特許第6170705号(P6170705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170705
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】スピーカ装置の設計方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 23/00 20060101AFI20170713BHJP
【FI】
   H04R23/00 310
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-74330(P2013-74330)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-199991(P2014-199991A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2016年2月1日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100153017
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 昭人
(72)【発明者】
【氏名】杉本 岳大
(72)【発明者】
【氏名】小野 一穂
【審査官】 武田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−182034(JP,A)
【文献】 特開2011−234317(JP,A)
【文献】 特開2008−141380(JP,A)
【文献】 特表2008−533973(JP,A)
【文献】 特開2011−250343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の電場駆動型高分子フィルムと、
前記電場駆動型高分子フィルムの円周に沿った導線と、
前記電場駆動型高分子フィルム及び前記導線を挟持するフレームと、を有する発音ユニットを2つ備え、
前記2つの発音ユニットは対向して配置され、
前記2つの発音ユニットの間はスペーサにより支持され、
前記2つの発音ユニットの各電場駆動型高分子フィルムの中心部が貼り合わされて接合部を形成するスピーカ装置の設計方法であって、
前記電場駆動型高分子フィルムの材料定数と、
前記スピーカ装置のサイズである前記スピーカ装置の半径、奥行き、及び前記接合部の半径とをパラメータとする音圧のモデル関数により、所望音圧を実現する前記スピーカ装置を設計する設計方法。
【請求項2】
前記モデル関数において、前記電場駆動型高分子フィルムの材料定数と、前記スピーカ装置の半径及び奥行きとを固定し、前記所望音圧を実現する前記接合部の半径を求める、請求項に記載の設計方法。
【請求項3】
前記モデル関数は、駆動時の前記電場駆動型高分子フィルムの厚みを一様としたものである、請求項又はに記載の設計方法。
【請求項4】
前記モデル関数は、駆動時の前記電場駆動型高分子フィルムと前記接合部とがなす角度を一定としたものである、請求項乃至のいずれか一項に記載の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スピーカ装置設計方法に関し、特に電場駆動型高分子を用いたスピーカ装置設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、次世代の音響技術の一つとして、音場再生技術の開発が国際的に進められている。音場再生技術は、コンサートホールなどの空間で記録された音場を、家庭などの全く異なった空間で再生し、あたかもその場に居るかのような臨場感を聴取者に提供することを目的としている。これまでに、マルチチャンネル音響、境界音場制御、波面合成法、高次アンビソニックスなど、様々な理論背景に基づく音場再生技術が提案されてきており、開発に携わるグループも多岐にわたっている(非特許文献1)。
【0003】
一般的に、音場再生技術により生成された音響信号は、最終的にはスピーカを介して空中に放射されることが大前提である。音場再生技術は、処理の高度化に伴い発音箇所も増大する原理であり、多数のスピーカを必要とする。しかし、一般的に利用されているスピーカは、原理の発明から一世紀以上も経た動電形方式が主流であり、コイルと磁石から成るこの構造を用いる限り、スピーカの重量や奥行きの増大は避けられない。また、圧電セラミックスなどの圧電材料を用いた発音体は小型化に適しているが、再生周波数帯域が狭く高調波ひずみ率も高いため、高品質な再生音を必要とする音場再生技術には不向きである。
【0004】
ところで、柔軟なアクチュエータの実現を目指し、電場応答性を持たせた電場駆動型高分子が近年活発に研究されている(非特許文献2)。電場駆動型高分子の特徴は、電圧印加による素材の形状変形であるが、電場駆動型高分子を発音体に利用することで、従来のスピーカの概念を大きく覆すスピーカが実現できる可能性に注目が集まっている(非特許文献3)。また、電場駆動型高分子をスピーカに利用する場合、プッシュプル型にすることで高品質な再生音が得られることも明らかになりつつある(非特許文献4)。
【0005】
電場駆動型高分子を用いたスピーカの開発も進んでいる(非特許文献5)。非特許文献5に記載の電場駆動型エラストマーを用いたスピーカは、外側を円形フレームで囲んだ電場駆動型エラストマーの中心部に振動板を配したユニットを2つ備え、2つのユニットを対向させて振動板同士を貼り合わせ、フレーム間にスペーサを挿入することによりプッシュプル型構造を実現している。各電場駆動型エラストマーに正相/逆相の音響信号を印加すると、各電場駆動型エラストマーが伸縮して振動板が振動し、音が空中に放射される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】安藤、「高臨場感音響技術とその理論」、IEICE Fundamentals Review、Vol.3、No.4、pp.33-46、2010年4月.
【非特許文献2】長田、「ソフトアクチュエータ 開発の最前線」、NTS、2004年10月.
【非特許文献3】T.Sugimoto, K.Ono, A.Ando, Y.Morita, K.Hosoda, and D.Ishii, “Semicylindrical acoustic transducer from a dielectric elastomer film with compliant electrodes,’ J. Acoust. Soc. Am., Vol. 130, No.2, pp. 744-752, 2011.
【非特許文献4】T.Sugimoto, K.Ono., A.Ando, S.Chiba, M.Waki, and K.Kurozumi, “Sound generator structure for low-elastic electroactive polymer,’ Acoust. Sci. & Tech., Vol. 31, No.6, pp.411-413, 2010.
【非特許文献5】杉本、「電場駆動型エラストマーを用いたプッシュプル型発音体」、日本音響学会講演論文集、1-5-19、pp.697-698、2010年3月
【非特許文献6】川村、「電気音響工学概論」、昭晃堂、1971年
【非特許文献7】R.M.Aarts and A.J.E.M.Janssen, “Approximation of the Struve function H1 occurring in impedance calculations,” J.Acoust.Soc.Am. 113, 2635-2637, 2003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、非特許文献5に記載のスピーカは、電場駆動型エラストマーの中心部に電場駆動型エラストマーと異なる材質の振動板を設けるため、振動板の重量により駆動に高い電圧・電流が必要となるという問題があった。
【0008】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、振動板を用いることなく電場駆動型高分子により発音可能なスピーカ装置設計方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した諸課題を解決すべく、本発明に係るスピーカ装置の設計方法は、円形の電場駆動型高分子フィルムと、前記電場駆動型高分子フィルムの円周に沿った導線と、前記電場駆動型高分子フィルム及び前記導線を挟持するフレームと、を有する発音ユニットを2つ備え、前記2つの発音ユニットは対向して配置され、前記2つの発音ユニットの間はスペーサにより支持され、前記2つの発音ユニットの各電場駆動型高分子フィルムの中心部が貼り合わされて接合部を形成するスピーカ装置の設計方法であって、前記電場駆動型高分子フィルムの材料定数と、前記スピーカ装置のサイズである前記スピーカ装置の半径、奥行き、及び前記接合部の半径とをパラメータとする音圧のモデル関数により、所望音圧・周波数特性を実現する前記スピーカ装置を設計するものである。
【0011】
また、前記モデル関数において、前記電場駆動型高分子フィルムの材料定数と、前記スピーカ装置の半径及び奥行きとを固定し、前記所望音圧を実現する前記接合部の半径を求めることが好ましい。
【0012】
また、前記モデル関数は、駆動時の前記電場駆動型高分子フィルムの厚みを一様としたものであることが好ましい。
【0013】
また、前記モデル関数は、駆動時の前記電場駆動型高分子フィルムと前記接合部とがなす角度を一定としたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るスピーカ装置設計方法によれば、振動板を用いることなく電場駆動型高分子により発音可能なスピーカ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るスピーカ装置の構造を示す図である。
図2】スピーカ装置を構成するユニットの分解図を示す図である。
図3】スピーカ装置の発音動作を説明するための断面図である。
図4】電場駆動型高分子フィルムの拡大図である。
図5】本発明による周波数特性の変化のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以降、諸図面を参照しながら、本発明の実施態様を詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るスピーカ装置の構造を示す図である。スピーカ装置は2つの発音ユニット(発音ユニット10、発音ユニット20)を備え、発音ユニット10は電場駆動型高分子フィルム12をフレーム11で囲む構成、発音ユニット20は電場駆動型高分子フィルム22をフレーム21で囲む構成である。なお、説明の便宜上発音ユニット10及び発音ユニット20に異なる符号を付しているが、発音ユニット10及び発音ユニット20は同等の構成を備えるものであり、フレーム11及びフレーム21、電場駆動型高分子フィルム12及び電場駆動型高分子フィルム22はそれぞれ同じ素材により構成されるものである。発音ユニット10及び発音ユニット20は対向して配置され、発音ユニット10及び発音ユニット20の間はスペーサ30により支持される。発音ユニット10の電場駆動型高分子フィルム12及び発音ユニット20の電場駆動型高分子フィルム22の中心部は接着剤等により貼り合わされて接合部40を形成する。
【0018】
図2は、スピーカ装置を構成する発音ユニットの分解図を示す図である。なお、図2は発音ユニット10の分解図を示すものであるが、上記の通り発音ユニット10と発音ユニット20は同様の構成となるものである。発音ユニット10は、円形の電場駆動型高分子フィルム12と、電場駆動型高分子フィルム12の円周に沿った上側導線13a及び下側導線13b(これ以降、上側導線13a及び下側導線13bをまとめて適宜「導線13」と称する。)と、電場駆動型高分子フィルム12及び導線13を挟持するフレーム11を形成する上側フレーム11a及び下側フレーム11bを備える。導線13は、電場駆動型高分子フィルム12に均等に駆動信号を印加するように、電場駆動型高分子フィルム12の円周に沿った形状で形成される。発音ユニット10は、上側導線13a及び下側導線13bを上下に重ね合わせた電場駆動型高分子フィルム12を上側フレーム11a及び下側フレーム11bで挟み込むことにより形成される。
【0019】
ここで、電場駆動型高分子フィルムとして用いる高分子材料としては、形状変化に伴う体積変化が少ないほど好ましく、例えば、使用する素材のポアソン比は0.5に近いほど好ましい。高分子材料の一例として、ポリウレタン、アクリル、シリコン、ポリプロピレンなどのエラストマーが挙げられる。
【0020】
図3は、スピーカ装置の発音動作を説明するための断面図である。対向する発音ユニット10及び発音ユニット20には、それぞれ正相/逆相の駆動信号が印加される。図3の場合、発音ユニット10の電場駆動型高分子フィルム12には、導線13を通じて正相の駆動信号が印加され、発音ユニット20の電場駆動型高分子フィルム22には、導線23を通じて逆相の駆動信号が印加される。駆動信号が印加されると、電場駆動型高分子フィルム12及び電場駆動型高分子フィルム22それぞれが伸縮し、電場駆動型高分子フィルム12及び電場駆動型高分子フィルム22が貼り合わされて形成される接合部40が上下方向に振動する。かかる振動により音が空中に放射され、スピーカ装置はプッシュプル型スピーカ装置として機能する。
【0021】
このように、本実施形態によれば、電場駆動型高分子フィルムを有する発音ユニットが2つ対向して配置され、各電場駆動型高分子フィルムの中心部が貼り合わされて接合部を形成するため、電場駆動型高分子フィルムと異なる材質の振動板を用いることなく、スピーカ装置をプッシュプル型の発音体として機能させることができる。また、導線13を、電場駆動型高分子フィルム12の円周に沿った形状で形成することにより、電場駆動型高分子フィルム12に均等に駆動信号を印加することが可能になる。
【0022】
ここで、上記のような電場駆動型高分子フィルムを用いるスピーカ装置の設計方法に関する検討はいまだ行われていない。実用のためには、例えば、規定サイズのスピーカ装置において、所望の音圧を実現するための設計方法が求められる。以下、電場駆動型高分子フィルムを用いたスピーカ装置の設計方法について詳述する。
【0023】
まず、図3から、スピーカ装置の径方向の電場駆動型高分子フィルムの伸びΔrは、電場駆動型高分子フィルムと接合部とがなす角度をθとして、式(1)で表される。なお、角度θは、スピーカ装置のサイズであるスピーカ装置(フレーム内周)の半径R+r、奥行き(図3の場合r・tanθ:スペーサ長の半分)、接合部の半径rにより規定されるものである。
【数1】
【0024】
図4は、電場駆動型高分子フィルムの拡大図であり、中心角をαとしている。張力をFα、電場駆動型高分子のヤング率をYとすると、Δrは式(2)で表される。
【数2】
【0025】
ここで、dは電場駆動型高分子フィルムの厚みの初期値、xは接合部を除く電場駆動型高分子フィルムの半径方向の長さ、A(x)はdα(R+x)で与えられる断面積である。ここで、スピーカ装置の主軸方向に沿った張力の全体値Fは式(3)で表される。
【数3】
【0026】
上記より、プッシュプル型のスピーカ装置のスティフネスsは式(4)で表される。
【数4】
【0027】
次に、簡単のためプッシュプル型スピーカ装置において、駆動時の電場駆動型高分子フィルムの厚みdppが一様であると仮定し、dpp=d・cosθとおく。ここで電場駆動型高分子フィルムの半径方向に沿った変化uを印加電圧Vで表すと式(5)のようになる(非特許文献3参照)。
【数5】
【0028】
ここで、εは真空の誘電率、εは電場駆動型高分子の比誘電率である。これにより、プッシュプル型スピーカ装置の印加電圧Vに対する変位は、u・sinθと表せる。なお、θはスピーカ装置の駆動に伴って変化するがその変化は微小であるため、スピーカ装置の駆動時の角度θは一定であると仮定できる。さらに、印加電圧Vによるプッシュプル型スピーカ装置の駆動力Gは式(6)で表される。
【数6】
【0029】
ここで、Vdcは直流バイアス電圧であり、Vacは交流信号、つまり音響信号である。
【0030】
次に、駆動力G中の入力対して線形な成分Gfrに着目すると、これはプッシュプル型スピーカ装置の基本周波数成分に関わる項であり、式(7)で表される。
【数7】
【0031】
次に、直接放射型スピーカの一般的な解析法(非特許文献6参照)に倣い、主軸上の距離lの位置での音圧Pを式(8)により表す。
【数8】
【0032】
ここで、Zはr+j(ωm−s/ω)で表される機械インピーダンスであり、rは機械抵抗、mは接合部の質量、ωは角周波数である。なお、Zは接合部を振動板とみなした場合の放射抵抗であり(非特許文献6参照)、式(9)で表される。
【数9】
【0033】
ここでρは空気の密度、cは音速、kは波数、Jは一次の第一種ベッセル関数、Hは第一種シュトルーベ関数である。シュトルーベ関数は式(10)の近似式を用いるものとする(非特許文献7参照)。
【数10】
【0034】
以上の式から音圧Pを求めると、音圧Pは式(11)により表すことができる。
【数11】
【0035】
以上の導出より、プッシュプル型スピーカ装置の音響特性は、電場駆動型高分子の材料定数と、スピーカ装置のサイズ(スピーカ装置の半径R+r、奥行きr・tanθ、接合部の半径r)をパラメータとする音圧のモデル関数により表すことができる。すなわち、式(11)に示すモデル関数により、所望音圧を実現するスピーカ装置の設計が可能となる。
【0036】
なお、上記設計方法は、本発明に係るスピーカ装置に限られず、電場駆動型高分子フィルムを貼り合わせた接合部の代わりに、電場駆動型高分子フィルムと異なる材質の振動板を振動させるスピーカ装置にも適用可能である点に留意されたい。この場合、上記説明の接合部を適宜振動板と読み替えるものとする。
【0037】
ここで、式(11)のモデル関数よりスピーカ装置を設計する場合、家庭用のマルチチャンネル音響システムに用いるスピーカ装置に求められる要件は、音響特性もさることながら、設置可能なスペースによって制約されるサイズにある。そこで、予め面積(半径)や奥行きでスピーカ装置のサイズを規定しておき、自由度の高いパラメータ(例えば接合部の半径)を変化させて、所望の周波数特性を得ることが好ましい。
【0038】
図5は、材料定数並びにスピーカ装置のサイズを固定して接合部の半径を変化させた場合の音圧の周波数特性の変化を示す図である。なお、この場合、スピーカ装置のサイズとして、スピーカ装置の半径(R+r)及び奥行き(r・tanθ)を固定条件としている。なお式(11)の計算は下記条件で行った。なお、rは十分小さいと仮定し、計算上はゼロとしている。
R+r=8cm(スピーカ装置の半径)
r・tanθ=2cm(スピーカ装置の奥行き)
d=100μm(電場駆動型高分子の材料定数)
Y=2.6MPa(電場駆動型高分子の材料定数)
ε=7.8(電場駆動型高分子の材料定数)
dc=500V
ac=70.7V(rms)
l=1m
【0039】
図5の結果を参照すると、電場駆動型高分子の材料定数及びスピーカ装置の半径及び奥行きが一定であっても、接合部の半径rを変化させることで放射音圧と再生周波数帯域が変化していることがわかる。すなわち、本発明により、ある電場駆動型高分子の材料定数において、スピーカ装置の半径及び奥行きを変化させることなく、スピーカ装置の放射音圧と再生周波数帯域を変化させることができ、音響システムの特性に適したスピーカを設計することが可能になる。
【0040】
このように、本実施形態によれば、電場駆動型高分子フィルムの材料定数と、スピーカ装置のサイズであるスピーカ装置の半径、奥行き、及び接合部の半径とをパラメータとする音圧のモデル関数により、所望音圧・周波数特性を実現するスピーカ装置を設計する。このため、スピーカ装置のサイズが予め規定されていても、所望の音圧を実現するスピーカ装置を実現することが可能になる。
【0041】
また、式(11)に示すモデル関数において、電場駆動型高分子フィルムの材料定数と、スピーカ装置の半径及び奥行きとを固定し、所望音圧を実現する接合部の半径を求めることにより、設置環境の要求条件(サイズの仕様)に応じたサイズのスピーカ装置において、所望音圧・周波数特性を実現することが可能となる。
【0042】
また、モデル関数は、変化が特に微小である駆動時の電場駆動型高分子フィルムの厚みを一様としており、モデル精度を損なうことなく、計算負荷を低減することができる。また、モデル関数は、変化が特に微小である駆動時の電場駆動型高分子フィルムと接合部とがなす角度を一定としているため、モデル精度を損なうことなく計算負荷を低減することができる。
【0043】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各部材、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0044】
10、20 発音ユニット
11、21 フレーム
12、22 電場駆動型高分子フィルム
13、23 導線
30 スペーサ
40 接合部
図1
図2
図3
図4
図5