(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための配線基板及び発光装置を例示するものであって、本発明は、配線基板及び発光装置を以下に限定するものではない。
【0010】
また、本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。尚、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0011】
<配線基板>
図1は、実施の形態に係るおける配線基板を示す。
図1Aは配線基板の概略上面図であり、
図1Bは
図1AのA−A線における概略断面図である。
図1Cは
図1Bの破線で囲まれた部分の拡大図であり、
図5、
図7は
図1Cの変形例を示す。また、
図2、
図3は、
図1に示す配線基板のビアの位置や数などを変えた変形例を示す。
図2Aは配線基板の概略上面図であり、
図2Bは
図2AのB−B線における概略断面図である。
図3Aは配線基板の概略上面図であり、
図3Bは
図3AのC−C線における概略断面図である。尚、
図1Aに示す上面図ではビアは図示していないが、ビアの形成方法等によっては、上面視においてビアが視認できる場合と、視認しにくい場合とがあるが、本発明においてはそのいずれであってもよい。また、通常、配線基板は、複数個の発光装置分の配線基板の集合体として取り扱われるものであるが、以下、便宜上、発光装置の1つ分の配線基板について説明する。
【0012】
本発明に係る実施の形態において、配線基板(LTCC基板)10は、絶縁性のセラミック層1と、導電部材2と、を有している。導電部材2は、セラミック層1と積層される導電層と、各導電層を電気的に接続するビアと、を有している。配線基板10の上面となるセラミック層1の上面(表面)に配される導電層は、その上面が被覆層3によって覆われている。導電部材2(導電層及びビア)は銀を含んでおり、導電層の上に設けられる被覆層3は、無機反射層31と、ガラス層32とが積層された積層構造を有する。
【0013】
<配線基板>
配線基板(LTCC基板)10は、発光素子を載置可能な大きさであり、発光装置の基台となる部材である。
【0014】
配線基板10は、母体となる絶縁性のセラミック層1と、発光素子に給電(印可)するための導電部材2とを備える。配線基板10の上面視形状は、四角形、長方形、多角形、円形や、それらの組み合わせ形状、さらに、カソードマーク(アノードマーク)として、その一部が欠けた形などとすることができる。
【0015】
全体として
図1A、
図1Bに示すような平板状、あるいは、凹部を有する形状とすることができる。凹部は、その中に発光素子を載置する場合は、配線基板の略中央に開口を有する凹部が好ましく、凹部の底面に発光素子を載置可能な大きさで設けるのが好ましい。
【0016】
また、ツェナーダイオードなどの保護素子を設ける場合は、発光素子の載置面と同一面上に載置してもよいが、発光素子からの光が照射されにくい位置に載置できるような凹部を有する配線基板を用いることができる。例えば、配線基板の中央からずれた位置や下面側(裏面側)に、保護素子収納用の凹部を有する配線基板としてもよい。
【0017】
図1Aは、上面視四角形の平板状の配線基板10を示しており、その上面の1つの角部領域に、トラック形状の開口部を有する保護素子用の凹部5が設けられている。ここでは、1つの凹部5を設けているが、必要に応じて2以上の凹部を設けることもできる。また、凹部5の開口部の形状についても、トラック形状の他、四角形、円形、多角形などとすることができる。
【0018】
配線基板の厚みは、目的や用途に応じて選択することができるが、平板状の配線基板の場合、0.1mm〜2mm程度のものが好ましく、より好ましくは、0.1mm〜0.6mm程度である。保護素子用の凹部5は、深さが0.1mm〜0.4mm程度のものが好ましく、配線基板の上面の面積に対して、5%〜20%程度の開口面積とするのが好ましい。
【0019】
また、図示しないが、発光素子を載置させるための凹部を有する配線基板としてもよい。発光素子用の凹部を設ける場合は、配線基板の上面から下面までの距離(全体の厚み)は0.4mm〜2mm程度が好ましく、さらに、0.4mm〜0.8mm程度が好ましい。凹部の深さは0.05mm〜1mm程度が好ましく、さらに、0.1mm〜0.6mm程度が好ましい。
【0020】
また、配線基板の上面視の大きさは、発光装置1つ分の大きさとして、1.2mm〜5mmが好ましい。発光素子用の凹部を設ける場合は、凹部の開口部の大きさは、最大径(幅)は0.8mm〜4.5mmが好ましい。凹部の開口部は、上面視が四角形、長方形、多角形、円形、及びそれらを組み合わせた形状とすることができる。凹部の内壁は、底面に垂直な面、または傾斜面とすることができ、更に、段差を有していてもよい。
【0021】
導電部材2(導電層)の露出部(素子載置領域)2aは、
図1Cに示すように、その周りの領域より隆起し、被覆層3の上面と同じ高さもしくはそれよりも高い位置になるように変形している。このように変形することで、加圧前は同じ膜厚のセラミック層を複数用いている場合であっても、加圧後、更には焼成後にそれぞれの厚みが、全体的に、あるいは部分的に異なっていてもよい。
【0022】
(セラミック層)
配線基板10を構成する母体となるセラミック層1は、絶縁性の板状部材である。目的や用途に応じて、単層や、
図1(b)で示すような複数層で構成することができ、好ましくは2層、または3層構造である。セラミック層の材料としては、無機酸化物が挙げられ、詳細には、ガラス粉末(SiO
2、B
2O
3、Al
2O
3、CaO、Na
2O、BaO、K
2O等を成分とする粉末)とセラミック粉末(Nb
2O
3、ZrO
2、ZnO、MgO、Y
2O
3、TiO
2等を成分とする粉末)を主成分とするものなどが挙げられる。多層のセラミック層を積層させる場合、各層が同じ厚み、または異なる厚みとすることができ、好ましくは同じ厚みのものを積層させる。また、それぞれの層の厚みは0.05mm〜0.25mmが好ましい。
【0023】
なお、各セラミック層は、その厚みが全体に渡って均一な厚みでなくてもよい。配線基板は、セラミック層(グリーンシート)と後述の導電部材や被覆層を積層し、加圧して密着させてから焼成して得られるが、焼成前の加圧によって変形する。例えば、
図1B、
図1Cに示すように、被覆層を設けていない領域(配線基板の中央付近)が、配線基板の上面側において一部が隆起するように変形する。ここでは、導電部材2の露出部(素子載置領域)2aが隆起し、被覆層3の上面と同じ高さもしくはそれよりも高い位置になるように変形している例を示している。このように、加圧前は同じ膜厚のセラミック層を複数用いている場合であっても、加圧後、更には焼成後にそれぞれの厚みが、全体的に、あるいは部分的に異なっていてもよい。なお、露出部の一部が隆起して変形している領域は、その上面は平らな面ではなく、
図1Cに示すような曲面となる。このような面を素子載置領域としても、発光素子の傾き等は実質的には問題にならない。むしろ、隆起していない場合に比して、半田実装時に、セルフアライメント効果が発現しやすくなり、発光素子の搭載位置精度を向上させやすい。また、発光素子の発光部(発光層)がわずかながらも上方に位置することになり、例えば、5〜50μm程度高くすることができるため、無機反射層に照射される光の量を多くする、すなわち、半田フィレットによる光の吸収を低減することができる。これにより光の取り出し効率の低下を抑制することができる。
【0024】
(導電部材)
導電部材2は、発光素子等に給電するための部材であり、
図1B、
図1Cに示すように、セラミック層1と積層されるように設けられる導電層21と、各導電層とを電気的に接続するビア22と、を有する。導電層のなかで、特に、配線基板の上面に設けられるものを上面導電層、下面に設けられるものを下面導電層ともいう。上面導電層は、発光素子と電気的に接続されるものであり、下面導電層は、回路基板などの2次基板に電気的に接続されるものである。上面導電層と下面導電層とは、配線基板のビアや内部導電層、さらに、場合によっては側面に設けられる側面導電部材などを介して電気的に接続されており、これら導電部材を合わせて発光素子に給電するための電極として機能する。また、発光素子から発生する熱を外部に放出するための放熱経路としても機能するものである。尚、導電部材のうち、通電に寄与せずに、放熱を目的として設けるものを有していてもよい。
【0025】
本実施形態において、導電層のうち、上面導電層は、被覆層で覆われるものであるが、その全面が被覆されるものではない。すなわち、発光素子と電気的に接続させるための領域として、被覆層で覆われずに露出した露出部を有する。例えば、
図1A、
図1Bに示すように、上面導電層の上面に設けられる被覆層3に開口部が設けられ、その開口部内に上面導電層が露出された露出部2aを有する。発光素子をフェイスダウン実装(フリップチップ実装)する場合は、この露出部2aは素子載置領域となり、発光素子の電極配置等に応じた形状及び大きさ等の露出部とする。また、発光素子をフェイスアップ実装する場合は、発光素子は導電部材2または被覆層3の上に実装することができる。詳細には、被覆層3の開口部内に露出された導電部材(露出部)2a上に実装してもよく、被覆層3に開口部を設けずに、被覆層3の上に実装してもよい。いずれにしても、発光素子をフェイスアップ実装する場合は、ワイヤの接続領域として被覆層の開口部内に露出部を設けることが必要となる。いずれの場合も、発光素子の数や大きさ、形状、配置等に応じて所望の位置に露出部を設ける。
【0026】
また、このような露出部は、導電部材とは異なる金属の金属層で覆うことができる。例えば、
図1Cに示すように、露出部2aの最表面に、金(Au)などの耐腐食性の高い金属層23を設けるのが好ましい。金属層23は、被覆層3を設けた後にめっきなどにより設けるものであり、その厚みは、被覆層3の上面と略同じ高さになるように、または、被覆層3の上面よりも高くなるように設けてもよい。例えば、0.1μm〜5μm程度の厚みとすることができる。また、被覆層3に覆われていない導電部材2(導電層21)の全面に金属層23を形成するのが好ましく、つまり、金属層23と被覆層3との間に隙間(導電部材2がむき出しになる領域)がないよう、接して設けられることが好ましい。また、
図5に示すように、被覆層3の上に金属層23が一部形成されるなど、部分的に積層されていてもよい。
【0027】
導電部材は、配線基板の上面や下面、更に内部において、広い面積、または、大きな体積で設けられるのが好ましい。詳細には、導電層は広い面積で設けるのが好ましく、ビアは径を大きく、またはその数を多く設けるのが好ましい。これは、本実施形態で用いられるセラミック層が、高温焼結型のセラミックに比べて放熱性が低いため、放熱経路を多く有する方が有利なためである。特にビアは、発光素子の載置領域の直下に設けると効率よく放熱することができる。
【0028】
導電層の大きさ(面積)は、配線基板(セラミック層)の大きさに対して、10%〜99%を占めるような大きさで設けるのが好ましく、さらに、50%〜99%を占めるような大きさで設けるのが好ましい。このように、放熱性を考慮して導電層の面積を大きくすることで、反射率や光沢度の低い導電層が広い範囲に形成されてしまう場合であっても、本実施の形態のように、無機反射層とガラス層とを備えた被覆層で、導電部材を被覆することで、優れた放熱性と光取り出し効率と耐食性を兼ね備えた配線基板とすることができる。
【0029】
例えば、
図1Aに示すように、配線基板の上面において、2つの上面導電層は、配線基板の面積の約65%を占める大きさで設けられている。別の観点から、発光素子と導通させる部分である素子載置領域(被覆層の開口部内に露出された露出部)の、約3倍以上の面積で上面導電層が設けられていることになる。発光素子への導通のみを目的とするのであれば、素子載置に必要な面積の上面導電層を設ければよいが、本実施形態では、上述のような広い面積で上面導電層を設けることで、横方向への熱の広がりを促進することができる。配線基板の内部に設けられる内部導電層も、広い面積で設けて、多くのビアと接続させることが好ましい。
【0030】
ビアは、数を多く、径を太く(大きく)するなど、大きい体積で設けるのが好ましい。例えば、配線基板の体積に対して、2〜30%程度を占めるようにするのが好ましく、より好ましくは5〜20%程度である。または、配線基板の面積に対して、2〜30%程度を占めるようにするのが好ましく、より好ましくは5〜20%程度である。
【0031】
例えば、発光装置の1つ分の配線基板の大きさを、縦3mm×横3mm、高さ0.4mm程度とする場合、直径0.15mmのビアを、20〜40個設けるのが好ましい。また、発光素子に近い位置に多くのビアを配置するのが好ましい。
【0032】
ビアについては、
図2及び
図3を用いて説明する。
図2A、
図2Bに示すように、配線基板10Aは、
図1に示す配線基板10に比べてビア22の数を多くしている。
図2A、
図2B配線基板中央に設けられる導電部材2の露出部2aの直下に、ビア22が形成されている。露出部2aを素子載置領域とし、フリップチップ実装する場合、このような位置にビアが形成されていることで、発光素子から発生する熱を効率よく放出させることができる。また、露出部近傍にもビア22は形成されており、配線基板の中央付近により多く密集するようにビア22が形成されている。このように、ビアは、配線基板の上面視において、同じ密度で形成されるのではなく、より放熱を必要とする領域に高密度で形成させるなど、局所的に高密度に形成することで、効率的に熱を放出することができる。
【0033】
図3A、
図3Bは、さらにビアの数を増やした配線基板10Bを示している。ここでは、ビア22の数が、配線基板の下側ほど、多くなるように形成されている。導電部材の露出部2aの直下にビア22が形成されており、この領域については、上層から下層まで連なるようにビア22が形成されている。つまり、3層のセラミック層において、各層とも露出部直下にビア22を備えている。
【0034】
詳細には、最上のセラミック層1は、
図3Bの断面図において、3本×2の計6本のビアが設けられている。上から2層目のセラミック層(ここでは真ん中の層)は、上記6本のビアに加え、さらにそれらの外側に各2本のビアが設けられ、5本×2の計10本のビアが設けられている。つまり、外側の2本のビアは、その直上にビアが存在していない。更に、最下層のセラミック層には、その外側に2本のビアを加え、7本×2の計14本のビアが設けられている。外側の各2本のビアは、直上にビアが存在していない。このように、下層側のビアの数を多く、つまり、ビアの形成領域を大きく(広く)することで、露出部2a上に実装される発光素子からの熱を、横方向及び下方向(末広がり状)に広げて、効率よく放出することができる。
【0035】
図2、
図3において、各ビアは、縦横方向にマトリクス上に規則的に配列され、線対称で形成されているが、これに限らず、線対称にならない配置、ランダム配置などとすることもできる。
【0036】
セラミック層に設けられる導電部材(導電層及びビア)としては、パラジウム(Pd)−銀(Ag)、銀、銅等が挙げられる。特に、放熱性の高い銀が好ましい。
【0037】
また、これらの導電部材中に、セラミック層を構成する成分である無機酸化物(セラミック粉末やガラス粉末)を加えてもよい。加える量としては、5〜50重量%程度が好ましい。あるいは、セラミック層に、導電部材を加えてもよい。これにより、セラミック層と導電部材(導電層、ビア)との密着性を向上させることができる。特に、導電部材を広い面積や大きな体積で設ける場合、導電部材とセラミック層との密着性を強固にすることができる。ただし、正負一対の電極として機能する導電部材の間のセラミック層中には、導電部材が導電性を維持したまま存在すると短絡する恐れがあり、好ましくない。そのため、焼成前には導電性を有していたとしても、焼成後には導電性が低下又は絶縁化する金属材料を用いるのが好ましい。
【0038】
(被覆層)
被覆層は、導電部材のうち、配線基板の上面に設けられる導電層(上面導電層)の上面を被覆するように設けられるものであり、無機反射層とガラス層とが積層された構造を有する。尚、ガラス層や無機反射層を構成する成分の一部が拡散するなど、各層の境界が不明瞭な領域を有している場合もあり、このようなものも含めて積層構造とする。
【0039】
銀を含む導電部材は、配線基板の形成時に焼成されるものであるため、配線基板の上面に設けられる上面導電層の表面の平滑性は低く、光沢度は高くはない。また、焼成時に不純物が混入するなどにより、反射率も高くはない。更に、焼成時には導電部材中の銀がセラミック層や無機反射層内に拡散して表出することがあり、その表出した部分が変色する場合がある。また、導電層やビアの面積や体積を上げるために密着性を上げる組成配合にした場合、Agなどの拡散が起こる場合がある。
【0040】
さらに、このような銀を含む導電部材を有する場合、その配線基板の製造工程や、配線基板上に発光素子が載置された発光装置の製造工程において、大気中など水分が存在する環境下で通電する際に、銀がセラミック層内に拡散し(マイグレーション)、その拡散した銀が茶色く変色しやすい。
【0041】
本実施の形態では、このような銀を含む導電部材のうち、上面導電層の上面を覆う被覆層として、無機反射層とガラス層を、この順で積層させた構造としていることで、銀が無機反射層内に拡散したとしても、ガラスで覆っているために変色することを抑制することができる。
【0042】
ただし、前述のように、発光素子への導通のために、上面導電層の上面には、被覆層で覆われない領域、すなわち、露出部が必要であるため、被覆層には開口部が設けられる。被覆層の開口部の大きさ及び形状は、導通に必要な大きさ及び形状であればよい。例えば、発光素子をフェイスダウン実装(フリップチップ実装)する場合、略四角形の発光素子の上面視における大きさに合わせて、所望の形状及び位置に、上面導電層が露出されるように、被覆層に開口部を設ける。また、発光素子をフェイスアップ実装し、ワイヤを用いて導通させる場合は、正電極側及び負電極側の上面導電層に、ワイヤボンディング可能な大きさ、形状の露出部(被覆層の開口部)を設ける。
【0043】
無機反射層とガラス層とは、同じ面積・形状で設けてもよく、あるいは、無機反射層とガラス層とを、異なる面積・形状で設けてもよい。例えば、無機反射層を各導電部材上に別々に分離して形成し、それを覆うガラス層を、複数の上面導電層及び無機反射層の上にわたって一体的に設けるようにするなどでもよい。
【0044】
また、被覆層は、上面導電層の上面の広い領域にわたって、無機反射層とガラス層とが積層された被覆層を設けることが好ましく、上面導電層の上面の一部やセラミック層の上面の一部が、無機反射層のみで覆われる領域や、ガラス層のみで覆われる領域があっても構わない。
【0045】
無機反射層は、
図1Aに示すように、セラミック層の上面設けられる2つの上面導電層の両方の上面にわたって連続して設けられており、さらに、配線基板の中央付近に、上面導電層が露出する開口部を有している。開口部は、2つの上面導電層の上面が共に露出するように設けられており、そのために、2つの上面導電層の間のセラミック層も共に露出されている。このように、一つの無機反射層で、2以上の複数の上面導電層を一体的に被覆するほか、上面導電層をそれぞれ個別の無機反射層で被覆してもよい。また、後に発光装置として切断される場合、その切断位置に相当する部分には無機反射層を設けないようにすることもできる。その場合は、各発光装置ごとに複数の導電部材を、一体的に覆う無機反射層を設けてもよい。
【0046】
ガラス層は、無機反射層の上面を覆うように設けられ、無機反射層とほぼ同じ形状か、もしくは、異なる形状で設けることができる。例えば、
図4A、
図4Bに示すように、ガラス層は無機反射層の上面のほぼ全面を覆うようにすることができる。このとき、無機反射層と同様に、2つの上面導電層の上面にわたって連続して形成されるとともに、配線基板の中央付近に、2つの上面導電層及びその間のセラミック層が露出する開口部を有している。
【0047】
また、
図1A、
図1Bに示すように、無機反射層の一部が露出するようにガラス層を設けてもよい。被覆層の端部が上面導電層の上に位置する場合、その被覆層の端部は、無機反射層のみとするのが好ましい。例えば、
図1Bに示すように、被覆層の開口部の縁が上面導電層に位置する場合、その開口部の縁が被覆層の端部となるため、その部分はガラス層に覆われない無機反射層からなる被覆層が形成される。これは、ガラス層と、導電部材(上面導電層)とが直接接すると、上面導電層内の銀が拡散することによってガラス層が着色するおそれがあるため、これらを離間するように設けている。すなわち、上面視においても断面視においても、上面導電層とガラス層とが、無機反射層を間に挟んで設けられるようにするのが好ましい。
【0048】
ただし、
図5に示すように、ガラス層32が導電層21と、一部接する場合があってもよい。例えば、導電層21の露出部に、金属層23として金(Au)メッキなど設ける場合、その金属層23の厚み等によっては、被覆層(ガラス層32や無機反射層31)の上にもわたるように金属層が形成される場合がある。このような場合は、被覆層が変色しても大きな問題にはならない。
【0049】
(無機反射層)
被覆層の一部を構成する無機反射層は、主として発光素子からの光を効率よく反射する機能を有する白色系の層である。
【0050】
このような無機反射層は、配線基板の製造工程において、焼成前に設けるのが望ましい。具体的には、焼成前のグリーンシートと導電部材とを積層させた上面に、あるいは焼成後の配線基板に、マスクを介して所定の位置にスラリーを塗布(印刷)することで形成することができる。ここで用いるスラリーは、無機酸化物(ガラス粉末とセラミック粉末)と、各種添加物(バインダー、溶剤等)とを混合したものであり、焼成後あるいは硬化後に無機反射層となる。また、これら積層体に直接塗布するのではなく、別工程で、薄くシート状に作製した無機反射層を、貼り合わせてもよい。
【0051】
無機反射層は、配線基板のセラミック層と、同じ材料を有するものでもよく、別の材料を用いてもよい。異なる場合は、焼成後のセラミック層よりも、反射率が高くなるように調製するのが好ましく、例えば、セラミック粉末(白色成分)を、セラミック層よりも高い比率で含有させるのが好ましい。また、無機反射層の厚みは、その下にある導電部材(上面導電層)が透けない程度とするのが好ましく、例えば、10μm〜50μmが好ましい。
【0052】
焼成前のグリーンシートと導電部材(導電層)との積層体に設けられる無機反射層は、配線基板の焼成時に、共に焼成されることになるため、その焼成温度に耐え得る部材が好ましい。そのため、セラミック層と同様の成分を有するものが好ましく、セラミック粉末とガラス粉末とその他添加剤等を混合したスラリーまたはペーストを用いるのが好ましい。このようなスラリーまたはペーストを、積層体に設けて乾燥させた後、焼成することで、配線基板の母体であるセラミック層と同様に、低温焼成されたセラミック層の無機反射層とすることができる。
【0053】
また、焼成後の配線基板上に設けられる無機反射層は、上記と同じくセラミック粉末とガラス粉末とその他添加剤等混合したスラリーまたはペーストを用いてもよい。ただし、配線基板はすでに焼成済みであるため、ここで設ける無機反射層は、配線基板の焼成温度以下の温度で硬化し、白色となるものを用いることができる。そのため、前記のスラリーまたはペーストの組成を、配線基板よりも低温で焼成できるよう調製されたものや、樹脂に酸化チタンなどの白色フィラーを混合させた無機反射層なども用いることができる。
【0054】
(ガラス層)
無機反射層の上に設けられ、被覆層の一部を構成するガラス層は、無機反射層の上を被覆するよう上に設けられ、主に導電部材やその上の無機反射層に水分が内部に侵入するのを防ぐ遮断層として機能する層である。
【0055】
ガラス層は、無機反射層とガラス層とを、共に配線基板の焼成前に設ける、つまり、一度の焼成で被覆層を形成することができる。この場合、ガラス層が溶融して無機反射層と結合するため、密着強度に優れた被覆層とすることができる。また、無機反射層を設けて焼成した配線基板に、ガラス層を設けてもよい。このように、被覆層を別工程で設ける場合、ガラスの組成の選択肢が増えるため、目的に応じた組成のガラスを選択することができ、また、焼成時の収縮差による反りの影響を受けにくくすることができる。いずれの工程を経ても、銀を含む導電部材(上面導電層)とその上の無機反射層とを、ガラス層が覆うことで、銀イオンマイグレーションによる無機反射層の変色を抑制することができる。
【0056】
ガラス層としては、シリカガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウ珪酸ガラス、アルミノホウ珪酸ガラス、ホウ珪酸亜鉛ガラス、リン酸ガラス等を用いることができ、これらを単層または複数層、あるいは設ける位置によって異なる材料を用いてもよい。また、厚みは、1〜10μm程度が好ましい。
【0057】
(保護膜)
被覆層として、上記の無機反射層とガラス層とを設けた上に、更に、
図7に示すように保護膜4を設けてもよい。保護膜の材料としては、Al
2O
3、SiO
2、TiO
2、ZrO
2、ZnO、Nb
2O
5、MgO、In
2O
3、Ta
2O
5、HfO
2、SeO、Y
2O
3、SnO
2等の酸化物や、AlN、TiN、ZrN等の窒化物、ZnF
2、SrF
2等のフッ化物が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。或いは、積層させるようにしてもよい。保護膜の膜厚は、用いる材料によって好ましい範囲は多少変化するが、約1nm〜300nmが好ましく、より好ましくは5nm〜100nmである。複数の層を積層する場合は、層の合計の膜厚がこの範囲内とするのが好ましい。
【0058】
保護膜は、発光素子を載置した後、ワイヤを用いる場合はワイヤを設けた後に形成するのが好ましい。
【0059】
保護膜は、被覆層の表面の少なくとも一部を被覆していればよいが、略全面を被覆していることが好ましい。これにより、水分の影響をより受けにくくすることができ、銀の変色を効果的に抑制することができる。
【0060】
このような保護膜は、原子層堆積法(ALD(Atomic Layer Deposision)法)、スパッタ法、蒸着法などによって形成することができる。
【0061】
<発光装置>
次に、
図6A、
図6Bを用いて、上記配線基板を用いた発光装置について説明する。
図6Aは、発光装置100の概略上面図であり、
図6Bは
図3AのE−E線における概略断面図である。本実施形態において、発光装置100は、平板状の配線基板10の上面の略中央に、1つの発光素子20がフェイスダウン実装されており、発光素子20を覆うよう透光性の封止部材30が設けられている。
【0062】
(発光素子)
本発明においては、発光素子として半導体発光素子である発光ダイオードを用いるのが好ましい。
【0063】
発光素子としては、任意の波長のものを選択することができる。例えば、青色、緑色の発光素子としては、ZnSeや窒化物系半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いたものを用いることができる。また、赤色の発光素子としては、GaAs、InPなどを用いることができる。さらに、これ以外の材料からなる半導体発光素子を用いることもできる。用いる発光素子の組成や発光色、大きさや、個数などは目的に応じて適宜選択することができる。
【0064】
蛍光体を有する発光装置とする場合には、その蛍光体を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。
【0065】
また、可視光領域の光だけでなく、紫外線や赤外線を出力する発光素子とすることができる。さらには、発光素子とともに、受光素子などを搭載することができる。
【0066】
(封止部材)
封止部材は、発光素子や保護素子などを、塵芥、水分や外力などから保護する部材である。また、発光素子からの光を透過可能な透光性を有し、且つ、それらによって劣化のしにくい耐光性を有するものが好ましい。具体的な材料としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂やユリア樹脂を挙げることができる。このような材料に加え、所望に応じて着色剤、光拡散剤、フィラー、色変換部材(蛍光部材)などを含有させることもできる。
【0067】
また、封止部材の表面の形状については配光特性などに応じて種々選択することができる。上面を平らにしたり、あるいは凸状、凹状にしたり、さらにはそれらを組み合わせた形状とすることができる。
図2Bでは、発光素子の上面に頂点が位置するような凸レンズ状と、その周囲に上面が平らな鍔部を有する封止部材を示している。
【0068】
封止部材は、1層または2層以上の複数層としてもよく、目的や用途に応じては、そのいずれか、または全部に、拡散材や顔料、蛍光体等を混入させてもよい。
【0069】
蛍光体としては、例えば、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系蛍光体、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LAG)、ユウロピウム及び/またはクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CaO−Al
2O
3−SiO
2)系蛍光体、ユウロピウムで賦活されたシリケート((Sr,Ba)
2SiO
4)系蛍光体、βサイアロン蛍光体、KSF系蛍光体(K
2SiF
6:Mn)、量子ドット蛍光体などが挙げられる。