(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接着剤及び前記光ファイバを挟んだ状態の前記第1部材と前記第2部材とをバッグで覆った後に該バッグ内を大気圧未満とし、オートグレーブ内を加圧している間に、前記光ファイバの複屈折によって前記第1部材と前記第2部材との接着状態が検出される請求項4記載の接着状態検出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、超音波探傷検査では、接着層におけるボイドの発生や部材の剥離等の欠陥の検出は可能であるが、接着強度の評価はできない。接着強度は、接着時に部材に加えられる圧力等に依存するが、超音波探傷検査では圧力を検査することができないためである。さらに、超音波探傷検査は、時間と労力を要すると共に、検査員に資格を必要とする。
また、炭素繊維複合材を部材とした場合、部材同士の接着は例えばオートクレーブ成型時に行われる。オートクレーブ成型時にはオートクレーブ圧力やバッグ圧力は計測されるが、接着部そのものの圧力は測定されていない。
【0007】
これらのことから、接着により部材同士を結合させる場合、大幅な安全許容を有した構造としたり、安全性を重視する箇所に対しては接着剤を用いた接着をせずに、ファスナによる結合が行われている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、部材同士が適切に接着されているか否かを判断することができる、接着構造体及び接着状態検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の接着構造体及び接着状態検出方法は以下の手段を採用する。
【0010】
本発明の第一態様に係る接着構造体は、第1部材と、第2部材と、前記第1部材と前記第2部材とを接着する接着剤と、
前記接着剤に埋まるように、前記第1部材と前記第2部材とに挟まれる光ファイバと、を備え、前記光ファイバの複屈折によって前記第1部材と前記第2部材との接着状態が検出される。
【0011】
本構成によれば、第1部材と第2部材とは接着剤により接着される。第1部材と第2部材とは、接着剤を挟んだ状態で適切な圧力が加えられることで接着される。そして、
接着剤に埋まるように第1部材と第2部材とに挟まれた光ファイバは、複屈折によって第1部材と第2部材との接着状態を検出するために用いられる。
【0012】
光ファイバに圧力が加えられない状態では、光スペクトルはピークを一つ有する。一方、光ファイバに所定の方向からのみ圧力が加えられると、円形とされた光ファイバの断面形状が歪んで例えば楕円形(扁平した円形あるいは長円形)に変化するので、光スペクトルは複数(例えば2つ)のピークを持つ形状に変化する。これが、光ファイバの複屈折であり、光ファイバは圧力センサとされる。
【0013】
すなわち、第1部材と第2部材とに適切に圧力が加えられて接着されると、光ファイバに対して第1部材及び第2部材の両方向から圧力が加えられることとなる。このため、複屈折によって光ファイバの光スペクトルのピークが複数となる。このように、光ファイバが圧力センサとして用いられることで、第1部材と第2部材との接着状態が検出される。
【0014】
以上説明したように、本構成は、光ファイバの複屈折によって第1部材と第2部材との接着状態を検出するので、部材同士が適切に接着されているか否かを判断することができる。
【0019】
上記第一態様では、前記光ファイバと前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方との間に、固体物が挿入されることが好ましい。
【0020】
本構成によれば、部材の接着前及び接着中でも、部材同士が適切に接着されているか否かを判断することができる。
【0021】
上記第一態様では、前記固体物が、前記光ファイバと前記接着剤との間に挿入されることが好ましい。
【0022】
本構成によれば、部材の接着前及び接着中でも、部材同士が適切に接着されているか否かをより正確に判断することができる。
【0023】
上記第一態様では、前記固体物が、前記接着剤と同種の接着剤を硬化して形成されることが好ましい。
【0024】
本構成によれば、接着構造体の接着過程において固体物と接着剤とが一体化するので、接着構造体に対して固体物が不純物とならない。
【0025】
本発明の第二態様に係る接着状態検出方法は、第1部材と第2部材とを
接着する接着剤に光ファイバ
が埋まるように、前記第1部材と前記第2部材とを接着する第1工程と、前記光ファイバの複屈折によって前記第1部材と前記第2部材との接着状態を検出する第2工程と、を含む。
上記第二態様では、前記第1部材及び前記第2部材が、炭素繊維複合材の積層板であり、前記第1部材と前記第2部材とを加圧装置を用いて接着させる場合に、前記光ファイバの複屈折によって前記第1部材と前記第2部材との接着状態が検出されることが好ましい。本構成によれば、炭素繊維複合材の積層板を部材として接着させる場合に、部材同士が適切に接着されているか否かを判断することができる。
上記第二態様では、前記接着剤及び前記光ファイバを挟んだ状態の前記第1部材と前記第2部材とをバッグで覆った後に該バッグ内を大気圧未満とし、オートグレーブ内を加圧している間に、前記光ファイバの複屈折によって前記第1部材と前記第2部材との接着状態が検出されることが好ましい。本構成によれば、炭素繊維複合材の積層板を部材として接着させる場合に、部材同士が適切に接着されているか否かをより適切に判断することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、部材同士が適切に接着されているか否かを判断することができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る接着構造体及び接着状態検出方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0029】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
【0030】
図1は、本第1実施形態に係る接着構造体10を示した分解斜視図である。なお、本第1実施形態では、一例として、接着させる部材を炭素繊維複合材の積層板とする。また、接着構造体10は、例えば複数が組み合わされて航空機、自動車、及び風車等の構造材として用いられる。
【0031】
接着構造体10は、積層板12A、積層板12B、積層板12Aと積層板12Bとを接着する接着剤14、及び積層板12Aと積層板12Bとに挟まれる光ファイバ16を備える。光ファイバ16は、複屈折によって積層板12Aと積層板12Bとの接着状態を検出するためのセンサ(光ファイバセンサ)として用いられる。光ファイバ16は、例えばクラッド径125μmのシングルモードファイバであり、断面形状が円形である。
【0032】
接着剤14は、一例として接着層として形成される。接着剤14の種類は特に限定されないが、例えばエポキシ樹脂系の接着剤が使用可能である。
積層板12A,12Bは、接着剤14により接着される前に少なくとも一方が硬化されている。
また、
図1に示される積層板12A,12Bの平面形状は四角形であるが、これは一例であり、積層板12A,12Bの平面形状はこれに限定されない。なお、積層板12A,12Bの形状は、必ずしも平面形状である必要はない。
【0033】
図1に示される光ファイバ16は、複数回曲げられて光の入力端16Aと出力端16Bとが積層板12A,12Bの同一の辺から突出しているが、これは一例であり、必ずしも光ファイバ16は曲げられて挟まれる必要はなく、入力端16Aと出力端16Bとが積層板12A,12Bの異なる辺から突出してもよい。なお、光ファイバ16は、同一の端部から光の入力及び出力がされてもよい。
さらに、
図1に示される光ファイバ16は、接着剤14に埋め込まれた状態で積層板12Aと積層板12Bとに挟まれているが、これに限らず、光ファイバ16は、接着剤14に埋め込まれた状態とされなくてもよい。
【0034】
そして、
図2に示されるように、光ファイバ16の入力端16A
、出力端16Bは、各々コネクタ20を介して、計測診断装置22に接続される。計測診断装置22は、光ファイバ16の入力端16Aから所定の波長の光を入射し、出力端16Bから光ファイバ16を通過した光を検出して、光スペクトルを得る。
【0035】
積層板12A,12Bは、接着剤14を挟んだ状態で圧力が加えられることで接着される。積層板12A,12Bに圧力が加えられると、光ファイバ16にも圧力が加えられることとなる。
【0036】
光ファイバ16に圧力が加えられない状態では、
図3に示されるように光スペクトルはピークを一つ有する。一方、光ファイバ16に所定の方向からのみ圧力が加えられると、
図4に示されるように円形とされた光ファイバ16の断面形状が、歪んで例えば楕円形(扁平した円形あるいは長円形)に変化するので、光スペクトルは複数(例えば2つ)のピークを持つ形状に変化する。これが、光ファイバ16の複屈折である。
【0037】
すなわち、積層板12A,12Bに適切に圧力が加えられて接着されると、光ファイバ16に対して積層板12Aと積層板12Bの両方向から圧力が加えられ、複屈折によって光ファイバ16の光スペクトルのピークが複数となる。このように、光ファイバ16を圧力センサとして用いることで、積層板12A,12Bの接着状態を検出することが可能となる。
【0038】
接着させる部材を炭素繊維複合材の積層板12A,12Bとしている本第1実施形態では、加圧装置(本第1実施形態では、一例としてオートクレーブ)を用いて積層板12A,12Bを接着させる場合に、光ファイバ16の複屈折によって接着状態を検出する。これにより、本第1実施形態では、炭素繊維複合材の積層板12A,12Bを部材として接着させる場合に、部材同士が適切に接着されているか否かを判断することができる。
【0039】
次に、
図5,6を用いて本第1実施形態に係る試験結果を説明する。
図5,6は、積層板12A,12Bで未硬化の接着剤14を挟み、接着剤14及び積層板12A,12Bの間に光ファイバ16を埋め込んだ試験結果である。
【0040】
図5は、積層板12A,12Bをバッグで覆って該バッグ内を大気圧未満(真空)とし、オートクレーブ内を加圧、昇温させた過程における光ファイバ16の光スペクトル形状の変化を示したグラフである。
【0041】
図5に示されるように、オートクレーブ内を加圧する前は、光スペクトルに1つのピークのみが生じている。そして、加圧中には光スペクトルのピークが小さくなると共にピークが分かれ、加圧後には光スペクトルに明らかな2つのピークが生じる。この2つのピークは、光ファイバ16に圧力が加えられることによって、円形とされた光ファイバ16の断面形状が歪んで楕円形に変化して複屈折が起きたことを示している。すなわち、積層板12A,12Bに圧力が加えられていることを示している。
なお、
図5において、加圧前、加圧中、加圧後に至るに連れてピークの位置がより周波数の高い方向へ移動している。この理由は、加圧によって接着構造体10の温度が上昇しているためである。
【0042】
そして、次の工程において昇温が行われる。なお、
図5の昇温中_1に比べ、昇温中_2の方が、温度は高い。
昇温中には、光スペクトルのピークが1つに戻っている。この理由は、昇温により接着剤14の粘度が低下することによって、光ファイバ16に加えられる所定の方向からのみの圧力である非軸対称圧力が低下し、光ファイバ16の断面形状の変化が緩和したためである。光ファイバ16に加えられる圧力が低下しても、積層板12A,12Bには、接着に必要な圧力が維持されている。
【0043】
そして、昇温後に接着剤14が硬化し、積層板12A,12Bが接着される。
【0044】
一方、
図6は、積層板12A,12Bをバッグで覆うことなく、オートクレーブ内を加圧、昇温させた過程における光ファイバ16の光スペクトル形状の変化を示している。すなわち、積層板12A,12Bは、静水圧の状態とされている。
【0045】
図6に示されるように、オートクレーブを加圧する前後では、光スペクトル形状は、ピークが2つになることもなく、ほとんど変化はなく、同形状である。
さらに、昇温中であっても、光スペクトル形状は、ピークの位置がより周波数の高い方向へ移動する以外に変化はない。
このことは、静水圧の状態では接着剤14にボイド等が生じることによって、積層板12A,12Bに対して、接着に必要な圧力が十分に加えられていないことを示している。
【0046】
図5,6に示される結果から、本第1実施形態に係る接着構造体10は、接着剤14及び光ファイバ16を挟んだ状態の積層板12Aと積層板12Bとをバッグで覆った後に該バッグ内を大気圧未満とし、オートグレーブ内を加圧している間に、光ファイバ16の複屈折によって積層板12A,12Bの接着状態が検出されることが好ましいことが分かる。
【0047】
なお、従来の一般的な製造工程においてバッグは、真空引きされて成形終了までその状態を維持、又は真空引きされて圧力が1atm以上になった場合に、大気開放される。また、オートクレーブは、接着剤14が硬化した後、冷却が開始されて60℃以下となった場合に、大気開放される。
【0048】
一方、本第1実施形態に係る
図5に示される試験では、バッグは、真空引きされ、接着剤14が硬化した後、冷却開始前に大気開放される。また、オートクレーブは、接着剤14が硬化した後、冷却開始前に大気開放される。
これにより、接着剤14が硬化するまで積層板12A,12Bに圧力が加えられるため、積層板12A,12Bが、より確実に接着される。
【0049】
また、ある圧力が付与された状態で冷却が開始されると、光ファイバ16の断面形状が再び楕円形に変化して複屈折が起きる現象が確認されている。これに伴い、再び光スペクトルのピークが複数(2つ)となる。この現象を利用して、複数の接着構造体10を組み合わせて、例えば航空機の構造材とし、航空機の飛行時であっても光スペクトルを計測することで、積層板12A,12Bの剥離状態をリアルタイムで検出することもできる。積層板12A,12Bが剥離した場合、光ファイバ16の断面形状の変化が緩和し、光スペクトルのピークが一つとなるためである。
【0050】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
【0051】
図7は、本第2実施形態に係る接着構造体10を示した分解斜視図である。
図8は、本第2実施形態に係る接着構造体10の分解縦断面図である。
図7,8に示されるように、本第2実施形態に係る接着構造体10は、光ファイバ16と積層板12A及び積層板12Bの少なくとも一方との間に、固体物である固体素子30が挿入される。
【0052】
なお、
図7,8の例は、試験用の構成であり、後述するような固体素子30の有無による光スペクトル形状の変化の違いを計測するために、固体素子30が挿入されない光ファイバ16_1、固体素子30が挿入された光ファイバ16_2,16_3が配置される。また、各光ファイバ16の近辺温度を測定するために積層板12Aの上面には、各光ファイバ16毎に温度センサ32が配置される。温度センサ32は、例えば熱電対である。
【0053】
光ファイバ16_2は、積層板12Bとの間に固体素子30が挿入される。光ファイバ16_3は、接着剤14との間に固体素子30が挿入される。
【0054】
固体素子30は、例えば硬化済みの接着剤であり、化学硬化型、熱硬化型、及び熱可塑型等がある。
化学硬化型は、例えば主剤と硬化剤との二液を混合することにより、硬化反応が進む接着剤であり、例えばHenkel社製EA9394である。
熱硬化型は、接着剤に外部から熱を加えることにより、硬化反応が進む接着剤であり、例えばCytec社製FM300−2である。
熱可塑型は、接着剤に加えた熱で一度重合反応を起こし、放熱により硬化反応が進む接着剤であり、例えばPPS(Poly Phenylene
Sulfide Resin)樹脂である。
また、固体素子30としては、接着部の隙間調整に用いられる未硬化プリプレグ等のシムを用いることができる。
【0055】
本第2実施形態では、固体素子30の一例として、上述したCytec社製FM300−2を硬化したものを用いた。本第2実施形態では、一例として、接着剤14としてもCytec社製FM300−2を用いた。
このように、固体素子30が接着剤14と同種の接着剤を硬化して形成されることにより、接着構造体10の接着過程において固体素子30と接着剤14とが一体化(同化)するので、接着構造体10に対して固体素子30が不純物とならず、固体素子30が挿入された近辺の強度が低下することもない。
また、固体素子30としては、化学硬化型、熱硬化型、及び熱可塑型等の何れを用いるかは、固体素子30の形状、使用する接着剤14の種類等によって適宜選択される。
【0056】
また、固体素子30の大きさは、一例として20mm×5mmの板状であり、長尺方向が光ファイバ16の方向に沿って配置されている。なお、固体素子30は、光ファイバ16の全体に挿入される必要はなく、光ファイバ16のセンシング部分に挿入されればよい。なお、固体素子30は、長方形である必要はなく、正方形であってもよく、四角形以外の多角形、又は円形等であってもよい。また、固体素子30の厚さは、光ファイバ16と固体素子30の厚さの合計が接着剤14で形成される接着層の厚さより薄くなるように選択される。
【0057】
図9は、接着構造体10の接着過程を示した模式図である。
まず、接着構造体10は、積層板12A、接着剤14、光ファイバ16、積層板12Bの順に重ねられる(
図9(a))。
次に、積層されたものがバッグ40で覆われる(
図9(b))。
次に、バッグ40の内部が真空引きされ、内部の圧力が大気圧未満とされる(
図9(c))。なお、これにより、バッグ40の内部と外部とでは、約1atmの圧力差が生じる。
次に、所定の圧力でバッグ40の外部から加圧(オートクレーブ加圧)される(
図9(d))。これにより、バッグ40の内部と外部とでは、約1atmを超える圧力差が生じる。
次に、所定の温度でバッグ40の外部から加熱(オートクレーブ加熱)される(
図9(e))。
そして、所定時間冷却することによって、接着剤14の硬化が完了し、接着構造体10が形成される(
図9(f))。
【0058】
図10は、初期加圧過程における光ファイバ16_1,16_2,16_3の非軸対称歪み量の変化を示したグラフである。初期加圧過程とは、
図9(c),(d)である。非軸対称歪み量は、光ファイバ16に圧力が加えられることで楕円形状に歪んだ歪み量を、光スペクトル形状に基づいて求めたものである。
図10の縦軸はバッグ40の内部と外部との圧力差、温度、及び非軸対称歪み量であり、横軸は時間である。縦軸の0atmはバッグ40の内部が大気圧であり、かつ外部から圧力が加えられていない場合である。
また、光ファイバ16_1,16_2,16_3に対応する温度センサ30で測定された温度は、各々有意な差はなく、略同様に時間変化した。
【0059】
図10の領域Aは、バッグ40の内部を真空引きした場合(
図9(c))であり、圧力が1atmに変化すると共に光ファイバ16_2,16_3の非軸対称歪み量が大きくなった。なお、領域Aにおける非軸対称歪み量は、初期段階でピークが生じた。この理由は、光ファイ
バ16_2,16_3に圧力が加えられると、その初期に最も非軸対称歪み量が大きくなるものの、圧力によって光ファイ
バ16_2,16_3が固体素子30にめり込みことで光ファイ
バ16_2,16_3への応力が緩和されるため、その後、非軸対称歪み量が小さくなるためである。
【0060】
領域Bは、バッグ40内の真空を開放した場合であり、光ファイバ16_2,16_3の非軸対称歪みは無くなった。なお、領域Bは、光ファイバ16_2,16_3の非軸対称歪みを測定するために実験的に設けたものであり、実際の初期加圧過程では行われない。
【0061】
領域Cは、バッグ40の内部の真空引きを再開した場合であり、領域Aのように光ファイバ16_2,16_3の非軸対称歪み量が大きくなった。
なお、領域A,C共に、積層板12Bとの間に固体素子30が挿入された光ファイバ16_2よりも、接着剤14との間に固体素子30が挿入された光ファイバ16_3の方が、感度が高かった。
このことから、固体素子30は、光ファイバ16と接着剤14との間に挿入されることが好ましく、これにより、積層板12A,12Bの接着前及び接着中である接着構造体10の接着過程でも、部材同士が適切に接着されているか否かをより正確に判断することができる。
【0062】
領域Dは、オートクレーブ加圧(
図9(d))を行った場合であり、圧力は最大7atmとした。加圧と共に、光ファイバ16_2,16_3の非軸対称歪み量が大きくなったが、光ファイバ16_2の方が光ファイバ16_3よりも応答が遅かった。
【0063】
領域Eは、加圧を開放した場合であり、圧力は1atmまで低下すると共に、光ファイバ16_2,16_3の非軸対称歪みは無くなった。なお、領域Eは、光ファイバ16_2,16_3の非軸対称歪みを測定するために実験的に設けたものであり、実際の初期加圧過程では行われない。
【0064】
領域Fは、オートクレーブ加圧を再開した場合であり、領域Dのように光ファイバ16_2,16_3の非軸対称歪み量が大きくなった。
加圧と共に、光ファイバ16_2,16_3の非軸対称歪み量が大きくなった。しかし、加熱を開始されると、徐々に接着剤14が柔らかくなるため、光ファイバ16_2,16_3に加えられる応力が緩和され、非軸対称歪み量が徐々に小さくなった。
【0065】
なお、固体素子30が挿入されない光ファイバ16_1は、光ファイバ16_2,16_3に比べて、非軸対称歪み量の変化は小さかった。
光ファイバ16_1は固体素子30が挿入されていないため、圧力が加えられると、接着剤14にめり込み光ファイバ16_1に応力が加えられず、光ファイバ16_1の形状が変化しないためである。一方、固体素子30が挿入された光ファイバ16_2,16_3は、固体素子30によって接着剤14にめり込むことが阻害されるので、光ファイバ16_2,16_3に応力が加えられ、形状が変化するため、非軸対称歪み量が変化する。これにより、接着構造体10の接着過程でも、部材同士が適切に接着されているか否かを判断可能となる。
【0066】
また、
図10に示される試験結果から積層板12Bとの間に固体素子30が挿入された光ファイバ16_2よりも、接着剤14との間に固体素子30が挿入された光ファイバ16_3の方が、感度が高いことが分かった。この理由は、接着剤14との間に固体素子30が挿入される方が、積層板12Bとの間に固体素子30が挿入される場合に比べて、光ファイバ16の接着剤14へのめり込みがより強く阻害されるためである。
このことから、固体素子30は、光ファイバ16と接着剤14との間に挿入されることが好ましく、これにより、本第2実施形態では、積層板12A,12Bの接着前及び接着中である接着構造体10の接着過程でも、部材同士が適切に接着されているか否かをより正確に判断することができる。
【0067】
図11は、加熱冷却過程における光ファイバ16_1,16_2,16_3の非軸対称歪み量の変化を示したグラフである。初期加圧過程は、
図9(e),(f)である。
図11の縦軸は、非軸対称歪み量及び温度であり、横軸は、時間である。
なお、加熱が開始される前(0〜100分過ぎ)でも、光ファイバ16_2,16_3の非軸対称歪み量は増減したが、この増減は、バッグ40の真空引きや加圧等のために光スペクトルのバラつきが大きいことに起因するものであり、非軸対称歪みが正常に算出されなかったためである。
【0068】
図11に示されるように、加熱の初期では光ファイバ16_2,16_3の非軸対称歪み量が大きかった。一方、光ファイバ16_1の非軸対称歪み量には有意な変化はなかった。
この理由は、加熱により接着剤14が柔らかくなるため、光ファイバ16_1は接着剤14にめり込み応力が加えられない一方、光ファイバ16_2,16_3は固体素子30によって接着剤14にめり込むことが阻害されるので、光ファイバ16_2,16_3に応力が加えられ、形状が変化するためである。
【0069】
しかし、温度の上昇と共に、接着剤14がさらに柔らかくなるため、光ファイバ16_2,16_3に加えられる応力が緩和され、非軸対称歪み量が徐々に小さくなった。
なお、固体素子30が挿入されない光ファイバ16_1は、温度が上昇しても、有意な非軸対称歪み量の変化はなかった。
【0070】
そして、加熱が終了して温度が低下し、冷却が開始されると接着剤14が硬化し、光ファイバ16_1,16_2,16_3に加えられる応力が増加するので、光ファイバ16_1,16_2,16_3の非軸対称歪み量は増加した。
【0071】
図12は、光ファイバ16と積層板12Aとの間と、光ファイバ16と積層板12Bとの間に、固体素子30が挿入される例を示した縦断面図である。この形態の場合、接着構造体10の硬化後に、光ファイバ16が接着剤14に埋まるように固体素子30が挿入されなければならない。
【0072】
図13は、固体素子30が板状ではなくチューブ状とされる例を示した縦断面図である。この形態の場合も、接着構造体10の硬化後に、光ファイバ16が接着剤14に埋まるように固体素子30が挿入されなければならない。
【0073】
以上説明したように、本第2実施形態に係る接着構造体10は、光ファイバ16と積層板12A及び積層板12Bの少なくとも一方との間に、固体素子30が挿入される。
これにより、本第2実施形態に係る接着構造体10は、積層板12A,12Bの接着前及び接着中でも、部材同士が適切に接着されているか否かを判断することができる。
【0074】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記各実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0075】
例えば、上記各実施形態では、接着させる部材を炭素繊維複合材の積層板12A,12Bとする形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、接着させる部材を、例えば、ガラス繊維などで強化された繊維強化樹脂基複合材料や、アルミ合金などの金属材料としてもよい。