(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記空気経路は、上記液面に対して垂直又は傾斜した第一方向に延びる第一部分と、第一方向よりも上記液面に対する角度が小さくなる第二方向に延びる第二部分とを有し、
上記第一部分及び上記第二部分の間に上記屈曲部の一つである第一屈曲部が形成されているとともに、
上記第二部分は、上記第一屈曲部側が上記液面に近くなるように、上記液面に対して傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の静電噴霧装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について
図1〜
図5、
図7、
図8に基づいて説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0013】
なお、「上下」の概念は、鉛直方向の上下に対応している。横方向、水平方向とは、上下方向に垂直な方向を示す。
【0014】
図1は、中央の空気経路7を含む断面から、液体供給部3に向かって、本発明に係る静電噴霧装置50を示す断面図である。つまり、
図1は、本発明に係る静電噴霧装置50の断面図であり、
図1の断面図には、水平方向に延びる空気経路7b、7cの断面が含まれている。
【0015】
静電噴霧装置50は、チャンバー1、噴霧部2を備えている。
【0016】
チャンバー1は、液体4を収容する空間、容器である。チャンバー1の容積は、噴霧部2のサイズおよび噴霧される液体4の消費量(噴霧量)などに基づき設定され、例えば、200mm
3とすることができる。
図7はチャンバー1を示す図であり、液体4は、
図7の太線で示されるチャンバー1内に収容される。
【0017】
なお、
図7では、見易さのため液体供給部3を破線で示している。液体供給部3はチャンバー1の上部に着脱自在に取り付けられ、後述する方法によって液体供給部3からチャンバー1内へ液体が供給される。
【0018】
噴霧部2は、芳香油、農産物用化学物質、医薬品、農薬、殺虫剤、空気清浄化薬剤等の噴霧に用いられる部材であり、静電噴霧装置50の外部へ液体4を噴霧するものである。
【0019】
液体4は、噴霧部2により、静電噴霧装置50からミスト(霧)の状態で噴霧されるものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、水、および、各種の殺虫、殺菌、芳香等を目的とした成分を含む液体が挙げられ、上記成分としては以下の公知の成分として:合成ピレスロイド化合物;有機リン化合物;カーバメート化合物;ネライストキシン化合物;ネオニコチノイド化合物;ベンゾイル尿素化合物;フェニルピラゾール化合物;ヒドラジン化合物;有機塩素化合物;天然系殺虫剤;その他の殺虫剤、忌避剤、共力剤などが挙げられる。
【0020】
また、上記成分の濃度は、特に制限されず、例えば、液体の総質量に対して0.05〜10質量%とすることができる。上記成分の濃度は、水、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノールなどの溶媒を用いて調節すればよい。なお、上記.液体には、防腐剤や界面活性剤等が適宜混合されてもよい。
【0021】
図2は噴霧部2を示す平面図である。同図に示すように、噴霧部2は、少なくとも、スプレー電極21と、基準電極22と、電源装置23と、誘電体24とを備える。なお、噴霧部2は、電源装置23が外部に設けられ、その電源装置23と接続される構成で実現されてもよい。
【0022】
スプレー電極21は、金属性キャピラリ(例えば、304型ステンレス鋼など)等の導電性導管と、先端部であるスプレー部位とを有する。スプレー電極21は、電源装置23を介して基準電極22と接続され、スプレー部位から液体を噴霧する。
【0023】
基準電極22は、金属ピン(例えば、304型ステンレス鋼など)等の導電性ロッドからなる。スプレー電極21および基準電極22は、一定の間隔を空けて離間し、互いに平行に配置されている。
【0024】
電源装置23は、スプレー電極21と基準電極22との間に高電圧を印加する。例えば、電源装置23は、スプレー電極21と基準電極22との間に1−30kVの間の高電圧(例えば、3−7kV)を印加する。高電圧が印加されると電極間に電場が形成され、誘電体24の内部に電気双極子が生じる。このとき、スプレー電極21は正に帯電し、基準電極22は負に帯電する(その逆でもよい)。そして、負の双極子が正のスプレー電極21に最も近い誘電体24の表面に生じ、正の双極子が負の基準電極22に最も近い誘電体24の表面に生じ、帯電したガスおよび物質種(液体4)が、スプレー電極21および基準電極22によってミストとして放出される。
【0025】
誘電体24は、樹脂であればよく特に限定されない。一例として、ポリプロピレン、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66またはポリアセチル−ポリテトラフルオロエチレン混合物などの樹脂が挙げられる。誘電体24は、スプレー電極21をスプレー電極取付部25において支持し、基準電極22を基準電極取付部26において支持する。
【0026】
図1を参照して、静電噴霧装置50の説明を続ける。
【0027】
静電噴霧装置50の上部には、液体供給部3が着脱自在に取り付けられる。具体的には、チャンバー1の上部に液体供給部3が着脱自在に取り付けられる。液体供給部3には液体が収容されており、液体供給部3内に収容された液体4がチャンバー1に供給される。
【0028】
図8は、液体供給部3の一例を斜視図で表した図である。
【0029】
図示するように、液体供給部3は、容器本体31と、キャップ32とを備える。容器本体31には液体が収容される。容器本体31の材質は特定のものに限られず、プラスチック、ガラス等であってよい。容器本体31の大きさ、形状は、特定のものに限定されず、チャンバー1に取り付け自在な形状であればよい。蓋32は、嵌め込み、あるいは、螺合といった周知の方法により容器本体31の開口部に着脱自在に取り付けられる。蓋32には液体を流出させるための開口が形成されている。蓋32の材質は特定のものに限られず、プラスチック等であってよい。蓋32の大きさ、形状は、特定のものに限定されない。液体供給部3(より具体的には、蓋32の構造)は、後述する方法によりチャンバー1へ液体を供給できる構造であれば、特定の構造に限られない。
【0030】
なお、液体供給部3は、静電噴霧装置50の一部とみなされてもよいし、静電噴霧装置50とは別体とみなされてもよい。
【0031】
続いて、
図1により、液面保持穴5、空気孔6、空気経路7を説明する。
【0032】
空気穴6は、静電噴霧装置50の外表面に形成されており、空気経路7に繋がっている。静電噴霧装置50では、空気穴6、空気経路7および液面保持穴5を介して、静電噴霧装置50の外部からチャンバー1に空気(外気)が供給される。したがって、空気穴6は、静電噴霧装置50の外表面に形成されていればよく、その形成箇所は特に限定されず、静電噴霧装置50の上面または側面に形成されていてもよい。好ましい形態として、空気穴6は、静電噴霧装置50の上面に形成されている。これにより、静電噴霧装置50内のチャンバー1から液体4の液漏れが生じ難くなる。
【0033】
空気穴6の形成箇所は少ない方がよく、それによりチャンバー1から静電噴霧装置50の外部への液漏れが生じ難くなる。このため、静電噴霧装置50では、好ましい形態として、空気穴6は1箇所形成されている。しかしながら、空気穴6の形成箇所は、1箇所に限定されず、複数箇所であってもよい。
【0034】
液面保持穴5はチャンバー1に形成されており、液面保持穴5と空気穴6とは、空気経路7を介して繋がっている。液面保持穴5は、チャンバー1内に外気を通すために形成されており、液面保持穴5は、チャンバー1内の液体4の液面高さに応じて液体4によって閉塞または開放される。すなわち、液面高さが、液面保持穴5と同一か、または液面保持穴5よりも高い場合には、液面保持穴5は液体4により閉塞し、液面高さが液面保持穴5よりも低い場合には、液面保持穴5は液体4から開放され、チャンバー1が大気開放される。
【0035】
液面保持穴5および空気穴6の直径(多角形の場合、最大辺の長さ)は、特に限定されず、例えば、直径が0.5mm以上、3mm以下とすることができる。また、液面保持穴5および空気穴6の形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形;三角形、矩形および正方形などの四角形、五角形、六角形などの多角形状などに設計できる。空気穴6からの液漏れを防止する観点から、液面保持穴5と空気穴6との直線距離は長いことが好ましい。
【0036】
空気経路7は、液面保持穴5および空気穴6に繋がる経路であって、チャンバー1を大気開放させるための空気の経路である。液面保持穴5が液体4により閉塞されていないときは、液面保持穴5、空気穴6、および空気経路7を介して、チャンバー1は大気開放される。
【0037】
より具体的に説明すると、
図1に示すように、空気経路7は、少なくとも、チャンバー1に収容された液体の液面に対して垂直な方向(第一方向)に延びる空気経路7a(第一部分)と、第一方向よりも液面に対する角度が小さくなる第二方向(
図4の軸9の方向)に延びる空気経路7b(第二部分)と、空気経路7bに連通し、空気経路7bよりも空気穴6側に位置する空気経路7c(第三部分)とを含む。
【0038】
空気経路7aと空気経路7bの間には、屈曲部8の一つである屈曲部(第一屈曲部)8aが形成されている。また、空気経路7bは、屈曲部8a側が液面に近くなるように、液面に対して傾斜している。また、空気経路7cは、屈曲部8aとは反対側が液面に近くなるように、液面に対して傾斜している。
【0039】
さらに、空気経路7bの屈曲部8a側には、空気経路7aおよび空気経路7bと繋がる空間であって、液体を保持する空間の一つである液体保持空間(第一空間)10aが形成されている。また、空気経路7cの屈曲部8aとは反対側には、空気経路7cと繋がる空間であって、他の液体保持空間(第二空間)10bが形成されている。
【0040】
なお、
図1では、空気経路7aは、液面に対して垂直な方向(第一方向)に延びている。しかしながら、空気経路7aは、液面に対して傾斜した方向に延びてもよい。
【0041】
また、液面とは、静電噴霧装置50を使用するときに想定される設置状態における液面を意味している。静電噴霧装置50は、静電噴霧装置50の底面が水平になるように設置されることが想定されている。
【0042】
屈曲部8、液体保持空間10の詳細については後述する。なお、液体保持空間10a、10bを区別しないときは、単に液体保持空間10と称する。
【0043】
空気経路7の直径は、特に限定されず、例えば、直径が0.5mm以上、3mm以下とすることができる。また、空気経路7の形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形;三角形、矩形および正方形などの四角形、五角形、六角形などの多角形状などに設計できる。
【0044】
また、空気経路7の長さ、すなわち、液面保持穴5から空気穴6までの距離は、チャンバー1における液体4の収容量などによって変更されるが、例えば、11mm以上、100mm以下とすることができる。
【0045】
次に、液体供給部3からチャンバー1への液体の供給について説明する。
【0046】
静電噴霧装置50では、チャンバー1内が大気圧(1atm)のときに、言い換えると、液面保持穴5、空気穴6、および空気経路7を介してチャンバー1が大気開放されているときに、液体供給部3からチャンバー1へ液体が流れる。一方、液面保持穴5が液体で閉塞し、チャンバー1が静電噴霧装置50の外部から閉塞されると、しばらくは液体供給部3からチャンバー1への液体の流出が継続することもあるが、やがて当該流出は停止する。この状態では、液体供給部3から液体4は供給されないため、液体4の液面は保持される。
【0047】
このように、静電噴霧装置50は、チャンバー1の内圧に応じてチャンバー1への液体4の供給および停止が切り替わるため、複雑な制御を必要しないという点で好ましく用いられる。
【0048】
その後、噴霧部2から液体4が噴霧され、液体4の消費(噴霧)によりチャンバー1内の液面が下降すると、液面保持穴5が液体4から開放され、チャンバー1内は大気開放される。そして、再び、液体供給部3からチャンバー1に液体4が供給され、液面が上昇し、一定高さに保持される。
【0049】
図3は、空気経路7の経路を示す概略的な平面図である。空気経路7は、液体供給部3の傍を通り、液面保持穴5から空気穴6に至るまで形成されている。好ましい形態として、空気経路7のうち、液体供給部3よりも手前側に位置する横方向に形成された部分(
図3において、空気経路7のうち実線で記載される部分)よりも、空気穴6は奥側(図面上側)に配置されている。言い換えると、
図3の平面図で視たときに、空気穴6は、空気経路7のうち実線で記載される部分の延長線上には位置していない。このことは、空気経路7が空気穴6に至るまでの経路において屈曲箇所(屈曲部)を有することを意味する。これにより、上記横方向に延びた空気経路7の部分に液体が進入しても、直ちに空気穴6から液漏れが生じない構造となっている。
【0050】
また、好ましい形態として、静電噴霧装置50が起立した状態で、重力方向を下側としたときに、液体供給部3がチャンバー1よりも上側に位置し、空気経路7は上側に凸となる傾斜を有している。静電噴霧装置50が起立した状態とは、液体供給部3がチャンバー1よりも上側に位置している状態であり、静電噴霧装置50が転倒していない状態を意味する。また、上側に凸となる傾斜とは、空気経路7において、一方の下側から上側へ傾斜が設けられており、上側での頂点となる部分から他方の下側へ傾斜が設けられていることを意味する。
【0051】
言い換えると、空気経路7は、
図1の断面図でみたときに水平方向に延びる箇所を有するとき、その当該箇所において、上側に突き出た凸状部を有する。
図1では、図中に記載の角度Aが180度よりも小さい角度となるように上側に突き出た凸状部が空気経路7に形成されている。これにより、空気経路7では、凸状部(上側に凸となる傾斜)に液体が浸入したとしても、図中の左右何れかの方向に液体が流れ、空気経路7内に液体が滞留することもなく、空気経路7が液体により遮断される事態を防ぐことができる。
【0052】
また、空気経路7は、上側に突き出た凸状部でなくとも、水平方向に対して傾斜する傾斜部を有するように形成されていてもよい。この構成によっても、空気経路7では、空気経路7内での液体の滞留をなくし、空気経路7が液体により遮断される事態を防ぐことが可能である。
【0054】
静電噴霧装置50では、液漏れ防止のため、空気経路7が屈曲部8を有している。屈曲部8とは、空気経路7の屈曲した空間、または箇所であり、空気経路7は屈曲している。屈曲部8が存在することにより、静電噴霧装置50が転倒などにより傾いた場合に、液体4が液面保持穴5から空気経路7に流入したとしても、屈曲部8にて滞留し、即座に空気穴6から液漏れが生じない。また、液体4が滞留している間に、液面保持穴5への液体4の流量が増加し、液面保持穴5が液体4によって閉塞され、液体供給部3からの液体4の供給が停止され得る。このように、静電噴霧装置50は液漏れ防止効果を有すると共に、液面高さのコントロールが可能となっている。
【0055】
この種の静電噴霧装置は小型である場合が多く、構造は簡略化されるのが常である。
図6の静電噴霧装置100では、装置の簡略化を優先し、空気経路107が直線状となっている。このため、液漏れに対する対応は、専ら装置を安定に設置することによりなされている。これに対して、本発明は、簡略である静電噴霧装置の構造を再度、精査し、空気経路に屈曲部を設けることで液漏れ対策とすることを見出し、完成したものである。
【0056】
次に、より具体的に
図4を用いて屈曲部8を説明する。
図4は、静電噴霧装置50の屈曲部8の断面図である。
【0057】
図4に示すように、空気経路7の凸となる傾斜の一方を構成する屈曲部8は、鉛直方向に対して85°屈曲している。すなわち、軸9は、図中の角度Bだけ鉛直方向に対して屈曲している。空気経路7の凸となる傾斜の他方を構成する屈曲部も同様に、鉛直方向に対して85°屈曲している。このため、空気経路7の上記凸となる傾斜は、一方(図中の右側)に5°、他方(図中の左側)に5°となっている。
【0058】
言い換えると、静電噴霧装置50では、鉛直方向(図面上下方向、上述した第一方向)に延びる空気経路7が、軸9の方向(上述した第二方向)へ、すなわち、鉛直方向に対して角度Bだけ屈曲している。この屈曲した部分が屈曲部8である。図中の角度Bは85°である。空気経路7の凸となる傾斜の他方を構成する屈曲部も同様に85°屈曲している。このため、空気経路7の上記凸となる傾斜は、水平方向に対して、一方(図中の右側)に5°、他方(図中の左側)に5°となっている。
【0059】
仮に、空気経路7に液体4が進入したとしても、液体4が上側に凸となる傾斜に沿って流れ易いため、空気経路7が閉塞し難い静電噴霧装置を提供できる。屈曲部の角度Bは特に限定されず、0°より大きく90°よりも小さい範囲とすることができ、90°に近い方が静電噴霧装置50の小型化に寄与しうる。なお、空気経路7の上記凸となる傾斜は、水平方向に対して、凸となる頂点を基準にして、左右で傾斜角度が異なっていてもよい。
【0060】
一方、
図5に示すように、屈曲部18は滑らかに屈曲していてもよい。屈曲部18の、空気経路7が鉛直方向に対して屈曲する方向に沿って設定される軸19は滑らかに屈曲しており、屈曲部18の
図5に記載の角度Cは85°であり、空気経路7が鉛直方向に対して85°で屈曲している。なお、角度Cは、空気経路7が屈曲部18において滑らかに屈曲したあと直線状に延びる方向に設定される軸(図中の方向D)が鉛直方向に対してなす角度を示す。液漏れを好適に防止する観点から、屈曲部18の角度Cは特に限定されず、0°より大きく90°よりも小さい範囲とすることができる。
【0061】
なお、屈曲部8は、空気経路7の屈曲した空間、または箇所であるため、
図7の参照番号8b、8c、8dで示す箇所も屈曲部8に含まれる。
【0062】
また、本発明に係る空気経路7には、
図1に示すように、好ましい形態として空気経路7に液体を保持するための空間である液体保持空間10が形成されている。
【0063】
液体保持空間10が存在することにより、静電噴霧装置50が転倒などにより傾いた場合、液面保持穴5を通過した液体4は、液体保持空間10にて滞留し、液体4が空気穴6に到達するまでに長時間を要することとなる。その結果、液体4は空気穴6に到達し難くなるため、空気穴6からの液漏れを防止できる。
【0064】
液体保持空間10は、1箇所に限定されず、静電噴霧装置50のように、2箇所に形成されていてもよいし、3箇所以上形成されていてもよい。液体保持空間10が2箇所以上に形成される場合、静電噴霧装置50のように、複数の液体保持空間10が形成されている方向、位置等は、互いに異なっていることが好ましい。これにより、複数の液体保持空間10の何れかには、液体4を多量に滞留することができる。例えば、一方の液体保持空間10には、液体4の流入量が少ない角度であっても、他方の液体保持空間10への液体4の侵入角度を異なるように形成することで、他方の液体保持空間10へは多量の液体4を滞留させることができる。
【0065】
液体保持空間10の容積は、チャンバー1における液体4の収容量、液体供給部3によるチャンバー1への液体4の供給量などに基づき設定され、例えば、100mm
3以上、200mm
3以下とすることができる。このように、静電噴霧装置の小型化が要請されるなかで、静電噴霧装置の内部空間を有効に利用して空気経路7に液体保持空間10を設けることで、静電噴霧装置50からの液漏れを効果的に防ぐことができる。
【0066】
さらに、静電噴霧装置50は、液体保持空間10に多孔質体を備えることが好ましい。多孔質体とは、細孔が多数形成された部材であり、液体4が空気経路7を移動する際に液体4と接触し、液体4の移動を鈍化させるものであればよい。ただし、多孔質体は、空気経路7を閉塞させるものではない。多孔質体としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルホルマール、ポリスチレン等からなる連続気泡を有する樹脂体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等の樹脂微粒子を主成分として打錠焼結させた多孔質体;ポリフッ化エチレン等からなる多孔質体;ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル、レーヨン、ウール等からなるフェルト部材;あるいはポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ポリフラール繊維、アラミド繊維等からなる不織布等の樹脂繊維の集合体;セラミック等の無機粉体を主成分として打錠焼結した多孔質の無機粉焼結体が例示できるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0067】
液体保持空間10に多孔質体が備えられていることにより、液体保持空間10に流入した液体4の流速が低下し、液体4が非常に滞留し易くなる。すなわち、空気穴6へ液体4が到達し難くなるため、液漏れをより防止し易くなり、本発明に係る静電噴霧装置の非常に好ましい形態であるといえる。
〔実施例〕
〔実施例1〕
図1に係る静電噴霧装置50を、前後左右のそれぞれの4方向に順次倒し、液漏れの有無を確認した後、元の状態に戻し、液漏れの有無を確認した。なお、静電噴霧装置50には、容量が200mm
3の液体保持空間10が2箇所形成されており、空気経路7の角度Aは170°であり、空気経路7の一部には左右にそれぞれ5°の傾斜が設けられている。
【0068】
静電噴霧装置50の設定条件は以下の通りである。
【0069】
チャンバー1の容量 :200mm
3
液面保持穴5(四角)の直径 :1mm
空気穴6(円形)の直径 :1mm
空気経路7の長さ(軸の長さ) :26mm
液面保持穴5と空気穴6との直線距離:11mm
液体4として、25gの製剤を液体供給部3に充填し、封止した。上記製剤の成分比は、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル88%、イソパラフィン5%、ポリエチレングリコール5%、0.4%の酢酸ナトリウム水溶液2%である。
【0070】
液体供給部3を封止後、静電噴霧装置50に液体供給部3を取り付け、液体供給部3からチャンバー1へ液体を供給し始めた後、空気穴6からの空気の移動がなくなったことを確認し、チャンバー1での液体4の液面が一定になったと判断した。
【0071】
その後、静電噴霧装置50を(1)前側(
図1の図面手前側)に90°倒し、30分間放置した後、空気穴6から液体4が漏れたかを確認したところ、液漏れは生じなかった。次に、静電噴霧装置50を、
図1に示す状態から(2)後ろ側(図面奥側)に90°倒し、30分間放置した後、空気穴6から液体4が漏れたかを確認したところ、液漏れは生じなかった。
【0072】
続いて、上記(1)、(2)の操作によって液漏れがないことを確認した後の静電噴霧装置50を、
図1に示す状態から(3)右側(図面右側)に90°倒し、30分間放置した後、空気穴6から液体4が漏れたかを確認したところ、液漏れは生じなかった。さらに、静電噴霧装置50を、
図1に示す状態から(4)左側(図面左側)に90°倒し、30分間放置した後、空気穴6から液体4が漏れたかを確認したところ、液漏れは生じなかった。
【0073】
最後に、(5)左側に倒れた状態の静電噴霧装置50を
図1に示す縦置きの状態に戻し、24時間放置した後、空気穴6から液体4が漏れたかを確認したところ、液漏れは生じなかった。このように、本発明に係る静電噴霧装置50は、空気穴6からの液漏れが生じず、従来の静電噴霧装置の問題点が改善されており有用である。
【0074】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔補足〕
本発明に係る静電噴霧装置は、上記課題を解決するために、液体を噴霧する静電噴霧装置において、液体を収容するチャンバーを備え、上記チャンバー内が大気圧のときに、当該チャンバーに液体を供給する液体供給部を備え、上記チャンバーには、液体の液面高さに応じて液体によって閉塞または開放される液面保持穴が形成されており、上記液面保持穴は、当該静電噴霧装置の外部から上記チャンバーへ空気を供給する空気穴と空気経路を介して繋がっており、上記空気経路は屈曲部を有し、上記空気経路には、液体を保持する空間が形成されていることを特徴としていてよい。
【0075】
上記空気経路が屈曲部を有していることにより、静電噴霧装置が転倒などにより傾いた場合に、液体が液面保持穴から空気経路に流入したとしても、屈曲部にて滞留し、即座に空気穴から液漏れが生じない。また、液体が滞留している間に、液面保持穴への液体の流量が増加し、液面保持穴が液体によって閉塞され、液体供給部から液体の供給が停止され得る。
【0076】
さらに、静電噴霧装置が転倒などにより傾いた場合、液面保持穴を通過した液体は、上記空間にて滞留し、液体が空気穴に到達するまでに長時間を要することとなる。その結果、液体は空気穴に到達し難くなる。このように、本発明の静電噴霧装置は、液漏れ防止効果を有している。
【0077】
本発明の静電噴霧装置では、上記静電噴霧装置が起立した状態で、重力方向を下側としたときに、上記液体供給部が上記チャンバーよりも上側に位置し、上記空気経路は、上側に凸となる傾斜を有することが好ましい。
【0078】
当該空気経路の形状により、仮に、空気経路に液体が進入したとしても、液体が傾斜に沿って流れ易いため、空気経路が閉塞し難い静電噴霧装置を提供できる。