特許第6169907号(P6169907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本錬水株式会社の特許一覧 ▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

特許6169907コークス炉排水の処理装置、コークス炉排水の処理方法
<>
  • 特許6169907-コークス炉排水の処理装置、コークス炉排水の処理方法 図000003
  • 特許6169907-コークス炉排水の処理装置、コークス炉排水の処理方法 図000004
  • 特許6169907-コークス炉排水の処理装置、コークス炉排水の処理方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169907
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】コークス炉排水の処理装置、コークス炉排水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20060101AFI20170713BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20170713BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20170713BHJP
   C02F 9/14 20060101ALI20170713BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20170713BHJP
   B01D 61/16 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   C02F3/12 V
   C02F3/12 S
   B01D63/02
   C02F1/28 D
   C02F9/14
   C02F1/44 K
   B01D61/16
【請求項の数】21
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-137260(P2013-137260)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-28366(P2014-28366A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2016年6月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-147808(P2012-147808)
(32)【優先日】2012年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232863
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118201
【弁理士】
【氏名又は名称】千田 武
(72)【発明者】
【氏名】小林 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】片岡 健一
(72)【発明者】
【氏名】狩野 久直
(72)【発明者】
【氏名】藤井 渉
【審査官】 天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−046697(JP,A)
【文献】 特開昭63−236596(JP,A)
【文献】 特表2012−508091(JP,A)
【文献】 特開昭51−090757(JP,A)
【文献】 特開2009−061398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/12
B01D 61/00 − 71/82
B01D 53/22
C02F 1/28
C02F 1/44
C02F 9/00 − 9/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性汚泥の栄養源としてリン化合物が添加され、コークス炉排水に対し活性汚泥中の微生物による生物処理が行われる曝気槽と、
前記曝気槽において生物処理された被処理水に対し分離膜による固液分離処理が行われる膜分離部と、
前記分離膜を透過した透過水に含まれるCOD成分を除去するCOD成分除去部と、
を有し、
前記曝気槽に添加されるリン化合物は、コークス炉排水中に含まれるBOD成分とリン化合物の比率が、(BOD成分:リン化合物)=(100:0.3)〜(100:1)(重量比)の範囲であることを特徴とするコークス炉排水の処理装置。
【請求項2】
活性汚泥の栄養源としてリン化合物が添加され、コークス炉排水に対し活性汚泥中の微生物による生物処理が行われる曝気槽と、
前記曝気槽において生物処理された被処理水に対し分離膜による固液分離処理が行われる膜分離部と、
前記分離膜を透過した透過水と活性炭とを接触させる活性炭部と、
を有し、
前記曝気槽に添加されるリン化合物は、コークス炉排水中に含まれるBOD成分とリン化合物の比率が、(BOD成分:リン化合物)=(100:0.3)〜(100:1)(重量比)の範囲であることを特徴とするコークス炉排水の処理装置。
【請求項3】
前記膜分離部は、前記曝気槽内又は当該曝気槽外に設置されることを特徴とする請求項1又は2に記載のコークス炉排水の処理装置。
【請求項4】
前記曝気槽中のカルシウム濃度が、110mg/L〜170mg/Lであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のコークス炉排水の処理装置。
【請求項5】
希釈水で希釈されたコークス炉排水に対し前記曝気槽で活性汚泥中の微生物による生物処理が行われることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のコークス炉排水の処理装置。
【請求項6】
前記希釈水/前記コークス炉排水の容量比が、(1/1)〜(4/1)の範囲であることを特徴とする請求項5に記載のコークス炉排水の処理装置。
【請求項7】
前記希釈水として、海水及び/又は工業用水を使用することを特徴とする請求項5又は6に記載のコークス炉排水の処理装置。
【請求項8】
前記膜分離部は、多孔質中空糸膜を構成部材とする分離膜エレメントを含むことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のコークス炉排水の処理装置。
【請求項9】
前記膜分離部における被処理水の日平均膜透過流束が、0.1m/日〜0.6m/日であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のコークス炉排水の処理装置。
【請求項10】
前記分離膜の平均孔径が、0.03μm〜0.5μmであることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載のコークス炉排水の処理装置。
【請求項11】
活性汚泥の栄養源としてリン化合物を添加し、コークス炉排水に対し活性汚泥中の微生物による生物処理を行う活性汚泥処理工程と、
前記活性汚泥処理工程において生物処理された被処理水に対し分離膜による固液分離処理を行う膜分離工程と、
前記膜分離工程において前記分離膜を透過した透過水に含まれるCOD成分を除去するCOD成分除去工程と、
を含み、
前記活性汚泥処理工程は、リン化合物を、コークス炉排水中に含まれるBOD成分とリン化合物の比率が、(BOD成分:リン化合物)=(100:0.3)〜(100:1)(重量比)の範囲になるように添加することを特徴とするコークス炉排水の処理方法。
【請求項12】
活性汚泥の栄養源としてリン化合物を添加し、コークス炉排水に対し活性汚泥中の微生物による生物処理を行う活性汚泥処理工程と、
前記活性汚泥処理工程において生物処理された被処理水に対し分離膜による固液分離処理を行う膜分離工程と、
前記分離膜を透過した透過水と活性炭とを接触させる活性炭接触工程と、
を含み、
前記活性汚泥処理工程は、リン化合物を、コークス炉排水中に含まれるBOD成分とリン化合物の比率が、(BOD成分:リン化合物)=(100:0.3)〜(100:1)(重量比)の範囲になるように添加することを特徴とするコークス炉排水の処理方法。
【請求項13】
希釈水とコークス炉排水とを混合する希釈工程と、
活性汚泥の栄養源としてリン化合物を添加し、前記希釈工程で得られた希釈水で希釈されたコークス炉排水に対し活性汚泥中の微生物による生物処理を行う活性汚泥処理工程と、
前記活性汚泥処理工程において生物処理された被処理水に対し分離膜による固液分離処理を行う膜分離工程と、
前記分離膜を透過した透過水に含まれるCOD成分を除去するCOD成分除去工程と、を含み、
前記活性汚泥処理工程は、リン化合物を、コークス炉排水中に含まれるBOD成分とリン化合物の比率が、(BOD成分:リン化合物)=(100:0.3)〜(100:1)(重量比)の範囲になるように添加することを特徴とするコークス炉排水の処理方法。
【請求項14】
希釈水とコークス炉排水とを混合する希釈工程と、
活性汚泥の栄養源としてリン化合物を添加し、前記希釈工程で得られた希釈水で希釈されたコークス炉排水に対し活性汚泥中の微生物による生物処理を行う活性汚泥処理工程と、
前記活性汚泥処理工程において生物処理された被処理水に対し分離膜による固液分離処理を行う膜分離工程と、
前記分離膜を透過した透過水と活性炭とを接触させる活性炭接触工程と、
を含み、
前記活性汚泥処理工程は、リン化合物を、コークス炉排水中に含まれるBOD成分とリン化合物の比率が、(BOD成分:リン化合物)=(100:0.3)〜(100:1)(重量比)の範囲になるように添加することを特徴とするコークス炉排水の処理方法。
【請求項15】
前記膜分離工程は、前記生物処理が行われる曝気槽内又は当該曝気槽外に設置された前記分離膜により固液分離処理が行われることを特徴とする請求項11乃至14の何れか1項に記載のコークス炉排水の処理方法。
【請求項16】
前記曝気槽中のカルシウム濃度が、110mg/L〜170mg/Lであることを特徴とする請求項15に記載のコークス炉排水の処理方法。
【請求項17】
前記希釈工程において、前記希釈水/前記コークス炉排水の容量比が、(1/1)〜(4/1)の範囲になるように調整することを特徴とする請求項13又は14に記載のコークス炉排水の処理方法。
【請求項18】
前記希釈水が、海水及び/又は工業用水であることを特徴とする請求項17に記載のコークス炉排水の処理方法。
【請求項19】
前記膜分離工程において、多孔質中空糸膜を構成部材とする分離膜エレメントを用いることを含むことを特徴とする請求項11乃至18の何れか1項に記載のコークス炉排水の処理方法。
【請求項20】
前記膜分離工程おける被処理水の日平均膜透過流束が、0.1m/日〜0.6m/日であることを特徴とする請求項11乃至19の何れか1項に記載のコークス炉排水の処理方法。
【請求項21】
前記分離膜の平均孔径が、0.03μm〜0.5μmであることを特徴とする請求項11乃至20の何れか1項に記載のコークス炉排水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉排水の処理装置及びコークス炉排水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コークス炉から排水されたコークス炉排水は、排水処理設備に流入させ、活性汚泥によって無害化している。
一般に、コークス炉排水には、コークス原料の石炭に由来するアンモニア(NH)、シアン(CN)、チオシアン(SCN)、フェノール類等の、生物毒性を有する成分が含まれる。そこで、コークス炉排水を曝気槽へ流入させる際、負荷を軽減するため希釈水により希釈を行う。
例えば、特許文献1には、原水を曝気槽に導入して連続的に活性汚泥処理する方法において、希釈水として工業用水と海水を曝気槽に流入させる活性汚泥処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−46697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コークス炉排水の活性汚泥処理では、通常、曝気槽で処理された処理水が沈殿槽に送られて汚泥と上澄み水に分離され、上澄み水は、さらに、砂ろ過塔で濁質の除去が行われ、活性炭塔でCOD(化学的酸素要求量)に換算される被酸化性物質(以下、「COD成分」と記すことがある。)が除去されている。
しかし、曝気槽では、コークス炉排水に含まれるBOD(生物化学的酸素要求量)に換算される有機物(以下、「BOD成分」と記すことがある。)の大部分が処理されるものの、COD成分の中には未処理のまま沈殿槽に送られるものが存在する。そして、沈殿槽で分離された上澄み水に含まれるCOD成分が活性炭に与える負荷が大きいので、活性炭塔に充填された活性炭を頻繁に交換する必要がある。そのため、運転管理が煩雑でかつ運転コストが高いという問題がある。
また、一般に、汚泥の栄養源として添加されるリン化合物(リン酸、リン酸塩等)が、処理水に漏出し、排水放流先の富栄養化の原因となる場合も考えられる。
本発明の目的は、コークス炉排水の活性汚泥処理において、処理水中のCOD成分と全リン濃度を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、コークス炉排水に対し活性汚泥中の微生物による生物処理が行われる曝気槽と、前記曝気槽において生物処理された被処理水に対し分離膜による固液分離処理が行われる膜分離部と、前記膜分離部において前記分離膜を透過した透過水に含まれるCOD成分を除去するCOD成分除去部とを有する、コークス炉排水の処理装置を提供するものである。
また、本発明は、コークス炉排水に対し活性汚泥中の微生物による生物処理を行う活性汚泥処理工程と、前記活性汚泥処理工程において生物処理された被処理水に対し分離膜による固液分離処理を行う膜分離工程と、前記膜分離工程において前記分離膜を透過した透過水に含まれるCOD成分を除去するCOD成分除去工程とを含む、コークス炉排水の処理方法を提供するものである。
【0006】
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1]コークス炉排水に対し活性汚泥中の微生物による生物処理が行われる曝気槽と、前記曝気槽において生物処理された被処理水に対し分離膜による固液分離処理が行われる膜分離部と、前記分離膜を透過した透過水に含まれるCOD成分を除去するCOD成分除去部と、を有するコークス炉排水の処理装置。
[2]コークス炉排水に対し活性汚泥中の微生物による生物処理が行われる曝気槽と、前記曝気槽において生物処理された被処理水に対し分離膜による固液分離処理が行われる膜分離部と、前記分離膜を透過した透過水と活性炭とを接触させる活性炭部と、を有するコークス炉排水の処理装置。
[3]前記膜分離部は、前記曝気槽内又は当該曝気槽外に設置される前記[1]又は[2]に記載のコークス炉排水の処理装置。
[4]前記曝気槽中のカルシウム濃度が、110mg/L〜170mg/Lであることを特徴とする前記[1]乃至[3]の何れか1項に記載のコークス炉排水の処理装置。
[5]希釈水で希釈されたコークス炉排水に対し前記曝気槽で活性汚泥中の微生物による生物処理が行われる前記[1]乃至[4]の何れか1項に記載のコークス炉排水の処理装置。
[6]前記希釈水/前記コークス炉排水の容量比が、(1/1)〜(4/1)の範囲である前記[5]に記載のコークス炉排水の処理装置。
[7]前記希釈水として、海水及び/又は工業用水を使用する前記[5]又は[6]に記載のコークス炉排水の処理装置。
[8]前記膜分離部は、多孔質中空糸膜を構成部材とする分離膜エレメントを含む前記[1]乃至[7]の何れか1項に記載のコークス炉排水の処理装置。
[9]前記膜分離部における被処理水の日平均膜透過流束が、0.1m/日〜0.6m/日である前記[1]乃至[8]の何れか1項に記載のコークス炉排水の処理装置。
[10]前記分離膜の平均孔径が、0.03μm〜0.5μmである前記[1]乃至[9]の何れか1項に記載のコークス炉排水の処理装置。
【0007】
[11]コークス炉排水に対し活性汚泥中の微生物による生物処理を行う活性汚泥処理工程と、前記活性汚泥処理工程において生物処理された被処理水に対し分離膜による固液分離処理を行う膜分離工程と、前記膜分離工程において前記分離膜を透過した透過水に含まれるCOD成分を除去するCOD成分除去工程と、を含むコークス炉排水の処理方法。
[12]コークス炉排水に対し活性汚泥中の微生物による生物処理を行う活性汚泥処理工程と、前記活性汚泥処理工程において生物処理された被処理水に対し分離膜による固液分離処理を行う膜分離工程と、前記分離膜を透過した透過水と活性炭とを接触させる活性炭接触工程と、を含むコークス炉排水の処理方法。
[13]希釈水とコークス炉排水とを混合する希釈工程と、前記希釈工程で得られた希釈水で希釈されたコークス炉排水に対し活性汚泥中の微生物による生物処理を行う活性汚泥処理工程と、前記活性汚泥処理工程において生物処理された被処理水に対し分離膜による固液分離処理を行う膜分離工程と、前記分離膜を透過した透過水に含まれるCOD成分を除去するCOD成分除去工程と、を含むコークス炉排水の処理方法。
[14]希釈水とコークス炉排水とを混合する希釈工程と、前記希釈工程で得られた希釈水で希釈されたコークス炉排水に対し活性汚泥中の微生物による生物処理を行う活性汚泥処理工程と、前記活性汚泥処理工程において生物処理された被処理水に対し分離膜による固液分離処理を行う膜分離工程と、前記分離膜を透過した透過水と活性炭とを接触させる活性炭接触工程と、を含むコークス炉排水の処理方法。
[15]前記膜分離工程が、前記生物処理が行われる曝気槽内又は当該曝気槽外に設置された前記分離膜により固液分離処理が行われる前記[11]乃至[14]の何れか1項に記載のコークス炉排水の処理方法。
[16]前記曝気槽中のカルシウム濃度が、110mg/L〜170mg/Lである前記[11]乃至[15]の何れか1項に記載のコークス炉排水の処理方法。
[17]前記希釈工程において、前記希釈水/前記コークス炉排水の容量比が、(1/1)〜(4/1)の範囲になるように調整する前記[13]又は[14]に記載のコークス炉排水の処理方法。
[18]前記希釈水が、海水及び/又は工業用水である前記[17]に記載のコークス炉排水の処理方法。
[19]前記膜分離工程において、多孔質中空糸膜を構成部材とする分離膜エレメントを用いることを含む前記[11]乃至[18]の何れか1項に記載のコークス炉排水の処理方法。
[20]前記膜分離工程において、前記膜分離部における被処理水の日平均膜透過流束が、0.1m/日〜0.6m/日である前記[11]乃至[19]の何れか1項に記載のコークス炉排水の処理方法。
[21]前記分離膜の平均孔径が、0.03μm〜0.5μmである前記[11]乃至[20]の何れか1項に記載のコークス炉排水の処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コークス炉排水処理において、処理水中のCOD成分が低減し、活性炭の寿命を伸ばすことができる。
また、処理水中の全リン濃度が低減し、放流先の富栄養化が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態が適用されるコークス炉排水の処理装置(膜分離活性汚泥装置)の一例を説明する概略図である。
図2】本実施の形態が適用されるコークス炉排水の処理装置の一例を説明するブロックフロー図である。
図3】従来のコークス炉排水の処理装置の例を説明するブロックフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。すなわち、実施の形態の例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に記載がない限り、本発明の範囲を限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
また、使用する図面は、本実施の形態を説明するための一例であり、実際の大きさを表すものではない。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0011】
<コークス炉排水の処理装置>
図1は、本実施の形態が適用されるコークス炉排水の処理装置100(膜分離活性汚泥装置)の一例を説明する概略図である。
図2は、本実施の形態が適用されるコークス炉排水の処理装置の一例を説明するブロックフロー図である。図2(a)は、第1の実施の形態であり、図2(b)は、第2の実施の形態である。
尚、図1には、従来の処理装置200(沈殿法活性汚泥装置)を併せて記載している。
【0012】
図1に示すコークス炉排水の処理装置100は、外部から導入されたコークス炉排水(A)(以下、「原水(A)」と記すことがある。)を貯留する原水槽1と、原水槽1の原水に含まれたBOD成分を活性汚泥中の微生物により生物処理する曝気槽(活性汚泥装置)2と、曝気槽2において生物処理された被処理水を膜分離部10により固液分離する膜分離槽8と、膜分離槽8における固液分離により膜分離部10を透過した透過水に含まれるCOD成分を吸着除去する活性炭塔(COD成分除去部)15と、を備えている。
本実施の形態では、膜分離部10は、分離膜を設けた分離膜エレメントが複数枚配設された分離膜モジュールから構成されている。
また、本実施の形態では、膜分離槽8は、曝気槽2の外部に設置されている(第1の実施の形態)。
【0013】
(第1の実施の形態)
次に、図1及び図2(a)に基づき、コークス炉排水の処理装置100による処理の流れを説明する。
図1に示すように、原水(A)は、外部から原水配管21を介して原水槽1に導入され貯留される。原水槽1に貯留された原水(A)は、ポンプ(P1)41により配管22を介して曝気槽(活性汚泥装置)2に供給される。
曝気槽2内の原水(A)には、供給配管23を介して希釈水(B)が添加され、原水(A)が希釈される。本実施の形態では、希釈水(B)として海水及び工業用水を用いた。
また、本実施の形態では、供給配管23を介してリン化合物(例えば、リン酸)が、活性汚泥の栄養源として曝気槽2内に添加されている。
【0014】
曝気槽2では、希釈水(B)で希釈された原水(A)に対し、活性汚泥中の微生物による生物処理が行われ、BOD成分の大部分が分解される。また、COD成分の量も低減する。
尚、曝気槽2には、外部に設けた送風装置(B1)42から散気配管24を介し、曝気槽2内に設けた散気管3により空気が供給されている。BOD成分は散気管3から放出される空気により好気的に酸化され分解される。また、曝気槽2内の水位はレベルスイッチ4により制御され、溶存酸素量は溶存酸素計5により監視されている。
【0015】
曝気槽2において生物処理された被処理水は、曝気槽2内に設けたポンプ(P4)51により配管31を介して膜分離槽8に送られる。膜分離槽8に送られた被処理水は、膜分離槽8内に浸漬された膜分離部10により固液分離処理が行われ、被処理水から汚泥が分離される(固液分離)。本実施の形態では、膜分離部10に接続した配管32を介してポンプ(P5)53による吸引ろ過が行われる。膜分離部10を透過した透過水は、配管33を介して活性炭塔(COD成分除去部)15に送られる。
【0016】
ここで、COD成分除去部として、硫酸アルミニウム,PAC,塩化第2鉄,硫酸第2鉄,ポリ硫酸第2鉄等の凝集剤を用いる凝集沈殿装置、活性炭塔等を用いることができるが、本実施の形態では、COD成分除去部として、特に限定されないが、例えば、活性炭を充填した活性炭塔15を使用することができる。
活性炭塔15では、透過水中に含まれるCOD成分が活性炭により吸着除去され、その後、活性炭塔15の底部から排水配管34を介して、放流又は再利用に適した処理水(D)として系外に排出される。
尚、活性炭塔15に充填された活性炭は、通常、石炭、ヤシ穀等の炭素物質を原料として高温でガスや薬品と反応させて作られる微細孔(直径1nm〜20nm程度)を有する多孔質物質であって、その形状は特に限定されず、例えば、繊維状、ハニカム状、円柱状、破砕状、粒状、粉末状等のものを適宜選択して使用する。
【0017】
尚、膜分離槽8には、外部に設けた送風装置(B2)52から膜分離槽8内に設けた散気管9により空気が供給されている。また、膜分離槽8内の水位はレベルスイッチ11により制御されている。さらに、膜分離部10により分離された汚泥は、ポンプ(P6)54により返送配管35を介し返送汚泥として曝気槽2へ返送され、返送汚泥の一部は余剰汚泥として系外へ抜き出されて処分される。
次に、コークス炉排水の処理装置100(膜分離活性汚泥装置)を構成する各装置について説明する。
【0018】
(曝気槽(活性汚泥装置)2)
曝気槽(活性汚泥装置)2では、活性汚泥中の好気性微生物に酸素を与えてコークス炉排水(原水(A))中の有機物を分解する生物処理が行われる。
活性汚泥中の好気性微生物による生物処理は、方式により、例えば、標準活性汚泥法、長時間エアーレーション法、オキシデーションディッチ(OD)法、ステップエアレーション法、膜分離活性汚泥法等が挙げられる。本実施の形態では、曝気槽(活性汚泥装置)2における生物処理と膜分離槽8における膜ろ過による物理処理を組み合わせた膜分離活性汚泥法を採用している。
尚、コークス炉排水(原水(A))中の有機物の生物処理には、フェノール、CN、SCN、NH等を含むコークス炉排水で培養(馴養)した菌を用いることが好ましい。菌種としては、例えば、チオシアン資化菌等が挙げられる。
【0019】
前述したように、曝気槽2内の原水(A)には希釈水(B)が添加され、原水(A)が希釈されることが好ましい。
本実施の形態では、コークス炉排水(原水(A))中には、アンモニア、シアン、チオシアン、フェノール等の生物毒性を有する成分が含まれるため、曝気槽2へ流入させる際、負荷軽減のため希釈水(B)により希釈を行うことが好ましい。
原水(A)の希釈に用いる希釈水(B)と原水の比率(容量比)は、通常、希釈水(B)/原水(A)の比率(容量比)が(1/1)〜(4/1)の範囲、好ましくは(2/1)〜(3/1)の範囲で選択される。
また、希釈水(B)には、海水、工業用水、河川水等を利用することができる。これらは、1種類又は2種類以上を混合して使用してもよい。
【0020】
本実施の形態では、希釈水(B)として海水及び/又は工業用水を用いることが好ましい。これにより、曝気槽2中のカルシウム濃度を最適な範囲に調整することができる。
ここで、希釈水(B)として、海水と工業用水を用いる場合は、希釈水(B)中の海水/工業用水の比率(容量比)は、(5/1)〜(0.5/1)の範囲が好ましく、(1/1)であることがより好ましい。
【0021】
尚、本実施の形態では、原水(A)を希釈する場合、曝気槽2中のカルシウム濃度が、100mg/L〜200mg/Lであることが好ましく、110mg/L〜170mg/Lであることがより好ましく、125mg/L〜155mg/Lであることが特に好ましい。
ここで、原水(A)を前記濃度に調整するには、前記希釈水(B)を用いることが好ましい。これにより、混合後の排水に対する海水の混合割合は、25容量%〜40容量%程度とすることができる。
ここで、カルシウム濃度が過度に高いと、曝気槽2内で炭酸カルシウムが堆積し、曝気槽2の容積が減少する傾向がある。
また、カルシウムが過度に低いと、汚泥の沈降速度が低下し、膜分離槽8の膜分離部10による固液分離の効率が低下する傾向があり、さらに、膜分離部10の差圧が増大する傾向がある。
【0022】
本実施の形態では、活性汚泥の栄養源としてのリン化合物は、原水(A)中に含まれるBOD成分とリン化合物(P)の比率が、(BOD成分:P)=(100:0.3)〜(100:1)(重量比)の範囲で、原水(A)に添加されることが好ましい。
尚、処理装置100を実際に運転する場合、リン化合物の添加量を上述の比率より高めに設定すると、原水(A)に含まれる有機物の濃度変動に対応することができる。但し、リン化合物の添加量が過度に多いと、余剰のリン化合物処理水に漏出し、排水放流先の富栄養化の原因となる傾向がある。
【0023】
本実施の形態では、曝気槽2におけるCOD容積負荷は1kg/(m・日)〜3kg/(m・日)程度の範囲とすることが好ましい。
また、曝気槽2の水温は、30℃〜40℃が好ましく、33℃〜35℃がより好ましい。曝気槽2の水温が過度に低い又は高い場合、活性汚泥中の菌の活性度が低下し、原水(A)中に含まれるCOD成分やSCN等の分解性に影響が及ぶ傾向がある。
【0024】
(膜分離槽8)
曝気槽2の外部に設けた膜分離槽8において、被処理水には、膜分離槽8内に浸漬された膜分離部10により固液分離処理が行われる。膜分離部10に配設される分離膜としては、例えば、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜等が挙げられる。
また、分離膜の形状については、中空糸膜を用いるタイプと平膜を用いるタイプが挙げられる。中空糸膜を用いるタイプは、平膜を用いるタイプに比べて膜の集積密度を高くすることができる。特に、膜ろ過ユニットがコンパクトであり、曝気空気量が少ない利点があるので好ましい。
分離膜を構成する材料としては、例えば、セルロース、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)等の有機物;セラミックス等の無機物が挙げられる。
【0025】
膜分離部10の構成は特に限定されない。本実施の形態では、多数の多孔質中空糸膜を同一平面上に平行に並べたシート状の中空糸膜エレメントを所要の間隔をおいて複数枚並べて得られる中空糸膜モジュールと、この中空糸膜モジュールの下方に配された散気発生装置(散気管9,送風装置(B2)52)とを組み合わせて使用することが好ましい。中空糸膜モジュールは、複数枚の中空糸膜エレメントからなり、全体の形状が略直方体を呈している。
また、処理効率の観点から、前記多孔質中空糸の平均孔径は、0.03μm〜0.5μmであることが好ましい。
【0026】
本実施の形態では、膜分離部10として、PVDF製の多孔質中空糸膜エレメントを備えた中空糸膜モジュールを使用している。この場合には、膜モジュールの運転安定性と経済性の観点から、被処理水の日平均膜透過流束を0.1m/日〜0.6m/日の範囲で行うことが好ましく、0.2m/日〜0.5m/日の範囲で行うことがより好ましく、0.25m/日〜0.45m/日の範囲で行うことがさらに好ましい。
また、多孔質中空糸膜に汚泥が付着し、膜閉塞が生じることを防ぐために、常に、散気管9から曝気を行うことが好ましい。
さらに、膜閉塞が生じることを防ぐために、ポンプ(P5)53による吸引ろ過を間欠的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、吸引ろ過(7分間)−停止(1分間)のように行う。
【0027】
尚、曝気槽2の外部に設けた膜分離槽8を有する処理装置100を使用する場合、膜分離部10により分離された分離汚泥は、曝気槽2と膜分離槽8間の汚泥の返送比として1〜5、好ましくは2〜3の範囲で返送されることが好ましい。
また、曝気槽2の活性汚泥浮遊物質(MLSS:Mixed liquor suspended solid)は、4,000mg/L〜10,000mg/L、好ましくは6,000mg/L〜8,000mg/Lの範囲である。
膜分離槽8のMLSSは、5,000mg/L〜15,000mg/L、好ましくは8,000mg/L〜12,000mg/Lの範囲であることが好ましい。
【0028】
(第2の実施形態)
次に、図2(b)に基づき、コークス炉排水の処理装置の第2の実施形態について説明する。図2(b)に示すように、本実施の形態では、膜分離部10は、曝気槽2の内部に浸漬して配置されている。
本実施の形態では、送風装置(B1)42から原水(A)中に空気を送り込む散気管3と膜分離部10とを備えた同じ曝気槽2内で、原水(A)中の有機物を活性汚泥中の微生物によって分解する生物処理と膜分離部10による固液分離処理とが行われる。固液分離処理は、膜分離部10に接続したポンプを用いる吸引ろ過によって行われる。膜分離部10を透過した透過水は、ポンプ(P5)53により活性炭塔15に送られる。活性炭塔15では、透過水中に含まれるCOD成分が活性炭により吸着除去され、その後、活性炭塔15の底部から排水配管34を介して、放流又は再利用に適した処理水(D)として系外に排出される。
尚、本実施の形態のように、膜分離部10が曝気槽2の内部に浸漬して配置されている場合は、曝気槽2のMLSSは、6,000mg/L〜15,000mg/Lの範囲とすることが好ましい。
【0029】
本実施の形態が適用されるコークス炉排水の処理装置100において、膜分離部10が曝気槽2の外部に設置された膜分離槽8内に浸漬配置されている場合(第1の実施の形態)は、曝気槽2における生物処理に必要な散気装置(散気管3,送風装置(B1)42)と、膜分離槽8内に浸漬した膜分離部10の洗浄に必要な散気装置(散気管9,送風装置(B2)52)とは、それぞれの槽に適した方式を採用することができる。
また、曝気槽2のMLSSを膜分離槽8のMLSSよりも低くして運転することができる。さらに、他の系との連携や複数個の分離部膜エレメントを設けることにより、分離部膜エレメントの点検・補修・交換時に曝気槽2の運転を休止することなく固液分離処理を行うことができる。
【0030】
また、本実施の形態が適用されるコークス炉排水の処理装置100において、膜分離部10が曝気槽2の内部に浸漬配置されている場合(第2の実施の形態)は、プロセスの構成が単純化される。また、曝気槽2の内部に設けた散気管3による曝気を膜分離部10の洗浄用としても使用できる。
さらに、他の系との連携や複数個の分離部膜エレメントを曝気槽2の内部に浸漬配置することにより、分離部膜エレメントの点検・補修・交換時に曝気槽2の運転を休止することなく固液分離処理を行うことができる。
【0031】
尚、本実施の形態が適用されるコークス炉排水の処理装置100を運転することにより、処理水の全リン濃度が低下する。処理水の全リン濃度が低下する理由は以下のように考えられる。
すなわち、本実施の形態において、コークス炉排水(原水(A))のpH(水素イオン濃度指数)は、通常、アルカリ側(pH8〜pH9.5)であり、コークス炉排水由来のアンモニア(混合後800mg/L〜1,000mg/L)を含んでいる。
このとき、一定量のマグネシウム(Mg)が存在すれば、汚泥の栄養源として添加されるリン化合物は、難溶性のリン酸マグネシウムアンモニウム(以下、「MAP」と称することがある。)の結晶として析出するはずである。
また、一定量のカルシウム(Ca)が存在すれば、汚泥の栄養源として添加されるリン化合物は、難溶性のリン酸カルシウムの結晶として析出するはずである。
【0032】
そこで、前述したように所定の割合で希釈水としての海水を原水(A)に加えて、コークス炉排水(原水(A))にはほとんど含まれないマグネシウム(Mg)及び/又はカルシウム(Ca)の量を調整すれば、不溶性物質としてMAP及び/又はリン酸カルシウムの結晶が析出する。
その後、不溶性物質のMAP及び/又はリン酸カルシウムを膜分離部10により分離することにより、汚泥の栄養源として添加されるリン化合物の大部分が除去された処理水を得ることができる。
すなわち、本実施の形態が適用されるコークス炉排水の処理装置100により、従来の処理装置200に設けた沈殿槽6や砂ろ過塔13では除去できなかった微小サイズのMAP及び/又はリン酸カルシウムの結晶の通過が阻止され、リンの漏洩を防ぐことができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をより具体的に説明する。尚、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されない。
【0034】
(実施例)
図1に示したコークス炉排水の処理装置100を使用し、膜分離活性汚泥法(MBR)により、下記に示す運転条件に基づきコークス炉排水の活性汚泥処理を行った。処理前の原水(A:被処理水)と処理後の処理水について測定した水質の測定結果を、後述する表1に示した。
【0035】
(1)被処理水(コークス炉排水)
・通水流量:0.1m/h(希釈前の流量)
0.3m/h(海水及び工業用水による希釈後の流量)
【0036】
(2)曝気槽2の処理条件
・海水・工業用水の添加割合:コークス炉排水:海水:工業用水=1:1:1
・曝気槽2の容量:4m
・曝気槽2内のカルシウム濃度:110mg/L〜170mg/L
・リン添加量:平均10mg−P/L(リン酸添加)
・COD容積負荷:平均2.6kg/(m・日)
・水温:33℃〜35℃
・MLSS:7,000mg/L〜8,000mg/L
・溶存酸素:平均1mg/L
【0037】
(3)膜分離槽8(槽外型膜分離装置)の処理条件
・膜分離部10:PVDF製中空糸膜(平均孔径0.4μm)を配設した中空糸膜エレメントを使用した膜面積18mの中空糸膜モジュール(三菱レイヨン株式会社製)を使用した。
・常時バブリング空気量:10Nm/m・h〜20Nm/m・h
・処理水の引抜時間7分、引抜停止時間1分
・膜分離槽8から曝気槽2への汚泥返送比:2
・膜(膜分離部10)の日平均透過流束:0.4m/日
【0038】
(4)活性炭塔15(COD除去部)の処理条件
・空間速度:5(m/h)/(m−AC)
・活性炭の充填量:0.06m
・活性炭の層高:1,900mmH
・活性炭塔15の寸法:200mmφ×3,000mmH(断面積0.031m
・通水LV:9.7m/h
・活性炭塔15破過時のCOD:60mg/L
【0039】
(比較例)
図1に示したコークス炉排水の従来の処理装置200(沈殿法活性汚泥装置)を使用し、沈殿法により、下記に示す運転条件に基づきコークス炉排水の活性汚泥処理を行った。
以下に、図1及び図3に基づき、従来の処理装置200について説明する。
【0040】
図1に示すコークス炉排水の従来の処理装置200は、原水槽1と、曝気槽2と、曝気槽2から溢れ出た活性汚泥を含む被処理水が流れ込む沈殿槽6と、沈殿槽6において活性汚泥が沈殿することにより分離した上澄み液が流れ込む処理水槽12と、砂ろ過塔13と、活性炭塔14と、を備えている。
処理装置100(膜分離活性汚泥装置)と同様に、原水槽1の原水(A)は曝気槽2に供給され、活性汚泥中の微生物による生物処理が行われる。次に、曝気槽2から溢れ出た活性汚泥を含む被処理水は配管25を介して汚泥掻寄機7を備えた沈殿槽6に流れ込み、沈殿槽6において活性汚泥が沈殿することにより上澄み液と汚泥(返送汚泥)に分離する。尚、返送汚泥は、ポンプ(P2)44により返送配管30を介し返送汚泥として曝気槽2へ返送され、返送汚泥の一部は余剰汚泥として系外へ抜き出されて処分される。
沈殿槽6において分離した上澄み液は配管26を介して処理水槽12に流れ込み、その後、ポンプ(P3)43により配管27を介して砂ろ過塔13に送られ、さらに配管28を介して活性炭塔14に送られて、活性炭塔14の底部から排水配管29を介して処理水(C)として系外に排出される。
従来の処理装置200による処理後の処理水と処理前の原水(被処理水)とについて測定した水質の測定結果を、後述する表1に示す。
【0041】
(1)被処理水(コークス炉排水):実施例1に同じ
(2)曝気槽2の処理条件:実施例1に同じ
(3)沈殿槽6の処理条件
・表面負荷:14.3m/日
・沈殿槽6から曝気槽2への汚泥返送比:1
(4)砂ろ過塔13の処理条件
・ろ材・層高:アンスラサイト:1,200mmH
ろ過砂:700mmH
・砂ろ過塔13の寸法:150mmφ×3,000mmH(断面積0.018m
・ろ過LV:17m/h
(5)活性炭塔14の処理条件:実施例1に同じ
【0042】
【表1】
【0043】
ここで、活性炭の寿命は、次のようにして求めた。
実施例では、膜分離部10の処理水を活性炭塔15に通水し、比較例では、砂ろ過塔13の処理水を活性炭塔14に通水し、各々の活性炭塔処理水を12〜14時間毎に採取し、CODを測定した。
活性炭塔処理水のCODが、通水時間の経過とともに増加し、活性炭塔入口水のCODが60%に達した時点を破過点として、通水開始から破過点までの通水日数を求めた。
また、実施例及び比較例において、この評価を各々3回行い、透水日数の平均値を、活性炭の寿命として評価した。
【0044】
表1に示す結果から、コークス炉排水の活性汚泥処理において、コークス炉排水(原水(A))を、コークス炉排水(原水):海水:工業用水=1:1:1の割合で希釈し、曝気槽2内のカルシウム濃度を110mg/L〜170mg/Lの範囲に保ち、且つ、活性汚泥の栄養源として、リン添加量が平均10mg−P/Lになるようにリン酸を添加して調整し、曝気槽2内にて活性汚泥処理された後、PVDF製中空糸膜を備えた膜分離部10により固液分離処理された処理水は(実施例)、未処理のコークス炉排水(原水(A))と比較して、COD成分(COD(mg/L))が原水(A)の約1.8%程度(79mg/L)に迄減少し、BOD成分(BOD(mg/L))が原水(A)の約0.25%程度(7.6mg/L)に迄減少し、活性炭塔15に充填した活性炭の寿命が延長され、交換すべき日数が平均16日となった。
さらに、全リン濃度(T−P(全リン)(mg/L))が原水(A)の約0.6%程度(0.06mg/L)に迄減少した。
【0045】
これに対し、実施例と同様なコークス炉排水を、従来の処理装置200(沈殿法活性汚泥装置)を用いて活性汚泥処理した場合は(比較例)、COD成分の減少が原水(A)の約2.5%程度(110mg/L)に止まり、BOD成分の減少が原水の約1.8%程度(55mg/L)に止まり、活性炭塔14に充填した活性炭の交換すべき日数が実施例と比較して平均11日に止まる結果となった。
さらに、T−P(全リン)の減少が原水の約7%程度(0.7mg/L)に止まった。
【0046】
以上、本発明によれば、従来のコークス炉排水処理装置の沈殿槽6及び砂ろ過塔13に代えて、膜分離部10を設けることによって、活性炭塔15入口のCOD成分が低減することにより活性炭の寿命を伸ばすことができる。
また、処理水中の全リン濃度が低減することにより、放流先の富栄養化を防止することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…原水槽、2…曝気槽、3,9…散気管、4,11…レベルスイッチ、5…溶存酸素計、6…沈殿槽、7…汚泥掻寄機、8…膜分離槽、10…膜分離部、12…処理水槽、13…砂ろ過塔、14,15…活性炭塔、21…原水配管、22,25,26,27,28,31,32,33…配管、23…供給配管、24…散気配管、29,34…排水配管、30,35…返送配管、41,43,44,51,53,54…ポンプ、42,52…送風装置、100…処理装置(膜分離活性汚泥装置)、200…処理装置(沈殿法活性汚泥装置)、A…コークス炉排水、B…希釈水、C,D…処理水
図1
図2
図3