(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術は、蓄電装置から給電された場合の給水装置の省エネルギー運転については考慮されていない。
【0006】
すなわち、近年、自家発電設備を設ける代わりに、自家発電設備より安価な蓄電装置(蓄電池)を設置して、停電時は蓄電装置からの給電によって給水装置を駆動するケースが増加している。
【0007】
蓄電装置を用いることによって停電時にも給水は可能であるが、停電時においては復電までの時間が不明なことから、給電装置を可能な限り長い時間運転できるようにすることが望まれている。例えば、蓄電装置からの給電で長時間運転を実現するためには、蓄電装置の容量を増加することなどが考えられるが、これでは、蓄電装置が高価となるため、給水装置側での運転態様を工夫することが求められる。
【0008】
そこで、本願発明は、蓄電装置から供給される電力による運転時間を長くすることができる流体供給装置を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の流体供給装置は、上記課題に鑑みなされたもので、流体を移送するポンプと、 前記ポンプを駆動する駆動部と、商用電源から供給される第1の電力又は前記第1の電力を蓄電する蓄電部から供給される第2の電力を前記駆動部へ供給する動力部と、前記動力部を介して前記ポンプの駆動を制御する制御部と、を備える。
【0010】
前記制御部は、前記動力部へ供給される電力が前記第1の電力から前記第2の電力へ切り替わったら、前記第2の電力によって前記ポンプを駆動する際の前記駆動部の消費電力が、前記第1の電力によって前記ポンプを駆動する際の前記駆動部の消費電力よりも小さくなるように、前記動力部を制御する、ことを特徴とする。
【0011】
また、前記制御部は、前記動力部へ供給される電力が前記第1の電力から前記第2の電力へ切り替わったら、前記第2の電力によって前記ポンプを駆動する際の前記ポンプの設定圧力が、前記第1の電力によって前記ポンプを駆動する際の前記ポンプの設定圧力よりも小さくなるように、前記動力部を制御することができる。
【0012】
また、前記動力部が、前記第1の電力又は前記第2の電力を所定周波数に変換して前記駆動部へ供給するインバータを備える場合、前記制御部は、前記インバータへ供給される電力が前記第1の電力から前記第2の電力へ切り替わったら、前記第2の電力によって前記ポンプを駆動する際の前記インバータのポンプ駆動周波数の加減速時間が、前記第1の電力によって前記ポンプを駆動する際の前記インバータのポンプ駆動周波数の加減速時間よりも長くなるように、前記インバータを制御する、ことができる。
【0013】
また、前記動力部へ前記第1の電力が供給されている際に、前記ポンプ及び前記駆動部を複数台運転する場合、前記制御部は、前記動力部へ供給される電力が前記第1の電力から前記第2の電力へ切り替わったら、前記第2の電力によって前記ポンプ及び前記駆動部を運転する台数が、前記第1の電力によって前記ポンプ及び前記駆動部を運転する台数よりも少なくなるように、前記動力部を制御する、ことを特徴とする。
【0014】
また、前記制御部は、前記蓄電装置の蓄電残量の減少に応じて、前記第2の電力によって前記ポンプを駆動する際の前記ポンプの設定圧力が段階的に下がるように、前記動力部を制御する、ことができる。
【0015】
また、前記制御部は、前記蓄電装置から供給される電圧の低下に応じて、前記第2の電力によって前記ポンプを駆動する際の前記ポンプの設定圧力が段階的に下がるように、前記動力部を制御する、ことができる。
【0016】
また、前記制御部は、前記蓄電装置の温度の上昇に応じて、前記第2の電力によって前記ポンプを駆動する際の前記ポンプの設定圧力が段階的に下がるように、前記動力部を制御する、ことができる。
【0017】
また、前記制御部は、前記第2の電力による運転時間を計測するタイマ機能を備え、前記第2の電力による運転時間に応じて、前記第2の電力によって前記ポンプを駆動する際の前記ポンプの設定圧力が段階的に下がるように、前記動力部を制御する、ことができる。
【0018】
また、前記蓄電装置から出力される交流電力を受電する入力端子を備える場合、前記動力部は、前記入力端子を介して受電した交流電力を所定の周波数に変換して前記駆動部へ供給するインバータとすることができる。
【0019】
また、前記動力部が、前記第1の電力又は前記第2の電力を所定周波数に変換して前記駆動部へ供給するインバータを備える場合、前記制御部は、前記インバータへ供給される電力が前記第1の電力から前記第2の電力へ切り替わったら、前記第2の電力によって前記ポンプを駆動する際の前記インバータのキャリア周波数が、前記第1の電力によって前記ポンプを駆動する際の前記インバータのキャリア周波数よりも低くなるように、前記インバータを制御する、ことができる。
【0020】
また、前記制御部は、前記動力部へ供給される電力が前記第1の電力から前記第2の電力へ切り替わったら、前記蓄電装置から供給される電力で前記ポンプを駆動する旨を表示部に表示する、ことができる。
【0021】
また、前記動力部へ供給される電力が前記第1の電力から前記第2の電力へ切り替わることを示す運転信号を受信する入力端子を備える、ことができる。
【0022】
また、前記制御部は、前記動力部へ前記第2の電力が供給されている状態で、前記ポンプを駆動する要求がない場合に、前記流体供給装置内の表示部を含む機器をスリープ状態に制御する、ことができる。
【0023】
また、前記動力部が、前記第1の電力又は前記第2の電力を所定周波数に変換して前記駆動部へ供給するインバータを備える場合、前記蓄電装置から出力される直流電力を受電する入力端子を備え、前記インバータは、前記入力端子を介して受電した直流電力を所定周波数の交流電力へ変換して前記駆動部へ供給する、ことができる。
【0024】
また、本願発明の流体供給装置は、流体を移送するポンプと、前記ポンプを駆動する駆動部と、商用電源から供給される第1の電力又は蓄電装置から供給される第2の電力を前記駆動部へ供給する動力部と、を備え、前記動力部が、前記第1の電力又は前記第2の電力を所定周波数に変換して前記駆動部へ供給するインバータを備える場合、前記蓄電装置から出力される直流電力を受電する入力端子を備え、前記インバータは、前記入力端子を介して受電した直流電力を所定周波数の交流電力へ変換して前記駆動部へ供給する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
かかる本願発明によれば、蓄電装置から供給される電力による運転時間を長くすることができる流体供給装置を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本願発明の一実施形態に係る流体供給装置を図面に基づいて説明する。以下の実施形態は、一例として、給水装置を説明するが、これには限られない。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の給水装置を含む給水システムの構成を示す図である。
図1に示すように、第1実施形態の給水システム100は、蓄電装置200と、給水装置300とを備える。
【0029】
蓄電装置200は、商用電源290から供給される商用電力(第1の電力)を受電する。蓄電装置200は、商用電源290からの入力を一旦直流電力化し、蓄電部210(バ
ッテリ)に蓄電し、停電時にはインバータにより交流電源を作って出力する回路と、通常の商用電源をバイパスして出力する回路とを有する。具体的には、蓄電装置200は、蓄電部210、交流化インバータ220、制御部230、直流化インバータ240、及びスイッチ250、を備える。
【0030】
直流化インバータ240は、受電した商用電力を直流電力へ変換するインバータであり、変換した直流電力を蓄電部210へ供給する。蓄電部210は、直流化インバータ240から供給された直流電力を蓄電する蓄電池である。
【0031】
交流化インバータ220は、蓄電部210から出力された直流電力を交流電力へ変換するインバータである。スイッチ250は、商用電源290から供給された商用電力(第1の電力)と、交流化インバータ220から出力された交流電力(蓄電部210から供給される第2の電力)のいずれか一方を選択して、給水装置300へ出力する。例えば、スイッチ250は、商用電源290から商用電力が供給されている通常時には、商用電源290から供給された交流電力を選択して出力する一方、商用電源290から商用電力が供給されない停電時には、交流化インバータ220から出力された交流電力を選択して出力する。
【0032】
制御部230は、蓄電装置200は停電が起こると、スイッチ250を切り替えることによって、バイパスして商用電力を供給していた回路を蓄電側に切り替えて電源の切り替えを制御することによって給電を継続する。また、制御部230は、電源を第1の電力から第2の電力へ、或いは第2の電力から第1の電力へ切り替えたこと、又は蓄電部210の状態(例えば、蓄電残量など)を示す制御信号を外部機器へ出力する。なお、制御部230への電源供給は例えば蓄電部210から行うことができる。
【0033】
次に、給水装置300は、モータポンプ310−1,310−2、動力部320、制御部330、圧力センサ340、及び表示部350を備える。給水装置300は、吸込側に設けられた配管を介して貯水槽などから水を汲み上げ、吐出側に設けられた配管を介して需要者側へ水を移送する。また、給水装置300は、吐出側の配管には図示されないチェッキ弁、圧力タンクなど制御に必要な機器が設けられている。
【0034】
本実施形態では、水などの流体を移送するポンプと、ポンプを駆動するモータ(駆動部)とが一体化されたモータポンプ310を例に挙げて説明するが、これには限られず、ポンプとモータとが別体となっていてもよい。なお、以下の説明では、2台のモータポンプ310−1,310−2のいずれか一方、又は両方を特定しない場合には、モータポンプ310として説明する。
【0035】
動力部320は、商用電源290からスイッチ250を介して供給される商用電力(第1の電力)、又は蓄電部210からスイッチ250を介して供給される第2の電力をモータポンプ310へ供給する。具体的には、動力部320は、直流化インバータ322と、交流化インバータ324とを備える。
【0036】
直流化インバータ322は、給水装置300用の交流電力を受電する入力端子を介して蓄電装置200から供給される第1の電力又は第2の電力を所定の直流電力へ変換するインバータであり、変換した直流電力を交流化インバータ324へ出力する。
【0037】
交流化インバータ324は、直流化インバータ322から供給された直流電力を所定周波数の交流電力へ変換して、モータポンプ310へ供給する。モータポンプ310は、交流化インバータ324から供給された電力の周波数に応じた回転数で駆動される。
【0038】
圧力センサ340は、モータポンプ310の吐出側の配管に設けられており、モータポンプ310の吐出側の圧力を計測する。圧力センサ340によって計測された圧力値は、制御部330へ出力される。給水装置300は、主に圧力センサ340の信号で吐出圧力を検出し、制御部330から動力部320へ制御信号を出力することで、需要者側へ適正な圧力で水を供給するように構成されている。なお、給水装置300がモータポンプ310の吸い込み側に受水槽を備える場合は、蓄電装置200による運転時は水位検出器からの水位の検出も不要となる。ただし、圧力センサ340からの信号は圧力設定値を変更するために電源の種類によらず継続して制御部330に出力する。
【0039】
表示部350は、給水装置300に関する各種情報を表示する表示器である。表示部350は、例えば、動力部320へ供給される電力が第1の電力から第2の電力へ切り替わったら、蓄電装置200から供給される電力でモータポンプ310を駆動する旨を表示する。また、例えば、表示部350は、蓄電装置200による運転時は、給水装置300の制御部330を経由せず単独で蓄電装置200により給水装置運転中の信号を表示することもでき、給水装置300の運転状態を表示をしなくてもよい場合によりいっそう節電することができる。なお、制御部330は、動力部320へ第2の電力が供給されている状態で、モータポンプ310を駆動する要求がない場合に、給水装置300内の例えば表示部350などの機器をスリープ状態に制御することによって、節電を図ることができる。
【0040】
制御部330は、動力部320を介してモータポンプ310の駆動を制御する。具体的には、制御部330には、制御部230から、例えば停電時によって電源が第1の電力から第2の電力へ切り替わったことを示す制御信号が入力される。制御部330は、動力部320へ供給される電力が第1の電力から第2の電力へ切り替わったら(入力された制御信号に基づいて第1の電力から第2の電力へ切り替わったと判定したら)、停電時運転モードでモータポンプ310を運転する。つまり、制御部330は、第2の電力によってモータポンプ310を駆動する際のモータポンプ310の消費電力(モータを駆動する駆動部の消費電力)が、第1の電力によってモータポンプ310を駆動する際のモータポンプ310の消費電力(モータを駆動する駆動部の消費電力)よりも小さくなるように、動力部320を制御する。
【0041】
ここで、制御部330による運転制御フローについて説明する。
図2は、制御部による運転制御フローを示す図である。
図2に示すように、制御部330は、まず、通常時運転モードでモータポンプ310を運転する(ステップS101)。すなわち、制御部330は、制御部330にあらかじめ設定されている通常時の運転モードにおけるモータポンプ310の各種設定値でモータポンプ310を駆動するように、動力部320を制御する。
【0042】
続いて、制御部330は、動力部320への供給電源が蓄電部210に蓄電された電力(第2の電力)であるか否かを判定する(ステップS102)。具体的には、制御部330は、制御部230から入力された制御信号に基づいて、第2の電力が供給されているか否かを判定する。
【0043】
制御部330は、動力部320への供給電源が蓄電部210に蓄電された電力(第2の電力)ではないと判定したら(ステップS102,No)、ステップS101へ戻り、通常時の運転を継続する。
【0044】
一方、制御部330は、動力部320への供給電源が蓄電部210に蓄電された電力(第2の電力)であると判定したら(ステップS102,Yes)、停電時運転モードでモータポンプ310を運転する(ステップS103)。すなわち、制御部330は、制御部330にあらかじめ設定されている停電時の運転モードにおけるモータポンプ310の各種設定値でモータポンプ310を駆動するように、動力部320を制御する。この点の詳
細については後述する。
【0045】
続いて、制御部330は、動力部320への供給電源が商用電力(第1の電力)であるか否かを判定する(ステップS104)。具体的には、制御部330は、制御部230から入力された制御信号に基づいて、第1の電力が供給されているか否かを判定する。
【0046】
制御部330は、動力部320への供給電源が商用電力(第1の電力)ではないと判定したら(ステップS104,No)、ステップS103へ戻り、停電時の運転を継続する。
【0047】
一方、制御部330は、動力部320への供給電源が商用電力(第1の電力)であると判定したら(ステップS104,Yes)、ステップS101へ戻り、通常時運転モードでモータポンプ310を運転する。
【0048】
このように、停電時における給水装置300の制御方法を変えて運転することによって、停電時における給水装置300の駆動にかかる動力を低減することができるので、蓄電装置200から供給される電力による給水装置300の運転時間を長くすることができる。以下、制御部330による制御態様の詳細について説明する。
【0049】
(第1の制御態様)
制御部330は、動力部320へ供給される電力が第1の電力から第2の電力へ切り替わったら、第2の電力によってモータポンプ310を駆動する際のモータポンプ310の設定圧力(吐出圧力)が、第1の電力によってモータポンプ310を駆動する際のモータポンプ310の設定圧力(吐出圧力)よりも小さくなるように、動力部320を制御する。
【0050】
この点について、
図3を用いて説明する。
図3は、モータポンプの設定圧力に対する消費電力を示す図である。
図3の上図において、横軸は流量Qを示し、縦軸は揚程(ヘッド)Hを示す。また、
図3の下図において、横軸は流量Qを示し、縦軸はモータポンプの出力(消費電力)Pを示す。
【0051】
図3の上図は、通常時のモータポンプ310の回転速度におけるQ−H曲線402と、停電等によって動力部320へ供給される電力が第1の電力から第2の電力へ切り替わった後のモータポンプ310の回転速度におけるQ−H曲線404とを示している。
【0052】
制御部330は、停電等によって動力部320へ供給される電力が第1の電力から第2の電力へ切り替わったら、動力部320の交流化インバータ324におけるポンプ駆動周波数を下げることによってモータポンプ310の回転速度を下げる。これによって、モータポンプ310のQ−H曲線は、Q−H曲線402からQ−H曲線404へ変化する。
【0053】
図3に示すように、所定の流量Q1を得るための揚程Hは、Q−H曲線402においてはH2となり、Q−H曲線404においてはH1(<H2)となる。これは、通常時には、水を汲み上げる高さに加えて配管等の圧力損失などを考慮して余裕をもって揚程H1が設定されているが、停電時にはこの余裕分を減らした揚程H2に設定する。言い換えれば、制御部330は、停電等によって動力部320へ供給される電力が第1の電力から第2の電力へ切り替わったら、通常時のモータポンプ310の設定圧力よりも、モータポンプ310の設定圧力を小さくするということである。
【0054】
図3の下図は、通常時のモータポンプ310の駆動に対する出力グラフ406と、停電等によって動力部320へ供給される電力が第1の電力から第2の電力へ切り替わった後
のモータポンプ310の回転速度における出力グラフ408とを示している。
【0055】
図3の下図に示すように、通常時には、所定の流量Q1を得るための出力はP2となり、停電等によって動力部320へ供給される電力が第1の電力から第2の電力へ切り替わった後は、所定の流量Q1を得るための出力はP1(<P2)となる。したがって、停電等によって動力部320へ供給される電力が第1の電力から第2の電力へ切り替わった後のモータポンプ310の設定圧力を、通常時のモータポンプ310の設定圧力よりも小さくすることによって、モータポンプ310の消費電力をΔPだけ小さくすることができる。その結果、蓄電装置200から供給される電力による給水装置300の運転時間を長くすることができる。
【0056】
(第2の制御態様)
制御部330は、動力部320(交流化インバータ324)へ供給される電力が第1の電力から第2の電力へ切り替わったら、第2の電力によってモータポンプ310を駆動する際の交流化インバータ324のポンプ駆動周波数の加減速時間が、第1の電力によってモータポンプ310を駆動する際の交流化インバータ324のポンプ駆動周波数の加減速時間よりも長くなるように、動力部320(交流化インバータ324)を制御する。
【0057】
この点について、
図4を用いて説明する。
図4は、交流化インバータのポンプ駆動周波数の加減速時間に対する消費電力を示す図である。
図4の上図において、横軸は時間経過を示し、縦軸はモータポンプ310の回転速度を示している。また、
図4の下図において、横軸は時間経過を示し、縦軸はモータポンプ310の出力(消費電力)を示している。
【0058】
図4の上図は、通常時の交流化インバータ324のポンプ駆動周波数の加減速における加速時間グラフ412と、停電等によって動力部320へ供給される電力が第1の電力から第2の電力へ切り替わった後の交流化インバータ324のポンプ駆動周波数の加減速における加速時間グラフ414とを示している。
【0059】
制御部330は、停電等によって動力部320へ供給される電力が第1の電力から第2の電力へ切り替わったら、モータポンプ310の回転速度をN1からN2へ加速する際の加速時間をt1からt2へ長くする。これによって、交流化インバータ324のポンプ駆動周波数は、加速時間グラフ412から加速時間グラフ414へ変化する。
【0060】
図4の下図は、通常時の交流化インバータ324のポンプ駆動周波数の加減速における出力グラフ416と、停電等によって動力部320へ供給される電力が第1の電力から第2の電力へ切り替わった後の交流化インバータ324のポンプ駆動周波数の加減速における出力グラフ418とを示している。
【0061】
図4の下図に示すように、通常時には、モータポンプ310の回転速度をN1からN2へ加速する際の加速時間がt1であり比較的短いので、モータポンプ310の出力は、P1からP2へ上昇する過程で過渡的に大きくなる。一方、停電等によって動力部320へ供給される電力が第1の電力から第2の電力へ切り替わった後は、モータポンプ310の回転速度をN1からN2へ加速する際の加速時間をt1より長いt2に設定しているので、モータポンプ310の出力は、P1からP2へなだらかに上昇する。したがって、停電等によって動力部320へ供給される電力が第1の電力から第2の電力へ切り替わった後の交流化インバータ324のポンプ駆動周波数の加減速時間を、通常時よりも長くすることによって、モータポンプ310の消費電力を小さくすることができる。その結果、蓄電装置200から供給される電力による給水装置300の運転時間を長くすることができる。
【0062】
(第3の制御態様)
第1実施形態のように、動力部320へ第1の電力が供給されている際に、2台のモータポンプ310−1,310−2を運転する場合、制御部330は、動力部320へ供給される電力が第1の電力から第2の電力へ切り替わったら、第2の電力によってモータポンプ310を運転する台数が、第1の電力によってモータポンプ310を運転する台数よりも少なくなるように、動力部320を制御する。
【0063】
すなわち、本実施形態では、通常時には、第1の電力によって2台のモータポンプ310−1,320−2を運転する。一方、停電等によって動力部320へ供給される電力が第1の電力から第2の電力へ切り替わったら、制御部330は、例えばモータポンプ310−1にのみ第2の電力を供給することによって、1台のモータポンプ310−1を運転する。
【0064】
モータポンプの運転台数を通常時よりも少なくすることによって、モータポンプ310の消費電力を小さくすることができる。その結果、蓄電装置200から供給される電力による給水装置300の運転時間を長くすることができる。
【0065】
(第3の制御態様)
制御部330は、蓄電装置200における蓄電部210の蓄電残量の減少に応じて、第2の電力によってモータポンプ310を駆動する際のモータポンプ310の設定圧力が段階的に下がるように、動力部320を制御することができる。
【0066】
すなわち、制御部330には、制御部230から、蓄電部210の状態(蓄電残量など)を示す制御信号が入力される。制御部330は、入力された制御信号に基づいて、蓄電部210の蓄電残量を把握する。そして、制御部330は、蓄電部210の蓄電残量が少なくなるにしたがって、モータポンプ310の設定圧力を段階的に下げる。モータポンプ310の設定圧力を下げる態様については、上述の第1の制御態様と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0067】
第3の制御態様について、
図5を用いて説明する。
図5は、制御部による運転制御フローの他の例を示す図である。
図5に示すように、制御部330は、まず、通常時運転モードでモータポンプ310を運転する(ステップS201)。すなわち、制御部330は、制御部330にあらかじめ設定されている通常時の運転モードにおけるモータポンプ310の各種設定値でモータポンプ310を駆動するように、動力部320を制御する。
【0068】
続いて、制御部330は、動力部320への供給電源が蓄電部210に蓄電された電力(第2の電力)であるか否かを判定する(ステップS202)。具体的には、制御部330は、制御部230から入力された制御信号に基づいて、第2の電力が供給されているか否かを判定する。
【0069】
制御部330は、動力部320への供給電源が蓄電部210に蓄電された電力(第2の電力)ではないと判定したら(ステップS202,No)、ステップS201へ戻り、通常時の運転を継続する。
【0070】
一方、制御部330は、動力部320への供給電源が蓄電部210に蓄電された電力(第2の電力)であると判定したら(ステップS202,Yes)、停電時運転モードでモータポンプ310を運転する(ステップS203)。具体的には、制御部330は、通常時の運転モードよりも低い設定圧力1でモータポンプ310を運転する。
【0071】
続いて、制御部330は、蓄電部210の蓄電残量レベルがあらかじめ設定されたしき
い値(D1)より小さいか否かを判定する(ステップS204)。
【0072】
制御部330は、蓄電部210の蓄電残量レベルがあらかじめ設定されたしきい値(D1)より小さくないと判定したら(ステップS204,No)、ステップS203へ戻り、設定圧力1でのモータポンプ310の運転を継続する。
【0073】
一方、制御部330は、蓄電部210の蓄電残量レベルがあらかじめ設定されたしきい値(D1)より小さいと判定したら(ステップS204,Yes)、設定圧力1よりも低い設定圧力2でモータポンプ310を運転する(ステップS205)。
【0074】
続いて、制御部330は、蓄電部210の蓄電残量レベルがD1よりも小さいあらかじめ設定されたしきい値(D2)より小さいか否かを判定する(ステップS206)。
【0075】
制御部330は、蓄電部210の蓄電残量レベルがあらかじめ設定されたしきい値(D2)より小さくないと判定したら(ステップS206,No)、ステップS205へ戻り、設定圧力2でのモータポンプ310の運転を継続する。
【0076】
一方、制御部330は、蓄電部210の蓄電残量レベルがあらかじめ設定されたしきい値(D2)より小さいと判定したら(ステップS206,Yes)、設定圧力2よりも低い設定圧力3でモータポンプ310を運転する(ステップS207)。
【0077】
続いて、制御部330は、蓄電部210の蓄電残量レベルがD2よりも小さいあらかじめ設定されたしきい値(D3)より小さいか否かを判定する(ステップS208)。
【0078】
制御部330は、蓄電部210の蓄電残量レベルがあらかじめ設定されたしきい値(D3)より小さくないと判定したら(ステップS208,No)、ステップS207へ戻り、設定圧力3でのモータポンプ310の運転を継続する。
【0079】
一方、制御部330は、蓄電部210の蓄電残量レベルがあらかじめ設定されたしきい値(D3)より小さいと判定したら(ステップS208,Yes)、モータポンプ310の運転を停止する(ステップS209)。
【0080】
第3の制御態様によれば、蓄電部210の蓄電残量が少なくなるにしたがって、モータポンプ310の設定圧力を段階的に下げるので、蓄電残量の減少に応じてモータポンプ310の消費電力を小さくすることができる。その結果、蓄電装置200から供給される電力による給水装置300の運転時間を長くすることができる。
【0081】
(第4の制御態様)
制御部330は、蓄電部210の温度の上昇に応じて、第2の電力によってモータポンプ310を駆動する際のモータポンプ310の設定圧力が段階的に下がるように、動力部320を制御することができる。
【0082】
すなわち、蓄電部210の温度は、蓄電部210の蓄電残量が少なくなるにしたがって高くなるという相関を有する。そこで、制御部330は、蓄電部210の温度が高くなるにしたがって、モータポンプ310の設定圧力を段階的に下げることができる。
【0083】
これによれば、蓄電部210の蓄電残量が少なくなるにしたがってモータポンプ310の設定圧力を下げることになるので、蓄電残量の減少に応じてモータポンプ310の消費電力を小さくすることができる。その結果、蓄電装置200から供給される電力による給水装置300の運転時間を長くすることができる。
【0084】
(第5の制御態様)
制御部330は、第2の電力による給水装置300の運転時間を計測するタイマ機能を備えることができる。この場合、制御部330は、第2の電力による給水装置300の運転時間に応じて、第2の電力によってモータポンプ310を駆動する際のモータポンプ310の設定圧力が段階的に下がるように、動力部320を制御することができる。
【0085】
すなわち、第2の電力による給水装置300の運転時間は、概略蓄電部210の蓄電残量に相関するものである。そこで、制御部330には、第2の電力による給水装置300の運転時間が長くなるにしたがって、モータポンプ310の設定圧力を段階的に下げることができる。
【0086】
これによれば、蓄電部210の蓄電残量が少なくなるにしたがってモータポンプ310の設定圧力を下げることになるので、蓄電残量の減少に応じてモータポンプ310の消費電力を小さくすることができる。その結果、蓄電装置200から供給される電力による給水装置300の運転時間を長くすることができる。
【0087】
(第6の制御態様)
制御部330は、動力部320(交流化インバータ324)へ供給される電力が第1の電力から第2の電力へ切り替わったら、第2の電力によってモータポンプ310を駆動する際の交流化インバータ324のキャリア周波数が、第1の電力によってモータポンプ310を駆動する際の交流化インバータ324のキャリア周波数よりも低くなるように、動力部320(交流化インバータ324)を制御することができる。
【0088】
この点について、
図6を用いて説明する。
図6は、交流化インバータの概略を示す図である。
図6に示すように、交流化インバータ324は、直流化インバータ322によって変換された直流(DC)電力を、スイッチ422−1〜422−6(例えば半導体スイッチング素子)を用いてスイッチングすることによって、交流(AC)電力へ変換し、モータポンプ310へ供給する。
【0089】
具体的には、交流化インバータ324は、スイッチ422−1とスイッチ422−2、スイッチ422−3とスイッチ422−4、スイッチ422−5とスイッチ422−6のスイッチングによって、3相の交流電力を生成し、モータポンプ310へ供給する。
【0090】
このように、給水装置300に用いられている交流化インバータ324は、要求された回転速度(周波数)と電圧をモータポンプに供給するため、半導体スイッチング素子によって、高速なスイッチング(ON/OFF)動作をしている。このスイッチングの周期は、インバータのキャリア周波数によって決定される。
【0091】
ここで、制御部330は、通常運転時には、スイッチ422−1〜422−6のON/OFFの周期(=キャリア周波数)を、キャリア周波数に起因する耳障りな音を低減するため、10(kHz)〜20(kHz)程度に高く設定する。このようにキャリア周波数を可聴周波数域から離すことで、清音化が実現される。しかし、キャリア周波数が高いことから交流化インバータ324に用いられている半導体スイッチによるエネルギー損失が大きくなる。
【0092】
一方、制御部330は、停電時の蓄電部210からの給電での運転時には、キャリア周波数を数(kHz)まで下げることで、交流化インバータ324に用いられている半導体スイッチングによるエネルギー損失を低減し、なるべく交流化インバータ324を高効率で運転することを優先する。これにより、給水装置300を長時間動作することができる
。
【0093】
第6の制御態様のフローについて、
図7を用いて説明する。
図7は、制御部による運転制御フローの他の例を示す図である。
図7に示すように、制御部330は、まず、通常時運転モードのキャリア周波数(例えば、10(kHz)〜20(kHz)程度)でモータポンプ310を運転する(ステップS301)。
【0094】
続いて、制御部330は、動力部320への供給電源が蓄電部210に蓄電された電力(第2の電力)であるか否かを判定する(ステップS302)。具体的には、制御部330は、制御部230から入力された制御信号に基づいて、第2の電力が供給されているか否かを判定する。
【0095】
制御部330は、動力部320への供給電源が蓄電部210に蓄電された電力(第2の電力)ではないと判定したら(ステップS302,No)、ステップS301へ戻り、通常時のキャリア周波数での運転を継続する。
【0096】
一方、制御部330は、動力部320への供給電源が蓄電部210に蓄電された電力(第2の電力)であると判定したら(ステップS302,Yes)、停電時運転モードのキャリア周波数(例えば、数(kHz))でモータポンプ310を運転する(ステップS303)。
【0097】
続いて、制御部330は、動力部320への供給電源が商用電力(第1の電力)であるか否かを判定する(ステップS304)。具体的には、制御部330は、制御部230から入力された制御信号に基づいて、第1の電力が供給されているか否かを判定する。
【0098】
制御部330は、動力部320への供給電源が商用電力(第1の電力)ではないと判定したら(ステップS304,No)、ステップS303へ戻り、停電時のキャリア周波数で運転を継続する。
【0099】
一方、制御部330は、動力部320への供給電源が商用電力(第1の電力)であると判定したら(ステップS304,Yes)、ステップS301へ戻り、通常時運転モードのキャリア周波数でモータポンプ310を運転する。
【0100】
このように、制御部330は、動力部320へ供給される電力が第1の電力から第2の電力へ切り替わったら、キャリア周波数を低くしてモータポンプ310を運転するので、蓄電装置200から供給される電力による給水装置300の運転時間を長くすることができる。
【0101】
(第2実施形態)
第1実施形態では、蓄電装置200側で商用電力(第1の電力)と蓄電された電力(第2の電力)との切り替えを行う例を示したが、これには限られない。第2実施形態では、第1の電力と第2の電力との切り替えを給水装置側で行う。
【0102】
第2実施形態の給水システム600は、蓄電装置700と、給水装置800とを備える。蓄電装置700は、商用電源790から供給される商用電力(第1の電力)を受電する。蓄電装置700は、商用電源790からの入力を一旦直流電力化し、蓄電部720(バッテリ)に蓄電し、蓄電した直流電力を出力する回路と、通常の商用電源をバイパスして出力する回路とを有する。具体的には、蓄電装置700は、直流化インバータ710、及び蓄電部720を備える。
【0103】
直流化インバータ710は、受電した商用電力を直流電力へ変換するインバータであり、変換した直流電力を蓄電部720へ供給する。蓄電部720は、直流化インバータ240から供給された直流電力を蓄電する蓄電池である。
【0104】
また、蓄電装置700は、商用電源790から供給された交流電力をそのまま出力する第1の出力端子730と、蓄電部720によって蓄電された直流電力を出力する第2の出力端子740とを備える。蓄電装置700は、電源が第1の電力から第2の電力へ、或いは第2の電力から第1の電力へ切り替えたこと等を示す制御信号を外部機器(給水装置800)へ出力する。
【0105】
次に、給水装置800は、モータポンプ810、動力部820、制御部830、圧力センサ840、第1の受電端子850、第2の受電端子860、及びスイッチ870を備える。給水装置800は、吸込側に設けられた配管を介して貯水槽などから水を汲み上げ、吐出側に設けられた配管を介して需要者側へ水を移送する。また、給水装置800は、吐出側の配管には図示されないチェッキ弁、圧力タンクなど制御に必要な機器が設けられている。
【0106】
本実施形態では、水などの流体を移送するポンプと、ポンプを駆動するモータ(駆動部)とが一体化されたモータポンプ810を例に挙げて説明するが、これには限られず、ポンプとモータとが別体となっていてもよい。
【0107】
動力部820は、商用電源790からスイッチ870を介して供給される商用電力(第1の電力)、又は蓄電部720からスイッチ870を介して供給される第2の電力をモータポンプ810へ供給する。具体的には、動力部820は、直流化インバータ822と、交流化インバータ824とを備える。
【0108】
直流化インバータ822は、第1の受電端子850からスイッチ870を介して供給される第1の電力を所定の直流電力へ変換するインバータであり、変換した直流電力を交流化インバータ824へ出力する。
【0109】
交流化インバータ824は、直流化インバータ322から供給された直流電力、又は第2の受電端子860からスイッチ870を介して供給される第2の電力を所定周波数の交流電力へ変換して、モータポンプ810へ供給する。モータポンプ810は、交流化インバータ824から供給された電力の周波数に応じた回転数で駆動される。
【0110】
圧力センサ840は、モータポンプ810の吐出側の配管に設けられており、モータポンプ810の吐出側の圧力を計測する。圧力センサ840によって計測された圧力値は、制御部830へ出力される。給水装置800は、主に圧力センサ840の信号で吐出圧力を検出し、制御部830から動力部820へ制御信号を出力することで、需要者側へ適正な圧力で水を供給するように構成されている。なお、給水装置800がモータポンプ810の吸い込み側に受水槽を備える場合は、蓄電装置700による運転時は水位検出器からの水位の検出も不要となる。ただし、圧力センサ840からの信号は圧力設定値を変更するために電源の種類によらず継続して制御部830に出力する。
【0111】
第1の受電端子850は、第1の出力端子730から出力された交流電力を受電し、スイッチ870へ出力する。第2の受電端子860は、第2の出力端子740から出力された直流電力を受電し、スイッチ870へ出力する。制御部830は、第1の実施形態と同様の機能に加えて、スイッチ870へ切り替え制御信号を出力する。
【0112】
スイッチ870は、制御部830からの切り替え制御信号に基づいて、第1の受電端子
850で受電した第1の電力を直流化インバータ822へ出力するか、又は第2の受電端子860で受電した第2の電力を交流化インバータ824へ出力するかを切り替える。
【0113】
具体的には、スイッチ870は、商用電源790からの商用電源が供給されている通常時には、第1の受電端子850で受電した第1の電力を直流化インバータ822へ出力する。直流化インバータ822は、第1の受電端子850から供給された第1の電力を直流電力へ変換して、交流化インバータ824へ出力する。交流化インバータ824は、直流化インバータ822から供給された直流電力を交流電力へ変換して、モータポンプ810へ出力する。
【0114】
一方、スイッチ870は、商用電源790からの商用電源が供給されていない停電時には、第2の受電端子860で受電した第2の電力を交流化インバータ824へ出力する。交流化インバータ824は、第2の受電端子860から供給された直流電力を交流電力へ変換して、モータポンプ810へ出力する。
【0115】
本実施形態によれば、蓄電装置700から出力される直流電力を直接受電して、交流化インバータ824で所定周波数に変換してモータポンプ810へ供給するので、直流と交流の変換回数を削減することができ、エネルギー効率を向上することができる。その結果、停電時における給水装置800の駆動にかかる動力を低減することができるので、蓄電装置700から供給される電力による給水装置800の運転時間を長くすることができる。