(熱輸送)を行うことが可能な熱交換器等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達するため、に第1の発明は、互いに独立した第1の流路および第2の流路と、前記第1の流路と前記第2の流路とにまたがるように設けられ、前記第1の流路から熱を受熱して、前記第2の流路へ熱を放熱する伝熱部材と、を具備し、前記第1の流路内および前記第2の流路内には流体と接触して熱交換を行う複数のフィンが互いに一体に配置され、前記伝熱部材は、前記第1の流路内及び前記第2の流路内で前記複数のフィンに対して、略垂直または所定の角度で斜めに配置され、断面において、前記伝熱部材の少なくとも一部は、前記第1の流路および前記第2の流路を構成するベース部内面から、前記第1の流路および前記第2の流路の内部側にはみ出して形成され
、前記第1の流路および前記第2の流路のベース部の外面側には、溝が形成され、前記溝には前記伝熱部材が配置されることを特徴とする熱交換器である。
【0011】
前記溝は、前記フィンの形成位置に対応する位置に配置され、断面において、前記第1の流路および前記第2の流路内にはみ出した前記伝熱部材は、前記フィンの一部を切り欠くように配置されることが望ましい。
【0012】
前記第1の流路および前記第2の流路内において、流体の流れる方向に併設される前記フィン同士が、流体の流れる方向に略垂直な方向にずれて配置されることが望ましい。
【0013】
断面において、前記第1の流路および前記第2の流路を構成するベース部内面から、前記第1の流路および前記第2の流路の内部側に、前記伝熱部材の周長の半分以上がはみ出して配置されることが望ましい。
【0014】
前記第1の流路および前記第2の流路には、それぞれ流体入り口と、流体出口とが設けられ、前記流体入り口または前記流体出口の少なくとも一方には、流体の流路断面積が大きくなるヘッダ部が形成されることが望ましい。
【0015】
前記伝熱部材はヒートパイプであることが望ましい。
【0016】
第1の発明によれば、断面において流路側に伝熱部材がはみだすように配置されるため、高い熱交換効率を得ることができる。
【0017】
また、ベースの外面に溝を設け、伝熱部材を溝に配置することで、流路を流れる流体により、伝熱部材等が腐食することがない。
【0018】
また、伝熱部材がフィンの一部を切欠くように配置されることで、伝熱部材と流体との熱交換効率を向上させることができる。
【0019】
また、流体の流れる方向に併設されるフィンが、流体の流れる方向に略垂直な方向にずれるように千鳥状に配置されることで、流体とフィンとの熱交換効率を向上させることができる。
【0020】
また、断面において、ベース部内面から、流路の内部側に、伝熱部材の周長の半分以上がはみ出すように配置されることで、伝熱部材を伝わる熱を、効率良く流路側に伝達することができる。
【0021】
また、流路における流体の入口又は出口に、ヘッダを設けることで、流路に対して流体を均一に流すことができる。
【0022】
また、伝熱部材として、ヒートパイプを用いることで、効率良く熱を伝達することができる。
【0023】
第2の発明は、第1の発明にかかる熱交換器を用いた熱交換モジュールであって、前記第1の流路は高温側流路に接続され、前記第2の流路は低温側流路に接続され、前記第1の流路は、前記第2の流路の下方に配置され、前記伝熱部材は、略鉛直に配置されることを特徴とする熱交換モジュールである。
【0026】
第2の発明によれば、高温側流路を下方に配置し、低温側流路を上方に配置して、伝熱部材であるヒートパイプが略鉛直に配置されることで、高温側から低温側へ、効率良く熱を伝達するとともに、熱が逆流することがない。
【0027】
また、流路の入り口または出口を流路の上部に配置することで、流路に流体を流した際に、エア抜きを効率良く行うことができる。
【0028】
また、流体の入り口と出口の高さを変えて配置した場合において、入り口と出口とを結ぶ方向に略平行にフィンを配置することで、流体が流れる際の抵抗が小さく、効率良くフィン全体に流体を行き渡らせることができる。
【0029】
第3の発明は、
自動車用の暖房装置であって、前記暖房装置は熱交換器を用いた熱交換モジュールを具備し、前記熱交換器は互いに独立した第1の流路および第2の流路と、第1の流路と前記第2の流路とにまたがるように設けられ、前記第1の流路から熱を受熱して、前記第2の流路へ熱を放熱する伝熱部材と、
を具備し、前記第1の流路内および前記第2の流路内には流体と接触して熱交換を行う複数のフィンが互いに一体に配置され、断面において、前記伝熱部材の少なくとも一部は、前記第1の流路および前記第2の流路を構成するベース部内面から、前記第1の流路および前記第2の流路の内部側にはみ出して形成され、前記伝熱部材はヒートパイプであり、前記熱交換モジュールは、前記熱交換器の前記第1の流路は高温側流路に接続され、前記第2の流路は低温側流路に接続され、前記第1の流路は、前記第2の流路の下方に配置され、前記伝熱部材は、略鉛直に配置され、前記高温側流路は、自動車の動力源冷却回路であり、前記低温側流路は、車内暖房用のエア加熱回路であり、前記動力源冷却回路によって、動力源から回収された熱を、前記エア加熱回路によって、エアを加熱して車内暖房に利用することを特徴とする自動車用の暖房装置である。
【0030】
第3の発明によれば、自動車の動力源の熱を効率良く車内の暖房に利用することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、伝熱部材とフィンとを有する熱交換器において、フィンと伝熱部材との間で高い効率で熱交換(熱輸送)を行うことが可能な熱交換器等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態にかかる熱交換器について説明する。
図1は、熱交換器1を示す図であり、
図1(a)は蓋部材3を装着した状態を示す平面図、
図1(b)は
図1(a)に対して、蓋部材3を透視した状態を示す図である。また、
図2は、熱交換器1の底面図である。
【0034】
熱交換器1は、本体11、蓋部材3、ヒートパイプ17等から構成される。熱交換器1は、第1の流路である高温側流路19と、第2の流路である低温側流路21とを有する。それぞれの流路において、本体11のベース部13上に複数のフィン15が一体で構成される。本体11は、熱伝導性の良好な部材で構成され、例えばアルミニウム製である。
【0035】
複数のフィン15は、流体の流れる方向(
図1(b)の右側から左側)に併設される。この際、上流側(右側)のフィン15に対して、その下流側(左側)に併設するフィン15が、流体の流れる方向に略垂直に(図中上下方向)互いにずれて配置される。すなわち、上流側から下流側に向けて、千鳥状にフィン15が配置される。なお、フィン15は、流体の流れる方向に略平行に併設される。また、流体の流れる方向に略垂直な方向には、フィン15は略等間隔で整列して配置される。
【0036】
図2に示すように、ベース部13の底面側には、溝23が形成される。溝23は、高温側流路19と低温側流路21とにまたがるように設けられる。溝23内には、ヒートパイプ17が設けられる。ヒートパイプ17は、溝23内に図示を省略した半田等によって固定される。すなわち、ヒートパイプ17は、流路内の流体の流れる方向(図中略左右方向)に対して略垂直な向きに配置される。
【0037】
なお、熱輸送を行うことができる手段(伝熱部材)であれば、ヒートパイプ17に代えて、他の形態(例えば高熱伝導材等)でも構わないが、好ましくはヒートパイプが用いられる。ヒートパイプ17は、たとえば、端部を密閉した金属の内部に、溶媒を配置して、溶媒の蒸発と凝縮により熱を伝達することができる。主に銅の内部に水を入れたヒートパイプが多く用いられている。このため、電源を用いなくても熱伝達を行うことができ、また、密閉されているので水が減少することもないのでメンテナンス性にも優れる。さらに好ましくはサーモサイフォン型のヒートパイプである。
【0038】
また、高温側流路19を下方に配置し、低温側流路21を上方に配置して使用すると、ヒートパイプ17は、高温側流路19の下端から低温側流路21の上端に渡って配置される。ヒートパイプ17内の作動液は、高温側流路19で熱を奪って気化し、低温側流路21で凝縮して熱を放出する。上部で凝集した作動液は、下方に落下して気化を繰り返す。このように、高温側流路19を流れる流体から受熱した熱を、上方の低温側流路21側に輸送することができる(図中矢印B方向)。なお、高温側流路19を下方に配置し、低温側流路21を上方に配置し、それぞれの流路に流体経路を接続したものを、熱交換モジュールと称する。
【0039】
蓋部材3は、本体11上に被せられる。すなわち、本体11に蓋部材3を装着することで、高温側流路19と低温側流路21とが形成される。蓋部材3には、高温側流路19と低温側流路21のそれぞれに対する流体の入り口となる流体入り口5a、5bと、流体の出口となる流体出口7a、7bが設けられる。
なお、
図1、2においては、高温側流路19と低温側流路21の流体入り口5a、5bを同じ側に配置し、高温側流路19と低温側流路21内の流体の流れる方向を同じ向きとしているが、高温側流路19と低温側流路21の流体入り口5a、5bを対向する側に配置し、高温側流路19と低温側流路21内の流体の流れる方向を逆向きとすることも可能である。この場合熱輸送性能の向上が期待できる。
【0040】
高温側流路19においては、流体入り口5bは、流路の下部に配置され、流体出口7bは、流路の上部に配置される。また、低温側流路21においては、流体入り口5aは、流路の上部に配置され、流体出口7aは、流路の下部に配置される。このように、流体入り口と出口のいずれか一方をそれぞれの流路の上部に配置することで、流体を流した際に、エアを効率良く抜くことができる。
【0041】
また、流体入り口5a、5b、流体出口7a、7bには、ヘッダ9が設けられる。
図3は、
図1(a)のA−A線断面図におけるヘッダ9近傍の拡大図である。ヘッダ9は、流体の流路断面積が大きくなる空間を有する。流体入り口5aからヘッダ9に流入した流体は、ヘッダ9で流れの方向が広げられて、流路に流入する。このようにヘッダ9を設けることで、各流路内全体に流体を流すことができる。なお、ヘッダ9は、流体入り口5a、5bまたは流体出口7a、7bの一方のみに形成してもよい。
【0042】
ヒートパイプ17(溝23)は、フィン15の部位に配置される。すなわち、ヒートパイプ17に沿ってフィン15が整列する。
【0043】
図4は、
図3のC部拡大図である。断面において、ヒートパイプ17はベース部13のベース部内面13aよりも流路方向(図中上側)にはみ出すように設けられる。すなわち、ベース部13の厚みよりも溝23の深さの方が深い。ここで、断面において、ヒートパイプ17の全周の半分以上(図中D)がベース部内面13aよりも上方側にはみ出すように配置されることが望ましい。すなわち、ヒートパイプの断面が円形である場合には、溝23の深さからヒートパイプ17の外径の1/2を差し引いたものがベース部13の厚み以上となるように設定される。このように配置することで、ヒートパイプ17からの熱を、効率良くフィン15側に伝達することができる。
【0044】
次に、熱交換器1を用いた暖房システムについて説明する。
図5は、暖房システム30を示すシステム構成図である。なお、
図5は、システムの側方から見た概念図である。暖房システム30は、主に、熱源側冷却経路31、暖房側加熱経路33、エア経路45、熱交換器1等から構成される。暖房システム30は、自動車用の暖房システムである。
【0045】
熱源側冷却経路31は、例えばエンジンやモータなどの自動車の駆動部を冷却する経路である。熱源側冷却経路31には、熱媒体として冷却水等が循環する。熱源側冷却経路31には、モータ35、ポンプ39、冷却部37等が設けられる。
【0046】
モータ35は、自動車の駆動部であり、熱源となる部位である。なお、本実施形態においては、熱源がモータ35のみである電気自動車の例を示すが、本発明はこれに限られない。例えば、熱源として、通常のエンジンであっても良く、その両者が配置されても良い。また、熱源としては、駆動部のみに限られず、自動車の走行等において発熱する部位であればよい。
【0047】
ポンプ39は、熱源側冷却経路31内の熱媒体を循環させるものである(図中矢印E方向)。また、冷却部37は、熱源側冷却経路31内の熱媒体を冷却する部位である。冷却部37は、例えばラジエータ等であり、熱を外部に放出する。
【0048】
熱源側冷却経路からの熱を利用する熱利用経路である暖房側加熱経路33は、例えば、車内を暖房するためのエアを加熱する経路である。暖房側加熱経路33には、熱媒体として水等が循環する。暖房側加熱経路33には、ヒータ41、ポンプ43、放熱部47等が設けられる。
【0049】
ヒータ41は、暖房側加熱経路33内の熱媒体を加熱する部位である。ポンプ43は、暖房側加熱経路33内の熱媒体を循環させるものである(図中矢印F方向)。また、放熱部47は、暖房側加熱経路33内の熱媒体の熱をエア経路45内のエアに放熱する部位である。すなわち、放熱部47は、暖房側加熱経路33とエア経路45との交わる部位に形成される。エア経路45内には、外気または車内から取り込まれたエアが流される。エア経路45内を流れるエアは、放熱部47によって加熱されて車内に送り込まれる。すなわち、エア経路45内のエアは、暖房側加熱経路33内の熱媒体と熱交換される。
【0050】
熱源側冷却経路31には、熱交換器1の高温側流路19が接続される。また、暖房側加熱経路33には、熱交換器1の低温側流路21が接続される。この際、熱交換器1は、高温側流路19が下方となり、低温側流路21が上方となるように配置される(以下
図1参照)。
【0051】
熱源側冷却経路31内の熱媒体は、高温側流路19内を流れる。この際、高温側流路19内の熱媒体の熱は、フィン15を介してヒートパイプ17に伝達される。また、ヒートパイプ17によって、熱が上方の低温側流路21方向に輸送される。低温側流路21では、ヒートパイプ17からの放出される熱が、フィン15を介して暖房側加熱経路33内の熱媒体に伝達される。以上により、熱源側冷却経路31の熱を、暖房側加熱経路33に伝達することができる。
【0052】
ここで、高温側流路19に対して、低温側流路21が高い位置となるように配置されることで、ヒートパイプ17は、熱源側冷却経路31から暖房側加熱経路33側に熱を輸送するが、暖房側加熱経路33から熱源側冷却経路31への熱の輸送を行うことがない。なお、このような効果をより高めるためには、ヒートパイプ17を略鉛直方向に配置することが望ましい。
【0053】
次に、
図5を用いて暖房システム30の機能を説明する。前述の通り、熱源側冷却経路31内の熱媒体は、ポンプ39によって熱源側冷却経路内を循環する(図中矢印E方向)。例えば駆動中(発熱中)であるモータ35を流れる熱媒体は、モータ35からの熱を奪い、モータ35を冷却する。
【0054】
モータ35により加熱された熱媒体は、高温側流路19のフィン15で熱交換され、その熱の一部がヒートパイプ17に伝達される。ヒートパイプ17の下端で受熱すると、ヒートパイプ17は上方の低温側流路21へ熱を輸送する。さらに、フィン15によって、熱を暖房側加熱経路33内の熱媒体に伝達する。
【0055】
なお、熱交換器1に熱を伝達した熱源側冷却経路31内の熱媒体は、冷却部37に送られて、外気等に熱を放出して冷却される。冷却された熱媒体は、再度モータ35に送られ、モータ35を冷却する。熱交換器1は、熱源側冷却経路31内の熱媒体の循環方向に対して、モータ35から冷却部37までの間に配置される。モータ35から熱を受けた直後の、より高温の熱媒体と熱交換を行わせるためである。なお、モータ35の発熱量に対して、熱交換器1の熱輸送量が十分であれば、冷却部37は必ずしも必要ではない。
【0056】
暖房側加熱経路33内の熱媒体は、ポンプ43によって循環される(図中矢印F方向)。熱交換器1により加熱された熱媒体は、ヒータ41に移動する。熱媒体の温度が十分でない場合には、必要に応じてヒータ41によってさらに熱媒体が加熱される。
【0057】
所定の温度以上に加熱された熱媒体は放熱部47でエア経路45内のエアに熱を放出し、温風が車内に送られる。以上により、モータ35の熱を有効に利用して、ヒータ41による加熱を最小限に抑えて暖房を行うことが可能となる。なお、熱交換器1は、暖房側加熱経路33内の熱媒体の循環方向に対して、放熱部47からヒータ41までの間に配置される。放熱部47で放熱した直後の、より低温の熱媒体と熱交換を行わせるためである。なお、放熱部47の放熱量に対して、熱交換器1の熱輸送量が十分であれば、ヒータ41は必ずしも必要ではない。
【0058】
本発明によれば、モータ35のような駆動部等の熱源から発生する熱を効率よく暖房側加熱経路33に伝えることができるため、暖房側加熱経路33の熱媒体を効率よく加熱することができる。このため、ヒータ41による発熱量を抑えることができる。
【0059】
また、熱交換器1において、ヒートパイプ17が流路内にはみ出すように配置されるため、ヒートパイプ17と各流路内の熱媒体との熱交換効率が高い。特に、ヒートパイプ17がフィン15の一部を切欠くように、フィン15がヒートパイプ17に沿って整列することで、フィン15とヒートパイプ17との熱交換効率も良好である。
【0060】
また、ヒートパイプ17は、ベース部13の背面側の溝23に設けられるため、ヒートパイプ17が流路内の流体と接触することがない。このため、アルミニウム製の本体11に銅製のヒートパイプ17を用いても、流体によって腐食が進行することを防止することができる。
【0061】
また、高温側流路19を下方に配置し、低温側流路21を上方に配置するため、ヒートパイプ17を略鉛直に配置することができる。したがって、熱源側冷却経路31の熱を暖房側加熱経路33に伝えることができるとともに、暖房側加熱経路33から熱源側冷却経路31へ熱が逆流することを防止することができる。
【0062】
また、この際、流体入り口5a、5bまたは流体出口7a、7bのいずれか一方を、流路の上端側に配置することで、熱媒体の導入時のエア抜きが容易である。また、流体入り口5a、5bまたは流体出口7a、7bの少なくともいずれか一方にヘッダ9を設けることで、熱媒体を流路内に均一に流すことができる。
【0063】
次に、他の実施形態について説明する。
図6は、熱交換器1aを示す図である。なお、以下の説明において、
図1〜
図4に示した熱交換器1と同様の機能を奏する構成については、熱交換器1と同様の符号を付し、重複する説明を省略する。熱交換器1aは、熱交換器1と略同様の構成であるが、フィン15の向きが異なる。
【0064】
流体入り口5a、5bおよび流体出口7a、7bは、前述した通り、各流路の上下にずれて配置される。したがって、各流路内を流れる流体は、完全に熱交換器1aの左右方向に流れるのではなく、概ね、流体入り口5a、5bと流体出口7a、7bとを結んだ直線の向きとなる(図中H方向およびI方向)。
【0065】
熱交換器1aでは、流体の流れる向き(図中H方向およびI方向)に平行な向きでフィン15が配置される。すなわち、ヒートパイプ17の配置される向きと、フィン15の向きとが直交せずに、所定の角度で形成される。このようにすることで、フィン15が流体の流れの妨げとなり難くなり、流体をよりスムーズに流すことができる。なお、流体入り口5a、5bおよび流体出口7a、7bの配置を適宜設定すれば、高温側流路19と低温側流路21とでフィン15の向きを同一にすることもできる。
【0066】
熱交換器1aによっても、熱交換器1と同様の効果を得ることができる。また、熱交換器1aも熱交換器1と同様に、暖房システム30に適用することができる。
【0067】
また、
図7に示す熱交換器1bを用いることもできる。熱交換器1bは、ヒートパイプ17が、ベース部13の底面側の溝ではなく、流路内に直接配置される。すなわち、ヒートパイプ17が、フィン15を貫通するように配置される。
【0068】
なお、この場合でも、ヒートパイプ17は、ベース部13の内面から、流路側にはみ出しているものとする。また、フィン15の一部を切欠くように、ヒートパイプ17が配置されているものとする。
【0069】
熱交換器1bによっても、熱交換器1と同様の効果を得ることができる。また、熱交換器1bも熱交換器1と同様に、暖房システム30に適用することができる。なお、熱交換器1bでは、流体による腐食対策が必要となるが、ヒートパイプ17の全周を流体との熱交換に寄与させることができるため、熱交換効率がよい。
【0070】
また、
図8に示す熱交換器1cを用いることもできる。熱交換器1cは、一対の熱交換器を用い、ベース部13同士が互いに対向するようにして一体化される。ヒートパイプ17は、それぞれのベース部13で挟み込まれる。すなわち、それぞれの溝23の深さは、ヒートパイプ17の外径の略1/2程度となる。なお、この場合でも、断面において、ヒートパイプ17は、ベース部13の内面から流路側にはみ出すように配置される。すなわち、ベース部13の厚みは、溝23の深さよりも薄い。
【0071】
一対の流体入り口5bには、分岐管49が接続される。例えば、熱源側冷却経路31を流れる熱媒体は、分岐管49により分岐されて、それぞれの流路(高温側流路19)に流入する。それぞれの流路において、フィン15を介してヒートパイプ17に熱が伝達する。ヒートパイプ17は、熱を低温側流路側(暖房側加熱経路33側)に輸送して、放熱する。以上により、熱を輸送することができる。
【0072】
熱交換器1cによっても、熱交換器1と同様の効果を得ることができる。また、熱交換器1cも熱交換器1と同様に、暖房システム30に適用することができる。また、熱交換器1cでは、熱媒体とフィン15との接触面積を大きくすることができる。また、ヒートパイプ17の略全周で、熱媒体からの受熱および放熱を行うことができる。
【0073】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0074】
例えば、高温側流路19と低温側流路21とは、必ずしも一体で形成しなくても良く、別々に構成して、ヒートパイプ17によって連結しても良い。