(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1本の前記電線の前記芯線がアルミ電線であり、他の1本の前記電線の前記芯線が銅電線であり、前記銅電線或いは前記アルミ電線のいずれか一方の長さを前記アルミ電線或いは前記銅電線のいずれか他方よりも長く形成し、前記先端部側で前記銅電線或いは前記アルミ電線のみを圧縮したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイヤーハーネスの接続構造。
前記ジョイント端子の基端部側の前記圧縮部分から先端部側の隣り合う前記圧縮部分までの間をテーパー状に形成し、隣り合う前記圧縮部分間の距離に比例して圧縮率を異ならせたことを特徴とする請求項2に記載のワイヤーハーネスの接続構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワイヤーハーネスの接続では、複数の電線の各端部がジョイント端子でまとめて一つに接続される。そのため、ワイヤーハーネスにアルミ電線を採用した場合には、アルミ電線と銅電線が混在する態様で接続されることになる。このときのジョイント端子の圧縮率は、銅電線に最適な圧縮率で圧縮するとアルミ電線の酸化皮膜を破壊して密着させることができないため、アルミ電線に合わせた大きな圧縮率で圧縮することになる。しかしながら、大きな圧縮率では、電線の素線(特に、引張り強度の小さい電線の素線)が破断してしまい、全ての電線で良好な電気的な導通を確保することができないおそれがある。
【0006】
また、アルミ電線と銅電線が混在していない態様(例えば、複数の銅電線のみをジョイント端子で一つに接続する態様)であっても、断面積の異なる銅電線同士をジョイント端子で接続する場合には、断面積の大きな方に合わせた大きな圧縮率で圧縮する必要がある。この場合であっても、断面積の小さな銅電線の引張り強度は小さいために素線が破断し、複数の全ての電線で良好な電気的な導通を確保することができないおそれがある。
【0007】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の電線同士を接続する際に、良好な導通を確保することができるワイヤーハーネスの接続構造およびワイヤーハーネスの接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述課題を解決するため、本発明のワイヤーハーネスの接続構造は、芯線の引張り強度が異なる2本以上の電線をジョイント端子で接続するためのものであり、2本以上の前記電線の前記芯線を前記ジョイント端子で一緒に覆い、前記ジョイント端子は、前記芯線に沿って延在する前記ジョイント端子の基端部側から先端
部側に向かうに従い圧縮率を高くして圧縮されて
おり、2本以上の前記電線の前記芯線の長さを異ならせ、長く形成した前記芯線のみを前記先端部側で圧縮したことを特徴とする
【0009】
また、前記ジョイント端子には、多段階に圧縮された2つ以上の圧縮部分が形成されていてもよい。
【0010】
より具体的には、1本の前記電線の前記芯線がアルミ電線であり、他の1本の前記電線の芯線が銅電線であり、前記銅電線或いは前記アルミ電線のいずれか一方の長さを前記アルミ電線或いは前記銅電線のいずれか他方よりも長く形成し、前記先端部側で前記銅電線或いは前記アルミ電線のみを圧縮するようにしてもよい。
【0011】
また、前記ジョイント端子の前記先端部側の端部を密閉する態様で圧縮した密閉部を形成してもよい。
【0012】
また、前記ジョイント端子の基端部側から先端部側までの間をテーパー状に形成し、基端部側から先端部側までの長さに比例して圧縮率を異ならせてもよい。さらに、前記ジョイント端子の基端部側の前記圧縮部分から先端部側の隣り合う前記圧縮部分までの間をテーパー状に形成し、隣り合う前記圧縮部分間の距離に比例して圧縮率を異ならせてもよい。さらにまた、前記ジョイント端子の基端部側の前記圧縮部分と先端部側の隣り合う前記圧縮部分とを段差状に形成して圧縮率を異ならせてもよい。
【0013】
また、前記ジョイント端子の基端部側をベルマウス状に形成してもよい。さらに、圧縮工程において、前記ジョイント端子に圧縮方向へ突出するリブを形成することもできる。また、前記ジョイント端子の先端部側の前記圧縮部分を、基端部側の前記圧縮部分よりも小さな圧縮率で圧縮して形成してもよい。さらにまた、前記ジョイント端子の圧縮後の断面形状が、円形状、楕円形状、或いは多角形状になるように圧縮することもできる。
【0014】
他方、本発明のワイヤーハーネスの接続方法は、
芯線の引張り強度が異なる2本以上の電線をジョイント端子で接続するためのワイヤーハーネスの接続構造であって、2本以上の前記電線の前記芯線を前記ジョイント端子で一緒に覆い、前記ジョイント端子は、前記ジョイント端子の先端部側の前記圧縮部分
が、基端部側の前記圧縮部分よりも小さな圧縮率で圧縮
されており、前記ジョイント端子には、多段階に圧縮された2つ以上の圧縮部分が形成され、2本以上の前記電線の前記芯線の長さを異ならせ、長く形成した前記芯線のみを前記先端部側で圧縮したことを特徴とする。
【0015】
また、前記ジョイント端子を多段階に圧縮するようにしてもよい。
さらに、圧縮率の異なる圧縮、或いは同じ圧縮率での圧縮を、1回の圧縮工程で行うようにすることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るワイヤーハーネスの接続構造およびワイヤーハーネスの接続方法では、2本以上の前記電線の前記芯線を前記ジョイント端子で一緒に覆い、前記ジョイント端子は、前記芯線に沿って延在する前記ジョイント端子の基端部側から先端分側に向かうに従い圧縮率を高くして圧縮されているので、2本以上のうちの1つの圧縮率に合わせて大きな圧縮率のみで圧縮する必要がなくなり、この大きな圧縮率に起因して生じる素線切れ等の問題を防止することができる。また、各芯線の異なる最適な圧縮率でそれぞれを圧縮することができるので、長手方向におけるいずれかの位置でどの芯線も最適な圧縮率で均一に圧縮することができる。そのため、良好な電気的な導通を確保することができる。
【0017】
また、前記ジョイント端子の基端部側から先端部側に向かうに従い多段階に圧縮率を高くして圧縮しているので、1つの大きな圧縮率で圧縮する場合と比較して、圧縮率の段階的変化を小さくすることができ、素線切れを起こし難くすることができる。そのため、良好な電気的導通を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係るワイヤーハーネスの接続構造1、40、50、60、70、80、90およびワイヤーハーネスの接続方法について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、基端部側から先端部側に向かって段階的に圧縮率を異ならせて接続した状態を示す概要図、
図2は
図1のA−A断面図である。
なお、以下の説明で使用する電線10、20およびジョイント端子30の長手方向(延在する方向)とは、
図1の紙面左右方向をいい、ジョイント端子の基端部側31Aとは、
図1の紙面左方向、先端部側31Bとは、
図1の紙面右方向をいうものとする。
また、本明細書で使用する「圧縮」とは、芯線11、21を構成するそれぞれの素線に対し、それぞれ均等な圧力が作用するように圧力をかけて密着させることをいう。
【0020】
銅電線10は、
図1に示すように、絶縁被覆によって銅芯線11が覆われたものであり、アルミ電線20は、絶縁被覆によってアルミ芯線21が覆われて構成されたものである。これらの電線10、20は、その端部で銅芯線11とアルミ芯線21とが束ねられてその外周をジョイント端子30で一緒に覆うようにして接続される。このジョイント端子30は、筒状に形成されており、その中空内部に銅芯線11およびアルミ芯線21が挿入される態様で組み付けられる。
なお、ジョイント端子30の形状は、筒状に限定されるものではなく、圧縮作業がし易いように、長手方向にスリットが入れられた断面U字状のものであっても構わない。また、束ねられた芯線部分の外周に沿って巻き付けられる板状のものであってもかまわない。
【0021】
ジョイント端子30は、銅電線10およびアルミ電線20の延在する方向に沿って長手方向を有しており、ジョイント端子30の基端部側31Aから銅芯線11およびアルミ芯線21が挿入される。また、ジョイント端子30の先端部側31Bには、挿入された銅芯線11およびアルミ芯線21の先端部が揃えて配置される。
【0022】
この状態から、ジョイント端子30の側面部33を圧縮治具で押圧し、それぞれの銅芯線11およびアルミ芯線21を圧縮する。ジョイント端子30の側面部33は、
図1に示すように、その長手方向において異なる圧縮率で段階的に(
図1では3段階)圧縮される。これにより、圧縮後の側面部33には、基端部側31Aから順に、第1圧縮部分33A、第2圧縮部分33B、第3圧縮部分33Cがそれぞれ形成される。
【0023】
なお、上述した圧縮部分は、3つに限定されるものではなく、2つであってもよい。また、4つ以上に細分化して圧縮部分を形成してもよい。また、複数の圧縮部分は、全て異なる圧縮率にする必要はなく、複数の圧縮部分のうちのいくつか(全部ではない)の圧縮部分を同じ圧縮率で圧縮するようにしてあってもよい。
【0024】
これらの第1圧縮部分33A、第2圧縮部分33B、第3圧縮部分33Cは、基端部側の第1圧縮部分33Aの圧縮率が最も小さく、第2圧縮部分33Bの圧縮率が第1圧縮部分の圧縮率よりも大きく、さらに、第3圧縮部分33Cの圧縮率が第2圧縮部分33Bの圧縮率よりも大きくなるように、基端部側31Aから先端部側31Bに向かうに従い段階的に圧縮率が大きくなるようにしている。
【0025】
ここで、最適な圧縮率について
図3(A)および
図3(B)のグラフを用いて説明する。これらのグラフは、圧縮率に対する接続部分の導電率と引張り強度との関係を示したものであり、曲線Rが引張り強度、曲線Sが接続部の導電率を示している。
図3(A)、
図3(B)で示すように、接続部分の導電率および引張り強度の最適値(各曲線R、Sのピーク値)は、それぞれ異なる圧縮率で発生する。より具体的には、引張り強度の最適値(曲線Rのピーク値)は、接続部の導電率の最適値(曲線Sのピーク値)よりも小さな圧縮率で発生する。そのため、1回の圧縮で接続する場合(
図3(A)で示す場合)、一方のピーク値に合わせると、他方のピーク値から大きく外れることになり好ましくない。そのため、これらの2つの値が互いに最高となる圧縮率である範囲T1の圧縮率で接続することが望ましい。しかしながら、この範囲T1における圧縮率であっても、どちらの値もピーク値から外れるようになってしまうため、最適な状態とは言えない。
【0026】
これに対し、本願発明のように多段階で圧縮する場合(
図3(B)で示す場合)には、範囲T2、T3、T4の3段階で圧縮することで、それぞれ最適な圧縮率で接続できるようになる。より具体的には、範囲T2で引張り強度がピーク値となる最適な圧縮率で圧縮し、範囲T3で2つの値が互いに最高となる圧縮率で圧縮し、範囲T4で接続部の導電率がピーク値となる最適な圧縮率で圧縮することで、引張り強度を一番高い値で確保しつつ、かつ、接続部の導電率についても一番高い値の状態で接続することができるようになる。
【0027】
アルミ芯線21は、銅芯線11と比較して大きな圧縮率で圧縮することが必要になる。この大きな圧縮率を作用させると、アルミニウムは銅に比べてやわらかいために、最初にアルミ芯線21の素線がつぶされるようになる。
また、素線を電気的に接続(導通)させるためには、高圧縮率が求められる。一方で、圧縮率を大きくすると、素線の断面積が小さくなり、強度の低下が生じてしまう。
すなわち、最適な圧縮率は、引張り強度と接続部の導電率との最適値な圧縮率が異なるようになる。そのため、多段圧縮を行うことによって、基端部側31Aから先端部側31Bのいずれかの位置で引張り強度および接続部の導電率の最適な圧縮率を確保することで、素線切れを防止して、良好な電気的導通を確保している。
【0028】
第1圧縮部分33A、第2圧縮部分33B、第3圧縮部分33Cを圧縮した後の断面形状は、
図1および
図2に示すように、略六角形状にしている。この断面形状は、真円形状、楕円形状、或いは多角形状など、種々の形状にすることができるが、接続ジョイント30の法線方向へほぼ均等に圧縮することができることから六角形状または円形状にするのが好ましい。
【0029】
第1圧縮部分33A、第2圧縮部分33B、第3圧縮部分33Cのそれぞれを圧縮する工程は、これらの圧縮部分33A、33B、33Cを一回の圧縮工程で行う。この圧縮を行うための圧縮治具(図示せず)は、例えば、3つの部分33A、33B、33Cに合わせた形状を一体に有する上型および下型で構成され、これらの上型および下型をジョイント端子30の上下から押圧することで圧縮が一回で行われる。
また、この圧縮工程は、一回ではなく、2回以上の圧縮工程に分けて行うようにしてもよい。また、上型および下型は、それぞれの圧縮部分33A、33B、33Cの各部分毎に分割した分割型にして、それぞれの部分の圧縮率を個々に調整できるようにしてあってもよい。
【0030】
他方、銅芯線11とアルミ芯線21をジョイント端子30を用いて接続する方法および構造としては、種々の形態が考えられる。以下、
図4〜
図11を用いて詳細に説明する。
図4は、
図1に対応する図であって、隣り合う圧縮部分の間にテーパー部41および段差部42を設けたワイヤーハーネスの接続構造40を示している。
【0031】
第1圧縮部分33Aと第2圧縮部分33Bとの間には、
図4に示すように、テーパー部41を設けるようにすることができる。このテーパー部41は、基端部側31Aから先端部側31Bに向かうに従い圧縮後のジョイント端子30の径が小さくなるように(圧縮率が大きくなるように)テーパー状に傾斜している。このようにテーパー部41を設けることによって、第1圧縮部分33Aから第2圧縮部分へ圧縮率を
図4のX部でなだらかに高めてゆき、急激な圧縮率の変化による素線切れを防ぐようにしている。
【0032】
また、第2圧縮部分33Bと第3圧縮部分33Cとの間には、
図4に示すように、段差部42を設けるようにすることができる。この段差部42は、第2圧縮部分33Bから法線方向に略直角にエッジを効かせるようにして内方へ入り込む形状になっており、セレーションのように素線内に食い込むようにしている。これによって、
図4のY部でジョイント端子30と素線との接触面積をより大きく確保し、電気的導通を良好にしている。
【0033】
これらのテーパー部41および段差部42は、ジョイント端子30の長手方向における位置によってどちらを設けるかを適宜選択することができる。すなわち、上述したテーパー部41は、基端部側31Aに近いため、素線切れを防止することを重視して設けている。一方、段差部42は、先端部側31Bに近いため、良好な接触による電気的導通を重視して設けるようにしている。このように、目的によってこれらを適宜選択して設けるようにしてもよい。
【0034】
図5は、
図1に対応する図であって、基端部側31Aから先端部側31Bに向かってテーパー状に圧縮したワイヤーハーネスの接続構造50を示している。
ジョイント端子30の側面部33には、上述した第1圧縮部分33A、第2圧縮部分33B、第3圧縮部分33Cのように階段状に圧縮する代わりに、
図5に示すように、基端部側31Aから先端部側31Bまでの間で傾斜するテーパー部51を設けている。このテーパー部51は、基端部側31Aから先端部側31Bに向かうに従い圧縮後のジョイント端子30の径が小さくなるように(圧縮率が大きくなるように)テーパー状に傾斜している。このようにテーパー部51を設けることによって、ジョイント端子30の基端部側31Aから先端部側31Bまでの長さに比例して圧縮率を徐々に大きくすることができ、急激な圧縮率の変化による素線切れを防ぐようにしている。
【0035】
図6は、
図1に対応する図であって、銅芯線11をアルミ芯線21よりも長く形成して、先端部側31Bで銅芯線11のみを圧縮したワイヤーハーネスの接続構造60を示している。
図6で示す接続構造60では、電線10,20を束ねる際に、銅芯線11をその中央付近にまとめて配置すると共に、アルミ芯線21が銅芯線11の外側に位置するように配置している。また、銅芯線11の先端部側31Bの長さは、アルミ芯線21の長さよりも長く形成されている。この状態から、上述したようにジョイント端子30を基端部側31Aから段階的に圧縮してゆき、最後に、銅芯線11のみを圧縮する4つ目の圧縮部分33Dを設けている(
図6のR部分)。このように銅芯線11のみを先端部側31Bで圧縮することで、アルミ芯線21の有無に係わらず、銅芯線11のみに最適な圧縮率を作用させて圧縮することができる。
【0036】
なお、上述した構造では、銅芯線11を中央付近にまとめて配置しているが、銅芯線11とアルミ芯線21とを逆にして配置してもよい。また、4つ目の圧縮部分33Dを設けずに、3つ目の圧縮部分33Cで銅芯線11(或いはアルミ芯線21)のみを圧縮するようにしてもよい。
【0037】
図7は、
図1に対応する図であって、ジョイント端子30の先端部側31Bの端部を袋状に圧縮したワイヤーハーネスの接続構造70を示している。
図7の構造では、ジョイント端子30の先端部側31Bの端部に、銅芯線11およびアルミ芯線21が挿通されないようにしておき、この部分につぶし折り曲げ接合やかしめ加工を施すことによって密閉部71を設けている。この密閉部71は、完全に押し潰すことによって圧縮後のジョイント端子30の内部に水が浸入しない構造にしてある。このようにZ部分における密閉部71の密閉性(水密性)を確保しておくことによって、接続部分を防水構造にすることができる。
【0038】
図8は、
図1に対応する図であって、ジョイント端子30にベルマウス81を設けたワイヤーハーネスの接続構造80を示している。なお、
図8は、ジョイント端子30を圧縮する前であって、ジョイント端子30に銅芯線11とアルミ芯線21を通した状態である。
ジョイント端子30の基端部側31Aには、
図8に示すように、開口部の端部がラッパ状に拡径する態様のベルマウス81が設けられている。
【0039】
ジョイント端子30には、銅芯線11およびアルミ芯線21を束ねた状態で、ジョイント端子30の基端部側31Aから挿通される。ジョイント端子30の基端部側31Aにベルマウスを設けることで、この挿通作業を容易に行えると共に、銅芯線11およびアルミ芯線21の挿入時の損傷を防止することができる。
【0040】
また、このベルマウス81は、圧縮時にその圧縮力で形成するようにしてもよい。このように圧縮時にベルマウス81を形成するようにすることで、ジョイント端子30の基端部側31Aが圧縮されたとしても、基端部側31Aの開口部の径が小さくならないため、電線10、20の被覆部分に作用するダメージを緩和することができる。
【0041】
図9は、
図1に対応する図であって、圧縮後のジョイント端子30にリブ91A、91B、91Cを形成したワイヤーハーネスの接続構造90を示している。また、
図10は、
図9のB方向から見た図である。
【0042】
銅芯線11およびアルミ芯線21をジョイント端子30内に挿入した後に段階的に圧縮すると、ジョイント端子30の側面部33はこの圧縮力によって変形する。この圧縮時の変形によるジョイント端子30のひずみ(圧縮時の金属の流動によるひずみ)を利用して、側面部33に複数のリブ91A、91B、91Cを形成している。
【0043】
これらのリブ91A、91B、91Cは、
図9に示すように、ジョイント端子30の長手方向と直交する方向(ジョイント端子30の法線方向)に突出するように形成されている。また、リブ91A、91B、91Cは、
図10に示すように、第1圧縮部分33A、第2圧縮部分33B、第3圧縮部分33Cのそれぞれの外周に沿って略六角形状に連続して形成されている。
【0044】
これらのリブ91A、91B、91Cは、ジョイント端子30の強度を向上させ、それぞれの圧縮部分33A、33B、33Cに作用する応力を緩和する機能を奏するようになる。また、これらのリブ91A、91B、91Cは、圧縮時の圧縮力を利用して形成しているので、圧縮後にリブを別途設けるような場合と比較して、より簡単にリブ91A、91B、91Cを設けることができるものである。
【0045】
図11は、
図1に対応する図であって、ジョイント端子30の先端部分31Bに圧縮率が小さい第4圧縮部分103Dを設けたワイヤーハーネスの接続構造100を示している。
第3圧縮部33Cよりも先端部側31Bには、第3圧縮部分33Cよりも圧縮率が小さな第4圧縮部分103Dが設けられている。より詳細には、第4圧縮部分103Dの外径は、
図11に示すように、第3圧縮部分33Cの外径よりも大きくなるように形成し、第3圧縮部分33Cでくびれ構造を成すようにしている。
【0046】
このように、先端部側31Bの第4圧縮部分103Dを、基端部側31Aの第3圧縮部分33Cよりも小さな圧縮率で圧縮して形成することによって、電線10、20に引張力が作用したとしても、圧縮後の電線10、20が、ジョイント端子30の基端部側31Aから抜け落ち難くすることができる。すなわち、
図1で示すように、接続ジョイント30を基端部側31Aから先端部側31Bに向かうに従って圧縮率を段階的に高くしただけの構造の場合には、基端部型31Aから電線10、20が抜け落ちるのを防止する構造的なものがなく、上述した引張力に対して圧縮力のみで抗するようになる。これに対し、
図11の接続構造100では、第4圧縮部分103D内に圧縮・収容されている銅芯線11およびアルミ芯線21が第3圧縮部分33Cのくびれ構造で物理的に引っ掛かるので、上述した引張力によって抜け落ちようとするのを構造的に防止することができる。
【0047】
なお、第4圧縮部分103Dは、第3圧縮部分33Cの圧縮率よりも小さいものであれば、例えば、側面部33を圧縮しない状態のまま残したもの(圧縮率が0)であってもかまわない。
【0048】
本発明の実施形態に係るワイヤーハーネスの接続構造1およびその接続方法によれば、2本以上の電線10、20の銅芯線11およびアルミ芯線21をジョイント端子30で一緒に覆い、銅芯線11およびアルミ芯線21に沿って延在するジョイント端子30の基端部側31Aから先端分側31Bに向かうに従い圧縮率を高くして圧縮されているので、2本以上のうちの1つの圧縮率に合わせて大きな圧縮率のみで圧縮する必要がなくなり、この大きな圧縮率に起因して生じる素線切れ等の問題を防止することができる。また、銅芯線11およびアルミ芯線21の異なる最適な圧縮率でそれぞれを圧縮することができるので、長手方向におけるいずれかの位置でそれぞれの銅芯線11およびアルミ芯線21を最適な圧縮率で均一に圧縮することができる。そのため、良好な電気的な導通を確保することができる。また、基端部側31Aから先端分側31Bに向かうに従い圧縮率を高くして圧縮しているので、基端部側31Aの銅芯線11およびアルミ芯線21に大きな圧縮率がかからないので、素線切れを防止することができる。
【0049】
また、ジョイント端子30には、多段階に圧縮率された圧縮部分33A、33B、33Cが形成されているので、1つの大きな圧縮率で圧縮する場合と比較して、圧縮率の段階的変化を小さくすることができ、素線切れを起こし難くすることができる。そのため、良好な電気的導通を確保することができる。
【0050】
また、圧縮率の異なる圧縮、或いは同じ圧縮率での圧縮を、1回の圧縮工程で行うことで、圧縮作業を短時間で効率良く行うことができる。また、圧縮率の異なる圧縮、或いは同じ圧縮率での圧縮を、2回以上の圧縮工程に分けて行うこともでき、それぞれの圧縮部分33A、33B、33Cの圧縮率の管理を確実に行えるようになる。
【0051】
本発明の実施形態に係るワイヤーハーネスの接続構造60およびその接続方法によれば、2本以上の電線10、20の銅芯線11およびアルミ芯線21の長さを異ならせ、銅芯線11またはアルミ芯線21のうちの長く形成した電線のみを先端部側31Bで圧縮しているので、長く形成した銅芯線11またはアルミ芯線21の一方のみを単独で圧縮することができる。そのため、銅芯線11またはアルミ芯線21のみを最適な圧縮率で圧縮することができる。
【0052】
本発明の実施形態に係るワイヤーハーネスの接続構造70およびその接続方法によれば、ジョイント端子30の先端部側31Bの端部を密閉する態様で圧縮した密閉部71を設けているので、この密閉部71からの水の侵入を防ぎ、ジョイント端子30内の接続部を防水構造にすることができる。
【0053】
本発明の実施形態に係るワイヤーハーネスの接続構造50およびその接続方法によれば、ジョイント端子30の基端部側31Aから先端部側31Bまでの間をテーパー状に形成し、基端部側31Aから先端部側31Bまでの長さに比例して圧縮率を徐々に大きくしているので、急激な圧縮率の変化による素線切れを防ぐことができる。
【0054】
本発明の実施形態に係るワイヤーハーネスの接続構造40およびその接続方法によれば、ジョイント端子30の基端部側31Aの圧縮部分33Aから先端部側31Bの隣り合う圧縮部分33Bまでの間をテーパー状に形成し、隣り合う圧縮部分33A、33B間の距離に比例して圧縮率を徐々に大きくしているので、第1圧縮部分33Aから第2圧縮部分へ圧縮率をなだらかに高めてゆくことができ、急激な圧縮率の変化による素線切れを防ぐことができる。
【0055】
また、ジョイント端子30の基端部側31Aの圧縮部分33Bと先端部側31Bの隣り合う圧縮部分33Cとを段差状に形成しているので、ジョイント端子30と素線との接触面積を大きくなり、電気的導通を良好にすることができる。
【0056】
本発明の実施形態に係るワイヤーハーネスの接続構造80およびその接続方法によれば、ジョイント端子30の基端部側31Aをベルマウス状に形成しているので、ジョイント端子30の基端部側31Aが圧縮されたとしても、基端部側31Aの開口部の径が小さくならないため、電線10、20の被覆部分に作用するダメージを緩和することができる。
【0057】
本発明の実施形態に係るワイヤーハーネスの接続構造90およびその接続方法によれば、ジョイント端子30に圧縮方向へ突出するリブ91A、91B、91Cを形成しているので、ジョイント端子30の強度を向上させ、それぞれの圧縮部分33A、33B、33Cに作用する応力を緩和することができる。また、これらのリブ91A、91B、91Cは、圧縮時の圧縮力を利用して形成しているので、圧縮後に後付けでリブを設けるような場合と比較して、より簡単にリブ91A、91B、91Cを設けることができる。
【0058】
また、ジョイント端子30の圧縮後の断面形状が、六角形状になるように圧縮しているので、法線方向に均等に圧縮することができる。
【0059】
本発明の実施形態に係るワイヤーハーネスの接続構造100およびその接続方法によれば、ジョイント端子30の先端部側31Bの第4圧縮部分103Dを、基端部側31Aの第3圧縮部分33Cよりも小さな圧縮率で圧縮して形成しているので、電線10、20に引張力が作用したとしても、第4圧縮部分103D内に圧縮・収容されている銅芯線11およびアルミ芯線21が第3圧縮部分33Cのくびれ構造で物理的に引っ掛かるようになる。そのため、上述した引張力によって電線10、20がジョイント端子30から抜け落ちようとするのを構造的に防止することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態に係るワイヤーハーネスの接続構造1、40、50、60、70、80、90およびその接続方法について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0061】
例えば、本実施の形態では、ジョイント端子30で接続する複数の電線10、20が、銅芯線11およびアルミ芯線21の混在したものを例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、複数のアルミ電線同士、或いは、複数の銅電線同士の接続の場合にも適用することができる。より詳細には、それぞれの断面積が異なる(それぞれの芯線の引張り強度が異なる)電線同士を混在して接続する場合には、それぞれの電線の最適な圧縮率は異なるため、銅芯線11とアルミ芯線21の接続の場合と同じように最適な圧縮率がそれぞれ異なる点で問題点が一致する。そのため、本実施形態のように、圧縮率を段階的に変化させることにより、一回で大きな圧縮率で圧縮する場合と比較して素線に大きな破断力が作用しなくなる。その結果、素線切れ等の課題を解決し、より良好な電気的な導通を確保することができる。