特許第6171749号(P6171749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6171749
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】発光装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/54 20100101AFI20170724BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20170724BHJP
【FI】
   H01L33/54
   H01L33/56
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-184078(P2013-184078)
(22)【出願日】2013年9月5日
(65)【公開番号】特開2015-53326(P2015-53326A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】三木 倫英
【審査官】 村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−012544(JP,A)
【文献】 特開2013−069765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、前記発光素子の光出射面を露出するように側面を被覆する被覆部材と、前記発光素子と前記被覆部材の光出射方向の上面において、前記被覆部材の端面と略同一面上の端面を有する透光性部材と、前記被覆部材と前記透光性部材を接着する接着層と、を備える発光装置であって、
前記被覆部材は上面に凹部を有し、
前記接着層は、少なくとも前記凹部に設けられ、且つ前記発光素子の上面にわたっており、
前記凹部の接着層の厚みは、前記発光素子上面の接着層の厚みよりも厚く、
前記凹部の接着層によって、前記透光性部材と前記被覆部材の少なくとも一部が接着されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記透光性部材は、蛍光体を含有していることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
発光素子と、前記発光素子の光出射面を露出するように側面を被覆する被覆部材と、前
記発光素子と前記被覆部材の光出射方向の上面において、前記被覆部材の端面と略同一面
上の端面を有する透光性部材と、前記被覆部材と前記透光性部材を接着する接着層と、を
備える発光装置であって、
前記被覆部材は上面に凹部を有し、
前記接着層は、少なくとも前記凹部に設けられ、
記凹部の接着層によって、前記透光性部材と前記被覆部材の少なくとも一部が接着され、
前記凹部内に、前記透光性部材が配置されることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
前記透光性部材は、下面が略平坦面であることを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記凹部は、前記発光素子に沿っていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
発光素子と、前記発光素子の側面を被覆する被覆部材と、前記発光素子と前記被覆部材の光出射方向の上面にある透光性部材と、前記被覆部材と前記透光性部材を接着する接着層と、を備える発光装置の製造方法であって、
前記被覆部材の上面を、前記発光素子の光出射面と略同一面上となるように形成し、その上面に凹部を形成する第1の工程と、
少なくとも前記凹部に、前記接着層を配置する第2の工程と、
前記透光性部材を、前記凹部の接着層と少なくとも一部が接着するように形成する第3の工程と、
前記被覆部材と前記透光性部材の端面を、略同一面上になるように切断する第4の工程と、を有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記接着層は、前記凹部において前記発光素子の上面よりも厚くなるように形成することを特徴とする請求項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記第3の工程において、前記透光性部材は、予め前記凹部の接着層と少なくとも一部が接する形状に加工した後に配置する請求項又はに記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の側面を被覆する被覆部材と、発光素子と被覆部材の上面の透光性部材と、被覆部材と透光性部材を接着する接着層と、を備えた発光装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(Light-Emitting Diode:LED)は、低消費電力、長寿命、高信頼性など多くの特長を有し、青色LEDと蛍光体を組み合わせた白色LEDの実用化により、各種照明やバックライト用光源など様々な用途で広く利用されている。近年では、その需要の広がりに伴い、LEDのさらなる発光出力および発光効率の向上が期待されており、高出力で且つ信頼性の高い光源が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される発光装置は、発光素子に対向配置される光透過部材と、発光素子の出射面を露出し、発光素子と光透過部材の側面を被覆する光反射性の被覆部材と、を備えている。この発光装置では、発光素子と光透過部材の離間領域に空隙と第1の反射面を設けることで、LEDチップを固着する接着剤や光透過部材の劣化を防ぎながら、戻り光を再反射させて光透過部材への光結合効率の低下を抑制している。
【0004】
特許文献2の製造方法から得られる発光装置は、底面に接続用電極を有したLEDダイであって、その側面の反射層が下方に向かって延出しており、蛍光体層がLEDダイの上面と反射層の上部を覆っている。このような構成とすると、実装後に反射層の延出部が側方および底部から漏出する光を遮るので、量産性よく光取り出し効率の高いLEDダイを製造することができる。
【0005】
また、特許文献3に開示された半導体発光素子は、半導体層の側方に設けられた反射部と、半導体層の側方で実質的に蛍光体を含まない領域と、少なくとも半導体層上面において蛍光体層を含有する領域とを有する封止部材と、を備えている。すなわち、光が半導体層の上方向に直接照射される部位と、横方向に放出されて反射部で反射して上方向に放出される部位を、蛍光体を含有した封止部材で被覆することで、光の変換効率と出力の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−283281号公報
【特許文献2】特開2012−253223号公報
【特許文献3】特開2009−43764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2,3のように、発光素子の側方に反射部を設け、その上面を蛍光体層や封止部材で被覆することで、色むらや輝度むらを低減した光取り出し効率の高い発光装置とすることができる。しかしながら、構成部材の端面が略同一面上にある構造とすると、特に上面に配置される部材の剥離が懸念される。特許文献1では、発光素子と波長変換部材を有する光透過部材を接着剤で接着する構成が開示されているが、接着剤を介することで両部材の離間距離は大きくなる。従って、発光装置を薄型に維持することが困難であり、さらに、発光素子からの出射光の光取り出し効率と波長変換効率は低下する。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、透光性部材と被覆部材の密着性を向上しつつ、薄型で光取り出し効率のよい発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発光素子と、発光素子の光出射面を露出するように側面を被覆する被覆部材と、発光素子と被覆部材の光出射方向の上面において、被覆部材の端面と略同一面上の端面を有する透光性部材と、被覆部材と透光性部材を接着する接着層と、を備える発光装置であって、被覆部材は上面に凹部を有し、接着層は少なくとも凹部に設けられ、凹部の接着層によって、透光性部材と被覆部材の少なくとも一部が接着されていることを特徴とする。
【0010】
また、発光素子と、発光素子の側面を被覆する被覆部材と、発光素子と被覆部材の光出射方向の上面にある透光性部材と、被覆部材と透光性部材を接着する接着層と、を備える発光装置の製造方法であって、被覆部材の上面を、発光素子の光出射面と略同一面上となるように形成し、その上面に凹部を形成する第1の工程と、少なくとも凹部に、接着層を配置する第2の工程と、透光性部材を、凹部の接着層と少なくとも一部が接着するように形成する第3の工程と、被覆部材と透光性部材の端面を、略同一面上になるように切断する第4の工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
このような構成とすることで、凹部に接着層を保持させることができ、発光素子上の接着層の厚みを調整できる。従って、透光性部材と被覆部材の密着性を向上しつつ、薄型で光取り出し効率のよい発光装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(a)は、本発明の実施形態1に係る発光装置の平面視図である。ただし、図1(a)は透光性部材配置前の状態である。図1(b)は図1(a)のA−A断面における断面図であり、図1(c)は凹部および接着層付近の部分拡大図である。
図2図2(a)は凹部および接着層が図1(b)と異なる一例を示した断面図であり、図2(b)は凹部および接着層付近の部分拡大図である。
図3図3(a)は、本発明の実施形態2に係る発光装置の平面視図である。ただし、図3(a)は透光性部材配置前の状態である。図3(b)は図3(a)のA−A断面における断面図であり、図3(c)は凹部および接着層付近の部分拡大図である。
図4図4(a)は、本発明の実施形態1に係る製造工程を示す概略図である。図4(b)は凹部および接着層付近の部分拡大図である。
図5図5は、図4(a)の点線部分で切断した場合の発光装置の断面図である。
図6図6(a)〜(e)は、本発明の一実施形態に係る発光装置の凹部と接着層付近の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する発光装置は、本発明の技術的思想を具現化するためのものであって、本発明を以下のものに特定しない。特に、以下に記載される構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、以下に記載されている実施形態も同様に、特に排除する記載がない限りは各構成等を適宜組み合わせて適用できる。
【0014】
<実施形態1>
図1(a)は、本発明の実施形態1に係る発光装置の平面視図である。図1(b)は図1(a)のA−A断面における断面図であり、図1(c)は凹部および接着層付近の部分拡大図である。図1に示す例の発光装置100は、主として、発光素子1と、導電配線2と、被覆部材3と、透光性部材5と、被覆部材と透光性部材を接着する接着層6と、から構成される。導電配線2には、発光素子1がフリップチップ実装されている。また、発光素子1の光出射面を露出するように側面を被覆し、透光性部材5と接する上面に凹部4を有する被覆部材3が配置されている。発光素子の光出射面と被覆部材の凹部以外の上面は、少なくとも一部が略同一面上にある。さらに、発光素子1と被覆部材3の光出射方向の上面を、透光性部材5が連続して被覆しており、被覆部材3と透光性部材5の端面は、略同一面上に形成されている。なお、本実施形態では、透光性部材5は発光素子からの出射光の少なくとも一部を波長変換可能な蛍光体を含有しており、被覆部材3は光反射性材料を含有している。
【0015】
接着層6は、少なくとも凹部4に配置されており、その凹部の接着層6aにより、透光性部材5と被覆部材3の少なくとも一部が接着されている。すなわち、凹部4と透光性部材5は完全に嵌合しておらず、両部材の隙間の少なくとも一部に、凹部の接着層6aが補充されている。接着層6は、少なくとも凹部4に配置されていればよいが、実施形態1では、凹部周辺の発光素子と被覆部材の上面にも接着層6bが設けられている。
【0016】
以上説明したように、本発明の発光装置は、発光素子と、発光素子の光出射面と少なくとも一部が略同じ高さで発光素子の側面を被覆する被覆部材と、発光素子と被覆部材の光出射方向の上面に、被覆部材の端面と略同一面上の端面を有する透光性部材と、少なくとも凹部に設けられた接着層と、を備えており、凹部の接着層により、透光性部材と被覆部材の少なくとも一部が接着されている。本発明の構成によると、凹部の接着層によって、透光性部材と被覆部材の少なくとも一部が接着されているので、発光装置を厚くすることなく、端面の揃った被覆部材と透光性部材の剥離を防ぐことができる。特に、比較的深い凹部に硬質な透光性部材を配置するような、両部材の密着性が確保しにくい場合において、効果的に密着性を向上させることができる。さらに、凹部によって接着層の厚み(発光素子と透光性部材の離間距離)を調整することが可能なので、発光素子からの出射光の光取り出し効率又は波長変換効率を維持することができる。
【0017】
次に、本発明の発光装置の各構成部材について、以下に詳述する。
【0018】
(発光素子)
発光素子1は公知のもの、具体的には半導体発光素子を利用でき、特に発光素子構造にGaN系化合物半導体を用いると、蛍光体を効率良く励起できる短波長の可視光や紫外光が発光可能である。具体的な発光ピーク波長は、約240nm〜560nm、好ましくは約380nm〜470nmである。なお、この他、ZnSe系、InGaAs系、AlInGaP系の半導体発光素子でもよい。
【0019】
(発光素子構造)
半導体層による発光素子構造は、少なくとも第1導電型(n型)層と第2導電型(p型)層により構成され、その間に活性層を有する構造が好ましい。また、電極構造は、一方の主面側に第1導電型、第2導電型の両電極が設けられる同一面側電極構造が好ましいが、半導体層の各主面に対向して電極が各々設けられる対向電極構造でもよい。前記同一面側電極構造では、電極形成面を実装面として、それに対向する基板側を主な光出射面とするフリップチップ実装が好ましい。フリップチップ実装とすると、蛍光体層と対向する発光素子の表面側に電極やワイヤがないので光取り出し効率がよく、バンプ等によって発光素子の電極と基板とを対向配置して接続するので高い放熱性を確保でき、実装面積も小さく済む。なお、半導体層の成長基板は除去してもよく、さらに成長基板が除去された半導体層に、例えば導電性基板または別の透光性部材や基板を接着した構造とすることもできる。成長基板の除去は、支持体、装置又はサブマウントに実装又は保持して、剥離、研磨、若しくはLLO(Laser Lift Off)で実施できる。また、発光素子は光反射構造を有することができ、具体的には、半導体層の互いに対向する2つの主面の内、光出射面と対向する他方の主面を光反射側とし、この光反射側の半導体層内や電極などに光反射構造を設ける。光反射構造の例として、半導体層内に多層膜反射層を設ける構造、あるいはAg、Al等の光反射性の高い金属膜や誘電体多層膜を有する電極、反射層を設ける構造等がある。
【0020】
図1の発光素子1の一例について説明する。発光素子1は、透光性のサファイア基板上に、第1の窒化物半導体層であるn型半導体層、活性層である発光層、第2の窒化物半導体層であるp型半導体層が順に積層されている。n型層の一部が露出された部分に第1の電極であるn型パッド電極が設けられ、p型層のほぼ全面にAg等の光反射率の高い導電層、透光性導電層上に第2の電極であるp型パッド電極を設け、保護膜をn型、p型パッド電極の表面を露出して半導体層を被覆するように設けている。発光素子の基板は、サファイアなどの絶縁性基板、また炭化珪素、Si、ZnS、ZnO、GaNやAIN等の半導体の導電性基板を用いることができる。発光素子の基板が光出射面となる場合には、サファイア、SiN等の透光性であることが好ましい。
【0021】
(被覆部材)
被覆部材3は、図1(b)に示すように発光素子1の側面を被覆する。詳述すると、発光素子1の光出射面を露出し、発光素子の側面を埋め込むように被覆している。すなわち、発光素子1の光出射面と、被覆部材の凹部以外の上面の少なくとも一部は略同一面上にあり、両者の高さは略等しい。しかし、完全に同じ高さでなくてもよく、約10〜30μm程度の若干の高低差があってもかまわない。図2(a)のように、被覆部材3が発光素子1の側面を全て被覆していない状態でもよい。
【0022】
また、被覆部材3は、発光素子の光出射方向の上面に凹部4を有する。凹部4は被覆部材3の表面全体にわたる緩やかな湾曲ではなく、発光素子1の光出射面と略同一面上にある被覆部材3の上面に対して、穴や溝が形成されたような凹部(例えば深さ約30〜70μm程度、より好ましくは約50μm程度)である。このような比較的深い凹部に対して、透光性部材5を完全に嵌合(密着)させることは、変形しやすい可撓性の透光性部材を用いるか、透光性部材に凹部と嵌合するような凸部を形成する必要があるが、凹部が接着層6aを有することで、両部材を接合させやすく、密着性を確保することができる。
【0023】
接着層の厚みは、この凹部4によって調整することが可能である。詳述すると、凹部のみに接着層を設けて透光性部材と接着させた場合、透光性部材の剥離を防止できる上に、透光性部材が光出射面を直接被覆できる。さらに、発光素子の上面に接着層が配置された場合でも、透光性部材の配置時の圧力によって、発光素子上の余分な接着層を凹部へ流動させることで、発光素子1と透光性部材5の離間距離を最小限にとどめつつ、発光素子1、被覆部材3、透光性部材5の密着性を向上できる。従って、発光素子1からの出射光を効率よく透過又は波長変換できる薄型の発光装置100とすることができる。
【0024】
以上のことから凹部4は、発光素子上面の余分な接着層6bを流動させやすく、光出射量が多く劣化の進行が著しい発光素子周辺、特に発光素子1に沿って形成されていると好ましい。そうすることで、効率的に構成部材の密着性を向上させることができる。
【0025】
凹部4は、図1(a)のように連続していても、分断されていても、不均一に分布させてもよい。凹部4と透光性部材5を完全に嵌合させる必要がないので、複雑な形状で偏在させることもできる。後述するように、透光性部材の配置時に接着層を移動させる場合、凹部の形状を問わずに凹部内に容易に接着剤を設けることができる。しかし、凹部4には少なくとも一部に接着層6を設ける必要があるので、規則的又は周期的な形状や配置である方が、接着層6を配置しやすく好ましい。
【0026】
ところで、被覆部材3は、金型を用いた圧縮成型で形成することができる。その際、金型と発光素子及び被覆部材を剥離しやすくするために、金型と発光素子及び被覆部材の間に離型シートを配置することがある。この離型シートの弛みを利用して被覆部材の凹部を形成すると、被覆部材と凹部の形成が同時に行え、効率的である。
【0027】
離型シートの弛みは、発光素子に離型シートが押圧されることで、発光素子と金型に圧迫された部分の離型シートが変形し、被覆部材が充填される空間の方へ寄ることで発生する。すなわち、略平坦な上金型の表面に、離型シートの弛みによる凸形状が形成され、そこに被覆部材が充填されることで被覆部材に凹部が形成される。この場合、凹部は発光素子に沿ったものとなることが多いが、発光素子から離間した凹部を形成することも可能である。以上のように、離型シートを用いると、凸形状を有さない上金型でも、被覆部材に凹部を形成することが可能であり、金型の形成やメンテナンスのコストを削減することができる。
【0028】
凹部の深さは、離型シートの厚さの倍程度になることが多いが、薄い離型シートを用いることにより発生する離型シートの撚れで、比較的開口面が狭く深い凹部を発光素子から離間した位置に形成することも可能である。また、複数の発光素子を配置し、その配置間隔を狭くする(例えば約100〜1000μm程度離間させる)と、隣接する発光素子同士に圧迫された離型シートの弛みが発光素子間で相乗し、より深い凹部(例えば深さ約50μm以上)が発光素子に沿って形成されやすい。
【0029】
図2(a)に示すように、離型シートの弛みが被覆部材の発光素子方向に押し付けられることで、側面が発光素子の側面と被覆部材で形成されるような凹部4を形成することも可能である。このような凹部4とすると、凹部4のみに接着層6を有する場合でも、発光素子1と被覆部材3と透光性部材5の3つの部材の密着性を向上することができ好ましい。凹部の形成は、離型シートの弛みを用いるほか、上金型の凸構造、エッチング、切削、ブラスト加工等によって所望の位置や形状に形成することができる。
【0030】
実施形態1では、平面視矩形の発光素子1を1つ用い、その発光素子1の4辺全ての周縁に沿った周溝状の凹部4が設けられている。発光素子に沿った凹部とは、図1(a)のように平面視で見て凹部4が発光素子1と接している状態を指す。凹部4が発光素子の全周縁に沿ってあることで、被覆部材3と透光性部材5の密着状態を均一にでき、発光素子1からの出射光を均等に透過させることができる。特に、透光性部材5が蛍光体を含有する場合は、発光色の色むらを防止できる。なお、複数の発光素子を配置する場合も、凹部4の形状及び位置は特に限定されず、その少なくとも一部に接着層6を配置できればよい。
【0031】
被覆部材3の材料としては、例えば、透光性の基材に光反射性材料を含有させたものを用いることができる。被覆部材3が光反射性を有する部材であると、発光素子1からの出射光を側面から漏らすことなく上方の透光性部材へ反射させることができ好ましい。また、被覆部材3は光反射性を有さない透光性の基材のみで構成されていてもよく、前述した蛍光体等の波長変換部材を含有していてもかまわない。形成する工程が別であれば、材料が透光性部材5と一部異なっていても全く同じでもよい。なお、透光性部材5と被覆部材3のどちらか一方に波長変換部材を含有させ、一方は波長変換部材を含有しない透光性とすることで、波長変換時の光の吸収を低減することができ、光取出し効率の高い発光装置とすることができる。
【0032】
基材は、例えば樹脂材料であり、さらに透光性のシリコーン樹脂組成物、変性シリコーン樹脂組成物等を用いることができる。また、エポキシ樹脂組成物、変性エポキシ樹脂組成物、アクリル樹脂組成物等の透光性を有する絶縁樹脂組成物を用いることもでき、これらの樹脂を少なくとも一種以上含むハイブリッド樹脂等、耐候性に優れた封止部材も利用できる。基材が以上のような樹脂であると、被覆部材の上面に容易に凹部を形成可能であり、被覆領域(発光素子の側面)の制御性、封止性能、気密性能を高められるので好ましいが、ガラス、シリカゲル等の耐光性に優れた無機物を用いることもできる。さらに、耐熱性の高い基材とすると、発光素子1や透光性部材5からの熱に対応できる。実施形態1では、被覆部材3を構成する基材となる樹脂にシリコーン樹脂を用いる。シリコーン樹脂は耐熱性、耐光性が高く、好適に用いられる。
【0033】
光反射性材料は、高い光反射性を有するものであり、材料としては、Ti,Zr,Nb,Al,Siからなる群から選択される1種の酸化物、若しくはAlN,MgFの少なくとも1種であり、具体的にはTiO,ZrO,Nb,Al,MgF,AlN,SiOよりなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。光反射性材料の粒子が、Ti,Zr,Nb,Alからなる群から選択される1種の酸化物であると、高い光反射性を有しつつ光吸収を抑えられ、基材との屈折率差を大きくできるので好ましい。被覆部材3は、前記光反射性材料による成形体で構成することもでき、具体的には前記粒子を凝集した凝集体、焼結体等の多孔質材料とすることもできる。その他に、ゾル・ゲル法による成形体でもよい。
【0034】
上述した、基材中に光反射性材料を含有する被覆部材3では、光反射性材料の含有濃度で光の漏れ方が異なるため、発光装置の形状や大きさに応じて適宜調整するとよい。例えば、比較的小さな発光装置で被覆部材の幅や厚みを薄く形成する場合(例えば発光装置の厚さ約50μm以下)、高濃度の光反射性材料を備えることが好ましい。一方、被覆部材3の原料の調製、塗布、成形等の製造に適するように、粒径は従来のフィラー等と同様のものを用いることができる。一例として、光反射性材料の含有濃度は20重量パーセント濃度以上、被覆部材の厚さは約20μm以上とすると好適である。この範囲であれば、生産性がよく、光出射面から高輝度で指向性の高い放出光を得られる。さらに、樹脂である基材中には、その他のフィラーを添加してもよい。例えば、熱伝導性材料を付加することができ、発光素子による発熱を効率良く拡散でき、信頼性と出力を向上できる。熱伝導性材料として、具体的には0.8W/K・m以上の熱伝導率が好ましく、例えばAg,Cu等の金属材料や、ダイヤモンド、アルミナ、AlN等のセラミックス材料が挙げられ、これらを混合して含有させてもよい。また、顔料などを混合させて着色し、特定の波長の光を吸収させることもできる。
【0035】
被覆部材3の被覆領域は上述の通りであるが、発光素子と一対の導電配線間にも、被覆部材3が設けられていると好ましい。詳述すると、フリップチップ実装された発光素子1の底面のpパッド電極とnパッド電極および導電性接着剤の間を充填するように設けられる。これにより、一対の導電配線間を絶縁でき、さらに光の取り出し効率や波長変換効率を高めることが可能であり、放熱性をよくすることができる。
【0036】
(接着層)
接着層6は、凹部内の少なくとも一部に設けられ、その凹部の接着層6aによって透光性部材5と被覆部材3の少なくとも一部が接着される。材料としては、発光素子1からの出射光を透過性部材側へと有効に導光でき、双方の部材を光学的に連結できる透光性樹脂が好ましい。さらに、発光素子の基板(光出射面)として用いられる部材(例えば、サファイア等)よりも屈折率の低い部材であると、光の取り出しを向上させることができる。例として、上記各部材に用いられる樹脂、一例としてシリコーン樹脂が好適に挙げられる。接着層6は、発光装置の厚みや光取り出し効率を維持するために、発光素子上面には配置しないか、最小限の量で薄く形成されることが最も好ましい。
【0037】
凹部の接着層6aは、凹部の内壁面に形成されている。凹部の接着層6aによって、透光性部材5と被覆部材3の少なくとも一部が接着されている状態とは、凹部の接着層6aを介して凹部4と透光性部材5が接着している部分が一部でもある状態を指す。なお、図6(a)のように凹部内が接着層6で満たされている(透光性部材の下面は略平坦面である)場合は、凹部の開口面の接着層6と透光性部材5が少なくとも一部接着していればよく、図6(b)のように接着層6が凹部から溢れている(透光性部材の下面は凹形状を有する)場合は、接着層6の上面(具体的には凹部内の接着層と一体である接着層)と透光性部材5が少なくとも一部接着されていればよい。いずれにしても、接着層6によって透光性部材5と被覆部材3の密着性が向上する程度に接着されていればよい。
【0038】
凹部の接着層6aと透光性部材5の間は、必ずしも接合している必要はなく、図2(b)のように空隙7が存在していてもかまわない。また、接着層6は凹部4だけでなく、発光素子1や凹部以外の被覆部材3の上面にわたって設けられていてもよい。そうすることで、発光素子1と透光性部材5の密着性が向上し、発光素子上の透光性部材5の劣化を緩和することが可能である。接着層6が発光素子の上面にわたっている状態とは、図1(b)のように凹部の接着層6aだけでなく、その周辺の発光素子1と被覆部材3の上面にも接着層6bが配置されている場合や、図3(a)のように発光素子1と被覆部材3の上面全体に接着層が配置されている状態を指す。なお、接着層6は凹部内外で必ずしも一体に形成されていなくてもよく、図6(d)のように不均一に分断されて配置されていてもよい。
【0039】
凹部は、透光性部材の嵌合性にもよるが、凹部の接着層6aによって広範囲(例えば、平面視の面積が約50%程度以上)が被覆又は充填されていると、容易で確実に透光性部材5と接合させることができ好ましい。特に、発光素子に沿った凹部は、接着層で満たされていると、発光素子からの光の取り出し効率がよく好ましい。また、接着層は、その他の各部材間や光路上に適宜設けてもかまわない。
【0040】
接着層6を凹部4以外にも設ける場合は、凹部の接着層6aは、他の部分よりも厚くなるように形成する。凹部の接着層の厚みは、図1(c)や図6(c)のAに示すように、基本的には凹部の底からその上面までの接着層の厚みとする。図6(d)のように、接着層が凹部内で分断されていたり、不均一な厚みで形成されていたりする場合は、少なくとも一部が凹部以外の接着層よりも厚く形成されていればよい。発光素子の上面の接着層の厚みとは、図1(c)のBに示すように、発光素子の光出射面からその上面までの接着層の厚みとする。例えば、図1(c)の凹部の接着層6aの厚みAを約30〜70μm程度とすると、発光素子上面の接着層6bの厚みBは、約1〜10μm程度の薄膜とすることができる。
【0041】
接着層は、図6(e)のように配置することもできる。すなわち、接着層56は、発光素子51に沿った凹部54の一部から連続して発光素子51の光出射面の略全面を被覆している。言い換えると、完成した発光装置の透光性部材を上面から透過してみて、接着層56は一体に配置されており、その面積は発光素子51の上面よりも大きい。このように、透光性の接着層が凹部から発光素子の端部の少なくとも一部にかかるように配置することで、発光素子51の出射光が、凹部の接着層からも放出されることになる。従って、光反射性の被覆部材53を用いる発光装置において、接着層が発光素子にかかるように配置されていない、又は凹部の接着層と発光素子にかかる接着層とが分断されている場合に比べて、擬似的に発光装置の発光領域が拡大されることになる。
【0042】
以上のような接着層6は、予め厚みを調整する(凹部に厚く、発光素子や凹部以外の被覆部材の上面に薄く配置する)ことで形成してもよいし、透光性部材5を配置するときの圧力を利用して形成してもよい。透光性部材5を配置するときの圧力とは、透光性部材5が配置される際に発光素子及び被覆部材方向にかかる圧力である。この圧力を利用すれば、発光素子1や凹部以外の被覆部材3の上面にある余分な接着層6を凹部4へ流動させたり、透光性部材の下面の凸形状によって、凹部4のみに配置した接着層6を発光素子1や凹部以外の被覆部材3の上面に這い上がらせたりすることができる。従って、接着層の大まかな塗布量と塗布位置を調節すれば、透光性部材5の配置と同時に接着層6の厚みを調整できる。
【0043】
塗布方法は、ディスペンサによる吐出、スピンコータでスピンコートする方法など特に限定されない。スピンコータを使用すると、広い範囲を効率的に塗布できるが、本発明では接着層6の塗布量や塗布位置をある程度調節する必要があるため、ディスペンサによる吐出も好適に用いられる。接着層の材料の粘度は低い方がよく、約10〜1000mPa・s程度とすると好ましい。低い粘度とすることで、スピンコータを用いて塗布することができるほか、発光素子や凹部以外の被覆部材の上面の余分な接着層を凹部4へ流動させやすい。
【0044】
(透光性部材)
図1の発光装置100は、発光素子1と被覆部材3の上面に、発光素子1からの光の少なくとも一部を透過する透光性部材5を備える。透光性部材5の少なくとも一部は、凹部4の接着層6によって被覆部材3と接着されているが、接着層6の配置されていない部分は、発光素子1と被覆部材3の上面を直接被覆する。
【0045】
透光性部材5の形状は、その端面が被覆部材の端面と略同一面上にあり、下面が凹部の接着層6aと少なくとも一部接着されていれば特に限定されない。しかし、凹部4に一部が入り込んだ形状、すなわち、凹部の接着層6aと接する領域において下に凸形状を有していると、凹部の接着層6aと接着させやすいので好ましい。また、透光性部材が下面に凸形状を有する場合、図3(c)の部分拡大図のように、その裏面である上面は凸形状の分だけ緩やかに窪んで(つまり、透光性部材が柔軟な状態で積層される場合、透光性部材の下面はその下方にある被覆部材の凹部及び接着層に沿って変形して)いてもかまわない。被覆部材の凹部が接着層で満たされた状態であれば、透光性部材の下面は略平坦となり、出射光が均一に放出されやすいので好ましい。
【0046】
透光性部材5は、発光素子1の光出射面との距離が近い(透光性部材が直接発光素子の光出射面を被覆している)方が、光取り出し効率のよい薄型の発光装置100とできる。さらに、本実施形態のように、透光性部材5が蛍光体等の波長変換部材を含有している場合は、効率よく波長変換ができるので好ましい。
【0047】
透光性部材5と接合する発光素子1の搭載個数は特に限定されず、1つでも複数でもよい。複数にすれば光束量を多くできて好ましい。複数とする場合は、等間隔で一列や格子状など規則的又は周期的に配置すると、好ましい配光が得られやすい。
【0048】
透光性部材5の材料は、例えば、ガラス、無機物、樹脂等を用いることができる。具体的には、ガラス板、単結晶体、多結晶体、アモルファス体、セラミック体等が挙げられる。この他、焼結体、凝集体、多孔質体、更にそれらに透光性樹脂等の透光性部材を混入、含浸したもの、透光性樹脂の成形体等から構成される。
【0049】
耐熱性の観点から、透光性部材5は樹脂等の有機材料よりもガラス等の無機材料が好ましい。本発明では、接着層6により透光性部材5を被覆部材の凹部4と完全に嵌合させなくてもよいので、比較的硬質(例えば、弾性率約10MPa以上)で耐熱性の高い透光性部材5を用いることができる。言い換えると、信頼性の高い硬質な透光性部材(例えば、ガラスやセラミック、後述する蛍光体の焼結体)は、凹部と嵌合させにくく、粘着性も低いが、凹部に接着層6があることで、被覆部材3との密着性を確保することができる。例えば、所望の焼結体の下面を、凹部の接着層6aと少なくとも一部が接合する形状となるように加工し、発光素子1と被覆部材3の上面に配置させることで、経年劣化の少ない長寿命の発光装置100とできる。
【0050】
また、透光性部材5の材料として、容易に所望の形状に変形させられる樹脂等を用いてもよい。例えば、シリコーン樹脂で構成されるシート状の透光性部材5とすれば、半硬化の柔軟な状態(例えば、弾性率約1MPa以下)で被覆部材3の上面に配置すると、その凹部の形状に沿うように変形するので、容易に透光性部材5と凹部の接着層6を接合させることができる。シート状の樹脂のような粘着性を有する透光性部材であると、被覆部材との密着性も確保しやすい。その他、フィルム状としてラミネート加工を行ってもよいし、スプレーによる噴霧、ポッティング、印刷等の方法で適宜形成することも可能である。
【0051】
透光性部材5は、上記の材料のみで構成されていてもかまわないが、本実施形態のように発光素子1からの出射光の少なくとも一部を波長変換可能な蛍光体を含有していると、所望の発光色を得ることができ好ましい。この場合、透光性部材5は蛍光体を含有する基材となる。また、透光性部材5は、蛍光体のみで構成されていてもよい。
【0052】
蛍光体は、例えば、ユーロピウム、セリウム等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体・酸窒化物系蛍光体、より具体的には、ユーロピウムで賦活されたα又はβサイアロン型蛍光体、各種アルカリ土類金属窒化シリケート蛍光体、ユーロピウム等のランタノイド系元素、マンガン等の遷移金属系元素により主に賦活されるアルカリ土類金属ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類のハロシリケート蛍光体、アルカリ土類金属シリケート蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属硫化物、アルカリ土類金属チオガレート、アルカリ土類金属窒化ケイ素、ゲルマン酸塩、セリウム等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩、希土類ケイ酸塩又はユーロピウム等のランタノイド系元素で主に賦活される有機物及び有機錯体等が挙げられる。また、上記以外でも同様の性能、効果を有する蛍光体を使用することができる。これにより、可視波長の一次光及び二次光の混色光(例えば白色系)を出射する発光装置や、紫外光の一次光に励起されて可視波長の二次光を出射する発光装置とすることができる。蛍光体は、透光性部材中だけでなく、例えば各構成部材間に介在する接着剤中、発光素子1と被覆部材3の間などに設けることができる。
【0053】
蛍光体を含有する透光性部材5としては、上述の材料を基材として蛍光体を含有させたものを用いることができる。例えば、蛍光体入りセラミック、蛍光体ガラス、蛍光体焼結体等の硬質な透光性部材が好適に用いられるが、蛍光体シート等の柔軟な透光性部材5を用いることもできる。
【0054】
(実装基板)
実装基板は、発光素子が搭載されて電気的に接続される基板であり、支持基板上に導電配線を有するもの、導電配線のみからなるもの、が挙げられる。さらに、導電配線のみからなる実装基板は、当初支持基板を有しているが、製造工程中に剥離して最終的に導電配線のみになるものと、最初から導電配線のみで形成されるもの(例えば、リード電極等)とに分類される。いずれも発光素子との実装に、半田、Agペースト、Auバンプなどの導電性接着剤などを用いてもよい。
【0055】
まず、支持基板上に導電配線を有する実装基板について詳述する。支持基板上の導電配線は、Au,Cu,Al等の金属層で形成され、異なる金属を2層以上積層してもよい。導電配線の厚さは、特に限定されないが、約1〜50μm程度であると好ましい。支持基板は、光透過率の低い材料で形成されると好適である。具体的には、セラミックス(Al,AlN等)、あるいはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、BTレジン、ポリフタルアミド(PPA)等の樹脂が挙げられる。また、表面に絶縁層を形成した金属基板であってもよい。以上のような支持基板上に導電配線を有する実装基板は、基板下方に発光素子の出射光が抜けにくく、発光装置の光取出し効率が向上するため好ましい。従って、導電配線が数μm程度の薄膜である場合や、被覆部材が光反射性を有さない場合に、光漏れ防止に好適に用いられる。
【0056】
次に、導電配線のみからなる実装基板について説明する。支持基板を製造工程中に除去する場合、導電配線は、Cu,Al,Au,Ag,W,Mo,Fe,Ni,Co等の金属又はこれらの合金(Fe−Ni合金等)、リン青銅、Fe入りCu、ITO等で形成される。膜厚は、例えば約25〜200μm程度とすると好ましく、更に約50〜100μm程度とすると好ましい。このような厚さの導電配線は、鍍金で積層された鍍金層であると特に好ましい。
【0057】
除去される支持基板は、SUS板などの導電性を有する金属板の他、ポリイミドなど絶縁性板にスパッタ法や蒸着法によって導電膜を形成したものを用いることができる。或いは、金属薄膜などを貼り付け可能な絶縁性の板状部材を用いてもよい。また、導電配線から剥がす必要があるため、屈曲可能な部材を用いる必要があり、材料にもよるが膜厚10〜300μm程度の板状部材を用いるのが好ましい。このような支持基板の材料としては、前記のSUSの他、Fe,Cu,Ag,Co,Ni等の金属板や、金属薄膜などを貼り付け可能なポリイミドからなる樹脂シートなどが挙げられる。このように、支持基板がなく、導電配線が発光装置100の外表面を形成することで、小型の発光装置とすることができる。
【0058】
ここで、導電配線と被覆部材の線膨張係数の差は、小さくなるように制御すると好ましい。好ましくは約40%以下、より好ましくは約20%以下の差とするのがよい。これにより、導電配線と被覆部材の剥離を抑制し、信頼性に優れた発光装置とすることができる。また、被覆部材と除去される支持基板の線膨張係数の差も、小さい方が好ましい。好ましくは約30%以下、より好ましくは約10%以下の差とするとよい。最終的に除去される支持基板としてSUS板を用いる場合、線膨張係数の差は約20ppm以下が好ましく、約10ppm以下がより好ましい。これにより、被覆部材とSUS板の残留応力を緩和でき、SUS板剥離後の発光装置の集合体の反りを緩和することができる。反りを少なくすることで、ワイヤの切断などの内部損傷を低減し、個片化する際の位置ズレを抑制して歩留まりよく製造することができる。
【0059】
最初から導電配線のみで形成される実装基板は、例えばリード電極が挙げられる。リード電極の材料は、Fe,Cu,Fe入りCu,Ti入りCu,Al等が電気抵抗を考慮する上で好ましい。このような金属平板に打ち抜き加工を施すことで、正負一対のリード電極となる突出部を複数対有するリードフレームが形成できる。リード電極の表面は、鍍金やスパッタリングなどにより、Ag,Au,Pdを材料とする金属で被覆されていると、光反射率を向上させることができ好ましい。
【0060】
(枠体)
発光装置は、被覆部材を保持する枠体を有していてもよい。枠体は、セラミックや樹脂などで形成することができる。材料としては、光反射性の高いアルミナなどが好適に用いられるが、表面に反射膜を形成すれば、これに限らない。その他、スクリーン印刷や、別に成形された成形体を支持基板に接着するなどして形成してもよい。また、枠体は目的に応じて着色してもよい。なお、この枠体は、被覆部材を充填又は成形後に取り外すこともできる。除去しない場合は、光反射性の部材として機能する。被覆部材が光反射性を有する場合は、同様の機能を有するので、被覆部材の一部とみなしてもよい。枠体も被覆部材の一部とみなすと、透光性部材の端面は枠体の端面と略同一面上となるように形成する。
【0061】
(発光装置の製造方法)
図1に示される発光装置100の製造方法の一例を、図4を用いて以下に説明する。図4(a)に示すように、発光素子31にバンプを形成し、それを介して発光素子31を支持基板上の導電配線32にフリップチップ実装する。この例では、1つの発光装置300に対応する領域に、各々1個の発光素子31を並べて実装する(但し、発光素子31の個数は適宜変更できる)。なお、支持基板38は製造工程中に除去し、導電配線を実装基板とする。
【0062】
(第1の工程)
第1の工程では、被覆部材33の上面を、発光素子31の光出射面と略同一面上となるように形成し、その上面に凹部34を形成する。具体的には、発光素子31の光出射面側を上金型で、支持基板の下面側を下金型で挟持し、金型を用いた圧縮成型によって光反射性粒子を含有する樹脂で被覆部材33を形成する。
【0063】
前記のように金型を用いる際、上金型と密着させるようにして離型シートを配置することができる。そうすることで、発光素子と金型の干渉が緩和され、金型と部材が剥離しやすくなるだけでなく、プレス時の圧力によって離型シートが発光素子周縁の被覆部材方向へ弛むことで、発光素子31に沿った溝状の凹部34が被覆部材33と同時に形成できる。発光素子31に沿った凹部34は、後述する第2の工程で発光素子上面に配置された接着層を、第3の工程で流動させて保持させやすいので好ましい。離型シートの弛みは、プレス時の圧力を高くするほど大きくなり、深い凹部を形成することが可能である。離型シートを利用すれば、金型に掛かるコストを削減でき、発光素子31を破損する恐れなく発光素子に沿った凹部34が容易に形成できる。
【0064】
(第2の工程)
第2の工程では、被覆部材33の上面に形成された凹部34の少なくとも一部に、接着層36を配置する。接着層36は、凹部の接着層が透光性部材35と少なくとも一部接着するように配置されていれば、凹部以外の被覆部材や発光素子の上面に設けられていても、凹部内外で分断されていてもかまわない。実施形態1の発光装置100の接着層は、最終的に凹部34と凹部周辺の発光素子及び被覆部材の上面の一部にわたって連続的に形成される。
【0065】
(第3の工程)
第3の工程では、凹部34の接着層36と少なくとも一部が接着するように、透光性部材35、ここでは蛍光体を含有した比較的硬質な透光性部材35(例えば、弾性率約10MPa以上)を、発光素子31、接着層及び被覆部材33の上面に配置する。可撓性を有する透光性部材を用いると、その一部が凹部に沿うように変形する場合がある。図4(b)に示すように、可撓性を有さない透光性部材35を用いる場合は、その下面を凹部の接着層36と接合できるように、予め凸形状を有するように加工してから配置してもよい。
【0066】
ここで、透光性部材35を配置する際の圧力により、第2の工程で配置した発光素子上面の接着層の一部を凹部34へ流動させ、接合する透光性部材35(の凸形状)によって押圧される凹部の接着層の一部を、凹部以外の被覆部材の上面まで這い上がらせる。従って、第2の工程で配置された図4の接着層36は、透光性部材の配置後、図1(c)の接着層6のように、凹部4から連続して、その周辺の発光素子1と凹部以外の被覆部材3の上面にわたる形状となる。接着層の厚みは、凹部において最も厚く(約50μm程度)、発光素子及び凹部以外の被覆部材の上面の接着層の厚みは約1μm程度である。この場合、被覆部材が凹部を有さず、発光素子及び被覆部材の上面に約50μm程度の均一な接着層を有する場合に比べて、発光素子からの出射光の透過性又は波長変換効率が低下せず好ましい。
【0067】
(第4の工程)
最後に、支持基板38を導電配線32から剥離し、被覆部材33と透光性部材35の端面が略同一面上になるように、所望の位置で合わせてダイシングして個片化すれば、図1と同様の発光装置100を得ることができる。ダイシングの位置は、発光素子の搭載間隔が狭い場合や、発光素子から離れた凹部を有する場合などは、図4(a)の点線で示すように凹部の途中であってもかまわない。この場合、図5の発光装置300に示すような凹部44となり、凹部は途中で切断された形状となっている。凹部を途中で切断すると、接着層46が発光装置の端部に配置される構成となるので、透光性部材45の端部からの剥離を効果的に防ぐことができる。
【0068】
<実施形態2>
図3(a)は、本発明の実施形態2に係る発光装置の平面視図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A断面における断面図である。実装基板はリード電極22であり、発光素子21が複数個(図中では2個)配置されている。さらに、この凹部24は、金型と離型シートを用いて被覆部材と同時に形成されたものであり、発光素子同士の間隔を狭く(約100〜1000μm程度)配置したことにより、比較的深く(約50μm程度)形成されている。従って、YAG蛍光体が含まれた蛍光体シートである透光性部材(厚さ約50μm、弾性率約1MPa以下)を配置しても、凹部24と透光性部材25を嵌合させにくいため、凹部24に接着層26を形成して密着性を確保している。実施形態2の透光性部材25は、比較的柔軟で可撓性を有するので、その上面側は被覆部材の凹部に沿うように緩やかに窪んでいる。
【0069】
接着層26は、発光素子21と被覆部材23の上面の略全体に形成されており、凹部の接着層26aの厚みは、発光素子や凹部以外の被覆部材の上面の接着層26bよりも厚く、凹部の底面付近で最も分厚くなっている。このような接着層26は、スピンコータ等で発光素子と被覆部材の上面全体に形成された接着層のうち、凹部以外に配置された接着層26bの少なくとも一部が、凹部24へ流動することで形成される。以上の構成および形成方法以外は、実施形態1と実質上同様である。
【0070】
実施形態2の発光装置200では、発光素子21が複数あることで光束量が多いだけでなく、離型シートの弛みによる凹部が深く形成できるので、接着層を多く保持させることができる。さらに、発光素子21と被覆部材23の上面全体にわたる接着層26は、スピンコート等で比較的容易に形成できる上に、接着範囲が広いことで密着性がよい。また、透光性部材25は配置時に柔軟性を有しているため、凹部の接着層26aと接着させやすい。
【0071】
<実施例1>
以下、実施例1の発光装置200を形成する工程を説明する。まず、複数対の正負のリード電極を構成するリードフレームを準備する。ここでは、Cuを主成分とするCu合金からなるリードフレームを用いる。
【0072】
実施例1では、それぞれ離間した複数対の正負のリード電極の上に、発光素子1として平面視形状が約0.8m×0.3mmの略長方形の発光素子(発光波長約455nm、厚さ約120μm)をそれぞれフリップチップ実装する。
【0073】
続いて、複数の発光素子を実装したリードフレームを、上金型および下金型からなる金型内に挟み込み、被覆部材3を圧縮成型等により形成する。この際、上金型と密着させるように離型シートを配置してから、被覆部材を充填する。離型シートは、厚さ約50〜100μmとし、熱耐久性、濡れ性、コストの低さ等を考慮してETFE(テトラフルオロエチレン(C)とエチレン(C)の共重合体)を用いる。金型による加熱温度や加熱時間、圧力、離型シートの厚さなどは、用いる樹脂の組成や所望とする被覆部材の凹部等によって、適宜調整することができる。
【0074】
実施例1では、粒径約270nmのTiOの微粒子である光反射性材料を約23重量パーセント濃度で含有するシリコーン樹脂からなる被覆部材を形成する。被覆部材は、発光素子1と略同じ高さ(約120μm)で発光素子1の側面を全て被覆して光出射面を露出するように形成され、一対の電極の間と発光素子1の下方にも設けられる。また、被覆部材の光出射方向の上面には、金型のプレス圧力によって、被覆部材が形成される領域へ変形した離型シートの弛みにより、発光素子1に沿った凹部4を設ける。具体的には、弛みは、発光素子と接触する領域の離型シートが、シリコーン樹脂を基材とする被覆部材を充填する前の空間へ寄ることで凸形状となり、凹部は被覆部材の充填と同時に形成される。凹部は、被覆部材の表面にわたる緩やかな湾曲ではなく、溝状(深さ約50μm、幅約100μm以下)で発光素子の全周縁に沿って設けられる。
【0075】
次に、形成された凹部4およびその周辺の発光素子上面にシリコーン樹脂をディスペンサで塗布し、接着層6を配置する。続いて、発光素子1の露出面と接着層6および被覆部材3の上面を、透光性部材5であるYAG蛍光体が含まれたガラス(厚さ約150μm)で覆う。この透光性部材5を配置した際の圧力で、発光素子上面の接着層の一部は凹部4へ流動し、凹部の接着層の一部は凹部以外の被覆部材3の上面へと這い上がる。そして、最終的に接着層6は凹部4とその周辺の発光素子1と被覆部材3の上面に連続して形成される。その厚みは、凹部4において発光素子1と凹部以外の被覆部材の上面よりも厚く、凹部の接着層の厚みは約50μm、発光素子上面の接着層の厚みは約1μmである。続いて、接着層をオーブン等を用いて熱硬化し、被覆部材と光透光性部材を固着する。
【0076】
その後、ダイシングで平面視形状が約2.2mm×0.5mmで中心部に発光素子を1つ含むよう個片化し、略矩形状の厚さ約0.36mmの発光装置200を得る。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の発光装置は、照明用光源、LEDディスプレイ、液晶表示装置などのバックライト光源、信号機、照明式スイッチ、各種センサ及び各種インジケータ等に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0078】
100,200,300…発光装置
1,21,31,41,51…発光素子
2,32,42…導電配線
22…リード電極
3,23,33,43,53…被覆部材
4,24,34,44,54…凹部
5,25,35,45…透光性部材
6,26,36,46,56…接着層
6a,26a凹部の接着層
6b,26b…発光素子や凹部以外の被覆部材の上面の接着層
A…凹部の接着層の厚み
B…発光素子や凹部以外の被覆部材の上面の接着層の厚み
7…空隙
38…支持基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6