(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170403
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】ベルト片寄り検出装置及びベルト片寄り検出方法
(51)【国際特許分類】
B65G 43/02 20060101AFI20170713BHJP
B65G 15/08 20060101ALI20170713BHJP
B65G 15/60 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
B65G43/02 E
B65G15/08 Z
B65G15/60
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-220451(P2013-220451)
(22)【出願日】2013年10月23日
(65)【公開番号】特開2015-81181(P2015-81181A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】宇部興産機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】三井造船株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】塩田 真士
(72)【発明者】
【氏名】古賀 征伸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】深沢 恵志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀治
【審査官】
岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−169423(JP,A)
【文献】
特開2013−116795(JP,A)
【文献】
特開2002−181511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/02
B65G 15/00−15/28
B65G 15/60−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト走行方向に複数個のガス注入孔を配設した筒状のベルト支承トラフと、前記ベルト支承トラフ内の曲面状の下部内周面上を前記下部内周面に沿って湾曲した状態で定常走行するループ状のベルトとを備え、前記ガス注入孔からガスを噴出することにより前記ベルトを浮上させた状態で走行させる浮上式ベルトコンベヤ装置に配置され、前記ベルトの前記ベルト支承トラフ内における片寄りを検出するベルト片寄り検出装置であって、
前記下部内周面上における前記ベルトの定常走行時の幅方向両端位置よりも上方に位置するトラフ壁部の外壁側に設けられた、前記ベルト支承トラフの軸方向に対して水平に交差する方向に光を照射し受光する一対の投光部及び受光部を有する透過型光電センサからなり、
前記一対の投光部及び受光部は、前記トラフ壁部に形成された孔部の外壁側に前記孔部を外側から覆うように取り付けられた有底筒状の取付部の底部に対し、互いに前記交差する方向に対向する状態でそれぞれ取り付けられており、
前記取付部の筒状空間内にブローガスを供給するガス供給管を更に備える
ことを特徴とするベルト片寄り検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベルト支承トラフ内でベルトを浮上させて湾曲した状態で走行させる浮上式ベルトコンベヤ装置に配置され、ベルト支承トラフ内のベルトの片寄りを検出するベルト片寄り検出装置及びベルト片寄り検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一対のベルト支承トラフ内をベルトの下面に圧縮空気等のガスを供給してベルトを浮上させた状態で走行させて被搬送物を搬送する浮上式ベルトコンベヤ装置が用いられている。このような浮上式ベルトコンベヤ装置においては、運転中にベルトが蛇行して円滑に動作しなくなることがあった。
【0003】
このようなベルトの蛇行は、ベルト上に載せた被搬送物の片寄り等の様々な原因により発生することが明らかとなっている。そして、ベルトが蛇行することによりベルト支承トラフ内で片寄って走行すると、被搬送物が落下する危険性が増すのみならず、ベルトやトラフ内周面の偏摩耗等が発生し装置の寿命が短くなる場合がある。
【0004】
一方、一般的なベルトコンベヤにおいて、ベルトの蛇行を修正するためにベルトが片寄ったことを検出するものとして、例えばベルト片寄り制御装置(下記特許文献1参照)や蛇行修正装置(下記特許文献2参照)が知られている。ベルト片寄り制御装置は、ベルトの端部の位置を1つの発光素子及び2つの受光素子で非接触に検出し、蛇行修正装置は、ベルトの端部の位置を接触式の検出センサで検出する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−327161号公報
【特許文献2】特開2000−118663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたベルト片寄り制御装置では、ベルトの端部に対し、上下方向に発光素子及び受光素子を配置する必要があり、また、上記特許文献2に開示された蛇行修正装置では、ベルトの両端部に検出センサを接触可能にそれぞれ配置する必要がある。このため、浮上式ベルトコンベヤ装置のベルト支承トラフ内に配置しようとすると、配置スペースが限られるので所望の箇所に配置できないという問題がある。
【0007】
また、被搬送物の種類によっては、ベルト支承トラフ内の防爆性を要求されることがあるので、電力を必要とする上記素子やセンサ、或いは電気配線等の部品を積極的にベルト支承トラフ内に配置することが難しいこともあり、部品を防爆構造にすると高価な構成となってしまうという問題もある。
【0008】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消し、配置自由度及び安全性が高く安価に構成可能なベルト片寄り検出装置及びベルト片寄り検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るベルト片寄り検出装置は、ベルト走行方向に複数個のガス注入孔を配設した筒状のベルト支承トラフと、前記ベルト支承トラフ内の曲面状の下部内周面上を前記下部内周面に沿って湾曲した状態で定常走行するループ状のベルトとを備え、前記ガス注入孔からガスを噴出することにより前記ベルトを浮上させた状態で走行させる浮上式ベルトコンベヤ装置に配置され、前記ベルトの前記ベルト支承トラフ内における片寄りを検出するベルト片寄り検出装置であって、前記下部内周面上における前記ベルトの定常走行時の幅方向両端位置よりも上方に位置するトラフ壁部の外壁側に設けられた、前記ベルト支承トラフの軸方向に対して水平に交差する方向に光を照射し受光する一対の投光部及び受光部を有する透過型光電センサからなることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るベルト片寄り検出装置によれば、ベルト支承トラフの下部内周面上におけるベルトの定常走行時の幅方向両端位置よりも上方に位置するトラフ壁部の外壁側に、ベルト支承トラフの軸方向に対して水平に交差する方向に光を照射し受光する一対の投光部及び受光部を有する透過型光電センサを設けた構成なので、ベルト支承トラフ内に電気配線等の部品を設ける必要がなく、防爆構造を施さずに所望位置に配置可能であるので、配置自由度及び安全性が高く安価に構成することができる。
【0011】
本発明の一実施形態においては、前記一対の投光部及び受光部は、前記トラフ壁部に形成された孔部の外壁側に前記孔部を外側から覆うように取り付けられた有底筒状の取付部の底部に対し、互いに前記交差する方向に対向する状態でそれぞれ取り付けられている。
【0012】
本発明の他の実施形態においては、前記取付部の筒状空間内にブローガスを供給するガス供給管を更に備える。
【0013】
本発明の更に他の実施形態においては、前記取付部の筒状空間の前記孔部側を閉塞する透明性のスペーサを更に備える。
【0014】
本発明に係るベルト片寄り検出方法は、ベルト走行方向に複数個のガス注入孔を配設した筒状のベルト支承トラフと、前記ベルト支承トラフ内の曲面状の下部内周面上を前記下部内周面に沿って湾曲した状態で定常走行するループ状のベルトとを備え、前記ガス注入孔からガスを噴出することにより前記ベルトを浮上させた状態で走行させる浮上式ベルトコンベヤ装置に配置されたベルト片寄り検出装置によって、前記ベルトの前記ベルト支承トラフ内における片寄りを検出するベルト片寄り検出方法であって、前記下部内周面上における前記ベルトの定常走行時の幅方向両端位置よりも上方に位置するトラフ壁部の外壁側に設けられた一対の投光部及び受光部を有する透過型光電センサによって、前記投光部から前記ベルト支承トラフの軸方向に対して水平に交差する方向に光を照射し、照射された光の前記受光部による受光の有無を検知することで前記ベルトの片寄りを検出することを特徴とする。
【0015】
本発明に係るベルト片寄り検出方法によれば、上記ベルト片寄り検出装置と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、配置自由度及び安全性が高く安価に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るベルト片寄り検出装置を備えた浮上式ベルトコンベヤ装置を示す概略的な側面図である。
【
図4】同ベルト片寄り検出装置による検出動作を示す断面図である。
【
図5】同ベルト片寄り検出装置の他の構成を示す断面図である。
【
図6】同ベルト片寄り検出装置の更に他の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して、この発明の実施の形態に係るベルト片寄り検出装置及びベルト片寄り検出方法を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るベルト片寄り検出装置を備えた浮上式ベルトコンベヤ装置を示す概略的な側面図である。また、
図2は
図1のA−A’断面図、
図3は
図2の一部拡大図である。なお、本実施形態における浮上式ベルトコンベヤ装置は、いわゆるベルト反転装置を具備したものを例に挙げているが、これを具備しない場合でも本発明を適用することが可能である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るベルト片寄り検出装置1が設けられた浮上式ベルトコンベヤ装置(以下、「ベルトコンベヤ」と呼ぶ。)10は、主に上下一対をなす円筒状のキャリア側ベルト支承トラフ(以下、「キャリアトラフ」と呼ぶ。)20及びU字筒状のリターン側ベルト支承トラフ(以下、「リターントラフ」と呼ぶ。)30と、これらキャリアトラフ及びリターントラフ20,30内を通るように配置されたループ状(無端状)のベルト40とを備えている。
【0020】
浮上式ベルトコンベヤ装置10は、キャリアトラフ及びリターントラフ20,30の下部に、例えばベルト40の走行方向に沿って所定間隔毎に複数形成されたガス注入孔21,31(
図2参照)から圧縮空気等のガスを噴き出すことによって、キャリアトラフ及びリターントラフ20,30の曲面状の下部内周面21a,31aとベルト40の下面41とを離間させ、ベルト40を浮上させた状態で走行させる構造を備えている。
【0021】
ガス注入孔21,31の下方には、ベルト40の走行方向に延びるガスダクト51,61が配置されており、各ガスダクト51,61には、給気管52,62が接続されている。この給気管52,62に図示しないガス供給装置から圧縮空気等のガスが供給される。なお、ガス注入孔21,31から各トラフ20,30の内部空間に供給されたガスは、各トラフ20,30に設けられた排気管53,63を介して外部に排出される。
【0022】
また、浮上式ベルトコンベヤ装置10は、キャリアトラフ及びリターントラフ20,30のそれぞれの終端におけるベルト40の導入口及び排出口側に、それぞれフラット状のベルト40をU字(円弧)断面形状に湾曲させるためのベルト屈曲ガイド装置50を備えている。
【0023】
ベルト屈曲ガイド装置50は、キャリアトラフ及びリターントラフ20,30内においてベルト40がフラット状になることによって、例えばベルト40の幅方向両端部が各下部内周面21a,31aに強く擦られて、ベルト40や下部内周面21a,31aが偏摩耗してしまうことを防止するために設置されている。
【0024】
更に、浮上式ベルトコンベヤ装置10には、リターントラフ30の始端及び終端においてベルト40を反転させるベルト反転装置60が備えられている。このベルト反転装置60は、上記のようにベルト40の幅方向両端部がリターントラフ30の下部内周面31aに強く擦られて偏摩耗することを防止するために設けられる。
【0025】
すなわち、キャリアトラフ20内を走行するベルト40がU字断面形状に保持された状態で被搬送物Nを積載しつつ供給口71から排出口72までの長距離間を移動するので、リターントラフ30内を走行するベルト40をそのままリターントラフ30内に導入させると、リターントラフ30内を通過するベルト40がフラット状よりも逆U字(への字)断面形状となるからである。
【0026】
なお、浮上式ベルトコンベヤ装置10には、被搬送物Nの供給口71側に供給側シュートカバー73及びテールプーリ74が備えられ、被搬送物Nの排出口72側にエンドカバー75、排出側シュートカバー76及びヘッドプーリ77が備えられている。
【0027】
一方、ベルト片寄り検出装置1は、例えば浮上式ベルトコンベヤ装置10のキャリアトラフ20の中間部辺りのトラフ壁部22の外壁側に設けられ、キャリアトラフ20内を走行するベルト40の片寄りを検出するものである。ベルト片寄り検出装置1は、一対の投光部2及び受光部3を有するファイバタイプの透過型の光電センサからなる。
【0028】
一対の投光部2及び受光部3は、
図2及び
図3に示すように、例えばそれぞれキャリアトラフ20のトラフ壁部22の外壁側に、リターントラフ30のトラフ壁部32の外側から取り付けられて設けられている。具体的には、投光部2及び受光部3は、下部内周面21a上におけるベルト40の定常走行時の幅方向両端部41,42の位置よりも上方のトラフ壁部22に形成された孔部23を介し、この孔部23を外側から覆うようにトラフ壁部32の孔部33を通して取り付けられた有底筒状の取付部24の底部24aに対し、キャリアトラフ20の軸Pの方向に対して水平に交差する方向に検出光Lを照射し受光することができるように、ナット99等により取り付けられて配置されている。
【0029】
なお、本例では、取付部24の筒状空間24bは、キャリアトラフ20及びリターントラフ30の外部からはそれぞれ遮断されているが、トラフ壁部22に形成された孔部23を介してキャリアトラフ20の内部空間と連通している。このように構成されたベルト片寄り検出装置1では、次のように片寄りが検出される。
【0030】
図4は、ベルト片寄り検出装置による検出動作を示す断面図である。
図4(a)に示すように、例えばキャリアトラフ20内を走行するベルト40が受光部3側に片寄った場合は、ベルト40の端部42が受光部3側の孔部23よりも上方に位置するようになるので、投光部2からの検出光Lはベルト40により遮られ、受光部3にて受光されないこととなる。
【0031】
また、
図4(b)に示すように、例えばキャリアトラフ20内を走行するベルト40が投光部2側に片寄った場合は、ベルト40の端部41が投光部2側の孔部23よりも上方に位置するようになるので、同様に投光部2からの検出光Lはベルト40により遮られて受光部3により受光されないこととなる。
【0032】
このように、ベルト40がキャリアトラフ20の内部の下部内周面21a上において、両端部41,42のいずれの側に片寄った場合であっても、受光部3によって検出光Lが受光されることはないので、この受光の有無を検知すれば容易に片寄りを検出することが可能となる。
【0033】
従って、本実施形態に係るベルト片寄り検出装置1を備えた浮上式ベルトコンベヤ装置10によれば、ベルト40の片寄りを検出する片寄り検出装置1が、トラフ壁部22の外壁側に配置された一対の投光部2及び受光部3を有するファイバタイプの透過型光電センサからなるので、キャリアトラフ20内にベルト片寄り検出装置1を配置する必要がなく、密閉構造でベルト走行面が曲面状のキャリアトラフ20に対して防爆構造を施さずに所望位置に容易に配置することができる。このため、ベルト片寄り検出装置1は、例えば危険場所として本質安全防爆構造が要求される0種場所(いわゆるゾーン0)にも適用することができ、これにより、配置自由度が高く、且つ安全性が高いベルト片寄り検出装置1を安価に構成することができる。
【0034】
図5は、ベルト片寄り検出装置の他の構成を示す断面図である。
図5に示すように、投光部2及び受光部3が備えられた各取付部24に、筒状空間24b内にブローガスを供給するガス供給管68をそれぞれ接続した構造としても良い。このように構成すれば、投光部2及び受光部3をブローガスで容易にクリーニングすることができ、透過型光電センサに粉塵等が付着することによる誤検出や誤動作を防止することができる。また、このブローガスにより、キャリアトラフ20の内部雰囲気の温度をある程度調整することも可能となる。
【0035】
図6は、ベルト片寄り検出装置の更に他の構成を示す断面図である。
図6に示すように、投光部2及び受光部3が備えられた各取付部24に、筒状空間24bの孔部23側を閉塞するアクリル等で作製した透明性のスペーサ69をそれぞれ配置した構造としても良い。このように構成すれば、透過型光電センサをキャリアトラフ20の内部雰囲気と完全に隔離することができ、内部雰囲気の影響を受けない構造とすることができる。この場合、スペーサ69により筒状空間24b内の防爆性を確保できるので、例えば透過型光電センサのタイプを電気配線等を必要とするものに代えても適用することができる。
【0036】
なお、上述した実施形態においては、キャリアトラフ20及びリターントラフ30が上下一対に配置された浮上式ベルトコンベヤ装置10にベルト片寄り検出装置1を適用したものを例に挙げて説明したが、各トラフ20,30を水平方向に配置したような場合や、各トラフ20,30のうちいずれか一方のトラフのみを備えた場合であっても適用することができる。また、ベルト片寄り検出装置1をキャリアトラフ20側にのみ配置した構造を説明したが、リターントラフ30側にも配置するようにしても良い。
【符号の説明】
【0037】
1 ベルト片寄り検出装置
2 投光部
3 受光部
10 浮上式ベルトコンベヤ装置
20 キャリア側ベルト支承トラフ
21 ガス注入孔
21a 下部内周面
22 トラフ壁部
23 孔部
24 取付部
24a 底部
24b 筒状空間
30 リターン側ベルト支承トラフ
31 ガス注入孔
31a 下部内周面
32 トラフ壁部
33 孔部
40 ベルト
41,42 端部