(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6171190
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】電圧変換トランス
(51)【国際特許分類】
H01F 30/04 20060101AFI20170724BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
H01F30/04
H01F30/10 C
H01F30/10 A
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-257355(P2012-257355)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-107328(P2014-107328A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(74)【代理人】
【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
(72)【発明者】
【氏名】菊地 義行
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 文洋
(72)【発明者】
【氏名】若林 敬浩
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 悟司
(72)【発明者】
【氏名】船渡 寛人
【審査官】
井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−141624(JP,A)
【文献】
特開2011−222327(JP,A)
【文献】
特開昭61−278114(JP,A)
【文献】
特開平08−107028(JP,A)
【文献】
特開2005−086052(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0283571(US,A1)
【文献】
特表2012−526514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/04
H01F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に配置した一次側レグと、
該一次側レグを周回する一次側コイルと、
該一次側コイルの半径方向外側で、かつ前記一次側レグの周囲に分割配置されたn個の二次側レグと、
該n個の二次側レグのうちのm個の前記二次側レグに、各レグで発生する電流が同じ方向になるようにして、それぞれが異なる組み合わせで、かつ同じ巻き数で選択的に巻き付けられたp本の二次側コイルと、
を備え、
mが2以上でnより小さい数であり、
かつ、mとnは互いに素の関係にある数であり、
pは、nと同じであり、
前記一次側レグおよび前記二次側レグは、ポット・コアの一部であり、
前記二次側レグは、厚み方向に複数のスリットでn個に分割された筒状であり、
前記一次側コイルと前記二次側コイルは、同軸に配置され、
前記一次コイルの正極側線と負極側線は、前記二次側レグの一つのスリットから導出され、
p本の前記二次側コイルの正極側線と負極側線は、それぞれ異なる組み合わせの2っのスリットから導出された、
ことを特徴とする電圧変換トランス。
【請求項2】
中央に配置した1個または複数の一次側レグと、
該一次側レグの周りに配置された一次側コイルと、
該一次側コイルの半径方向外側で、かつ前記一次側レグの周囲に分割配置されたn個の二次側レグと、
該n個の二次側レグのうちのm個の前記二次側レグに、各レグで発生する電流が同じ方向になるようにして、それぞれが異なる組み合わせで、かつ同じ巻き数で選択的に巻き付けられたp本の二次側コイルと、
を備え、
mが2以上でnより小さい数であり、
かつ、mとnは互いに素の関係にある数であり、
pは、nと同じであり、
前記一次側レグおよび前記二次側レグは、n個のトロイダル・コアの一部であり、
前記一次側コイルと前記二次側コイルは、同軸に配置され、
前記一次側コイルは、n個の環状コアを貫通し、
p本の前記二次側コイルは、n個の環状コアのうち異なる組み合わせのm個の環状コアを貫通する、
ことを特徴とする電圧変換トランス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電圧変換トランスにおいて、
前記p本の二次側コイルは、該一端がグランドに接続されて電流方向がグランドを基準にして同じ方向になるように前記二次側レグに巻き付けられており、
他端が整流回路を介して合流させられている、
ことを特徴とする電圧変換トランス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次側コイルと複数の二次側コイルを備えた電圧変換トランスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の電圧変換トランスとしては、特許文献1に記載のものが知られている。
特許文献1には、電圧変換トランスを備えたLED駆動装置が記載されており、この従来の装置は、一次コイルおよび複数の二次コイルを有するトランスと、複数の二次コイルから交番電力を出力する電力供給手段と、を備えている。
複数の二次コイルのうちの第1の二次コイルには、電流バランス部および第1の整流平滑部が直列接続され、第1の整流平滑部から第1のLED負荷へ電力が供給される。一方、複数の二次コイルのうちの第2の二次コイルには、第2の整流平滑回路が接続され、第2の整流平滑回路から第2のLED負荷へ電力が供給される。
複数の二次コイルの第2の二次コイルの両端には、直流負荷が設けられ、第1および第2のコイルは電磁的に結合される。
電力制御部が、直流負荷に供給される電力に基づき、交番電力を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−222327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の電圧変換トランスは、以下に説明するような問題がある。
すなわち、上記従来の電圧変換トランスにあっては、電圧変換トランスに加えて電流バランス部が必要となる。この電流バランス部は、電圧変換トランスの二次コイルの第1のコイルから交流電流が供給される一次側コイルと、インピーダンスが異なる各LED負荷に流れる電流をバランスさせるため複数のLED負荷に対応させた複数の二次側コイルと、を備え、上記複数の二次側コイルを電磁結合させたものである。
このため、上記従来の装置では、電流バランス用のトランスが必要な分、コスト高、およびスペース増大を免れないといった問題が発生する。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、電流バランス用のトランスを用いることなく、複数の二次側コイルの出力電流をバランスさせることができるようにした電圧変換トランスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のため、本発明による電圧変換トランスは、
中央に配置した一次側レグと、
該一次側レグ
を周回する一次側コイルと、
該一次側コイルの半径方向外側で、かつ前記一次側レグの周囲に分割配置されたn個の二次側レグと、
該n個の二次側レグのうちのm個の前記二次側レグに、各レグで発生する電流が同じ方向になるようにして、それぞれが異なる組み合わせで、かつ同じ巻き数で選択的に巻き付けられたp本の二次側コイルと、
を備え、
mが2以上でnより小さい数であり、
かつ、mとnは互いに素の関係にある数であり、
pは、nと同じであ
り、
前記一次側レグおよび前記二次側レグは、ポット・コアの一部であり、
前記二次側レグは、厚み方向に複数のスリットでn個に分割された筒状であり、
前記一次側コイルと前記二次側コイルは、同軸に配置され、
前記一次コイルの正極側線と負極側線は、前記二次側レグの一つのスリットから導出され、
p本の前記二次側コイルの正極側線と負極側線は、それぞれ異なる組み合わせの2っのスリットから導出される、
ことを特徴とする。
【0007】
また、
この目的のため、発明の電圧トランスは、
中央に配置した1個または複数の一次側レグと、
該一次側レグの周りに配置された一次側コイルと、
該一次側コイルの半径方向外側で、かつ前記一次側レグの周囲に分割配置されたn個の二次側レグと、
該n個の二次側レグのうちのm個の前記二次側レグに、各レグで発生する電流が同じ方向になるようにして、それぞれが異なる組み合わせで、かつ同じ巻き数で選択的に巻き付けられたp本の二次側コイルと、
を備え、
mが2以上でnより小さい数であり、
かつ、mとnは互いに素の関係にある数であり、
pは、nと同じであり、
前記一次側レグおよび前記二次側レグは、n個のトロイダル・コアの一部であり、
前記一次側コイルと前記二次側コイルは、同軸に配置され、
前記一次側コイルは、n個の環状コアを貫通し、
p本の前記二次側コイルは、n個の環状コアのうち異なる組み合わせのm個の環状コアを貫通する、
ことを特徴とする。
【0008】
また、好ましくは、発明の電圧変換トランスは、
p本の二次側コイルが、この一端がグランドに接続されて電流方向がグランドを基準にして同じ方向になるように巻き付けられており、
p本の二次側コイルの他端が整流回路を介して合流させられている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電圧変換トランスにあっては、n個の二次側レグのうちのm個の二次側レグを、各レグで発生する電流が同じ方向になるようにして、それぞれが異なる組み合わせで選択的にp本の二次側コイルで巻き付け、n、m、pの関係を上記のように設定したので、電流バランス用トランスを用いることなく、電圧変換トランスに設けられた二次側の複数のコイルの電流を確実にバランスさせることができ、電流バランス用トランスが不要となる分、コストやスペースの低減をはかることができる。
また、一次側レグおよび二次側レグがポット・コアの一部であって、かつ二次側レグが円筒状であってこの半径方向に伸びる複数のスリットでn個に分割されているので、漏れ磁束が少なくなり、電圧変換効率を良くすることができる。
【0011】
前記一次側レグおよび前記二次側レグは、n個のトロイダル・コアの一部であり、前記一次側コイルと前記二次側コイルは、同軸に配置され、前記一次側コイルは、n個の環状コアを貫通し、p本の前記二次側コイルは、n個の環状コアのうち異なる組み合わせのm個の環状コアを貫通するようにしたので、電流バランス用トランスを用いることなく、電圧変換トランスに設けられた二次側の複数のコイルの電流を確実にバランスさせることができ、電流バランス用トランスが不要となる分、コストやスペースの低減をはかることができ、一次側レグおよび二次側レグが、n個のトロイダル・コアの一部であるので、構造が簡単になり、コスト・アップを抑制することができる。
【0012】
また、p本の二次側コイルの一端がグランドに接続され、電流方向がグランドを基準にして同じ方向になるように巻き付けられ、p本の二次側コイルの他端が整流回路を介して合流されるので、電力損失を抑制しながら、二次側コイルから出力される電流を整流することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の電圧変換トランスにおいて電流がバランスする理由を説明する図である。
【
図2】本発明の電圧変換トランスにおいて電流がバランスするための構成にあたって電流がバランスしない第1の例外の場合を説明する図である。
【
図3】本発明の電圧変換トランスにおいて電流がバランスするための構成にあたって電流がバランスしない第2の例外の場合を説明する図である。
【
図4】本発明の実施例1に係る電圧変換トランスとその周辺の回路図である。
【
図5】実施例1の電圧変換トランスを模式的に示した平面図である。
【
図6】実施例1の電圧変換トランスの分解斜視図である。
【
図7】実施例1の電圧変換トランスの高さごとの断面斜視図である。
【
図8】実施例1の電圧変換トランスの高さごとの断面側面図である。
【
図9】実施例1の効果を説明するため比較する従来技術のシミュレーション用回路図である。
【
図10】
図9の従来技術でのシミュレーション結果を示す図である。
【
図11】実施例1に相当するシミュレーション用回路でのシミュレーション結果を示す図である。
【
図12】本発明の実施例2に係る電圧変換トランスとその周辺の回路図である。
【
図13】実施例2に相当するシミュレーション用回路でのシミュレーション結果を示す図である。
【
図14】本発明の実施例3に係る電圧変換トランスを示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は斜視図である。
【
図15】本発明の実施例4に係る電圧変換トランスとその周辺の回路図、およびその電圧変換トランスを模式的に示した平面図である。
【
図16】本発明の実施例5に係る電圧変換トランスとその周辺の回路図、およびその電圧変換トランスを模式的に示した平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の電圧変換トランスでは、二次側レグが一次側レグの周囲に分割配置されたn個で構成され、これらのn個の二次側レグのうちのm個の二次側レグに、それぞれが異なる組み合わせで、かつ同じ巻き数でp本の二次側コイルが選択的に、各レグで発生する電流が同じ方向になるようにして、巻き付けられるように構成される。
この結果、二次側コイルが、m/nの磁束が通るように二次側レグに配置される。
ただし、上記m、n、pはいずれも自然数であって、mは、2以上で、かつnより小さくなる自然数であって、mとnとは互いに素になるように設定される。また、pとnは同じ数に設定される。
【0016】
ここで、本発明では、従来技術のように電流バランス・トランスを用いなくても二次側の電流をバランスすることができる理由について以下に説明する。
図1(a)に示すように、1個のリング状のコアC0の一方側のレグに巻数Naの一次側コイルLaが巻付き、その他方のレグに巻き数Nbの二次側コイルLbが巻きつけられて、一次側コイルLaに電流Iaが流れ、二次側コイルLbに電流Ibが流れる(電流の流方向はIaとIbとは逆方向)場合、次式の関係が成立する。
Na×Ia=Nb×Ib
すなわち、コイルLa、Lbでそれぞれ発生した磁束EaとEbが互いに打ち消し合ってコアC0の内部での磁束が0となるように、各コイルLa、Lbには電流Ia、Ibがそれぞれ流れることになる。
上記は、一次側あるいは二次側コイルがそれぞれ1本の場合であるが、複数のコイルの場合であっても、コア内部の磁束が0となるように各コイルには電流が流れることになる。
【0017】
次に、
図1(b)に示すように、3個のコア、すなわち第1コアC1、第2コアC2、第3コアC3を並べ、これらコアの一方側のレグに1本の一次側コイルL0を、また他方側のレグに3本の二次側コイルL1、L2、L3をそれぞれ以下のように巻き付けた場合を考える。
すなわち、一次側コイルL0は、1本であり、第1コアC1〜第3コイルC3の一方側の各レグにこれらの順にそれぞれ巻き数N1で巻き付けられる。
他方、二次側コイルでは、第1二次コイルL1が第1コアC1および第3コアC3の他方側の各レグにそれぞれ1巻き分、巻き付けられ、第2二次側コイルL2が第1コアC1および第2コアC2他方側の各レグにそれぞれ1巻き分、巻き付けられ、第3二次側コイルL3が第2コアC2および第3コアC3他方側の各レグにそれぞれ1巻き分、巻き付けられる。
なお、このとき、一次側コイルL0、第1二次側コイルL1、第2二次側コイルL2、および第3二次側コイルL3を流れる電流は、それぞれI0、I1、I2、I3であるとする。なお、各電流が流れる方向は、同図中に矢印で示してある。
【0018】
まず、第1コアC1については、N1×I0=I1+I2が、また第2コアC2については、N1×I0=I2+I3が、また第3コアC3についてはN1×I0=I3+I1がそれぞれ成り立つ。
これらの式から、I1=I2=I3=N1×I0×1/2が成り立つ。すなわち、各二次側コイルL1、L2、L3では、電流I1、I2、I3が同じ値となる。
なお、上記説明では、二次側コイルL1、L2、L3の巻き数を1としたが、それぞれの巻き数をN(自然数で1より大きい数)としても、電流I1、I2、I3の値は1/N倍となって異なるが、それらの大きさは同じになることには変わりない。
【0019】
ここで、上記で説明したように、二次側の電流をバランスさせるには所定の条件が必要であり、一つ目の条件は、m、n、pはいずれも自然数であって、mが2以上で、かつnより小さくなる自然数であること、また二つ目の条件は、nとmが互いに約分できない、すなわち、互いに素の関係にあること、また三つ目の条件は、p=nであること、である。
これらの条件が必要な理由につき、以下に説明する。
【0020】
図2に示すように、(n=)4個の磁路の二次側レグCL1〜CL4のうち(m=)2個の二次側レグを、(p=)4本の二次側コイルL1〜L4で巻き付けた例を示す。すなわち、m(=2)とn(=4)とが約分関係(素ではない関係)にある例である。
一次側コイルL0の巻き数を(N1=)1、流れる電流をI0とし、また二次側コイルL1〜L4を流れる電流をI1〜I4とすると、
第1磁路二次側レグCL1においては、I1+I4=I0・・・(1)
また、第2磁路二次側レグCL2においては、I1+I2=I0・・・(2)
また、第3磁路二次側レグCL3においては、I2+I3=I0・・・(3)
また、第4磁路二次側レグCL4においては、I3+I4=I0・・・(4)
がそれぞれ成り立つ。
【0021】
この場合、減算式(1)−(2)、および減算式(3)−(4)から
I1=I4・・・(5)
また、減算式(2)−(3)、および減算式(4)−(1)から
I1=I3・・・(6)
がそれぞれ成り立つ。
一方、加算式(1)+(2)+(3)+(4)から
2×(I1+I2+I3+I4)=4×I0、すなわち
I1+I2+I3+I4=2×I0・・・(7)
が成り立つ。
【0022】
この場合、上記式(5)、(6)は成立する必要はあっても、I1=I2は成立しなくてもよい。すなわち、式(7)は、
(I1+I3)+(I2+I4)=2×I0・・・(8)
と書き直すことが可能であり、この式(8)に上記(5)、(6)の関係を代入すると、
I1+I2=I0・・・(9)
となり、I1とI2とが等しくなくても(9)すなわち(7)は成立することになる。
したがって、mとnが素の関係にない場合は、電流がバランスしない場合もあることになり、これらの場合を省く必要がある。
【0023】
次に、まずp=n(=3)であって電流がバランスする場合を
図3に示す。
同図に示すように、(n=)3個の磁路の2次側レグCL1〜CL3に(p=)3本の二次側コイルL1〜L3が巻き付けられ、一次側コイルL0、二次側コイルL1〜L3に流れる電流をI0、I1、I2、I3とすると、上記で説明したように、
第1磁路二次側レグCL1について、I1+I3=I0・・・(10)
また、第2磁路二次側レグCL2について、I1+I2=I0・・・(11)
また、第3磁路二次側レグCL3について、I2+I3=I0・・・(12)
がそれぞれ成立する。
したがって、減算式(10)−(11)から、I2=I3・・・(13)
また、減算式(11)−(12)から、I1=I3・・・(14)
また、減算式(12)−(10)から、I1=I2・・・(15)
がそれぞれ得られ、電流I1、I2、I3がバランスすることが分かる。
なお、加算式(10)+(11)+(12)から、
2×(I1+I2+I3)=3×I0・・・(16)
が成り立つ。したがって、I1=I2=I3=I0/2となる。
【0024】
一方、
図3において第3二次コイルL3を無くした場合、すなわちP=2であって、pとn(=3)が同じ数ではない場合には、上記式(10)〜(12)においてI3=0となる。
すなわち、第1磁路二次側レグCL1において、I1=I0・・・(17)
また、第2磁路二次側レグCL2において、I1+I2=I0・・・(18)
また、第3磁路二次側レグCL3において、I2=I0・・・(19)
となって、これらの式を満足する解が存在しないため、トランスや電流バランサとして動作しないことになる。
したがって、pとnとが互いに異なる場合も、省く必要がある。
【0025】
以上を踏まえて、以下、本発明の実施の形態を、図面に示す各実施例に基づき詳細に説明する。
各実施例の説明にあたっては、同様の構成部分については図示を省略し、または同一の符号を付けてその説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【実施例1】
【0026】
まず、実施例1の電圧変換トランスの全体構成を
図4に基づいて説明する。
実施例1では、二次側レグが3分割(すなわち、n=3)で、二次側コイルが3本(すなわちp=3)であって、二次側コイルのそれぞれのコイルが2つ(すなわちm=2)の二次側レグを通るように設定した例である。
実施例1の電圧変換トランス1は、電源2に接続されて、この高電圧電力を低電圧電力に降圧させる電力変換機能をもつDC−DCコンバータ用トランスである。
電圧変換トランス1は、一次側コイルL1がと2次側コイルL2とが磁気コアMC内に非接触で配置されている。
【0027】
一次側コイルL1は1本のコイルで構成され、二次側コイルL2は3本のコイルで構成される。
一次側コイルL1の連続する3区間にそれぞれ対応する第1〜第3コイル部分La、Lb、Lcに対して、二次側コイルL2では、3本の第1〜第3コイルLf、Lg、Lh(これらは正極側部分と負極側部分を有し、同図では、正極側部分については添え字1、負極側部分については添え字2を付けて表している)が以下のように対応配置させられる。
すなわち、一次側コイルL1の第1コイル部分Laに対しては、二次側コイルL2の第1コイルLfの正極側部分Lf1と第3コイルLhの負極側部分Lh2とが第1磁路一次側レグ3aおよび第1磁路二次側レグ4aを介して対応させられる。
また、一次側コイルL1の第2コイル部分Lbに対しては、二次側コイルL2の第1コイルLfの負極側部分Lf2と第2コイルLgの正極側部分Lg1とが第2磁路一次側レグ3bおよび第2磁路二次側レグ4bを介して対応させられる。
また、一次側コイルL1の第3コイル部分Lcに対しては、二次側コイルL2の第3コイルLhの正極側部分Lh1と第2コイルLgの負極側部分Lg2とが第3磁路一次側レグ3cおよび第3磁路二次側レグ4cを介して対応させられる。
二次側の第1コイルLf、第2コイルLg、第3コイル部分Lhの各負極側部分Lf2、Lg2、Lh2は、グランドに接地される。
【0028】
図4の上記各コイルの関係を上方から見たのが、
図5である。
同図において、一次側コイルL1は、実線で表されている。
また、二次側コイルL2の第1コイルLfは破線で、また第2コイルLgは一点鎖線で、また第3コイルLhは二点鎖線で、それぞれ表してある
なお、これらの図にあっては、見やすくするため、第1コイルLf、第2コイルLg、第3コイルLhは半径方向に互いにずらして描いてあるが、これらのコイルLf、Lg、Lhは、実際はこれらの中心軸方向に若干離れた状態で、一部同士が重なった位置にあって、かつ一次側コイルL1より半径方向外側にある。なお、ここでは第1〜第3コイルが一次側コイルL1の半径方向外側にある例を示しているが、第1〜第3コイルは、一次側コイルL1の半径方向外側にある必要はなく、一次側コイルと重なった位置にあっても良い。
【0029】
二次側コイルL2では、この第1コイルLfの正極側線は第1負荷7Aに接続し、第2コイルLgの正極側線は第2負荷7Bに接続し、第3コイルLhの正極側線は第3負荷7Cにそれぞれ接続される。
一方、第1コイルLf、第2コイルLg、第3コイルLhの各負極側線は、グランドに接地される。
【0030】
ここで、一次側コイルの巻き数については、図では簡略化のため1ターンになっているが、降圧したい電圧に応じて巻き数を変更する。一次側コイルの巻き数をtターンとし、一次側の電圧をV1とするとき、二次側に得られる電圧V2は、
V2=(1/t)×(m/n)×V1となる。
【0031】
上記のように構成される電圧変換トランス1の具体的構造について、
図6〜
図8に基づいて説明する。
図6は実施例1の電圧変換トランス1の分解斜視図、
図7は軸方向において異なる高さでみた斜視図である。
図7のうち、同図(a)は電圧変換トランス1の外観斜視図、同図(b)は二次側コイルL2の第3コイルLhの直上で切断してみた断面斜視図、同図(c)は二次側コイルL2の第2コイルLgの直上で切断してみた断面斜視図、同図(d)は二次側コイルL2の第1コイルLfの直上で切断してみた断面斜視図、同図(e)は一次側コイルL1の直上で切断してみた断面斜視図である。
なお、これらの図において、コイル間の軸方向隙間は見やすくするため実際より大きく描いてある。
【0032】
また、
図8は、同図(a)に示した電圧変換トランス1の側面図においてそれぞれ高さが異なるZ1-Z1線、Z2-Z2線、Z3-Z3線、Z4-Z4線で切断して下方をみた場合(上記
図7(b)〜(e)に相当)の断面図を、同図(b)、(c)、(d)、(e)にそれぞれ表している。
【0033】
磁気コアMCは、
図6〜
図8に示すように、本実施例では、たとえばMn-Znフェライトの焼結で形成したポット・コアであるが、これに限られず他の形状、材料、製法で製造してもよい。
磁気コアMCは、中央に配置された円柱状の一次側レグ3と、この周囲に一次側レグ3とは半径方向の隙間を有した状態で、その周方向に分割配置された二次側レグ4と、一次側レグ3と二次側レグ4とを連結する底ヨーク部分と、これと反対側の開口を塞ぐ蓋ヨーク部分5とから構成されている。
二次側レグ4は、半径方向に伸びる3個のスリット6で3分割された3個のレグ4a、4b、4cで構成されている。
【0034】
一次側コイルL1および二次側コイルL2は、いずれも銅板を打ち抜いてバス・バーとして形成してある。ただし、二次側コイルL2は3本の第1〜第3コイルLf〜Lhで構成しているため、それらは厚さを薄く形成してある。
一次側コイルL1は、一次側レグ3の周りに配置された円状部分と、この一部が切り欠かれた部分の両端に連続されてそれぞれ並行に引き出された直線状部分とを有している。円状部分は、この内周側面が一次側レグ3の外周面に沿うようにして配置されている。
なお、円状部分の1/3ずつに位置区分された3部分が上記第1コイル部分La、第2コイル部分Lb、第3コイル部分Lcにそれぞれ相当する。
【0035】
一方、二次側コイルL2の第1コイルLf〜第3コイルLhは、すべて、240°の円弧部分と、これらの両端部から外側方向に伸びる2本の直線状部分とを有する。なお、第1コイルLf〜第3コイルLhの各円弧部分は、一次側コイルL1の円状部分より半径が大きく設定されていて、それらの外周面が二次側レグ4の内周面に沿うように配置されている。
また、これらの直線状部分は、第1コイルLf〜第3コイルLhが、この順に互いに120°ずつ、
図6中、逆時計回りにずれるようにして二次側レグ4のスリット6に挿入され、これらのスリット6から外側へ突出させられる。
【0036】
上記のように構成した電圧変換トランス1の作用について説明する。
電源2からは、一次コイルL1の正極側線からスイッチング電流が印加され、円状部分である第1コイル部分La、第2コイル部分Lb、第3コイル部分Lc、負極側線へと流れていく。
その結果、これらのコイル部分La、Lb、Lc発生した磁界は、一次側レグ3内に入って磁束を発生させる。このとき、一次側レグ3に連続された二次側レグ4にも磁束が発生する。この磁気エネルギは、二次コイルL2で電気エネルギに変換されて電流として取り出される。
【0037】
すなわち、
図4〜
図8に示すように、一次側コイルL1と二次側コイルL2との間では、第1コイル部分Laおよび第1コイルLfの正極側部分Lf1と、第1コイル部分Laおよび第3コイルLhの負極側部分Lh2とが、それぞれ一次側レグ3と二次側レグ4の第1磁路二次側レグ4aを介して低電圧に変換する。
また、第2コイル部分Lbおよび第1コイルLfの負極側部分Lf2と、第2コイル部分Lbおよび第2コイルLgの正極側部分Lg1とが、それぞれ一次側レグ3と二次側レグ4の第2磁路二次側レグ4bを介して低電圧に変換する。
また、第3コイル部分Lcおよび第3コイルLhの正極側部分Lh1と、第3コイルLcおよび第2コイルLgの負極側部分Lg2とが、それぞれ一次側レグ3と二次側レグ4の第3磁路二次側レグ4cを介して低電圧に変換する。
これらの発生電流は、第1コイルLf、第2コイルLg、第3コイルLhに同時に発生する。
このようにして第1コイルLf、第2コイルLg、第3コイルLhで発生した二次側電流は、それぞれ第1〜第3負荷7A〜7Cに供給される。
【0038】
次に、上記実施例1の電圧変換トランス1の効果を確かめるためシミュレーションを行った。
このシミュレーションでは、上記構成の電圧変換トランス1の二次側の負荷(抵抗を用いる)をわざとアンバランスにして測定した。なお、その場合、効果を確認するため、
図9に示す従来の電圧変換トランスのシミュレーション用回路を用いて比較検討した。
図9に示すように、従来の電圧変換トランスは、1次側の磁気回路を構成する1次側レグ3と、2次側の磁気回路を構成する2次側レグ4とを有しており、1次側レグ3には1本の一次側コイルL1が、また2次側レグ4には(p=)3本に分割配置された二次側コイルL2、すなわち第1コイルLf、第2コイルLg、第3コイルLhが巻かれている。
【0039】
この従来技術のシミュレーション用回路では、二次コイル側に接続した抵抗を意図的にアンバランスにしている。すなわち、二次側コイルL2の第1コイルLfの正極側部分に接続した抵抗R1および第3コイルLhの正極側部分に接続した抵抗R3をいずれも3Ωとし、第2コイルLgの正極側部分に接続した抵抗R2を1Ωに設定した。
その結果、二次側コイルL2のそれぞれの配線には同様の電圧が生じるが、負荷(抵抗R1〜R3)にばらつきがある場合、配線間の電流にばらつきが生じることが示された。
【0040】
そのシミュレーション結果を
図10に示す。
同図(a)、(b)にはいずれも横軸に時間が、また縦軸に電流の大きさがとってあり、同図(a)には、各抵抗R1〜R3を流れる電流I(R1)、I(R2)、I(R3)の大きさを重ねて示し、同図(b)には、抵抗R1〜R3ごとの電流I(R1)、I(R2)、I(R3)の大きさ(ただし、同図(b)では、R2はR1、R3のスケールを異ならせて描いてある)をそれぞれ分離して示してある。
これらの図から分かるように、第1抵抗R1と第3抵抗R3を流れる電流は同じ大きさで重なるが、第2抵抗R2を流れる電流はそれらより大きく約3倍になっていて、これらの電流間にはアンバランスが生じていることが分かる。なお、これらの電流はすべて同じ周期、位相で生じている。
【0041】
一方、実施例1のシミュレーション回路にあっては、
図4の回路で、従来技術の場合と同様に、第1負荷7Aに第1抵抗R1(=3Ω)、第2負荷7Bに第2抵抗R2(=1Ω)、第3負荷7Cに第3抵抗R3(=3Ω)を用いたシミュレーション回路を用いる。
この場合のシミュレーション結果を
図11に示す。
実施例1の場合にも、同図(a)、(b)には、いずれも横軸に時間が、また縦軸に電流の大きさがとってあり、同図(a)には、各抵抗R1〜R3を流れる電流の大きさを重ねて示し、同図(b)には、抵抗R1〜R3ごとの電流の大きさ(ただし、同図(b)では、
図10の場合とは異なり、同じスケールである)を示してある。
これらの図から分かるように、第1抵抗R1〜第3抵抗R3を流れる電流I(R1)、I(R2)、I(R3)は、抵抗の大きさが異なっていてもすべて同じ値となる。すなわち、電流がバランスされている。なお、これら電流はすべて同じ周期、位相で生じている。
【0042】
以上、説明したように、実施例1の電圧変換トランスは、以下の効果を有する。
すなわち、中央に配置した1個の一次側レグ3と、このレグ3の周りに配置された一次側コイルL1と、このコイルL1の半径方向外側で、かつ一次側レグ3の周囲に分割配置された板状の3個の二次側レグ4a、4b、4cと、これらの3個の二次側レグ4a、4b、4cのうちの2個の二次側レグを、それぞれが、mが2以上のnより小さい数であり、かつ、mとnは互いに素の関係にある数であり、かつ、上記pと上記nとが同じ数である条件を満たす、異なる組み合わせで選択的に巻き付けられた3本の二次側コイルと、を備えるようにしたので、従来技術のように電流バランス用のトランスを用いなくても、電流をバランスさせることができ、その分、コストやスペースを低減することができるようになる。
【0043】
また、二次側コイルL2の厚さをバス・バーとして薄くしているので、表皮効果による電力損失を抑えることができる。
また、コアをポット・コアとしたので、焼結等で簡単かつ安価にコアを製造できるようになる。
また、二次側コイルの接続方法として、グランド側も合流させずに、フルブリッジ整流回路を用いて整流し負荷に供給するようにしても良いし、各巻線で絶縁された個別の負荷を接続するようにしてもよい。
【実施例2】
【0044】
次に、本発明の実施例2の電圧変換トランスについて、図面とともに説明する。
実施例2の電圧変換トランスは、
図12に示すように、実施例1の二次側コイルL2の第1コイルLfの正極側部分Lf1に第1ダイオードD1のアノードを、またその第2コイルLgの正極側部分Lg1に第2ダイオードD2のアノードを、またその第3コイルLhの正極側部分Lh1に第3ダイオードD3のアノードをそれぞれ接続し、第1ダイオードD1、第2ダイオードD2、第3ダイオードD3の各カソードを結合して二次側の電流を取り出すようにする。
また、第1コイルLf、第2コイルLg、第3コイルLhの各負極側部分Lf2、Lg2、Lh2は、グランドに接地される。
なお、第1〜第3整流ダイオードD1、D2、D3は、本発明の整流回路に相当する。
【0045】
上記結線にあっては、上記の第1コイルLf〜第3コイルLhの引き出し線は、同一の時間において正極側線を通る電流が、全て同一方向に流れるように結線される。すなわち、第1コイルLfの正極側部分Lf1、第2コイルLgの正極側部分Lg1、第3コイルLhの正極側部分Lh1の電流が同一方向に流れるということは、各整流ダイオードD1、D2、D3を通り、各ダイオードのカソード部分が結線される箇所において、同一の時間に電流の流れ込む方向が同じ極性を持つということである(図の矢印の方向)。同様に、負極側の引き出し線についても、同一時間において、全て同一方向に電流が流れるように結線される。
他の構成は、実施例1の場合と同じである。
【0046】
実施例2にあっては、第1コイルLf〜第3コイルLhの正極側部分Lf1、Lg1、Lh1から出力される電流は、実施例1の場合と同じだが、これらの電流は第1ダイオードD1〜第3ダイオードD3でそれぞれ整流されるので、正の電流値のみが出力されることになる。
【0047】
実施例2においては、実施例1のシミュレーション回路において第1コイルLfの正極側部分Lf1と第1抵抗R1(=3Ω)との間に第1ダイオードD1を、また第2コイルLgの正極側部分Lg1と第2抵抗R2(=1Ω)との間に第2ダイオードD2を、また第3コイルLhの正極側部分Lh1と第3抵抗R3(=3Ω)との間に第3ダイオードD3を挿入して、実施例1の場合と同様に抵抗にアンバランスを持たせてシミュレーションを行った。
【0048】
図13に、実施例2に相当する上記シミュレーション用回路を用いたシミュレーション結果を示す。
実施例2の場合にも、同図(a)、(b)には、いずれも横軸に時間が、また縦軸に電流の大きさがとってあり、同図(a)には、各整流ダイオードD11〜D3からの出力電流I(D1)、I(D2)、I(D3)の大きさを重ねて示し、同図(b)には、整流ダイオードD11〜D3ごとの電流の大きさを示してある。
これらの図から分かるように、第1整流ダイオードD1〜第3整流ダイオードD3を流れ出る電流I(D1)、I(D2)、I(D3)は、抵抗R1、R2、R3の大きさが異なっていてもすべて同じ大きさの正の値となる。すなわち、電流がバランスされる。また、これら電流はすべて同じ周期、位相で生じている。
【0049】
実施例2の電圧変換トランスは、実施例1の場合と同様の効果を得ることができ、また整流回路を有しているので、正の値の出力電流のみを取り出すことが可能である。
また、上記の説明のように二次側の電流がバランスする結果、電流ばらつきに対応するための整流ダイオードのマージンも大きくとる必要もなくなり、その分、コスト・アップも抑えることが可能となる。
【実施例3】
【0050】
次に、本発明の実施例3の電圧変換トランスについて、図面とともに説明する。
実施例3では、
図14に示すように、実施例1のコアに代えて、3つのリング状のトロイダル・コアを用いて、そのレグを実施例1と同様に配線を構成する。
なお、同図(a)は実施例3の電圧変換トランスの平面図、同図(b)はその正面図、同図(c)はその斜視図である。
【0051】
すなわち、3個のトロイダル・コア8A、8B、8Cをコイルで構成する円周上に配置し、それらの中心側部分が一次側レグ、半径外側方向部分が二次側レグとして構成される。
一次側コイルおよび二次側コイルは、円状に配置されて各トロイダル・コアの内部を貫通するようにされる。
半径外側方向部分の3個の二次側レグのうち2個ずつが、3本の二次側コイルLf、Lg、Lhによりそれぞれ実施例1の場合と同様の関係でそれぞれ選択的に巻かれる。
他の構成は、実施例1と同様とされる。
【0052】
このように構成した実施例3の電圧変換トランスも、実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。
また、実施例3の電圧変換トランスにあっては、一次側レグおよび二次側レグが、トロイダル・コア8A〜8Cの一部であるので、構造が簡単になり、コスト・アップを抑制することができる。
【実施例4】
【0053】
次に、本発明の実施例4に係る電圧変換トランスについて、図面とともに説明する。
実施例4は、
図15に示すように、n=4、m=3とした場合の電圧変換トランスであって、同図(a)は電圧変換トランスを模式的に示した平面図であり、同図(b)は電圧変換トランスおよびその周辺の回路図である。
この場合、二次側レグは、周上で90度ずつに分割されてずらされた4個の第1〜第4磁路二次側レグ4a〜4dからなり、一次側レグの4部分に区分される第1〜第4磁路一次側レグ3a〜3dがそれぞれ対向される。
【0054】
一方、一次側コイルL1は、1本であり、第1〜第4磁路一次側レグ3a〜3dに対応する第1〜第4コイル部分La〜Ldを有する。
二次側コイルL2は、第1〜第4磁路二次側レグ4a〜4dのうちの3個にそれぞれ回転方向にずれて対応する第1コイルLf、第2コイルLg、第3コイルLh、第4コイルLiの4本のコイルからなる。すなわち、p=4である。
なお、第1〜第4コイルLf〜Liは、それぞれ正極側部分(添え字1を付けて同図中に示す)、中間部分(添え字2を付けて同図中に示す)、負極側部分(添え字3を付けて同図中に示す)を有する。
【0055】
第1コイルLf、第2コイルLg、第3コイルLh、第4コイルLiは、第1コイルLfの正極側部分Lf1が第1磁路二次側レグ4aに対応し、第2コイルLgの正極部分Lg1が回転方向に次の第2磁路二次側レグ4bに対応し、第3コイルLhの正極部分Lh1が回転方向に次の第3磁路二次側レグ4cに対応し、第4コイルLiの正極部分Li1が回転方向に次の第4磁路二次側レグ4dに対応させられる。
そして、これらのコイルの正極側部分、中間部分、負極側部分は、これらの順で、第1磁路二次側レグ4a→第2磁路二次側レグ4b→第3磁路二次側レグ4c→第4磁路二次側レグ4dにそれぞれ1個ずつずれて合計3個のレグに対応する。
【0056】
第1コイルLfの正極側部分Lf1は、第1磁路二次側レグ4aと第4磁路二次側レグ4dの間のスリットから取り出されて第1ダイオードD1のアノードに接続され、第2コイルLgの正極側部分Lg1は、第2磁路二次側レグ4bと第1レグ4アの間のスリットから取り出されて第2ダイオードD2のアノードに接続され、第3コイルLhの正極側部分Lh1は、第3磁路二次側レグ4cと第2磁路二次側レグ4bの間のスリットから取り出されて第3ダイオードD3のアノードに接続され、第4コイルLiの正極側部分Li1は、第4磁路二次側レグ4dと第3磁路二次側レグ4cの間のスリットから取り出されて第4ダイオードD4のアノードに接続される。
第1〜第4ダイオードD1〜D4のカソードは、結線されて合流する。これらのダイオードは、本発明の整流回路に相当する。
なお、第1〜第4コイルLf〜Liの負極側部分Lf3〜Li3は、グランドに接地される。
【0057】
実施例4の電圧変換トランスでは、n=4、m=3、p=4としたので、この実施例4でも実施例1と同様の効果を得ることができる。
【実施例5】
【0058】
次に、本発明の実施例5に係る電圧変換トランスについて、図面とともに説明する。
実施例5は、
図16に示すように、n=5、m=4、p=5とした場合の電圧変換トランスであって、同図(a)は電圧変換トランスを模式的に示した平面図であり、同図(b)は電圧変換トランスおよびその周辺の回路図である。
この場合も、実施例4と同様になり、個数が増えた分、異なるだけである。
【0059】
すなわち、一次側レグは、第1磁路一次側レグ3a、第2磁路一次側レグ3b、第3磁路一次側レグ3c、第4磁路一次側レグ3d、第5磁路一次側レグ3eからなり、一次側コイルL1の第1コイル部分La、第2コイル部分Lb、第3コイル部分Lc、第4コイル部分Ld、第5コイル部分Leがそれぞれ対向する。
【0060】
二次側レグは、環状のレグが5分割され、それぞれ72度ずつ回転方向にずらされた第1磁路二次側レグ4a、第2磁路二次側レグ4b、第3磁路二次側レグ4c、第4磁路二次側レグ4d、第5磁路二次側レグ4eからなり、これらは一次側の第1磁路一次側レグ3a、第2磁路一次側レグ3b、第3磁路一次側レグ3c、第4磁路一次側レグ3d、第5磁路一次側レグ3eに対面する位置に設けられる。
【0061】
二次側コイルL2は、第1コイルLf、第2コイルLg、第3コイルLh、第4コイルLi、第5コイルLjからなり、これらは、それぞれ正極側部分(添え字1を付けて同図中に示す)、第1中間部分(添え字2を付けて同図中に示す)、第2中間部分(添え字3を付けて同図中に示す)、負極側部分(添え字4を付けて同図中に示す)の4つの部分を有する。これらの部分は回転方向にこれらの順に4個の二次側のレグに対面させられる。また、このとき、第1〜第5コイルLf〜Ljが、実施例3、4の場合と同様に、回転方向に順にずらされて配置される。
【0062】
また、第1〜第5コイルLf〜Ljの正極側部分Lf1〜Lj1は、それぞれ第1〜第5ダイオードD1〜D5のアノード側に接続し、これらダイオードのカソード側を合流させて結線する。第1〜第5ダイオードD1〜D5は、本発明の整流回路に相当する。
実施例5の電圧変換トランスでは、n=5、m=4、p=5としたので、この実施例5でも実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0063】
以上、本発明を上記実施例に基づき説明してきたが、本発明は上記実施例に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更等があった場合でも、本発明に含まれる。
【0064】
たとえば、レグの形状や材質は上記のものに限られない。
また、一次側コイルL1や二次側コイルL2の巻き数は、目的や使用条件などにおいて適宜設定することができる。
【0065】
なお、以上の各実施例にあって、二次側コイルは、一次側レグと二次側レグとの間を通っていればよく、スリットから引き出した先の部分はどこを通るようにしてもよく、またレグに巻き付ける必要もない。コア(のレグ)の中でどこを通っているかでコイルに流れる電流が決まるので、入口と出口を抑えておけばよい。
【符号の説明】
【0066】
D1、D2、D3、D4、D5 整流ダイオード(整流回路)
L1 一次側コイル
La 第1コイル部分
Lb 第2コイル部分
Lc 第3コイル部分
Ld 第4コイル部分
Le 第5コイル部分
L2 二次側コイル
Lf 第1コイル
Lg 第2コイル
Lh 第3コイル
Li 第4コイル
Lj 第5コイル
1 電圧変換トランス
2 電源
3 一次側レグ
3a 第1磁路一次側レグ
3b 第2磁路一次側レグ
3c 第3磁路一次側レグ
3d 第4磁路一次側レグ
3e 第5磁路一次側レグ
4 二次側レグ
4a 第1磁路二次側レグ
4b 第2磁路二次側レグ
4c 第3磁路二次側レグ
4d 第4磁路二次側レグ
4e 第5磁路二次側レグ
5 蓋ヨーク部分
6 スリット
7A、7B、7C 負荷