特許第6169078号(P6169078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169078
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20170713BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20170713BHJP
   C07D 409/14 20060101ALN20170713BHJP
   C07D 405/14 20060101ALN20170713BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   H05B33/22 B
   H05B33/22 D
   C09K11/06 690
   C09K11/06 655
   !C07D409/14
   !C07D405/14
【請求項の数】4
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-525803(P2014-525803)
(86)(22)【出願日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】JP2013069005
(87)【国際公開番号】WO2014013936
(87)【国際公開日】20140123
【審査請求日】2016年6月20日
(31)【優先権主張番号】特願2012-160344(P2012-160344)
(32)【優先日】2012年7月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀輝
【審査官】 辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−049518(JP,A)
【文献】 特開2012−124360(JP,A)
【文献】 特開2007−288035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
C09K 11/06
C07D 405/14
C07D 409/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、陽極、有機層及び陰極が積層されてなる有機電界発光素子において、発光層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔阻止層、電子阻止層及び励起子阻止層からなる群れから選ばれる少なくとも一つの層に、一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を含有することを特徴とする有機電界発光素子。


ここで、Aはn価の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、炭素数3〜30の芳香族複素環基、又はこれら芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が2〜6つ連結された芳香族基であり、nは2又は3の整数であり、該芳香族炭化水素基又は該芳香族複素環基が置換基を有する場合の置換基は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、−OAr、−N(Ar)2、又は−Si(Ar)3であり、
Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、−OAr、−N(Ar)2、−Si(Ar)3、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の芳香族複素環基又はこれら芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が2〜3つ連結された芳香族基であり、Arはそれぞれ独立して、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の芳香族複素環基又はこれら芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が2〜3つ連結された芳香族基であり、
Xはそれぞれ独立して酸素又は硫黄である。
【請求項2】
Rが水素である請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
Aが下記式(2)〜(5)のいずれかで表されるn価の芳香族基である請求項1に記載の有機電界発光素子。


式(2)〜(5)中、Yはそれぞれ独立してC、C(R)又は窒素を表し、n個のYはCである。但し、式(4)中のYのn+1個はCである。n及びRは一般式(1)と同意である。
【請求項4】
一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を含む層が、燐光発光ドーパントを含有する発光層である請求項1〜3のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定構造を有するカルバゾール化合物からなる有機電界発光素子用材料を用いた有機電界発光素子に関するものであり、詳しくは、有機化合物からなる発光層に電界をかけて光を放出する薄膜型デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機電界発光素子(以下、有機EL素子という)は、その最も簡単な構造としては発光層及び該層を挟んだ一対の対向電極から構成されている。すなわち、有機EL素子では、両電極間に電界が印加されると、陰極から電子が注入され、陽極から正孔が注入され、これらが発光層において再結合し、光を放出する現象を利用する。
【0003】
近年、有機薄膜を用いた有機EL素子の開発が行われるようになった。特に、発光効率を高めるため、電極からキャリアー注入の効率向上を目的として電極の種類の最適化を行い、芳香族ジアミンからなる正孔輸送層とトリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体(以下、Alq3という)からなる発光層とを電極間に薄膜として設けた素子の開発により、従来のアントラセン等の単結晶を用いた素子と比較して大幅な発光効率の改善がなされたことから、自発光・高速応答性といった特徴を持つ高性能フラットパネルへの実用化を目指して進められてきた。
【0004】
また、素子の発光効率を上げる試みとして、蛍光ではなく燐光を用いることも検討されている。上記の芳香族ジアミンからなる正孔輸送層とAlq3からなる発光層とを設けた素子をはじめとした多くの素子が蛍光発光を利用したものであったが、燐光発光を用いる、すなわち、三重項励起状態からの発光を利用することにより、従来の蛍光(一重項)を用いた素子と比べて、3〜4倍程度の効率向上が期待される。この目的のためにクマリン誘導体やベンゾフェノン誘導体を発光層とすることが検討されてきたが、極めて低い輝度しか得られなかった。また、三重項励起状態を利用する試みとして、ユーロピウム錯体を用いることが検討されてきたが、これも高効率の発光には至らなかった。近年では、特許文献1に挙げられるように発光の高効率化や長寿命化を目的にイリジウム錯体等の有機金属錯体を中心に研究が多数行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO01/041512A1
【特許文献2】特開2001-313178号公報
【特許文献3】US2006/0054861A1
【特許文献4】特開2009-267257号公報
【特許文献5】特開2009-267255号公報
【特許文献6】WO2007/119816A1
【特許文献7】特開2012-49518号公報
【0006】
高い発光効率を得るには、前記ドーパント材料と同時に、使用するホスト材料が重要になる。ホスト材料として提案されている代表的なものとして、特許文献2で紹介されているカルバゾール化合物の4,4'-ジ(9-カルバゾリル)ビフェニル(CBP)が挙げられる。CBPはトリス(2-フェニルピリジン)イリジウム錯体(Ir(ppy)3)に代表される緑色燐光発光材料のホスト材料として使用した場合、CBPの正孔を流し易く電子を流しにくい特性上、電荷注入輸送バランスが崩れ、過剰の正孔が電子輸送層側に流出し、結果としてIr(ppy)3からの発光効率が低下する。
【0007】
前述のように、有機EL素子で高い発光効率を得るには、高い三重項励起エネルギーを有し、かつ両電荷(正孔・電子)の注入輸送特性においてバランスがとれたホスト材料が必要である。更に、電気化学的に安定であり、高い耐熱性と共に優れたアモルファス安定性を備える化合物が望まれており、更なる改良が求められている。
【0008】
特許文献3においては、有機EL素子のホスト材料として以下に示すようなカルバゾール化合物が開示されている。
【0009】
【0010】
しかしながら、特許文献3はカルバゾールの4位とカルバゾールの4位で結合した骨格を有するビスカルバゾール化合物等を開示するのみである。
【0011】
特許文献4においては、有機EL素子のホスト材料として以下に示すようなカルバゾール化合物が開示されている。
【0012】
【0013】
しかしながら、特許文献4はカルバゾールの4位とフルオレンの4位で結合した骨格を有する化合物等を開示するのみである。
【0014】
特許文献5、6、7においては、有機EL素子のホスト材料として以下に示すようなカルバゾール化合物が開示されている。
【0015】

【0016】
しかしながら、これらはカルバゾールの4位とジベンゾフラン若しくはジベンゾチオフェンの1位で結合した骨格を同一分子内に2つ以上有する化合物を用いた有機EL素子の有用性を開示するものではない。
【発明の概要】
【0017】
有機EL素子をフラットパネルディスプレイ等の表示素子に応用するためには、素子の発光効率を改善すると同時に駆動時の安定性を十分に確保する必要がある。本発明は、上記現状に鑑み、高効率かつ高い駆動安定性を有した実用上有用な有機EL素子及びそれに適する化合物を提供することを目的とする。
【0018】
本発明者らは、鋭意検討した結果、カルバゾールの4位とジベンゾフラン若しくはジベンゾチオフェンの1位で結合した骨格を同一分子内に2つ以上有する化合物を有機EL素子に用いることで優れた特性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
本発明は、基板上に、陽極、有機層及び陰極が積層されてなる有機電界発光素子において、発光層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔阻止層、電子阻止層及び励起子阻止層からなる群れから選ばれる少なくとも一つの層に、一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を含有することを特徴とする有機電界発光素子に関する。
【0020】

【0021】
式中、Aはn価の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、炭素数3〜30の芳香族複素環基、又はこれら芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が2〜6つ連結された芳香族基であり、nは2又は3の整数である。該芳香族炭化水素基又は該芳香族複素環基が置換基を有する場合の置換基は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、−OAr、−N(Ar)2、−Si(Ar)3を表す。Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、−OAr、−N(Ar)2、−Si(Ar)3、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の芳香族複素環基又はこれら芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が2〜3つ連結された芳香族基である。Arは炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の芳香族複素環基又はこれら芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が2〜3つ連結された芳香族基であり、複数のArは同一であっても異なっていても良い。Xはそれぞれ独立して酸素又は硫黄を表す。また、上記芳香族炭化水素基、芳香族複素環基は置換基を有してもよい。
【0022】
一般式(1)において、Rは水素であることが好ましい。また、一般式(1)において、Aが下記式(2)〜(5)のいずれかで表されるn価の芳香族基であることができる。
【0023】

【0024】
式(2)〜(5)中、Yはそれぞれ独立してC、C(R)又は窒素を表し、n個のYはCである。但し、式(4)中のYのn+1個は炭素(C)である。n及びRは一般式(1)と同意である。n個のCはn価の基を与えるための結合手を有する。更に、式(4)の中央の環に存在する1つのYは、隣接環と結合するCを有する。
【0025】
上記の一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を含む層が、燐光発光ドーパントを含有する発光層であることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の有機EL素子に用いる一般式(1)で表されるカルバゾール化合物は、カルバゾールの4位とジベンゾフラン若しくはジベンゾチオフェンの1位で結合する骨格を同一分子内に2つ以上有することにより、他の置換位置でカルバゾールとジベンゾフラン若しくはジベンゾチオフェンとが結合する場合や同じ置換位置であっても同一分子内に1つのみ有する場合と比較して、より高い正孔輸送性を維持しながら電子輸送性を向上させることができる。更に、このカルバゾール化合物はバランスの良い優れた両電荷の注入輸送特性を有するために、該化合物を燐光ホスト材料として有機EL素子に使用した場合、発光層中の電荷のバランスが良好になることから、正孔と電子の再結合確率が高くなり、本発明の有機EL素子は高い発光効率が達成されると考えられる。
【0027】
このカルバゾール化合物を正孔輸送層又は電子阻止層の材料として使用した場合には、その良好な正孔注入輸送特性から、素子の駆動電圧の低減、ならびに発光効率の向上をもたらす。
【0028】
また、このカルバゾール化合物はドーパントの最低三重項励起状態のエネルギーを閉じ込めるのに充分高い最低三重項励起状態のエネルギーを有しているために、励起子阻止層の材料として用いるとドーパントから隣接する該化合物を含む層への三重項励起エネルギーの移動を効果的に抑えることができ、高い発光効率を得ることができる。
【0029】
加えて、このカルバゾール化合物はカルバゾールの4位とジベンゾフラン若しくはジベンゾチオフェンの1位で結合する骨格を同一分子内に2つ以上有することにより、同一分子内に1つのみ有する場合と比較してガラス転移点が高くなり、より高い熱安定性と良好なアモルファス特性を示し、また電気化学的に安定であることから、駆動寿命が長く、耐久性の高い有機EL素子を実現できる。
【0030】
本発明による有機EL素子は、発光特性、駆動寿命ならびに耐久性において、実用上満足できるレベルにあり、フラットパネルディスプレイ(携帯電話表示素子、車載表示素子、OAコンピュータ表示素子やテレビ等)、面発光体としての特徴を生かした光源(照明、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板や標識灯等への応用において、その技術的価値は大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】有機EL素子の構造例を示す断面図である。
図2】カルバゾール化合物(23)の1H−NMRチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の有機EL素子は、前記一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を有機層中に含有する。
【0033】
上記一般式(1)において、Aはn価の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、炭素数3〜30の芳香族複素環基又はこれら芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基が2〜6つ連結された芳香族基である。好ましくは、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の芳香族複素環基又はこれら芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基が2〜6つ連結された芳香族基である。芳香族複素環基の場合、芳香族複素環を構成する異種原子としては、酸素、硫黄、窒素又はケイ素等が好ましく、より好ましくは窒素である。異種原子の数は1〜3個であることが好ましい。芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は単環であっても縮合環であってもよいが、単環又は2〜3環の縮合環であることが好ましく、より好ましくは単環又は2環の縮合環である。nは2又は3の整数である。
【0034】
上記芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は、未置換の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基であっても、置換の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基であってもよい。芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基が連結された芳香族基である場合、その芳香族基に含まれる芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基は同じであってもよく、異なってもよく、芳香族炭化水素基と芳香族複素環基の両方を含んでもよい。
【0035】
未置換の芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基の具体例としては、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、オクタレン、インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、トリンデン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、テトラフェン、テトラセン、プレイアデン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、コラントリレン、ヘキサヘリセン、ヘキサフェン、ヘキサセン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ヘプタセン、ピラントレン、フラン、ピラン、チオフェン、チオピラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、セレナゾール、テルラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、シロール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、イソクロメン、クロメン、ジベンゾフラン、キサンテン、オキサントレン、ペリキサンテノキサンテン、チアナフテン、イソチアナフテン、イソチオクロメン、チオクロメン、チオファントレン、ジベンゾチオフェン、チオキサンテン、チアントレン、フェノキサチイン、インドリジン、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、プリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、キノリジン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェノセレナジン、フェノテルラジン、アンチリジン、シラインデン、シラフルオレン、シラアントラセン、シラントレン、フェノキサシリン、フェノチアシリン、又はフェナザシリン等からn個の水素を除いて生じるn価の基が挙げられ、好ましくはベンゼン、ナフタレン、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、シロール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、チアナフテン、イソチアナフテン、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、シラインデンからn個の水素を除いて生じるn価の基である。
【0036】
未置換の芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基が複数連結された芳香族基(以下、連結芳香族基という。)である場合には、これを構成する未置換の芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基としては、上記の芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又は両者が適する。この場合、連結芳香族基全体としてn価の基となるようにするため、これを構成する未置換の芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基の価数は上記とは異なることがある。また、連結芳香族基中には、一般式(1)に現れるジベンゾフラン環又はジベンゾチオフェン環(両者をDBFT環という。)と、カルバゾール環が直接結合した構造を含むことは望まれない。
【0037】
連結芳香族基において、連結される数は2〜4が好ましく、より好ましくは2〜3であり、連結される芳香環は同一であっても異なっていてもよい。その場合、式(1)中、カルバゾールの窒素と結合する結合位置は限定されず、連結された芳香族環の末端部の環であっても中央部の環であってもよい。ここで、芳香族環は芳香族炭化水素基及び芳香族複素基を総称する意味である。
【0038】
ここで、芳香族環が2〜6つ連結された芳香族化合物から生じる2価の連結芳香族基の場合は、例えば、下記式で表される。


(式(15)〜(17)中、Ar〜Arは、置換又は無置換の芳香族環を表す。)
【0039】
連結芳香族基である場合、これは未置換であっても、置換基を有してもよい。芳香族環が2〜6つ連結された芳香族化合物から生じるn価の未置換の連結芳香族基の具体例としては、ビフェニル、フェニルピリジン、フェニルピリミジン、フェニルトリアジン、ビピリジン、ビピリミジン、ビトリアジン、テルフェニル、ジフェニルピリジン、ジフェニルピリミジン、ジフェニルトリアジン、ビストリアジニルベンゼン、テルピリジン、フェニルテルフェニル、フェニルナフタレン、フェニルキノリン、ビナフタレン、ビキノリン、ジフェニルナフタレン、ジフェニルキノリン、フェニルジベンゾフラン、フェニルジベンゾチオフェン、フェニルカルバゾール、ジベンゾフラニルピリジン、ジベンゾチエニルピリジン、ピリジルカルバゾール、ジベンゾフラニルカルバゾール、ジベンゾチエニルカルバゾール、カルバゾリルカルバゾール、ジフェニルカルバゾール、カルバゾリルビフェニル、カルバゾリルテルフェニル、ビスカルバゾリルベンゼン又はビスカルバゾリルビフェニル等からn個の水素を除いて生じるn価の基が挙げられ、好ましくはビフェニル、フェニルピリジン、フェニルピリミジン、フェニルトリアジン、ビピリジン、ビピリミジン、ビトリアジン、テルフェニル、ジフェニルピリジン、ジフェニルピリミジン、ジフェニルトリアジン、ビストリアジニルベンゼン、テルピリジン、フェニルナフタレン又はフェニルキノリンからn個の水素を除いて生じるn価の基である。
【0040】
上記芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基は置換基を有してもよく、置換基を有する場合、置換基の総数は1〜6である。好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜2である。また、上記芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が2つ以上の置換基を有する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。連結芳香族基が置換基を有する場合、これを構成する芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の置換基と同様である。
【0041】
上記芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が置換基を有する場合、置換基としては、それぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、−OAr、−N(Ar)2、−Si(Ar)3である。Arは炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の芳香族複素環基又はこれら芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が2〜3つ連結された連結芳香族基であり、複数のArは同一であっても異なっていても良い。また、Arが芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又は連結芳香族基である場合、これらは置換基を有することができるが、上記炭素数の範囲内に限られる。この置換基は上記から選ばれるが、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基である。
【0042】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基又はデシル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基又はオクチル基である。より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基である。上記アルキル基は直鎖であっても分岐していても構わない。
【0043】
シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基又はシクロデシル基等が挙げられ、好ましくはシクロペンチル基、シクロヘキシル基又はメチルシクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基である。
【0044】
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基又はデシルオキシ基等が挙げられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基又はオクチルオキシ基である。より好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基又はヘキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基である。上記アルコキシ基は直鎖であっても分岐していても構わない。
【0045】
一般式(1)において、好ましいAとしては、上記式(2)〜(5)、好ましくは式(2)、(3)又は(4)で表されるn価の基が挙げられる。式(2)〜(5)中、Yはそれぞれ独立してC、C(R)又は窒素を表し、n個のYはCである。但し、式(4)中のYのn+1個はCである。それぞれの六員環を構成するYのうち、0〜3個のYが窒素であることが好ましい。n価の基を与えるn個のCは、同一の環に存在しても、異なる環に存在してもよい。ここで、n及びRは一般式(1)のn及びRと同じ意味を有する。
【0046】
一般式(1)及びYがC(R)である場合において、Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、−OAr、−N(Ar)2、−Si(Ar)3、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の芳香族複素環基又はこれら芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が2〜3つ連結された連結芳香族基である。好ましくは、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の芳香族複素環基又はこれら芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が2〜3つ連結された連結芳香族基である。
【0047】
ここで、−OAr、−N(Ar)2、−Si(Ar)3におけるArは、一般式(1)のAの説明における芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が置換基を有する場合の置換基として説明した−OAr、−N(Ar)2、−Si(Ar)3におけるArと同じ意味を有する。また、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又は連結芳香族基については、炭素数の範囲が異なる他は一般式(1)のAと同様である。アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基の具体例は、一般式(1)のAの説明における芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が置換基を有する場合の置換基として説明したこれらと同様である。
【0048】
一般式(1)及び式(2)〜(5)において、それぞれ同一の記号及び式は特に断らない限り同一の意味を有すると解される。
【0049】
一般式(1)において、Xはそれぞれ独立して酸素又は硫黄を表す。
【0050】
本発明の有機EL素子に用いるカルバゾール化合物は、4位がハロゲン原子で置換されたカルバゾール誘導体と1位がハロゲン原子で置換されたジベンゾフラン誘導体若しくはジベンゾチオフェン誘導体を出発原料として、カルバゾールの4位とジベンゾフラン若しくはジベンゾチオフェンの1位で結合した骨格を有するDBFT-カルバゾール化合物から、目的とする化合物の構造に応じて原料を選択することにより公知の手法を用いて合成することができる。
【0051】
例えば、カルバゾールの4位とジベンゾチオフェン(DBT)の1位で結合した骨格を有するDBT-カルバゾール化合物は、The Journal of Organic Chemistry 1995, 60, 7508-7510.に示される合成例を参考にして1-ブロモジベンゾチオフェンの臭素原子をボロン酸ピナコールエステルに変換した後に、4-ブロモカルバゾールとの鈴木−宮浦クロスカップリング反応により合成できる。
【0052】

【0053】
このDBT-カルバゾール化合物の窒素上の水素原子を、例えばウルマン反応などのクロスカップリング反応により対応する芳香族基に置換することで、一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を合成することができる。
【0054】
一般式(1)で表されるカルバゾール化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
上記一般式(1)で表されるカルバゾール化合物は、基板上に、陽極、複数の有機層及び陰極が積層されてなる有機EL素子の少なくとも一つの有機層に含有させることにより、優れた有機EL素子を与える。有機層は少なくとも発光層を有することが好ましく、その他に正孔輸送層、電子輸送層、正孔阻止層、電子阻止層又は励起子阻止層を有することが好ましい。一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を含有させる有機層としては、発光層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔阻止層、電子阻止層又は励起子阻止層が適する。より好ましくは、燐光発光ドーパントを含有する発光層のホスト材料として含有させることが良い。
【0059】
本発明の有機EL素子は、基板上に積層された陽極と陰極の間に、少なくとも一つの発光層を有する有機層を有し、かつ少なくとも一つの有機層は、上記一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を含む。有利には、燐光発光ドーパントと共に一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を発光層中に含む。
【0060】
次に、本発明の有機EL素子の構造について、図面を参照しながら説明するが、本発明の有機EL素子の構造は何ら図示のものに限定されるものではない。
【0061】
図1は一般的な有機EL素子の構造例を示す断面図であり、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を各々表す。本発明の有機EL素子では発光層と隣接して励起子阻止層を有してもよく、また、発光層と正孔注入層との間に電子阻止層を有してもよい。励起子阻止層は発光層の陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。本発明の有機EL素子では、基板、陽極、発光層及び陰極を必須の層として有するが、必須の層以外の層に、正孔注入輸送層、電子注入輸送層を有することが良く、更に発光層と電子注入輸送層の間に正孔阻止層を有することが良い。なお、正孔注入輸送層は、正孔注入層と正孔輸送層のいずれか又は両者を意味し、電子注入輸送層は、電子注入層と電子輸送層のいずれか又は両者を意味する。
【0062】
なお、図1とは逆の構造、すなわち、基板1上に陰極7、電子輸送層6、発光層5、正孔輸送層4、陽極2の順に積層することも可能であり、この場合も、必要により層を追加したり、省略したりすることが可能である。
【0063】
−基板−
本発明の有機EL素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機EL素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英などからなるものを用いることができる。
【0064】
−陽極−
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In2O3-ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0065】
−陰極−
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が、透明又は半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0066】
また、陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0067】
−発光層−
発光層は蛍光発光層、燐光発光層のいずれでもよいが、燐光発光層であることが好ましい。
【0068】
発光層が蛍光発光層である場合、蛍光発光材料は少なくとも1種の蛍光発光材料を単独で使用しても構わないが、蛍光発光材料を蛍光発光ドーパントとして使用し、ホスト材料を含むことが好ましい。
【0069】
発光層における蛍光発光材料としては、一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を用いることができるが、多数の特許文献等により知られているので、それらから選択することもできる。例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリジン化合物、8-キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体、希土類錯体、遷移金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体等が挙げられる。好ましくは縮合芳香族化合物、スチリル化合物、ジケトピロロピロール化合物、オキサジン化合物、ピロメテン金属錯体、遷移金属錯体、ランタノイド錯体が挙げられ、より好ましくはナフタセン、ピレン、クリセン、トリフェニレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ベンゾ[a]アントラセン、ペンタセン、ペリレン、フルオランテン、アセナフソフルオランテン、ジベンゾ[a,j]アントラセン、ジベンゾ[a,h]アントラセン、ベンゾ[a]ナフタセン、ヘキサセン、アンタントレン、ナフト[2,1-f]イソキノリン、α-ナフタフェナントリジン、フェナントロオキサゾール、キノリノ[6,5-f]キノリン、ベンゾチオファントレン等が挙げられる。これらは置換基としてアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、ジアリールアミノ基を有していてもよい。
【0070】
前記蛍光発光材料を蛍光発光ドーパントとして使用し、ホスト材料を含む場合、蛍光発光ドーパントが発光層中に含有される量は、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%の範囲にあることが良い。
【0071】
通常、有機EL素子は、陽極、陰極の両電極より発光物質に電荷を注入し、励起状態の発光物質を生成し、発光させる。電荷注入型の有機EL素子の場合、生成した励起子のうち、一重項励起状態に励起されるのは25%であり、残り75%は三重項励起状態に励起されると言われている。Advanced Materials 2009, 21, 4802-4806.に示されているように、特定の蛍光発光物質は、項間交差等により三重項励起状態へとエネルギーが遷移した後、三重項−三重項消滅あるいは熱エネルギーの吸収により、一重項励起状態に逆項間交差され蛍光を放射し、熱活性化遅延蛍光を発現することが知られている。本発明の有機EL素子でも遅延蛍光を発現することができる。この場合、蛍光発光及び遅延蛍光発光の両方を含むこともできる。但し、発光の一部或いは部分的にホスト材料からの発光があってもよい。
【0072】
発光層が遅延蛍光発光層である場合、発光層に遅延蛍光材料を単独で使用することもできるが、遅延蛍光材料を遅延蛍光発光ドーパントとして使用し、ホスト材料を混合することが好ましい。
【0073】
発光層における遅延蛍光発光材料としては本発明化合物を用いることができるが、公知の遅延蛍光発光材料から選択することもできる。例えば非特許文献Appl. Phys. Lett. 98, 083302(2011)に記載されているインドロカルバゾール誘導体やNature 492, 234(2012)に記載されているカルバゾール誘導体等が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0074】
遅延蛍光材料の具体例を下記に示すが、下記の化合物に限定されるものではない。
【0075】

【0076】
前記遅延蛍光発光材料を遅延蛍光発光ドーパントとして使用し、ホスト材料を含む場合、遅延蛍光発光ドーパントが発光層中に含有される量は、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.01〜10%の範囲にあることが良い。
【0077】
発光層における遅延蛍光ホスト材料としては、本発明化合物を用いることができるが、本発明化合物以外の化合物から選択することもできる。例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデンなどの縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンなどの芳香族アミン誘導体、トリス(8−キノリナート)アルミニウム(III)をはじめとする金属キレート化オキシノイド化合物、ジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、インデン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ピロロピロール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、トリアジン誘導体、ポリマー系では、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体、アリールシラン誘導体等が使用できるが特に限定されるものではない。
【0078】
発光層が燐光発光層である場合、燐光発光ドーパントとホスト材料を含む。燐光発光ドーパントとしては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金から選ばれる少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体を含有するものが良い。具体的には以下の特許文献に記載されている化合物が挙げられるが、これらの化合物に限定されない。
【0079】
WO2009/073245A1、WO2009/046266号A1、WO2007/095118A1、WO2008/156879A1、WO2008/140657A1、US2008/261076A1、特表2008-542203号公報、WO2008/054584A1、特表2008-505925号公報、特表2007-522126号公報、特表2004-506305号公報、特表2006-513278号公報、特表2006-50596号公報、WO2006/046980A1、WO2005/113704A1、US2005/260449A1、US2005/2260448A1、US2005/214576A1、WO2005/076380A1、US2005/119485号A1、WO2004/045001A1、WO2004/045000A1、WO2006/100888A1、WO2007/004380A1、WO2007/023659A1、WO2008/035664A1、特開2003-272861号公報、特開2004-111193号公報、特開2004-319438号公報、特開2007-2080号公報、特開2007-9009号公報、特開2007-227948号公報、特開2008-91906号公報、特開2008-311607号公報、特開2009-19121号公報、特開2009-46601号公報、特開2009-114369号公報、特開2003-253128号公報、特開2003-253129号公報、特開2003-253145号公報、特開2005-38847号公報、特開2005-82598号公報、特開2005-139185号公報、特開2005-187473号公報、特開2005-220136号公報、特開2006-63080号公報、特開2006-104201号公報、特開2006-111623号公報、特開2006-213720号公報、特開2006-290891号公報、特開2006-298899号公報、特開2006-298900号公報、WO2007/018067A1、WO2007/058080A1、WO2007/058104A1、特開2006-131561号公報、特開2008-239565号公報、特開2008-266163号公報、特開2009-57367号公報、特開2002-117978号公報、特開2003-123982号公報、特開2003-133074号公報、特開2006-93542号公報、特開2006-131524号公報、特開2006-261623号公報、特開2006-303383号公報、特開2006-303394号公報、特開2006-310479号公報、特開2007-88105号公報、特開2007-258550号公報、特開2007-324309号公報、特開2008-270737号公報、特開2009-96800号公報、特開2009-161524号公報、WO2008/050733号公報、特開2003-73387号公報、特開2004-59433号公報、特開2004-155709号公報、特開2006-104132号公報、特開2008-37848号公報、特開2008-133212号公報、特開2009-57304号公報、特開2009-286716号公報、特開2010-83852号公報、特表2009-532546号公報、特表2009-536681号公報、特表2009-542026号公報等。
【0080】
好ましい燐光発光ドーパントとしては、Ir等の貴金属元素を中心金属として有するIr(ppy)3等の錯体類、Ir(bt)2(acac)等の錯体類、PtOEt3等の錯体類が挙げられる。これらの錯体類の具体例を以下に示すが、下記の化合物に限定されない。
【0081】



【0082】
前記燐光発光ドーパントが発光層中に含有される量は、0.1〜50重量%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは1〜30重量%である。
【0083】
発光層におけるホスト材料としては、前記一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を用いることが好ましい。しかし、該カルバゾール化合物を発光層以外の他のいずれかの有機層に使用する場合は、発光層に使用する材料は一般式(1)で表されるカルバゾール化合物以外の他のホスト材料であってもよい。また、一般式(1)で表されるカルバゾール化合物と他のホスト材料を併用してもよい。更に、公知のホスト材料を複数種類併用して用いてもよい。
【0084】
使用できる公知のホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する化合物であることが好ましい。
【0085】
このような他のホスト材料は、多数の特許文献等により知られているので、それらから選択することができる。ホスト材料の具体例としては、特に限定されるものではないが、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第3級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8-キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体、ポリシラン系化合物、ポリ(N-ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。
【0086】
−注入層−
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層又は正孔輸送層の間、及び陰極と発光層又は電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0087】
−正孔阻止層−
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで正孔と電子が発光層中で再結合する確率を向上させることができる。
【0088】
正孔阻止層には一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を用いることが好ましいが、該カルバゾール化合物を他のいずれかの有機層に使用する場合は、公知の正孔阻止材料を用いてもよい。また、正孔阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
【0089】
−電子阻止層−
電子阻止層とは、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい電子阻止材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで正孔と電子が発光層中で再結合する確率を向上させることができる。
【0090】
電子阻止層の材料としては、一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を用いることが好ましいが、該カルバゾール化合物を他のいずれかの有機層に使用する場合は、後述する正孔輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。電子阻止層の膜厚は好ましくは3〜100nmであり、より好ましくは5〜30nmである。
【0091】
−励起子阻止層−
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。
【0092】
励起子阻止層の材料としては、一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を用いることができるが、該カルバゾール化合物を他のいずれかの有機層に使用する場合は、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。公知の励起子阻止材料としては、例えば、1,3−ジ(9-カルバゾリル)ベンゼン(mCP)やビス(2-メチル-8-キノリノラト)-4-フェニルフェノラトアルミニウム(III)(BAlq)が挙げられる。
【0093】
−正孔輸送層−
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層又は複数層設けることができる。
【0094】
正孔輸送材料は、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。正孔輸送層には一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を用いることが好ましいが、該カルバゾール化合物を他のいずれかの有機層に使用する場合は、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。使用できる公知の正孔輸送材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第3級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ポルフィリン化合物、ポリシラン系化合物、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
【0095】
−電子輸送層−
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する電子輸送材料からなり、電子輸送層は単層又は複数層設けることができる。
【0096】
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。電子輸送層には一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を用いることが好ましいが、該カルバゾール化合物を他のいずれかの有機層に使用する場合は、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【実施例】
【0097】
以下、本発明を実施例によって更に詳しく説明するが、本発明は勿論、これらの実施例に限定されるものではなく、その要旨を越えない限りにおいて、種々の形態で実施することが可能である。
【0098】
以下に示す合成経路により本発明に用いた一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を合成した。なお、化合物番号は、上記化学式に付した番号に対応する。
【0099】
合成例1
化合物(23)の合成

【0100】
窒素雰囲気下、1-ブロモジベンゾ[b,d]チオフェン(A)16.02 g (0.061 mol)、ビス(ピナコラート)ジボロン23.20 g (0.091 mol)、酢酸カリウム17.93 g (0.18 mol)とジメチルスルホキシド400 mlを室温で撹拌しながら、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)・ジクロロメタン錯体2.49 g (0.0031 mol)を加えた後に、80 ℃で加熱しながら4時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後に、蒸留水2,400 mlを加え、この溶液を酢酸エチル(3 × 600 ml)で抽出した。有機層を蒸留水400 mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、ボロン酸ピナコールエステル(B)12.09 g (0.039 mol、収率64%)を得た。
APCI-TOFMS, m/z 310 [M]+
【0101】

【0102】
窒素雰囲気下、4-ブロモカルバゾール(C)4.19 g (0.017 mol)、ボロン酸ピナコールエステル(B)6.87 g (0.022 mol)、炭酸ナトリウム水溶液(2.0 mol/l) 36 ml、エタノール43 mlとトルエン128 mlを室温で撹拌しながら、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 0.393 g (0.00034 mol)を加えた後に、70 ℃で加熱還流しながら19.5時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後に、蒸留水40 mlを加えた。この溶液を濃縮した後に、ジクロロメタン(3 × 150 ml)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、白色固体として4-(1-ジベンゾ[b,d]チエニル)カルバゾール(D)5.55 g (0.016 mol、収率93%)を得た。
APCI-TOFMS, m/z 349 [M]+
【0103】

【0104】
窒素雰囲気下、1,3-ジヨードベンゼン2.33 g (0.0071 mol)、4-(1-ジベンゾ[b,d]チエニル)カルバゾール(D)5.43 g (0.016 mol)、ヨウ化銅(I) 0.142 g (0.00071 mol)、リン酸三カリウム6.00 g (0.028 mol)と脱水1,4-ジオキサン140 mlを室温で撹拌しながら、trans-1,2-シクロヘキサンジアミン0.85 ml (0.0071 mol)を加えた後に、100 ℃で加熱還流しながら16時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後に、無機塩をろ別し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。更に、加熱リスラリーにより精製を行い、白色固体として化合物(23)5.36 g (0.0069 mol、収率98%)を得た。
化合物(23)の1H-NMR (400 MHz, THF-d8)測定結果を図2に示す。
APCI-TOFMS, m/z 773 [M+H]+
【0105】
実施例1
膜厚110 nmの酸化インジウムスズ(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度2.0 × 10-5 Paで積層させた。まず、ITO上に正孔注入層として、銅フタロシアニン(CuPC)を25 nmの厚さに形成した。次に、正孔輸送層として4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPD)を90 nmの厚さに形成した。次に、正孔輸送層上に、発光層のホスト材料として化合物(23)と青色燐光発光材料であるビス[2-(4,6-ジフルオロフェニル)ピリジナート-N,C2’](ピコリネート)イリジウム(FIrpic)とを異なる蒸着源から、共蒸着し、30 nmの厚さに発光層を形成した。この時、FIrpicの濃度は10 wt%であった。次に、電子輸送層としてトリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)を30 nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を1 nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、電極としてアルミニウム(Al)を70 nmの厚さに形成し、有機EL素子を作成した。
【0106】
得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、表1に示すような発光特性を有することが確認された。表1において、輝度、電圧及び発光効率は2.5 mA/cm2での駆動時の値を示す。なお、素子発光スペクトルの極大波長は475 nmであり、FIrpicからの発光が得られていることがわかった。
【0107】
実施例2〜3
実施例1における発光層のホスト材料として、化合物(23)に代えて化合物(48)又は(53)を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作成した。各々の素子発光スペクトルの極大波長は475 nmであり、FIrpicからの発光が得られていると同定された。表1に各々の発光特性を示す。
【0108】
比較例1
実施例1における発光層のホスト材料として、1,3-ジ(9-カルバゾリル)ベンゼン(mCP)を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作成した。素子発光スペクトルの極大波長は475 nmであり、FIrpicからの発光が得られていると同定された。表1に発光特性を示す。
【0109】
比較例2〜3
実施例1における発光層のホスト材料として、化合物(H1)又は(H2)を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作成した。素子発光スペクトルの極大波長は475 nmであり、FIrpicからの発光が得られていると同定された。表1に発光特性を示す。
【0110】

【0111】
【表1】
【0112】
実施例4
膜厚110 nmの酸化インジウムスズ(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度2.0 × 10-5 Paで積層させた。まず、ITO上に正孔注入層として、銅フタロシアニン(CuPC)を25 nmの厚さに形成した。次に、正孔輸送層として4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPD)を40 nmの厚さに形成した。次に、正孔輸送層上に、発光層のホスト材料として化合物(23)と緑色燐光発光材料であるトリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)とを異なる蒸着源から、共蒸着し、40 nmの厚さに発光層を形成した。この時、Ir(ppy)3の濃度は10 wt%であった。次に、電子輸送層としてトリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)を20 nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を1 nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、電極としてアルミニウム(Al)を70 nmの厚さに形成し、有機EL素子を作成した。
【0113】
得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、表2に示すような発光特性を有することが確認された。表2において、輝度、電圧及び発光効率は20 mA/cm2での駆動時の値を示す。なお、素子発光スペクトルの極大波長は530 nmであり、Ir(ppy)3からの発光が得られていることがわかった。
【0114】
実施例5〜8
実施例4における発光層のホスト材料として、化合物(23)に代えて化合物(48)、(50)、(51)又は(53)を用いた以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作成した。各々の素子発光スペクトルの極大波長は530 nmであり、Ir(ppy)3からの発光が得られていると同定された。表2に各々の発光特性を示す。
【0115】
比較例4
実施例4における発光層のホスト材料として、4,4’-ジ(9-カルバゾリル)ビフェニル(CBP)を用いた以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作成した。素子発光スペクトルの極大波長は530 nmであり、Ir(ppy)3からの発光が得られていると同定された。表2に発光特性を示す。
【0116】
比較例5〜6
実施例4における発光層のホスト材料として、化合物(H1)又は(H2)を用いた以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作成した。素子発光スペクトルの極大波長は530 nmであり、Ir(ppy)3からの発光が得られていると同定された。表2に発光特性を示す。
【0117】
【表2】
図1
図2