特許第6169521号(P6169521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169521
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】プラズマエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20170713BHJP
【FI】
   H01L21/302 105A
【請求項の数】16
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-80592(P2014-80592)
(22)【出願日】2014年4月9日
(65)【公開番号】特開2015-201583(P2015-201583A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年3月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】勝沼 隆幸
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−093778(JP,A)
【文献】 特開2010−206051(JP,A)
【文献】 特開2004−064060(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0098725(US,A1)
【文献】 特開2011−059579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/461
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板上に形成された被処理膜を、前記被処理膜上に形成されたシリコン膜をマスクとしてエッチングするプラズマエッチング方法において、
酸化膜とカーボン膜とが交互に積層された前記被処理膜の厚さ方向における任意の位置まで、F(フッ素)に対するC(炭素)の含有比率が所定の比率である前記第1のCF系ガスと、酸素ガスとを含む第1の混合ガスのプラズマにより、前記被処理膜をエッチングする第1のエッチングを行い、
前記第1のエッチングの後に、前記第1のCF系ガスを、F(フッ素)に対するC(炭素)の含有比率が前記第1のCF系ガスにおける前記所定の比率よりも高い第2のCF系ガスに切り換え、
前記被処理膜の厚さ方向における前記任意の位置から、前記第2のCF系ガスと酸素ガスとを含む第2の混合ガスのプラズマにより、前記被処理膜をエッチングする第2のエッチングを行うことを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項2】
前記被処理膜は、最下層に酸化膜が形成されており、
前記被処理膜に含まれる複数のカーボン膜の中で、一番下のカーボン膜の上面から前記カーボン膜の厚さ方向において前記カーボン膜の途中の位置までは前記第1のエッチングを行い、その後、前記第1のCF系ガスを前記第2のCF系ガスに切り換え、前記カーボン膜の厚さ方向において前記一番下のカーボン膜の位置から最下層の酸化膜までは前記第2のエッチングを行うことを特徴とする請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項3】
前記被処理膜の最上部から一番下のカーボン膜の位置まで継続して前記第1のエッチングを行うことを特徴とする請求項2に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項4】
前記被処理膜は、前記酸化膜と前記カーボン膜とが交互に複数積層されており、
一番下の前記酸化膜および一番下の前記カーボン膜を除く前記被処理膜のエッチングにおいて、前記第1のエッチングと前記第2のエッチングとを交互に複数回繰り返すことにより、前記被処理膜をエッチングすることを特徴とする請求項1また2に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項5】
前記第1のエッチングおよび前記第2のエッチングによって形成された溝の底が前記被処理膜内の一番下の前記カーボン膜を除く前記カーボン膜に達するたびに、前記第1のCF系ガスと前記第2のCF系ガスとを切り換えることを特徴とする請求項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項6】
前記被処理膜のエッチングにおいて、一番下の前記酸化膜を除く前記酸化膜を前記第1のエッチングによりエッチングし、一番下の前記カーボン膜を除く前記カーボン膜を前記第2のエッチングによりエッチングすることを特徴とする請求項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項7】
前記第1のCF系ガスは、前記含有比率が0.33以下であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項8】
前記第2のCF系ガスは、前記含有比率が0.33より大きいことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項9】
前記第2のエッチングは、
前記酸化膜のエッチングレートよりも前記カーボン膜のエッチングレートの方が高い条件でのエッチングであることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項10】
前記第1の混合ガスにおいて、前記酸素ガスの流量は、前記第1のCF系ガスの流量の1.0倍以上であり、
前記第2の混合ガスにおいて、前記酸素ガスの流量は、前記第2のCF系ガスの流量の5.0倍以上であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項11】
前記第1のCF系ガスは、CF4ガスであることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項12】
前記第2のCF系ガスは、C4F6ガス、C4F8ガス、またはC5F8ガスのいずれかであることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項13】
前記酸化膜と前記カーボン膜とは、前記被処理膜内に交互に複数回積層されていることを特徴とする請求項1から1のいずれか一項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項14】
前記被処理膜内の前記カーボン膜の数は、前記被処理膜内の前記酸化膜の数よりも1つ少ないことを特徴とする請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項15】
前記酸化膜は、前記被処理膜の最上層および最下層にそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項16】
前記被処理膜は、前記シリコン基板に直接接触することを特徴とする請求項1から1のいずれか一項に記載のプラズマエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の種々の側面及び実施形態は、プラズマエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SiCN等の下地層上に形成されたSiOC等からなる絶縁層に、デュアルダマシン構造のトレンチを形成する場合、例えば、フォトレジストをマスクとして、C4F8等のフッ素系ガスのプラズマにより絶縁層をエッチングし、絶縁層にビアホールを形成する。そして、下地層を保護するための有機材をビアホールに堆積させた後、TiN等からなるトレンチ用ハードマスクを用いて、CF4等のフッ素系ガスのプラズマにより絶縁層をエッチングし、デュアルダマシン構造のトレンチを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−59666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CF系のガスを含む混合ガスのプラズマによるSiO2膜のエッチングの過程では、SiO2上に形成されたCFポリマ層にイオン衝撃が加わると、ミキシング作用により化学反応が進み、SiF4やCOxとなってガス化する。ここで、SiO2上ではSiO2中のO(酸素)がC(炭素)をCOxとしてガス化させるが、カーボンを多く含むフォトレジストやSi(シリコン)からなる下地層上にはCが堆積する。堆積したCは、イオン衝撃に対して保護膜として作用するため、フォトレジストに対するSiO2の選択比、および、Siの下地層に対するSiO2の選択比を高くとることができる。
【0005】
ところで、酸化膜とカーボン膜とが交互に積層された被処理膜をエッチングする場合、Siとの選択比をとりつつ、酸化膜とカーボン膜をエッチングする必要がある。しかし、上述の過程に基づいて酸化膜との選択比を高めようとすると、カーボン膜がエッチングできなくなってしまう。
【0006】
また、酸化膜とカーボン膜とが交互に積層された被処理膜を、CF系のガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングした場合、形成された溝の底にマイクロトレンチが発生したり、溝の側壁に凹凸が発生する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、酸化膜とカーボン膜とが交互に積層された被処理膜を、前記被処理膜上に形成されたシリコン膜をマスクとして、第1または第2のCF系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスのプラズマによりエッチングするプラズマエッチング方法において、前記被処理膜の途中までは、F(フッ素)に対するC(炭素)の含有比率が所定の比率である前記第1のCF系ガスと、酸素ガスとを含む混合ガスのプラズマにより、前記被処理膜をエッチングする第1のエッチングを行い、前記被処理膜の途中からは、前記第1のCF系ガスよりも前記含有比率が高い前記第2のCF系ガスを含む混合ガスのプラズマにより、前記被処理膜をエッチングする第2のエッチングを行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明の種々の側面および実施形態によれば、酸化膜とカーボン膜とが交互に積層された被処理膜に、マイクロトレンチや、側壁の凹凸の少ない溝を形成することができるプラズマエッチング方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るプラズマエッチング装置の一例を示す縦断面図である。
図2図2は、実施形態に係るプラズマエッチング装置でエッチングされるウエハWの構造の一例を説明するための図である。
図3図3は、実施形態に係るプラズマエッチング方法の手順の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、各工程の実行後のウエハWの断面の一例を示す図である。
図5図5は、O2ガスの流量を変えてCF4ガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングを行った場合のウエハWの断面の一例を示す図である。
図6図6は、O2ガスの流量を変えてCF4ガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングを行った場合の各膜のエッチングレートの一例を示すグラフである。
図7図7は、O2ガスの流量を変えてCF4ガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングを行った場合の実験結果の一例を示す図である。
図8図8は、O2ガスの流量を変えてCF4ガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングを行った場合の実験結果の傾向の一例を示すグラフである。
図9図9は、CF4ガスを含む混合ガスのプラズマによりOCOC膜全体をエッチングした場合のウエハWの断面の一例を示す図である。
図10図10は、O2ガスの流量を変えてC4F8ガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングを行った場合のウエハWの断面の一例を示す図である。
図11図11は、O2ガスの流量を変えてC4F8ガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングを行った場合の各膜のエッチングレートの一例を示すグラフである。
図12図12は、O2ガスの流量を変えてC4F8ガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングを行った場合の実験結果の一例を示す図である。
図13図13は、O2ガスの流量を変えてC4F8ガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングを行った場合の実験結果の傾向の一例を示すグラフである。
図14図14は、C4F8ガスを含む混合ガスのプラズマによりOCOC膜全体をエッチングした場合のウエハWの断面の一例を示す図である。
図15図15は、OCOC膜のエッチングの途中でCF4ガスを含む混合ガスからC4F8ガスを含む混合ガスに切り換えてエッチングを行った場合のウエハWの断面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
開示するプラズマエッチング方法は、1つの実施形態において、酸化膜とカーボン膜とが交互に積層された被処理膜を、被処理膜上に形成されたシリコン膜をマスクとして、第1または第2のCF系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスのプラズマによりエッチングするプラズマエッチング方法であって、被処理膜の途中までは、F(フッ素)に対するC(炭素)の含有比率が所定の比率である第1のCF系ガスを含む混合ガスのプラズマにより、被処理膜をエッチングする第1のエッチングを行い、被処理膜の途中からは、Fに対するCの含有比率が第1のCF系ガスよりも高い第2のCF系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスのプラズマにより、被処理膜をエッチングする第2のエッチングを行う。
【0011】
また、開示するプラズマエッチング方法は、1つの実施形態において、被処理膜は、最下層に酸化膜が形成されており、被処理膜に含まれる複数のカーボン膜の中で、一番下のカーボン膜の途中までは第1のエッチングを行い、その後、一番下のカーボン膜の途中から最下層の酸化膜までは第2のエッチングを行う。
【0012】
また、開示するプラズマエッチング方法の1つの実施形態において、被処理膜は、酸化膜とカーボン膜とが交互に複数積層されており、被処理膜のエッチングにおいて、第1のエッチングと第2のエッチングとを交互に複数回繰り返すことにより、被処理膜をエッチングしてもよい。
【0013】
また、開示するプラズマエッチング方法は、1つの実施形態において、被処理膜のエッチングにおいて、酸化膜を第1のエッチングによりエッチングし、カーボン膜を第2のエッチングによりエッチングしてもよい。
【0014】
また、開示するプラズマエッチング方法は、1つの実施形態において、第1のCF系ガスは、Fに対するCの含有比率が0.33以下であってもよい。
【0015】
また、開示するプラズマエッチング方法は、1つの実施形態において、第2のCF系ガスは、Fに対するCの含有比率が0.33より大きくてもよい。
【0016】
また、開示するプラズマエッチング方法の1つの実施形態において、第2のエッチングは、酸化膜のエッチングレートよりもカーボン膜のエッチングレートの方が高い条件でのエッチングであってもよい。
【0017】
また、開示するプラズマエッチング方法は、1つの実施形態において、混合ガスに第1のCF系ガスが含まれる場合、酸素ガスの流量は、第1のCF系ガスの流量の1.0倍以上であり、混合ガスに第2のCF系ガスが含まれる場合、酸素ガスの流量は、第2のCF系ガスの流量の5.0倍以上であってもよい。
【0018】
また、開示するプラズマエッチング方法の1つの実施形態において、第1のCF系ガスは、CF4ガスであってもよい。
【0019】
また、開示するプラズマエッチング方法の1つの実施形態において、第2のCF系ガスは、C4F6、C4F8、またはC5F8ガスのいずれかであってもよい。
【0020】
また、開示するプラズマエッチング装置は、1つの実施形態において、被処理膜に対してプラズマエッチング処理を行うための処理チャンバと、処理チャンバ内を減圧する排気部と、処理チャンバ内にガスを供給するガス供給部と、上記したいずれかのプラズマエッチング方法を実行する制御部とを備える。
【0021】
以下に、開示するプラズマエッチング方法およびプラズマエッチング装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により開示する発明が限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0022】
[プラズマエッチング装置1の構成]
図1は、実施形態に係るプラズマエッチング装置1の一例を示す縦断面図である。本実施形態におけるプラズマエッチング装置1は、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置として構成されており、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる略円筒状のチャンバ(処理容器)10を有している。このチャンバ10は保安接地されている。
【0023】
チャンバ10の底部には、セラミックス等からなる絶縁板12を介して円柱状のサセプタ支持台14が配置され、このサセプタ支持台14の上に例えばアルミニウムからなるサセプタ16が設けられている。サセプタ16は下部電極を構成し、その上に被処理基板であるウエハWが載置される。このウエハWには本発明のエッチング対象である被処理膜が形成されている。
【0024】
サセプタ16の上面には、ウエハWを静電力で吸着保持する静電チャック18が設けられている。この静電チャック18は、導電膜からなる電極20をAl2O3等の誘電体の絶縁層で挟んだ構造を有する。電極20には直流電源22が電気的に接続されている。そして、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力によりウエハWが静電チャック18に吸着保持される。
【0025】
静電チャック18の周囲におけるサセプタ16の上面には、エッチングの均一性を向上させるための、例えばシリコンからなる導電性のフォーカスリング(補正リング)24が配置されている。サセプタ16およびサセプタ支持台14の側面には、例えば石英からなる円筒状の内壁部材26が設けられている。
【0026】
サセプタ支持台14の内部には、例えば円周上に冷媒室28が設けられている。この冷媒室28には、外部に設けられた図示しないチラーユニットより配管30aおよび30bを介して所定温度の冷媒、例えば冷却水が循環供給され、冷媒の温度によってサセプタ16上のウエハWの処理温度を制御することができる。
【0027】
更に、図示しない伝熱ガス供給機構からの冷熱伝達用ガス(冷却ガス)、例えばHeガスがガス供給ライン32を介して静電チャック18の上面とウエハWの裏面との間に供給される。これらの構成によって、ウエハWを、所定の温度に制御可能となっている。
【0028】
下部電極であるサセプタ16の上方には、サセプタ16と対向するように平行に上部電極34が設けられている。そして、上部電極34およびサセプタ(下部電極)16間の空間にプラズマが生成される。
【0029】
この上部電極34は、絶縁性遮蔽部材42を介して、チャンバ10の上部に支持されており、サセプタ16との対向面を構成する。また、サセプタ16と対向する上部電極34の面には、多数のガス吐出孔37が設けられる。また、上部電極34は、導電性材料、例えばアルミニウムからなる水冷構造(図示せず)の電極支持体38を有する。電極支持体38の内部には、ガス拡散室40が設けられ、このガス拡散室40からはガス吐出孔37に連通する多数のガス通流孔41が下方に延びている。
【0030】
電極支持体38にはガス拡散室40へ処理ガスを導くガス導入口62が形成されており、このガス導入口62にはガス供給管64が接続され、ガス供給管64には処理に必要なガスを供給するガス供給源66が接続されている。ガス供給管64には、複数のガス配管が接続されており、これらガス配管には流量制御器および開閉バルブ(いずれも図示せず)が設けられている。そして、処理に必要なガスは、ガス供給源66からガス供給管64を介してガス拡散室40に供給され、ガス通流孔41およびガス吐出孔37を介してシャワー状にプラズマ生成空間に吐出される。すなわち、上部電極34は処理ガスを供給するためのシャワーヘッドとして機能する。
【0031】
上部電極34には、ローパスフィルタ(LPF)51を介して可変直流電源50が電気的に接続されている。可変直流電源50は、負極が上部電極34側となるように接続され、上部電極34にマイナスの電圧を印加する。可変直流電源50からの給電はスイッチ52によりオン・オフが可能となっている。LPF51は後述する第1および第2の高周波電源からの高周波をトラップするものであり、好適にはLRフィルタまたはLCフィルタで構成される。
【0032】
チャンバ10の上部には、チャンバ10の側壁から上部電極34の高さ位置よりも上方に延びるように円筒状のチャンバ10aが設けられている。
【0033】
下部電極であるサセプタ16には、第1の整合器46を介して、第1の高周波電源48が電気的に接続されている。第1の高周波電源48は、27〜100MHzの周波数、例えば40.68MHzの高周波電力を出力する。第1の整合器46は、第1の高周波電源48の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるもので、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第1の高周波電源48の出力インピーダンスと負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。
【0034】
また、下部電極であるサセプタ16には、第2の整合器88を介して第2の高周波電源90も電気的に接続されている。この第2の高周波電源90から下部電極であるサセプタ16に高周波電力が供給されることにより、ウエハWに高周波バイアスが印加されウエハWにイオンが引き込まれる。第2の高周波電源90は、400kHz〜20MHzの範囲内の周波数、例えば13.56MHzの高周波電力を出力する。第2の整合器88は第2の高周波電源90の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるためのもので、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第2の高周波電源90の内部インピーダンスとチャンバ10内のプラズマを含めた負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。
【0035】
チャンバ10の底部には排気口80が設けられ、この排気口80に排気管82を介して排気装置84が接続されている。排気装置84は、ターボ分子ポンプおよびドライブポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ10内を所望の真空度まで減圧可能となっている。また、チャンバ10の側壁にはウエハWの搬入出口85が設けられており、この搬入出口85はゲートバルブ86により開閉可能となっている。また、チャンバ10の内壁に沿ってチャンバ10にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するためのデポシールド11が着脱自在に設けられている。すなわち、デポシールド11がチャンバ壁を構成している。また、デポシールド11は、内壁部材26の外周にも設けられている。チャンバ10の底部のチャンバ壁側のデポシールド11と内壁部材26側のデポシールド11との間には排気プレート83が設けられている。デポシールド11および排気プレート83としては、アルミニウム材にY2O3等のセラミックスを被覆したものを好適に用いることができる。
【0036】
デポシールド11のチャンバ内壁を構成する部分のウエハWとほぼ同じ高さの部分には、グランドにDC的に接続された導電性部材(GNDブロック)91が設けられており、これにより異常放電防止効果を発揮する。なお、この導電性部材91は、プラズマ生成領域に設けられていれば、その位置は図1の位置に限定されず、例えばサセプタ16の周囲等、サセプタ16側に設けられてもよく、また上部電極34の外側にリング状に設けられる等、上部電極34近傍に設けられてもよい。また、導電性部材91は、プラズマに直接さらされない位置、例えば下部電極下方の排気室に配置されてもよい。
【0037】
プラズマエッチング装置1の各構成部、例えば電源系やガス供給系、駆動系、更には、第1の高周波電源48、第2の高周波電源90、第1の整合器46、第2の整合器88等は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を含む制御部(全体制御装置)100に接続されて制御される構成となっている。また、制御部100には、オペレータがプラズマエッチング装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマエッチング装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース101が接続されている。
【0038】
更に、制御部100には、プラズマエッチング装置1で実行される各種処理を制御部100で実現するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマエッチング装置1の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわち処理レシピが格納された記憶部102が接続されている。処理レシピは記憶部102の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよく、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、制御プログラムや処理レシピ等は、他の装置から、例えば専用回線を介してプラズマエッチング装置1に適宜伝送させるようにしてもよい。
【0039】
そして、ユーザーインターフェース101からの指示に応じて、任意の処理レシピが記憶部102から呼び出され、制御部100によって実行されることで、プラズマエッチング装置1において所望の処理が実行される。
【0040】
例えば、制御部100は、後述するプラズマエッチング方法を実行するようにプラズマエッチング装置1の各部を制御する。その一例を挙げて詳細な説明をする。制御部100は、酸化膜とカーボン膜とが交互に積層された被処理膜を、被処理膜上に形成されたシリコン膜をマスクとして、CF系のガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングするようにプラズマエッチング装置1の各部を制御する。このとき、制御部100は、被処理膜の途中までは、フッ素に対する炭素の含有比率が所定の比率の第1のCF系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスのプラズマにより、被処理膜をエッチングし、被処理膜の途中からは、フッ素に対する炭素の含有比率が第1のCF系ガスよりも高い第2のCF系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスのプラズマにより、被処理膜をエッチングするようにプラズマエッチング装置1の各部を制御する。
【0041】
[ウエハWの構成]
図2は、実施形態に係るプラズマエッチング装置1でエッチングされるウエハWの構造の一例を説明するための図である。本実施形態では、一例として図2に示すような構造のウエハWを用いる。
【0042】
ウエハWは、例えば図2に示すように、シリコン基板(Si−sub)201上に、OCOC膜202、シリコン(Si)膜203、HTO(High Temperature Oxide)膜204、BARC(Bottom Anti-Reflective Coating)205、およびフォトレジスト(PR)206が順次積層された後、フォトレジスト206にフォトリソグラフィにより所定パターンが形成される。
【0043】
OCOC膜202は、例えば図2に示すように、HTO膜2020とカーボン膜2021とが交互に積層された構造を有する。本実施形態において、HTO膜2020は、OCOC膜202において、一番上と一番下に設けられる。また、本実施形態において、OCOC膜202には、HTO膜2020が例えば5層設けられ、カーボン膜2021が例えば4層設けられている。ただし、OCOC膜202に含まれるHTO膜2020およびカーボン膜2021の積層数はこれに限られず、図2に示した積層数よりも多くてもよく、少なくてもよい。
【0044】
本実施形態において、OCOC膜202の厚さは、例えば約305nmであり、OCOC膜202に含まれるそれぞれのHTO膜2020の厚さは、例えば約25nmであり、OCOC膜202に含まれるそれぞれのカーボン膜2021の厚さは、例えば約45nmである。また、本実施形態において、シリコン膜203の厚さは、例えば約300nmであり、HTO膜204の厚さは、例えば約150nmである。また、本実施形態において、BARC205の厚さは、例えば約70〜100nmであり、フォトレジスト206の厚さは、例えば約410〜510nmである。
【0045】
[プラズマエッチング方法の実施形態]
次に、本実施形態におけるプラズマエッチング方法の各工程について説明する。図3は、本実施形態に係るプラズマエッチング方法の手順の一例を示すフローチャートである。図4は、各工程の実行後のウエハWの断面の一例を示す図である。
【0046】
本実施形態におけるプラズマエッチング方法では、まず、被処理体となるウエハWがチャンバ10内に搬入されてサセプタ16上に載置される。この段階では、ウエハWの断面は、例えば図4のINITIALの欄の図に示す状態である。実験では、この段階におけるフォトレジスト206の厚さは約476nmであり、フォトレジスト206に形成されたパターンのCD(Critical Dimension)は約218nmであった。
【0047】
そして、制御部100は、排気装置84の真空ポンプにより排気口80を介してチャンバ10内を所定の圧力まで減圧し、ガス供給源66からCF系のガスを含む混合ガスをチャンバ10内に供給してBARC除去工程を実行する(ステップS100)。
【0048】
制御部100は、例えば以下の条件で、ステップS100におけるBARC除去工程を実行する。
チャンバ10内の圧力:30mT
下部電極に供給する第1の高周波電力(40.68MHz):400W
下部電極に供給する第2の高周波電力(13.56MHz):0W
供給ガスおよび流量:CF4/O2=250/13sccm
処理時間:60秒
【0049】
ステップS100に示したBARC除去工程の実行後のウエハWの断面は、例えば図4のBARC除去工程の欄の図に示す状態となる。実験では、この段階におけるフォトレジスト206の厚さは約377nmであり、HTO膜204のリセスは約16nmであり、形成された溝の底のCDは約226nmであった。
【0050】
次に、制御部100は、チャンバ10内を排気し、チャンバ10内に処理ガスを供給して、HTO膜204のエッチング工程を実行する(ステップS101)。例えば、制御部100は、ガス供給源66からCF系のガスを含む混合ガスをチャンバ10内に供給し、フォトレジスト206をマスクとしてCF系のガスを含む混合ガスのプラズマによりHTO膜204をエッチングして、HTO膜204の下層に形成されているシリコン膜203を露出させる。
【0051】
制御部100は、例えば以下の条件で、ステップS101におけるHTO除去工程を実行する。
チャンバ10内の圧力:25mT
下部電極に供給する第1の高周波電力(40.68MHz):300W
下部電極に供給する第2の高周波電力(13.56MHz):750W
供給ガスおよび流量:CHF3/CF4/Ar/O2
=240/180/400/10sccm
処理時間:60秒
【0052】
ステップS101に示したHTO膜204のエッチング工程の実行後のウエハWの断面は、例えば図4のHTO膜204のエッチング工程の欄の図に示す状態となる。実験では、この段階におけるフォトレジスト206の厚さは約294nmであり、シリコン膜203のリセスは約12nmであり、形成された溝の底のCDは約194nmであった。
【0053】
次に、制御部100は、チャンバ10内を排気し、チャンバ10内にO2(酸素)ガスを供給して、アッシング工程を実行する(ステップS102)。例えば、制御部100は、ガス供給源66からO2ガスをチャンバ10内に供給し、ウエハWをO2ガスのプラズマに晒すことでフォトレジスト206およびBARC205を除去する。
【0054】
制御部100は、例えば以下の条件で、ステップS102におけるアッシング工程を実行する。
チャンバ10内の圧力:20mT
下部電極に供給する第1の高周波電力(40.68MHz):500W
下部電極に供給する第2の高周波電力(13.56MHz):0W
供給ガスおよび流量:O2=400sccm
処理時間:40秒
【0055】
ステップS102に示したアッシング工程の実行後のウエハWの断面は、例えば図4のアッシング工程の欄の図に示す状態となる。実験では、この段階におけるHTO膜204の厚さは約151nmであり、シリコン膜203のリセスは約16nmであり、形成された溝の底のCDは約202nmであった。
【0056】
次に、制御部100は、チャンバ10内を排気し、チャンバ10内にCF系のガスを含む混合ガス、例えばCF4ガスとAr(アルゴン)ガスとを供給して、BT(Break Through)工程を実行する(ステップS103)。例えば、制御部100は、ガス供給源66からCF系のガスを含む混合ガスをチャンバ10内に供給し、ウエハWを混合ガスのプラズマに晒す。これにより、アッシング工程によりシリコン膜203の表面に形成された自然酸化膜が除去される。
【0057】
制御部100は、例えば以下の条件で、ステップS103におけるBT工程を実行する。
チャンバ10内の圧力:20mT
下部電極に供給する第1の高周波電力(40.68MHz):300W
下部電極に供給する第2の高周波電力(13.56MHz):0W
供給ガスおよび流量:CF4/Ar=100/200sccm
処理時間:5秒
【0058】
次に、制御部100は、チャンバ10内を排気し、チャンバ10内にCl系のガスを含む混合ガスを供給して、シリコン膜203のエッチング工程を実行する(ステップS104)。例えば、制御部100は、ガス供給源66からCl系のガスを含む混合ガスをチャンバ10内に供給し、HTO膜204をマスクとして混合ガスのプラズマによりシリコン膜203をエッチングする。
【0059】
制御部100は、例えば以下の条件で、ステップS104におけるシリコン膜203のエッチング工程を実行する。
チャンバ10内の圧力:80mT
下部電極に供給する第1の高周波電力(40.68MHz):500W
下部電極に供給する第2の高周波電力(13.56MHz):100W
供給ガスおよび流量:Cl2/Ar=50/200sccm
処理時間:126秒
【0060】
ステップS104に示したシリコン膜203のエッチング工程の実行後のウエハWの断面は、例えば図4のシリコン膜203のエッチング工程の欄の図に示す状態となる。実験では、この段階におけるHTO膜204の厚さは約101nmであり、OCOC膜202のリセスは約4nmであり、形成された溝の底のCDは約143nmであった。
【0061】
次に、制御部100は、チャンバ10内を排気し、チャンバ10内に第1のCF系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスを供給して、混合ガスのプラズマによりOCOC膜202をエッチングする第1のエッチング工程を実行する(S105)。第1のエッチング工程では、例えば、ガス供給源66から第1のCF系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスをチャンバ10内に供給し、シリコン膜203をマスクとして、混合ガスのプラズマにより、OCOC膜202をエッチングする。
【0062】
ここで、本実施形態において、第1のCF系ガスとは、例えばフッ素に対する炭素の含有比率が所定の比率(例えば、0.33)以下のガスである。第1のCFガスとしては、例えば、CF4ガス等を用いることができる。
【0063】
第1のエッチング工程では、OCOC膜202の最下層の酸化膜およびカーボン膜の一部を途中までエッチングした段階で、第1のCF系ガスから第2のCF系ガスに切り換えるようにガス供給源66等を制御する。そして、第2のCF系ガスを含む混合ガスのプラズマにより、OCOC膜202内のカーボン膜の一部および最下層の酸化膜をエッチングする第2のエッチング工程を実行する(S106)。この場合、第2のエッチング工程では、OCOC膜202の側壁に凹凸にならない程度の処理時間で、カーボン膜の一部および最下層の酸化膜をエッチングして、シリコンを露出させることが好ましい。当該処理時間は、例えば40秒以下が好ましい。また、当該処理時間は、30秒以下であることがより好ましい。また、第2のエッチング工程は、酸化膜のエッチングレートよりも、カーボン膜のエッチングレートの方が高い条件でのエッチングであることが好ましい。
【0064】
ここで、第2のCF系ガスは、例えばフッ素に対する炭素の含有比率が、第1のCF系ガスよりも大きい。第2のCF系ガスは、CF系の材料が堆積しやすいガスである。また、第2のCF系ガスは、例えばフッ素に対する炭素の含有比率が、例えば、0.33より大きい。第2のCF系ガスとしては、例えば、C4F6ガス、C4F8ガス、C5F8ガス、CHF3ガス、またはCH2F2ガス等を用いることができる。
【0065】
ステップS106に示したOCOC膜202のエッチング工程の実行後のウエハWの断面は、例えば図4のOCOC膜202のエッチング工程の欄の図に示す状態となる。実験では、この段階におけるシリコン膜203の厚さは約258nmでああり、シリコン基板201のリセスは約4nmであり、形成された溝の底のCDは約147nmであった。
【0066】
[第1のCF系ガスとO2ガスとの流量比]
ここで、第1のCF系ガスを含む混合ガスのプラズマによりOCOC膜202をエッチングした場合の実験結果について説明する。実験では、第1のCF系ガスとして、CF4ガスを用いた。図5は、O2ガスの流量を変えてCF4ガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングを行った場合のウエハWの断面の一例を示す図である。
【0067】
図5に示した実験結果は、O2ガスの流量以外は、主に以下の条件で行われたものである。
チャンバ10内の圧力:25mT
下部電極に供給する第1の高周波電力(40.68MHz):300W
下部電極に供給する第2の高周波電力(13.56MHz):750W
供給ガスおよび流量:CF4/Ar/O2
=200/400/0、50、200sccm
処理時間:60秒
【0068】
図5に示した実験結果を参照すると、O2ガスの流量を上げると、OCOC膜202のエッチングレートが上がることがわかる。しかし、第1のCF系ガスを含む混合ガスのプラズマによりOCOC膜202をエッチングした場合、OCOC膜202に形成された溝にマイクロトレンチが形成される。そして、O2ガスの流量が上がると、マイクロトレンチが大きくなる傾向にあることがわかる。
【0069】
図6は、O2ガスの流量を変えてCF4ガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングを行った場合の各膜のエッチングレートの一例を示すグラフである。図6において、「Ox E/R」は、HTO膜2020のエッチングレートを示し、「PR E/R」は、フォトレジスト206のエッチングレートを示し、「Poly−Si E/R」は、シリコン膜203のエッチングレートを示している。
【0070】
図6を参照すると、O2ガスの流量の上昇に伴って、フォトレジスト206のエッチングレートが大幅に上昇することがわかる。フォトレジスト206は、カーボンが主な成分であるため、O2ガスの流量を上げると、OCOC膜202内のカーボン膜2021のエッチングレートも大幅に上昇すると考えられる。また、図6を参照すると、HTO膜2020のエッチングレートは、O2ガスの流量の上昇に伴って、若干下がる傾向にあるが、シリコン膜203のエッチングレートよりは高い状態を保つことがわかる。そして、フォトレジスト206のエッチングレートが上昇する割合が、HTO膜2020のエッチングレートが低下する割合よりも高いため、OCOC膜202全体としては、O2ガスの流量を上げると、シリコン膜203に対する選択比が上昇する傾向にある。
【0071】
ここで、図6を参照すると、O2ガスの流量が50sccmの場合、O2ガスの流量が0の場合に比べて、シリコン膜203のエッチングレートが若干上昇し、O2ガスの流量が200sccmになると、シリコン膜203のエッチングレートは低下する。即ち、O2ガスの添加量が少ないと、シリコン膜203のエッチングレートは上昇し、O2ガスの添加量が多いと、シリコン膜203のエッチングレートは低下する傾向があることがわかる。
【0072】
O2ガスの添加量が少ない場合に、シリコン膜203のエッチングレートが上昇する理由は、O2ガスの添加量が少ないと、チャンバ10内でCF4ガスの解離が促進されるためと考えられる。そして、CF4ガスの解離が促進されると、チャンバ10内でFラジカルが増加し、シリコン膜203のエッチングレートが増加すると考えられる。一方、O2ガスの添加量が多くなると、添加されたO2ガスによりCF4ガスが希釈化され、チャンバ10内ではFラジカルの密度が低くなる。そのため、シリコン膜203のエッチングレートが低下すると考えられる。
【0073】
従って、O2ガスの添加量を多くすれば、カーボン膜2021のエッチングレートを上げつつ、シリコン膜203のエッチングレートを低下させることができると考えられる。これにより、O2ガスの添加量を多くすれば、シリコン膜203に対するOCOC膜202の選択比を高めることができると考えられる。
【0074】
図6の実験結果をもとに、O2ガスの流量毎に、OCOC膜202のエッチングレートと、シリコン膜203に対するOCOC膜202の選択比を計算すると、例えば図7に示すような結果となった。図7は、O2ガスの流量を変えてCF4ガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングを行った場合の実験結果の一例を示す図である。図8は、O2ガスの流量を変えてCF4ガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングを行った場合の実験結果の傾向の一例を示すグラフである。
【0075】
図7の計算結果から明らかなように、O2ガスの流量を増加させると、OCOC膜202のエッチングレートが上昇する。一方、シリコン膜203に対するOCOC膜202の選択比は、O2ガスの流量を増加させると、一旦低下し、その後、上昇する。結果として、シリコン膜203に対するOCOC膜202の選択比も、O2ガスの流量を増加させると上昇する傾向にあることがわかる。また、シリコン膜203に対するOCOC膜202の選択比は、2.5以上が好ましい。また、O2ガスの流量は、OCOC膜202のエッチングレートを考慮すると、100sccm以上が好ましい。また、O2ガスの流量は、150sccm以上、かつ、800sccm以下であることが好ましい。
【0076】
従って、CF4ガス等の第1のCF系ガスを含む混合ガスのプラズマによるエッチングにおいて、O2ガスの流量を増やすことで、シリコン膜203をマスクとして、OCOC膜202をエッチングすることができる。なお、O2ガスの流量は、CF4ガス等の第1のCF系ガスの流量よりも多いことが好ましい。また、OCOC膜202をエッチングする際のマスクとなるシリコン膜203の肩削れおよび溝の内壁面の粗さの度合いを考慮すると、O2ガスの流量は、CF4ガス等の第1のCF系ガスの流量の0.5倍以上であることが好ましい。ここで、肩削れとは、例えば、溝の内側壁と、マスクとなる層の側壁とのなす角度であり、180度に近いほど、肩削れが少なく、マスクに与える影響が少ないことを表す。また、O2ガスの流量は、第1のCF系ガスの流量の0.75倍以上、かつ、4.0倍以下であることがより好ましい。O2ガスの流量が、第1のCF系ガスの流量の0.5倍未満または4.0倍よりも大きい場合、酸化膜がエッチングされなくなり、エッチングレートが低下して抜け性が悪くなる。また、O2ガスの流量は、第1のCF系ガスの流量の1.0倍以上であることがさらに好ましい。
【0077】
しかし、CF4ガスを含む混合ガスのプラズマによるエッチングでは、例えば図9に示すように、大きなマイクロトレンチが形成されてしまう。図9は、CF4ガスを含む混合ガスのプラズマによりOCOC膜202全体をエッチングした場合のウエハWの断面の一例を示す図である。
【0078】
図9では、O2ガスの流量を200sccmとした混合ガスのプラズマによりエッチングされたウエハWの断面の図が示されている。O2ガスの流量以外の条件は、図6において説明した条件と同一である。図9から明らかなように、エッチングより生成された溝には大きなマイクロトレンチが形成されている。
【0079】
[第2のCF系ガスとO2ガスとの流量比]
次に、第2のCF系ガスを含む混合ガスのプラズマによりOCOC膜202をエッチングした場合の実験結果について説明する。実験では、第2のCF系ガスとして、C4F8ガスを用いた。図10は、O2ガスの流量を変えてC4F8ガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングを行った場合のウエハWの断面の一例を示す図である。
【0080】
図10に示した実験結果は、O2ガスの流量以外は、主に以下の条件で行われたものである。
チャンバ10内の圧力:20mT
下部電極に供給する第1の高周波電力(40.68MHz):2500W
下部電極に供給する第2の高周波電力(13.56MHz):800W
供給ガスおよび流量:C4F8/Ar/O2
=18/700/28、75、150sccm
処理時間:60秒
【0081】
図10の実施結果を参照すると、O2ガスの流量の上昇に伴い、OCOC膜202のエッチングレートが上がることがわかる。図11は、O2ガスの流量を変えてC4F8ガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングを行った場合の各膜のエッチングレートの一例を示すグラフである。図11において、「Ox E/R」は、HTO膜2020のエッチングレートを示し、「PR E/R」は、フォトレジスト206のエッチングレートを示し、「Poly−Si E/R」は、シリコン膜203のエッチングレートを示している。
【0082】
図11を参照すると、O2ガスの流量の上昇に伴い、フォトレジスト206のエッチングレートが大幅に上昇することがわかる。フォトレジスト206は、主な成分がカーボンであるため、O2ガスの流量を上げると、OCOC膜202内のカーボン膜2021のエッチングレートも大幅に上昇すると考えられる。また、HTO膜2020のエッチングレートは、O2ガスの流量を上げると、若干下がる傾向にあるが、シリコン膜203のエッチングレートよりは高い。そして、フォトレジスト206のエッチングレートが上昇する割合が、HTO膜2020のエッチングレートが低下する割合よりも高いため、OCOC膜202全体としては、O2ガスの流量を上げると、シリコン膜203に対する選択比が上昇する傾向にある。
【0083】
ここで、図11を参照すると、O2ガスの流量が75sccmの場合、O2ガスの流量が28sccmの場合に比べて、シリコン膜203のエッチングレートが若干上昇し、O2ガスの流量が150sccmになると、シリコン膜203のエッチングレートは低下する。即ち、C4F8ガスを含む混合ガスにおいても、CF4ガスを含む混合ガスの場合と同様に、O2ガスの添加量が少ないと、シリコン膜203のエッチングレートは上昇し、O2ガスの添加量が多いと、シリコン膜203のエッチングレートは低下する傾向があることがわかる。その理由は、CF4ガスを含む混合ガスの場合と同様のメカニズムによるものと考えられる。
【0084】
図11の実験結果をもとに、O2ガスの流量毎に、OCOC膜202のエッチングレートと、シリコン膜203に対するOCOC膜202の選択比を計算すると、例えば図12に示すような結果となった。図12は、C4F8ガスを含む混合ガスのプラズマによるエッチングにおいて、O2ガスの流量を変えてエッチングを行った場合の実験結果の一例を示す図である。図13は、O2ガスの流量を変えてC4F8ガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングを行った場合の実験結果の傾向の一例を示すグラフである。
【0085】
図12の計算結果から明らかなように、O2ガスの流量を増加させると、OCOC膜202のエッチングレートは上昇する。シリコン膜203に対するOCOC膜202の選択比についても、O2ガスの添加量が少ない場合には、上昇幅は小さくなるものの、O2ガスの流量を増加させると上昇する傾向にあることがわかる。
【0086】
従って、C4F8ガス等の第2のCF系ガスを含む混合ガスのプラズマによるエッチングにおいても、O2ガスの流量を増やすことで、シリコン膜203をマスクとして、OCOC膜202をエッチングすることができる。なお、O2ガスの流量は、C4F8ガス等の第2のCF系ガスの流量よりも多いことが好ましい。また、OCOC膜202をエッチングする際のマスクとなるシリコン膜203の肩削れおよび溝の内壁面の粗さの度合いを考慮すると、O2ガスの流量は、C4F8ガス等の第2のCF系ガスの流量の、5.0倍以上、かつ、8.0倍以下であることがより好ましい。O2ガスの流量が、第2のCF系ガスの流量の0.5倍未満の場合には、肩削れが大きくなるが酸化膜がエッチングされなくなる。一方、O2ガスの流量が、第2のCF系ガスの流量の8.0倍より大きい場合には、酸化膜がエッチングされなくなるため、OCOC膜202のエッチングレートが低下する。また、O2ガスの流量は、100sccm以上、かつ、150sccm以下であることが好ましい。また、シリコン膜203に対するOCOC膜202の選択比の好ましい範囲は、2.5以上がよい。
【0087】
しかし、C4F8ガス等の第2のCF系ガスを含む混合ガスのプラズマによるエッチングでは、例えば図14に示すように、エッチングにより形成された溝の側壁の凹凸が、CF4ガス等の第1のCF系ガスを含む混合ガスのプラズマによるエッチングで形成された溝の側壁の凹凸(図9参照)よりも大きい。図14は、C4F8ガスを含む混合ガスのプラズマによりOCOC膜202全体をエッチングした場合のウエハWの断面の一例を示す図である。
【0088】
図14では、O2ガスの流量を150sccmとした混合ガスのプラズマによりエッチングされたウエハWの断面の図が示されている。O2ガスの流量以外の条件は、図10において説明した条件と同一である。図14の実験結果を参照すると、エッチングより形成された溝の側壁に凹凸ができているものの、ウエハWに形成された溝の底には、マイクロトレンチが形成されていない。
【0089】
[本実施形態におけるOCOC膜202のエッチング工程]
ここで、本実施形態では、図3に示した第1のエッチング工程(S105)において、例えば、第1のCF系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスのプラズマにより、シリコン膜203をマスクとして、OCOC膜202の途中までエッチングする。そして、第1のCF系ガスから第2のCF系ガスに切り換え、図3に示した第2のエッチング工程(S106)において、第2のCF系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスのプラズマにより、OCOC膜202の途中から、OCOC膜202のエッチングを再開する。
【0090】
本実施形態において、制御部100は、例えば以下の条件で、第1のエッチング工程を実行する。
チャンバ10内の圧力:25mT
下部電極に供給する第1の高周波電力(40.68MHz):300W
下部電極に供給する第2の高周波電力(13.56MHz):750W
供給ガスおよび流量:CF4/Ar/O2=200/400/200sccm
処理時間:74秒
【0091】
また、本実施形態において、制御部100は、例えば以下の条件で、第2のエッチング工程を実行する。
チャンバ10内の圧力:20mT
下部電極に供給する第1の高周波電力(40.68MHz):2500W
下部電極に供給する第2の高周波電力(13.56MHz):800W
供給ガスおよび流量:C4F8/Ar/O2=18/700/150sccm
処理時間:26秒
【0092】
ここで、混合ガスに含まれるCF系のガスを、第1のCF系ガスから第2のCF系ガスへ切り換えるタイミングは、OCOC膜202に含まれる複数のカーボン膜2021の中で一番下のカーボン膜2021を、第1のCF系ガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングしている間であることが好ましい。これにより、OCOC膜202の最上面から、OCOC膜202に含まれる複数のカーボン膜2021の中で一番下のカーボン膜2021までの間は、第1のCF系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスのプラズマによりOCOC膜202がエッチングされるため、OCOC膜202に側壁の凹凸の少ない溝を形成することができる。
【0093】
また、OCOC膜202に含まれる複数のカーボン膜2021の中で一番下のカーボン膜2021をエッチングしている間に、混合ガスに含まれるCF系のガスを第1のCF系ガスから第2のCF系ガスに切り換えることにより、一番下のカーボン膜2021の途中から最下層のHTO膜2020までを、マイクロトレンチが生じない方法でエッチングすることができる。これのより、最下層のHTO膜2020のエッチングが終了した段階では、マイクロトレンチの少ない溝をOCOC膜202に形成することができる。
【0094】
図15は、OCOC膜202のエッチングの途中でCF4ガスを含む混合ガスからC4F8ガスを含む混合ガスに切り換えてエッチングを行った場合のウエハWの断面の一例を示す図である。図15では、OCOC膜202に含まれる複数のカーボン膜2021の中で一番下のカーボン膜2021を、第1のCF系ガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングしている間に、混合ガスに含まれるCF系のガスを、第1のCF系ガスから第2のCF系ガスへの切り換えた場合のウエハWの断面の一例が示されている。図15から明らかなように、OCOC膜202に含まれる複数のカーボン膜2021の中で一番下のカーボン膜2021を、第1のCF系ガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングしている間に、混合ガスに含まれるCF系のガスを、第1のCF系ガスから第2のCF系ガスへ切り換えることにより、側壁の凹凸が少なく、かつ、マイクロトレンチの少ない溝をOCOC膜202に形成することができる。
【0095】
以上、一実施形態について説明した。
【0096】
本実施形態のプラズマエッチング装置1によれば、酸化膜とカーボン膜とが交互に積層された被処理膜に、側壁の凹凸が少なく、かつ、マイクロトレンチの少ない溝を形成することができる。
【0097】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0098】
例えば、上記した実施形態では、OCOC膜202に含まれる複数のカーボン膜2021の中で一番下のカーボン膜2021を、第1のCF系ガスを含む混合ガスのプラズマによりエッチングしている間に、混合ガスに含まれるCF系のガスを、第1のCF系ガスから第2のCF系ガスへ切り換えるが、本発明はこれに限られない。例えば、制御部100は、OCOC膜202をエッチングする過程において、第1のCF系ガスおよび第2のCF系ガスを2回以上切り換えるようにガス供給源66等を制御してもよい。
【0099】
また、制御部100は、HTO膜2020とカーボン膜2021とが交互に積層されたOCOC膜202において、エッチングにより形成された溝の底がカーボン膜2021に達するたびに、第1のCF系ガスと第2のCF系ガスとを切り換えるようにしてもよい。例えば、制御部100は、第1のCF系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスのプラズマによりエッチングして形成した溝の底がカーボン膜2021に達した場合に、混合ガスに含まれるCF系のガスを第2のCF系ガスに切り換えてエッチングを再開し、第2のCF系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスのプラズマによりエッチングして形成した溝の底が次のカーボン膜2021に達した場合に、混合ガスに含まれるCF系のガスを第1のCF系ガスに切り換えてエッチングを再開する動作を繰りかえすようにしてもよい。
【0100】
また、制御部100は、HTO膜2020とカーボン膜2021とが交互に積層されたOCOC膜202において、HTO膜2020を第1のCF系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスのプラズマによりエッチングし、カーボン膜2021を第2のCF系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスのプラズマによりエッチングするように、混合ガスに含まれるCF系のガスを、第1のCF系ガスと第2のCF系ガスとの間で切り換えながら、OCOC膜202をエッチングしてもよい。
【0101】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者には明らかである。また、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0102】
202 OCOC膜
2020 HTO膜
2021 カーボン膜
203 シリコン膜
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