(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸収体が、前記吸収コアの第1面を覆う第1コアラップと、前記吸収コアの第1面及び第1コアラップの間の接着部とをさらに備え、前記熱可塑性樹脂繊維の第1の部分が、前記接着部を介して、第1コアラップに連結されている、請求項1に記載の吸収体。
前記吸収体が、前記吸収コアの第2面を覆う第2コアラップと、前記吸収コアの第2面及び第2コアラップの間の接着部とをさらに備え、前記熱可塑性樹脂繊維の第2の部分が、前記接着部を介して、第2コアラップに連結されている、請求項1又は2に記載の吸収体。
前記吸収コアを、前記吸収コアの厚さ方向の中心より一方側の一方の層と、他方側の他方の層とに区画した場合に、前記一方の層が、前記他方の層と比較して、前記高吸収性ポリマーを多く含み且つ前記セルロース系吸水性繊維を少なく含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収体。
前記吸収体が、少なくとも前記吸収コアをエンボスすることにより形成され且つ間隔をあけて配置された、複数のエンボス部を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸収体。
前記熱可塑性樹脂繊維が、エンボス部を有しない非エンボス部において、前記セルロース系吸水性繊維及び/又は他の熱可塑性樹脂繊維と融着されていない、請求項7〜9のいずれか一項に記載の吸収体。
前記吸収コアが、前記熱可塑性樹脂繊維と、前記セルロース系吸水性繊維とを、それらの合計100質量部に基づいて、それぞれ、5〜50質量部及び50〜95質量部の比率で含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の吸収体。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[定義]
・「露出」
本明細書では、熱可塑性樹脂繊維に関する「露出」は、熱可塑性樹脂繊維が、吸収コアの第1面又は吸収コアの第2面に存在することを意味する。
【0010】
・「平均繊維長」
本開示では、熱可塑性樹脂繊維、並びにセルロース系吸水性繊維のうち、パルプ以外のもの、例えば、再生セルロース繊維及び半合成繊維の平均繊維長は、JIS L 1015:2010の附属書Aの「A7.1 繊維長の測定」の「A7.1.1 A法(標準法)目盛りが付いたガラス板上で個々の繊維の長さを測定する方法」に従って測定する。
なお、上記方法は、1981年に発行されたISO 6989に相当する試験方法である。
【0011】
・「平均繊維長」
本開示では、パルプの平均繊維長は、重さ加重平均繊維長を意味し、メッツォオートメーション(metso automation)社製のカヤーニファイバーラボファイバープロパティーズ(オフライン)[kajaaniFiberLab fiber properties(off−line)]により測定されるL(w)値を意味する。
【0012】
以下、本開示の吸収体、並びに当該吸収体を含む吸収性物品について説明する。なお、本開示の吸収体は、必要に応じて、吸収性物品に組み込まれた状態で説明する。
[吸収体]
本開示の吸収体は、第1面と、その反対側の第2面とを有する吸収コアを備える。また、上記吸収コアは、熱可塑性樹脂繊維と、セルロース系吸水性繊維と、高吸収性ポリマーとを含む。また、本開示の吸収体では、熱可塑性樹脂繊維の少なくとも一部又は全部が、吸収コアの第1面に露出する第1の部分と、吸収コアの第2面に露出する第2の部分と、第1の部分及び第2の部分を連結する連結部分とを有する。なお、本明細書では、上述の第1の部分と、第2の部分と、連結部分とを、「特定の繊維配向性」と称する場合がある。
【0013】
図1は、本開示の実施形態の1つに従う吸収体を含む吸収性物品、具体的には、テープ型使い捨てオムツ1の平面図である。
図1に示されるテープ型使い捨てオムツ1は、向かって下方が、前方である。
図1に示されるテープ型使い捨てオムツ1は、液透過性層としてのトップシート2と、吸収体3と、液不透過性層としての液不透過性のバックシート4とを有する。
なお、
図1に示されるテープ型使い捨てオムツ1は、後述の吸収性物品の箇所において詳細に説明する。
【0014】
図2は、
図1に示されるテープ型使い捨てオムツ1の吸収体3の平面図であり、そして
図3は、
図2に示される吸収体3のIII−III断面における部分断面図である。
図3において、吸収体3は、吸収コア5と、吸収コア5の第1面9を覆う第1コアラップ11と、吸収コア5の第2面10を覆う第2コアラップ12とを備える。
図3において、吸収コア5は、熱可塑性樹脂繊維6と、セルロース系吸水性繊維7と、高吸収性ポリマー8とを含む。
【0015】
なお、
図3では、説明のため、熱可塑性樹脂繊維6を太く且つ長く、セルロース系吸水性繊維7を、熱可塑性樹脂繊維6よりも細く且つ短く表示しているが、実際の繊維の太さ及び長さを反映するものではない。
【0016】
図3において、熱可塑性樹脂繊維6'は、吸収コア5の第1面9に露出する第1の部分6'aと、吸収コア5の第2面10に露出する第2の部分6'bと、第1の部分6'a及び第2の部分6'bを連結する連結部分6'cとを有する。より具体的には、熱可塑性樹脂繊維6'は、一方の端部(向かって左側の端部)に、吸収コア5の第1面9に露出する第1の部分6'aと、他方の端部(向かって右側の端部)に、吸収コア5の第2面10に露出する第2の部分6'bと、第1の部分6'a及び第2の部分6'bを連結する連結部分6'cとを有する。
【0017】
また、熱可塑性樹脂繊維6''は、一方の端部(向かって左側の端部)に、吸収コア5の第1面9に露出する第1の部分6''aと、一方の端部(向かって左側の端部)及び他方の端部(向かって右側の端部)の間の、吸収コア5の第2面10に露出する第2の部分6''b、第1の部分6''a及び第2の部分6''bを連結する連結部分6''cとを有する。
【0018】
図3に示される吸収体3は、吸収コア5の第1面9と、第1コアラップ11との間に接着部(図示せず)を備え、熱可塑性樹脂繊維6'及び6''の第1の部分6'a及び6''aが、接着部(図示せず)を介して、第1コアラップ11に連結されている。また、
図3に示される吸収体3は、吸収コア5の第2面10と、第2コアラップ12との間に接着部(図示せず)を備え、熱可塑性樹脂繊維6'及び6''の第2の部分6'b及び6''bが、接着部(図示せず)を介して、第2コアラップ12に連結されている。
【0019】
その結果、吸収コア5及び第1コアラップ11の間の連結と、吸収コア5及び第2コアラップ12の間の連結とがより強固になり、吸収コア5及び第1コアラップ11の間と、吸収コア5及び第2コアラップ12の間とで層間剥離しにくくなり、吸収体がよれにくくなる。また、熱可塑性樹脂繊維6'及び6''が、第1コアラップ11と、第2コアラップ12とを強固に連結するため、吸収体3が、液体を吸収した後に層内剥離しにくくなり、ひいては吸収体3が型崩れしにくくなる。
【0020】
本開示の吸収体では、上記接着部は、当技術分野に公知の接着剤により、特に制限なく形成される。
上記接着剤は、例えば、スパイラル塗工、コーター塗工、カーテンコーター塗工、サミットガン塗工等の塗装方法により塗工されうる。
【0021】
図3に示される吸収体3は、吸収コア5と、吸収コア5の第1面9を覆う第1コアラップ11と、吸収コア5の第2面10を覆う第2コアラップ12とを備えるが、本開示の吸収体は、コアラップを含まなくともよい。すなわち、吸収コアが吸収体を構成していてもよい。
【0022】
本開示の吸収体では、特定の繊維配向性を有する熱可塑性樹脂繊維が、吸収体の他の成分、例えば、セルロース系吸水性繊維を保持するための骨格として機能し、吸収体の強度を向上させる。その結果、本開示の吸収体は、体圧等の力が加わった際に、吸収体の内部で層内剥離が生じにくくなり、上記熱可塑性樹脂繊維を含まない吸収体、例えば、パルプのみを含む吸収体よりもよれにくい。
【0023】
また、本開示の吸収体では、特定の繊維配向性を有する熱可塑性樹脂繊維が、吸収体に含まれる高吸収性ポリマーの移動を抑制し、そして高吸収性ポリマーが吸収体(吸収コア)から脱落することを抑制する。従って、高吸収性ポリマーが意図しない偏在化をしにくく、その結果、液体を吸収した後に、吸収体が意図しない膨張をしにくい。
また、本開示の吸収体は、大量の液体を吸収した場合であっても、上記熱可塑性樹脂繊維が吸収体の形状を保持するため、型崩れしにくい、例えば、複数の断片に分断しにくい。
【0024】
さらに本開示の吸収体では、熱可塑性樹脂繊維の熱融着に起因せずに吸収体の強度を向上させているため、本開示の吸収体は、特許文献1に記載の吸収体よりも柔らかくなり、ひいては吸収性物品を着用した着用者が、違和感を覚えにくい。
【0025】
本開示の吸収体では、吸収コアが、湿潤時に、幅50mm当たり、好ましくは1.6N以上、より好ましくは2.0N以上、さらに好ましくは2.4N以上、そしてさらにいっそう好ましくは、2.6N以上の引張強さを有する。液体を吸収した後の、吸収体の型崩れしにくさの観点からである。
なお、本明細書では、湿潤時の引張強さを、「湿潤時強さ」と称することがあり、そして幅50mm当たりの引張強さ(N)を、「N/50mm」と表記する場合がある。
【0026】
本開示の吸収体において、吸収コアが、湿潤時に、幅50mmあたり、好ましくは60N以下、より好ましくは40N以下、さらに好ましくは20N以下、そしてさらにいっそう好ましくは10N以下の引張強さを有する。湿潤時強さが過度に高くなると、吸収体が膨張しにくくなり、吸収体の液体吸収容量が低下する傾向がある。
【0027】
上記湿潤時強さは、以下工程1〜工程8に従って測定される。なお、特に記載のない限り、下記工程は、昇順で進む。
[工程1]
20℃及び相対湿度65%の恒温恒湿室に、テンシロン型引張試験機(島津製作所,AG−1KNI)を準備する。
【0028】
[工程2]
上記恒温恒湿室に静置した、評価すべき吸収性物品から、80mm×50mm(長手方向×幅方向)のサイズの吸収コアの試料を含む、80mm×50mm(長手方向×幅方向)のサイズの吸収性物品断片を、鋭利な刃物(例えば、カッターの替え刃)で切り出す。
なお、吸収性物品が、折り畳まれた状態で保管されている場合には、折り畳まれた部分を避けるように、吸収性物品断片を切り出す。また、吸収性物品断片は、その幅方向中心が、吸収性物品の幅方向中心と一致するように切り出す。
なお、上述のサイズの吸収コアの試料を確保できない場合には、矩形の吸収コアの試料を確保できる最大範囲において、吸収性物品断片を切り出す。
【0029】
[工程3]
上記吸収性物品断片から、吸収コア以外の層、例えば、液透過性層、液不透過性層、第1コアラップ、第2コアラップ等を取り外して、吸収コアの試料を得る。
なお、吸収コアと、第1コアラップ、第2コアラップ等を分離する場合には、コールドスプレーを用いて、吸収体から第1コアラップ、第2コアラップ等をゆっくりと剥離する。
【0030】
[工程4]
上記試料を水平な台の上に静置し、その液透過性層側の表面の中心(試料の、長手方向中心及び幅方向中心)に、青色色素にて着色した生理食塩水(0.9w/v%の塩化ナトリウム水溶液、以下、単に「生理食塩水」と称する)2.5mLを、5秒間で滴下する。
【0031】
[工程5]
滴下後、試料を1分間静置する、次いで、上記試料が、上記生理食塩水で湿潤した、試料の幅方向の仮想断面(以下、「湿潤仮想断面」と称する)を有するか否か、下記の手法により判断する。
試料の外観から、試料の幅方向の仮想断面の4つの辺が青色色素で着色されている場合には、当該仮想断面が上記生理食塩水で湿潤している、すなわち、湿潤仮想断面であると判断する。
なお、存在している場合には「工程7」に進み、存在していない場合には「工程6」に進む。
[工程6]
上記中心に、追加の生理食塩水2.5mLを、5秒間でさらに滴下し、「工程5」に戻る。
【0032】
[工程7]
滴下後3分で、引張試験を行う。具体的には、上記試料を、一対のチャックに、チャック間隔50mm(つかみ部分の長さ、各15mm)でセットし、上記試料を、その長手方向に引張速度100mm/分で引張り、引張強さの最大値(N)を抽出する。
[工程8]
異なる試料で、上述の測定を計10回繰り返し、上記値の平均値を、引張強さの値として採用する。
なお、試料のサイズが、80mm×50mm(長手方向×幅方向)未満である場合には、上記値の平均値を、幅50mmの値に換算する。
【0033】
本開示の吸収体では、吸収コアが、乾燥時に、幅50mm当たり、好ましくは2.0N以上、より好ましくは3.0N以上、さらに好ましくは4.0N以上、そしてさらにいっそう好ましくは、5.0N以上の引張強さを有する。液体を吸収する前の吸収体の型崩れしにくさの観点からである。
なお、本明細書では、乾燥時の引張強さを、「乾燥時強さ」と称することがある。
【0034】
本開示の吸収体では、吸収コアが、乾燥時に、幅50mmあたり、好ましくは60N以下、より好ましくは40N以下、さらに好ましくは20N以下、そしてさらにいっそう好ましくは10N以下の引張強さを有する。乾燥時強さが大きくなると、着用感が低下する場合がある。
乾燥時強さは、工程4〜工程6を省略し、工程7において、滴下後3分の記載を無視した以外は、湿潤時強さと同様に測定する。
【0035】
本開示の吸収体では、吸収コアが、好ましくは3.00N以下、より好ましくは2.00N以下、さらに好ましくは1.50N以下、そしてさらにいっそう好ましくは1.00N以下の剛軟度を有する。吸収コア、ひいては吸収体の柔らかさの観点からである。
【0036】
本明細書では、上記剛軟度は、以下の通り測定される。なお、記載されていない事項は、JIS L 1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.7.4 ガーレ法」に従う。
(1)安田精機製作所社製のNo.311ガーレー式柔軟度試験機を20℃の65%RHの恒温恒湿室に準備する。
【0037】
(2)試料を、38mm×25mm(長手方向×幅方向)のサイズにカットし、測定試料を準備する。
(3)試料を、ガーレー式柔軟度試験機にセットし、剛軟度を測定する(1回目)。次いで、試料の表裏を反対にして、ガーレー式柔軟度試験機にセットし、剛軟度を測定する(2回目)。
上記2回の剛軟度の測定値の平均値を算出する。
(4)異なる試料で、上述の測定を計5回繰り返し、上記平均値の平均を剛軟度として採用する。
【0038】
本開示では、吸収コアは、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下、さらにいっそう好ましくは45%以下、そしてさらにいっそう好ましくは40%以下の高吸収性ポリマー脱落率を有する。高吸収性ポリマー脱落率が上記範囲にあることにより、吸収コア内で、高吸収性ポリマーが偏在しにくくなり、ひいては、液体を吸収した後に、吸収体が型崩れしにくくなる。
【0039】
本明細書では、高吸収性ポリマー脱落率は、以下の通り測定される。
(1)評価すべき吸収性物品から、その長手方向の中心及び幅方向の中心を中心として、100mm×100mm(長手方向×幅方向)のサイズの吸収コアの試料を含む、100mm×100mm(長手方向×幅方向)のサイズの吸収性物品断片を、鋭利な刃物で切り出す。
なお、上述のサイズの吸収コアの試料を確保できない場合には、矩形の吸収コアの試料を確保できる最大範囲において、吸収性物品断片を切り出す。
【0040】
(2)上記吸収性物品断片から、吸収コア以外の層、例えば、液透過性層、液不透過性層、第1コアラップ、第2コアラップ等を取り外して、吸収コアの試料を得て、試料の質量m
0(g)を測定する。
なお、吸収コアと、第1コアラップ、第2コアラップ等を分離する場合には、コールドスプレーを用いて、吸収体から第1コアラップ、第2コアラップ等をゆっくりと剥離する。
【0041】
(3)シェーカー(IWAKI社製 SHKV−200)を準備し、上記試料を2000mLの容器(NIKKO社製 JP−2000)に入れ、当該容器を、上記シェーカーにセットする。上記シェーカーを、振とう速度300rpmで、10分間振とうし、振とう後の試料の質量m
1(g)を測定する。
【0042】
(4)高吸収性ポリマー脱落率を、次の式:
高吸収性ポリマー脱落率(%)=100×(m
0−m
1)/m
0
(5)異なる試料で、上述の測定を計5回繰り返し、上記平均値の平均を高吸収性ポリマー脱落率として採用する。
【0043】
本開示の吸収体において、吸収コアの厚さ方向の引張強さは、好ましくは100Pa以上、より好ましくは150Pa以上、さらに好ましくは200Pa以上、そしてさらにいっそう好ましくは250Pa以上である。上記引張強さが100Paを下回ると、特定の繊維配向性を有する熱可塑性樹脂繊維の量が少なく、吸収コアの厚さ方向の強度が弱く、その結果、吸収コアがよれやすい場合がある。
また、本開示の吸収体において、吸収コアの厚さ方向の引張強さの上限は、特に限定されるものではないが、柔らかさの観点からは、3,000Pa以下である。
本開示の吸収体において、吸収体の厚さ方向の引張強さも、上記範囲にあることが好ましい。
【0044】
本開示では、上記引張強さは、
図8に示される機器を用いて、以下の通り測定される。
(1)アクリル製の一対の治具401(直径68mm,各治具の質量:200g,つかみ部401aの高さ:50mm)を準備する。
(2)吸収体から、直径68mmのサンプル402を準備する。
(3)直径68mmに切り抜いた両面テープ403(3M社製,接着剤転写テープ950)を2枚準備する。
【0045】
(4)
図8に示されるように、サンプル402を、2枚の両面テープ403を用いて、一対の治具401に固定する。
(5)サンプル402を有する一対の治具401を、保持台405の上に載せ、その上からおもり404(10.5kg)を載せ、3分間静置する。
(6)引張試験器(島津製作所,AG−1kNI)に、一対の治具401を、つかみ間隔70mmでセットする。
【0046】
(7)100mm/分の速度で、サンプル402が層内剥離するまで、サンプル402に引張試験を実施し、その際の最大引張力(N)を記録する。
(8)異なる試料で、上述の測定を計5回繰り返し、最大引張力(N)の平均値を求め、以下の式:
引張強さ(Pa)=最大引張力の平均値(N)/0.003632(m
2)
に従って、引張強さ(Pa)を算出する。
なお、測定は、20℃の条件下で実施する。
【0047】
本開示の吸収体では、特定の繊維配向性を有する熱可塑性樹脂繊維は、吸収コア(又は吸収体)の厚さの、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上、さらに好ましくは4倍以上、さらにいっそう好ましくは5倍以上、そしてさらにいっそう好ましくは7倍以上の倍率の平均繊維長を有する。上記倍率が2倍未満であると、熱可塑性樹脂繊維が、吸収コアの第1面と、吸収コアの第2面との両方に露出することが難しくなり、ひいては、液体を吸収した後に、吸収体が型崩れしやすくなる傾向がある。
【0048】
本開示の吸収体では、特定の繊維配向性を有する熱可塑性樹脂繊維は、吸収コアの厚さの、好ましくは30倍以下、より好ましくは20倍以下、そしてさらに好ましくは15倍以下の倍率の平均繊維長を有する。上記倍率が30倍超であると、熱可塑性樹脂繊維の開繊が不十分になり、吸収コアの均一性が阻害される場合がある。
【0049】
本開示の吸収体では、特定の繊維配向性を有する熱可塑性樹脂繊維は、好ましくは6〜70mm、より好ましくは10〜50mm、そしてさらに好ましくは15〜40mmの平均繊維長を有する。上記平均繊維長が6mmを下回ると、熱可塑性樹脂繊維が、吸収コアの第1面と、吸収コアの第2面との両方に露出することが難しくなる傾向があり、そして熱可塑性樹脂繊維が、他の熱可塑性樹脂繊維及び/又はセルロース系吸水性繊維と絡み合いにくくなり、ひいては液体を吸収した後に、吸収体が型崩れしやすくなる傾向がある。
【0050】
また、上記平均繊維長が70mmを上回ると、熱可塑性樹脂繊維の開繊性が著しく低下し、吸収体が開繊されていない熱可塑性樹脂繊維を含むことになり、吸収体の均一性が低下する傾向がある。
なお、上記平均繊維長は、本開示の吸収体が、エアレイド方式により、セルロース系吸水性繊維、例えば、パルプと混合される場合に特に好ましい。
【0051】
本開示の吸収体では、上記熱可塑性樹脂繊維は、好ましくは0.5〜10dtex、そしてより好ましくは1.5〜5dtexの繊度を有する。上記繊度が0.5dtex未満であると、熱可塑性樹脂繊維の開繊性が低下する場合があり、そして上記繊度が10dtexを超えると、熱可塑性樹脂繊維の本数が少なくなり、他の熱可塑性樹脂繊維及び/又はセルロース系吸水性繊維と絡み合う点の数が少なくなる傾向がある。
【0052】
本開示の吸収体は、吸収体の用途等によって、その好ましい厚さは異なるが、一般的には0.1〜15mm、好ましくは1〜12mm、そしてより好ましくは2〜6mmの厚さを有する。
【0053】
本明細書において、吸収体の厚さ(mm)は、以下の通り測定される。
株式会社大栄科学精器製作所製 FS−60DS[測定面44mm(直径),測定圧3g/cm
2]を準備し、標準状態(温度23±2℃,相対湿度50±5%)の下、吸収体の異なる5つの部位を加圧し、各部位における加圧10秒後の厚さを測定し、5つの測定値の平均値を吸収体の厚さとする。
【0054】
本開示の吸収体は、熱可塑性樹脂繊維と、セルロース系吸水性繊維とを、それらの合計100質量部に基づいて、それぞれ、好ましくは5〜50質量部及び50〜95質量部、そしてより好ましくは10〜40質量部及び60〜90質量部の比率で含む。熱可塑性樹脂繊維の比率が5質量部未満であると、吸収体の強度が不十分になり、吸収体がよれやすくなる傾向がある。熱可塑性樹脂繊維の比率が50質量部を超えると、吸水性に優れるセルロース系吸水性繊維の量が少なくなるため、吸収体の吸収性が不十分になる傾向がある。
【0055】
本開示の吸収体は、一般的には20〜1000g/m
2、好ましくは50〜800g/m
2、そしてより好ましくは100〜500g/m
2の坪量を有する。吸収体の強度及び吸収性の観点からである。
【0056】
本開示の吸収体は、好ましくは0.06〜0.14g/cm
3、より好ましくは0.07〜0.12g/cm
3、そしてさらに好ましくは0.08〜0.1g/cm
3の密度を有する。吸収体が、上述のセルロース系吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維の比率と、上記密度とを有することにより、吸収体が吸収性に優れる傾向がある。
上記密度は、吸収体の坪量と、厚さとから算出することができる。
なお、上記坪量は、JIS L 1913:2010の「6.2 単位面積当たりの質量(ISO法)」に従って測定する。
【0057】
また、本開示の吸収体は、吸収体と、その着衣側に隣接する層、例えば、液不透過性層等との連結の強度の観点から、液不透過性層側に、平坦な表面を有することが好ましく、例えば、畝溝等を有しない表面を有することが好ましい。
【0058】
本開示の吸収体において、熱可塑性樹脂繊維は、セルロース系吸水性繊維及び/又は他の熱可塑性樹脂繊維と融着されていないことが好ましい。また、本開示の吸収体において、熱可塑性樹脂繊維は、セルロース系吸水性繊維及び/又は他の熱可塑性樹脂繊維と絡み合っていることが好ましい。吸収体がある程度変形でき、着用者が柔らかさを感じるからである。
なお、後述するエンボス部に関しては、この限りではない。
【0059】
また、本開示の別の実施形態に従う吸収体は、より型崩れしにくくするため、少なくとも吸収コアをエンボスすることにより形成され且つ間隔をあけて配置された、複数のエンボス部を有する。
【0060】
図4は、本開示の別の実施形態に従う吸収体3の平面図であり、そして
図5は、
図4のV−V断面における部分断面図である。
図4及び
図5に示される吸収体3は、吸収コア5と、吸収コア5の第1面9を覆う第1コアラップ11と、吸収コア5の第2面10を覆う第2コアラップ12とをエンボスすることにより形成され且つ間隔をあけて配置された、複数のエンボス部21を有する以外は、
図2及び
図3に示される吸収体3と同一である。
【0061】
図5に示される吸収体3では、熱可塑性樹脂繊維6,6',6''及び6'''の一部が、エンボス部21に取り込まれ、熱可塑性樹脂繊維6,6',6''及び6'''が、エンボス部21を介して連結されている。従って、吸収体3が、実質的により長い平均繊維長を有する熱可塑性樹脂繊維を含むことに等しくなり、熱可塑性樹脂繊維6,6',6''及び6'''が、吸収体の他の成分、例えば、セルロース系吸水性繊維を保持するための骨格として、連結される前よりも高い機能を有し、吸収体が型崩れしにくくなる。
【0062】
さらに、エンボス部21が、熱可塑性樹脂繊維6,6',6''及び6'''を部分的に固定するため、体圧等が加わった場合でも、それらの繊維が動きにくく、そして熱可塑性樹脂繊維6,6',6''及び6'''が確実に固定されるため、吸収体が型崩れしにくくなる。
【0063】
本開示の吸収体が複数のエンボス部を有する場合には、上記エンボス部において、熱可塑性樹脂繊維が、他の繊維と融着していてもよく、又は融着していなくともよいが、好ましくは融着している。熱可塑性樹脂繊維が、他の繊維、特に他の熱融着性繊維と融着することにより、上述の効果が得られやすくなるからである。
【0064】
本開示の吸収体が複数のエンボス部を有する場合には、エンボス部を有しない非エンボス部において、熱可塑性樹脂繊維が、セルロース系吸水性繊維及び/又は他の熱可塑性樹脂繊維と融着されていないことが好ましい。吸収体が固くなる傾向があるからである。
【0065】
本開示の吸収体が複数のエンボス部を有する場合には、複数のエンボス部の、吸収体の面積に対する面積率は、好ましくは1〜20%、より好ましくは2〜15%、そしてさらに好ましくは3〜10%である。上記面積率が1%を下回ると、エンボス部の作用が現れにくい傾向があり、そして上記面積率が10%を上回ると、着用者が吸収体に固さを感じる傾向がある。
なお、「吸収体の面積」及び「エンボス部の面積」は、吸収体を平面視した際の面積を意味する。
【0066】
本開示の吸収体が複数のエンボス部を有する場合には、当該エンボス部の形状は、特に制限されず、エンボス部の形状としては、例えば、点状のエンボス部及び線状のエンボス部が挙げられる。上記点状のエンボス部としては、例えば、円形、楕円形、矩形、三角形、星形、ハート形等のエンボス部が挙げられる。
上記エンボス部の配置は、特に制限されず、例えば、千鳥状、例えば、角千鳥状、60°千鳥状等の配置が挙げられる。
【0067】
本開示の吸収体が複数のエンボス部を有する場合には、複数のエンボス部の間隔は、好ましくは熱可塑性樹脂繊維の平均繊維長の2.0倍以下、より好ましくは熱可塑性樹脂繊維の平均繊維長の1.0倍以下、さらに好ましくは熱可塑性樹脂繊維の平均繊維長の0.7倍以下、そしてさらにいっそう好ましくは熱可塑性樹脂繊維の平均繊維長の0.5倍以下である。上記間隔が熱可塑性樹脂繊維の平均繊維長の2.0倍より長いと、異なるエンボス部に固定された熱可塑性樹脂繊維同士が絡み合わず、吸収体の耐型崩れ性が向上しにくい。また、上記間隔が熱可塑性樹脂繊維の平均繊維長の0.5倍以下であると、1本の熱可塑性樹脂繊維が、複数のエンボス部に固定される場合があるため、吸収体の耐型崩れ性が向上しやすい。
【0068】
本開示の吸収体が複数のエンボス部を有する場合には、個々のエンボス部の面積は、好ましくは0.1〜20.0mm
2、より好ましくは1.0〜15.0mm
2、そしてさらに好ましくは2.0〜10.0mm
2の面積を有する。上記面積が0.1mm
2を下回ると、エンボス部を形成する際のエンボスロールの突起の先端の形状が鋭くなり、吸収体が破れる場合があり、そして上記面積が20.0mm
2を上回ると、吸収体が固くなる傾向がある。
【0069】
なお、
図4及び
図5に示される実施形態では、エンボス部21は、吸収コア5と、第1コアラップ11と、第2コアラップ12とをエンボスすることにより形成されているが、本開示の別の実施形態に従う吸収体では、エンボス部が、吸収コアのみをエンボスすることにより形成される。そうすることにより、例えば、吸収体がコアラップを含む実施形態では、着用者がエンボス部の固さを感じにくくなる。
【0070】
本開示の吸収体が、第1コアラップ及び第2コアラップを含む実施形態では、第1コアラップ及び第2コアラップが連続している、すなわち、第1コアラップ及び第2コアラップが1枚のシートから形成されていてもよい。あるいは、第1コアラップ及び第2コアラップが非連続である、すなわち、第1コアラップ及び第2コアラップが複数のシートから形成されていてもよい。
【0071】
上記熱可塑性樹脂繊維としては、単一の成分を含むもの、例えば、単一繊維、又は複数の成分を含むもの、例えば、複合繊維が挙げられる。上記成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリ乳酸等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド等が挙げられる。
【0072】
上記複合繊維の例としては、例えば、芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、島/海型繊維等の複合繊維;中空型繊維;扁平、Y型、C型等の異型繊維;潜在捲縮又は顕在捲縮の立体捲縮繊維;水流、熱、エンボス加工等の物理的負荷により分割する分割繊維等が挙げられ、そして工業的に安価に得られ且つ安全性が高い芯鞘型繊維、特に、PET/PE、PP/PE(芯/鞘)等が好ましい。
【0073】
芯成分/鞘成分との質量比は、好ましくは10/90〜90/10、そしてより好ましくは30/70〜70/30である。鞘成分の割合が少ないと、融着性が低下し、そして鞘成分の割合が増加すると、紡糸性が低下する傾向がある。
【0074】
上記セルロース系吸水性繊維としては、パルプ、例えば、針葉樹又は広葉樹を原料として得られる木材パルプ、バガス、ケナフ、竹、麻、綿(例えば、コットンリンター)等の非木材パルプ;レーヨン繊維等の再生セルロース繊維;アセテート繊維等の半合成繊維等が挙げられる。上記パルプとしては、工業的に安価に得られ且つ安全性が高いクラフトパルプが好ましい。
【0075】
上記セルロース系吸水性繊維の平均繊維長は、特に制限されない。また、上記セルロース系吸水性繊維が再生セルロース繊維、半合成繊維等である場合は、3〜70mm、5〜50mm、10〜40mm等の平均繊維長を有することができる。上記再生セルロース繊維、半合成繊維等は、繊維長によっては、乾燥時に熱可塑性樹脂繊維と同様の機能を有し、吸収体によれにくさを付与することができる。
【0076】
本開示の吸収体は、上記高吸収性ポリマーを、当該吸収コアの総質量の、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは10〜60質量%、そしてさらに好ましくは20〜40質量%の範囲で含む。
上記高吸収性ポリマーとしては、例えば、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系、例えば、アクリル酸系の高吸収性ポリマーが挙げられる。
【0077】
本開示の吸収体では、吸収コアを、吸収コアの厚さ方向の中心より一方側の一方の層と、他方側の他方の層とに区画した場合に、一方の層が、他方の層と比較して、高吸収性ポリマーを多く含み且つセルロース系吸水性繊維を少なく含むことが好ましい。
【0078】
一般的な吸収体では、セルロース系繊維と、高吸収性ポリマーとが吸収コアの厚さ方向に偏在することにより、例えば、高吸収性ポリマーを多く含む一方の層では、吸収した液体を迅速に拡散させることができ、そしてセルロース系繊維を多く含む他方の層では、吸収した液体を一時的に大量に保持することができる。しかし、セルロース系繊維と、高吸収性ポリマーとが吸収コアの厚さ方向に偏在させることにより、吸収体が液体を吸収した後、不均一に膨張しやすくなり、吸収体が型崩れしやすくなる。
【0079】
一方、本開示の吸収体では、熱可塑性樹脂繊維の少なくとも一部が、特定の繊維配向性を有するため、吸収体が液体を吸収した後にも、熱可塑性樹脂繊維が吸収体の構造を保持し、吸収体が型崩れしにくい。
【0080】
本開示の別の実施形態に従う吸収体は、以下の構成を有する。
吸収性物品用の吸収体であって、上記吸収体が、吸収コアを備え、上記吸収コアが、熱可塑性樹脂繊維と、セルロース系吸水性繊維と、高吸収性ポリマーとを含み、上記熱可塑性樹脂繊維が、6〜70mmの平均繊維長を有し、そして上記吸収コアが、湿潤時に、幅50mm当たり、1.6N以上の引張強さを有することを特徴とする吸収体。
各構成については、上述の通りである。
【0081】
[吸収性物品]
本開示の吸収性物品は、液透過性層と、液不透過性層と、上記液透過性層及び液不透過性層の間に設けられた吸収体とを備える。
本開示の吸収性物品において、吸収体は、上述の通りである。
なお、本開示の吸収性物品において、吸収体に含有されるセルロース系吸水性繊維は、吸収体の吸収性及び液体保持性に関連する、また、吸収体に含有される熱可塑性樹脂繊維は、液透過性層及び/又は液不透過性との連結、特に、液不透過性層との連結に関連し、吸収性物品の型崩れを防止し、そして吸収体、ひいては吸収性物品に柔軟性を付与する。
【0082】
図1は、本開示の実施形態の1つに従う吸収体を含む吸収性物品、具体的には、テープ型使い捨てオムツ1の平面図であり、
図6は、
図1のVI−VI断面における部分断面図である。
図1に示されるテープ型使い捨てオムツ1は、向かって下方が、前方である。
図1に示されるテープ型使い捨てオムツ1は、液透過性層としてのトップシート2と、吸収体3と、液不透過性層としてのバックシート4とを有する。なお、吸収体3は、
図3に示されるものと同一である。また、
図1に示されるテープ型使い捨てオムツ1は、伸縮部材41aを含む、一対の立体ギャザー41と、ファスナー42とを有する。
図1にはまた、立体ギャザー41を構成するシートと、バックシート4との間に配置された、一対の伸縮部材42が示されている。
【0083】
図6に示されるテープ型使い捨てオムツ1は、トップシート2及び吸収体3の間に、トップシート2及び吸収体3を連結するための接着部(図示せず)を有し、そして吸収体3及びバックシート4の間に、吸収体3及びバックシート4を連結するための接着部(図示せず)を有する。
【0084】
図6に示されるテープ型使い捨てオムツ1では、熱可塑性樹脂繊維6'及び6''の第1の部分6'a及び6''aが、接着部(図示せず)及び第1コアラップ11を介して、トップシート2に連結されており、そして熱可塑性樹脂繊維6'及び6''の第2の部分6'b及び6''bが、接着部(図示せず)及び第2コアラップ12を介して、バックシート4に固定されている。その結果、吸収体3及びトップシート2の間と、吸収体3及びバックシート4の間とで層間剥離しにくくなり、テープ型使い捨てオムツ1がよれにくい。また、熱可塑性樹脂繊維6'及び6''が、トップシート2と、バックシート4とを連結するため、吸収体3が、液体を吸収した後に層内剥離しにくくなり、ひいてはテープ型使い捨てオムツ1が、液体を吸収した後に型崩れしにくい。
【0085】
[製造方法]
本開示の吸収体は、熱可塑性樹脂繊維と、セルロース系吸水性繊維とを含み、そして上記熱可塑性樹脂繊維の少なくとも一部が、吸収コアの第1面に露出する第1の部分と、吸収コアの第2面に露出する第2の部分とを有するものが製造できる方法であれば、特に制限されず、当技術分野で公知の方法を利用することができる。また、本開示の吸収性物品は、上述の吸収体を含む以外は、当技術分野で公知の方法により製造することができる。
以下、本開示の吸収性物品の製造例を説明する。
【0086】
図7は、本開示の実施形態の1つに従う、吸収体及び吸収性物品を製造する方法を説明するための図である。
図7に示される方法は、第1工程(I)及び第2工程(II)を含む。
なお、
図7では、熱可塑性樹脂繊維と、セルロース系吸水性繊維とは、区別して表現されていない。
【0087】
[第1工程(I)]
機械方向MDへ回転するサクションドラム151の周面151aには、吸収体材料を詰める型として、周面151aからサクションドラムの中心に向かって延びる、複数の凹部153が、所定のピッチで形成されている。サクションドラム151が回転して凹部153が材料供給部152へ進入すると、サクション部156の吸引により、材料供給部152から供給された吸収体材料が、凹部153に堆積する。
【0088】
フード152a付きの材料供給部152は、サクションドラム151を覆うように形成されており、材料供給部152は、セルロース系吸水性繊維と熱可塑性樹脂繊維との混合物21を空気搬送により凹部153に供給する。また、材料供給部152は、高吸収性ポリマー粒子22を供給する粒子供給部158を備えており、凹部153に対して高吸収性ポリマー粒子22を供給する。セルロース系吸水性繊維と熱可塑性樹脂繊維との混合物21及び高吸収性ポリマー粒子22(以下、「吸収体原料」と称する)は、混合状態で凹部153に堆積され、凹部153に吸収体226が形成される。
【0089】
熱可塑性樹脂繊維の少なくとも一部が、特定の繊維配向性を有するようにするために、材料供給部152のフード152aは、機械方向MDの下流側(吸収体原料の堆積の上流側)に、当技術分野で一般的に用いられるフードよりも大きな堆積空間152bを有する。
【0090】
このようにすることで、熱可塑性樹脂繊維が、凹部153の深さ方向、換言すると、サクションドラム151の周面151aから、その中心に向かう方向に堆積する傾向がある。
吸収体原料及び凹部153に着目すると、吸収体原料は、凹部のサクションドラムの回転の下流側の凹部部分153aから、回転の上流側の凹部部分153bに向かって順に堆積する傾向があるため、熱可塑性樹脂繊維が、上述の特定の繊維配向性を有する傾向がある。
【0091】
また、吸収体原料を凹部153に堆積するに当たり、吸収体原料の堆積の上流側のサクションドラムの吸引力を、吸収体原料の堆積の下流側のそれよりも高くすることによっても、熱可塑性樹脂繊維が、上述の特定の繊維配向性を有しやすくなる。
さらに、サクションドラムの回転速度を、吸収体原料の流れ速度よりも遅くする等により、熱可塑性樹脂繊維が上述の特定の繊維配向性を有しやすくなる。
【0092】
次いで、凹部153に形成された吸収体226は、塗工機159から塗工された接着剤をその上に有するキャリアシート150上に移動する。
なお、高吸収性ポリマーと、セルロース系吸水性繊維とが、厚さ方向に偏在する吸収コアを製造するためには、例えば、高吸収性ポリマー粒子22を供給する粒子供給部158の位置を、サクションドラム151の回転の上流側又は下流側に移動させることが挙げられる。そうすることにより、例えば、粒子供給部158の位置を、サクションドラム151の回転の下流側に移動した場合には、凹部153の上方、すなわち、周面151aよりに高吸収性ポリマー粒子22が堆積しやすくなる。
【0093】
キャリアシート150は、後に、第2コアラップを形成するが、吸収性物品がコアラップを有しない実施形態では、液透過性層、液不透過性層、所望による補助シート等をキャリアシートとして用いることができる。
次いで、ロール227から第1コアラップシート229を供給し、塗工機229から塗工された接着剤を第1コアラップシート229に塗工した後、吸収体226の上に積み重ね,積み重ね物230を形成する。
【0094】
[第2工程(II)]
第2工程(II)では、エンボス工程において、積み重ね物230を、一対のエンボスロール301,302を用いてエンボスし、積み重ね物230にエンボス部を形成する。続くカット工程では、一対のロール303,304を用いて、積み重ね物230を所定の形状に切り抜き、吸収体305を製造する。それ以外の工程は、公知の方法により実施可能であることから説明を省略する。
【0095】
上記エンボス工程におけるエンボスロールの温度は、吸収体を構成する熱可塑性樹脂繊維の融点以上と、所定の関係にあることが好ましい。具体的には、上記温度は、熱可塑性樹脂繊維の一部が融解する温度であればよく、例えば、熱可塑性樹脂繊維が鞘芯型複合繊維である場合には、上記温度は、鞘成分の一部が溶融を開始する温度以上であればよい。
【0096】
エンボス工程におけるエンボスロールの温度は、通常30〜160℃、好ましくは30〜140℃であり、圧力は通常10〜3000N/mm、好ましくは50〜500N/mmであり、処理時間は通常0.0001〜5秒、好ましくは0.005〜2秒である。
【実施例】
【0097】
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
[製造例1]
図7に示される装置により、パルプ:190g/m
2、熱可塑性樹脂繊維:10g/m
2、及びポリアクリル酸ナトリウム系高吸収性ポリマー(SAP,Super Absorbent polymer):170g/m
2の坪量で含み、長さ340mm×幅110mmのサイズを有する、厚さ未調整の吸収コアを得た。上記熱可塑性樹脂繊維は、芯がポリエチレンテレフタラートであり、鞘がポリエチレンである芯鞘繊維であり、平均繊維長は30mm、繊度は2.2dtexであった。
次いで、上記厚さ未調整の吸収コアを、一対のフラットロールに通し、その厚さを調整し、吸収コアNo.1を製造した。
【0098】
[製造例2〜6]
熱可塑性樹脂繊維及びパルプの比率を表1に示されるとおりに変更した以外は製造例1の手順に従って、吸収コアNo.2〜6を製造した。
【0099】
[実施例1〜5及び比較例1]
吸収コアNo.1〜No.6の、乾燥時強さ、湿潤時強さ、剛軟度及び高吸収性ポリマー脱落率を評価した。結果を併せて表1に示す。
なお、実施例1〜5の吸収コアNo.1〜No.5の厚さ方向の引張強さは、100Pa以上であった。
【0100】
【表1】