(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の偏光板は、偏光子の片面に第一の保護フィルムが積層され、前記第一の保護フィルムの前記偏光子が積層された面とは反対側に第一の粘着剤層を有し、前記偏光子の他方の面には、第二の粘着剤層を介して第二の保護フィルムが積層され、前記第二の保護フィルムの前記第二の粘着剤層との貼合面とは反対側の面には、第三の粘着剤層を介して第三の保護フィルムが積層されている。
【0011】
図1は、本発明の偏光板の層構成の一例を示す概略図である。
図1に示された偏光板100は、第一の粘着剤層30、第一の保護フィルム20、偏光子1、第二の粘着剤層31、第二の保護フィルム21、第三の粘着剤層32、及び第三の保護フィルム22がこの順に積層された層構成である。
【0012】
図2は、本発明の偏光板の層構成の一例を示す概略図である。
図2に示された偏光板101は、第一の粘着剤層30、第一の保護フィルム20、偏光子1、第二の粘着剤層31、第二の保護フィルム21、第三の粘着剤層32、第三の保護フィルム22、及び剥離フィルム40がこの順に積層されている。剥離フィルム40を第一の粘着剤層30上に貼着することにより、第一の粘着剤層30を介して偏光板を液晶セルに貼り付けるまでの間、その表面を保護することができる。剥離フィルムは、液晶セルに貼合されるときに剥離される。
【0013】
図1及び
図2に示されるように、本発明の偏光板は、偏光子の片面にのみ保護フィルムが積層された薄型の偏光板である。そして本発明においては、第二の保護フィルムにおける偏光子から遠い側に第三の保護フィルムを有する。偏光板が第二の保護フィルムの偏光子から遠い側に第三の粘着剤層及び第三の保護フィルムを有することにより、急激な温度変化が繰り返されても応力を緩和して偏光子の割れを防ぎ、高湿条件においても液晶パネルの反りを抑制することができるものと考えられる。
【0014】
通常偏光板の表面を保護するために、偏光板の最も外側の層としてプロテクトフィルムを積層することが多い。プロテクトフィルムは、液晶セルに偏光板を貼合した後に剥がされるため、偏光板とプロテクトフィルム上の粘着剤層との間の密着力は通常低く設定される。一般的なプロテクトフィルムが有する粘着剤層と偏光板の密着力としては、0.001〜0.2N/25mmである。そしてプロテクトフィルム及びプロテクトフィルム上の粘着剤層は剥離されるので、最終的に液晶表示装置に組み込まれることはない。本発明においては、第三の粘着剤層及び第三の保護フィルムは、液晶セルとの貼合後も剥がされず、偏光板はそのまま液晶表示装置に組み込まれる。したがって本発明の偏光板においては、第二の保護フィルムと第三の粘着剤層との間の密着力が1.0N/25mm以上である。上記密着力であると、第二の保護フィルムと第三の粘着剤層及び第三の保護フィルムとは剥離せずに液晶表示装置に組み込むことができる。
【0015】
以下、本発明の偏光板を構成する部材について説明をする。
【0016】
[偏光子]
偏光子は、光学軸に平行な振動面をもつ直線偏光を吸収し、光学軸に直交する振動面をもつ直線偏光を透過する性質を有する光学フィルムが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素(ヨウ素又は二色性有機染料)が吸着配向された偏光子が挙げられる。
偏光子の厚みは、通常25μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは8μm以下である。特に偏光子の厚みが薄くなることにより、偏光子自身の機械的な強度が低下するため、偏光子の厚みが15μm以下の場合、さらには10μm以下の場合、顕著に本発明の効果が得られる。通常偏光子の厚みは1μm以上である。なお、偏光子としてポリビニルアルコール系樹脂層に二色性色素を吸着配向させたものを適用する場合は、ポリビニルアルコール系樹脂単体を延伸してもよいし、基材などにポリビニルアルコール系樹脂の溶液を塗工して乾燥させた後、基材と共に延伸させ、基材を除去してもよい。
【0017】
上記の基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ノルボルネンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどが挙げられる。
【0018】
ポリビニルアルコール系樹脂層を構成するポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを使用することができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体が例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、不飽和カルボン酸、オレフィン、ビニルエーテル、不飽和スルホン酸、アンモニウム基を有するアクリルアミドなどが挙げられる。
【0019】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常80モル%以上であり、好ましくは90〜99.99モル%であり、より好ましくは94〜99.99モル%である。ケン化度が80モル%未満であると、得られる偏光板の耐水性及び耐湿熱性が低下する。ケン化度が99.99モル%を超えると、染色速度が遅くなり、生産性が低下するとともに十分な偏光性能を有する偏光子が得られないことがある。
【0020】
ポリビニルアルコール系樹脂は、一部が変性されている変性ポリビニルアルコールであってもよく、例えば、エチレン及びプロピレン等によるオレフィン変性;アクリル酸、メタクリル酸及びクロトン酸等による不飽和カルボン酸変性;不飽和カルボン酸のアルキルエステル、アクリルアミドなどにより変性されたものを使用してもよい。ポリビニルアルコール系樹脂の変性の割合は、30モル%未満であることが好ましく、10%未満であることがより好ましい。30モル%を超える変性を行った場合には、二色性色素が吸着しにくくなる傾向にあり、十分な偏光性能を有する偏光子が得られないことがある。
【0021】
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、好ましくは100〜10000程度であり、より好ましくは1500〜8000、さらに好ましくは2000〜5000である。平均重合度が100未満であると、好ましい偏光性能を得ることが困難となる傾向があり、平均重合度が10000を超えると、溶媒への溶解性が悪化し、ポリビニルアルコール系樹脂層の形成が困難になる傾向がある。
【0022】
ポリビニルアルコール系樹脂としては適宜の市販品を使用することができる。好適な市販品としては、いずれも商品名で、株式会社クラレ製の“PVA124”及び“PVA117”(いずれもケン化度:98〜99モル%)、“PVA624”(ケン化度:95〜96モル%)、“PVA617”(ケン化度:94.5〜95.5モル%);日本合成化学工業株式会社製の“N−300”及び“NH−18”(いずれもケン化度:98〜99モル%)、“AH−22”(ケン化度:97.5〜98.5モル%)、“AH−26”(ケン化度:97〜98.8モル%);日本酢ビ・ポバール株式会社の“JC−33”(ケン化度:99モル%以上)、“JF−17”、“JF−17L”及び“JF−20”(いずれもケン化度:98〜99モル%)、“JM−26”(ケン化度:95.5〜97.5モル%)、“JM−33”(ケン化度:93.5〜95.5モル%)、“JP−45”(ケン化度:86.5〜89.5モル%)などが挙げられる。
【0023】
偏光子に含有(吸着配向)される二色性色素は、ヨウ素又は二色性有機染料などが挙げられる。二色性有機染料としては、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラックを挙げることができる。二色性色素は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
[第一の粘着剤層]
第一の粘着剤層を形成する第一の粘着剤組成物には、従来から画像表示装置又はそれ用の光学フィルムに用いられてきた、粘着性を有し、透明性に優れる樹脂を主成分とするものが使用できる。アクリル系、ゴム系、ウレタン系、エステル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系などの樹脂を主成分とする粘着剤組成物が挙げられる。これらの中でも、透明性、耐候性、耐熱性などに優れるアクリル系樹脂をベースポリマーとした感圧接着剤が好適である。とりわけ、適度な濡れ性や凝集力を保持し、第一の保護フィルムとの接着性にも優れ、加熱や加湿の条件下で浮きや剥がれなどの剥離問題を生じないものを選択して用いることが好ましい。
【0025】
第一の粘着剤層の形成に用いられるアクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステル系ベースポリマーや、これらの(メタ)アクリル酸エステルを2種類以上用いた共重合系ベースポリマーが好適に用いられる。さらにこれらベースポリマーには、極性モノマーが共重合されていてもよい。極性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシ基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基などを有するモノマーが挙げられる。なお本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を表し、その他(メタ)を付した語においても同様である。
【0026】
これらのアクリル系樹脂は、単独でももちろん第一の粘着剤組成物として使用可能であるが、通常は架橋剤が配合される。架橋剤としては、2価又は多価金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成するもの、ポリアミン化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するもの、ポリエポキシ化合物やポリオールであって、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するもの、ポリイソシアネート化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するものなどが挙げられる。中でも、ポリイソシアネート化合物が有機系架橋剤として広く使用されている。
【0027】
第一の粘着剤層を形成するために用いる第一の粘着剤組成物は、天然物や合成物である樹脂、粘着性付与樹脂、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、染料、顔料、消泡剤、腐食剤、光重合開始剤などの適宜な添加剤を含んでいてもよい。さらに微粒子を含有させて光散乱性を示す第一の粘着剤層とすることもできる。
【0028】
第一の粘着剤層は、上記各成分をトルエンや酢酸エチルなどの有機溶剤に溶解又は分散させて、10〜40重量%程度の固形分濃度とした粘着剤組成物を、基材上に塗布し、乾燥させて有機溶剤を除去することにより、形成することができる。
【0029】
第一の粘着剤層の厚みは、通常1〜40μmであり、好ましくは3〜25μmである。第一の粘着剤層の厚みが上記範囲であると、良好な加工性を保ちつつ偏光板の寸法変化を抑制することができる。また第一の粘着剤層は、その貯蔵弾性率が23〜80℃において0.01〜0.1MPaであることが好ましく、0.01〜0.05MPaであることがより好ましい。
【0030】
「23〜80℃において0.01〜0.05MPaの貯蔵弾性率を示す」とは、この範囲のいずれの温度においても、貯蔵弾性率が上記範囲の値をとることを意味する。貯蔵弾性率は通常、温度上昇に伴って漸減するので、23℃及び80℃における貯蔵弾性率がいずれも上記範囲に入っていれば、この範囲の温度において、粘着剤層が上記範囲の貯蔵弾性率を示すとみることができる。粘着剤層の貯蔵弾性率は、市販の粘弾性測定装置、例えば、REOMETRIC社製の粘弾性測定装置“DYNAMIC ANALYZER RDA II”により測定することができる。
【0031】
[第二の粘着剤層]
第二の粘着剤層を形成する第二の粘着剤組成物としては、上記第一の粘着剤組成物と同様の組成物が挙げられる。第二の粘着剤組成物と第一の粘着剤組成物とは、その成分及び成分の含有割合がそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
第二の粘着剤層の厚みも第一の粘着剤層の厚みと同様に、通常1〜40μmであり、好ましくは3〜25μmであり、より好ましくは3〜10μmである。第一の粘着剤層の厚みが上記範囲であると、良好な加工性を保ちつつ偏光板の寸法変化を抑制することができる。
【0033】
第二の粘着剤層は、その貯蔵弾性率が23〜80℃において0.10〜1.0MPaであることが好ましく、0.15〜0.8MPaであることがより好ましい。23〜80℃における貯蔵弾性率が0.10〜1.0MPaであると、湿熱環境下の偏光子の収縮力を緩和して、より効果的に液晶パネルの反りを低減させることができる。第二の粘着剤層の貯蔵弾性率を0.10〜1.0MPaとする方法としては、通常の粘着剤組成物に、ウレタンアクリレート系オリゴマーを配合することが有効である。好ましくは、このようなウレタンアクリレート系オリゴマーを配合したうえで、エネルギー線を照射して硬化させたものが、高い貯蔵弾性率を示すようになる。
【0034】
[第三の粘着剤層]
第三の粘着剤層を形成する第三の粘着剤組成物としては、上記第一、第二の粘着剤組成物と同様の組成物が挙げられる。第三の粘着剤組成物と第一、第二の粘着剤組成物とは、その成分及び成分の含有割合がそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0035】
第三の粘着剤層の厚みも第一の粘着剤層の厚みと同様に、通常1〜40μmであり、好ましくは3〜25μmであり、より好ましくは3〜10μmである。第一の粘着剤層の厚みが上記範囲であると、良好な加工性を保ちつつ偏光板の寸法変化を抑制することができる。
【0036】
第三の粘着剤層は、その貯蔵弾性率が23〜80℃において0.10〜1.0MPaであることが好ましく、0.15〜0.8MPaであることがより好ましい。23〜80℃における貯蔵弾性率が0.10〜1.0MPaであると、湿熱環境下における偏光子や第二の保護フィルムの応力を緩和して、より効果的に液晶パネルの反りを低減させることができる。
【0037】
[第一の保護フィルム]
第一の保護フィルムとしては熱可塑性樹脂フィルムが挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、環状ポリオレフィン樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂など、当分野において従来から広く用いられてきている材料が挙げられる。
【0038】
環状ポリオレフィン樹脂としては、適宜の市販品、たとえば、TOPAS(登録商標)(Topas Advanced Polymers GmbH製)、アートン(登録商標)(JSR株式会社製)、ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)(日本ゼオン株式会社製)、ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)(日本ゼオン株式会社製)、アペル(登録商標)(三井化学株式会社製)などが挙げられる。このような環状ポリオレフィン樹脂を製膜してフィルムとする際には、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の方法が適宜採用できる。また、エスシーナ(登録商標)(積水化学工業株式会社製)、ゼオノアフィルム(登録商標)(日本ゼオン株式会社製)等の予め製膜され、場合によってはさらに位相差が付与された環状ポリオレフィン樹脂フィルムの市販品を使用してもよい。
【0039】
環状ポリオレフィン樹脂フィルムは、一軸延伸又は二軸延伸されたものであってもよい。延伸することで、環状ポリオレフィン樹脂フィルムに任意の位相差値を付与することができる。延伸は、通常、フィルムロールを巻き出しながら連続的に行われ、加熱炉にて、ロールの進行方向、その進行方向と直交する方向、またはその両方へ延伸される。加熱炉の温度は通常、環状ポリオレフィン樹脂のガラス転移温度近傍からガラス転移温度+100℃までの範囲である。延伸の倍率は、一つの方向につき通常1.1〜6倍、好ましくは1.1〜3.5倍である。
【0040】
環状ポリオレフィン樹脂フィルムは、一般に表面活性が劣るため、偏光子と接着させる表面には、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理の如き表面処理を行うのが好ましい。中でも、比較的容易に実施可能なプラズマ処理やコロナ処理が好適である。
【0041】
酢酸セルロース樹脂フィルムとしては、適宜の市販品、たとえば、フジタック(登録商標)TD80(富士フイルム株式会社製)、フジタック(登録商標)TD80UF(富士フイルム株式会社製)、フジタック(登録商標)TD80UZ(富士フイルム株式会社製)、フジタック(登録商標)TD40UZ(富士フイルム株式会社製)、KC8UX2M(コニカミノルタ株式会社製)、KC4UY(コニカミノルタ株式会社製)等が挙げられる。
【0042】
酢酸セルロース樹脂フィルムの表面には、視野角特性を改良するために液晶層などを形成してもよい。また位相差を付与するため、延伸された酢酸セルロース樹脂フィルムを使用してもよい。酢酸セルロース樹脂フィルムは、偏光子との接着性を高めるため、通常はケン化処理が施される。ケン化処理は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの如きアルカリの水溶液にフィルムを浸漬することによって行なわれる。
【0043】
ポリエステル樹脂は、二塩基酸と二価アルコールとの縮合重合によって得られる重合体であり、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0044】
ポリカーボネート系樹脂は、主鎖にカーボネート結合を持つ重合体であり、ビスフェノールAとホスゲンとの縮合重合によって得られるものが挙げられる。
【0045】
アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルを主な単量体とする重合体であり、メタクリル酸メチルの単独重合体であってもよいし、メタクリル酸メチルと、アクリル酸メチルのようなアクリル酸エステルとの共重合体であってもよい。
【0046】
ポリオレフィン系樹脂は、エチレンやプロピレンのような鎖状オレフィンを主な単量体とする重合体であり、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。なかでも、プロピレンの単独重合体やプロピレンに少量のエチレンが共重合されている共重合体が好ましい。
【0047】
上述した第一の保護フィルムは単層であってもよいし、多層であってもよい。第一の保護フィルムの表面には、ハードコート層、防眩層、反射防止層等の光学層を形成することもできる。第一の保護フィルム表面にこれらの光学層を形成する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0048】
第一の保護フィルムの厚みは、薄型化の観点からできるだけ薄いものが好ましく、90μm以下、さらには50μm以下であることが好ましい。逆に薄すぎると、強度が低下して加工性が阻害される可能性があるので、通常5μm以上である。
【0049】
第一の保護フィルムの23℃における引張弾性率は、通常1000〜8000MPaであり、好ましくは2000〜6000MPaである。23℃における引張弾性率が上記範囲であると、偏光板生産時のハンドリング性に優れるので好ましい。
【0050】
温度40℃、相対湿度90%の条件下において第一の保護フィルムの透湿度は1000g/(m
2・24hr)以下であることが好ましく、800g/(m
2・24hr)以下であることがより好ましい。透湿度が1000g/(m
2・24hr)以下であると、より効果的に液晶パネルの反りを抑制することができる。透湿度は通常10g/(m
2・24hr)以上である。本明細書において、透湿度とは、JIS Z 0208に規定されるカップ法により測定された値のことをいう。
【0051】
第一の保護フィルムと偏光子との貼合には、通常接着剤が使用できる。接着剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤などからなる水系接着剤を用いることができる。中でもポリビニルアルコール系樹脂水溶液が好適に用いられる。接着剤として用いるポリビニルアルコール系樹脂には、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるビニルアルコール系共重合体、さらにはそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体などがある。水系接着剤には、多価アルデヒド、水溶性エポキシ化合物、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物などが、添加剤として添加されてもよい。このような水系の接着剤を用いた場合、それから得られる接着剤層は、通常1μmよりもはるかに薄く、通常の光学顕微鏡で断面を観察しても、その接着剤層は事実上観察されない。
【0052】
また非水系の接着剤として、光硬化性接着剤を用いることもできる。光硬化性接着剤としては、たとえば、光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤との混合物などを挙げることができる。接着剤として光硬化性樹脂を用いた場合は、フィルムを積層後、活性エネルギー線を照射することによって光硬化性接着剤を硬化させる。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する活性エネルギー線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが好ましく用いられる。光硬化性接着剤を採用した場合の硬化後の接着剤層の厚みは、通常0.001〜5μm程度となるが、好ましくは0.01μm以上であり、また好ましくは2μm以下である。
【0053】
偏光子との密着力を向上させるために、第一の保護フィルムには表面活性化処理を施しておくことが好ましい。表面活性化処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、放電処理(グロー放電処理等)、火炎処理、オゾン処理、UVオゾン処理、電離活性線処理(紫外線処理、電子線処理等)のような乾式処理;水やアセトン等の溶媒を用いた超音波処理、アルカリ処理、アンカーコート処理のような湿式処理を挙げることができる。これらの処理は、単独で行ってもよいし、2つ以上を組み合わせてもよい。中でも、ロール状のフィルムを連続的に処理するうえでは、コロナ処理、プラズマ処理が好ましい。
【0054】
[第二の保護フィルム]
第二の保護フィルムは第一の保護フィルムと同様のフィルムであってもよいが、光学的な機能を有する機能性フィルムであることが好ましい。光学的な機能とは、外光の映りこみや反射を抑える機能や表示装置の輝度を向上させる機能等が挙げられる。第二の保護フィルムとしては、中でも表示装置の輝度を向上させる機能を有するフィルムであることが好ましい。
【0055】
外光の映りこみや反射を抑える機能を有するフィルムとしては、反射防止フィルムが挙げられる。反射防止フィルムは、透明樹脂からなる基材フィルム上に防眩層や反射防止層を形成することにより得ることができる。透明樹脂からなる基材フィルムとしては、第一の保護フィルムと同様のフィルムが挙げられる。
【0056】
防眩層は、サンドブラストやエンボス加工等により基材フィルム表面を粗面化させたり、紫外線硬化型樹脂に透明微粒子を混合した塗工液を基材フィルムに塗布して硬化させたりすることによって、基材フィルムの表面に凹凸を形成するのが一般的である。
【0057】
反射防止層は、マイクログラビアコート等の塗布法、蒸着やスパッタリングなどの物理的気相成長法により、有機物、金属、金属化合物等の層を設けることにより形成できる。
【0058】
反射防止層形成のために使用する有機物としては、フッ素原子が導入されたポリマーなどを挙げることができる。金属としては、アルミニウム、銀などが好適に使用できる。金属化合物は一般に無機のものであり、無機酸化物、無機硫化物、無機フッ化物などが使用できる。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化インジウム−錫、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。無機硫化物の例としては、硫化亜鉛、硫化アンチモンなどが挙げられる。無機フッ化物の例としては、フッ化アルミニウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化イットリウム、フッ化ランタン、フッ化セリウム、フッ化サマリウム、フッ化ニオブ、フッ化鉛などが挙げられる。反射防止層を設ける場合は、これらの有機物、金属、金属化合物などからなる層が少なくとも1層あればよいが、必要に応じて多層としてもよい。
【0059】
表示装置の輝度を向上させる機能を有するフィルムとしては、輝度向上フィルムが挙げられる。輝度向上フィルムとしては、屈折率の異方性が互いに異なる薄膜フィルムを複数枚積層して反射率に異方性が生じるように設計された反射型直線偏光分離シート、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持した円偏光分離シート、金属に微細加工を施して可視光領域でも反射偏光を出射するような金属格子反射偏光子、金属微粒子を高分子マトリックス中に添加して延伸したフィルムなどが挙げられる。市販の輝度向上フィルムとして、DBEF(登録商標)(3M社製)、APF−V3(3M社製)、APF−V2(3M社製)等を挙げることができる。
【0060】
第二の保護フィルムに対しても、第一の保護フィルム同様、その表面に表面活性化処理を施しておくことが好ましい。表面活性化処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、放電処理(グロー放電処理等)、火炎処理、オゾン処理、UVオゾン処理、電離活性線処理(紫外線処理、電子線処理等)のような乾式処理;水やアセトン等の溶媒を用いた超音波処理、アルカリ処理、アンカーコート処理のような湿式処理を挙げることができる。これらの処理は、単独で行ってもよいし、2つ以上を組み合わせてもよい。中でも、ロール状のフィルムを連続的に処理するうえでは、コロナ処理、プラズマ処理が好ましい。
【0061】
第二の保護フィルムの厚みは、通常5〜100μmであり、好ましくは10〜50μmであり、より好ましくは10〜40μmである。第二の保護フィルムの厚みが、上記範囲であると、良好な光学的な機能を発揮させつつ、偏光板の薄型化にも貢献することができる。
【0062】
第二の保護フィルムは、単層であってもよいし、多層であってもよい。また第二の保護フィルムは、異なる光学的機能を有するフィルムを積層させたフィルムであってもよく、この場合、輝度向上フィルムにその他の光学的機能を有するフィルムを積層させたフィルムであることが好ましい。
【0063】
[第三の保護フィルム]
第三の保護フィルムとしては、第一の保護フィルムと同様の保護フィルムが挙げられる。第一の保護フィルムと第三の保護フィルムとは、フィルムを構成する樹脂の種類及び配合割合、並びにフィルムの厚み等は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0064】
第三の保護フィルムの厚みは第一の保護フィルムと同様に、薄型化の観点から、90μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。逆に薄すぎると、強度が低下して加工性が阻害される可能性があるので、第三の保護フィルムの厚みは通常5μm以上である。
【0065】
第三の保護フィルムの23℃における引張弾性率は、通常500〜10000MPaであり、好ましくは500〜5000MPaである。23℃における引張弾性率が上記範囲であると、偏光板生産時のハンドリング性に優れるので好ましい。
【0066】
温度40℃、相対湿度90%の条件下において第三の保護フィルムの透湿度は1000g/(m
2・24hr)以下であることが好ましく、800g/(m
2・24hr)以下であることがより好ましい。透湿度は通常10g/(m
2・24hr)以上である。透湿度が1000g/(m
2・24hr)以下であると、より効果的に液晶パネルの反りを抑制することができる。
【0067】
第三の保護フィルムは単層であってもよいし、多層であってもよいが、第三の保護フィルムの表面には、第二の保護フィルムと同様にハードコート層、防眩層、反射防止層等の光学層を形成することもできる。第三の保護フィルムにおける偏光子から遠い側の面には、ハードコート層を形成することが好ましい。ハードコート層を形成することにより、より効果的に急激な温度変化の繰り返しによる偏光子の割れを防ぐことができる。
【0068】
ハードコート層は、表面が平滑なものであってもよいし、また表面に凹凸があってもよい。ハードコート層は、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂等の樹脂材料、又はその樹脂にフィラーを混合させたものを保護フィルム上に塗布することにより形成することができる。ハードコート層は、スピンコート法、マイクログラビアコート法など、公知の方法で上記樹脂を塗工し、硬化させることにより設けることができる。ハードコート層の厚みは、通常1〜30μm程度であり、好ましくは3μm以上、また好ましくは20μm以下である。その屈折率は、通常1.65以下、好ましくは1.45〜1.65である。またハードコート層の鉛筆硬度は、H以上であることが好ましく、2H以上であってもよい。鉛筆硬度をH以上とすることで、第三の保護フィルム表面への傷付きを効果的に抑制し、傷付きに起因する偏光子の割れを抑制することが容易になる。鉛筆硬度は、JIS K 5600−5−4:1999に準じて求められ、各硬度の鉛筆を用いて引っかいたときに傷が生じない最も硬い鉛筆の硬度で表される。
【0069】
第三の保護フィルムに対しても、第一の保護フィルム同様、その表面に表面活性化処理を施しておくことが好ましい。表面活性化処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、放電処理(グロー放電処理等)、火炎処理、オゾン処理、UVオゾン処理、電離活性線処理(紫外線処理、電子線処理等)のような乾式処理;水やアセトン等の溶媒を用いた超音波処理、アルカリ処理、アンカーコート処理のような湿式処理を挙げることができる。これらの処理は、単独で行ってもよいし、2つ以上を組み合わせてもよい。中でも、ロール状のフィルムを連続的に処理するうえでは、コロナ処理、プラズマ処理が好ましい。
【0070】
[剥離フィルム]
剥離フィルムは、偏光板を液晶セルに貼合するまでの間、保護するためのフィルムであり、
図2に示すように第一の粘着剤層上に積層されることが好ましい。
【0071】
剥離フィルムは通常、片面に離型処理が施された熱可塑性樹脂フィルムで構成され、その離型処理面が第1の粘着剤層に貼り合わされる。剥離フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、第一の保護フィルムを構成する熱可塑性樹脂と同様のものが挙げられる。剥離フィルムの厚みは、通常10〜50μmである。
【0072】
本発明の偏光板の製造方法の一例について説明をする。まず偏光子の片面に第一の保護フィルムを貼合する。接着剤を偏光子及び/又は第一の保護フィルムに塗布し、両者を貼り合わせればよい。塗布方法に制限はなく、公知の方法を採用できる。接着剤として水系接着剤を使用した場合は、通常乾燥工程が設けられ、光硬化性接着剤を使用した場合は、通常活性エネルギー線が照射される。
【0073】
第一の保護フィルムにおける偏光子を貼合した面とは反対側の面に、第一の粘着剤層を配設する。第一の粘着剤層は、第一の粘着剤組成物を偏光子上に直接塗工し、乾燥させることにより配設してもよいし、基材フィルム上に第一の粘着剤層を塗工し、乾燥させて得られる粘着剤シートを偏光子に積層してもよい。いずれの場合においても塗布方法に制限はなく、公知の方法を採用できる。第一の粘着剤層を設けるために粘着剤シートを積層していた場合、粘着剤シートの基材フィルムが剥離フィルムの役割を果たすこともできる。
【0074】
偏光子における第一の保護フィルムを貼合した面とは反対側の面に、第二の粘着剤層を配設する。第二の粘着剤層を配設する方法としては、第一の粘着剤層を配設する方法と同様の方法が挙げられる。
【0075】
第二の粘着剤層における偏光子を貼合した面とは反対側の面に、第二の保護フィルムを積層する。第二の粘着剤層を設けるために粘着剤シートを積層していた場合、基材フィルムを剥離してから第二の保護フィルムが積層される。
【0076】
第二の保護フィルムにおける第二の粘着剤層との貼合面とは反対側の面に、第三の粘着剤層を積層する。第三の粘着剤層を積層する方法としては、第一の粘着剤層を積層する方法と同様の方法が挙げられる。
【0077】
第三の粘着剤層における第二の保護フィルムとの貼合面とは反対側の面に、第三の保護フィルムを積層する。第三の粘着剤層を設けるために粘着剤シートを積層していた場合、基材フィルムを剥離してから第三の保護フィルムが積層される。
【0078】
このようにして本発明の偏光板を製造することができる。上記製造方法では、各層を順々に積層していく方法を記したが、例えば第二の保護フィルムを積層するときに、予め第二の保護フィルムに第三の粘着剤層及び第三の光学フィルムを積層しておいてもよい。
【0079】
本発明の偏光板を液晶セルに貼合することにより、液晶パネルを得ることができる。この液晶セルは、IPSモード、VAモード、TNモードなど、従来公知のいかなるモードであってもよい。本発明の偏光板を液晶セルに貼合するときは、第一の粘着剤層を介して本発明の偏光板を液晶セルに貼合することが好ましい。液晶パネルには通常2枚の偏光板が、その吸収軸が互いに直交するように貼合されるが、一方の偏光板が本発明の偏光板であればよく、他方の偏光板としては公知の偏光板を使用することができる。公知の偏光板としては、偏光子の片面にのみ保護フィルムを有する偏光板であってもよいし、両面に保護フィルムを有する偏光板であってもよい。公知の偏光板は、保護フィルムに加え適宜なフィルムを積層していてもよい。適宜なフィルムとしては、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、反射防止フィルム等が挙げられる。また公知の偏光板が有する保護フィルムとしては、本発明の偏光板が有する第一の保護フィルムと同様の保護フィルムが挙げられる。
【0080】
公知の偏光板が有する偏光子の厚みは30μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、また3μm以上であることが好ましい。公知の偏光板の総厚みは150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、また30μm以上であることが好ましい。公知の偏光板が有する偏光子の厚み及び/又は公知の偏光板の総厚みが上記範囲であると、湿熱環境下における公知の偏光板が有する偏光子の応力と本発明の偏光板が有する偏光子の応力とが同程度となり釣り合うので、より効果的に液晶パネルの反りを抑制することができる。
【0081】
本発明の偏光板は、各種液晶表示装置に好適に組み込むことができる。本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込む場合、本発明の偏光板は、液晶表示装置の光源側に配置されることが好ましい。
【実施例】
【0082】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量又は使用量で表す%及び部は、特記ない限り重量基準である。
【0083】
[厚みの測定方法]
厚みは、株式会社ニコン製のデジタルマイクロメーターMH−15Mにより測定した。
【0084】
[位相差値の測定方法]
平行ニコル回転法を原理とする位相差計である王子計測機器株式会社製のKOBRA(登録商標)−ADHにより、23℃において波長590nm、483nm又は755nmの光で測定した。
【0085】
[貯蔵弾性率の測定方法]
粘着剤層の貯蔵弾性率は、以下の方法により測定した。
(1)粘着剤層から試料を25±1mgずつ2つ取り出し、それぞれ略玉状に成形する。
(2)得られた略玉状の試料をI型冶具の上下面に貼り付け、上下面ともL型冶具で挟み込む。測定試料の構成は、L型治具/粘着剤/I型治具/粘着剤/L型冶具となる。
(3)こうして作製された試料の貯蔵弾性率を、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社製、DVA−220〕により、温度23℃、周波数1Hz、初期歪み1Nの条件下で測定した。
【0086】
本発明の偏光板を構成する各部材は、以下のようにして準備した。
【0087】
〈偏光子〉
厚さ20μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上)を、乾式延伸により約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥し、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向している厚さ7μmの偏光子を得た。
【0088】
〈第一の粘着剤層〉
離型処理が施された厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム)の離型処理面に厚さ20μmのアクリル系粘着剤層が設けられている市販の粘着剤シート。ウレタンアクリレートオリゴマーは配合されていない。この粘着剤層の貯蔵弾性率は、23℃において0.05MPa、80℃において0.04MPaであった。
【0089】
〈第二の粘着剤層〉
アクリル酸ブチルとアクリル酸との共重合体にウレタンアクリレートオリゴマー及びイソシアネート系架橋剤を添加した有機溶剤溶液を、離型処理が施された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム)の離型処理面に、ダイコーターにより乾燥後の厚みが5μmとなるように塗工し、乾燥させて得た粘着剤シート。この粘着剤層の貯蔵弾性率は、23℃において0.40MPa、80℃において0.18MPaであった。
【0090】
〈第三の粘着剤層〉
アクリル酸ブチルとアクリル酸との共重合体にウレタンアクリレートオリゴマー及びイソシアネート系架橋剤を添加した有機溶剤溶液を、離型処理が施された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム)の離型処理面に、ダイコーターにより乾燥後の厚みが5μmとなるように塗工し、乾燥させて得た粘着剤シート。この粘着剤層の貯蔵弾性率は、23℃において0.40MPa、80℃において0.18MPaであった。
【0091】
〈第一の保護フィルム〉
厚みが13μmのシクロオレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン株式会社製)。
波長590nmでの面内レターデーション(Re(590))=0.8nm、波長590nmでの厚み方向レターデーション(Rth(590))=3.4nm、波長483nmでの厚み方向レターデーション(Rth(483))=3.5nm、波長755nmでの厚み方向レターデーション(Rth(755))=2.8nm
【0092】
〈第二の保護フィルム〉
厚みが26μmの輝度向上フィルム(3M製、商品名 Advanced Polarized Film, Version 3)を使用した。
【0093】
〈第三の保護フィルム〉
・表面がハードコート処理されたトリアセチルセルロースフィルム(株式会社トッパンTOMOEGAWAオプティカルフィルム製、25KCHC−TC)を使用した。厚みは32μmであり、温度40℃、相対湿度90%の条件下において透湿度は450g/(m
2・24hr)であった。また、ハードコート処理された面の鉛筆硬度は2Hであった。
・ポリエステル系樹脂フィルムを使用した。厚みは38μmであり、温度40℃、相対湿度90%の条件下において透湿度は20g/(m
2・24hr)であった。
【0094】
[水系接着剤の調製]
水100部に対して、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製のKL−318)3部を溶解し、その水溶液に、水溶性エポキシ化合物であるポリアミドエポキシ系添加剤(住化ケムテックス株式会社製のスミレーズレジン(登録商標)650(30)、固形分濃度30%の水溶液〕1.5部を添加して、水系接着剤とした。
【0095】
[偏光板前駆体Aの作製]
上記偏光子の片面に、水系接着剤を介して上記シクロオレフィン樹脂の保護フィルム(第一の保護フィルム)を積層した。積層後、80℃で5分間乾燥することにより、第一の保護フィルムと偏光子とを貼合した。貼合後、40℃で168時間養生した。
【0096】
偏光子における第一の保護フィルムとの貼合面とは反対側の面に、剥離フィルム上に積層された第二の粘着剤層を貼合した。
【0097】
第一の保護フィルムにおける偏光子との貼合面とは反対側の面に、剥離フィルム上に積層された第一の粘着剤層を貼合した。
【0098】
このようにして、第一の粘着剤層、シクロオレフィン樹脂の保護フィルム、偏光子及び第二の粘着剤層がこの順に積層された偏光板前駆体Aを作製した。
【0099】
[偏光板前駆体Bの作製]
上記偏光子の片面に、水系接着剤を介して上記シクロオレフィン樹脂の保護フィルム(第一の保護フィルム)を積層した。偏光子の他方の面に水系接着剤を介して厚みが25μmのトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ株式会社製、KC2UAW)を積層した。
【0100】
積層後、80℃で5分間乾燥することにより、第一の保護フィルムと偏光子とを貼合した。貼合後、40℃で168時間養生した。
【0101】
トリアセチルセルロースフィルムにおける偏光子との貼合面とは反対側の面に、剥離フィルム上に積層された第二の粘着剤層を貼合した。
【0102】
第一の保護フィルムにおける偏光子との貼合面とは反対側の面に、剥離フィルム上に積層された第一の粘着剤層を貼合した。
【0103】
このようにして、第一の粘着剤層、シクロオレフィン樹脂の保護フィルム、偏光子、トリアセチルセルロースフィルム及び第二の粘着剤層がこの順に積層された偏光板前駆体Bを作製した。
【0104】
[偏光板Aの作製]
上記輝度向上フィルム(第二の保護フィルム)上に、上記第三の粘着剤層を介して、上記ハードコート処理されたトリアセチルセルロースフィルム(第三の保護フィルム)を貼合して、積層保護フィルムを得た。貼合は、トリアセチルセルロースフィルムにおけるハードコート処理されていない面が貼合面になるようにした。積層保護フィルムの厚みは63μmであった。なお、輝度向上フィルム及びハードコート処理されたトリアセチルセルロースフィルムにおける第三の粘着剤層と接触する面には、予めコロナ処理を施しておいた。第三の粘着剤層と輝度向上フィルムとの間の密着力は、10N/25mmであった。また、輝度向上フィルムにコロナ処理を施さなかった場合、第三の粘着剤層と輝度向上フィルムとの間の密着力は、2.0N/25mmであった。
【0105】
上記偏光板前駆体Aにおける第二の粘着剤層上の剥離フィルムを剥がした。偏光板前駆体Aにおける第二の粘着剤層と積層保護フィルムにおける輝度向上フィルムとを貼り合わせ、第一の粘着剤層、シクロオレフィン樹脂の保護フィルム、偏光子、第二の粘着剤層、輝度向上フィルム、第三の粘着剤層及びハードコート処理されたトリアセチルセルロースフィルムがこの順に積層された偏光板Aを得た。
【0106】
[偏光板Bの作製]
積層保護フィルムを上記輝度向上フィルムに換えた以外は、実施例1と同様にして、第一の粘着剤層、シクロオレフィン樹脂の保護フィルム、偏光子及び第二の粘着剤層、輝度向上フィルムがこの順に積層された偏光板Bを得た。
【0107】
[偏光板Cの作製]
上記偏光板前駆体Bにおける第二の粘着剤層上の剥離フィルムを剥がした。偏光板前駆体Bにおける第二の粘着剤層と上記輝度向上フィルムとを貼り合わせ、第一の粘着剤層、シクロオレフィン樹脂の保護フィルム、偏光子、トリアセチルセルロースフィルム、第二の粘着剤層、及び輝度向上フィルムがこの順に積層された偏光板Cを得た。
【0108】
[実施例1]
[冷熱交換試験]
偏光板Aを100mm×60mmに裁断した。第一の粘着剤層上の剥離フィルムを剥がし、第一の粘着剤層を介して無アルカリガラス(コーニング社製、EAGLE XG(登録商標))に偏光板Aを貼合した。このガラスへ貼合した偏光板Aの端部から1.0mmの場所に引っ掻き式硬度計(ドイツ・エリクセン社製、モデル318 ボール直径0.75mm)により3Nの荷重を偏光板Aの表面に加え、押し傷を付けた。押し傷の深さは1μm以下であり、サイズは0.2mmΦであった。
【0109】
また、ガラスへ貼合した別の偏光板Aの端部から1.0mmの場所に引っ掻き式硬度計により5N、及び10Nの荷重を偏光板Aの表面に加えた試料もそれぞれ作製した。5Nの荷重を加えて作製した押し傷の深さは2〜5μmであり、サイズは0.3mmΦであった。10Nの荷重を加えて作製した押し傷の深さは5〜8μmであり、サイズは0.4mmΦであった。
【0110】
偏光板表面に荷重を加えるという操作により付く傷は、通常偏光板に積層されるプロテクトフィルムをピンセットなどの鋭利な器具で剥がした際や、バックライトと偏光板とを貼り合わせるときに、異物を咬み込んだ状態で貼り合せた際などに発生する傷を想定したものである。
【0111】
3N、5N、又は10Nの荷重加え、表面に押し傷を有する偏光板Aそれぞれについて、温度85℃及び−40℃(各30分間で1サイクル)の冷熱交換試験(250サイクル)を実施した。判定は以下のようにした。結果を表1に示す。
<判定>
いずれの荷重を加えたときであっても、冷熱交換試験後に偏光子の割れが発生しなかった場合を「○」とした。
いずれかの荷重を加えたとき、冷熱交換試験後に偏光子が割れてしまった場合を「×」とした。
【0112】
[高熱/高湿熱試験]
偏光板Aを長辺155mm×短辺96mm(長辺に偏光板の吸収軸を有する)に裁断した。第一の粘着剤層上の剥離フィルムを剥がし、第一の粘着剤層を介して、厚みが0.4mmで、サイズが長辺160mm×短辺102mmのガラス板に貼合した。ガラス板における偏光板Aを貼合した面とは反対側の面に、アクリル系の粘着剤層を介して、長辺155mm×短辺96mm(短辺に偏光板の吸収軸を有する)に裁断した市販の偏光板(住友化学株式会社製、SRCZ4QH−HCB)を貼合した。
【0113】
前記市販の偏光板は、偏光子の厚みが12μmであり、偏光子の一方の面に厚みが23μmである未延伸のノルボルネン系樹脂からなる保護フィルムが貼合され、他方の面に厚みが25μmであるトリアセチルセルロースフィルムが貼合されており、総厚みは60μmである。市販の偏光板の貼合は、未延伸のノルボルネン系樹脂からなる保護フィルムが前記アクリル系の粘着剤層に接するようにし、さらに偏光板Aの吸収軸と前記市販の偏光板の吸収軸とが直交するようにした。このようにして、ガラス板の一方の面に本発明の偏光板Aが貼合され、他方の面に市販の偏光板が貼合されたガラスサンプルを作製した。
【0114】
まずガラスサンプルを高熱環境下(85℃)に250時間静置した。また、別のガラスサンプルを高湿熱環境下(60℃、90%R.H.)に250時間静置した。
各環境下に静置したガラスサンプルを取り出してすぐに、前記市販の偏光板を上側にして、二次元測定器(株式会社ニコン製、NEXIV(登録商標) MR−12072)の測定台上に置いた。次いで、測定台の表面に焦点を合わせ、そこを基準とし、ガラスサンプル面上の25点にそれぞれ焦点を合わせ、基準とした焦点からの高さを測定した。25点の測定点における高さの最大値と最小値との差を反り量とした。具体的には、
図3に示す点50を測定点とした。25点は偏光板の端部から7mm内側の領域における点であり、短辺方向は約20mm間隔で、長辺方向は約35mm間隔である。
判定は以下のようにした。結果を表1に示す。なおいずれのガラスサンプルにおいてもフィルムの浮きや剥がれは認められなかった。
<判定>
高湿熱環境下に静置したガラスサンプルの反り量が0.3mm以下の場合を「○」とした。
高湿熱環境下に静置したガラスサンプルの反り量が0.3mm超の場合を「×」とした。
高熱環境下に静置したガラスサンプルの反り量が0.5mm以下の場合を「○」とした。
高熱環境下に静置したガラスサンプルの反り量が0.5mm超の場合を「×」とした。
【0115】
[実施例2]
第三の保護フィルムとして偏光板Aで用いたハードコート処理されたトリアセチルセルロースフィルムの換わりに厚み38μmのポリエステル系樹脂フィルム(透湿度:20g/(m
2・24hr))を貼合した偏光板A2を作製して、実施例1と同じように冷熱交換試験及び高熱/高湿熱試験を実施した。以上の結果を表1に示す。
【0116】
[比較例1]
偏光板Aの換わりに偏光板Bを使用して、実施例1と同じように冷熱交換試験及び高熱/高湿熱試験を実施した。以上の結果を表1に示す。
【0117】
[比較例2]
偏光板Aの換わりに偏光板Cを使用して、実施例1と同じように冷熱交換試験及び高熱/高湿熱試験を実施した。以上の結果を表1に示す。
【0118】
【表1】