(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記試料の光学画像を取得する工程では、前記試料をX軸方向またはY軸方向に沿って短冊状に複数のストライプで仮想分割するとともに、前記試料をX軸方向とY軸方向に移動可能なXYテーブルの上に載置し、前記ストライプが連続的に走査されるように前記XYテーブルを移動させ、
前記欠陥が検出された光学画像を有するダイのパターンに関連する寸法差または寸法比率に最も近い寸法差または寸法比率のパターンを有するダイを抽出する工程では、前記欠陥が検出された光学画像を有するダイのX軸方向およびY軸方向の少なくとも一方と同じ方向に位置するダイが優先して抽出されることを特徴とする請求項1に記載の検査方法。
前記試料の光学画像を取得する工程では、前記試料をX軸方向またはY軸方向に沿って短冊状に複数のストライプで仮想分割するとともに、前記試料をX軸方向とY軸方向に移動可能なXYテーブルの上に載置し、前記ストライプが連続的に走査されるように前記XYテーブルを移動させ、
前記寸法差または寸法比率が最も近い関連するパターンを有するダイを抽出する工程では、X軸方向およびY軸方向の少なくとも一方について、前記複数のダイのそれぞれと同じ方向に位置するダイが優先して抽出されることを特徴とする請求項4に記載の検査方法。
前記寸法差は、前記繰り返しパターンの線幅の差、または、前記繰り返しパターンの線間距離の差であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の検査方法。
前記寸法比率は、前記繰り返しパターンの線幅の比率、または、前記繰り返しパターンの線間距離の比率であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の検査方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のマスク検査では、もっぱらパターンの形状欠陥を検出することを目的としており、それに適した欠陥判定のアルゴリズムや、欠陥の記録方法が工夫されてきた。また、マスク検査装置においては、パターンの寸法変動に起因するLSIの製造マージン不足が課題とされていることに対応して、寸法変動による欠陥を検出する機能が充実してきている。しかし、最近のマスクパターンにおいては、形状欠陥や線幅変動として指摘されるべき欠陥の寸法が、マスク全面での寸法変動(寸法分布)と同等程度になってきている。このため、検出される欠陥の数が膨大になるという問題があった。
【0007】
また、欠陥検出をする手法の1つに、ダイ−トゥ−ダイ(Die to Die)比較方式があるが、この方式によって寸法の異なる領域のチップ同士を比較しようとすると、寸法バイアス(偏差)を有したパターン同士が比較されることになる。このため、欠陥として検出する必要のない形状や線幅を欠陥としてしまう場合があった。
【0008】
本発明は、こうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、不必要な欠陥検出を低減することのできる検査方法および検査装置を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、繰り返しパターンを有する複数のダイが設けられた試料の光学画像を取得する工程と、
前記繰り返しパターンの光学画像同士をダイ−トゥ−ダイ方式で比較して、欠陥のある光学画像を検出する工程と、
前記繰り返しパターンの光学画像と、該繰り返しパターンとダイ−トゥ−ダイ方式によって比較された光学画像の繰り返しパターンとの寸法差および寸法比率の少なくとも一方を求める工程と、
前記欠陥が検出された光学画像を有するダイと最も欠陥位置の寸法差または寸法比率が近いダイを抽出する工程と、
前記欠陥が検出された光学画像と、該光学画像を有するダイと最も欠陥位置の寸法差または寸法比率が近いダイの光学画像とを、ダイ−トゥ−ダイ方式によって比較し、前記欠陥が検出された光学画像から再度欠陥が検出された場合には該欠陥に関する情報を保存し、前記欠陥が検出された光学画像から欠陥が検出されない場合には、該光学画像には欠陥がないとする工程とを有することを特徴とする検査方法に関する。
【0011】
本発明の第1の態様において、前記試料の光学画像を取得する工程では、前記試料をX軸方向またはY軸方向に沿って短冊状に複数のストライプで仮想分割するとともに、前記試料をX軸方向とY軸方向に移動可能なXYテーブルの上に載置し、前記ストライプが連続的に走査されるように前記XYテーブルを移動させ、
前記欠陥が検出された光学画像を有するダイと最も欠陥位置の寸法差または寸法比率が近いダイを抽出する工程では、前記欠陥が検出された光学画像を有するダイのX軸方向およびY軸方向の少なくとも一方と同じ方向に位置するダイが優先して抽出されることが好ましい。
【0012】
本発明の第1の態様は、前記寸法差および前記寸法比率の少なくとも一方から、前記繰り返しパターンの寸法分布を求める工程を有し、
前記寸法分布を用いて、前記最も欠陥位置の寸法差または寸法比率が近いダイを抽出することが好ましい。
【0013】
本発明の第1の態様において、前記寸法差は、前記繰り返しパターンの線幅の差、または、前記繰り返しパターンの線間距離の差であることが好ましい。
【0014】
本発明の第1の態様において、前記寸法比率は、前記繰り返しパターンの線幅の比率、または、前記繰り返しパターンの線間距離の比率であることが好ましい。
【0015】
本発明の第2の態様は、繰り返しパターンを有する複数のダイが設けられた試料の光学画像を取得する工程と、
前記繰り返しパターンの光学画像同士をダイ−トゥ−ダイ方式で比較する工程と、
前記繰り返しパターンの光学画像と、該繰り返しパターンとダイ−トゥ−ダイ方式によって比較された光学画像の繰り返しパターンとの寸法差および寸法比率の少なくとも一方を求める工程と、
前記複数のダイのそれぞれについて、最も寸法差または寸法比率の分布が近いダイを抽出する工程と、
前記複数のダイの各光学画像を、最も寸法差または寸法比率の分布が近いダイの各光学画像とダイ−トゥ−ダイ方式によって比較し、欠陥が検出された場合には該欠陥に関する情報を保存し、欠陥が検出されない場合には欠陥はないとする工程とを有することを特徴とする検査方法に関する。
【0016】
本発明の第2の態様において、前記試料の光学画像を取得する工程では、前記試料をX軸方向またはY軸方向に沿って短冊状に複数のストライプで仮想分割するとともに、前記試料をX軸方向とY軸方向に移動可能なXYテーブルの上に載置し、前記ストライプが連続的に走査されるように前記XYテーブルを移動させ、
前記最も寸法差または寸法比率の分布が近いダイを抽出する工程では、X軸方向およびY軸方向の少なくとも一方について、前記複数のダイのそれぞれと同じ方向に位置するダイが優先して抽出されることが好ましい。
【0017】
本発明の第2の態様は、前記寸法差および前記寸法比率の少なくとも一方から、前記繰り返しパターンの寸法分布を求める工程を有し、
前記寸法分布を用いて、前記最も寸法差または寸法比率の分布が近いダイを抽出することが好ましい。
【0018】
本発明の第2の態様において、前記寸法差は、前記繰り返しパターンの線幅の差、または、前記繰り返しパターンの線間距離の差であることが好ましい。
【0019】
本発明の第2の態様において、前記寸法比率は、前記繰り返しパターンの線幅の比率、または、前記繰り返しパターンの線間距離の比率であることが好ましい。
【0020】
本発明の第3の態様は、試料の光学画像を取得する光学画像取得部と、
前記光学画像取得部から出力された光学画像同士をダイ−トゥ−ダイ方式によって比較して欠陥のある光学画像を検出する第1の比較部と、
前記光学画像のパターンと、該光学画像とダイ−トゥ−ダイ方式によって比較された光学画像のパターンとの寸法差および寸法比率の少なくとも一方を求める寸法差/寸法比率取得部と、
前記第1の比較部で欠陥が検出された光学画像と、該光学画像を有するダイと最も欠陥位置の寸法差または寸法比率が近いダイの光学画像とを、ダイ−トゥ−ダイ方式によって比較する第2の比較部と、
前記第2の比較部での比較により、前記第1の比較部で欠陥が検出された光学画像から再度欠陥が検出された場合には該欠陥に関する情報を保存し、前記第1の比較部で欠陥が検出された光学画像から欠陥が検出されない場合には、該光学画像には欠陥がないとする制御部とを有することを特徴とする検査装置に関する。
【0021】
本発明の第3の態様は、前記寸法差/寸法比率取得部から出力された、前記寸法差および前記寸法比率の少なくとも一方から、前記パターンの寸法分布を求める寸法分布取得部を有し、
前記制御部は、前記寸法分布取得部から出力された前記寸法分布を用いて、前記最も欠陥位置の寸法差または寸法比率が近いダイを抽出し、前記第2の比較部に出力することが好ましい。
【0022】
本発明の第4の態様は、試料の光学画像を取得する光学画像取得部と、
前記光学画像取得部から出力された光学画像同士をダイ−トゥ−ダイ方式によって比較する第1の比較部と、
前記光学画像のパターンと、該光学画像とダイ−トゥ−ダイ方式によって比較された光学画像のパターンとの寸法差および寸法比率の少なくとも一方を求める寸法差/寸法比率取得部と、
前記光学画像と、該光学画像を有するダイと最も寸法差または寸法比率の分布が近いダイの光学画像とを、ダイ−トゥ−ダイ方式によって比較する第2の比較部と、
前記第2の比較部での比較により、欠陥が検出された場合には該欠陥に関する情報を保存し、欠陥が検出されない場合には欠陥はないとする制御部とを有することを特徴とする検査装置に関する。
【0023】
本発明の第4の態様は、前記寸法差/寸法比率取得部から出力された、前記寸法差および前記寸法比率の少なくとも一方から、前記パターンの寸法分布を求める寸法分布取得部を有し、
前記制御部は、前記寸法分布取得部から出力された前記寸法分布を用いて、前記最も寸法差または寸法比率の分布が近いダイを抽出し、前記第2の比較部に出力することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の第1の態様によれば、不必要な欠陥検出を低減することのできる検査方法が提供される。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、本来検出されるべき欠陥を検出する一方、不必要な欠陥検出を低減することのできる検査方法が提供される。
【0026】
本発明の第3の態様によれば、不必要な欠陥検出を低減することのできる検査装置が提供される。
【0027】
本発明の第4の態様によれば、本来検出されるべき欠陥を検出する一方、不必要な欠陥検出を低減することのできる検査装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態における検査装置の概略構成図である。また、
図2は、
図1の検査装置におけるデータの流れを示す図である。尚、これらの図では、本実施の形態で必要な要素を記載しているが、検査に必要な他の公知要素が含まれていてもよい。また、本明細書において、「〜部」または「〜回路」と記載したものは、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができるが、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せやファームウェアとの組合せによって実施されるものであってもよい。プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置等の記録装置に記録される。
【0030】
本実施の形態においては、フォトリソグラフィ法などで使用されるマスクを検査対象としているが、これに限られるものではなく、例えば、ウェハを検査対象としてもよい。
【0031】
図1に示すように、検査装置100は、光学画像取得部を構成する構成部Aと、構成部Aで取得された光学画像を用いて検査に必要な処理等を行う構成部Bとを有する。
【0032】
構成部Aは、光源103と、水平方向(X方向、Y方向)および回転方向(θ方向)に移動可能なXYθテーブル102と、透過照明系を構成する照明光学系170と、拡大光学系104と、フォトダイオードアレイ105と、センサ回路106と、レーザ測長システム122と、オートローダ130とを有する。
【0033】
構成部Aでは、検査対象となるマスク101の光学画像、すなわち、マスク採取データ204が取得される。マスク採取データ204は、マスク101の設計パターンデータに含まれる図形データに基づく図形が描画されたマスクの画像である。例えば、マスク採取データ204は、8ビットの符号なしデータであって、各画素の明るさの階調を表現する。
【0034】
マスク101は、XYθテーブル102上に載置される。すると、マスク101に形成されたパターンに対し、XYθテーブル102の上方に配置された光源103から光が照射される。より詳しくは、光源103から照射される光束が、照明光学系170を介してマスク101に照射される。マスク101の下方には、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105およびセンサ回路106が配置されている。マスク101を透過した光は、拡大光学系104を介して、フォトダイオードアレイ105に光学像として結像する。
【0035】
拡大光学系104は、図示しない自動焦点機構によって自動的に焦点調整がなされるように構成されていてもよい。さらに、図示しないが、検査装置100は、マスク101の下方から光を照射し、拡大光学系を介してフォトダイオードアレイに反射光を導く構成としてもよい。この構成によれば、透過光と反射光による各光学画像を同時に取得することが可能である。
【0036】
フォトダイオードアレイ105上に結像したマスク101のパターン像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換され、さらにセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。フォトダイオードアレイ105には、センサ(図示せず)が配置されている。このセンサの例としては、TDI(Time Delay Integration)センサなどが挙げられる。この場合、XYθテーブル102が連続的に移動しながら、TDIセンサによってマスク101のパターンが撮像される。ここで、光源103、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105およびセンサ回路106により高倍率の検査光学系が構成される。
【0037】
構成部Bでは、検査装置100全体の制御を司る制御部としての制御計算機110が、データ伝送路となるバス120を介して、位置回路107、比較部の一例となる比較回路108、寸法差/寸法比率取得部の一例となる寸法測定回路125、寸法分布取得部の一例となるマップ作成回路126、オートローダ制御部113、テーブル制御回路114、記憶装置の一例となる磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレキシブルディスク装置116、CRT117、パターンモニタ118およびプリンタ119に接続されている。XYθテーブル102は、テーブル制御回路114によって制御されたX軸モータ、Y軸モータおよびθ軸モータによって駆動される。これらのモータには、例えば、ステップモータを用いることができる。
【0038】
図1で「〜部」または「〜回路」と記載したものは、既に述べたように、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができるが、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せやファームウェアとの組合せによって実施されるものであってもよい。プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置109に記録されることができる。例えば、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、比較回路108および位置回路107内の各回路は、電気的回路で構成されてもよく、制御計算機110によって処理することのできるソフトウェアとして実現されてもよい。また、電気的回路とソフトウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0039】
制御計算機110は、テーブル制御回路114を制御して、XYθテーブル102を駆動する。XYθテーブル102の移動位置は、レーザ測長システム122により測定されて位置回路107に送られる。
【0040】
また、制御計算機110は、オートローダ制御回路113を制御して、オートローダ130を駆動する。オートローダ130は、マスク101を自動的に搬送し、検査終了後には自動的にマスク101を搬出する。
【0041】
比較回路108では、ダイ−トゥ−ダイ(Die to Die)比較方式による検査が行われる。この方式は、同一のマスク内であって、その一部分または全体に同一のパターン構成を有する複数のチップが配置されている場合に、マスクの異なるチップにおける同一パターンの光学画像同士を比較する検査方法である。例えば、検査対象となるマスクには、通常、半導体ウェハに転写される、同じ集積回路のパターンが多数繰り返して形成されている。繰り返し単位は、同じ大きさの矩形を呈しており、互いに切り離されるとダイ(Die)と称される。1つのダイには、通常、1単位の集積回路などが形成されている。
【0042】
図3は、マスク101に形成された繰り返しパターンを一部拡大して示した図である。この例では、マスク101に複数のチップパターンが形成されている。ダイ−トゥ−ダイ比較方式では、例えば、n番目のチップの光学画像が検査画像であるとすると、(n−1)番目のチップの光学画像が比較すべき基準画像となる。
【0043】
検査対象である光学画像と、基準画像である光学画像とは、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較される。
図1の構成であれば、透過画像同士での比較となるが、反射光学系を用いた構成であれば、反射画像同士での比較、あるいは、透過と反射を組み合わせた比較判定アルゴリズムが用いられる。比較の結果、両者の差異が所定の閾値を超えた場合には、その箇所が欠陥と判定される。
【0044】
例えば、n番目のチップの光学画像と、(n−1)番目のチップの光学画像とを比較したとき、欠陥がなければ、これらの画像は同じとなるはずである。したがって、これらの差分画像において、その差分量が大きい箇所を欠陥として抽出することができる。ここで、2つの画像同士を比較しただけでは、どちらのダイに欠陥があるかを判定することができない。そこで、同じパターンを有する少なくとも3つ以上の画像を用いて比較を行い、その多数決によって欠陥のあるダイを決定する。例えば、(n−2)番目のチップと(n−1)番目のチップを比較し、さらに、(n−1)番目のチップとn番目のチップを比較する。これにより、欠陥のあるチップを特定することができる。
【0045】
本実施の形態において、マスク採取データ204は、寸法測定回路125へも送られる。寸法測定回路125では、マスク採取データ204から、マスク101に描画されたパターンの寸法(Critical Dimension;以下、CDと称す。)が測定される。例えば、ラインパターンであれば、その線幅が測定される。そして、ダイ−トゥ−ダイ比較方式で検査対象となる光学画像と、基準となる光学画像とにおけるパターンの寸法差(ΔCD)が求められる。
【0046】
。
寸法測定回路125におけるパターンの寸法測定は、マスク101の光学画像を取得するのと並行して行われる。但し、これに限られるものではなく、例えば、比較回路108で検査を行うのと並行して、寸法測定回路125でパターンの寸法測定を行ってもよい。
【0047】
寸法測定回路125で得られたΔCD値は、寸法分布取得部としてのマップ作成回路126へ送られる。マップ作成回路126では、送られたΔCD値を基に、例えば、マスク101の面内におけるパターン線幅の寸法差マップ(ΔCDマップ)が作成される。作成されたΔCDマップは、磁気ディスク装置109に保存される。尚、検査装置100は、必ずしもマップ作成回路126を有している必要はなく、寸法測定回路125がマップ作成機能を有していてもよく、あるいは、外部の計算機などによってマップを作成してもよい。さらに、マップを作成せずに、寸法測定回路125で得られたΔCD値を用いて、後述する再検査を行うことも可能である。
【0048】
次に、
図1の検査装置100を用いてマスク101を検査する方法の一例を述べる。
【0049】
<光学画像取得工程>
図1の構成部Aにおいて、マスク101の光学画像が取得される。
図4は、光学画像の取得手順を説明する図である。尚、既に述べたように、光学画像は、
図2のマスク採取データ204に対応する。
【0050】
図4でマスク101は、
図1のXYθテーブル102の上に載置されているものとする。また、マスク101上の検査領域は、
図4に示すように、短冊状の複数の検査領域、すなわち、ストライプ20
1,20
2,20
3,20
4,・・・に仮想的に分割されている。各ストライプは、例えば、幅が数百μmであって、長さがマスク101のX方向またはY方向の全長に対応する100mm程度の領域とすることができる。
【0051】
光学画像は、ストライプ毎に取得される。すなわち、
図4で光学画像を取得する際には、各ストライプ20
1,20
2,20
3,20
4,・・・が連続的に走査されるように、XYθテーブル102の動作が制御される。具体的には、XYθテーブル102が
図4の−X方向に移動しながら、マスク101の光学画像が取得される。そして、
図1のフォトダイオードアレイ105に、
図4に示されるような走査幅Wの画像が連続的に入力される。すなわち、第1のストライプ20
1における画像を取得した後、第2のストライプ20
2における画像を取得する。この場合、XYθテーブル102が−Y方向にステップ移動した後、第1のストライプ20
1における画像の取得時の方向(−X方向)とは逆方向(X方向)に移動しながら光学画像を取得して、走査幅Wの画像がフォトダイオードアレイ105に連続的に入力される。第3のストライプ20
3における画像を取得する場合には、XYθテーブル102が−Y方向にステップ移動した後、第2のストライプ20
2における画像を取得する方向(X方向)とは逆方向、すなわち、第1のストライプ20
1における画像を取得した方向(−X方向)に、XYθテーブル102が移動する。尚、
図4の矢印は、光学画像が取得される方向と順序を示しており、斜線部分は、光学画像の取得が済んだ領域を表している。
【0052】
光学画像が取得されていく様子は、
図3によっても説明される。
図3において、マスク101の所定領域には、2n個のチップパターンが形成されている。センサは、1チップ目、2チップ目、3チップ目、・・・、(n−1)チップ目、nチップ目の順に、X方向にパターンを撮像していく。nチップ目を撮像した後、センサは見掛け上Y方向に移動し、次いで、(n+1)チップ目、(n+2)チップ目、・・・、(2n−2)チップ目、(2n−1)チップ目、2nチップ目の順に撮像する。
【0053】
図1のフォトダイオードアレイ105上に結像したパターンの像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換され、さらにセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。その後、光学画像、すなわち、マスク採取データ204は、センサ回路106から
図1の比較回路108へ送られる。
【0054】
<ダイ−トゥ−ダイ比較工程>
比較回路108は、第1の比較部と第2の比較部とを有している。本実施の形態では、まず、第1の比較部において、マスク採取データ204同士が、ダイ−トゥ−ダイ方式によって比較される。具体的には、検査対象となるデータと、欠陥判定の基準となるデータとが、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較される。そして、両者の差が所定の閾値を超える場合に欠陥と判定される。
【0055】
例えば、マスク101に格子状のチップパターンが形成されているとする。ダイ−トゥ−ダイ比較方式では、マスク上に繰り返し形成されたチップ同士が比較される。例えば、検査対象としてn番目のチップを考える。このパターンと、(n−1)番目のチップの光学画像におけるパターンとの差が所定の閾値を超える場合、n番目のチップには欠陥があると判定される。但し、欠陥の判定には、3つ以上のチップを用いた比較が必要である。例えば、(n−2)番目のチップと(n−1)番目のチップを比較し、さらに、(n−1)番目のチップとn番目のチップを比較する。これにより、n番目のチップに欠陥があるか否かを判定することができる。
【0056】
<寸法測定工程>
寸法測定工程では、マスク採取データから、マスク101に描画されたパターンの寸法(CD)が測定され、次いで、ダイ−トゥ−ダイ比較方式で検査対象となる光学画像と、基準となる光学画像とにおけるパターンの寸法差(ΔCD)が求められる。
図1の検査装置100では、寸法測定回路125が、センサ回路106から出力されたマスク採取データ204を用いて、パターンの寸法(CD)を測定し、さらに、この値を用いて光学画像同士のパターンの寸法差(ΔCD)を求める。このとき、位置回路107から送られた、XYθテーブル102上でのマスク101の位置情報が加味される。パターンの寸法差(ΔCD)は、パターン線幅の寸法差でもよく、パターン線幅の寸法比率でもよい。あるいは、パターン間距離の差や、パターン間距離の比率であってもよい。さらには、これらを任意に組み合わせて複数の寸法差を求めてもよい。
【0057】
検査が行われている間に、寸法測定回路125で寸法(CD)を測定する頻度は、例えば、
図4のストライプ(20
1,20
2,20
3,20
4,・・・)の長さ方向(X方向)に適当数(例えば、1000点程度)のサンプル採取を行う毎とし、ストライプの幅方向(Y方向)にも、X方向と同程度の数のサンプルが採取される毎とすることができる。寸法測定が行われる候補点付近においては、エッジペアの間隔の測定が可能な適当なラインパターンが用いられる。この場合、エッジペアは1つとしてもよいが、複数箇所のエッジペアを用いて寸法(CD)を測定し、得られた値の度数を集計して、その度数分布の集計結果から最も頻度の高い値(最頻値)を代表値として用いることが好ましい。尚、候補点付近にエッジペアが見つからなかったり、エッジペアの数が少なかったりする場合には、寸法(CD)を測定しなくてもよく、あるいは、限られたサンプル数から最頻値を求めてもよい。
【0058】
<マップ作成工程>
寸法測定回路125でパターンの寸法差(ΔCD)が求められると、得られたデータはマップ作成回路126へ送られる。マップ作成回路126では、蓄積されたΔCD値から、マスク面内での寸法分布を表すΔCDマップが作成される。このマップによれば、マスク101の検査領域において、パターンの線幅が細くなっている領域や太くなっている領域を容易に把握することができる。例えば、パターンの描画に使用される描画装置にマスクの特定部分で線幅が細くなる傾向があれば、そうした傾向を把握可能である。また、検査対象となるダイと同じまたは類似したΔCD値を有するダイを、このマップを用いて探索することができる。さらに、検出された欠陥位置のΔCD値と同じまたは類似したΔCD値を有するダイも探索可能である。
【0059】
ところで、ダイ−トゥ−ダイ比較方式による検査は、基本的にチップ全体を検査範囲としており、距離の離れたダイ同士が比較されるため、マスク面内での寸法分布の影響を受けやすい。寸法の異なる領域のチップ同士が比較されると、寸法バイアス(偏差)を有したパターン同士が比較されることとなって、欠陥として検出する必要のない形状や線幅を欠陥としてしまうことがある。
【0060】
図5は、マスクのCDマップの一例である。点線で囲まれた単位領域は、1つのダイ領域を表している。この例では、中央に近い領域で線幅が太くなっており、マスクの周辺部では線幅が細くなる傾向にある。
図6は、
図5のX−X'線に沿う断面に対応する寸法差分布を示す図である。
【0061】
ダイ−トゥ−ダイ比較方式では、
図5のダイAとダイBが比較される。ここで、ダイAの寸法分布とダイBの寸法分布とは、
図6に示すように異なっている。つまり、ダイAとダイBとは、寸法バイアス(偏差)を有した状態で比較されることになる。マスク面内での寸法変動が、形状欠陥や線幅変動として指摘されるべき欠陥の寸法と同等程度になると、ダイAに本来検出するべき欠陥がなかったとしても、ダイBとの比較からは寸法分布の差によって欠陥があると判定されることがある。そこで、こうした場合には、ダイAとダイBを比較するのではなく、ダイAの寸法分布と近い寸法分布を有するダイCをダイAと比較するのがよい。
【0062】
具体的には、第1の比較部で検出した欠陥が真に検出すべきものであるか否かを判定するため、CDマップを参照して、欠陥位置の寸法差と最も近い寸法差を有するダイを探し、これと第2の比較部で再度ダイ−トゥ−ダイ比較を行う。上記例であれば、第1の比較部において、ダイAとダイBを比較した結果、ダイAに欠陥があると判定されると、
図5のCDマップを参照し、ダイAの欠陥位置と最も寸法差の近いダイCを抽出する。そして、第2の比較部においてダイAとダイCの比較による再検査を行う。再検査によっても欠陥があると判定されれば、マスク検査結果に欠陥として保存する。一方、再検査によって欠陥がないと判定された場合は、マスク検査結果に保存しない。
【0063】
図7は、本実施の形態の検査方法の要部を示すフローチャートである。
【0064】
第1の比較部でダイ−トゥ−ダイ比較を行い、マスク101についてn(nは1以上の整数)個の欠陥が検出されたとする。本実施の形態では、この時点で、マスク101のΔCDマップが作成されている。
【0065】
次に、最初に欠陥が検出されたダイの欠陥位置と最も寸法差が近いダイを、ΔCDマップを用いて抽出する(S101)。この処理は、
図1の制御計算機110で行うことができる。例えば、制御計算機110は、マップ作成回路126から出力されたΔCDマップを用いて、欠陥位置のΔCD値と最も近いΔCD値を有するダイを抽出して第2の比較部へ出力する。例えば、
図5でダイAが最初に欠陥が検出されたダイであるとすると、ダイAの欠陥位置と最もΔCD値が近いダイを探索してダイCを抽出する。尚、ダイCの他にも、ダイAと類似したΔCD値を有するダイがある場合には、XYθテーブル102の移動の容易性を考慮して、ダイAのX軸方向およびY軸方向の少なくとも一方と同じ方向に位置するダイを優先して抽出することが好ましい。例えば、ダイAとX座標またはY座標が同じダイが優先して抽出される。
【0066】
尚、本実施の形態では、マップを作成せずに、寸法測定回路125で得られたΔCD値から、第1の比較部で欠陥が検出されたダイの欠陥位置と最も近いΔCD値を有するダイを抽出することも可能である。
【0067】
次に、最初に欠陥が検出されたダイの光学画像(α)と、S101で抽出されたダイの光学画像(β)とを、比較回路108の第2の比較部でダイ−トゥ−ダイ比較する(S102)。比較の結果、欠陥が検出されれば、S103に進んでマスク検査結果に保存する。例えば、制御計算機110によって、欠陥の座標、欠陥判定の根拠となった光学画像などが、マスク検査結果として磁気ディスク装置109に保存される。
【0068】
その後、
図2に示すように、マスク検査結果205はレビュー装置500に送られる。レビューは、オペレータによって、検出された欠陥が実用上問題となるものであるかどうかを判断する動作である。オペレータは、例えば、欠陥判定の根拠となった基準画像と、欠陥が含まれる光学画像とを見比べて、修正の必要な欠陥であるか否かを判断する。そして、レビュー工程を経て判別された欠陥情報も、
図1の磁気ディスク装置109に保存される。レビュー装置500で1つでも修正すべき欠陥が確認されると、マスク101は、欠陥情報リスト207とともに、検査装置100の外部装置である修正装置600に送られる。修正方法は、欠陥のタイプが凸系の欠陥か凹系の欠陥かによって異なるので、欠陥情報リスト207には、凹凸の区別を含む欠陥の種別と欠陥の座標が添付される。
【0069】
一方、S102での比較の結果、欠陥が検出されなかった場合には、制御計算機110は、第1の比較部で検出された欠陥は欠陥でないと判断してマスク検査結果に保存しない(S104)。尚、制御計算機110は、第1の比較部の結果を適当な名称で保存し、検査装置100を使用するユーザの要求に応じて適宜読み出し可能なようにすることもできる。
【0070】
次に、2番目に欠陥が検出されたダイについても同様の工程を繰り返す。制御計算機110は、m番目に欠陥が検出されたダイに対し、再検査によりマスク検査結果への保存の是非を判定した後は、m=nであるか否かを判定することによって、このダイがn番目、すなわち、最後に欠陥が検出されたダイであるか否かを判定する。m=nであれば、全ての欠陥についてΔCD値の近いダイとの比較を行ったとして一連の工程を終了する。
【0071】
尚、
図7の工程にしたがってn個の欠陥を再検査する順序は、欠陥が検出された順序に限られない。例えば、最後に検出された欠陥から始まって、最初に検出された欠陥を最後に再検査することとしてもよく、また、XYθテーブルの移動の効率性を考えて順番を決めてもよい。
【0072】
本実施の形態によれば、類似した寸法差を有するダイ同士で再検査をするので、寸法分布の差による影響を最小限にした状態での比較が可能となる。これにより、検出する必要のない欠陥がマスク検査結果から除かれるので、オペレータがレビューする欠陥数が低減され、検査時間の短縮化に繋がる。また、欠陥情報リストに挙がる欠陥数を低減することにもなるので、マスクの製造歩留まりを向上させることができる。
【0073】
実施の形態2.
実施の形態1では、欠陥が検出されたダイについて、欠陥位置の寸法差と最も近い寸法差を有するダイと比較することで、検出すべき欠陥を有するダイであるか否かを判定した。これに対して、本実施の形態では、全てのダイについて寸法差または寸法比率の分布が近いダイを探して再検査を行う。このようにすることで、欠陥として検出する必要のない形状や線幅を欠陥としてしまう問題を低減できるとともに、検出されるべき欠陥が見逃されるのを防ぐこともできる。
【0074】
以下、本実施の形態の検査方法について説明する。この検査方法は、
図1の検査装置100を用いて実施することができる。
【0075】
本実施の形態の検査方法も、光学画像取得工程、ダイ−トゥ−ダイ比較工程、寸法測定工程およびマップ作成工程を有する。これらは、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0076】
図8および
図9は、
図5のX−X'線に沿う断面に対応する寸法差の分布を示す図である。尚、
図6、
図8および
図9の横軸はいずれも同じスケールであり、原点の位置も全て同じである。
【0077】
図8は、寸法測定回路で求められたパターンの寸法差(ΔCD)の分布を表している。
図8において、ダイBにある破線で囲んだ部分の寸法差(ΔCD)の絶対値は、他の4点における寸法差(ΔCD)の絶対値よりも小さい。したがって、一見すると、これは欠陥ではないように思われる。一方、1点破線で囲んだ部分の寸法差(ΔCD)の絶対値は、他の2点における寸法差(ΔCD)の絶対値よりも大きい。したがって、ダイAには欠陥があると判定されるべきであるように思われる。
【0078】
しかしながら、破線で囲んだ部分の周囲は、
図6から分かるように、寸法差がプラスとなっている領域である。つまり、周囲の線幅は、基準値より太くなっている。それにも関わらず、破線で囲んだ部分の寸法差はマイナスの値となっていることから、破線で囲んだ部分は、周囲に比較して特異的に細い線幅を有すると言える。これを図示したものが
図9である。すなわち、
図9では、寸法バイアスが除かれた状態で、CD値を測定した部分におけるΔCDの値が表されている。
図9によれば、破線で囲まれた部分の寸法差(ΔCD)の絶対値は他の4点より大きな値となっており、周囲より特異的に細く、欠陥として検出されるべきであることが分かる。
【0079】
一方、
図8において、1点破線で囲んだ部分の周囲は、
図6から分かるように、寸法差がマイナスとなっている領域である。したがって、
図8において、この部分は寸法差が大きなマイナスの値を示しているが、これは、この領域における線幅分布の傾向が加味された結果であると言える。そこで、
図9を見ると、1点破線で囲んだ部分の寸法差(ΔCD)はマイナスの値ではあるものの、その値は許容範囲内と言えるものであり、欠陥として検出されるべきではないことが分かる。
【0080】
実施の形態1によれば、
図8のダイAとダイBの比較により、1点破線で囲んだ部分を欠陥として検出しても、他のダイとの比較による再検査を行うことで、最終的にはこれをマスク検査結果から排除することができる。しかし、ダイAとダイBによる比較では、破線で囲んだ部分が欠陥として検出されないため、本来検出されるべき欠陥であるにも関わらず見逃してしまうおそれがある。
【0081】
そこで、本実施の形態では、通常のダイ−トゥ−ダイ比較を行った後、ΔCDマップを用いて各ダイと最もΔCD値の分布が近いダイを抽出し、次いで、各ダイについて抽出したダイと再度ダイ−トゥ−ダイ比較を行う。
【0082】
図10は、本実施の形態の検査方法の要部を示すフローチャートである。尚、この検査方法は、
図1の検査装置100を用いて実施可能であるので、
図1および
図2も参照しながら説明する。
【0083】
光学画像取得工程で取得されたマスク101のマスク採取データ204は、センサ回路106から比較回路108へ送られる。比較回路108は、第1の比較部と第2の比較部とを有している。本実施の形態では、まず、第1の比較部において、マスク採取データ204同士が、ダイ−トゥ−ダイ方式によって比較される。
【0084】
また、マスク採取データ204からマスク101のΔCDマップが作成される。例えば、マスク101の光学画像を取得するのと並行して、寸法測定回路125において、マスク101のパターンの寸法測定が行われる。但し、これに限られるものではなく、例えば、比較回路108で検査を行うのと並行して、寸法測定回路125でパターンの寸法測定を行ってもよい。寸法測定回路125で得られたΔCD値は、寸法分布取得部としてのマップ作成回路126へ送られる。マップ作成回路126では、送られたΔCD値を基に、例えば、マスク101の面内におけるパターン線幅の寸法差マップ(ΔCDマップ)が作成される。作成されたΔCDマップは、磁気ディスク装置109に保存される。
【0085】
尚、本実施の形態では、必ずしも検査装置100がマップ作成回路126を有している必要はなく、寸法測定回路125がマップ作成機能を有していてもよく、あるいは、外部の計算機などによってマップを作成してもよい。
【0086】
次に、
図10に示すように、最初に検査が行われたダイとΔCD値の分布が最も近いダイを、ΔCDマップを用いて抽出する(S201)。この処理は、
図1の制御計算機110で行われる。例えば、制御計算機110は、マップ作成回路126から出力されたΔCDマップを用いて最もΔCD値の分布が近いダイを抽出して第2の比較部へ出力する。尚、最もΔCD値の分布が近いダイが複数ある場合には、XYθテーブル102の移動の容易性を考慮し、X軸方向およびY軸方向の少なくとも一方について、最初に検査が行われたダイと同じ方向に位置するダイが優先して抽出されることが好ましい。例えば、ダイAとX座標またはY座標が同じダイが優先して抽出される。
【0087】
本実施の形態では、マップを作成せずに、寸法測定回路125で得られたΔCD値から、第1の比較部で検査が行われたダイと最も近いΔCD値の分布を有するダイを抽出することも可能である。
【0088】
次に、最初に欠陥が検出されたダイの光学画像(α)と、S201で抽出されたダイの光学画像(β)とを、比較回路108の第2の比較部でダイ−トゥ−ダイ比較する(S202)。比較の結果、欠陥が検出されれば、S203に進んでマスク検査結果に保存する。例えば、制御計算機110によって、欠陥の座標、欠陥判定の根拠となった光学画像などが、マスク検査結果として磁気ディスク装置109に保存される。
【0089】
その後、
図2に示すように、マスク検査結果205はレビュー装置500に送られる。レビューは、オペレータによって、検出された欠陥が実用上問題となるものであるかどうかを判断する動作である。オペレータは、例えば、欠陥判定の根拠となった基準画像と、欠陥が含まれる光学画像とを見比べて、修正の必要な欠陥であるか否かを判断する。そして、レビュー工程を経て判別された欠陥情報も、
図1の磁気ディスク装置109に保存される。レビュー装置500で1つでも修正すべき欠陥が確認されると、マスク101は、欠陥情報リスト207とともに、検査装置100の外部装置である修正装置600に送られる。修正方法は、欠陥のタイプが凸系の欠陥か凹系の欠陥かによって異なるので、欠陥情報リスト207には、凹凸の区別を含む欠陥の種別と欠陥の座標が添付される。
【0090】
一方、S202での比較の結果、欠陥が検出されなかった場合には、制御計算機110は、第1の比較部で検出された欠陥は欠陥でないと判断してマスク検査結果に保存しない(S204)。但し、制御計算機110は、第1の比較部の結果を適当な名称で保存し、検査装置100を使用するユーザの要求に応じて適宜読み出し可能なようにすることもできる。
【0091】
次に、2番目に欠陥が検出されたダイについても同様の工程を繰り返す。制御計算機110は、m番目に欠陥が検出されたダイに対し、再検査により欠陥リストへの登録の是非を判定した後は、m=nであるか否かを判定することによって、このダイがn番目、すなわち、最後に欠陥が検出されたダイであるか否かを判定する。m=nであれば、全ての欠陥についてΔCD値の近いダイとの比較を行ったとして一連の工程を終了する。
【0092】
尚、
図10の工程にしたがって欠陥を再検査する順序は、欠陥が検出された順序に限られない。例えば、最後に検出された欠陥から始まって、最初に検出された欠陥を最後に再検査することとしてもよく、また、XYθテーブルの移動の効率性を考えて順番を決めてもよい。
【0093】
本実施の形態によれば、全てのダイについて、各ダイと類似したΔCD値の分布を有するダイを抽出し、次いで、類似したΔCD値の分布を有するダイ同士で再検査をする。これにより、寸法分布の差による影響が最小限となった状態での比較が可能となるので、検出する必要のない欠陥をマスク検査結果から除くことができる。したがって、オペレータがレビューする欠陥数を低減し、検査時間を短縮することができる。また、欠陥情報リストに挙がる欠陥数を低減して、マスクの製造歩留まりを向上させることができる。さらに、全てのダイについて、寸法分布の差の影響を最小限にした状態で再検査をすることで、本来検出されるべき欠陥が見逃されるのを防ぐことができる。
【0094】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0095】
例えば、上記各実施の形態において、マップ作成回路126で作成されたマップは、ウェハなどにマスク101のパターンを転写する際に利用することができる。例えば、マスク101のパターンをウェハへ転写する露光装置が、照射エネルギー量(ドーズ量)をマップとして入力可能なものであれば、マップ作成回路126で作成されたマップを露光装置に入力して、これを照射エネルギー量のマップに換算することで、ウェハに均一な線幅を転写することが可能となる。例えば、マスク101で寸法差がマイナス、すなわち、線幅が細くなっている箇所では、ウェハ上に転写されるパターンが太くなるように照射エネルギー量を調整する。一方、マスク101で寸法差がプラス、すなわち、線幅が太くなっている箇所では、ウェハ上に転写されるパターンが細くなるように照射エネルギー量を調整する。このようにすることで、パターンに寸法分布を有するマスクであっても、ウェハ上に転写されたパターンの線幅が均一となるようにすることができる。
【0096】
また、上記各実施の形態では、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要としない部分についての記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができることは言うまでもない。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更し得る全ての検査方法または検査装置は、本発明の範囲に包含される。
以下、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
繰り返しパターンを有する複数のダイが設けられた試料の光学画像を取得する工程と、
前記繰り返しパターンの光学画像同士をダイ−トゥ−ダイ方式で比較して、欠陥のある光学画像を検出する工程と、
前記繰り返しパターンの光学画像と、該繰り返しパターンとダイ−トゥ−ダイ方式によって比較された光学画像の繰り返しパターンとの寸法差および寸法比率の少なくとも一方を求める工程と、
前記欠陥が検出された光学画像を有するダイと最も欠陥位置の寸法差または寸法比率が近いダイを抽出する工程と、
前記欠陥が検出された光学画像と、該光学画像を有するダイと最も欠陥位置の寸法差または寸法比率が近いダイの光学画像とを、ダイ−トゥ−ダイ方式によって比較し、前記欠陥が検出された光学画像から再度欠陥が検出された場合には該欠陥に関する情報を保存し、前記欠陥が検出された光学画像から欠陥が検出されない場合には、該光学画像には欠陥がないとする工程とを有することを特徴とする検査方法。
[C2]
前記試料の光学画像を取得する工程では、前記試料をX軸方向またはY軸方向に沿って短冊状に複数のストライプで仮想分割するとともに、前記試料をX軸方向とY軸方向に移動可能なXYテーブルの上に載置し、前記ストライプが連続的に走査されるように前記XYテーブルを移動させ、
前記欠陥が検出された光学画像を有するダイと最も欠陥位置の寸法差または寸法比率が近いダイを抽出する工程では、前記欠陥が検出された光学画像を有するダイのX軸方向およびY軸方向の少なくとも一方と同じ方向に位置するダイが優先して抽出されることを特徴とする[C1]に記載の検査方法。
[C3]
前記寸法差および前記寸法比率の少なくとも一方から、前記繰り返しパターンの寸法分布を求める工程を有し、
前記寸法分布を用いて、前記最も欠陥位置の寸法差または寸法比率が近いダイを抽出することを特徴とする[C1]または[C2]に記載の検査方法。
[C4]
繰り返しパターンを有する複数のダイが設けられた試料の光学画像を取得する工程と、
前記繰り返しパターンの光学画像同士をダイ−トゥ−ダイ方式で比較する工程と、
前記繰り返しパターンの光学画像と、該繰り返しパターンとダイ−トゥ−ダイ方式によって比較された光学画像の繰り返しパターンとの寸法差および寸法比率の少なくとも一方を求める工程と、
前記複数のダイのそれぞれについて、最も寸法差または寸法比率の分布が近いダイを抽出する工程と、
前記複数のダイの各光学画像を、最も寸法差または寸法比率の分布が近いダイの各光学画像とダイ−トゥ−ダイ方式によって比較し、欠陥が検出された場合には該欠陥に関する情報を保存し、欠陥が検出されない場合には欠陥はないとする工程とを有することを特徴とする検査方法。
[C5]
前記試料の光学画像を取得する工程では、前記試料をX軸方向またはY軸方向に沿って短冊状に複数のストライプで仮想分割するとともに、前記試料をX軸方向とY軸方向に移動可能なXYテーブルの上に載置し、前記ストライプが連続的に走査されるように前記XYテーブルを移動させ、
前記最も寸法差または寸法比率の分布が近いダイを抽出する工程では、X軸方向およびY軸方向の少なくとも一方について、前記複数のダイのそれぞれと同じ方向に位置するダイが優先して抽出されることを特徴とする[C4]に記載の検査方法。
[C6]
前記寸法差および前記寸法比率の少なくとも一方から、前記繰り返しパターンの寸法分布を求める工程を有し、
前記寸法分布を用いて、前記最も寸法差または寸法比率の分布が近いダイを抽出することを特徴とする[C4]または[C5]に記載の検査方法。
[C7]
前記寸法差は、前記繰り返しパターンの線幅の差、または、前記繰り返しパターンの線間距離の差であることを特徴とする[C1]〜[C6]のいずれか1項に記載の検査方法。
[C8]
前記寸法比率は、前記繰り返しパターンの線幅の比率、または、前記繰り返しパターンの線間距離の比率であることを特徴とする[C1]〜[C6]のいずれか1項に記載の検査方法。
[C9]
試料の光学画像を取得する光学画像取得部と、
前記光学画像取得部から出力された光学画像同士をダイ−トゥ−ダイ方式によって比較して欠陥のある光学画像を検出する第1の比較部と、
前記光学画像のパターンと、該光学画像とダイ−トゥ−ダイ方式によって比較された光学画像のパターンとの寸法差および寸法比率の少なくとも一方を求める寸法差/寸法比率取得部と、
前記第1の比較部で欠陥が検出された光学画像と、該光学画像を有するダイと最も欠陥位置の寸法差または寸法比率が近いダイの光学画像とを、ダイ−トゥ−ダイ方式によって比較する第2の比較部と、
前記第2の比較部での比較により、前記第1の比較部で欠陥が検出された光学画像から再度欠陥が検出された場合には該欠陥に関する情報を保存し、前記第1の比較部で欠陥が検出された光学画像から欠陥が検出されない場合には、該光学画像には欠陥がないとする制御部とを有することを特徴とする検査装置。
[C10]
前記寸法差/寸法比率取得部から出力された、前記寸法差および前記寸法比率の少なくとも一方から、前記パターンの寸法分布を求める寸法分布取得部を有し、
前記制御部は、前記寸法分布取得部から出力された前記寸法分布を用いて、前記最も欠陥位置の寸法差または寸法比率が近いダイを抽出し、前記第2の比較部に出力することを特徴とする[C9]に記載の検査装置。
[C11]
試料の光学画像を取得する光学画像取得部と、
前記光学画像取得部から出力された光学画像同士をダイ−トゥ−ダイ方式によって比較する第1の比較部と、
前記光学画像のパターンと、該光学画像とダイ−トゥ−ダイ方式によって比較された光学画像のパターンとの寸法差および寸法比率の少なくとも一方を求める寸法差/寸法比率取得部と、
前記光学画像と、該光学画像を有するダイと最も寸法差または寸法比率の分布が近いダイの光学画像とを、ダイ−トゥ−ダイ方式によって比較する第2の比較部と、
前記第2の比較部での比較により、欠陥が検出された場合には該欠陥に関する情報を保存し、欠陥が検出されない場合には欠陥はないとする制御部とを有することを特徴とする検査装置。
[C12]
前記寸法差/寸法比率取得部から出力された、前記寸法差および前記寸法比率の少なくとも一方から、前記パターンの寸法分布を求める寸法分布取得部を有し、
前記制御部は、前記寸法分布取得部から出力された前記寸法分布を用いて、前記最も寸法差または寸法比率の分布が近いダイを抽出し、前記第2の比較部に出力することを特徴とする[C11]に記載の検査装置。