(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2液体供給装置は、前記第2のセンサーが検出した液体の量が予め設定された範囲から外れた場合に、前記第2液体供給装置が前記ギャップに供給する液体の量を調整する
請求項13記載の露光装置。
前記第2液体供給装置は、前記第1液体供給装置から供給されて前記ギャップに流入する液体を含む前記ギャップ内の液体の量の変動を減らすように、該ギャップに液体を供給する
請求項1〜14のいずれか一項記載の露光装置。
前記第1液体供給装置から供給される液体のうち、前記ギャップに流入することが推定される液体の量に基づいて、前記第2液体供給装置が前記ギャップに供給する液体の量を調整する
請求項1〜17のいずれか一項に記載の露光装置。
前記第1液体供給装置から供給される液体のうち、前記空間部に流入することが推定される液体の量に基づいて、前記第2液体供給装置が前記空間部に供給する液体の量を調整する
請求項29〜40のいずれか一項に記載の露光装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の露光装置及び露光方法並びにデバイス製造方法の実施の形態を、
図1ないし
図9を参照して説明するが、本発明はこれに限定されない。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0013】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る露光装置EXの一例を示す概略構成図である。本実施形態の露光装置EXは、液体LQを介して露光光ELで基板Pを露光する液浸露光装置である。本実施形態においては、露光光ELの光路の少なくとも一部が液体LQで満たされるように液浸空間LSが形成される。液浸空間とは、液体で満たされた部分(空間、領域)をいう。基板Pは、液浸空間LSの液体LQを介して露光光ELで露光される。本実施形態においては、液体LQとして、水(純水)を用いる。
【0014】
また、本実施形態の露光装置EXは、例えば米国特許第6897963号明細書、及び欧州特許出願公開第1713113号明細書等に開示されているような、基板ステージと計測ステージとを備えた露光装置である。
【0015】
図1において、露光装置EXは、マスクMを保持して移動可能なマスクステージ1と、基板Pを保持して移動可能な基板ステージ2と、基板Pを保持せずに、露光光ELを計測する計測部材C及び計測器を搭載して移動可能な計測ステージ3と、マスクステージ1を移動する駆動システム4と、基板ステージ2を移動する駆動システム5と、計測ステージ3を移動する駆動システム6と、マスクMを露光光ELで照明する照明系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板Pに投影する投影光学系PLと、露光光ELの光路の少なくとも一部が液体LQで満たされるように液浸空間LSを形成可能な液浸部材7と、露光装置EX全体の動作を制御する制御装置8と、制御装置8に接続され、露光に関する各種の情報を記憶する記憶装置8Rとを備えている。記憶装置8Rは、例えばRAM等のメモリ、ハードディスク、CD−ROM等の記録媒体を含む。記憶装置8Rには、コンピュータシステムを制御するオペレーティングシステム(OS)がインストールされ、露光装置EXを制御するためのプログラムが記憶されている。
【0016】
また、露光装置EXは、マスクステージ1、基板ステージ2、及び計測ステージ3の位置を計測する干渉計システム11と、検出システム300とを備えている。検出システム300は、基板Pのアライメントマークを検出するアライメントシステム302と、基板Pの上面(表面)Paの位置を検出する表面位置検出システム303とを含む。なお、検出システム300が、例えば米国特許出願公開第2007/0288121号明細書に開示されているような、基板ステージ2の位置を検出するエンコーダシステムを備えてもよい。
【0017】
マスクMは、基板Pに投影されるデバイスパターンが形成されたレチクルを含む。マスクMは、例えばガラス板等の透明板と、その透明板上にクロム等の遮光材料を用いて形成されたパターンとを有する透過型マスクを含む。なお、マスクMとして、反射型マスクを用いることもできる。
【0018】
基板Pは、デバイスを製造するための基板である。基板Pは、例えば半導体ウエハ等の基材と、その基材上に形成された感光膜とを含む。感光膜は、感光材(フォトレジスト)の膜である。また、基板Pが、感光膜に加えて別の膜を含んでもよい。例えば、基板Pが、反射防止膜を含んでもよいし、感光膜を保護する保護膜(トップコート膜)を含んでもよい。
【0019】
また、露光装置EXは、露光光ELが進行する空間102の環境(温度、湿度、圧力、及びクリーン度の少なくとも一つ)を調整するチャンバ装置103を備えている。チャンバ装置103は、空間102を形成するチャンバ部材104と、その空間102の環境を調整する空調システム105とを有する。
【0020】
空間102は、空間102A及び空間102Bを含む。空間102Aは、基板Pが処理される空間である。基板ステージ2及び計測ステージ3は、空間102Aを移動する。
【0021】
空調システム105は、空間102A、102Bに気体を供給する給気部105Sを有し、その給気部105Sから空間102A、102Bに気体を供給して、その空間102A、102Bの環境を調整する。本実施形態においては、少なくとも基板ステージ2、計測ステージ3、及び投影光学系PLの終端光学素子12が空間102Aに配置される。
【0022】
照明系ILは、所定の照明領域IRに露光光ELを照射する。照明領域IRは、照明系ILから射出される露光光ELが照射可能な位置を含む。照明系ILは、照明領域IRに配置されたマスクMの少なくとも一部を、均一な照度分布の露光光ELで照明する。照明系ILから射出される露光光ELとして、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)等が用いられる。本実施形態においては、露光光ELとして、紫外光(真空紫外光)であるArFエキシマレーザ光を用いる。
【0023】
マスクステージ1は、マスクMを保持した状態で、照明領域IRを含むベース部材9のガイド面9G上を移動可能である。駆動システム4は、ガイド面9G上でマスクステージ1を移動するための平面モータを含む。平面モータは、例えば米国特許第6452292号明細書に開示されているような、マスクステージ1に配置された可動子と、ベース部材9に配置された固定子とを有する。本実施形態においては、マスクステージ1は、駆動システム4の作動により、ガイド面9G上において、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能である。
【0024】
投影光学系PLは、所定の投影領域PRに露光光ELを照射する。投影領域PRは、投影光学系PLから射出される露光光ELが照射可能な位置を含む。投影光学系PLは、投影領域PRに配置された基板Pの少なくとも一部に、マスクMのパターンの像を所定の投影倍率で投影する。本実施形態の投影光学系PLは、その投影倍率が例えば1/4、1/5、又は1/8等の縮小系である。なお、投影光学系PLは、等倍系及び拡大系のいずれでもよい。本実施形態においては、投影光学系PLの光軸は、Z軸と平行である。また、投影光学系PLは、反射光学素子を含まない屈折系、屈折光学素子を含まない反射系、反射光学素子と屈折光学素子とを含む反射屈折系のいずれであってもよい。また、投影光学系PLは、倒立像と正立像とのいずれを形成してもよい。
【0025】
基板ステージ2は、投影光学系PLから射出される露光光ELが照射可能な位置(投影領域PR)に移動可能である。基板ステージ2は、基板Pを保持した状態で、投影領域PRを含むベース部材10のガイド面10G上を移動可能である。計測ステージ3は、投影光学系PLから射出される露光光ELが照射可能な位置(投影領域PR)に移動可能である。計測ステージ3は、計測部材Cを保持した状態で、投影領域PRを含むベース部材10のガイド面10G上を移動可能である。基板ステージ2と計測ステージ3とは、ガイド面10G上を独立して移動可能である。
【0026】
基板ステージ2を移動するための駆動システム5は、ガイド面10G上で基板ステージ2を移動するための平面モータを含む。平面モータは、例えば米国特許第6452292号明細書に開示されているような、基板ステージ2に配置された可動子と、ベース部材10に配置された固定子とを有する。同様に、計測ステージ3を移動するための駆動システム6は、平面モータを含み、計測ステージ3に配置された可動子と、ベース部材10に配置された固定子とを有する。
【0027】
本実施形態において、基板ステージ2は、基板Pの下面Pbをリリース可能に保持する第1保持部(基板保持部)31と、基板Pが配置可能な開口Thを規定し、基板Pが第1保持部31に保持されている状態において基板Pの上面Paの周囲に配置される上面とを有する。
【0028】
本実施形態において、基板ステージ2は、例えば米国特許出願公開第2007/0177125号明細書、米国特許出願公開第2008/0049209号明細書等に開示されているような、第1保持部31の周囲に配置され、カバー部材(規定部材)Tの下面Tbをリリース可能に保持する第2保持部32を有する。カバー部材Tは、第1保持部31に保持された基板Pの周囲に配置される。本実施形態においては、カバー部材Tが、第1保持部31に保持された基板Pが配置される開口Thを有する。本実施形態においては、カバー部材Tが上面2Uを有する。
【0029】
本実施形態において、第1保持部31は、基板Pの上面PaとXY平面とがほぼ平行となるように、基板Pを保持する。第2保持部32は、カバー部材Tの上面2UとXY平面とがほぼ平行となるように、カバー部材Tを保持する。本実施形態において、第1保持部31に保持された基板Pの上面Paと第2保持部32に保持されたカバー部材Tの上面2Uとは、ほぼ同一平面内に配置される(ほぼ面一である)。
【0030】
なお、カバー部材Tは、基板ステージ2に一体的に形成されていてもよい。例えば、基板ステージ2の少なくとも一部の部材が上面2Uを有してもよい。
【0031】
本実施形態において、計測ステージ3は、計測部材Cをリリース可能に保持する第3保持部33と、第3保持部33の周囲に配置され、カバー部材Qをリリース可能に保持する第4保持部34とを有する。第3,第4保持部33,34は、ピンチャック機構を有する。カバー部材Qは、第3保持部33に保持された計測部材Cの周囲に配置される。なお、第3保持部33及び第4保持部34の少なくとも一方で使用される保持機構はピンチャック機構に限られない。また、計測部材C及びカバー部材Qの少なくとも一方は、計測ステージ3に一体的に形成されていてもよい。
【0032】
本実施形態において、第3保持部33は、計測部材Cの上面とXY平面とがほぼ平行となるように、計測部材Cを保持する。第4保持部34は、カバー部材Qの上面とXY平面とがほぼ平行となるように、カバー部材Qを保持する。本実施形態において、第3保持部33に保持された計測部材Cの上面と第4保持部34に保持されたカバー部材Qの上面とは、ほぼ同一平面内に配置される(ほぼ面一である)。
【0033】
ここで、以下の説明において、第2保持部32に保持されたカバー部材Tの上面2Uを適宜、基板ステージ2の上面2U、と称し、第3保持部33に保持された計測部材Cの上面及び第4保持部34に保持されたカバー部材Qの上面を合わせて適宜、計測ステージ3の上面3U、と称する。
【0034】
干渉計システム11は、マスクステージ1の位置を計測するレーザ干渉計ユニット11Aと、基板ステージ2及び計測ステージ3の位置を計測するレーザ干渉計ユニット11Bとを含む。レーザ干渉計ユニット11Aは、マスクステージ1に配置された計測ミラー1Rを用いて、マスクステージ1の位置を計測可能である。レーザ干渉計ユニット11Bは、基板ステージ2に配置された計測ミラー2R、及び計測ステージ3に配置された計測ミラー3Rを用いて、基板ステージ2及び計測ステージ3それぞれの位置を計測可能である。
【0035】
アライメントシステム302は、基板Pのアライメントマークを検出して、その基板Pのショット領域(露光領域)Sの位置を検出する。アライメントシステム302は、基板ステージ2(基板P)が対向可能な下面を有する。基板ステージ2の上面2U、及び基板ステージ2に保持されている基板Pの上面(表面)Paは、−Z方向を向くアライメントシステム302の下面と対向可能である。
【0036】
表面位置検出システム303は、例えばオートフォーカス・レベリングシステムとも呼ばれ、基板ステージ2に保持された基板Pの上面(表面)Paに検出光を照射して、その基板Pの上面Paの位置を検出する。表面位置検出システム303は、基板ステージ2(基板P)が対向可能な下面を有する。基板ステージ2の上面2U、及び基板ステージ2に保持されている基板Pの上面Paは、−Z方向を向く表面位置検出システム303の下面と対向可能である。
【0037】
基板Pの露光処理を実行するとき、あるいは所定の計測処理を実行するとき、制御装置8は、干渉計システム11の計測結果、及び検出システム300の検出結果に基づいて、駆動システム4,5,6を作動し、マスクステージ1(マスクM)、基板ステージ2(基板P)、及び計測ステージ3(計測部材C)の位置制御を実行する。
【0038】
液浸部材7は、露光光ELの光路の少なくとも一部が液体LQで満たされるように液浸空間LSを形成可能である。液浸部材7は、投影光学系PLの複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い終端光学素子12の近傍に配置される。本実施形態において、液浸部材7は、環状の部材であり、露光光ELの光路の周囲に配置される。本実施形態においては、液浸部材7の少なくとも一部が、終端光学素子12の周囲に配置される。
【0039】
終端光学素子12は、投影光学系PLの像面に向けて露光光ELを射出する射出面13を有する。本実施形態において、射出面13側に液浸空間LSが形成される。液浸空間LSは、射出面13から射出される露光光ELの光路Kが液体LQで満たされるように形成される。射出面13から射出される露光光ELは、−Z方向に進行する。射出面13は、露光光ELの進行方向(−Z方向)を向く。本実施形態において、射出面13は、XY平面とほぼ平行な平面である。なお、射出面13がXY平面に対して傾斜していてもよいし、曲面を含んでもよい。
【0040】
液浸部材7は、少なくとも一部が−Z方向を向く下面14を有する。本実施形態において、射出面13及び下面14は、射出面13から射出される露光光ELが照射可能な位置(投影領域PR)に配置される物体との間で液体LQを保持することができる。液浸空間LSは、射出面13及び下面14の少なくとも一部と投影領域PRに配置される物体との間に保持された液体LQによって形成される。液浸空間LSは、射出面13と、投影領域PRに配置される物体との間の露光光ELの光路Kが液体LQで満たされるように形成される。液浸部材7は、終端光学素子12と物体との間の露光光ELの光路Kが液体LQで満たされるように物体との間で液体LQを保持可能である。
【0041】
本実施形態において、投影領域PRに配置可能な物体は、投影光学系PLの像面側(終端光学素子12の射出面13側)で投影領域PRに対して移動可能な物体を含む。その物体は、終端光学素子12及び液浸部材7に対して移動可能である。その物体は、射出面13及び下面14の少なくとも一方と対向可能な上面(表面)を有する。物体の上面は、射出面13との間に液浸空間LSを形成可能である。その物体は、終端光学素子12の光軸(Z軸)と垂直な面内(XY平面内)において移動可能である。本実施形態において、物体の上面は、射出面13及び下面14の少なくとも一部との間に液浸空間LSを形成可能である。一方側の射出面13及び下面14と、他方側の物体の上面(表面)との間に液体LQが保持されることによって、終端光学素子12と物体との間の露光光ELの光路Kが液体LQで満たされるように液浸空間LSが形成される。
【0042】
本実施形態において、その物体は、基板ステージ2、基板ステージ2に保持された基板P、計測ステージ3、及び計測ステージ3に保持された計測部材Cの少なくとも一つを含む。例えば、基板ステージ2の上面2U、及び基板ステージ2に保持されている基板Pの表面(上面)Paは、−Z方向を向く終端光学素子12の射出面13、及び−Z方向を向く液浸部材7の下面14と対向可能である。もちろん、投影領域PRに配置可能な物体は、基板ステージ2、基板ステージ2に保持された基板P、計測ステージ3、及び計測ステージ3に保持された計測部材Cの少なくとも一つに限られない。また、それら物体は、検出システム300の少なくとも一部と対向可能である。
【0043】
本実施形態においては、基板Pに露光光ELが照射されているとき、投影領域PRを含む基板Pの表面の一部の領域が液体LQで覆われるように液浸空間LSが形成される。基板Pの露光時において、液浸部材7は、終端光学素子12と基板Pとの間の露光光ELの光路Kが液体LQで満たされるように基板Pとの間で液体LQを保持可能である。液体LQの界面(メニスカス、エッジ)LGの少なくとも一部は、液浸部材7の下面14と基板Pの表面との間に形成される。すなわち、本実施形態の露光装置EXは、局所液浸方式を採用する。
【0044】
図2は、本実施形態に係る液浸部材7及び基板ステージ2の一例を示す側断面図である。
図3は、
図2の一部を拡大した図である。なお、
図2においては、投影領域PR(終端光学素子12及び液浸部材7と対向する位置)に基板Pが配置されているが、上述のように、基板ステージ2(カバー部材T)、及び計測ステージ3(カバー部材Q、計測部材C)を配置することもできる。
【0045】
図2に示すように、液浸部材7は、少なくとも一部が終端光学素子12の射出面13と対向する対向部71と、少なくとも一部が終端光学素子12の周囲に配置される本体部72とを含む。対向部71は、射出面13と対向する位置に孔(開口)7Kを有する。対向部71は、少なくとも一部が射出面13とギャップを介して対向する上面7Uと、基板P(物体)が対向可能な下面7Hとを有する。孔7Kは、上面7Uと下面7Hとを結ぶように形成される。上面7Uは、孔7Kの上端の周囲に配置され、下面7Hは、孔7Kの下端の周囲に配置される。射出面13から射出された露光光ELは、孔7Kを通過して、基板Pに照射可能である。
【0046】
本実施形態において、上面7U及び下面7Hのそれぞれは、光路Kの周囲に配置される。本実施形態において、下面7Hは、平坦面である。下面7Hは、基板P(物体)との間で液体LQを保持可能である。以下の説明において、下面7Hを適宜、保持面7H、と称する。
【0047】
また、液浸部材7は、液体LQを供給可能な供給口15と、液体LQを回収可能な回収口16とを有する。供給口15は、例えば基板Pの露光時において液体LQを供給する。回収口16は、例えば基板Pの露光時において液体LQを回収する。なお、供給口15は、基板Pの露光時及び非露光時の一方又は両方において液体LQを供給可能である。なお、回収口16は、基板Pの露光時及び非露光時の一方又は両方において液体LQを回収可能である。
【0048】
供給口15は、射出面13から射出される露光光ELの光路Kの近傍において、その光路Kに面するように配置されている。なお、供給口15は、射出面13と開口7Kとの間の空間及び終端光学素子12の側面の一方又は両方に面していればよい。本実施形態において、供給口15は、上面7Uと射出面13との間の空間に液体LQを供給する。供給口15から供給された液体LQは、その上面7Uと射出面13との間の空間を流れた後、開口7Kを介して、基板P(物体)上に供給される。
【0049】
供給口15は、流路17を介して、液体供給装置(第1液体供給装置)18と接続されている。液体供給装置18は、清浄で温度調整された液体LQを送出可能である。この液体供給装置18は、露光装置EXに備えられていてもよいし、露光装置EX外の例えばクリーンルームに備えられていてもよい。流路17は、液浸部材7の内部に形成された供給流路17R、及びその供給流路17Rと液体供給装置18とを接続する供給管で形成される流路を含む。液体供給装置18から送出された液体LQは、流路17を介して供給口15に供給される。少なくとも基板Pの露光において、供給口15は、液体LQを供給する。
【0050】
回収口16は、液浸部材7の下面14と対向する物体上の液体LQの少なくとも一部を回収可能である。回収口16は、露光光ELが通過する開口7Kの周囲の少なくとも一部に配置される。本実施形態においては、回収口16は、保持面7Hの周囲の少なくとも一部に配置される。回収口16は、物体の表面と対向する液浸部材7の所定位置に配置されている。少なくとも基板Pの露光において、回収口16に基板Pが対向する。基板Pの露光において、回収口16は、基板P上の液体LQを回収する。
【0051】
本実施形態において、本体部72は、基板P(物体)に面する開口7Pを有する。開口7Pは、保持面7Hの周囲の少なくとも一部に配置される。本実施形態において、液浸部材7は、開口7Pに配置された多孔部材19を有する。本実施形態において、多孔部材19は、複数の孔(openingsあるいはpores)を含むプレート状の部材である。なお、開口7Pに、網目状に多数の小さい孔が形成された多孔部材であるメッシュフィルタが配置されてもよい。
【0052】
本実施形態において、多孔部材19は、基板P(物体)が対向可能な下面19Hと、下面19Hの反対方向を向く上面19Uと、上面19Uと下面19Hとを結ぶ複数の孔とを有する。下面19Hは、保持面7Hの周囲の少なくとも一部に配置される。本実施形態において、液浸部材7の下面14の少なくとも一部は、保持面7H及び下面19Hを含む。
【0053】
本実施形態において、回収口16は、多孔部材19の孔を含む。本実施形態において、基板P(物体)上の液体LQは、多孔部材19の孔(回収口16)を介して回収される。なお、多孔部材19が配置されなくてもよい。
【0054】
回収口16は、流路20を介して、液体回収装置21と接続されている。液体回収装置21は、例えば露光装置EX外に備えられた真空システムに回収口16を接続可能であり、回収口16を介して液体LQを吸引可能である。なお、この液体回収装置21は、露光装置EXに備えられていてもよいし、露光装置EX外の例えばクリーンルームに備えられてもよい。流路20は、液浸部材7の内部に形成された回収流路20R、及びその回収流路20Rと液体回収装置21とを接続する回収管で形成される流路を含む。回収口16から回収された液体LQは、流路20を介して、液体回収装置21に回収される。
【0055】
本実施形態においては、制御装置8は、供給口15からの液体LQの供給動作と並行して、回収口16からの液体LQの回収動作を実行することによって、一方側の終端光学素子12及び液浸部材7と、他方側の物体との間に液体LQで液浸空間LSを形成可能である。
【0056】
なお、液浸部材7として、例えば米国特許出願公開第2007/0132976号明細書、欧州特許出願公開第1768170号明細書に開示されているような液浸部材(ノズル部材)を用いることができる。
【0057】
図2及び
図3に示すように、本実施形態において、基板ステージ2は、基板(物体)Pとカバー部材(部材)T(基板ステージ2)との間の間隙(ギャップ)Gaに通じる空間部23を有する。空間部23は、間隙Gaの下方に位置する。間隙Gaは、互いに対向する、第1保持部31に保持された基板Pの側面Pcと、第2保持部32に保持されたカバー部材Tの内面Tcとの間に形成される。
【0058】
空間部23には、多孔部材80が配置されている。本実施形態において、多孔部材80は、射出面13及び下面14の少なくとも一方が対向可能な上面80Aを有する。上面80Aは、基板P及びカバー部材Tよりも下方(−Z側)に位置して配置される。本実施形態において、多孔部材80は、例えばチタン製である。多孔部材80は、例えば焼結法により形成可能である。本実施形態において、間隙Gaに流入する液体LQの少なくとも一部は、多孔部材80を介して回収される。
【0059】
本実施形態において、多孔部材80は、ケース81に支持されている。ケース81は、空間部23に配置される。本実施形態において、ケース81は、例えばセラミック製であるが、金属製でもよい。なお、ケース81を用いずに多孔部材80が空間部23に直接配置されていてもよい。
【0060】
また、本実施形態において、多孔部材80及びケース81とカバー部材Tとの間に、支持部材82が配置される。支持部材82は、多孔部材80及びケース81の少なくとも一部に支持される。支持部材82は、カバー部材Tの下面Tbの少なくとも一部と対向可能である。支持部材82は、カバー部材Tの下面Tbの少なくとも一部を支持する。なお、支持部材82を用いずにこれを省略してもよい。
【0061】
本実施形態において、基板ステージ2は、空間部23に配置される吸引口24を有する。本実施形態において、吸引口24は、空間部23を形成する基板ステージ2の内面の少なくとも一部に形成されている。吸引口24は、空間部23が負圧になるように、空間部23の流体の少なくとも一部を吸引する。吸引口24は、空間部23の液体及び気体の一方又は両方を吸引可能である。
【0062】
吸引口24は、流路25を介して、流体吸引装置26と接続されている。流体吸引装置26は、吸引口24を真空システムに接続可能であり、吸引口24を介して液体及び気体の一方又は両方を吸引可能である。また、流体吸引装置26は、図示しない流量計を備えていてもよく、吸引した流体(液体)の量をこの流量計により計測してもよい。流路25の少なくとも一部は、基板ステージ2の内部に形成される。吸引口24から吸引された流体(液体及び気体の少なくとも一方)は、流路25を介して、流体吸引装置26に吸引される。なお、流体吸引装置26は、露光装置EXに備えられてもよいし、露光装置EX外の例えばクリーンルームに備えられていてもよい。
【0063】
本実施形態において、ケース81は、ケース81の外面と内面とを結ぶ孔(開口)81Hを有する。孔81Hの上端の開口83は、多孔部材80の下面に臨んでいる。孔81Hの下端の開口は、吸引口24と結ばれる。吸引口24は、ケース81の内側の空間が負圧になるように、そのケース81の内側の空間の流体を、孔81Hを介して吸引可能である。
【0064】
本実施形態において、基板ステージ2には、間隙Ga内に液体を供給する液体供給装置(第2液体供給装置)50の流路51が配置されている。流路51は、一端が供給口51aとして空間部23に臨んで開口し、他端側で液体供給装置50に接続されている。液体供給装置50は制御装置8の制御により、流路51を介して液体を空間部23に供給する。なお、本実施形態においては、液体供給装置50から供給する液体は、上述した液体LQと同じ水(純水)を用いている。
【0065】
本実施形態において、第1保持部31は、例えばピンチャック機構を有する。第1保持部31は、基板ステージ2の支持面31Sに配置され、基板Pの下面Pbが対向可能な周壁部35と、周壁部35の内側の支持面31Sに配置され、複数のピン部材を含む支持部36と、支持面31Sに配置され、流体を吸引する吸引口37とを有する。吸引口37は、流体吸引装置と接続される。流体吸引装置は、制御装置8に制御される。周壁部35の上面は、基板Pの下面Pbと対向可能である。周壁部35は、基板Pの下面Pbとの間の少なくとも一部に負圧空間を形成可能である。なお、支持面31Sにおいて、周壁部35は実質的に円形であり、前述、及び後述の説明において、第1保持部31の中心は、周壁部35の中心である。なお、本実施形態においては、XY平面内において、周壁部35は、実質的に円形(円環状)である。制御装置8は、基板Pの下面Pbと周壁部35の上面とが接触された状態で、吸引口37の吸引動作を実行することによって、周壁部35と基板Pの下面Pbと支持面31Sとで形成される空間31Hを負圧にすることができる。これにより、基板Pが第1保持部31に保持される。また、吸引口37の吸引動作が解除されることによって、基板Pは第1保持部31から解放される。
【0066】
本実施形態においては、空間31Hを負圧にすることにより、基板Pの下面が支持部36(複数のピン部材)の上端に保持される。すなわち、支持部36(複数のピン部材)の上端によって基板Pを保持する保持面36Sの少なくとも一部が規定されている。
【0067】
本実施形態において、第2保持部32は、例えばピンチャック機構を有する。第2保持部32は、基板ステージ2の支持面32Sにおいて周壁部35を囲むように配置され、カバー部材Tの下面Tbが対向可能な周壁部38と、支持面32Sにおいて周壁部38を囲むように配置され、カバー部材Tの下面Tbが対向可能な周壁部39と、周壁部38と周壁部39との間の支持面32Sに配置され、複数のピン部材を含む支持部40と、支持面32Sに配置され、流体を吸引する吸引口41とを有する。吸引口41は、流体吸引装置と接続される。流体吸引装置は、制御装置8に制御される。周壁部38、39の上面は、カバー部材Tの下面Tbと対向可能である。周壁部38、39は、カバー部材Tの下面Tbとの間の少なくとも一部に負圧空間を形成可能である。制御装置8は、カバー部材Tの下面Tbと周壁部38、39の上面とが接触された状態で、吸引口41の吸引動作を実行することによって、周壁部38と周壁部39とカバー部材Tの下面Tbと支持面32Sとで形成される空間32Hを負圧にすることができる。これにより、カバー部材Tが第2保持部32に保持される。また、吸引口41の吸引動作が解除されることによって、カバー部材Tは第2保持部32から解放される。
【0068】
空間部23は、周壁部35の周囲の空間を含む。本実施形態において、空間部23は、周壁部35と周壁部38との間の空間を含む。
【0069】
また、
図4に示すように、基板ステージ2は、ヒータHT1、HT2、温度センサTS1、TS2を備えている。ヒータHT1は、主として、第1保持部31を加熱するものであって、XY平面に関して、基板Pの外周部近傍の位置に、周方向に間隔をあけて複数(
図4では6つ)配置されている。各ヒータHT1の動作(加熱・加熱解除)は制御装置8に制御される。
【0070】
ヒータHT2は、主として、第2保持部32を加熱するものであって、XY平面に関して、カバー部材Tの端縁に沿って矩形状に配置されている。各ヒータHT2の動作(加熱・加熱解除)は制御装置8に制御される。
【0071】
温度センサTS1は、第1保持部31の温度を計測し、計測結果を制御装置8に出力するものであり、XY平面に関して、各ヒータHT1の周方向の中央部近傍に配置されている。温度センサTS2は、第2保持部32の温度を計測し、計測結果を制御装置8に出力するものであり、XY平面に関して、矩形状のヒータHT2のコーナー部及び辺の中央部の位置に配置されている。
【0072】
次に、露光装置EXの動作の一例について、
図3乃至
図5を参照して説明する。
図5は、基板ステージ2における時間と温度との関係を示す図である。
【0073】
第1保持部31に保持されている基板Pを露光するために、制御装置8は、予め温度センサTS1、TS2による温度計測結果に基づいて、ヒータHT1、HT2の動作を制御して第1保持部31及び第2保持部32の温度を所定温度T1(
図5参照)に制御する。そして、制御装置8は、基板ステージ2を露光位置に移動して、終端光学素子12及び液浸部材7と基板ステージ2(基板P)との間に液体LQで液浸空間LSが形成された後、制御装置8は、基板Pの露光処理を開始する。
【0074】
本実施形態の露光装置EXは、マスクMと基板Pとを所定の走査方向に同期移動しつつ、マスクMのパターンの像を基板Pに投影する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)である。本実施形態においては、基板Pの走査方向(同期移動方向)をY軸方向とし、マスクMの走査方向(同期移動方向)もY軸方向とする。制御装置8は、基板Pを投影光学系PLの投影領域PRに対してY軸方向に移動するとともに、その基板PのY軸方向への移動と同期して、照明系ILの照明領域IRに対してマスクMをY軸方向に移動しつつ、投影光学系PLと基板P上の液浸空間LSの液体LQとを介して基板Pに露光光ELを照射する。これにより、基板Pが液体LQを介して露光光ELで露光され、マスクMのパターンの像が投影光学系PL及び液体LQを介して基板Pに投影される。
【0075】
図4に示すように、本実施形態においては、基板P上に露光対象領域であるショット領域Sがマトリクス状に複数配置されている。制御装置8は、基板P上に定められた複数のショット領域Sを順次露光する。
【0076】
基板Pのショット領域Sを露光するとき、終端光学素子12及び液浸部材7と基板Pとが対向され、終端光学素子12と基板Pとの間の露光光ELの光路Kが液体LQで満たされるように液浸空間LSが形成される。基板Pの複数のショット領域Sを順次露光するとき、終端光学素子12及び液浸部材7と基板Pの上面Pa及び基板ステージ2の上面2Uの少なくとも一方との間に液体LQで液浸空間LSが形成されている状態で、駆動システム5によって基板ステージ2がXY平面内において移動される。制御装置8は、終端光学素子12及び液浸部材7と基板Pの上面Pa及び基板ステージ2の上面2Uの少なくとも一方との間に液体LQで液浸空間LSが形成されている状態で、基板ステージ2を移動しながら、基板Pの露光を実行する。
【0077】
例えば基板P上の複数のショット領域Sのうち最初のショット領域Sを露光するために、制御装置8は、その第1のショット領域Sを露光開始位置に移動する。制御装置8は、液浸空間LSが形成された状態で、第1のショット領域S(基板P)を投影光学系PLの投影領域PRに対してY軸方向に移動しながら、その第1のショット領域Sに対して露光光ELを照射する。
【0078】
第1のショット領域Sの露光が終了した後、次の第2のショット領域Sを露光するために、制御装置8は、液浸空間LSが形成された状態で、基板PをX軸方向(あるいはXY平面内においてX軸方向に対して傾斜する方向)に移動し、第2のショット領域Sを露光開始位置に移動する。制御装置8は、第1のショット領域Sと同様に、第2のショット領域Sを露光する。
【0079】
制御装置8は、投影領域PRに対してショット領域SをY軸方向に移動しながらそのショット領域Sに露光光ELを照射する動作(スキャン露光動作)と、そのショット領域Sの露光が終了した後、次のショット領域Sを露光開始位置に移動するための動作(ステッピング動作)とを繰り返しながら、基板P上の複数のショット領域Sを、投影光学系PL及び液浸空間LSの液体LQを介して順次露光する。基板Pの複数のショット領域Sに対して露光光ELが順次照射される。
【0080】
本実施形態において、制御装置8は、投影光学系PLの投影領域PRと基板Pとが、
図4中、矢印R1に示す移動軌跡に沿って相対的に移動するように基板ステージ2を移動しつつ投影領域PRに露光光ELを照射して、液体LQを介して基板Pの複数のショット領域Sを露光光ELで順次露光する。基板Pの露光における基板ステージ2の移動中の少なくとも一部において、液浸空間LSは、間隙Ga上に形成される。
【0081】
このとき、間隙Gaには、
図3に示すように、液体供給装置18から供給された液体LQが流入する。間隙Gaに流入した液体LQは、流体吸引装置26の作動による負圧吸引力で多孔部材80の孔を介して吸引され、吸引口24、孔81H及び流路25を介して吸引・回収される。ここで、間隙Gaに流入する液体LQの量は、例えば、基板Pの表面Paや側面Pcにおける撥液特性等によって変動する可能性がある。
【0082】
例えば、
図6に示すように、間隙Gaに流入する液体LQの量が、
図3に示した液体LQの量よりも少ない場合には、液体LQの気化熱も少なくなることにより、
図5にグラフG1で示すように、時間の経過とともに、駆動システム5の発熱等により基板ステージ2の温度が所定温度T1よりも高くなる可能性がある。逆に、間隙Gaに流入する液体LQの量が多い場合には、液体LQの気化熱も多くなることにより、
図5にグラフG2で示すように、時間の経過とともに、駆動システム5の発熱等があっても基板ステージ2の温度が所定温度T1よりも低くなる可能性がある。このように、基板ステージ2に温度変動が生じた場合には、基板Pの熱変形に伴って基板Pにおけるショット領域Sの位置、大きさ等に誤差が生じたり、基板ステージ2に計測機器が設けられる場合には、計測精度が低下して露光不良となる可能性がある。
【0083】
そのため、本実施形態では、制御装置8が液体供給装置50を制御し、
図6に示すように、間隙Gaを介して流入する液体の量の変動に追従させて、流路51を介して間隙Ga(空間部23)に液体を供給させる。換言すれば、制御装置8は、液浸空間LSから間隙Gaに流入する液体の量の変動を相殺するように、流路51を介して間隙Ga(空間部23)に液体供給装置50から液体を供給する。
具体的には、制御装置8は以下に示すような方法で間隙Gaにおける液体の量の変動を減らす。
【0084】
(液体回収量に応じた液体供給)
流体吸引装置26の作動により、間隙Gaにおける液体を吸引して回収するとともに回収した液体の量を第1センサーで検出し、第1センサーで検出した液体の量が、予め設定した範囲から外れた場合に、第1センサーで検出した液体の量が設定した範囲内となる量を液体供給装置50により供給させる。第1センサーとしては、例えば上述した流体吸引装置26に設けられる流量計が例示できる。この場合、制御装置8は、流体吸引装置26の動作と液体供給装置50の動作とを同期制御して、間隙Gaにおける液体のうち、例えば液体供給装置50からの液体の量が、液浸空間LSから間隙Gaへ流入する液体の量よりも相対的に多くすることにより、基板Pの表面Paを経て間隙Gaに流入する液体供給装置18からの液体に含まれる異物等の悪影響を抑制できる。
【0085】
(回収した液体の温度に応じた液体供給)
流体吸引装置26の作動により、間隙Gaにおける液体を吸引して回収するとともに回収した液体の温度を第2センサーで検出し、第2センサーで検出した液体の温度が、予め設定した範囲から外れた場合に、間隙Gaにおける液体の量が変動して基板ステージ2の温度変動が生じた可能性があるため、第2センサーで検出した液体の温度が設定した範囲内となる量を液体供給装置50により供給させる。この場合についても、制御装置8は、流体吸引装置26の動作と液体供給装置50の動作とを同期制御して、間隙Gaにおける液体のうち、液体供給装置50からの液体の量が、液浸空間LSから間隙Gaへ流入する液体の量よりも相対的に多くすることにより、基板Pの表面Paを経て間隙Gaに流入する液体供給装置18からの液体に含まれる異物等の悪影響を抑制できる。なお、上記各例において、流体吸引装置26による液体回収(吸引)量が一定となるのであれば、必ずしも液体供給装置50からの液体の量を、液浸空間LSから間隙Gaに流入する液体の量よりも相対的に多くしなくともよい。
【0086】
また、上記液体供給装置50による液体の供給では、液体の蒸発に伴う気化熱を調整しているが、例えば、液体供給装置50が供給する液体の温度を調整する温調装置を設け、間隙Gaにおける液体の温度が設定した範囲内となるように温度調整された液体が液体供給装置50から供給される構成とすることで、短時間での液温調整を可能とすることもできる。なお、回収した液体の温度に応じた液体供給装置50による液体供給と、先に説明した液体回収量に応じた液体供給装置50による液体供給とを併用してもよいことは言うまでもない。
【0087】
(基板ステージ2の温度に応じた液体供給)
温度センサTS1、TS2の少なくとも一方の計測結果が予め設定した範囲から外れた場合には、液浸空間LSから間隙Gaに流入する液体の量が変動して基板ステージ2の温度変動が生じたと推定できる。よって、制御装置8は、温度センサTS1、TS2で計測される温度が設定した範囲内となるように、液体供給装置50により供給口51aから空間部23へ液体を供給させるように制御する。
【0088】
(露光条件に応じた液体供給)
基板Pの露光条件によっては、例えば、上述した各種センサーを用いない場合でも、液浸空間LSから間隙Ga内に流入する液体の量を推定することが可能である。そのため、露光条件に応じて液体供給装置50から供給する液体の量を調整することも可能である。この種の露光条件としては、例えば、基板Pの形状、基板Pの液体に対する撥液性、基板ステージ2の移動条件等が挙げられる。
【0089】
基板Pの形状として、例えば、円形の基板Pの真円度によって間隙Gaの幅が変動することが既知である場合には、予め推定される間隙Ga内に流入する液体の量の変動による間隙Ga内の液体量の変動を減らすように、上述した方法で液体供給装置50から液体を供給する。同様に、基板Pの液体に対する撥液性についても、撥液性にばらつきがある場合には、間隙Ga内に流入する液体の量が変動する。そのため、基板Pの撥液性のばらつき度合いが既知である場合には、予め推定される間隙Ga内に流入する液体の量の変動による間隙Ga内の液体量の変動を減らすように、上述した方法で液体供給装置50から液体を供給すればよい。
【0090】
また、基板ステージ2の移動条件については、上述したように、液浸空間LSが間隙Gaを跨ぐように基板ステージ2が移動する場合と、間隙Gaを跨がずに基板ステージ2が移動する場合とでは間隙Ga内に流入する液体の量が変動する可能性がある。この場合、制御装置8は予め設定されているショット領域Sの分布及び露光順序に基づき、予め推定される間隙Ga内に流入する液体の量の変動による間隙Ga内の液体量の変動を減らすように、上述した方法で液体供給装置50から液体を供給すればよい。例えば、液浸空間LSが間隙Gaを跨いた状態で露光処理が行われる際には、液体供給装置50から供給する液体の量を減らし(または液体供給を停止し)、液浸空間LSが間隙Gaを跨がない状態で露光処理が行われる際には、液体供給装置50から供給する液体の量を増やすように供給量を調整してもよい。
【0091】
上述した液体供給装置50から液体を供給するタイミングとしては、例えば、基板P毎に実施することができる。この場合、基板Pに対する露光処理前、あるいは露光処理後に液体を供給することにより、露光処理中に実施した場合の振動等の悪影響を排除することが可能となる。また、予め設定された数の基板Pを露光するたびに、液体供給装置50から供給する液体の量を調整することで、液体供給装置18から間隙Gaに流入する液体の量が変動する場合でも、間隙Gaにおける液体の量の変動をより高精度に管理することができる。または、液体供給装置50から常時一定量の液体を供給しつつ、上述した変動があった場合に当該変動を抑制するように液体供給装置50からの液体供給量を変化させてもよい。
【0092】
以上説明したように、本実施形態では、液体供給装置50から間隙Gaに液体を供給することにより、間隙Gaにおける液体の量の変動に起因して基板ステージ2に生じる温度変動を抑制するころができる。従って、本実施形態では、基板ステージ2の温度変動に伴う露光不良の発生を抑えることが可能となる。
【0093】
<第2実施形態>
次に、露光装置EXの第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、液体回収装置21の液体回収量に基づいて、液体供給装置50からの液体供給量を調整する。
【0094】
液体回収装置21は、液浸部材7により液浸空間LSから回収される液体の量を計測する流量計を備えている。この液体回収装置21の流量計の値は、液浸空間LSから間隙Gaに流入する液体の量により変動する。すなわち、液体回収装置21の流量計によって計測される液体回収量が増加した場合は、液浸空間LSから間隙Gaに流入する液体の量が少なくなったと推定できる。
【0095】
よって、本実施形態では、例えば液体回収装置21の流量計の値が増加したときに、液体供給装置50から空間部23へ液体の供給を開始するように制御する。なお、液体供給装置50から一定量の液体を常時供給している場合には、その供給量を増加させてもよい。
これにより、空間部23から流体吸引装置26へ吸引される流体(液体)の量を調整することができ、上述した気化熱の変動を抑制することができる。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0097】
例えば、上記実施形態では、間隙Gaにおける液体の量を調整することにより、基板ステージ2の温度を調整する構成について説明したが、これに限定されるものではなく、上述した液体の供給処理と、ヒータHT1、HT2による加熱処理を組み合わせて基板ステージ2の温度調整を行う構成としてもよい。
【0098】
また、基板の非露光時には、液体供給装置50の供給口51aからクリーニング液体を供給してもよい。これにより多孔部材80および空間部23のクリーニングを行なうことができる。クリーニング液体としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、及びペンタノールの少なくとも一つを含んでもよい。または、クリーニング液体として、アルカリ性液体、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH:tetramethyl ammonium hydroxide)を含んでもよい。なお、クリーニング液体として、酸性液体を用いてもよい。例えば、液体LCが、過酸化水素を含んでもよい。例えば、液体LCとして、過酸化水素水溶液(過酸化水素水)を用いてもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、間隙Gaとして基板Pとカバー部材Tとの間に形成される構成を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、
図7に示すように、基板ステージ2における物体としてのカバー部材Tの周囲に間隙Gmをあけて部材としてのスケール部材(計測部材)GTが設けられ、スケール部材GTを用いてその基板ステージ2の位置を計測するエンコーダシステムが用いられる場合には、間隙Gmに残留する液体LQの量を、上記実施形態と同様に調整することも可能である。この場合の間隙Gmは、スケール部材GTのエッジ部Eggと、カバー部材Tのエッジ部Egとの間に形成される。
なお、このようなエンコーダシステムは、例えば米国特許出願公開第2007/0288121号明細書に開示されている。
【0100】
また、基板ステージ2の他に、
図7に示されるように、計測ステージ3において、露光光ELを計測するための計測部材(計測器)Cとカバー部材Qとの間に形成される間隙Gnに残留する液体LQの量を、上記実施形態と同様に調整することも可能である。この場合の間隙Gnは、カバー部材Qのエッジ部Egqと、計測部材Cのエッジ部Egcとの間に形成される。さらに、露光処理から計測処理への移行時、あるいは計測処理から露光処理への移行時に、基板ステージ2と計測ステージ3とが近接した状態を維持したまま、液浸空間LSが基板ステージ2上と計測ステージ3上との間を相対移動する際に、これら基板ステージ2と計測ステージ3との間の間隙に残留する液体LQを、上記実施形態と同様に調整することも可能である。
【0101】
なお、上述の各実施形態においては、投影光学系PLの終端光学素子12の射出側(像面側)の光路Kが液体LQで満たされているが、投影光学系PLが、例えば国際公開第2004/019128号パンフレットに開示されているような、終端光学素子12の入射側(物体面側)の光路も液体LQで満たされる投影光学系でもよい。
【0102】
なお、上述の各実施形態においては、露光用の液体LQとして水を用いているが、水以外の液体であってもよい。液体LQとしては、露光光ELに対して透過性であり、露光光ELに対して高い屈折率を有し、投影光学系PLあるいは基板Pの表面を形成する感光材(フォトレジスト)などの膜に対して安定なものが好ましい。例えば、液体LQとして、ハイドロフロロエーテル(HFE)、過フッ化ポリエーテル(PFPE)、フォンブリンオイル等を用いることも可能である。また、液体LQとして、種々の流体、例えば、超臨界流体を用いることも可能である。
【0103】
なお、上述の各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
【0104】
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
【0105】
さらに、ステップ・アンド・リピート方式の露光において、第1パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第1パターンの縮小像を基板P上に転写した後、第2パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第2パターンの縮小像を第1パターンと部分的に重ねて基板P上に一括露光してもよい(スティッチ方式の一括露光装置)。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
【0106】
また、例えば米国特許第6611316号明細書に開示されているように、2つのマスクのパターンを、投影光学系を介して基板上で合成し、1回の走査露光によって基板上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置などにも本発明を適用することができる。また、プロキシミティ方式の露光装置、ミラープロジェクション・アライナーなどにも本発明を適用することができる。
【0107】
また、本発明は、米国特許第6341007号明細書、米国特許第6208407号明細書、米国特許第6262796号明細書等に開示されているような、複数の基板ステージを備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。例えば、
図8に示すように、露光装置EXが2つの基板ステージ2001、2002を備えてもよい。その場合、射出面13と対向するように配置可能な物体は、一方の基板ステージ、その一方の基板ステージに保持された基板、他方の基板ステージ、及びその他方の基板ステージに保持された基板の少なくとも一つを含む。
【0108】
また、複数の基板ステージと計測ステージとを備えた露光装置にも適用することができる。
【0109】
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)、マイクロマシン、MEMS、DNAチップ、あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
【0110】
なお、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6778257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する可変成形マスク(電子マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれる)を用いてもよい。また、非発光型画像表示素子を備える可変成形マスクに代えて、自発光型画像表示素子を含むパターン形成装置を備えるようにしても良い。
【0111】
上述の各実施形態においては、投影光学系PLを備えた露光装置を例に挙げて説明してきたが、投影光学系PLを用いない露光装置及び露光方法に本発明を適用することができる。例えば、レンズ等の光学部材と基板との間に液浸空間を形成し、その光学部材を介して、基板に露光光を照射することができる。
【0112】
また、例えば国際公開第2001/035168号パンフレットに開示されているように、干渉縞を基板P上に形成することによって、基板P上にライン・アンド・スペースパターンを露光する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
【0113】
上述の実施形態の露光装置EXは、各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0114】
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、
図9に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、上述の実施形態に従って、マスクのパターンからの露光光で基板を露光すること、及び露光された基板を現像することを含む基板処理(露光処理)を含む基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
【0115】
なお、上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態及び変形例で引用した露光装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。