特許第6174313号(P6174313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174313
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】細胞培養シート
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/36 20060101AFI20170724BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20170724BHJP
【FI】
   C08F220/36
   C12N5/07
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-245193(P2012-245193)
(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-91823(P2014-91823A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)社団法人高分子学会、高分子学会予稿集61巻1号、平成24年5月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000205638
【氏名又は名称】大阪有機化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】グン 剣萍
(72)【発明者】
【氏名】黒川 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】赤崎 泰吾
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 欣幸
【審査官】 横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−259628(JP,A)
【文献】 特表2009−508542(JP,A)
【文献】 特開昭58−013609(JP,A)
【文献】 特開2007−130194(JP,A)
【文献】 特開2008−011766(JP,A)
【文献】 特開2010−057745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00
C12N 5/07
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材として式(I):
【化1】
(式中、R1、R3およびR4メチル基、R2エチレン基、R5メチレン基、Xは酸素原子を示す)
で表わされる親水性モノマーおよび架橋性モノマーを含有するモノマー成分を重合させてなる架橋ポリマーを有効成分として含有する水性ゲル基材が用いられてなる細胞培養シートであって、前記架橋性モノマーが、アルキレン基の炭素数が1〜4のアルキレンビス(メタ)アクリルアミドであることを特徴とする細胞培養シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性に優れるのみならず、マクロファージの付着性が小さく、さらに成長させた細胞を剥がす際に剥がしやすいという優れた性質を有する細胞培養シートに関する。
【背景技術】
【0002】
損傷した組織などの修復のために、種々の細胞を移植する試みが行なわれている。例えば、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患によって損傷した心筋組織の修復のために、胎児心筋細胞、骨格筋芽細胞、ES細胞(胚性幹細胞)などの移植細胞の利用が試みられている。しかし、移植細胞を細胞懸濁液の状態で組織に投与したとき、移植細胞の注入効率が低く、レシピエント組織が穿刺によって損傷するおそれがあり、さらに広範囲での組織の修復が困難であることが指摘されている。
【0003】
そこで、近年、スキャフォールドを利用して形成された細胞構造物および細胞をシート状に成形することによって得られる細胞シートが開発されている。この細胞シートは、例えば、火傷などによる皮膚損傷に対する培養表皮シート、角膜損傷に対する角膜上皮細胞シート、内視鏡によって食道癌を切除した後に使用される口腔粘膜細胞シートなどに利用することが検討されている。
【0004】
細胞シートは、一般に培養基材上で形成され、当該細胞シート上には細胞が培養される。当該細胞シートは、実際に治療の際に用いるときには培養基材から単離する必要がある。細胞シートを培養基材から単離させる方法としては、例えば、トリプシンなどのタンパク質分解酵素を用いて細胞シートを培養基材から単離させる方法、スクレーパー、ピペットなどを用いて機械的に細胞シートを培養基材から剥離する方法などが知られている。
【0005】
しかしながら、これらの方法によれば、細胞シートを培養基材から単離するときに細胞シートが損傷したり、細胞の生存率が低下したりするため、培養基材の材質およびその構造を改良することにより、細胞シートを容易に培養基材から単離させることができる手段が検討されている。例えば、前記手段として、温度応答性高分子化合物であるN−イソプロピルアクリルアミド(以下、NIPAMという)は、低温状態では膨潤し、液状となるが、34℃付近の温度で相転移し、急激に収縮してゲル化する性質を有することから、37℃の温度でゲル化させたNIPAM上で培養した細胞を当該NIPAMごとに別の細胞層に重ねた後、培養温度を34℃以下の温度に下げることにより、NIPAMを取り除き、細胞同士を直接重ねることが提案されている(例えば、非特許文献1−3参照)。しかし、NIPAMは、生体適合性が十分であるとはいえないため、細胞の培養中にマクロファージがNIPAMに付着することによって炎症性タンパクの分泌が促進され、患者に適用したときに免疫拒絶反応が生じるおそれがある。
【0006】
細胞培養支持体として、天面を有する複数の凸部と当該複数の凸部間に形成される凹部とを備え、前記凹部の開口部の寸法が、培養される細胞が潜入することができない寸法であり、前記該細胞シートが剥離可能である細胞培養支持体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この細胞培養支持体は、大量に生産するのに不向きであり、また高価であるという欠点を有するのみならず、生体適合性が十分であるとはいえないため、培養中にマクロファージが当該細胞培養支持体に付着することによって炎症性タンパクの分泌が促進されることから、患者に適用したときに免疫拒絶反応が生じるおそれがある。
【0007】
また、タンパク質、血球などの生体成分との相互作用が小さく、生体適合性に優れた医療用材料として、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインを含有するモノマー組成物を重合させることによって得られるポリマーを基材表面で形成させた医療用材料が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この医療用材料は、細胞の接着量が少ないことからマクロファージなどの細胞が付着しにくいことが考えられるが、その表面の柔軟性が小さいことから、当該材料の表面上で成長させた細胞を当該材料から剥がす際に、細胞が傷つくおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−11766号公報
【特許文献2】特開2010−57745号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】清水 達也ら著、「バイオサイエンスとバイオインダストリー」、58巻、851頁、一般財団法人バイオインダストリー、2000年
【非特許文献2】大和 雅之ら著、「蛋白質 核酸 酵素」、45巻、72頁、共立出版株式会社、2000年
【非特許文献3】大和 雅之ら著、「蛋白質 核酸 酵素」、45巻、162頁、共立出版株式会社、2000年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、親水性に優れているのみならず、マクロファージの付着性が小さく、柔軟性にも優れた水性ゲル基材を提供することを課題とする。本発明は、また、親水性に優れているのみならず、マクロファージの付着性が小さく、さらに柔軟性にも優れ、成長させた細胞を容易に剥がすことができる細胞培養シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
(1) 基材として式(I):
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、R1、R3およびR4メチル基、R2エチレン基、R5メチレン基、Xは酸素原子を示す)
で表わされる親水性モノマーおよび架橋性モノマーを含有するモノマー成分を重合させてなる架橋ポリマーを有効成分として含有する水性ゲル基材が用いられてなる細胞培養シートであって、前記架橋性モノマーが、アルキレン基の炭素数が1〜4のアルキレンビス(メタ)アクリルアミドであることを特徴とする細胞培養シー
関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水性ゲル基材は、親水性に優れているのみならず、マクロファージの付着性が小さく、柔軟性にも優れるという優れた効果を奏する。本発明の細胞培養シートは、前記水性ゲル基材が用いられていることから、親水性に優れているのみならず、マクロファージの付着性が小さく、さらに柔軟性にも優れているので、成長させた細胞を当該細胞培養シートから容易に剥がすことができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の水性ゲル基材は、前記したように、式(I):
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R2は炭素数1〜8のアルキレン基、R3およびR4はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、R5は炭素数1〜4のアルキレン基、Xは酸素原子または−NH−基を示す)
で表わされる親水性モノマーおよび架橋性モノマーを含有するモノマー成分を重合させてなる架橋ポリマーを有効成分として含有することを特徴とする。
【0018】
なお、本明細書において、「架橋ポリマーを有効成分として含有する」は、本発明の水性ゲル基材が架橋ポリマーを有効成分として含有し、本発明の目的が阻害されない範囲内で、当該架橋ポリマー以外の成分が含まれていてもよいことを意味する。
【0019】
本発明の水性ゲル基材は、前記架橋ポリマーが用いられているので、親水性に優れているのみならず、マクロファージの付着性が小さく、柔軟性にも優れている。また、本発明の細胞培養シートは、前記水性ゲル基材が用いられていることから、親水性に優れているのみならず、マクロファージの付着性が小さく、さらに柔軟性にも優れているので、成長させた細胞を当該細胞培養シートから容易に剥がすことができる。
【0020】
本発明の水性ゲル基材および細胞培養シートがこのように優れた性質を有する理由は、定かではないが、おそらく以下の理由に基づくものと考えられる。
【0021】
すなわち、従来の細胞培養シートでは、マクロファージが当該細胞培養シートに直接接触することから、マクロファージが当該細胞培養シートに付着するものと考えられる。これに対して、本発明の水性ゲル基材および細胞培養シートでは、水性ゲル基材に用いられている架橋ポリマーが親水性に優れているのみならず、当該水性ゲル基材の表面上に薄い水膜が存在することにより、水性ゲル基材の表面上にマクロファージを載せたとき、マクロファージと当該水性ゲル基材とが直接接触することが妨げられるため、マクロファージが当該細胞培養シートに付着することが防止されることに基づくものと考えられる。さらに、本発明の細胞培養シートは、柔軟性にも優れていることから、例えば、ピンセットなどで細胞を当該細胞培養シートから容易に剥がすことができる。
【0022】
したがって、本発明の水性ゲル基材は、親水性に優れており、水との馴染みがよいので、その表面上で水膜が形成されやすいのみならず、当該水性ゲル基材自体がその表面上に薄い水膜を形成するという性質を有するので、表面上で形成された水膜によってマクロファージが水性ゲル基材に付着することを防止することができることから、本発明の水性ゲル基材は、細胞培養シートに好適に使用することができる。
【0023】
本発明の水性ゲル基材は、架橋ポリマーを有効成分として含有するものである。架橋ポリマーは、式(I)で表わされる親水性モノマーおよび架橋性モノマーを含有するモノマー成分を重合させることによって得られる。
【0024】
式(I)で表わされる親水性モノマーにおいて、R1は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。R1のなかでは、水性ゲル基材の親水性を向上させ、マクロファージの付着を抑制する観点から、好ましくはメチル基およびエチル基、より好ましくはメチル基である。
【0025】
式(I)で表わされる親水性モノマーにおいて、R2は、炭素数1〜8のアルキレン基である。炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンテン基、シクロペンテン基、n−ヘキセン基、イソヘキセン基、シクロヘキセン基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。R2のなかでは、水性ゲル基材の親水性を向上させ、マクロファージの付着を抑制する観点から、好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基、より好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基、さらに好ましくはメチレン基およびエチレン基、さらに一層好ましくはエチレン基である。
【0026】
式(I)で表わされる親水性モノマーにおいて、R3およびR4は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。R3のなかでは、水性ゲル基材の親水性を向上させ、マクロファージの付着を抑制する観点から、好ましくはメチル基およびエチル基、より好ましくはメチル基である。
【0027】
式(I)で表わされる親水性モノマーにおいて、R5は、炭素数1〜4のアルキレン基である。炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、tert−ブチレン基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。R5のなかでは、水性ゲル基材の親水性を向上させ、マクロファージの付着を抑制する観点から、好ましくはメチレン基およびエチレン基、より好ましくはメチレン基である。
【0028】
式(I)で表わされる親水性モノマーにおいて、Xは、酸素原子または−NH−基である。Xのなかでは、水性ゲル基材の親水性を向上させ、マクロファージの付着を抑制する観点から、酸素原子が好ましい。
【0029】
式(I)で表わされる親水性モノマーとしては、例えば、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタイン、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム−β−N−エチルカルボキシベタインなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの親水性モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。親水性モノマーは、例えば、特開平9−95474号公報、特開平9−95586号公報、特開平11−222470号公報などに記載の方法で容易に調製することができる。
【0030】
式(I)で表わされる親水性モノマーのなかでは、水性ゲル基材の親水性を向上させ、マクロファージの付着を抑制する観点から、R1がメチル基、R2がエチレン基、R3およびR4がメチル基、R5がメチレン基、Xが酸素原子である親水性モノマー、より具体的には、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインが好ましい。
【0031】
架橋性モノマーとしては、例えば、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミドなどのアルキレン基の炭素数が1〜4のアルキレンビス(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリロイル基を2個以上、好ましくは2個有する(メタ)アクリルアミド化合物;エチレンジアクリレート、エチレンジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレートなどの(メタ)アクリロイル基を2個以上、好ましくは2個または3個有する(メタ)アクリレート化合物;ジアリルアミン、トリアリルアミンなどの炭素−炭素二重結合を2個以上、好ましくは2個または3個有するアミン化合物;ジビニルベンゼン、ジアリルベンゼンなどの炭素−炭素二重結合を2個以上、好ましくは2個または3個有する芳香族化合物などの多官能モノマーが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの架橋性モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリ」は、「アクリ」または「メタクリ」を意味する。
【0033】
架橋性モノマーのなかでは、水性ゲル基材の親水性を向上させ、マクロファージの付着を効率よく抑制する観点から、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリルアミド化合物、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレート化合物、炭素−炭素二重結合を2個以上有するアミン化合物および炭素−炭素二重結合を2個以上有する芳香族化合物が好ましく、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリルアミド化合物、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレート化合物および炭素−炭素二重結合を2個以上有するアミン化合物がより好ましく、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリルアミド化合物および(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレート化合物がさらに好ましく、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリルアミド化合物さらに一層好ましく、アルキレン基の炭素数が1〜4のアルキレンビス(メタ)アクリルアミドが特に好ましい。これらの架橋性モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0034】
また、炭素数が1〜4のアルキレンビス(メタ)アクリルアミドのなかでは、水性ゲル基材の親水性を向上させ、マクロファージの付着を効率よく抑制する観点から、メチレンビスアクリルアミドおよびメチレンビスメタクリルアミドがより好ましい。これらのアルキレンビス(メタ)アクリルアミドは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0035】
親水性モノマー100重量部あたりの架橋性モノマーの量は、水性ゲル基材の親水性を向上させ、マクロファージの付着を効率よく抑制するとともに、柔軟性を付与し、成長させた細胞を容易に剥がすことができるようにする観点から、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.3〜3重量部である。
【0036】
モノマー成分には、本発明の目的が阻害されない範囲内で他のモノマーが含まれていてもよい。他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ネオペンチル、メタクリル酸ネオペンチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸セチル、メタクリル酸セチルなどのアルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルなとの炭素数6〜12のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレート;アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジルなどのアリール基の炭素数が6〜12の(メタ)アクリル酸アリールエステル;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチルなどのヒドロキシアルキル基の炭素数が2〜6の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、メタアクリル酸メトキシブチルなどのアルコキシアルキル基の炭素数が2〜8の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;アクリル酸エチルカルビトール、メタクリル酸エチルカルビトールなどのアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルカルビトール;N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−tert−ブチルメタクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−オクチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミドなどのアルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリルアミド:N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタアクリルアミドなどのアルコキシ基の炭素数が1〜6のアルコキシ(メタ)アクリルアミド;アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリンなどの(メタ)アクリロイルモルホリン;ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミドなどのジアセトン(メタ)アクリルアミド;スチレン、メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;イタコン酸メチル、イタコン酸エチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外のアルキル基の炭素数が1〜4の脂肪酸アルキルエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどの窒素原子含有モノマーなどの単官能モノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの他のモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
モノマー成分を重合させる際の雰囲気は、特に限定がなく、大気であってもよく、あるいは窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよい。
【0038】
モノマー成分の重合は、例えば、塊状重合法、溶液重合法などによって行なうことができる。モノマー成分を溶液重合法によって重合させる場合には、溶媒が用いられる。溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのアルキルエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物類;n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステル類などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。溶媒の量は、当該溶媒の種類によって異なるので一概には限定することができないが、通常、モノマー成分100重量部あたり、300〜1000重量部程度であることが好ましい。
【0039】
モノマー成分の重合は、例えば、ラジカル重合法、リビングラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、付加重合法、重縮合法などの重合法によって行なうことができる。
【0040】
モノマー成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
【0041】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾイソブチロニトリル、アゾイソ酪酸メチル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過酸化物系重合開始剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
重合開始剤として熱重合開始剤を用いる場合、当該熱重合開始剤の量は、モノマー成分100重量部あたり、通常、0.01〜20重量部程度であることが好ましい。
【0043】
光重合開始剤としては、例えば、2−オキソグルタル酸、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル1−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
重合開始剤として光重合開始剤を用いる場合、当該光重合開始剤の量は、モノマー成分100重量部あたり、通常、0.01〜20重量部程度であることが好ましい。
【0045】
モノマー成分の重合温度は、特に限定がなく、通常、5〜80℃程度の温度であればよい。また、モノマー成分の重合に要する時間は、重合条件によって異なるので一概には決定することができないことから任意である。重合反応は、通常、残存しているモノマーの量が10重量%以下になった時点で、任意に終了することができる。なお、残存しているモノマーの量は、例えば、シュウ素をモノマーの二重結合に付加し、二重結合含量を測定することによって決定することができる。
【0046】
以上のようにしてモノマー成分を重合させることにより、架橋ポリマーが得られる。前記で得られた架橋ポリマーをゲル化させることにより、水性ゲル基材が得られる。なお、溶媒として水を用い、モノマー成分を溶液重合させた場合には、直接的に架橋ポリマーからなる水性ゲル基材を得ることができる。また、架橋ゲルに水を添加することにより、架橋ポリマーをゲル化させることによっても水性ゲル基材を得ることができる。しかし、水性ゲル基材の親水性を向上させ、マクロファージの付着を効率よく抑制する観点から、溶媒として水を用い、モノマー成分を溶液重合させることにより、架橋ポリマーからなる水性ゲル基材を得ることが好ましい。
【0047】
以上のようにして得られる本発明の水性ゲル基材の含水率は、水性ゲル基材の親水性を向上させ、マクロファージの付着を効率よく抑制する観点から、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは3〜10重量%である。
【0048】
本発明の水性ゲル基材には、本発明の目的を阻害しない範囲内で、抗菌剤、着色剤、香料などが適量で含まれていてもよい。
【0049】
本発明の水性ゲル基材の形状は、任意であり、例えば、前記モノマーを所定の内面形状を有する成形型内に入れて重合させた場合には、当該成形型の内面形状に対応した形状を有する水性ゲル基材を得ることができる。また、前記モノマーを基材上に流延した場合には、フィルム状ないしシート状の水性ゲル基材をすることができる。例えば、本発明の水性ゲル基材を細胞培養シートなどの用途に使用する場合には、水性ゲル基材は、例えば、厚さが50μm〜5mm程度のシートとして用いることができる。
【0050】
本発明の水性ゲル基材は、前記したように、親水性に優れているのみならず、マクロファージの付着性が小さいという優れた性質を有することから、例えば、細胞培養シートなどに好適に使用することができる。
【0051】
本発明の細胞培養シートの好適な製造方法としては、例えば、モノマー成分の水溶液を溶液重合させることにより、架橋ポリマーからなるシート状の水性ゲル基材を製造する方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。シート状の水性ゲル基材を製造する方法の具体例としては、モノマー成分の水溶液を溶液重合させる際に、当該モノマー成分の水溶液をシートの厚さに対応する厚さとなるように容器に入れ、当該容器内でモノマー成分を重合させる方法、モノマー成分の水溶液を溶液重合させることによって得られた水性ゲル基材を所望の厚さとなるように延ばすことによってシート状の細胞培養シートとする方法、モノマー成分の水溶液を溶液重合させることによって得られた水性ゲル基材を所望の厚さとなるようにスライスすることにより、シート状の細胞培養シートとする方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。
【0052】
以上のようにして本発明の細胞培養シートが得られる。本発明の細胞培養シートの大きさおよび厚さは、その用途などによって異なることから一概には決定することができない。したがって、本発明の細胞培養シートの大きさおよび厚さは、その用途などに応じて適宜調整することが好ましい。
【0053】
本発明の細胞培養シートの裏面には、必要により、織布、不織布、樹脂シート、樹脂フィルムなどの補強材が設けられていてもよい。また、本発明の細胞培養シートの裏面に樹脂シート、樹脂フィルムなどの補強材を設ける場合には、細胞培養シートと補強材との親和性を向上させる観点から、例えば、補強材の表面にアニオン性基を有する架橋ポリマーなどからなる架橋ポリマー層が形成されていてもよい。前記アニオン性基を有する架橋ポリマーは、例えば、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、メチレンビスアクリルアミドなどのモノマー成分を溶液重合法などの重合方法により重合させることによって形成することができる。
【0054】
本発明の細胞培養シートは、親水性に優れているのみならず、マクロファージの抗付着性にも優れており、ES細胞を培養する際の分化および脱分化を抑制することができるので、マクロファージの付着抑制用細胞培養シートなどとして好適に使用することができるものである。
【実施例】
【0055】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0056】
実施例1
厚さが5mmの透明な樹脂フィルムで製造された一辺の長さが10cmの立方体からなるセルを用意した。
【0057】
次に、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(AMPS)14.1g、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)0.6gおよび光重合開始剤として2−オキソグルタル酸0.01gを蒸留水100gに溶解させることにより、溶液Aを得た。
【0058】
一方、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン18.6g、メチレンビスアクリルアミド0.15gおよび2−オキソグルタル酸0.015gを蒸留水100gに溶解させることにより、モノマー成分の水溶液(溶液B)を得た。
【0059】
次に、溶液Aを前記セルに入れ、その側面から紫外線照射機〔UVP(株)製、品番:95−0042−12〕を用いて照度4mW/cm2、照射時間6時間、積算光量86.4J/cm2にて紫外線を照射することにより、樹脂フィルム上にアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸−メチレンビスアクリルアミドコポリマーからなる架橋ポリマー層を形成させた。その後、溶液Bを前記セルに入れ、均一な組成となるように撹拌した後、再度、セルの側面から前記紫外線照射機を用いて照度4mW/cm2、照射時間6時間、積算光量86.4J/cm2にて紫外線を照射することにより、厚さが約1mmの水性ゲル基材を調製した。この水性ゲル基材に対する水の接触角を(株)レスカ製、動的濡れ性試験器(品番:WET−6000)で測定したところ、当該接触角は、0度であった。このことから、当該水性ゲル基材は、親水性に優れていることが確認された。この水性ゲル基材を細胞培養シートとして用いた。
【0060】
実施例2
実施例1において、メチレンビスアクリルアミドの量を0.10gに変更したこと以外は、実施例1同様にして水性ゲル基材を調製した。この水性ゲル基材に対する水の接触角を実施例1同様にして測定したところ、当該接触角は、0度であった。このことから、当該水性ゲル基材は、親水性に優れていることが確認された。この水性ゲル基材を細胞培養シートとして用いた。
【0061】
実施例3
実施例1において、メチレンビスアクリルアミドの量を0.30gに変更したこと以外は、実施例1同様にして水性ゲル基材を調製した。この水性ゲル基材に対する水の接触角を実施例1同様にして測定したところ、当該接触角は、0度であった。このことから、当該水性ゲル基材は、親水性に優れていることが確認された。この水性ゲル基材を細胞培養シートとして用いた。
【0062】
実施例4
実施例1において、メチレンビスアクリルアミドの代わりにエチレングリコールジアクリレート0.15gを用いたこと以外は、実施例1同様にして水性ゲル基材を調製した。この水性ゲル基材に対する水の接触角を実施例1同様にして測定したところ、当該接触角は、0度であった。このことから、当該水性ゲル基材は、親水性に優れていることが確認された。この水性ゲル基材を細胞培養シートとして用いた。
【0063】
実施例5
実施例1において、メチレンビスアクリルアミドの代わりにトリアリルアミン0.20gを用いたこと以外は、実施例1同様にして水性ゲル基材を調製した。この水性ゲル基材に対する水の接触角を実施例1同様にして測定したところ、当該接触角は、0度であった。このことから、当該水性ゲル基材は、親水性に優れていることが確認された。この水性ゲル基材を細胞培養シートとして用いた。
【0064】
比較例1
厚さが5mmの透明な樹脂フィルムで製造された一辺の長さが10cmの立方体からなるセルを用意した。
【0065】
次に、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(AMPS)14.1g、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)0.6gおよび光重合開始剤として2−オキソグルタル酸0.01gを蒸留水100gに溶解させることにより、溶液Aを得た。
【0066】
一方、アクリルアミド7.0g、メチレンビスアクリルアミド0.6gおよび2−オキソグルタル酸0.01gを蒸留水100gに溶解させることにより、モノマー成分の水溶液(溶液B)を得た。
【0067】
次に、溶液Aを前記セルに入れ、その側面から紫外線照射機〔UVP(株)製、品番:95−0042−12〕を用いて照度4mW/cm2、照射時間6時間、積算光量86.4J/cm2にて紫外線を照射することにより、樹脂フィルム上にアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸−メチレンビスアクリルアミドコポリマーからなる架橋ポリマー層を形成させた。その後、溶液Bを前記セルに入れ、均一な組成となるように撹拌した後、再度、セルの側面から前記紫外線照射機を用いて照度4mW/cm2、照射時間6時間、積算光量86.4J/cm2にて紫外線を照射することにより、水性ゲル基材を調製した。得られた水性ゲル基材を細胞培養シートとして用いた。
【0068】
比較例2
厚さが5mmの透明な樹脂フィルムで製造された一辺の長さが10cmの立方体からなるセルを用意した。
【0069】
次に、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(AMPS)14.1g、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)0.6gおよび光重合開始剤として2−オキソグルタル酸0.01gを蒸留水100gに溶解させることにより、溶液Aを得た。
【0070】
一方、ジメチルアクリルアミド9.9g、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)0.45g、2−オキソグルタル酸0.015gを蒸留水100gに溶解させることにより、モノマー成分の水溶液(溶液B)を得た。
【0071】
次に、溶液Aを前記セルに入れ、その側面から紫外線照射機〔UVP(株)製、品番:95−0042−12〕を用いて照度4mW/cm2、照射時間6時間、積算光量86.4J/cm2にて紫外線を照射することにより、樹脂フィルム上にアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸−メチレンビスアクリルアミドコポリマーからなる架橋ポリマー層を形成させた。その後、溶液Bを前記セルに入れ、均一な組成となるように撹拌した後、再度、セルの側面から前記紫外線照射機を用いて照度4mW/cm2、照射時間6時間、積算光量86.4J/cm2にて紫外線を照射することにより、水性ゲル基材を調製した。得られた水性ゲル基材を細胞培養シートとして用いた。
【0072】
比較例3
特開2010−57745号公報に記載の「実施例1」に準じてポリマーブラシを有するガラス板を製造し、得られたポリマーブラシを有するガラス板を細胞培養シートとして用いた。
【0073】
比較例4
細胞培養シートとして、ポリスチレン製の細胞培養シートを用いた。
【0074】
比較例5
細胞培養シートとして、プラズマ放電による表面処理が施されたポリスチレン製の細胞培養シートを用いた。
【0075】
次に、各実施例または各比較例の細胞培養シートをシャーレの底に敷き、以下のマクロファージの接着性の評価方法に基づいてマクロファージの接着性を評価した。
【0076】
〔マクロファージの接着性の評価方法〕
5.0×104セル/mLのマクロファージを各実施例または各比較例の細胞培養シートに載せ、37℃の雰囲気中で24時間培養した後、純水で細胞培養シートを水洗した。水洗した細胞培養シートに残存している細胞の数を数えることにより、接着性を評価した。
【0077】
その結果、各実施例で得られた細胞培養シートでは、いずれも、マクロファージの残存数が0セル/mLであり、マクロファージの接着がまったく認められなかった。これに対し、比較例1で得られた細胞培養シートでは、接着したマクロファージの数は10セル/mL、比較例2で得られた細胞培養シートでは、接着したマクロファージの数は4セル/mL、比較例3で得られた細胞培養シートでは、接着したマクロファージの数は0セル/mL、比較例4で用いた市販の細胞培養シートでは、接着したマクロファージの数は38セル/mL、比較例5で用いた市販の細胞培養シートでは、接着したマクロファージの数は143セル/mLであった。
【0078】
以上の結果から、各実施例で得られた細胞培養シートは、いずれも親水性に優れており、さらにマクロファージの接着性が小さく、マクロファージが接着しがたいことから、マクロファージが細胞培養シートに接着することによってマクロファージが変質することを抑制し、炎症性タンパクの分泌を抑制することができることがわかる。
【0079】
次に、各実施例で得られた細胞培養シートおよび比較例3で得られた細胞培養シートについて、その表面の鉛筆硬度を調べた。その結果、各実施例で得られた細胞培養シートの表面の鉛筆硬度は、いずれも、4Bであったのに対し、比較例3で得られた細胞培養シートの表面の鉛筆硬度は9Hであったことから、各実施例で得られた細胞培養シートは、いずれも、柔軟性に優れていることが確認された。
【0080】
また、ピンセットを用いて細胞培養シートからの成長させた細胞の剥がしやすさを調べたところ、各実施例で得られた細胞培養シートでは、成長させた細胞をピンセットでシートから容易に剥がすことができたのに対し、比較例3で得られた細胞培養シートでは、その表面が硬いため、成長させた細胞をピンセットでシートから剥がすことが困難であり、無理に剥がそうとすると細胞に傷をつけるおそれがあった。
【0081】
次に、各実施例で得られた細胞培養シートを用い、前記マクロファージの接着性の評価方法で水洗した際に生成した洗浄水からマクロファージを回収し、当該マクロファージを各実施例で得られた細胞培養シートに載せ、37℃の雰囲気中で24時間培養したところ、マクロファージを増殖させることができることが確認された。このことから、各実施例で得られた細胞培養シートを用いれば、マクロファージを再度播種しても当該マクロファージを増殖させることができることがわかる。
【0082】
その後、前記で得られたマクロファージを各実施例で得られた細胞培養シートに再度播種し、増殖させた後、マクロファージの接着性を前記と同様にして評価した。その結果、マクロファージの残存数が0セル/mLであり、マクロファージの接着が認められなかった。このことから、各実施例で得られた細胞培養シートは、いずれも繰り返して使用することができるものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の細胞培養シートは、親水性に優れているのみならず、マクロファージの付着性が小さく、さらに柔軟性にも優れ、成長させた細胞を容易に剥がすことができるので、例えば、ES細胞を培養する際の分化および脱分化を抑制する細胞培養シートなどとして使用することが期待されるものである。