(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6173309
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】排ガス希釈装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/22 20060101AFI20170724BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
G01N1/22 M
G01N1/22 G
G01N1/00 101T
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-518336(P2014-518336)
(86)(22)【出願日】2013年4月17日
(86)【国際出願番号】JP2013061398
(87)【国際公開番号】WO2013179794
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2016年2月23日
(31)【優先権主張番号】特願2012-126046(P2012-126046)
(32)【優先日】2012年6月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】浅見 哲司
(72)【発明者】
【氏名】高倉 義智
【審査官】
大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/028338(WO,A1)
【文献】
特開2006−153746(JP,A)
【文献】
特開2005−062056(JP,A)
【文献】
実開平07−005044(JP,U)
【文献】
実開昭63−038036(JP,U)
【文献】
国際公開第01/090741(WO,A1)
【文献】
米国特許第06151952(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 − 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に接続された排気管を流れる排ガスの一部をサンプルガスとして採取するサンプリングラインが接続されるサンプリングポートと、
サンプリングされた排ガスを希釈するための希釈用ガスを供給する希釈用ガス供給ラインが接続される希釈用ガス供給ポートと、
前記サンプリングポート及び前記希釈用ガス供給ポートに連通して前記サンプルガスを前記希釈用ガスで希釈する希釈器と、
前記希釈器に接続されて前記希釈器により希釈された希釈排ガスが流れるメイン流路と、
前記メイン流路に設けられて当該メイン流路を流れる希釈排ガス流量を調整するメイン流量調整機構と、
前記希釈用ガス供給ラインに設けられ、前記希釈器に供給される希釈用ガス流量を調整する希釈用ガス流量調整機構と、
前記メイン流路から分岐した複数の分岐流路に設けられて、それぞれにPM計測機器及び排ガス計測機器を含む計測機器の何れかを有する計測機器ラインが接続される複数の計測機器ポートと、
当該各分岐流路を流れる希釈排ガス流量を調整する複数の分岐流量調整機構と、
前記メイン流量調整機構、希釈用ガス流量調整機構および複数の分岐流量調整機構を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置が、
前記排気管を流れる排ガス流量を直接的又は間接的に示す排ガス流量関連信号を取得する排ガス流量取得部と、
前記排ガス流量取得部が取得した排ガス流量関連信号により示される排ガス流量をパラメータとして、
前記メイン流量調整機構又は前記複数の分岐流量調整機構を制御し、前記複数の計測機器ラインに流れる希釈排ガス流量を調整し、
前記メイン流量調整機構を制御して、前記排気管を流れる排ガス流量と前記サンプリングラインを流れるサンプリング流量との比を一定にし、
前記希釈用ガス流量調整機構を制御して、前記サンプリング流量と、前記サンプリング流量および前記希釈用ガス流量の合計との比を一定にする流量調整機構制御部とを有する排ガス希釈装置。
【請求項2】
前記複数の分岐流量調整機構を制御して前記排気管を流れる排ガス流量と前記各計測機器ラインに流れる希釈排ガス流量との比を一定にするものである請求項1記載の排ガス希釈装置。
【請求項3】
前記流量調整機構制御部が、前記複数の分岐流量制御機構を制御して前記各計測機器ラインに流れる希釈排ガス流量同士の比を一定にするものである請求項1記載の排ガス希釈装置。
【請求項4】
可搬型である請求項1記載の排ガス希釈装置。
【請求項5】
内燃機関に接続された排気管を流れる排ガスの一部をサンプルガスとして採取するサンプリングラインが接続されるサンプリングポートと、
サンプリングされた排ガスを希釈するための希釈用ガスを供給する希釈用ガス供給ラインおよび当該希釈用ガス流量を調整する希釈用ガス流量調整機構が接続される希釈用ガス供給ポートと、
前記サンプリングポート及び前記希釈用ガス供給ポートに連通して前記サンプルガスを前記希釈用ガスで希釈する希釈器と、
前記希釈器に接続されて前記希釈器により希釈された希釈排ガスが流れるメイン流路と、
前記メイン流路に設けられて当該メイン流路を流れる希釈排ガス流量を調整するメイン流量調整機構と、
前記メイン流路から分岐した複数の分岐流路に設けられて、それぞれにPM計測機器及び排ガス計測機器を含む計測機器の何れか及び分岐流量調整機構を有する計測機器ラインが接続される複数の計測機器ポートと、
前記メイン流量調整機構、希釈用ガス流量調整機構および複数の分岐流量調整機構を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置が、
前記排気管を流れる排ガス流量を直接的又は間接的に示す排ガス流量関連信号を取得する排ガス流量取得部と、
前記排ガス流量取得部が取得した排ガス流量関連信号により示される排ガス流量をパラメータとして、
前記複数の分岐流量調整機構を制御し、前記複数の計測機器ラインに流れる希釈排ガス流量を調整し、
前記メイン流量調整機構を制御して、前記排気管を流れる排ガス流量と前記サンプリングラインを流れるサンプリング流量との比を一定にし、
前記希釈用ガス流量調整機構を制御して、前記サンプリング流量と、前記サンプリング流量および前記希釈用ガス流量の合計との比を一定にする流量調整機構制御部とを有する排ガス希釈装置。
【請求項6】
前記複数の分岐流量調整機構を制御して前記排気管を流れる排ガス流量と前記各計測機器ラインに流れる希釈排ガス流量との比を一定にするものである請求項5記載の排ガス希釈装置。
【請求項7】
前記流量調整機構制御部が、前記複数の分岐流量制御機構を制御して前記各計測機器ラインに流れる希釈排ガス流量同士の比を一定にするものである請求項5記載の排ガス希釈装置。
【請求項8】
可搬型である請求項5記載の排ガス希釈装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンなどの内燃機関から排出される排ガスの成分を計測する排ガス計測システムに用いられる排ガス希釈装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の排ガス計測システムのうち、エンジン排ガス中に含まれる粒子状物質(PM)を計測するシステムは、特許文献1に示すように、希釈トンネル(マイクロトンネル)を用いて、サンプリングされたエンジン排ガスを希釈用空気により希釈して、希釈された排ガスをPM採取フィルタに導くことによってPMを捕集するように構成されている。なお、ここで排気管を流れるエンジン排ガス流量Q
1とサンプリングされたエンジン排ガス流量Q
2との比(Q
2/Q
1)は一定とされている。そして、このフィルタに捕集されたPMの質量が精密天秤で秤量されることにより求められる。
【0003】
また、排ガス計測システムのうち、定容量希釈サンプリング装置(CVS)は、特許文献2に示すように、エンジン排ガスの全量を希釈用空気で希釈して、それらを合わせた総流量が常に一定となるように制御し、希釈されたエンジン排ガスの一部を一定流量でバッグに採取するように構成されている。なお、ここでCVSにより制御される総流量Q
3とバッグに採取される希釈排ガス流量Q
4との比(Q
4/Q
3)は一定とされている。そして、バッグ内の希釈されたエンジン排ガスがガス分析計により分析される。
【0004】
さらに、排ガス計測システムのうち、バッグミニダイリュータ(BMD)は、特許文献3に示すように、エンジン排ガスの一部を採取して、一定の希釈比となるように希釈用空気で希釈され、希釈されたエンジン排ガスの一部が、エンジン排ガスの流量に比例した流量でバッグにサンプリングされるように構成されている。なお、で排気管を流れるエンジン排ガス流量Q
1とバッグに採取される希釈排ガス流量Q
5との比(Q
5/Q
1)は一定とされている。そして、バッグ内の希釈されたエンジン排ガスがガス分析計により分析される。
【0005】
ところが、排ガス計測システムに上記複数の計測機器を組み込む場合には、複数の計測機器毎に専用の希釈サンプリング装置が必要であり、排ガス計測システムが大型化してしまうという問題がある。また、各計測機器毎にエンジン排ガスを採取する部分が異なること、及び各計測機器毎に希釈サンプリング装置が異なり希釈方式も異なることから、各計測機器に導入される排ガスの特性が異なることになり、各計測機器の計測結果を比較してもその比較結果の信頼性が悪いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−326161号公報
【特許文献2】特開平8−226879号公報
【特許文献3】特表2008−507693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決すべくなされたものであり、1つの排ガス希釈装置によりPM計測機器及び排ガス計測機器を含む複数の計測機器に希釈排ガスを供給することで、排ガス希釈装置を組み込んだ排ガス計測システムを小型化するとともに、PM計測機器及び排ガス計測機器を含む複数の計測機器において同一の排ガス及び希釈条件により希釈された排ガスを測定することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る排ガス希釈装置は、内燃機関に接続された排気管を流れる排ガスの一部をサンプルガスとして採取するサンプリングラインが接続されるサンプリングポートと、サンプリングされた排ガスを希釈するための希釈用ガスを供給する希釈用ガス供給ラインが接続される希釈用ガス供給ポートと、前記サンプリングポート及び前記希釈用ガス供給ポートに連通して前記サンプルガスを前記希釈用ガスで希釈する希釈器と、前記希釈器に接続されて前記希釈器により希釈された希釈排ガスが流れるメイン流路と、前記メイン流路から分岐した複数の分岐流路に設けられて、それぞれにPM計測機器及び排ガス計測機器を含む計測機器の何れかを有する計測機器ラインが接続される複数の計測機器ポートと、当該各分岐流路を流れる希釈排ガス流量を調整する複数の分岐流量調整機構と、前記複数の分岐流量調整機構を制御する制御装置とを備え、前記制御装置が、前記排気管を流れる排ガス流量を直接的又は間接的に示す排ガス流量関連信号を取得する排ガス流量取得部と、前記排ガス流量取得部が取得した排ガス流量関連信号により示される排ガス流量をパラメータとして前記複数の分岐流量調整機構を制御し、前記複数の計測機器ラインに流れる希釈排ガス流量を調整する流量調整機構制御部とを有することを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、希釈器により希釈された希釈排ガスが流れるメイン流路から、分岐流路を介してPM計測機器及び排ガス計測機器を含む複数の計測機器に希釈された排ガスを供給することにより、1つの排ガス希釈装置によりPM計測機器及び排ガス計測機器を含む複数の計測機器に希釈排ガスを供給することができる。このとき制御装置が排気管を流れる排ガス流量関連信号により示される排ガス流量をパラメータとして分岐流量調整機構を制御することで、各計測機器に流れる希釈排ガスの希釈比又は分流比をそれぞれ所望の値とすることができる。したがって、本発明の排ガス希釈装置を組む込んだ排ガス計測システムを小型化することができるとともに、各計測機器毎に希釈サンプリング装置を準備する必要が無いのでコストを削減することもできる。また、1つの排ガス希釈装置により希釈された排ガスをPM計測機器及び排ガス計測機器を含む複数の計測機器に供給することができるので、同一の排ガス及び同一の希釈条件により希釈された排ガスを測定することができ、複数の計測機器の計測結果を比較する場合に、その比較結果の信頼性を向上させることができる。その他、1つの排ガス希釈装置によりPM計測機器及び排ガス測定計測機器を含む複数の計測機器に供給する希釈排ガスを生成しているので、エンジンストップ及びスタートに合わせてサンプリングをオンオフすること、又は排ガスの所定成分の濃度を見てサンプリングをオンオフすること等のアプリケーションを組みやすいという効果もある。また、1つの排ガス希釈装置の動作確認を行うだけで良く、メンテナンス作業を容易にすることもできる。
なお、本発明では、排ガス希釈装置が分岐流量調整機構を備えているので、排ガス希釈装置に接続される計測機器ラインの構成を簡略化することができる。
【0010】
また、本発明に係る排ガス希釈装置は、内燃機関に接続された排気管を流れる排ガスの一部をサンプルガスとして採取するサンプリングラインが接続されるサンプリングポートと、サンプリングされた排ガスを希釈するための希釈用ガスを供給する希釈用ガス供給ラインが接続される希釈用ガス供給ポートと、前記サンプリングポート及び前記希釈用ガス供給ポートに連通して前記サンプルガスを前記希釈用ガスで希釈する希釈器と、前記希釈器に接続されて前記希釈器により希釈された希釈排ガスが流れるメイン流路と、前記メイン流路から分岐した複数の分岐流路に設けられて、それぞれにPM計測機器及び排ガス計測機器を含む計測機器の何れか及び分岐流量調整機構を有する計測機器ラインが接続される複数の計測機器ポートと、前記複数の分岐流量調整機構を制御する制御装置とを備え、前記制御装置が、前記排気管を流れる排ガス流量を直接的又は間接的に示す排ガス流量関連信号を取得する排ガス流量取得部と、前記排ガス流量取得部が取得した排ガス流量関連信号により示される排ガス流量をパラメータとして前記複数の分岐流量調整機構を制御し、前記複数の計測機器ラインに流れる希釈排ガス流量を調整する流量調整機構制御部とを有することを特徴とする。
【0011】
このようなものであれば、希釈器により希釈された希釈排ガスが流れるメイン流路から分岐流路を介してPM計測機器及び排ガス計測機器を含む複数の計測機器に希釈された排ガスを供給することにより、1つの排ガス希釈装置によりPM計測機器及び排ガス計測機器を含む複数の計測機器に希釈排ガスを供給することができる。このとき制御装置が排気管を流れる排ガス流量関連信号により示される排ガス流量をパラメータとして分岐流量調整機構を制御することで、各計測機器に流れる希釈排ガスの希釈比又は分流比をそれぞれ所望の値とすることができる。したがって、本発明の排ガス希釈装置を組む込んだ排ガス計測システムを小型化することができるとともに、各計測機器毎に希釈サンプリング装置を準備する必要が無いのでコストを削減することもできる。また、1つの排ガス希釈装置により希釈された排ガスをPM計測機器及び排ガス計測機器を含む複数の計測機器に供給することができるので、同一の排ガス及び同一の希釈条件により希釈された排ガスを測定することができ、PM計測機器及び排ガス計測機器を含む複数の計測機器の計測結果を比較する場合に、その比較結果の信頼性を向上させることができる。その他、1つの排ガス希釈装置によりPM計測機器及び排ガス計測機器を含む複数の計測機器に供給する希釈排ガスを生成しているので、エンジンストップ及びスタートに合わせてサンプリングをオンオフすること、又は排ガスの所定成分の濃度を見てサンプリングをオンオフすること等のアプリケーションを組みやすいという効果もある。また、1つの排ガス希釈装置の動作確認を行うだけで良く、メンテナンス作業を容易にすることもできる。
なお、本発明では、計測機器及び分岐流量調整機構を有する計測機器ラインを排ガス希釈装置に接続するように構成しているので、排ガス希釈装置に分岐流量調整機構を設ける必要が無く、排ガス希釈装置を小型化することができる。
【0012】
前記メイン流路に設けられて当該メイン流路を流れる希釈排ガス流量を調整するメイン流量調整機構をさらに備え、前記流量調整機構制御部が、前記排ガス流量取得部が取得した排ガス流量関連信号により示される排ガス流量をパラメータとして前記メイン流量調整機構又は前記複数の分岐流量調整機構を制御し、前記複数の計測機器ラインに流れる希釈排ガス流量を調整することが望ましい。これならば、各計測機器に流れる希釈排ガスの希釈比又は分流比それぞれをより一層好適に所望の値とすることができる。
【0013】
本発明の排ガス希釈装置を用いて複数の計測機器に所望の分流比の希釈排ガスを供給するための具体的な実施に態様としては、前記流量調整機構制御部が、前記メイン流量調整機構を制御して前記排気管を流れる排ガス流量と前記サンプリングラインを流れるサンプリング流量との比を一定にするものであることが望ましい。
【0014】
前記流量調整機構制御部が、前記メイン流量調整機構を制御して前記排気管を流れる排ガス流量と前記サンプリングラインを流れるサンプリング流量との比を一定にし、且つ、前記複数の分岐流量調整機構を制御して前記排気管を流れる排ガス流量と前記各計測機器ラインに流れる希釈排ガス流量との比を一定にするものであることが望ましい。これならば、複数の計測機器に所望の希釈比及び分流比の希釈排ガスを供給することができる。希釈比、希釈器内の滞留時間及び温度の範囲が最近の排ガス試験規制によって規定されているが、本方法では、エンジンサイズに関わらずサンプリング条件を同じにすることができるため、エンジンサイズに関わらず、排ガス試験規制に則った設定とすることができる。
【0015】
また、前記流量調整機構制御部が、前記複数の分岐流量制御機構を制御して前記各計測機器ラインに流れる希釈排ガス流量同士の比を一定にするものであることが望ましい。これならば、各計測機器ラインに流れる希釈排ガスの分流比を一定に制御し易くなる。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した本発明によれば、1つの排ガス希釈装置により複数の計測機器に希釈排ガスを供給することで、排ガス希釈装置を組み込んだ排ガス計測システムを小型化するとともに、複数の計測機器において同一の排ガス及び希釈条件により希釈された排ガスを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態の排ガス希釈装置を用いた排ガス計測システムの模式図。
【
図3】変形実施形態の排ガス希釈装置を用いた排ガス計測システムの模式図。
【
図4】変形実施形態の排ガス希釈装置を用いた排ガス計測システムの模式図。
【符号の説明】
【0018】
100・・・排ガス希釈装置
E・・・内燃機関
EH・・・排気管
L1・・・サンプリングライン
L3a〜L3c・・・計測機器ライン
L2・・・希釈用空気供給ライン(希釈用ガス供給ライン)
2・・・サンプリングポート
3・・・希釈用空気供給ポート(希釈用ガス供給ポート)
4・・・希釈器
5・・・メイン流路
6・・・メイン流量調整機構
7a〜7c・・・計測機器ポート
8・・・制御装置
81・・・排ガス流量取得部
82・・・流量調整機構制御部
9a〜9c・・・計測機器
10a〜10c・・・分岐流量調整機構
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明に係る排ガス希釈装置100について図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態の排ガス希釈装置100は、エンジンEに接続された排気管EHを流れるエンジン排ガス(以下、単に排ガスという。)の一部を採取して希釈し、複数の計測機器に供給する、例えば可搬型のものである。
【0021】
具体的にこのものは、
図1に示すように、排気管EHを流れる排ガスの一部をサンプリングガスとして採取するサンプリングラインL1が接続されるサンプリングポート2と、サンプリングされた排ガスを希釈するための希釈用ガスとして希釈用空気を供給する希釈用空気供給ライン(希釈用ガス供給ライン)L2が接続される希釈用空気供給ポート(希釈用ガス供給ポート)3と、サンプリングポート2及び希釈用空気供給ポート3に連通してサンプルガスを希釈用空気で希釈する単一の希釈器4と、希釈器4に接続されて希釈器4により希釈された希釈排ガスが流れるメイン流路5と、メイン流路5に設けられて当該メイン流路5を流れる希釈排ガス流量を調整するメイン流量調整機構6と、メイン流路5から分岐した複数の分岐流路71a〜71cに設けられて、それぞれに計測機器9a〜9c及び分岐流量調整機構10a〜10cを有する計測機器ラインL3a〜L3cが接続される複数の計測機器ポート7a〜7cと、メイン流量調整機構6及び複数の分岐流量調整機構10a〜10cを制御する制御装置8とを備えている。
【0022】
希釈用空気供給ポート3に接続される希釈用空気供給ラインL2には、当該希釈用空気供給ラインL2を流れて希釈器4に供給される希釈用空気流量を調整する希釈用空気流量調整機構11が設けられている。この希釈用空気流量調整機構11は、マスフローコントローラにより構成されており、後述する制御装置8により制御される。
【0023】
希釈器4は、サンプリングポート2を一端に有する第1流路21が上流側に接続されるとともに、希釈用空気供給ポート3を一端に有する第2流路31が上流側に接続される希釈トンネルである。そして、希釈トンネル4の下流側に、メイン流路5が接続されている。
【0024】
メイン流路5の下流側に設けられたメイン流量調整機構6は、
図1においては、メイン流路5を流れる希釈排ガス流量を測定するメイン流量計61と、当該メイン流量計61の下流側に設けられた回転数制御可能なポンプ62とから構成される。このポンプ62は、後述する制御装置8によりその回転数が制御される。また、このメイン流量調整機構6は、後述する第2の計測機器(排ガス採取バッグ9b)及び第3の計測機器(排ガス分析計9c)に流れる流量をメイン流路5に供給して補正するための流量補正ライン63が接続されている。この流量補正ライン63はメイン流量計61の上流側に接続されており、流量補正ライン63を流れる補正用空気の流量を測定する流量計631が設けられている。
【0025】
複数の計測機器ポート7a〜7cは、希釈排ガス中に含まれる粒子状物質(PM)を捕集するためのPM計測機器であるPM採取フィルタ9aが設けられた第1の計測機器ラインL3aが接続される第1の計測機器ポート7aと、排ガス計測機器である希釈排ガスを採取する排ガス採取バッグ9bが設けられた第2の計測機器ラインL3bが接続される第2の計測機器ポート7bと、希釈排ガスに含まれる各種成分を連続測定するための排ガス分析計9cが設けられた第3の計測機器ラインL3cが接続される第3の計測機器ポート7cとからなる。
【0026】
第1の計測機器ラインL3aには、PM採取フィルタ9aの下流側に第1の分岐流量調整機構10aが設けられている。本実施形態の第1の分岐流量調整機構10aは、第1の計測機器ラインL3aを流れる希釈排ガス流量を測定する第1の流量計10a1と、当該第1の流量計10a1の下流側に設けられた回転数制御可能な第1のポンプ10a2とから構成されている。この第1のポンプ10a2は、後述する制御装置8によりその回転数が制御される。これにより、第1の計測機器ラインL3aを流れる希釈排ガス流量が調整される。なお、この第1の計測機器ラインL3aの下端部は、メイン流路5に接続されている。つまり、第1の計測機器ラインL3aの下流側は、メイン流路5に第1の計測機器ラインL3aの下流側を接続するための接続ポート12に接続される。この接続ポート12を一端に有する接続用内部流路121は、メイン流量調整機構6のメイン流量計61の上流側においてメイン流路5に合流している。
【0027】
第2の計測機器ラインL3bには、排ガス採取バッグ9bの上流側に第2の計測機器ラインL3bを流れる希釈排ガス流量を調整するマスフローコントローラ等の分岐流量調整機構10bが設けられている。この分岐流量調整機構10bは、後述する制御装置8により制御される。これにより、第2の計測機器ラインL3bを流れる希釈排ガス流量が調整される。
【0028】
第3の計測機器ラインL3cには、排ガス分析計9cの上流側に第3の計測機器ラインL3cを流れる希釈排ガス流量を測定する第3の流量計10c1が設けられている。そして、排ガス分析計9cの内部に設けられたポンプ(不図示)を後述する制御装置8が制御することによって、第3の計測機器ラインL3cを流れる希釈排ガス流量が調整される。つまり、第3の流量計10c1及び排ガス分析計9cのポンプにより分岐流量調整機構10cが構成される。
【0029】
制御装置8は、排気管EHを流れる排ガス流量に基づいて、所定の希釈比及び分流比による比例サンプリングとなるように、メイン流量調整機構6及び分岐流量調整機構10a〜10c、希釈用空気流量調整機構11を制御するものである。具体的にこの制御装置8は、CPU、メモリ、入出力インターフェイス、AD変換器等を備えた汎用乃至専用のコンピュータであり、前記メモリの所定領域に記憶させた所定プログラムにしたがってCPU、周辺機器等を協働させることにより、
図2に示すように、排ガス流量取得部81、流量調整機構制御部82等としての機能を発揮する。
【0030】
排ガス流量取得部81は、前記排気管EHに設けられて当該排気管EHを流れる排ガス流量Q
Aを測定する排ガス流量計13からその排ガス流量を直接的に示す測定信号である排ガス流量関連信号を取得するものである。そして、排ガス流量取得部81は、排ガス流量計13から取得した排ガス流量関連信号を流量調整機構制御部82に出力する。なお、排ガス流量計13としては、熱式流量計、ピトー管式流量計、差圧式流量計、超音波式流量計等を用いることができる。その他、排ガス流量取得部81は、排気管EHを流れる排ガス流量Q
Aを間接的に示す排ガス流量関連信号を取得するものであっても良い。なお、排ガス流量Q
Aを間接的に示す排ガス流量関連信号としては、エンジンの空撚比(A/F)を示す信号等が考えられる。
【0031】
流量調整機構制御部82は、排ガス流量関連信号を取得して、当該排ガス流量関連信号が示す排ガス流量Q
Aを算出し、当該排ガス流量Q
Aを用いて、以下のようにメイン流量調整機構6及び分岐流量調整機構10a〜10cを制御する。なお、本実施形態では、制御装置8が希釈用空気流量調整機構11を制御することにより、希釈器4での希釈比が一定となるように希釈用空気流量Q
Cを調整している。
【0032】
具体的に流量調整機構制御部82は、排ガス流量Q
Aに基づいて、メイン流量調整機構6を制御して排気管EHを流れる排ガス流量Q
AとサンプリングラインL1を流れるサンプリング流量Q
Bとの比(Q
B/Q
A)を一定にする。また、流量調整機構制御部82は、第1及び第2の分岐流量調整機構10a、10bを制御して、排気管EHを流れる排ガス流量Q
Aと第1及び第2の計測機器ラインL3a、L3bに流れる希釈排ガス流量Q
D、Q
Eとの比(Q
D/Q
A、Q
E/Q
A)を一定にするものである。なお、第3の分岐流量調整機構10cは、第3の計測機器ラインL3cを流れる希釈ガス流量Q
Fが排ガス分析計9cにおいて所定の精度で計測が可能なサンプルガス流量となるように制御される。
【0033】
このようにメイン流量調整機構6及び分岐流量調整機構10a、10bを制御することによって、第1〜第3の計測機器ラインL3a〜L3cに流れる希釈排ガスの希釈比が(Q
B/(Q
B+Q
C))となる。なお、第1の計測機器ラインL3aに流れる希釈排ガスの分流比が(Q
B/Q
A×Q
D/(Q
B+Q
C))となり、第2の計測機器ラインL3bに流れる希釈排ガスの分流比が(Q
B/Q
A×Q
E/(Q
B+Q
C))となり、第3の計測機器ラインL3cに流れる希釈排ガスの分流比が(Q
B/Q
A×Q
F/(Q
B+Q
C))となる。このとき、流量調整機構制御部82が、分岐流量調整機構10a、10bを制御することによって、第1〜第3の計測機器ラインL3a〜La3に流れる希釈排ガス流量同士の比を一定にすることが分流比を一定にする観点から望ましい。
【0034】
このように構成した本実施形態に係る排ガス希釈装置100によれば、希釈器4により希釈された希釈排ガスが流れるメイン流路5から分岐流路71a〜71cを介してPM計測機器及び排ガス計測機器を含む複数の計測機器9a〜9cに希釈された排ガスを供給することにより、1つの排ガス希釈装置100によりPM計測機器及び排ガス計測機器を含む複数の計測機器9a〜9cに希釈排ガスを供給することができる。このとき制御装置8が排気管EHを流れる排ガス流量をパラメータとしてメイン流量調整機構6及び分岐流量調整機構10a、10bを制御することで、各計測機器9a、9bに流れる希釈排ガスの希釈比及び分流比をそれぞれ所望の値とすることができる。したがって、排ガス希釈装置100を組む込んだ排ガス計測システムを小型化することができるとともに、各計測機器9a〜9c毎に希釈サンプリング装置を準備する必要が無いのでコストを削減することもできる。
【0035】
また、1つの排ガス希釈装置100により希釈された排ガスをPM計測機器及び排ガス計測機器を含む複数の計測機器9a〜9cに供給することができるので、同一の排ガス及び同一の希釈条件により希釈された排ガスを測定することができ、PM計測機器及び排ガス計測機器を含む複数の計測機器9a〜9cの計測結果を比較する場合に、その比較結果の信頼性を向上させることができる。
【0036】
さらに、1つの排ガス希釈装置100によりPM計測機器及び排ガス計測機器を含む複数の計測機器9a〜9cに供給する希釈排ガスを生成しているので、エンジンストップ及びスタートに合わせてサンプリングをオンオフすること、又は排ガスの所定成分の濃度を見てサンプリングをオンオフすること等のアプリケーションを組みやすいという効果もある。また、1つの排ガス希釈装置100の動作確認を行うだけで良く、メンテナンス作業を容易にすることもできる。さらに、本実施形態では、計測機器9a〜9c及び分岐流量調整機構10a〜10cを有する計測機器ラインL3a〜L3cを排ガス希釈装置100に接続するように構成しているので、排ガス希釈装置100に分岐流量調整機構を設ける必要が無く、排ガス希釈装置100を小型化することができる。また、排ガス希釈装置100がサンプルガスポート2、希釈用空気供給ポート3及び複数の計測機器ポート7a〜7c等を有しているので、所定の場所に設置した後に各ラインを接続すればよく、可搬型のものとして好適に用いることができる。その他、希釈比、希釈器4内の滞留時間及び温度の範囲が最近の排ガス試験規制によって規定されているが、本方法では、エンジンサイズに関わらずサンプリング条件を同じにすることができるため、エンジンサイズに関わらず、排ガス試験規制に則った設定とすることができる。
【0037】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0038】
例えば、前記実施形態の流量調整機構制御部82が、以下のようにメイン流量調整機構6及び分岐流量調整機構10a、10bを制御するように構成しても良い。つまり、流量調整機構制御部82が、メイン流量調整機構6を制御して排気管EHを流れる排ガス流量Q
AとサンプリングラインL1を流れるサンプリング流量Q
Bの比(Q
B/Q
A)を一定にする。また、流量調整機構制御部82は、第1及び第2の分岐流量調整機構10a、10bを制御して第1及び第2の計測機器ラインL3a、L3bに流れる希釈排ガス流量Q
D、Q
Eを一定にするものであっても良い。
【0039】
また、流量調整機構制御部82が、メイン流量調整機構6を制御してサンプリングラインL1を流れるサンプリング流量Q
Bを一定にするとともに、第1及び第2の分岐流量調整機構10a、10bを制御して、排気管EHを流れる排ガス流量Q
Aと、第1及び第2の計測機器ラインL3a、L3bに流れる希釈排ガス流量Q
D、Q
Eとの比(Q
D/Q
A、Q
E/Q
A)を一定にするものであっても良い。
【0040】
また、分流比のみを一定にする観点から言うと、流量調整機構制御部82が、メイン流量調整機構6を制御して、排気管EHを流れる排ガス流量Q
AとサンプリングラインL1を流れるサンプリング流量Q
Bとの比(Q
B/Q
A)を一定にするものであれば良い。
【0041】
また、希釈用空気供給ラインL2を流れる希釈用空気流量を希釈用空気流量調整機構11により一定流量に調整するものであっても良い。
【0042】
また、前記実施形態のメイン流量調整機構6は、メイン流量計61と、容量可変型ポンプ62と、流量計631を有する流量補正ライン63とを有するものであったが、
図3に示すように、臨界流量ベンチュリー(CFV)等の定流量器64と、定容量ポンプ65と、流量調整機構661を有する流量補正ライン66とを有するものであっても良い。また、希釈用空気供給ラインL2に設けた希釈用空気流量調整機構11を臨界流量ベンチュリー(CFV)等の定流量器としても良い。
【0043】
さらに、前記実施形態では、第1、第2及び第3の計測機器ラインL3a〜L3cに設けられた第1、第2及び第3の分岐流量調整機構10a〜10cが排ガス希釈装置100の外部に設けられたものであったが、
図4に示すように、第1、第2及び第3の分岐流量調整機構10a〜10cが装置100内部の各分岐流路71a〜71cに設けられたものであっても良い。同様に、希釈用空気供給ラインL2に設けた希釈用空気流量調整機構11も、
図4に示すように、希釈用空気供給ポート3及び希釈器4の間の第2流路31に設けても良い。
【0044】
加えて、第1、第2及び第3の計測機器ラインL3a〜L3cは、前記実施形態のように3つに限られず、それ以上であっても良い。また、計測機器9a〜9cの種類としては、希釈された排ガスを用いて計測できる計測機器であれば良く、例えば、レーザ散乱式凝縮粒子カウンタ(CPC)を用いた固体粒子数計測装置(SPCS)や、ガス吸収瓶(インピンジャー)等であっても良い。
【0045】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の排ガス希釈装置によれば、1つの排ガス希釈装置により複数の計測機器に希釈排ガスを供給することで、排ガス希釈装置を組み込んだ排ガス計測システムを小型化するとともに、複数の計測機器において同一の排ガス及び希釈条件により希釈された排ガスを測定することができる。