特許第6171854号(P6171854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6171854
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20170724BHJP
【FI】
   G03G9/08 374
   G03G9/08 375
   G03G9/08 365
【請求項の数】2
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-225873(P2013-225873)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-142605(P2014-142605A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2016年5月31日
(31)【優先権主張番号】特願2012-283162(P2012-283162)
(32)【優先日】2012年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】笠原 正志
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−145919(JP,A)
【文献】 特開2004−177747(JP,A)
【文献】 特開2005−321690(JP,A)
【文献】 特開2010−020024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08−9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、着色剤及びワックスを含有するトナー母粒子と外添剤とを有するトナーであって、該外添剤は複合酸化物粒子(a)、負帯電性乾式シリカ粒子(b)、及びシリカ粒子(b)に対して逆極性に帯電する粒子(c)を含有し、且つ以下(A)〜(C)を満足することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
(A)該複合酸化物粒子(a)は、コアシェル構造を有し、且つ該複合酸化物粒子(a)のコア部はチタニアを含有し、シェル部はシリカを含有する
(B)該シリカ粒子(b)中の炭素含有量が0.5質量%以上2.5質量%以下であり、シリカ粒子(b)の比表面積が15m/g以上95m/g以下である
(C)複合酸化物粒子(a)とシリカ粒子(b)の添加量の質量比(a/b)が2.0以上5.0以下である
【請求項2】
前記複合酸化物粒子(a)中のシリカの含有量が6質量%以上20質量%以下であることを特徴とする請求項に記載の静電荷像現像用トナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電写真法等に用いられる静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子写真法は、光導電性感光体上に種々の方法にて静電潜像を形成させ、次いで静電荷像現像用トナー(以下、「トナー」と略記する)を用いて潜像を可視化した後、紙等の転写材にトナー可視像を転写し、加熱や加圧等によりトナー像を定着させる工程を有する。これらの工程としては様々な方法が知られており、それぞれの画像形成プロセスに適したものが採用されている。
【0003】
トナーの代表的な製造方法の一つとして、バインダー樹脂、着色剤、帯電制御剤等の種々の材料を溶融混合し、粉砕・分級して微粉末とする粉砕法があり、比較的簡便に品質の良いトナーが得られることから、カラーやモノクロ、種々の現像方式問わず、一般に広く採用されている。また、近年の電子写真に対する一層の高速化、高画質化の要求に応えるべく、重合トナーの研究開発が盛んである。重合トナーは粉砕トナーに比べて粒子径の制御が容易であることから、高画質化に適した小粒径のトナー母粒子を得ることができる。
【0004】
更に、粒子構造制御によりトナーをカプセル化することも可能であることから、耐熱性や低温定着性に優れたトナーが得られるといったメリットがある。
前述したようなトナーの小粒径化に加え、安定した高画質を得るための帯電性・流動性の制御を達成すべく種々の検討がなされている。
例えば、トナーの適切な帯電性や転写性を得るため、チタニアとシリカ複合酸化物粒子と特定炭素含有量のシリカを併用し、トナーの帯電低下抑制し、被転写媒体との付着性をコントロールする技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−145918号公報
【特許文献2】特開2001−255692号公報
【特許文献3】特開2001−109185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2012−145918号公報では、帯電性と粒子間付着を適切化するために、チタニアとシリカとの複合酸化物粒子と該複合酸化物粒子とは異なる炭素含有量が2.8%〜6.0質量%のシリカ粒子をトナーに併用することが報告されている(特許文献1)。しかし、本発明者の検討の結果、炭素含有量の多いシリカ粒子は、シリカ粒子同士が凝集しやすく、クリーニングブレードのすり抜けによる欠陥を引き起こしてしまうことが分かった。また、凝集を抑制するため、粒径の大きなシリカ粒子を添加する方法もあるが、摩擦機会の減少による帯電量が低下してしまう懸念がある。
【0007】
また、特開2001−255692号公報では、SiO2を含有し、疎水化処理された平均一次粒径が30〜100nmのチタニアと炭素含有量5.5〜9.0質量%であるシリカ粒子がトナーに併用することが報告されているが(特許文献2)、前記のような平均一次粒径のチタニアは、平均一次粒径が大きく流動性の付与効果が少ないため、ベタ追従性が悪化する可能性がある。また、チタニアと組み合わせて使用するシリカ粒子は、その炭素含有量の為に、本発明者による特許文献1の追試結果と同様に、クリーニング性の低下が
懸念される。
【0008】
特開2001−109185号公報では、帯電性と流動性を安定させるために乾式法で製造された比表面積100m/g以上のシリカ粒子がトナーに用いることが報告されている(特許文献3)。しかし、本発明者の検討の結果、その粒径の小ささの為に、スペーサー効果が不十分であるばかりか、過剰な流動性の付与によってクリーニングブレードのすり抜けによる欠陥を引き起こしてしまうことが分かった。また、過剰な流動性の付与を防ぐため、従来の乾式法の外添剤の添加量を少なくする手法もあるが、同時に母粒子表面の被覆率の低下も伴うため、ワックスが表面に露出しやすくなり、トナーの固結性(耐熱保存性)が悪化してしまう。
【0009】
上述したように、トナーの流動性・帯電性を適切にコントロールし、固結性、紙かぶり、クリーニング性、ベタ追従性を並立するトナーは、未だ提供されていなかった。
本発明は、かかる背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、高温多湿な過酷環境下でも優れた耐熱保存性を有し、紙かぶりが少なく、また、クリーニング性及びベタ追従性が優れた静電荷像現像用トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決するために検討を重ね、特定の構造を有する複合酸化物粒子及び特定の物性を有するシリカ粒子有するトナーとすることで前記課題を解決できることを見出した。即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
1.結着樹脂、着色剤及びワックスを含有するトナー母粒子と外添剤とを有するトナーであって、該外添剤は複合酸化物粒子(a)及び乾式シリカ粒子(b)を含有し、且つ以下(A)〜(C)を満足することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
(A)該複合酸化物粒子(a)は、コアシェル構造を有し、且つ該複合酸化物粒子(a)のコア部はチタニアを含有し、シェル部はシリカを含有する
(B)該シリカ粒子(b)中の炭素含有量が0.5質量%以上2.5質量%以下である
(C)該複合酸化物粒子(a)と該シリカ粒子(b)の添加量の質量比(a/b)が2.
0以上5.0以下である
2.前記(B)を満たすシリカ粒子の比表面積が15m/g以上95m/g以下であることを特徴とする前記1.に記載の静電荷像現像用トナー。
3.前記(A)を満たす複合酸化物粒子(a)中のシリカの含有量が6質量%以上20質量%以下であることを特徴とする前記1.又は2.に記載の静電荷像現像用トナー。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、外添剤として、特定の構造を有する複合酸化物粒子と特定の炭素含有量のシリカ粒子とを有するトナーとすることにより、クリーニング性、かぶり、トナー消費量及びベタ追従性が良好であり、且つ固結性及び帯電性に優れるとの効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
<本発明のトナーの構成>
本発明のトナーは、外添剤を有し、該外添剤は複合酸化物粒子(a)及びシリカ粒子(b)を含有し、且つ以下(A)〜(C)を満足することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
(A)該複合酸化物粒子(a)は、コアシェル構造を有し、且つ該複合酸化物粒子(a)のコア部はチタニアを含有し、シェル部はシリカを含有する
(B)該シリカ粒子(b)中の炭素含有量が0.5質量%以上2.5質量%以下である
(C)該複合酸化物粒子(a)と該シリカ粒子(b)の添加量の質量比(a/b)が2.
0以上5.0以下である
本発明は、特定の構造および物性を有する複合酸化物粒子(a)に、特定の炭素含有量を有するシリカ粒子(b)を特定の質量比で組み合わせることで、帯電量が十分に高く、立ち上がりも早いというシリカ粒子とチタニアの長所を併せ持つトナーの設計が可能となる。
【0013】
<複合酸化物粒子(a)及び本発明の条件(A)について>
本発明に用いられる外添剤は、チタニアとシリカを含有するコアシェル構造を有する複合酸化物粒子(a)を含有し、且つ該複合酸化物粒子(a)のコア部はチタニアを含有し、シェル部はシリカを含有する。
前記複合酸化物粒子(a)中のシリカの含有量は本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定はされないが、下限は、通常6質量%以上であり、好ましくは8質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。一方、上限は、通常20質量%以下であり、好ましくは18質量%以下であり、より好ましくは16質量%以下である。複合酸化物粒子(a)中のシリカの含有量が過少な場合には、必要とする帯電量が得られず、かぶりが発生したり、ベタ追従性が悪化する場合がある。また、流動性も悪化し、やはりベタ追従性の悪化を招く可能性がある。一方、複合酸化物粒子(a)中のシリカの含有量が過多な場合には、流動性過剰により、クリーニング性の悪化や、帯電立ち上がりが低くなることで、現像ローラや供給ローラの回転にトナーの帯電が追いつかずに、かぶりおよび、ベタ追従性不良の原因となる場合がある。
【0014】
複合酸化物粒子(a)の平均一次粒径は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されないが、下限は、通常、10nm以上であり、12nm以上が好ましく、14nm以上が特に好ましい。一方、上限は、通常、24nm以下であり、22nm以下が好ましく、20nm以下が特に好ましい。複合酸化物粒子(a)の平均一次粒径が小さすぎると、トナー母粒子への埋まり込みが顕著になり、耐刷後半で流動性が悪化し、かすれなどが発生する可能性がある。一方、大きすぎると、流動性の付与効果が少ないため、ベタ追従性が悪化したり、トナー母粒子へ付着しづらく、脱離による部材汚染が発生する場合がある。複合酸化物粒子(a)の平均一次粒径は、実施例に記載の方法にて測定される。
【0015】
複合酸化物粒子(a)のトナー母粒子100質量部に対する添加量は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されないが、下限は、通常、0.3質量部以上であり、好ましくは、0.45質量部以上であり、より好ましくは0.6質量部以上である。一方、上限は、通常、1.4質量部以下であり、好ましくは1.3質量部以下であり、より好ましくは1.2質量部以下である。複合酸化物粒子(a)の添加量が少なすぎると十分な帯電立ち上がり性や流動性が得られず、帯電不足トナーによるかぶりやベタのかすれが発生する可能性がある。一方、多すぎるとトナーの帯電量分布が広くなってしまい、転写効率およびトナー消費量が悪化する場合がある。
【0016】
本発明に用いられる複合酸化物粒子(a)の製造方法は特に限定されず、公知の方法にて作成可能である。例えば、特願平8−253321、特開2006−511638、特開2006−306651、WO2009/084184に記載の方法で製造される。
【0017】
<本発明の条件(B)について>
本発明に用いられる外添剤は、複合酸化物粒子(a)とは異なるシリカ粒子(b)を含有する。該シリカ粒子(b)は、トナーの外添剤としてトナー表面に付着又は固着した状態で用いられる。本発明において、該シリカ粒子(b)中の炭素含有量は0.5質量%以上2.5質量%以下であることが必要である。また、該シリカ粒子(b)中の炭素含有量の下限は、0.6質量%以上が好ましく、0.7質量%以上が特に好ましい。一方、上限は、2.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以下が特に好ましい。シリカ粒子の炭素
含有量が過少な場合には、疎水化が不十分で、吸湿などにより帯電量が低下することで、かぶりが発生したり、トナー飛散により現像機および画像に汚れが発生する場合がある。シリカ粒子の炭素含有量が過多な場合には、トナー帯電量分布がブロードになることでかぶりが発生したり、シリカ同士が凝集することで、トナーに添加した際に十分な流動性が得られず、ベタ追従性不良やクリーニング不良を招く場合がある。シリカ粒子中の炭素含有量は実施例に記載の方法にて測定される。
【0018】
前記シリカ粒子(b)の比表面積は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されないが、下限は、通常、15m2/g以上であり、20m2/g以上が好ましく、25m2/g以上が特に好ましい。一方、上限は、通常、95m2/g以下であり、90m2/g以下が好ましく、85m2/g以下が特に好ましい。前記シリカ粒子(b)の比表面積が大きすぎると、十分なスペーサー効果を得ることができず、OPCフィルミングの発生や、小粒径外添剤のトナー母粒子への埋まり込みを引き起こして耐刷後半に流動性悪化によるクリーニング不良が発生する場合がある。一方、小さすぎると、トナー母粒子へ付着しづらく、脱離による部材汚染が発生する場合がある。シリカ粒子(b)の比表面積は、実施例に記載の方法にて測定される。
【0019】
上記炭素含有量及び比表面積を満足するシリカ粒子(b)の具体例としては、ヘキサメチルジシラザンで表面処理されたNAX50、NX90G、NX90S(いずれも日本アエロジル社製)
などが挙げられる。
シリカ粒子(b)のトナー母粒子100質量部に対する添加量は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されないが、下限は、通常、0.1質量部以上であり、好ましくは、0.2質量部以上であり、より好ましくは0.3質量部以上である。一方、上限は、通常、1.0質量部以下であり、好ましくは0.75質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以下である。シリカ粒子(b)の添加量が少なすぎると十分な流動性が得られずクリーニング不良となる場合があり、一方、多すぎるとトナー母粒子からの脱離が顕著となり、部材汚染が発生する場合やトナー帯電量分布がブロードになることでかぶりが発生する場合がある。
【0020】
本発明に用いられるシリカ粒子(b)の製造方法は特に限定されず、公知の方法にて作成可能であるが、乾式法により製造されたものが好ましい。ここでいう乾式法とは、珪素化合物の火炎加水分解、火炎中燃焼法による酸化、あるいはこれらの反応の併用による方法等、気相中での反応による製造方法全般のことを指す。
【0021】
<本発明の条件(C)について>
本発明に用いられる外添剤の複合酸化物粒子(a)とシリカ粒子(b)の添加量の質量比(a/b)は、2.0以上5.0以下であることが必要である。
また、前記添加量の質量比(a/b)の下限は、通常2.0以上であり、2.1以上が好ましく、2.2以上が特に好ましい。一方、上限は、通常、5.0以下であり、好ましくは4.5以下であり、さらに好ましくは4.0以下である。前記添加量の質量比(a/b)が過大な場合には、電荷のリークにより、十分な帯電量が得られず、かぶりやトナー飛散、ベタ追従性が悪化する場合がある。一方、前記添加量の質量比(a/b)が過小な場合には、トナー帯電量分布がブロードになることでかぶりが発生したり、シリカ同士が凝集することで、トナーに添加した際に十分な流動性が得られず、クリーニング不良を招く場合がある。
【0022】
<その他の外添剤について>
本発明のトナーは、上記シリカ粒子(b)と共に、シリカ粒子(b)に対して逆極性に帯電する粒子(c)(以降、粒子(c)と称する)を有していてもよい。粒子(c)がトナー母粒子に付着および脱離することで、トナーの帯電が高く且つ均一となり、高温高湿
環境下でも安定する。帯電極性および帯電量については、実施例に記載の方法にて測定される。
【0023】
粒子(c)の種類は特に限定されないが、特に上記シリカ粒子(b)が負帯電性の場合は、正帯電のシリカ粒子を用いることが、帯電特性および流動性の観点から好ましい。その他、メラミン系樹脂粒子や正帯電性のアクリル系樹脂も使用できる。また、上記シリカ粒子(b)が正帯電性の場合は、負帯電性のシリカ粒子を使用することも可能である。
【0024】
前記正帯電性のシリカ粒子の平均一次粒径は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されないが、通常、30nm以下であり、25nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがさらに好ましく、15nm以下であることが特に好ましい。一方、通常、5nm以上であり、好ましくは6nm以上であり、さらに好ましくは7nm以上である。平均一次粒径が小さすぎると、トナー母粒子への埋まり込みが顕著になり、期待するような帯電量の向上が得られずにかぶりが発生する場合がある。平均一次粒径が大きすぎると、正帯電性のシリカ粒子自体がトナー母粒子から脱離しやすくなり、部材汚染を引き起こす場合がある。
【0025】
前記メラミン系樹脂としては、いわゆるメラミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂の外、メラミンを主成分とする限り、メラミン・ユリア・ホルムアルデヒド共縮合樹脂、メラミン・ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド共縮合樹脂等も対象とし得る。
メラミン系樹脂の平均一次粒径は80nm以上であることが好ましく、120nm以上であることがさらに好ましく、150nm以上であることが特に好ましい。また、300nm以下であることが好ましく、270nm以下がさらに好ましく、250nm以下が特に好ましい。平均一次粒径が小さすぎると、トナー母粒子への付着性が強くなりすぎ、期待するような帯電量の向上が得られずにかぶりが発生する場合がある。また大きすぎると、メラミン系樹脂自体がトナー母粒子から脱離しやすくなり、やはり前記の正帯電性のシリカ同様部材汚染を引き起こす場合がある。
【0026】
粒子(c)の平均一次粒径は、実施例に記載の方法にて測定される。
上記の平均一次粒径を満足するシリカ粒子(b)に対して逆極性に帯電する粒子(c)の具体例としては、H30TA(ワッカーケミカル社製)などが挙げられる。
上記粒子(c)の添加量は、トナー母粒子100質量部に対して0.5質量部以下が好ましく、0.4質量部以下がさらに好ましく、0.3質量部以下が特に好ましい。また、0.05質量部以上が好ましく、0.10質量部以上が特に好ましい。添加量が多すぎると、過剰な逆帯電粒子がトナー帯電量を低下させ、かぶりが発生する場合がある。添加量が過少な場合には、粒子(c)が母粒子から離脱する際の逆帯電効果が十分に得られず、トナーの帯電量が低下することでかぶりが発生する場合がある。また、該逆帯電粒子が流動性改良剤としても作用している場合に添加量が過少であると、トナー流動性の低下を招き、クリーニング不良が発生する場合がある。かぶりを抑制すること、トナー流動性をコントロールし、マシン側のトナー供給量の制御に適切に応答できるようにすることは、トナー消費量を低減させる上でも重要である。
【0027】
上記粒子(c)の製造方法は特に限定されず、公知の方法にて作成可能であるが、乾式法により製造されたものが好ましい。ここでいう乾式法とは、珪素化合物の火炎加水分解、火炎中燃焼法による酸化、あるいはこれらの反応の併用による方法等、気相中での反応による製造方法全般のことを指す。
【0028】
<外添剤埋没率>
本発明のトナーにおいて、外添剤を添加する工程の最終段後のトナー母粒子表面への外添剤埋没率は特に限定はないが、下限は、通常、18%以上であり、20%以上が好まし
く、22%以上が特に好ましい。一方、上限は、通常、50%以下であり、45%以下が好ましく、40%以下が特に好ましい。
【0029】
該外添剤埋没率は、下記式により求められる。
(外添剤埋没率)=((I)母粒子に埋没した外添剤の比表面積の合計)×100/((II)添加した外添剤の比表面積の合計)
(I) ={(a1+b1)/(a2+b2)−c}×100
(II)=(a1+b1)/(a2+b2)−d
[上記式中、
a1は、トナー母粒子の表面積(m)を表し、
a2は、トナー母粒子の投入量(g)を表し、
b1は、最終段までに投入する外添剤の表面積の合計(m)を表し、
b2は、最終段までに投入する外添剤の投入量(g)を表し、
cは、最終段後のトナーの実測BET値(m/g)
dは、最終段後のトナー母粒子のBET値(m/g)を表す。
dは、トナー母粒子の実測BET値(m/g)を最終段までに投入する外添剤とトナー母粒子の投入量(g)の合計で除して算出した値である。]
外添剤埋没率が大きい場合には、必要な流動性が得られず、ブレードすり抜けトナーによる帯電ローラー汚染、外添剤同士の相互摩擦が不足し、期待するような帯電量が得られないことによるかぶり悪化が懸念される。また、外添剤によるトナーのブロッキング抑制効果が低下し、固結性(耐熱保存性)が悪化してしまう場合がある。小さすぎると、外添剤同士が凝集し、その凝集体による帯電ローラー汚染や過度の帯電摩擦によって帯電量分布がブロードになり、やはりかぶりが悪化してしまう場合がある。上記式中のトナー母粒子とトナーのBET値は実施例に記載の方法にて測定される。
【0030】
<トナー母粒子のその他構成及び製造方法>
本発明のトナー母粒子の体積中位径は、特に限定されないが、通常、3μm以上であり、4μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。また、通常、10μm以下であり、8μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがさらに好ましい。トナーの体積中位径が大きすぎると、単位重量当たりの帯電量が小さくなり、かぶりやトナー飛散が発生する可能性が高くなる場合があり、小さすぎると、単位重量当たりの帯電量が過剰となりやすく、極度な画像濃度低下などの不具合を発生しやすくなる場合がある。体積中位径は、実施例に記載の方法で測定される。
【0031】
本発明のトナー母粒子の平均円形度は、通常0.950以上であり、0.955以上であることが好ましい。また、通常0.985以下であり、0.980以下であることが好ましい。円形度が大きすぎると、クリーニング部でのすり抜けが発生しやすく画像不良となる場合があり、一方、小さすぎると、該無機粒子が機内のメカニカルストレスにより母粒子表面で転がった際に、母粒子のくぼみに落ち込み、本発明の効果が最後まで維持できない場合がある。本発明のトナー母粒子の円形度は、実施例に記載の方法で測定される。
【0032】
本発明のトナーの構成材料は特に限定されず、少なくとも結着樹脂及び着色剤を含み、必要に応じ、帯電制御剤、ワックス、その他の添加剤等を含む。
本発明のトナー母粒子の製造方法は限定されず、粉砕法、湿式法、機械的衝撃力や熱処理等によってトナーを球形化する方法など従来用いられている方法を用いることができる。湿式法としては、懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法、エステル伸張法などの方法が挙げられる。
【0033】
粉砕法では、結着樹脂、着色剤と、必要に応じてその他成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミ
キサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等がある。
次に、上記配合し、混合したトナー原料を溶融混練して、樹脂類を溶融し、その中に着色剤等を分散させる。その溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。練り機は1軸または2軸押出機が用いられ、例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が挙げられる。更に、トナー原料を溶融混練することによって得られる着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する工程を経て冷却物となる。
【0034】
上記で得られた着色樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕され、更に、川崎重工業社製のクリプトロンシステム、日清エンジニアリング社製のスーパーローター等で粉砕される。その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)等の分級機等の篩分機を用いて分級し、トナー母粒子を得る。さらに、従来用いられている方法を用いてトナーを球形化してもよい。
トナー母粒子を得た後、外添剤を添加する処理工程と必要に応じてその他の処理工程を経て、トナーを得ることができる。
【0035】
湿式法としては、乳化重合凝集法、懸濁重合法、溶解懸濁法などが挙げられ、何れの方法で製造してもよく、特に限定されない。
乳化重合凝集法によりトナー母粒子を製造する場合、通常、重合体粒子を重合して重合体粒子分散液を得る重合工程、重合体粒子分散液と着色剤粒子分散液などを混合する混合工程、混合したものに凝集剤を加えて所定粒径まで凝集さて粒子凝集体(凝集粒子)を得る凝集工程、凝集粒子を過熱、融着させて融着粒子とする融着工程、以降、ろ過・洗浄・乾燥工程などのトナー母粒子として取り出す工程とを有する。
【0036】
本発明において、懸濁重合トナーの製造方法としては、上述の結着樹脂のモノマー中に着色剤、重合開始剤、そして必要に応じてワックス、極性樹脂、荷電制御剤や架橋剤などの添加剤を加え、均一に溶解又は分散させたモノマー組成物を調製する。このモノマー組成物を、分散安定剤等を含有する水系媒体中に分散させる。好ましくは単量体組成物の液滴が所望のトナー粒子のサイズを有するように撹拌速度・時間を調整し、造粒する。その後、分散安定剤の作用により、粒子状態が維持され、且つ粒子の沈降が防止される程度の撹拌を行い、重合を行う。これらを洗浄・ろ過により収集し、乾燥することによりトナー母粒子を得ることができる。トナー母粒子を得た後、外添剤を添加する処理工程と必要に応じてその他の処理工程を経て、トナーを得ることができる。
【0037】
溶解懸濁法は結着樹脂を有機溶剤に溶解し、着色剤などを添加分散して得られる溶液相を、分散剤等を含有した水相において機械的な剪断力で分散し液滴を形成し、液滴から有機溶剤を除去してトナー粒子を製造する方法である。
エステル伸張重合法はワックス・ポリエステル樹脂・顔料などを分散した油相と、粒径制御剤および界面活性剤の添加された水相中を混合、乳化して油滴を作成し、その油滴を収斂させると同時に伸張反応によりトナー油滴表面に高分子樹脂成分を形成させ、油滴内部の溶剤を除去してトナー粒子を製造する方法である。
【0038】
本発明において、トナーに含有される結着樹脂としては、従来トナーの結着樹脂として用いられている樹脂類を適宜用いることができる。
トナー母粒子を粉砕方法で製造する場合に用いられる結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン置換体の単重合体、スチレン系共重合体、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げら
れる。これらの樹脂は単独で使用しても良いし、混合して使用しても良い。
【0039】
トナー母粒子を重合法で製造する場合に用いられる結着樹脂としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が挙げられる。例えば、スチレン、スチレン誘導体、アクリル系重合性単量体、メタクリル系重合性単量体、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン等が挙げられる。これらの樹脂は単独で使用しても良いし、2種類以上混合して使用しても良い。
【0040】
単量体としては、酸性基を有する重合性単量体(以下、単に酸性単量体と称すことがある)、塩基性基を有する重合性単量体(以下、単に塩基性単量体と称することがある)、酸性基も塩基性基も有さない重合性単量体(以下、その他の単量体と称することがある)のいずれの重合性単量体も使用することができる。
上記にあげた重合法のうち、乳化重合凝集法を用いてトナー母粒子を製造する場合、乳化重合工程では、通常、乳化剤の存在下、水系媒体中で重合性単量体を重合するが、この際、反応系に重合性単量体を供給するにあたって、各単量体は別々に加えても、予め複数種類の単量体を混合しておいて同時に添加しても良い。また、単量体はそのまま添加しても良いし、予め水や乳化剤などと混合、調整した乳化液として添加することもできる。
【0041】
酸性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基を有する重合性単量体、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有する重合性単量体、ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有する重合性単量体等が挙げられる。また、塩基性単量体としては、アミノスチレン等のアミノ基を有する芳香族ビニル化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の窒素含有複素環含有重合性単量体、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これら酸性単量体及び塩基性単量体は、単独で用いても複数種類を混合して用いてもよく、また、対イオンを伴って塩として存在していてもよい。中でも、酸性単量体を用いるのが好ましく、より好ましくはアクリル酸及び/又はメタクリル酸であるのがよい。
【0042】
結着樹脂を構成する全重合性単量体100質量部中に占める酸性単量体および塩基性単量体の合計量は、通常0.05質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、特に好ましくは1.0質量部以上である。また、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下であることが望ましい。
【0043】
その他の重合性単量体としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド等が挙げられ、重合性単量体は、単独で用いてもよく、また複数を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
更に、結着樹脂を架橋樹脂とする場合、上述の重合性単量体と共にラジカル重合性を有する多官能性単量体が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジアリ
ルフタレート等が挙げられる。また、反応性基をペンダントグループに有する重合性単量体、例えばグリシジルメタクリレート、メチロールアクリルアミド、アクロレイン等を用いることも可能である。中でもラジカル重合性の二官能性重合性単量体が好ましく、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレートが特に好ましい。これら多官能性重合性単量体は、単独で用いても複数種類を混合して用いてもよい。
【0045】
結着樹脂を乳化重合凝集法で重合する場合、乳化剤として公知の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としてはカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の中から選ばれる一種又は二種以上の界面活性剤を併用して用いることができる。
【0046】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、等の脂肪酸石けん、硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
【0047】
乳化重合凝集法を用いてトナー母粒子を製造する場合の乳化剤の使用量は、特に限定されないが、重合性単量体100質量部に対して0.1質量部以上、10質量部以下が好ましい。また、これらの乳化剤に、例えば、部分或いは完全ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体類等の一種或いは二種以上を保護コロイドとして併用することができる。
【0048】
乳化重合凝集法により得られる重合体一次粒子の体積平均粒径は、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上である。また、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、特に好ましくは1μm以下であることが望ましい。粒径が小さすぎると、凝集工程において凝集速度の制御が困難となる場合があり、大きすぎると、凝集して得られるトナー粒子の粒径が大きくなり易く、目的とする粒径のトナーを得ることが困難となる場合がある。
【0049】
乳化重合凝集法を用いてトナー母粒子を製造する場合、必要に応じて公知の重合開始剤を用いることができ、重合開始剤を1種又は2種以上組み合わせて使用する事ができる。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、等の過硫酸塩、及び、これら過硫酸塩を一成分として酸性亜硫酸ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス開始剤、過酸化水素、4,4‘−アゾビスシアノ吉草酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロペーオキサイド、等の水溶性重合開始剤、及び、これら水溶性重合性開始剤を一成分として第一鉄塩等の還元剤と組み合わせたレドックス開始剤系、過酸化ベンゾイル、2,2‘−アゾビス−イソブチロニトリル、等が用いられる。これら重合開始剤はモノマー添加前、添加と同時、添加後のいずれの時期に重合系に添加しても良く、必要に応じてこれらの添加方法を組み合わせても良い。
【0050】
乳化重合凝集法を用いてトナー母粒子を製造する場合、必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用することができ、具体的な例としては、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン等があげられる。連鎖移動剤は単独または2種類以上の併用でもよく、重合性単量体に対して
0〜5質量%用いられる。
【0051】
また、乳化重合凝集法を用いてトナー母粒子を製造する場合、必要に応じて公知の懸濁安定剤を使用することができる。懸濁安定剤の具体的な例としては、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは、一種或いは二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記懸濁安定剤は、通常重合性単量体100質量部に対して1質量部以上、10質量部以下の量で用いられる。
【0052】
重合開始剤および懸濁安定剤は、何れも、重合性単量体添加前、添加と同時、添加後のいずれの時期に重合系に添加してもよく、必要に応じてこれらの添加方法を組み合わせてもよい。
その他、反応系には、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤等を適宜添加することができる。
【0053】
本発明のトナーには、離型性付与のため、ワックスを含有させてもよい。ワックスとしては、離型性を有するものであればいかなるものも使用可能である。
具体的には、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス、パラフィンワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス、水添ひまし油、カルナバワックス等の植物系ワックス、ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン、アルキル基を有するシリコーン、ステアリン酸等の高級脂肪酸、エイコサノール等の長鎖脂肪族アルコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと長鎖脂肪酸により得られる多価アルコールのカルボン酸エステル、又は部分エステル、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、低分子量ポリエステル等が挙げられる。
【0054】
これらのワックスの中で、定着性を改善するためには、ワックスの融点は通常30℃以上であり、40℃以上が好ましく、50℃以上が特に好ましい。また、通常100℃以下であり、90℃以下がより好ましく、80℃以下が特に好ましい。融点が低すぎると定着後にワックスが表面に露出し、べたつきを生じる場合があり、一方、融点が高すぎると低温での定着性が劣る場合がある。
【0055】
また、ワックスの化合物種としては、高級脂肪酸エステル系ワックスが好ましい。高級脂肪酸エステル系ワックスとしては、具体的には、ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、ペンタエリスリトールのステアリン酸エステル、モンタン酸グリセリド等の、炭素数15〜30の脂肪酸と1〜5価のアルコールとのエステルが好ましい。また、エステルを構成するアルコール成分としては、1価アルコールの場合は炭素数10〜30のものが好ましく、多価アルコールの場合には炭素数3〜10のものが好ましい。
上記ワックスは単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。また、トナーを定着する定着温度により、ワックス化合物の融点を適宜選択することができる。
【0056】
本発明において、ワックスを含有させる場合、ワックスの量は特に限定はないが、トナー100質量部中に対して、通常、1質量部以上であり、好ましくは2質量部以上、特に好ましくは5質量部以上である。また、通常、40質量部以下であり、好ましくは35質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。トナー中のワックス含有量が少なすぎると、高温オフセット性等の性能が十分でない場合があり、一方多すぎると、耐ブロッキング性が十分でなかったり、ワックスがトナーから漏出することにより装置を汚染したりする場合がある。
【0057】
本発明の着色剤としては公知の着色剤を任意に用いることができる。着色剤の具体的な
例としては、カーボンブラック、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系染顔料など、公知の任意の染顔料を単独あるいは混合して用いることができる。フルカラートナーの場合にはイエローはベンジジンイエロー、モノアゾ系、縮合アゾ系染顔料、マゼンタはキナクリドン、モノアゾ系染顔料、シアンはフタロシアニンブルーをそれぞれ用いるのが好ましい。着色剤は、重合体一次粒子100質量部に対して3質量部以上、20質量部以下となるように用いることが好ましい。
【0058】
乳化重合凝集法における着色剤の配合は、通常、凝集工程で行われる。重合体一次粒子の分散液と着色剤粒子の分散液とを混合して混合分散液とした後、これを凝集させて粒子凝集体とする。着色剤は、乳化剤の存在下で水中に分散した状態で用いるのが好ましく、着色剤粒子の体積平均粒径が通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上である。また通常3μm以下、好ましくは1μmである。
【0059】
本発明においては、必要に応じて帯電制御剤を用いてもよい。帯電制御剤を用いる場合には、公知の任意のものを単独ないしは併用して用いることができ、例えば、正帯電性帯電制御剤として4級アンモニウム塩、ニグロシン、加工ニグロシン、アルキルニグロシンなどのアジン系黒色染料、加工ニグロシン化合物、グアニシン化合物、トリフェニルスルホニウム化合物、樹脂系帯電制御剤、アミド基含有化合物、塩基性・電子供与性の金属物質が挙げられ、負帯電性帯電制御剤として芳香族オキシカルボン酸系、芳香族ダイカルボン酸の金属キレート類、モノアゾ含金錯体化合物、有機酸の金属塩、含金属染料、ジフェニルヒドロキシ錯体化合物、含鉄アゾ化合物、乳化重合用家電制御剤、オキシカルボン酸各種金属錯体化合物、カリックスアレン化合物、フェノール化合物、樹脂系帯電制御剤、ナフトール化合物及びそれらの金属塩、ウレタン結合含有化合物、酸性もしくは電子吸引性の有機物質が挙げられる。
【0060】
また、本発明のトナーをカラートナー又はフルカラートナーにおける黒色トナー以外のトナーとして使用する場合には、無色ないしは淡色でトナーへの色調障害がない帯電制御剤を用いることが好ましく、例えば、正帯電性帯電制御剤としては4級アンモニウム塩化合物が、負帯電性帯電制御剤としてはサリチル酸もしくはアルキルサリチル酸の亜鉛、アルミニウムなどとの金属塩、金属錯体や、ベンジル酸の金属塩、金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物、4,4’−メチレンビス〔2−〔N−(4−クロロフェニル)アミド〕−3−ヒドロキシナフタレン〕等のヒドロキシナフタレン化合物が好ましい。
【0061】
本発明のトナーにおいて、乳化重合凝集法を用いてトナー中に帯電制御剤を含有させる場合は、乳化重合時に重合性単量体等とともに帯電制御剤を添加するか、重合体一次粒子及び着色剤等とともに凝集工程で添加するか、重合体一次粒子及び着色剤等を凝集させてほぼ目的とする粒径となった後に添加する等の方法によって配合することができる。これらのうち、帯電制御剤を界面活性剤を用いて水中で分散させ、体積平均粒径0.01μm以上、3μm以下の分散液として凝集工程に添加することが好ましい。
【0062】
乳化重合凝集法において、凝集は通常、攪拌装置を備えた槽内で行われるが、加熱する方法、電解質を加える方法と、これらを組み合わせる方法とがある。重合体一次粒子を攪拌下に凝集して目的とする大きさの粒子凝集体を得ようとする場合、粒子同士の凝集力と攪拌による剪断力とのバランスから粒子凝集体の粒径が制御されるが、加熱するか、或いは電解質を加えることによって凝集力を大きくすることができる。本発明において、電解質を添加して凝集を行う場合の電解質としては、有機塩、無機塩のいずれでも良いが、具体的には、NaCl、KCl、LiCl、Na2SO4、K2SO4、Li2SO4、MgCl
2、CaCl2、MgSO4、CaSO4、ZnSO4、Al2(SO43、Fe2(SO43
、CH3COONa、C65SO3Na等が挙げられる。これらのうち、2価以上の多価の金属カチオンを有する無機塩が好ましい。
【0063】
本発明のトナーにおいて、電解質の添加量は、電解質の種類、目的とする粒径等によって異なるが、混合分散液の固形成分100質量部に対して、通常0.05質量部以上であり、0.1質量部以上が好ましい。また、通常25質量部以下であり、15質量部以下が好ましく、特に10質量部以下が好ましい。添加量が少なすぎると、凝集反応の進行が遅くなり凝集反応後も1μm以下の微粉が残る、得られた粒子凝集体の平均粒径が目的の粒径に達しないなどの問題を生じる場合があり、一方多すぎると、急速な凝集となりやすく粒径の制御が困難となり、得られた凝集粒子中に粗粉や不定形のものが含まれるなどの問題を生じる場合がある。電解質を加えて凝集を行う場合の凝集温度は、通常20℃以上、好ましくは30℃以上である。また通常70℃以下、好ましくは60℃以下である。
【0064】
電解質を用いないで加熱のみによって凝集を行う場合の凝集温度は、重合体一次粒子のガラス転移温度をTgとすると、通常(Tg−20)℃以上であり、(Tg−10)℃以上が好ましい。また、通常Tg以下であり、(Tg−5)℃以下である。
凝集に要する時間は装置形状や処理スケールにより最適化されるが、トナーの粒径が目的とする粒径に到達するためには、前記した所定の温度で通常、少なくとも30分以上保持することが望ましい。所定の温度へ到達するまでの昇温は、一定速度で昇温しても良いし、段階的に昇温することもできる。
【0065】
上述の凝集処理後の粒子凝集体表面に、必要に応じて樹脂粒子を付着または固着した粒子を形成することも出来る。粒子凝集体表面に性状を制御した樹脂粒子を付着または固着することにより、得られるトナーの帯電性や耐熱性を向上できる場合があり、さらには、本発明の効果を一層顕著とすることができる。
樹脂粒子として重合体一次粒子のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する樹脂粒子を用いた場合、定着性を損なうことなく、耐ブロッキング性の一層の向上が実現できるので好ましい。該樹脂粒子の体積平均粒径は、通常0.02μm以上であり、0.05μm以上が好ましい。また、通常3μm以下であり、1.5μm以下が好ましい。樹脂粒子としては、前述の重合体一次粒子に用いられる重合性単量体と同様なモノマーを乳化重合して得られたもの等を用いることができる。
【0066】
樹脂粒子は、通常、界面活性剤により水または水を主体とする液中に分散した分散液として用いるが、帯電制御剤を凝集処理後に加える場合には、粒子凝集体を含む分散液に帯電制御剤を加えた後に樹脂粒子を加えることが好ましい。
凝集工程で得られた粒子凝集体の安定性を増すために、凝集工程の後の熟成工程において凝集粒子内の融着を行うことが好ましい。熟成工程の温度は、通常重合体一次粒子のTg以上、好ましくはTgより5℃高い温度以上であり、また、通常Tgより80℃高い温度以下、好ましくはTgより50℃高い温度以下である。また、熟成工程に要する時間は、目的とするトナーの形状により異なるが、重合体一次粒子のガラス転移温度以上に到達した後、通常0.1〜10時間、好ましくは1〜6時間保持することが望ましい。
【0067】
なお、凝集工程以降、好ましくは熟成工程以前又は熟成工程中の段階で、界面活性剤を添加するか、pH値を上げることが好ましい。ここで用いられる界面活性剤としては、重合体一次粒子を製造する際に用いることのできる乳化剤から一種以上を選択して用いることができるが、特に重合体一次粒子を製造した際に用いた乳化剤と同じものを用いることが好ましい。界面活性剤を添加する場合の添加量は限定されないが、混合分散液の固形成分100質量部に対して、通常0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、特に好ましくは3質量部以上である。また、通常20質量部以下、好ましくは15質量部以下、特に
好ましくは10質量部以下である。凝集工程以降、熟成工程の完了前の間に界面活性剤を添加するか、pH値を上げることにより、凝集工程で凝集した粒子凝集体同士の凝集等を抑制することができ、熟成工程後の粗大粒子生成を抑制できる場合がある。
【0068】
熟成工程での加熱処理により、凝集体における重合体一次粒子同士の融着一体化がなされ、凝集体としてのトナー粒子形状も球形に近いものとなる。熟成工程前の粒子凝集体は、重合体一次粒子の静電的あるいは物理的凝集による集合体であると考えられるが、熟成工程後は、粒子凝集体を構成する重合体一次粒子は互いに融着しており、トナー粒子の形状も球状に近いものとすることが可能となる。この様な熟成工程によれば、熟成工程の温度及び時間等を制御することにより、重合体一次粒子が凝集した形状である葡萄型、融着が進んだジャガイモ型、更に融着が進んだ球状等、目的に応じて様々な形状のトナーを製造することができる。
得られた粒子は、公知の方法にて固液分離し、粒子を回収し、必要に応じて洗浄、乾燥することで目的とするトナー母粒子を得ることができる。
【0069】
<外添工程>
本発明のトナーは、トナー母粒子の表面に、上述した複合酸化物粒子(a)及びシリカ粒子(b)を外添することで得られるが、本発明の効果を損なわない範囲で、上述したシリカ粒子(b)に対して逆帯電性の粒子(c)やその他外添剤として知られている粒子(d)を併用し、トナー母粒子に添加して、トナー母粒子の表面に付着又は固着させてもよい。
【0070】
上述した複合酸化物粒子(a)、シリカ粒子(b)及び粒子(c)以外の粒子(d)としては、例えば、無機粒子として、チタニア、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ハイドロタルサイト等が挙げられ、有機粒子として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の有機酸塩粒子、メタクリル酸エステル重合体粒子、アクリル酸エステル重合体粒子、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体粒子、スチレン−アクリル酸エステル共重合体粒子等の有機樹脂粒子等が挙げられる。
【0071】
複合酸化物粒子(a)、シリカ粒子(b)、粒子(c)及び粒子(d)の配合割合は特に限定はなく、複合酸化物粒子(a)、シリカ粒子(b)、粒子(c)及び粒子(d)からなる全外添剤の使用量は特に限定はないが、トナー母粒子100質量部に対して、全外添剤の使用量は通常1.3質量部以上であり、好ましくは1.4質量部以上であり、一方、通常3.7質量部以下がであり、3.6質量部以下が好ましい。使用量が少なすぎると、外添剤の母粒子表面の埋没が顕著となり、かぶりが悪化する場合がある。一方、多すぎると、流動性が過剰なることによるクリーニングブレードする抜けによる画像欠陥となる場合がある。外添剤による母粒子表面の被覆率は、実施例に記載の方法にて測定される。
【0072】
上記粒子(d)について、トナー母粒子の表面に付着又は固着させる順番は特に限定はないが、上述複合酸化物粒子(a)、シリカ粒子(b)または粒子(c)と併用してもよいし、併用せず別に添加してもよい。
本発明において、トナー母粒子の表面に、上述した複合酸化物粒子(a)、シリカ粒子(b)、粒子(c)、および粒子(d)を付着又は固着させる方法は特に限定はなく、一般にトナーの製造に用いられる混合機を使用することができる。具体的には、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、レディゲミキサー、Q−ミキサー等の混合機により攪拌、混合することによりなされる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限
り、以下の実施例に限定されるものではない。以下の例で「部」とあるのは「質量部」を意味し、「%」とあるのは「質量%」を意味する。
【0074】
<重合体一次粒子の平均粒径の測定方法>
日機装株式会社製、型式:Microtrac Nanotrac 150(以下、「ナノトラック」と略記する)を用いて、ナノトラックの取り扱い説明書に従い、同社解析ソフトMicrotrac Particle Analyzer Ver10.1.2.-019EEを用い、電気伝導度が0.5μS/cmのイオン交
換水を分散媒に用い、下記の条件で又は下記の条件を入力し、取り扱い説明書に記載された方法で測定した。
・溶媒屈折率:1.333
・測定時間 :100秒
・測定回数 :1回
・粒子屈折率:1.59
・透過性 :透過
・形状 :真球形
・密度 :1.04
【0075】
<トナー粒子の体積中位径(Dv50)の測定方法>
ベックマンコールター社製マルチサイザーIII(アパーチャー径100μm)(以下、「マルチサイザー」と略記する)を用い、分散媒には同社製アイソトンIIを用い、分散質濃度0.03質量%になるように分散させて測定した。測定粒子径範囲は2.00から64.00μmまでとし、この範囲を対数目盛で等間隔となるように256分割に離散化し、それらの体積基準での統計値をもとに算出したものを体積中位径(Dv50)とした。
【0076】
<円形度の測定方法>
本発明における「平均円形度」は、トナー母粒子を分散媒(アイソトンII、ベックマンコールター社製)に、5720〜7140個/μLの範囲になるように分散させ、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社(旧東亜医用電子社)製、FPIA3000)を用いて、以下の装置条件にて測定を行い、その値を「平均円形度」と定義する。本発明においては、同様の測定を3回行い、3個の「平均円形度」の相加平均値を、「平均円形度」として採用する。
・モード :HPF
・HPF分析量 :0.35μL
・HPF検出個数:2000〜2500個
以下は、上記装置で測定され、上記装置内で自動的に計算されて表示されるものであるが、「円形度」は下記式で定義される。
【0077】
[円形度]=[粒子投影面積と同じ面積の円の周長]/[粒子投影像の周長]
そして、HPF検出個数である2000〜2500個を測定し、この個々の粒子の円形度の算術平均(相加平均)が「平均円形度」として装置に表示される。
【0078】
[母粒子のコア樹脂とシェル樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定方法]
パーキンエルマー社製DSC7により測定した。試料10mgをアルミニウムパンに入れ、30℃から100℃までを7分間で昇温し、100℃から−20℃まで急冷し、−20℃から100℃までを12分間で昇温して、2回目の昇温時に観察されたTgの値を用いた。吸熱ピークが複数存在する場合は、最も低い吸熱ピーク温度をTgとする。なお、コア樹脂、シェル樹脂は分散液の水分を乾固して測定し、ワックス粒子の吸熱ピークが干渉する場合は、ワックス粒子なしの重合体を作製して行う。
【0079】
<外添剤の平均一次粒径測定方法>
本発明の外添剤の平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡像を用いて測定することできる。例えば、透過型電子顕微鏡像上で、対象となる外添剤から無作為に数千個の粒子を選び出し、その粒子径の個数平均により平均一次粒子径を求める方法やBET比表面積測定値より球換算相当径を求める方法がある。
【0080】
<外添剤及びトナーのBET比表面積の測定方法>
株式会社マウンテック社製、Macsorb model−1208を使用し、液体窒素を用いる1点法によって測定する。具体的には以下の通りである。
まずガラス製の専用セルに測定サンプルを1.0g程度充填する(以下、このサンプル充填量をA(g)とする)。次いで、セルを測定器本体にセットし、窒素雰囲気下で200℃、20分の乾燥脱気を行った後、セルを室温まで冷却する。その後、セルを液体窒素で冷却しつつ、セル内に測定ガス(第一級の窒素30%・ヘリウム70%混合ガス)を流量25mL/minで流し、測定ガスのサンプルへの吸着量V(cm)を測定する。サンプルの総表面積をS(m)とすると、求めるBET比表面積(m/g)は以下の計算式によって算出できる。
【0081】
(BET比表面積)=S/A
=[K・(1−P/P0)・V]/AK:ガス定数(本測定においては、4.29)
P/P0:吸着ガスの相対圧力であり、混合比の97%(本測定においては、0.29)
【0082】
<シリカ粒子(A)中の炭素含有量の測定方法>
堀場製作所製 EMIA−110を使用し、燃焼法により測定を実施した。具体的には
、試料0.1gを磁性ボードに精評し、約1,200℃で燃焼し、炭素含有量を測定した。
【0083】
<帯電量の測定方法>
本発明における無機粒子の帯電量測定は下記条件で行う。
温度23℃、湿度55%環境下において
キャリア : ノンコートフェライトキャリア(粒径80μm、パウダーテック社製) 19.8g
無機粒子 : 0.2g
を20mlガラス瓶に入れ、12h以上放置する。その後、手振りで50回往復混合し、振幅1.0cm、振とう速度500rpmで1分攪拌する。
【0084】
ガラス瓶から0.2g取り出し、東芝ケミカル製ブローオフTB-200装置により下記設定で測定する。
N2圧力計:1.0Kg/cm2
SET TIME:20.0sec
ファラデーゲージにセットする金網(ステンレス製:400メッシュ)
読み取った値Q(μC)に対して下記計算式にて計算することで単位質量当たりの帯電量Q/M(μC/g)を求めることができる。
Q/M(μC/g) = −(Q(μC)/(測定質量(g))
【0085】
<真比重の測定方法>
ルシャテリエ比重瓶を用い、JIS−K−0061の5−2−1に準拠して真比重を測定した。操作は次の通りに行った。
(1)ルシャテリエ比重瓶に約250mlのエチルアルコールを入れ、メニスカスが目盛りの位置にくるように調整する。
(2)比重瓶を恒温水槽に浸し、液温が20.0±0.2℃になったとき、メニスカスの位置を比重瓶の目盛りで正確に読み取る。(精度0.025mlとする)
(3)試料を約100g量り取り、その質量をWとする。
(4)量り取った試料を比重瓶に入れ泡を除く。
(5)比重瓶を恒温水槽に浸し、液温が20.0±0.2℃になったとき、メニスカスの位置を比重瓶の目盛りで正確に読み取る。(精度0.025mlとする)
(6)次式により真比重を算出する。
D=W/(L2−L1)
S=D/0.9982
式中、Dは試料の密度(20℃)(g/cm3)、Sは試料の真比重(20℃)、Wは
試料の見かけの質量(g)、L1は試料を比重瓶に入れる前のメニスカスの読み(20℃)(ml)、L2は試料を比重瓶に入れた後のメニスカスの読み(20℃)(ml)、0.9982は20℃における水の密度(g/cm3)である。
【0086】
[母粒子の製造]
<ワックス・長鎖重合性単量体分散液A1の調製>
パラフィンワックス(日本精鑞社製HNP−9)27部、ステアリルアクリレート(東京化成社製)2.8部、20%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(第一工業製薬社製、ネオゲンS20D)(以下、「20%DBS水溶液」と略記する)1.9部、脱塩水68.3部を90℃に加熱してホモミキサー(特殊機化工業社製 マークIIfモデル)を用い10分間攪拌した。次いでこの分散液を90℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて25MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、ナノトラックで粒子径を測定し体積平均粒径(MV)が250nmになるまで分散してワックス・長鎖重合性単量体分散液A1(エマルション固形分濃度=30.2%)を作製した。
【0087】
<重合体一次粒子分散液A1の調製>
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器にワックス・長鎖重合性単量体分散液A1 35.6部、脱塩水259部を仕込み攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。
その後、攪拌を続けたまま下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて添加した。このモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を滴下開始した時間を重合開始とし、下記の開始剤水溶液を重合開始30分後から4.5時間かけて添加し、更に重合開始5時間後から下記の追加開始剤水溶液を2時間かけて添加し、更に攪拌を続けたまま内温90℃のまま1時間保持した。
【0088】
[モノマー類]
スチレン 76.8部
アクリル酸ブチル 23.2部
アクリル酸 1.5部
トリクロロブロモメタン 1.0部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.7部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 67.1部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 15.5部
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 15.5部
[追加開始剤水溶液]
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 14.2部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液A1を得た。これをナノトラッ
クを用いて測定した体積平均粒径(MV)は280nmであり、固形分濃度は21.1%であった。
【0089】
<母粒子Aの製造>
重合体一次粒子分散液A1 固形分として90部
重合体一次粒子分散液A1 固形分として10部(後から添加)
シアン顔料分散液(大日精化社製EP750) 着色剤固形分として4.4部
20%DBS水溶液 固形分として0.1部
上記の各成分を用いて、以下の手順により母粒子を製造した。
【0090】
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器に重合体一次粒子分散液A1と20%DBS水溶液を仕込み、内温12℃で5分間均一に混合した。続いて内温12℃で攪拌を続けながら第一硫酸鉄の5%水溶液をFeSO・7H2Oとして0.52部を5分かけて添加してから着色剤微粒子分散
液Aを5分かけて添加し、内温12℃で均一に混合し、更に同一の条件のまま0.5%硫酸アルミニウム水溶液を滴下した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後75分かけて内温53℃に昇温して、更に90分かけて56℃まで昇温した。ここでマルチサイザーを用いて体積中位径を測定したところ5.2μmであった。その後、重合体一次粒子分散液A1(後添加分)を3分かけて添加してそのまま60分保持し、続いて20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加してから30分かけて90℃に昇温して75分保持した。
【0091】
その後20分かけて30℃まで冷却して得られたスラリーを抜き出し、5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)のろ紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をした。ろ紙上に残ったケーキを攪拌機(プロペラ翼)を備えたステンレス容器に移し、電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水を加え攪拌する事により均一に分散させ、その後30分間攪拌したままとした。
【0092】
その後、再度5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)の濾紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をし、再度ろ紙上に残った固形物を攪拌機(プロペラ翼)を備え電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水の入った容器に移し、攪拌する事により均一に分散させ30分間攪拌したままとした。この工程を5回繰り返したところ、ろ液の電気伝導度は2μS/cmとなった。
【0093】
ここで得られたケーキをステンレス製バッドに高さ20mmとなる様に敷き詰め、40℃に設定された送風乾燥機内で48時間乾燥する事により、母粒子Aを得た。得られたトナー母粒子Aの体積中位径は6.3μm、平均円形度は、0.960であった。
実施例、比較例には、以下のシリカ粒子X〜Zを用いた。
シリカ粒子X:原体を乾式法にて作成し、表面をヘキサメチルジシラザンで処理。(BET
:66.67 m/g、炭素含有量1.2%、真比重2.2、負帯電性)
シリカ粒子Y:原体を乾式法にて作成し、表面をジメチルポリシロキサンで処理。(BET
:108.5 m/g、炭素含有量5.5%、真比重2.2、負帯電性)
シリカ粒子Z:原体を乾式法にて作成し、表面をジメチルポリシロキサンで処理。(BET
:20.09m/g、炭素含有量3.5%、真比重2.2、負帯電性)
実施例、比較例には、以下のチタニアとシリカ複合酸化物粒子P、Qとチタニアrを用いた。
チタニアとシリカ複合酸化物粒子P
(平均一次粒子径:18nm、BET:56.1m/g、帯電量:-138.3μC/g)
チタニアr
(平均一次粒子径:15nm、BET:91.0m/g、帯電量:-30.4 μC/g)
【0094】
〔実施例1〕
<トナーAの製造>
母粒子A(100部)に対し、上記シリカ粒子Xを0.35部、チタニアとシリカ複合酸化物粒子Pを0.9部、正帯電性シリカ(平均一次粒径8nm、BET: 118.8m/g 、帯電量:+509.3μC/g、真比重2.2)を0.225部添加し、大粒径シリカ(平均一次粒径85nm、BET:36.53 m/g、帯電量:300.9μC/g、真
比重2.2)を1.0部添加し、ヘンシェルミキサーにて3000rpmで15分間攪拌・混合して篩別することによりトナーAを得た。
【0095】
〔実施例2〕
<トナーBの製造>
実施例1において、チタニアとシリカ複合酸化物粒子Pの添加部数を1.2部にした以外は実施例1と同様にしてトナーBを得た。
【0096】
〔比較例1〕
<トナーCの製造>
実施例1において、チタニアとシリカ複合酸化物粒子Pの代わりにチタニアrを使用した以外は実施例1と同様にしてトナーCを得た。
【0097】
〔比較例2〕
<トナーDの製造>
実施例1において、シリカ粒子Xの代わりにシリカ粒子Yを使用した以外は実施例1と同様にしてトナーDを得た。
【0098】
〔比較例3〕
<トナーEの製造>
実施例1において、シリカ粒子Xの代わりにシリカ粒子Zを使用した以外は実施例1と同様にしてトナーEを得た。
【0099】
<トナーFの製造>
実施例1において、チタニアとシリカ複合酸化物粒子Pの添加部数を0.6部にした以外は実施例1と同様にしてトナーFを得た。
<トナーGの製造>
実施例1において、シリカ粒子Xの添加部数を1.0部にした以外は実施例1と同様にしてトナーGを得た。
【0100】
以上、実施例、比較例の外添処方の詳細については表−1に、トナーの物性については表−2に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
<評価方法>
得られたトナーについては、以下の評価を行った。
1.実写テストによるクリーニング性、紙かぶりおよびトナー消費量の評価
2.実写テストによるベタ追従性の評価
3.固結性(耐熱性保存)試験による耐熱性評価
4.帯電量の安定性試験
1.〜4.の評価結果を表−3に、4.の詳細について表−4に示す。
【0104】
<実写テストの方法>
実写テストには、非磁性2成分接触現像方式、有機感光体(OPC)使用で、ローラー帯電、プロセススピード166.0mm/秒、タンデム方式、中間転写方式、熱定着方式
、ブレードドラムクリーニング方式でのフルカラープリンターを用いた。
25℃・50%の環境下にて、数枚程度の印刷を行った後、印字率28%のチャートを合計2,000枚まで印刷を実施した。そして、前記2,000枚の印刷において500枚の印刷毎に、トナー重量の測定および、ベタ画像とかぶり測定用画像(一部が白紙)を印刷し、白点やスジなどの、トナー流動性や帯電性に起因する画像欠陥の有無を目視にて確認した。判断基準は以下の通りである。
○ :画像欠陥なし
× :画像欠陥が認められ、実使用上支障をきたす
<トナー消費量>
トナー消費量の判定基準は以下の通りである。
○ :1000枚あたりの平均消費量が81g未満
△ :1000枚あたりの平均消費量が81g以上85g未満
× :1000枚あたりの平均消費量が85g以上
【0105】
<印字物上のかぶり>
印字物上のかぶりは、以下のようにして評価した。すなわち、印刷前後の標準紙(明度
92 、紙厚 75g/m、サイズ letter)の白度差Δを日本電色製SE-6000(標準光/視野角):C/2、UV cut filter (420nm)装着あり)を計算した。尚、紙かぶりは4枚(500枚毎)の平均とした。
Δ = delta Wb
判定基準は以下の通りである。
○ :紙かぶり 0.5未満
× :紙かぶり 0.5以上
【0106】
<ベタ追従性の評価>
1.の実写テストで用いた現像槽とは別に、120,000枚印刷後の現像槽を用意し、各トナーについて印字率6%のチャートを3,000枚ながして、デベロッパー中のトナーが評価対象トナーに入れ替わった後に、ベタを5枚連続で取得した。
5枚のベタ画像について、印字方向に対して、上部から1cmの部分を(IDi)、下部から1cmの部分を(IDf)とし、両者の画像濃度の差(ΔID)により、ベタ追従性を評
価した。即ちΔIDが少ないものほど、ベタ追従性が優れたものとなる。尚、濃度の測定には、分光濃度計500 シリーズ(エックスライト社製)を用い、視野角は10°、観察条件はF2で測定を実施した。
【0107】
判定基準は以下の通りである。
○:ΔIDが0.15未満
△:ΔIDが0.15以上0.20未満
×:ΔIDが0.20以上
【0108】
<固結性(耐熱性保存)試験の方法>
現像用トナー10gを円筒形の容器に入れ、20gの荷重をのせ、温度50℃・湿度80%の環境下に24時間放置した後トナーを容器から取り出し、上からいくらの荷重をかけることで円筒形となったトナーの形態が崩れるかを確認した。即ちより低荷重で崩れるものほど、固結性(耐熱保存性)が優れたものとなる。
【0109】
判定基準は以下の通りである。
◎:トナーが崩れた際の荷重が50g未満
○:トナーが崩れた際の荷重が50g以上75g未満
△:トナーが崩れた際の荷重が75g以上
【0110】
<帯電量の安定性試験>
シリコーンコート剤で表面を覆ったフェライトコアキャリア(BET比表面積:0.36m2/g、流動性:42.8秒/50g )とトナーをトナー濃度が6wt%になるようにポリ袋中で混
合し、上下に10回手振りを行う。その後、東京筒井理化学器械株式会社台東製、ミクロ形透視式混合器W-1-12971に試料を投入し、混合を開始した。混合時間10分まで2分毎
に現像剤をサンプリング、帯電量を帯電量分布測定器(エトワス社製)で測定した。得られた帯電量の値(Q2min〜Q10min)を比較することによって評価を行った。表4中の混
合時間0分とは、手振り直後の値であり、判定からは除外するものとする。
【0111】
判定基準は以下の通りである。
帯電安定性
○:Q2min〜Q10minの標準偏差が1.00未満
×:Q2min〜Q10min の標準偏差が1.00以上
帯電低下
○:Q10min-Q2min>0
△:-2.0≦Q10min-Q2min≦0
×:Q10min-Q2min<-2.0
【0112】
【表3】
【0113】
【表4】
【0114】
【表5】