特許第6169701号(P6169701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169701
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20170713BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   H05H1/46 M
   H01L21/302 101B
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-530759(P2015-530759)
(86)(22)【出願日】2014年7月3日
(86)【国際出願番号】JP2014067844
(87)【国際公開番号】WO2015019765
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2017年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-166908(P2013-166908)
(32)【優先日】2013年8月9日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】丸山 幸児
(72)【発明者】
【氏名】堀口 将人
(72)【発明者】
【氏名】松木 哲理
(72)【発明者】
【氏名】輿石 公
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/099681(WO,A1)
【文献】 特開2010−074065(JP,A)
【文献】 特開2001−271168(JP,A)
【文献】 特開2001−230208(JP,A)
【文献】 特開2012−069921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01L 21/3065
H01L 21/205
C23C 16/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理空間を画成する処理容器と、
前記処理空間に配置され、被処理体を載置する載置台と、
前記処理空間を塞ぐように前記処理容器に取り付けられ、内部空間と、該内部空間を前記処理空間に連通させる連通孔とが形成された誘電体と、
前記誘電体内に形成され、前記内部空間を挟んで対向する第1及び第2の電極と、
プラズマ処理に用いられる第1の処理ガスを前記内部空間に供給する第1のガス供給機構と、
前記第1及び第2の電極に第1の高周波電力を供給することによって、前記内部空間に供給される前記第1の処理ガスの第1のプラズマを生成する第1の高周波電源と、
前記第1の高周波電源から入力される前記第1の高周波電力を第1の分配電力及び第2の分配電力に分け、前記第1の分配電力及び前記第2の分配電力を前記第1の電極及び前記第2の電極にそれぞれ分配する電力分配器と、
前記処理空間を減圧することによって、前記第1のプラズマ中のラジカルと前記第1の処理ガスとを前記連通孔を介して前記内部空間から前記処理空間へ導入する減圧機構と、
前記載置台に第2の高周波電力を供給することによって、前記処理空間へ導入される前記第1の処理ガスの第2のプラズマを生成し、該第2のプラズマ中のイオンを前記被処理体へ引き込む第2の高周波電源と、
前記第1の電極に供給される前記第1の分配電力及び前記第2の電極に供給される前記第2の分配電力の全電力量の大きさを制御することによって、前記連通孔を介して前記内部空間から前記処理空間へ供給される前記第1のプラズマ中のラジカル量を調整し、該ラジカルにより前記第2のプラズマ中のラジカル量を調整し、前記第1の分配電力及び前記第2の分配電力の比率を制御することによって、前記連通孔を介して前記内部空間から前記処理空間へ供給される前記第1のプラズマ中の電子の量を調整し、該電子により前記第2のプラズマ中のイオン量を調整する制御部と
を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
処理空間を画成する処理容器と、
前記処理空間に配置され、被処理体を載置する載置台と、
前記処理空間を塞ぐように前記処理容器に取り付けられ、内部空間と、該内部空間を前記処理空間に連通させる連通孔とが形成された誘電体と、
前記誘電体内に形成され、前記内部空間を挟んで対向する第1及び第2の電極と、
プラズマ処理に用いられる第1の処理ガスを前記内部空間に供給する第1のガス供給機構と、
前記第1及び第2の電極の少なくともいずれか一方に第1の高周波電力を供給することによって、前記内部空間に供給される前記第1の処理ガスの第1のプラズマを生成する第1の高周波電源と、
前記処理空間を減圧することによって、前記第1のプラズマ中のラジカルと前記第1の処理ガスとを前記連通孔を介して前記内部空間から前記処理空間へ導入する減圧機構と、
前記載置台に第2の高周波電力を供給することによって、前記処理空間へ導入される前記第1の処理ガスの第2のプラズマを生成し、該第2のプラズマ中のイオンを前記被処理体へ引き込む第2の高周波電源と、
前記第1及び第2の電極にそれぞれ供給される前記第1の高周波電力の全電力量の大きさを制御することによって、前記連通孔を介して前記内部空間から前記処理空間へ供給される前記第1のプラズマ中のラジカル量を調整し、該ラジカルにより前記第2のプラズマ中のラジカル量を調整し、前記第1及び第2の電極にそれぞれ供給される前記第1の高周波電力の比率を制御することによって、前記連通孔を介して前記内部空間から前記処理空間へ供給される前記第1のプラズマ中の電子の量を調整し、該電子により前記第2のプラズマ中のイオン量を調整する制御部と
を備え、
前記誘電体の前記内部空間は、前記被処理体の径方向に沿って同心円状の複数の小空間に分割され、
前記複数の小空間の各々は、前記連通孔を介して前記処理空間に連通し、
前記第1及び第2の電極は、前記誘電体内の、前記複数の小空間の各々に対応する位置に形成され、前記複数の小空間の各々を挟んで対向し、
前記制御部は、前記第1及び第2の電極にそれぞれ供給される前記第1の高周波電力の全電力量の大きさを制御することによって、前記連通孔を介して前記複数の小空間の各々から前記処理空間へ供給される前記第1のプラズマ中のラジカル量を調整し、該ラジカルにより前記被処理体の径方向に沿って前記第2のプラズマ中のラジカル量の分布を調整し、
前記第1及び第2の電極にそれぞれ供給される前記第1の高周波電力の比率を制御することによって、前記連通孔を介して前記複数の小空間の各々から前記処理空間へ供給される前記第1のプラズマ中の電子の量を調整し、該電子により前記被処理体の径方向に沿って前記第2のプラズマ中のイオン量の分布を調整する
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、さらに、前記第1の電極に供給される前記第1の分配電力と前記第2の電極に供給される前記第2の分配電力との間の位相差を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の電極に供給される前記第1の分配電力と前記第2の電極に供給される前記第2の分配電力との間の位相差を180°に調整する
ことを特徴とする請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
第2の処理ガスを前記処理空間に供給する第2のガス供給機構をさらに備え、
前記第2の高周波電源は、前記載置台に前記第2の高周波電力を供給することによって、前記処理空間に供給される前記第1及び第2の処理ガスの第3のプラズマを生成し、該第3のプラズマ中のイオンを前記被処理体へ引き込み、
前記制御部は、さらに、前記第2の高周波電源のON/OFFを間欠的に制御し、
前記第2の高周波電源をOFF制御する期間に、前記第1の電極に供給される前記第1の分配電力及び前記第2の電極に供給される前記第2の分配電力の比率を制御することによって、前記連通孔を介して前記内部空間から前記処理空間へ供給される前記第1のプラズマ中の電子の量を調整し、該電子により前記被処理体の表面を活性化し、活性化した前記被処理体の表面と前記処理空間へ導入される前記第1のプラズマ中のラジカルとの反応物を生成し、
前記第2の高周波電源をON制御する期間に、前記第1の電極に供給される前記第1の分配電力及び前記第2の電極に供給される前記第2の分配電力の比率を制御することによって、前記連通孔を介して前記内部空間から前記処理空間へ供給される前記第1のプラズマ中の電子の量を調整し、該電子により前記第3のプラズマ中のイオン量を調整し、イオン量を調整した前記第3のプラズマにより前記反応物をエッチングする
ことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
処理空間を画成する処理容器と、
前記処理空間に配置され、被処理体を載置する載置台と、
前記処理空間を塞ぐように前記処理容器に取り付けられ、内部空間と、該内部空間を前記処理空間に連通させる連通孔とが形成された誘電体と、
前記誘電体内に形成され、前記内部空間を挟んで対向する第1及び第2の電極と、
プラズマ処理に用いられる第1の処理ガスを前記内部空間に供給する第1のガス供給機構と、
前記第1及び第2の電極に第1の高周波電力を供給することによって、前記内部空間に供給される前記第1の処理ガスの第1のプラズマを生成する第1の高周波電源と、
前記第1の高周波電源から入力される前記第1の高周波電力を第1の分配電力及び第2の分配電力に分け、前記第1の分配電力及び前記第2の分配電力を前記第1の電極及び前記第2の電極にそれぞれ分配する電力分配器と、
前記処理空間を減圧することによって、前記第1のプラズマ中のラジカルと前記第1の処理ガスとを前記連通孔を介して前記内部空間から前記処理空間へ導入する減圧機構と、
前記載置台に第2の高周波電力を供給することによって、前記処理空間へ導入される前記第1の処理ガスの第2のプラズマを生成し、該第2のプラズマ中のイオンを前記被処理体へ引き込む第2の高周波電源と
を備えたプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法であって、
前記第1の電極に供給される前記第1の分配電力及び前記第2の電極に供給される前記第2の分配電力の全電力量の大きさを制御することによって、前記連通孔を介して前記内部空間から前記処理空間へ供給される前記第1のプラズマ中のラジカル量を調整し、該ラジカルにより前記第2のプラズマ中のラジカル量を調整し、
前記第1の分配電力及び前記第2の分配電力の比率を制御することによって、前記連通孔を介して前記内部空間から前記処理空間へ供給される前記第1のプラズマ中の電子の量を調整し、該電子により前記第2のプラズマ中のイオン量を調整する
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の種々の側面及び実施形態は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造プロセスでは、薄膜の堆積又はエッチング等を目的としたプラズマ処理が広く行われている。高機能かつ高性能な半導体を得るためには、被処理体の被処理面に対し、均一なプラズマ処理を行うことが望ましい。
【0003】
プラズマ処理では、処理ガスのプラズマを生成する。プラズマには、イオンやラジカル等の活性種が含まれる。被処理体の被処理面がイオンとラジカルとを含むプラズマと反応することによってプラズマ処理が進行する。
【0004】
近年、半導体の製造プロセスにおいて、被処理体をプラズマ処理するための処理容器内に、多数の貫通孔が形成されたグリッド電極を配置し、グリッド電極により処理容器の内部を2つの空間に分割したプラズマ処理装置が提案されている。
【0005】
このプラズマ処理装置は、グリッド電極よりも下方の空間である処理空間に配置された載置台上に被処理体を載置し、グリッド電極よりも上方の空間であるプラズマ生成空間にプラズマ処理に用いられる処理ガスを供給する。そして、プラズマ処理装置は、プラズマ生成空間に高周波電力を供給することによって、プラズマ生成空間に供給される処理ガスのプラズマを生成する。そして、プラズマ処理装置は、処理空間を減圧することによって、プラズマ生成空間で生成したプラズマ中のラジカルと、処理ガスとをグリッド電極を介してプラズマ生成空間から処理空間へ導入する。そして、プラズマ処理装置は、載置台にバイアス用の高周波電力を供給することによって、処理空間へ導入される処理ガスのプラズマを生成し、生成したプラズマ中のイオンを載置台上の被処理体へ引き込む。これによれば、プラズマ中のラジカル密度を調整しつつ被処理体に均一なプラズマ処理を施すことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−67737号公報
【特許文献2】特表平7−500459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した技術では、被処理体の所望の処理特性を得るためのプラズマ中のイオン密度とラジカル密度をそれぞれ独立に調整することが困難であるという問題がある。
【0008】
すなわち、上述した技術では、プラズマ生成空間で生成したプラズマと処理空間で生成したプラズマの間にシースが形成されず同一ポテンシャルのプラズマになってしまう。このため、上述した技術では、被処理体の被処理面内におけるマスク選択比やCD(Critical Dimension)等の所望の処理特性を得るためにイオン密度とラジカル密度をそれぞれ独立して調整することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示するプラズマ処理装置は、1つの実施態様において、処理空間を画成する処理容器と、前記処理空間に配置され、被処理体を載置する載置台と、前記処理空間を塞ぐように前記処理容器に取り付けられ、内部空間と、該内部空間を前記処理空間に連通させる連通孔とが形成された誘電体と、前記誘電体内に形成され、前記内部空間を挟んで対向する第1及び第2の電極と、プラズマ処理に用いられる第1の処理ガスを前記内部空間に供給する第1のガス供給機構と、前記第1及び第2の電極の少なくともいずれか一方に第1の高周波電力を供給することによって、前記内部空間に供給される前記第1の処理ガスの第1のプラズマを生成する第1の高周波電源と、前記処理空間を減圧することによって、前記第1のプラズマ中のラジカルと前記第1の処理ガスとを前記連通孔を介して前記内部空間から前記処理空間へ導入する減圧機構と、前記載置台に第2の高周波電力を供給することによって、前記処理空間へ導入される前記第1の処理ガスの第2のプラズマを生成し、該第2のプラズマ中のイオンを前記被処理体へ引き込む第2の高周波電源と、前記第1及び第2の電極にそれぞれ供給される前記第1の高周波電力の全電力量の大きさを制御することによって、前記連通孔を介して前記内分空間から前記処理空間へ供給される前記第1のプラズマ中のラジカル量を調整し、該ラジカルにより前記第2のプラズマ中のラジカル量を調整し、前記第1及び第2の電極にそれぞれ供給される前記第1の高周波電力の比率を制御することによって、前記連通孔を介して前記内部空間から前記処理空間へ供給される前記第1のプラズマ中の電子の量を調整し、該電子により前記第2のプラズマ中のイオン量を調整する制御部とを備えた。
【発明の効果】
【0010】
開示するプラズマ処理装置の1つの態様によれば、被処理体の所望の処理特性を得るための処理空間内のプラズマ中のイオン密度とラジカル密度をそれぞれ独立に調整することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置を示す概略断面図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置によるプラズマ処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図3図3は、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置によるプラズマ処理の流れの他の例を示すフローチャートである。
図4図4は、上側電極及び下側電極にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御する場合について示すための図である。
図5図5は、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置の変形例を示す概略断面図である。
図6図6は、図5に示した誘電体の構造の一例を説明するための概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、開示するプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により開示する発明が限定されるものではない。各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0013】
開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、処理空間を画成する処理容器と、処理空間に配置され、被処理体を載置する載置台と、処理空間を塞ぐように処理容器に取り付けられ、内部空間と、該内部空間を処理空間に連通させる連通孔とが形成された誘電体と、誘電体内に形成され、内部空間を挟んで対向する第1及び第2の電極と、プラズマ処理に用いられる第1の処理ガスを内部空間に供給する第1のガス供給機構と、第1及び第2の電極の少なくともいずれか一方に第1の高周波電力を供給することによって、内部空間に供給される第1の処理ガスの第1のプラズマを生成する第1の高周波電源と、処理空間を減圧することによって、第1のプラズマ中のラジカルと第1の処理ガスとを連通孔を介して内部空間から処理空間へ導入する減圧機構と、載置台に第2の高周波電力を供給することによって、処理空間へ導入される第1の処理ガスの第2のプラズマを生成し、該第2のプラズマ中のイオンを被処理体へ引き込む第2の高周波電源と、第1及び第2の電極にそれぞれ供給される第1の高周波電力の全電力量の大きさを制御することによって、連通孔を介して内分空間から処理空間へ供給される第1のプラズマ中のラジカル量を調整し、該ラジカルにより第2のプラズマ中のラジカル量を調整し、第1及び第2の電極にそれぞれ供給される第1の高周波電力の比率を制御することによって、連通孔を介して内部空間から処理空間へ供給される第1のプラズマ中の電子の量を調整し、該電子により第2のプラズマ中のイオン量を調整する制御部とを備えた。
【0014】
また、開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、誘電体の内部空間は、被処理体の径方向に沿って同心円状の複数の小空間に分割され、複数の小空間の各々は、連通孔を介して処理空間に連通し、第1及び第2の電極は、誘電体内の、複数の小空間の各々に対応する位置に形成され、複数の小空間の各々を挟んで対向し、制御部は、第1及び第2の電極にそれぞれ供給される第1の高周波電力の全電力量の大きさを制御することによって、連通孔を介して複数の小空間の各々から処理空間へ供給される第1のプラズマ中のラジカル量を調整し、該ラジカルにより被処理体の径方向に沿って第2のプラズマ中のラジカル量の分布を調整し、第1及び第2の電極にそれぞれ供給される第1の高周波電力の比率を制御することによって、連通孔を介して複数の小空間の各々から処理空間へ供給される第1のプラズマ中の電子の量を調整し、該電子により被処理体の径方向に沿って第2のプラズマ中のイオン量の分布を調整する。
【0015】
また、開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、制御部は、さらに、第1及び第2の電極にそれぞれ供給される第1の高周波電力の位相差を調整する。
【0016】
また、開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、制御部は、第1及び第2の電極にそれぞれ供給される高周波電力の位相差を180°に調整する。
【0017】
また、開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、第2の処理ガスを処理空間に供給する第2のガス供給機構をさらに備え、第2の高周波電源は、載置台に第2の高周波電力を供給することによって、処理空間に供給される第1及び第2の処理ガスの第3のプラズマを生成し、該第3のプラズマ中のイオンを被処理体へ引き込み、制御部は、さらに、第2の高周波電源のON/OFFを間欠的に制御し、第2の高周波電源をOFF制御する期間に、第1及び第2の電極にそれぞれ供給される第1の高周波電力の全電力量の大きさを制御することによって、連通孔を介して内部空間から処理空間へ供給される第1のプラズマ中のラジカル量を調整し、第1及び第2の電極にそれぞれ供給される第1の高周波電力の比率を制御することによって、連通孔を介して内部空間から処理空間へ供給される第1のプラズマ中の電子の量を調整し、該電子により被処理体の表面を活性化し、活性化した被処理体の表面と処理空間へ導入される第1のプラズマ中のラジカルとの反応物を生成し、第2の高周波電源をON制御する期間に、第1及び第2の電極にそれぞれ供給される第1の高周波電力の全電力量の大きさを制御することによって、連通孔を介して内部空間から処理空間へ供給される第1のプラズマ中のラジカル量を調整し、該ラジカルにより第3のプラズマ中のラジカル量を調整し、第1及び第2の電極にそれぞれ供給される第1の高周波電力の比率を制御することによって、連通孔を介して内部空間から処理空間へ供給される第1のプラズマ中の電子の量を調整し、該電子により第3のプラズマ中のイオン量を調整し、ラジカル量及びイオン量を調整した第3のプラズマにより反応物をエッチングする。
【0018】
また、開示するプラズマ処理方法は、1つの実施形態において、処理空間を画成する処理容器と、処理空間に配置され、被処理体を載置する載置台と、処理空間を塞ぐように処理容器に取り付けられ、内部空間と、該内部空間を処理空間に連通させる連通孔とが形成された誘電体と、誘電体内に形成され、内部空間を挟んで対向する第1及び第2の電極と、プラズマ処理に用いられる第1の処理ガスを内部空間に供給する第1のガス供給機構と、第1及び第2の電極の少なくともいずれか一方に第1の高周波電力を供給することによって、内部空間に供給される第1の処理ガスの第1のプラズマを生成する第1の高周波電源と、処理空間を減圧することによって、第1のプラズマ中のラジカルと第1の処理ガスとを連通孔を介して内部空間から処理空間へ導入する減圧機構と、載置台に第2の高周波電力を供給することによって、処理空間へ導入される第1の処理ガスの第2のプラズマを生成し、該第2のプラズマ中のイオンを被処理体へ引き込む第2の高周波電源とを備えたプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法であって、第1及び第2の電極にそれぞれ供給される第1の高周波電力の全電力量の大きさを制御することによって、連通孔を介して内分空間から処理空間へ供給される第1のプラズマ中のラジカル量を調整し、該ラジカルにより第2のプラズマ中のラジカル量を調整し、第1及び第2の電極にそれぞれ供給される第1の高周波電力の比率を制御することによって、連通孔を介して内部空間から処理空間へ供給される第1のプラズマ中の電子の量を調整し、該電子により第2のプラズマ中のイオン量を調整する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置を示す概略断面図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置は、気密に構成され、電気的に接地電位とされた処理容器1を有している。処理容器1は、プラズマ処理を行うための処理空間Sを画成している。この処理容器1は、円筒状とされ、例えば表面に陽極酸化被膜を形成されたアルミニウム等から構成されている。処理容器1内の処理空間Sには、被処理体である半導体ウエハWを水平に載置する載置台2が配置されている。
【0020】
載置台2は、その基材2aが導電性の金属、例えばアルミニウム等で構成されており、下部電極としての機能を有する。この載置台2は、絶縁板3を介して導体の支持台4に支持されている。また、載置台2の上方の外周には、例えば単結晶シリコン、SiC、石英で形成されたフォーカスリング5が設けられている。さらに、載置台2及び支持台4の周囲を囲むように、例えば石英、アルミナ等からなる円筒状の内壁部材3aが設けられている。
【0021】
載置台2の上面には、半導体ウエハWを静電吸着するための静電チャック6が設けられている。この静電チャック6は絶縁体6bの間に電極6aを介在させて構成されており、電極6aには直流電源12が接続されている。そして電極6aに直流電源12から直流電圧が印加されることにより、クーロン力によって半導体ウエハWが吸着されるよう構成されている。
【0022】
載置台2の内部には、冷媒流路2bが形成されており、冷媒流路2bには、冷媒入口配管2c、冷媒出口配管2dが接続されている。そして、冷媒流路2bの中にガルデンなどの冷媒を循環させることによって、支持台4及び載置台2を所定の温度に制御可能となっている。また、載置台2等を貫通するように、半導体ウエハWの裏面側にヘリウムガス等の冷熱伝達用ガス(バックサイドガス)を供給するためのバックサイドガス供給配管30が設けられている。このバックサイドガス供給配管30は、図示しないバックサイドガス供給源に接続されている。これらの構成によって、載置台2の上面に静電チャック6によって吸着保持された半導体ウエハWを、所定の温度に制御可能となっている。
【0023】
載置台2の上方には、載置台2と平行に対向するように、換言すれば、載置台2に支持された半導体ウエハWと対向するように、誘電体16が設けられている。誘電体16は、処理空間Sを塞ぐように絶縁性部材45を介して処理容器1に取り付けられる。誘電体16には、内部空間と、内部空間を処理空間Sに連通させる連通孔とが形成される。具体的には、誘電体16は、例えば、アルミナ、セラミック、石英及びシリコン等の物質で形成され、上部誘電体16aと、上部誘電体16aに着脱自在に取り付けられる円板形状の下部誘電体16bとを備える。
【0024】
上部誘電体16aは、下部誘電体16bと同じ径である円盤形状に形成されている。上部誘電体16aの内部には、円形状の内部空間であるガス拡散室16cが形成されている。ガス拡散室16cの下面には、貫通孔である複数のガス通流孔16dが設けられている。
【0025】
下部誘電体16bには、下部誘電体16bを厚み方向に貫通する複数のガス導入孔16eが上部誘電体16aのガス通流孔16dと重合するように設けられている。下部誘電体16bのガス導入孔16eと、上部誘電体16aのガス通流孔16dとは、ガス拡散室16cを処理空間Sに連通させる連通孔を構築する。このような構成により、ガス拡散室16cに供給された処理ガスは、ガス通流孔16d及びガス導入孔16eを介して処理容器1内の処理空間Sにシャワー状に分散されて供給される。以下では、ガス通流孔16d及びガス導入孔16eを、適宜「連通孔」と呼ぶことがある。
【0026】
誘電体16(上部誘電体16a)には、ガス拡散室16cへ処理ガスを導入するためのガス導入口16fが形成されている。ガス導入口16fには、ガス供給配管17が接続され、ガス供給配管17の基端には、第1のガス供給源18が接続されている。なお、ガス供給配管17には、ガス供給配管17を開閉するバルブ17aや、図示しない流量調整器(MFC:Mass Flow Controller)等が設けられている。
【0027】
第1のガス供給源18は、ガス供給配管17及びガス導入口16fを介して第1の処理ガスをガス拡散室16cに供給する。例えば、レジスト膜、反射防止膜、有機膜、酸化膜、窒化膜、低誘電率膜、窒化チタン、シリコン等に対するプラズマエッチング処理が行われる場合には、第1のガス供給源18は、CF系ガス、CHF系ガス、O2、Cl2、HBr、Ar、H2、He等を第1の処理ガスとしてガス拡散室16cに供給する。また、例えば、被処理膜を原子層単位でエッチングするALE(Atomic Layer Etching)処理が行われる場合には、第1のガス供給源18は、Cl2等を第1の処理ガスとしてガス拡散室16cに供給する。第1のガス供給源18によってガス拡散室16cに供給された第1の処理ガスは、連通孔を介して処理容器1内の処理空間Sに供給される。第1のガス供給源18は、第1のガス供給機構の一例である。
【0028】
誘電体16には、上部誘電体16a及び下部誘電体16bを厚み方向に貫通し、処理容器1内の処理空間Sに至る貫通孔16gが形成されている。貫通孔16gには、ガス供給配管19が接続され、ガス供給配管19の基端には、第2のガス供給源20が接続されている。なお、ガス供給配管19には、ガス供給配管19を開閉するバルブ19aや、図示しない流量調整器(MFC)等が設けられている。
【0029】
第2のガス供給源20は、ガス供給配管19及び貫通孔16gを介して、第2の処理ガスを処理空間Sに供給する。例えば、ALE処理が行われる場合には、第2のガス供給源20は、Ar等を第2の処理ガスとして処理空間Sに供給する。第2のガス供給源20は、第2のガス供給機構の一例である。なお、第2の処理ガスは、第1の処理ガスと同一のガスであっても良く、第1のガスとは異なるガスであっても良い。
【0030】
誘電体16(上部誘電体16a)の内部には、上側電極21及び下側電極22が形成されている。上側電極21と下側電極22とは、ガス拡散室16cを挟んで対向している。上側電極21及び下側電極22は、例えば、モリブデン等の導電性物質を溶射し、さらにその上に誘電体物質を溶射することによって誘電体16の内部に埋設される。
【0031】
上側電極21及び下側電極22には、電力分配器23を介して第1の高周波電源10aが接続されている。第1の高周波電源10aは、例えば、1MHz以下の周波数の高周波電力、好ましくは、400kHzの高周波電力を電力分配器23を介して上側電極21及び下側電極22の少なくともいずれか一方に供給する。より詳細には、第1の高周波電源10aは、電力分配器23を介して上側電極21及び下側電極22の少なくともいずれか一方に高周波電力を供給することによって、第1のガス供給源18からガス拡散室16cに供給される第1の処理ガスのプラズマを生成する。第1の高周波電源10aから電力分配器23を介して上側電極21及び下側電極22の少なくともいずれか一方に供給される高周波電力を、以下では適宜「プラズマ生成電力」と呼ぶ。また、プラズマ生成電力を用いてガス拡散室16cで生成された第1の処理ガスのプラズマを、以下では適宜「第1のプラズマ」と呼ぶ。
【0032】
電力分配器23は、第1の高周波電源10aから入力されるプラズマ生成電力を上側電極21及び下側電極22へ分配する。電力分配器23によるプラズマ生成電力の分配に用いられる分配比率、言い換えると、第1の高周波電源10aから上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率は、可変である。電力分配器23の分配比率の制御値は、例えば、後述する制御部60によって入力される。すなわち、電力分配器23は、制御部60によって入力される分配比率の制御値を用いて、第1の高周波電源10aから入力されるプラズマ生成電力を上側電極21及び下側電極22へ分配する。
【0033】
また、電力分配器23は、第1の高周波電源10aから上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の位相差を調整する機能を有する。電力分配器23によって調整されるプラズマ生成電力の位相差の制御値は、例えば、制御部60によって入力される。すなわち、電力分配器23は、制御部60によって入力されるプラズマ生成電力の位相差の制御値を用いて、第1の高周波電源10aから上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の位相差を調整する。
【0034】
また、載置台2の基材2aには、整合器11bを介して第2の高周波電源10bが接続されている。第2の高周波電源10bは、例えば、400kHz〜27MHzの周波数の高周波電力、好ましくは、13MHzの高周波電力を整合器11bを介して載置台2に供給する。より詳細には、第2の高周波電源10bは、載置台2に高周波電力を供給することによって、処理空間Sへ導入される第1の処理ガスのプラズマを生成し、生成した第2のプラズマ中のイオンを半導体ウエハWへ引き込む。第2の高周波電源10bから載置台2に供給される高周波電力を、以下では適宜「バイアス電力」と呼ぶ。また、バイアス電力を用いて処理空間Sで生成された第1の処理ガスのプラズマを、以下では適宜「第2のプラズマ」と呼ぶ。
【0035】
なお、ALE処理が行われる場合には、第2の高周波電源10bは、以下の処理を行う。すなわち、第1の処理ガスに加えて、第2のガス供給源20から処理空間SにAr等の第2の処理ガスが供給される。第2の高周波電源10bは、載置台2にバイアス電力を供給することによってプラズマを生成し、生成したプラズマ中のイオンを半導体ウエハWへ引き込む。バイアス電力を用いて処理空間Sで生成された第1及び第2の処理ガスのプラズマを、以下では適宜「第3のプラズマ」と呼ぶ。
【0036】
処理容器1の底部には、排気口71が形成されており、この排気口71には、排気管72を介して排気装置73が接続されている。排気装置73は、真空ポンプを有しており、この真空ポンプを作動させることにより処理容器1内の処理空間Sを所定の圧力まで減圧する。より詳細には、排気装置73は、処理空間Sを減圧することによって、ガス拡散室16cで生成された第1のプラズマ中のラジカルと、処理ガスとを連通孔(ガス通流孔16d及びガス導入孔16e)を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ導入する。排気装置73は、減圧機構の一例である。
【0037】
処理容器1の側壁には、半導体ウエハWの搬入出口74が設けられており、この搬入出口74には、当該搬入出口74を開閉するゲートバルブ75が設けられている。
【0038】
図中76,77は、着脱自在とされたデポシールドである。デポシールド76,77は、処理容器1の内壁面に沿って設けられ、処理容器1にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止する役割を有している。
【0039】
上記構成のプラズマエッチング装置は、制御部60によって、その動作が統括的に制御される。この制御部60には、CPUを備えプラズマエッチング装置の各部を制御するプロセスコントローラ61と、ユーザインターフェース62と、記憶部63とが設けられている。
【0040】
ユーザインターフェース62は、工程管理者がプラズマエッチング装置を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボードや、プラズマエッチング装置の稼動状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成されている。
【0041】
記憶部63には、プラズマエッチング装置で実行される各種処理をプロセスコントローラ61の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記憶されたレシピが格納されている。そして、必要に応じて、ユーザインターフェース62からの指示等にて任意のレシピを記憶部63から呼び出してプロセスコントローラ61に実行させることで、プロセスコントローラ61の制御下で、プラズマエッチング装置での所望の処理が行われる。また、制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータで読み取り可能なコンピュータ記録媒体(例えば、ハードディスク、CD、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用したり、或いは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0042】
例えば、制御部60は、後述するプラズマ処理を行うようにプラズマ処理装置の各部を制御する。詳細な一例を挙げると、制御部60は、有機膜に対するプラズマエッチング処理が行われる場合には、以下の処理を行う。すなわち、制御部60は、第1の高周波電源10aから上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の全電力量の大きさを制御することによって、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ供給される第1のプラズマ中のラジカル量を調整し、該ラジカルにより第2のプラズマ中のラジカル量を調整する。また、制御部60は、第1の高周波電源10aから上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御することによって、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ第1のプラズマ中の電子を移動させ、該電子により第2のプラズマ中のイオン量を調整する。第1のプラズマと第2のプラズマとは異なるポテンシャルを持っている。第1のプラズマの上部側にはアノードシースとプラズマの下部側にはカソードシースが形成されている。また、第2のプラズマの上部側にはアノードシースとプラズマの下部側にはカソードシースが形成されている。つまり、第1のプラズマのカソードシースと第2のプラズマのアノードシースが隣接している。第1のプラズマ中の電子は、第1のプラズマのカソードシースと第2のプラズマのアノードシース間の電位差により加速され第2のプラズマ中に電子ビームとして導入される。この第1のプラズマのカソードシースの大きさは、上述した第1の高周波電源10aから上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御することにより容易に調整することができる。その結果、電子ビームの入射エネルギーと第2のプラズマ中のイオン量を容易に調整することができる。また、第1の高周波電源10aから上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の全電力量の大きさを制御することによって、第1のプラズマ中のラジカル量が容易に調整できる。このようにして、第1の高周波電源10aの全電力量の大きさの制御でラジカル量が、比率の制御でイオン量がそれぞれ独立して制御でき、このようなプラズマによって所望の処理特性が得られる。ここで処理特性とはプラズマによるプラズマ処理速度(エッチレート、デポレート)やウエハW面内の均一性やデバイスの形状などが含まれる。
【0043】
また、他の例を挙げると、制御部60は、ALE処理が行われる場合には、以下の処理を行う。すなわち、制御部60は、第2の高周波電源10bのON/OFFを間欠的に制御する。そして、制御部60は、第2の高周波電源10bをOFF制御する期間に、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の全電力量の大きさを制御することによって、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ供給される第1のプラズマ中のラジカル量を調整する。また、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御することによって、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ第1のプラズマ中の電子を加速し、電子ビームとして入射させる。該電子により被処理体の表面を活性化し、活性化した被処理体の表面と処理空間Sへ導入される第1のプラズマ中のラジカルとの反応物を生成する。そして、制御部60は、第2の高周波電源10bをON制御する期間に、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の全電力量の大きさを制御することによって、連通孔を介して内部空間から処理空間へ供給される第1のプラズマ中のラジカル量を調整し、該ラジカルにより第3のプラズマ中のラジカル量を調整する。また、第1及び第2の電極にそれぞれ供給される第1の高周波電力の比率を制御することによって、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ第1のプラズマ中の電子を供給し、該電子により第1及び第2の処理ガスの第3のプラズマ中のイオン量を調整し、イオン量を調整した第3のプラズマにより反応物をエッチングする。ここで、第2の高周波電源10bのON/OFFを間欠的に制御するとは、例えば、第2の高周波電源10bによるバイアス電力の供給及び供給停止を交互に繰り返し行うことに相当する。
【0044】
次に、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置によるプラズマ処理の流れの一例を説明する。図2は、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置によるプラズマ処理の流れの一例を示すフローチャートである。図2に示す例では、有機膜に対するプラズマエッチング処理が行われる場合のプラズマ処理の流れを示している。
【0045】
図2に示すように、プラズマ処理装置は、処理容器1内の処理空間Sとガス拡散室16cを減圧する(ステップS101)。そして、プラズマ処理装置は、第1の処理ガスを誘電体16のガス拡散室16cに供給する(ステップS102)。例えば、プラズマ処理装置は、CF系ガス及び/又はCHF系ガス等を処理ガスとして誘電体16のガス拡散室16cに供給する。
【0046】
より詳細な一例を挙げて説明する。プラズマ処理装置の制御部60は、第1のガス供給源18から第1の処理ガスを誘電体16のガス拡散室16cに供給する。
【0047】
続いて、プラズマ処理装置は、処理空間Sとガス拡散室16cの圧力差が安定するまで減圧する(ステップS103)。例えば、処理容器1内の処理空間Sの圧力が誘電体16のガス拡散室16cの圧力の1/10倍以下、好ましくは、1/100倍以下となるまで、処理容器1内の処理空間Sを減圧する。
【0048】
より詳細な一例を挙げて説明する。プラズマ処理装置の制御部60は、排気装置73を用いて処理容器1内の処理空間Sを減圧する。その際に、処理空間Sとガス拡散室16cの間の連通孔の径を予め調整しておき、減圧したときに処理空間Sとガス拡散室16cで安定した圧力差が出るように減圧する。この減圧によって、ガス拡散室16cで生成された第1のプラズマ中のラジカルと、第1の処理ガスとを連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ導入する。
【0049】
続いて、プラズマ処理装置は、載置台2にバイアス電力を供給する(ステップS104)。例えば、プラズマ処理装置は、載置台2に13MHzの高周波電力をバイアス電力として供給する。
【0050】
より詳細な一例を挙げて説明する。プラズマ処理装置の制御部60は、第2の高周波電源10bから載置台2にバイアス電力を供給することによって、処理空間Sへ導入される第1の処理ガスの第2のプラズマを生成し、生成した第2のプラズマ中のイオンを半導体ウエハWへ引き込む。
【0051】
続いて、プラズマ処理装置は、上側電極21及び下側電極22の少なくともいずれか一方にプラズマ生成電力を供給する(ステップS105)。例えば、プラズマ処理装置は、上側電極21及び下側電極22の少なくともいずれか一方に400kHzの高周波電力をプラズマ生成電力として供給する。
【0052】
より詳細な一例を挙げて説明する。プラズマ処理装置の制御部60は、第1の高周波電源10aから電力分配器23を介して上側電極21及び下側電極22の少なくともいずれか一方にプラズマ生成電力を供給することによって、ガス拡散室16cに供給される第1の処理ガスの第1のプラズマを生成する。
【0053】
より詳細な一例を挙げて説明する。プラズマ処理装置の制御部60は、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の全電力量の大きさを制御することによって、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ供給される第1のプラズマ中のラジカル量を調整し、該ラジカルにより第2のプラズマ中のラジカル量を調整する。このようにして、第2のプラズマ中のラジカル密度が、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の全電力量の大きさによって制御される。
【0054】
続いて、プラズマ処理装置は、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御する(ステップS106)。例えば、プラズマ処理装置は、プラズマ生成電力を上側電極21及び下側電極22へ分配する電力分配器23を用いて、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御する。
【0055】
より詳細な一例を挙げて説明する。プラズマ処理装置の制御部60は、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御することによって、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ供給される第1のプラズマ中の電子の量を調整し、該電子により第2のプラズマ中のイオン量を調整する。第1のプラズマと第2のプラズマのポテンシャルは異なっており、この第1のプラズマのシースと第2のプラズマのシースにより電子は加速され、電子ビームとなって第2のプラズマに入射する。この際、制御部60は、電力分配器23の分配比率の制御値として、(上側電極21に供給されるプラズマ生成電力):(下側電極22に供給されるプラズマ生成電力)=P1:P2を電力分配器23に出力する。例えば、制御部60は、P1に対してP2が大きくなる電力分配器23の分配比率の制御値を出力する。P1に対してP2が大きくなるほど、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ移動する第1のプラズマ中の電子の数が増加する。この結果、処理空間Sに存在する処理ガス中の気体原子に対して衝突する電子の数が増加し、処理空間Sで生成した第2のプラズマ中のイオン量が増加する。また、例えば、制御部60は、P1に対してP2が小さくなる電力分配器23の分配比率の制御値を出力する。P1に対してP2が小さくなるほど、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ移動する第1のプラズマ中の電子の数が減少する。この結果、処理空間Sに存在する処理ガス中の気体原子に対して衝突する電子の数が減少し、処理空間Sで生成した第2のプラズマ中のイオン量が減少する。このようにして、第2のプラズマ中のイオン密度が、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御することによって制御される。このようにして、被処理体(半導体ウエハW)の所望の処理特性を得るための処理空間内の第2のプラズマ中のイオン密度とラジカル密度をそれぞれ独立に調整することができる。
【0056】
なお、制御部60は、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御した上で、さらに、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の位相差を調整しても良い。この場合、制御部60は、電力分配器23を用いてプラズマ生成電力の位相差に調整する。例えば、制御部60は、電力分配器23によって調整されるプラズマ生成電力の位相差の制御値として180°を電力分配器23に出力する。この結果、上側電極21に供給されるプラズマ生成電力と、下側電極22に供給されるプラズマ生成電力との総和を変更することなく、ガス拡散室において第1のプラズマを効率良く生成することが可能となる。
【0057】
次に、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置によるプラズマ処理の流れの他の例を説明する。図3は、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置によるプラズマ処理の流れの他の例を示すフローチャートである。図3に示す例では、ALE処理が行われる場合のプラズマ処理の流れを示している。
【0058】
図3に示すように、プラズマ処理装置は、処理容器1内の処理空間Sとガス拡散室16cを減圧する(ステップS201)。そして、プラズマ処理装置は、第1の処理ガスを誘電体16のガス拡散室16cに供給する(ステップS202)。例えば、プラズマ処理装置は、Cl2等を第1の処理ガスとして誘電体16のガス拡散室16cに供給する。
【0059】
より詳細な一例を挙げて説明する。プラズマ処理装置の制御部60は、第1のガス供給源18から第1の処理ガスを誘電体16のガス拡散室16cに供給する。
【0060】
続いて、プラズマ処理装置は、第2の処理ガスを処理容器1内の処理空間Sに供給する(ステップS203)。例えば、プラズマ処理装置は、Ar等を第2の処理ガスとして処理容器1内の処理空間Sに供給する。
【0061】
より詳細な一例を挙げて説明する。プラズマ処理装置の制御部60は、第2のガス供給源20から第2の処理ガスを処理容器1内の処理空間Sに供給する。
【0062】
続いて、プラズマ処理装置は、処理空間Sとガス拡散室16cの圧力差が安定するまで減圧する(ステップS204)。例えば、処理容器1内の処理空間Sの圧力が誘電体16のガス拡散室16cの圧力の1/10倍以下、好ましくは、1/100倍以下となるまで、処理容器1内の処理空間Sを減圧する。
【0063】
より詳細な一例を挙げて説明する。プラズマ処理装置の制御部60は、排気装置73を用いて処理容器1内の処理空間Sを減圧する。その際に、処理空間Sとガス拡散室16cの間の連通孔の径を予め調整しておき、減圧したときに処理空間Sとガス拡散室16cで安定した圧力差が出るように減圧する。この減圧によって、ガス拡散室16cで生成された第1のプラズマ中のラジカルと、第1の処理ガスとを連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ導入する。
【0064】
続いて、プラズマ処理装置は、上側電極21及び下側電極22の少なくともいずれか一方にプラズマ生成電力を供給する(ステップS205)。例えば、プラズマ処理装置は、上側電極21及び下側電極22の少なくともいずれか一方に400kHzの高周波電力をプラズマ生成電力として供給する。
【0065】
より詳細な一例を挙げて説明する。プラズマ処理装置の制御部60は、第1の高周波電源10aから電力分配器23を介して上側電極21及び下側電極22の少なくともいずれか一方にプラズマ生成電力を供給することによって、ガス拡散室16cに供給される第1の処理ガスの第1のプラズマを生成する。
【0066】
より詳細な一例を挙げて説明する。プラズマ処理装置の制御部60は、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の全電力量の大きさを制御することによって、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ供給される第1のプラズマ中のラジカル量を調整し、該ラジカルにより第2のプラズマ中のラジカル量を調整する。このようにして、第2のプラズマ中のラジカル密度が、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の全電力量の大きさによって制御される。
【0067】
続いて、プラズマ処理装置は、載置台2へのバイアス電力の供給を停止する(ステップS206)。
【0068】
より詳細な一例を挙げて説明する。プラズマ処理装置の制御部60は、第2の高周波電源10bをOFF制御する。
【0069】
続いて、プラズマ処理装置は、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御する(ステップS207)。例えば、プラズマ処理装置は、プラズマ生成電力を上側電極21及び下側電極22へ分配する電力分配器23を用いて、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御する。
【0070】
より詳細な一例を挙げて説明する。プラズマ処理装置の制御部60は、第2の高周波電源10bをOFF制御する期間に、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御することによって、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ供給される第1のプラズマ中の電子の量を調整し、該電子により半導体ウエハWの表面を活性化し、活性化した半導体ウエハWの表面と処理空間Sへ導入される第1のプラズマ中のラジカルとの反応物を生成する。この際、制御部60は、電力分配器23の分配比率の制御値として、(上側電極21に供給されるプラズマ生成電力):(下側電極22に供給されるプラズマ生成電力)=P1:P2を電力分配器23に出力する。例えば、制御部60は、P1に対してP2が大きくなる電力分配器23の分配比率の制御値を出力する。P1に対してP2が大きくなるほど、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ移動する第1のプラズマ中の電子の数が増加する。この結果、半導体ウエハWの表面を活性化するための電子の数が増加し、反応物の厚みが原子層単位で増加する。また、例えば、制御部60は、P1に対してP2が小さくなる電力分配器23の分配比率の制御値を出力する。P1に対してP2が小さくなるほど、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ移動する第1のプラズマ中の電子の数が減少する。この結果、半導体ウエハWの表面を活性化する電子の数が減少し、反応物の厚みが原子層単位で減少する。
【0071】
なお、制御部60は、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御した上で、さらに、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の位相差を調整しても良い。この場合、制御部60は、電力分配器23を用いてプラズマ生成電力の位相差に調整する。例えば、制御部60は、電力分配器23によって調整されるプラズマ生成電力の位相差の制御値として180°を電力分配器23に出力する。この結果、上側電極21に供給されるプラズマ生成電力と、下側電極22に供給されるプラズマ生成電力との総和(全電力量の大きさ)を変更することなく、ガス拡散室において第1のプラズマを効率良く生成することが可能となる。
【0072】
続いて、プラズマ処理装置は、載置台2にバイアス電力を供給する(ステップS208)。
【0073】
より詳細な一例を挙げて説明する。プラズマ処理装置の制御部60は、第2の高周波電源10bをON制御する。すなわち、制御部60は、載置台2にバイアス電力を供給することによって、処理空間Sに供給される第1及び第2の処理ガス(Cl2やAr等)の第3のプラズマを生成し、生成した第3のプラズマ中のイオンを半導体ウエハWへ引き込む。この際、Arのイオンの効果を高めるためにCl2ガスとArガスの流量比率は1:100程度としておいてもよい。
【0074】
続いて、プラズマ処理装置は、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御する(ステップS209)。例えば、プラズマ処理装置は、プラズマ生成電力を上側電極21及び下側電極22へ分配する電力分配器23を用いて、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御する。
【0075】
より詳細な一例を挙げて説明する。プラズマ処理装置の制御部60は、第2の高周波電源10bをON制御する期間に、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御することによって、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ供給される第1のプラズマ中の電子の量を調整し、該電子により第3のプラズマ中のイオン量を調整し、イオン量を調整した第3のプラズマにより反応物をエッチングする。この際、制御部60は、電力分配器23の分配比率の制御値として、(上側電極21に供給されるプラズマ生成電力):(下側電極22に供給されるプラズマ生成電力)=P1:P2を電力分配器23に出力する。例えば、制御部60は、P1に対してP2が大きくなる電力分配器23の分配比率の制御値を出力する。P1に対してP2が大きくなるほど、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ移動する第1のプラズマ中の電子の数が増加する。すると、処理空間Sに存在する第1及び第2の処理ガス中の気体原子に対して衝突する電子の数が増加し、処理空間Sで生成した第3のプラズマ中のイオン量が増加する。この結果、反応物に対するエッチング深さが原子層単位で増大する。また、例えば、制御部60は、P1に対してP2が小さくなる電力分配器23の分配比率の制御値を出力する。P1に対してP2が小さくなるほど、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ移動する第1のプラズマ中の電子の数が減少する。すると、処理空間Sに存在する第1及び第2の処理ガス中の気体原子に対して衝突する電子の数が減少し、処理空間Sで生成した第3のプラズマ中のイオン量が減少する。この結果、反応物に対するエッチング深さが原子層単位で減少する。
【0076】
なお、制御部60は、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御した上で、さらに、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の位相差を調整しても良い。この場合、制御部60は、電力分配器23を用いてプラズマ生成電力の位相差に調整する。例えば、制御部60は、電力分配器23によって調整されるプラズマ生成電力の位相差の制御値として180°を電力分配器23に出力する。この結果、上側電極21に供給されるプラズマ生成電力と、下側電極22に供給されるプラズマ生成電力との総和を変更することなく、ガス拡散室において第1のプラズマを効率良く生成することが可能となる。
【0077】
その後、プラズマ処理装置は、第2の高周波電源10bに対するON制御/OFF制御の繰り返し回数が所定の回数に到達していない場合には(ステップS210;No)、処理をステップS205に戻す。一方、プラズマ処理装置は、第2の高周波電源10bに対するON制御/OFF制御の繰り返し回数が所定の回数に到達した場合には(ステップS210;Yes)、プラズマ処理を終了する。
【0078】
以上、第1の実施形態によれば、第1の高周波電源10aから上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の全電力量の大きさを制御することによって、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ供給される第1のプラズマ中のラジカル量を調整し、該ラジカルにより第2のプラズマ中のラジカル量を調整する。また、第1の高周波電源10aから上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御することによって、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ供給される第1のプラズマ中の電子を調整し、該電子により第2のプラズマ中のイオン量を調整する。このため、第1の実施形態によれば、処理空間Sにおけるプラズマ中のラジカル量及びイオン量をそれぞれ独立に適切な量に調整することが可能となる。この結果、第1の実施形態によれば、被処理体の被処理面内におけるマスク選択比やCD等の所望の処理特性を得るためのイオン密度をラジカル密度とは独立して調整することが可能となる。
【0079】
ここで、比較例として、多数の貫通孔が形成されたグリッド電極により処理容器の内部を、プラズマを生成するためのプラズマ生成空間と、被処理体をプラズマ処理するための処理空間との2つの空間に分割する場合を想定する。しかしながら、比較例では、プラズマ生成空間のプラズマと処理空間で生成したプラズマの間にシースが形成されず同一ポテンシャルのプラズマになってしまう。このため、比較例では、被処理体の被処理面内におけるマスク選択比やCD等の所望の処理特性を得るためのイオン密度をラジカル密度とは独立して調整することが困難である。
【0080】
図4は、上側電極及び下側電極にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の全電力量の大きさを制御若しくは比率を制御する場合について示すための図である。図4において、横軸は、処理空間Sにおけるプラズマ中のラジカル量Γnrと、処理空間Sにおけるプラズマ中のイオン量Γniとの比(Γnr/Γni)を示し、縦軸は、イオン1個に対して被処理体の表面を成す原子が何個削れたかを示すパラメータであるEtch Yieldを示す。Etch Yieldは、プラズマ処理で言うところのプラズマ処理速度(エッチレート)と正の相関がある。つまり、Etch Yieldは、イオン量とラジカル量の相互反応によって決まる。なお、図4に示した、Γnr/ΓniとEtch Yieldとの対応関係の詳細は、「R. A. Gottscho, Gaseous Electronics Conference & American Physical Society, Nov, 2011」に記載されているので、ここではその説明を省略する。
【0081】
上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の全電力量の大きさを制御する場合、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ供給される第1のプラズマ中のラジカル量を調整し、該ラジカルにより第2のプラズマ中のラジカル量を調整することが可能である。また、第1の高周波電源10aから上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御する場合、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ第1のプラズマ中の電子を移動させ、該電子により第2のプラズマ中のイオン量を調整することが可能である。すなわち、この場合、処理空間Sにおけるプラズマ中のラジカル量Γnrと、処理空間Sにおけるプラズマ中のイオン量Γniとの比(Γnr/Γni)を自由に変更することが可能である。このため、図4に示すように、Γnr/Γniの変更に伴って、Etch Yieldを最適な値に調節することが可能である。この結果、被処理体の被処理面内におけるマスク選択比やCD等の所望の処理特性を得ることが可能である。例えば、Etch Yieldを一定(エッチレートを一定)にし、ウエハWの面内において均一にエッチングを行いたい場合は、第2のプラズマ中のラジカル量Γnrとイオン量Γniとの比(Γnr/Γni)を大きくすればよい。
【0082】
このように、グリッド電極により処理容器の内部をプラズマ生成空間と処理空間とに分割する場合と比較して、第1の実施形態によれば、被処理体の被処理面内におけるマスク選択比やCD等の所望の処理特性を容易に得ることが可能である。
【0083】
また、第1の実施形態では、第2の高周波電源10bのON/OFFを間欠的に制御し、第2の高周波電源10bをOFF制御する期間に、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御することによって、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ供給される第1のプラズマ中の電子の量を調整し、該電子により被処理体の表面を活性化し、活性化した被処理体の表面と処理空間Sへ導入される第1のプラズマ中のラジカルとの反応物を生成する。そして、第1の実施形態では、第2の高周波電源10bをON制御する期間に、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御することによって、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ供給される第1のプラズマ中の電子の量を調整し、該電子により第3のプラズマ中のイオン量を調整し、イオン量を調整した第3のプラズマにより反応物をエッチングする。この結果、ALE処理が行われる場合でも、被処理体の被処理面内におけるマスク選択比やCD等の所望の処理特性を得るためのイオン密度とラジカル密度とをそれぞれ独立して調整することが可能である。
【0084】
(変形例)
次に、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置の変形例について説明する。図5は、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置の変形例を示す概略断面図である。図6は、図5に示した誘電体の構造の一例を説明するための概略平面図である。変形例のプラズマ処理装置は、誘電体16の構造、上側電極21及び下側電極22の配置態様、及び制御部60の処理内容等が図1に示したプラズマ処理装置と異なるだけであり、その他の構成は図1と同様である。したがって、図1に示したプラズマ処理装置と同様の構成については、説明を省略する。
【0085】
図5及び図6に示すように、変形例のプラズマ処理装置において、誘電体16の上部誘電体16aのガス拡散室16c内には、1つ以上の環状隔壁24が設けられている。1つ以上の環状隔壁24は、各々、誘電体16の径方向、言い換えると、半導体ウエハWの径方向に沿って異なる位置に配置される。図6では、環状隔壁24は、半導体ウエハWの径方向に沿って中心側から、第1の環状隔壁24a、第2の環状隔壁24b及び第3の環状隔壁24cで示されている。これにより、上部誘電体16aのガス拡散室16cは、半導体ウエハWの径方向に沿って中心側から、第1のガス拡散室16c−1、第2のガス拡散室16c−2、第3のガス拡散室16c−3及び第4のガス拡散室16c−4に分割されている。このように、上部誘電体16aのガス拡散室16cは、半導体ウエハWの径方向に沿って同心円状の複数の小空間に分割される。
【0086】
なお、環状隔壁24の数は、1つ以上であれば特に制限されないが、例えば、図6で示したように3つとしても良く、2つであっても良く、4つ以上であっても良い。
【0087】
第1のガス拡散室16c−1、第2のガス拡散室16c−2、第3のガス拡散室16c−3及び第4のガス拡散室16c−4の各々の下面には、貫通孔である複数のガス通流孔16dが設けられている。
【0088】
下部誘電体16bには、下部誘電体16bを厚み方向に貫通する複数のガス導入孔16eが上部誘電体16aのガス通流孔16dと重合するように設けられている。下部誘電体16bのガス導入孔16eと、上部誘電体16aのガス通流孔16dとは、ガス拡散室16cを処理空間Sに連通させる連通孔を構築する。これにより、第1のガス拡散室16c−1、第2のガス拡散室16c−2、第3のガス拡散室16c−3及び第4のガス拡散室16c−4の各々は、連通孔を介して処理空間Sに連通する。このような構成により、ガス拡散室16cに供給された第1の処理ガスは、ガス通流孔16d及びガス導入孔16eを介して処理容器1内の処理空間Sにシャワー状に分散されて供給される。以下では、ガス通流孔16d及びガス導入孔16eを、適宜「連通孔」と呼ぶことがある。
【0089】
誘電体(上部誘電体16a)16には、4つのガス拡散室(第1のガス拡散室16c−1、第2のガス拡散室16c−2、第3のガス拡散室16c−3及び第4のガス拡散室16c−4)の各々へ処理ガスを導入するための4つのガス導入口16fが形成されている。4つのガス導入口16fの各々には、ガス供給配管17から分岐した4つの分岐配管の各々が接続され、ガス供給配管17の基端には、第1のガス供給源18が接続されている。なお、ガス供給配管17から分岐した4つの分岐配管の各々には、ガス供給配管17を開閉するバルブ17aや、図示しない流量調整器(MFC:Mass Flow Controller)等が設けられている。
【0090】
誘電体16には、上部誘電体16a、環状隔壁24及び下部誘電体16bを厚み方向に貫通し、処理容器1内の処理空間Sに至る複数の貫通孔16gが形成されている。複数の貫通孔16gの各々には、ガス供給配管19から分岐した複数の分岐配管の各々が接続され、ガス供給配管19の基端には、第2のガス供給源20が接続されている。なお、ガス供給配管19から分岐した複数の分岐配管の各々には、ガス供給配管19を開閉するバルブ19aや、図示しない流量調整器(MFC)等が設けられている。
【0091】
また、誘電体16(上部誘電体16a)の内部の、4つのガス拡散室の各々に対応する位置には、上側電極21と下側電極22との対が複数形成されている。上側電極21と下側電極22との対の各々は、4つのガス拡散室の各々を挟んで対向している。
【0092】
上側電極21と下側電極22との対の各々には、複数の電力分配器23の各々を介して第1の高周波電源10aが接続されている。第1の高周波電源10aは、複数の電力分配器23の各々を介して、上側電極21と下側電極22との対の各々に含まれる上側電極21及び下側電極22の少なくともいずれか一方に高周波電力を供給する。より詳細には、第1の高周波電源10aは、複数の電力分配器23の各々を介して、上側電極21及び下側電極22の少なくともいずれか一方に高周波電力を供給することによって、第1のガス供給源18から4つのガス拡散室に供給される第1の処理ガスのプラズマを独立に生成する。第1の高周波電源10aから複数の電力分配器23の各々を介して上側電極21及び下側電極22の少なくともいずれか一方に供給される高周波電力を、以下では適宜「プラズマ生成電力」と呼ぶ。また、プラズマ生成電力を用いて4つガス拡散室で独立に生成された第1の処理ガスのプラズマを、以下では適宜「第1のプラズマ」と呼ぶ。
【0093】
複数の電力分配器23の各々は、第1の高周波電源10aから入力されるプラズマ生成電力を上側電極21及び下側電極22へ分配する。複数の電力分配器23の各々によるプラズマ生成電力の分配に用いられる全電力量の大きさ及び分配比率、言い換えると、第1の高周波電源10aから上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の全電力量の大きさと比率は、可変である。複数の電力分配器23の各々の全電力量の大きさと分配比率の制御値は、例えば、後述する制御部60によって個別に入力される。すなわち、複数の電力分配器23の各々は、制御部60によって入力される全電力量の大きさと分配比率の制御値を用いて、第1の高周波電源10aから入力されるプラズマ生成電力を上側電極21及び下側電極22へ分配する。
【0094】
変形例における制御部60は、第1の高周波電源10aから上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の全電力量の大きさを制御することによって、連通孔を介して4つのガス拡散室の各々から処理空間Sへ供給される第1のプラズマ中のラジカル量を調整する。また、変形例における制御部60は、第1の高周波電源10aから上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御することによって、連通孔を介して4つのガス拡散室の各々から処理空間Sへ供給される第1のプラズマ中の電子の量を調整する。これらのラジカル及び電子により半導体ウエハWの径方向に沿って第2のプラズマ中のラジカル量及びイオン量の分布を調整する。例えば、制御部60は、プラズマ生成電力を上側電極21及び下側電極22へ分配する電力分配器23を用いて、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の全電力量の大きさ及び比率を制御する。
【0095】
より詳細な一例を挙げて説明する。制御部60は、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の全電力量の大きさを制御することによって、連通孔を介して4つのガス拡散室の各々から処理空間Sへ供給される第1のプラズマ中のラジカル量を調整し、該ラジカルにより第2のプラズマ中のラジカル量を調整する。この際、制御部60は、複数の電力分配器23の各々の全電力量の大きさを制御値として複数の電力分配器23に個別に出力する。このようにして、第2のプラズマ中のラジカル密度が、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の全電力量の大きさによって制御される。これにより、半導体ウエハWの径方向に沿った第2のプラズマ中のラジカル量の分布を調整することが可能となる。また、制御部60は、上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の比率を制御することによって、連通孔を介して4つのガス拡散室の各々から処理空間Sへ供給される第1のプラズマ中の電子の量を調整し、該電子により第2のプラズマ中のイオン量を調整する。この際、制御部60は、複数の電力分配器23の各々の分配比率の制御値として、(上側電極21に供給されるプラズマ生成電力):(下側電極22に供給されるプラズマ生成電力)=P1:P2を複数の電力分配器23に個別に出力する。例えば、制御部60は、P1に対してP2が大きくなる電力分配器23の分配比率の制御値を出力する。P1に対してP2が大きくなるほど、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ移動する第1のプラズマ中の電子の数が増加する。この結果、処理空間Sに存在する処理ガス中の気体原子に対して衝突する電子の数が増加し、処理空間Sで生成した第2のプラズマ中のイオン量が増加する。また、例えば、制御部60は、P1に対してP2が小さくなる電力分配器23の分配比率の制御値を出力する。P1に対してP2が小さくなるほど、連通孔を介してガス拡散室16cから処理空間Sへ移動する第1のプラズマ中の電子の数が減少する。この結果、処理空間Sに存在する処理ガス中の気体原子に対して衝突する電子の数が減少し、処理空間Sで生成した第2のプラズマ中のイオン量が減少する。これにより、半導体ウエハWの径方向に沿った第2のプラズマ中のイオン量の分布を調整することが可能となる。
【0096】
変形例のプラズマ処理装置によれば、第1の高周波電源10aから上側電極21及び下側電極22にそれぞれ供給されるプラズマ生成電力の全電力量の大きさ及び比率をそれぞれ独立して制御することができる。また、変形例のプラズマ処理装置によれば、連通孔を介して4つのガス拡散室の各々から処理空間Sへ供給される第1のプラズマ中のラジカル量及び電子の量をそれぞれ独立に調整することができる。これらによって、半導体ウエハWの径方向に沿って第2のプラズマ中のラジカル量とイオン量の分布をそれぞれ独立に調整する。この結果、変形例のプラズマ処理装置によれば、半導体ウエハWの径方向に沿ったラジカル密度とイオン密度の分布を独立して調整することが可能となる。
【符号の説明】
【0097】
W 半導体ウエハ
S 処理空間
1 処理容器
2 載置台
10a 第1の高周波電源
10b 第2の高周波電源
16 誘電体
16a 上部誘電体
16b 下部誘電体
16c ガス拡散室
16d ガス通流孔
16e ガス導入孔
18 第1のガス供給源
20 第2のガス供給源
21 上側電極
22 下側電極
23 電力分配器
60 制御部
73 排気装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6