【実施例】
【0046】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0047】
[合成例1]
m−クレゾール及びp−クレゾールの混合物(m−クレゾール/p−クレゾール=6/4(質量比))とホルムアルデヒドとを酸触媒の存在下で常法により付加縮合して得たクレゾール型ノボラック樹脂(質量平均分子量30000)70質量部と、感光剤として1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピリデニル)ベンゼンのナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸ジエステル15質量部と、可塑剤としてポリメチルビニルエーテル(質量平均分子量100000)15質量部とに対して、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を固形分濃度が40質量%になるように添加してから、混合して溶解させ、レジスト組成物1を得た。このレジスト組成物1は、ノボラック系であり、非化学増幅系であり、ポジ型である。
【0048】
[合成例2]
m−クレゾール及びp−クレゾールの混合物(m−クレゾール/p−クレゾール=6/4(質量比))とホルムアルデヒドとを酸触媒の存在下で常法により付加縮合して得たクレゾール型ノボラック樹脂(質量平均分子量10000)52.5質量部と、ポリヒドロキシスチレン樹脂VPS−2515(日本曹達社製) 10質量部と、下記式(1)で表される樹脂27.5質量部と、下記式(2)で表される樹脂10質量部と、酸発生剤として下記式(3)で表される化合物2質量部と、増感剤として1,5−ジヒドロキシナフタレン2質量部と、添加剤としてトリエチルアミン0.01質量部及びサリチル酸0.02質量部と、溶剤としてPGMEA 107質量部及びガンマブチロラクトン6質量部とを混合して溶解させることによりレジスト組成物2を得た。このレジスト組成物2は、化学増幅系であり、ポジ型である。
【0049】
【化1】
【0050】
【化2】
【0051】
【化3】
【0052】
[実施例1]
スクリーン印刷法を用いて、
図2に示す櫛型電極11a及び11bを作製した。
(集電体の形成)
まず、酸化膜を有するシリコン基板の表面に、スパッタ法により、導電層としてアルミニウム膜(厚さ:200nm)を形成した。この基板上に、合成例1のポジ型レジスト組成物1をスピンコート法により塗布し、1.5μmのレジスト層を形成させ、120℃にて1分間乾燥させた。そして、
図2に示す櫛型電極11a及び11bに対応するパターンを有するマスクを用いて、レジスト層に選択露光(ghi混合線、露光量100mJ/cm
2)を行った。次いで、TMAH2.38質量%のアルカリ現像液で1分間現像した。現像後に、アルミニウムエッチング液(H
3PO
4:HNO
3:H
2O=4:1:1.6(質量比))でディップ法によりエッチングし、アルミニウムパターンを形成して、櫛型集電体12a及び12bを形成した。
【0053】
(ガイド孔の作製−1)
集電体の形成されたシリコンウェーハの表面に、合成例1のレジスト組成物をスピンコート法により塗布し、50μmのレジスト層を形成させ、140℃にて5分間乾燥させた。そして、形成された櫛型の集電体12aと平面視で同一形状となるポジマスクを使用して、櫛型の集電体の上部に位置するレジスト層に露光(ghi混合線、露光量60mJ/cm
2)した。次いで、活性化工程として85℃にて3分間ベークを行い、アルカリ現像液で現像した。これにより、シリコンウェーハの表面に、集電体12aと平面視で同一形状となる櫛型形状のガイド孔を形成させた。なお、ガイド孔の底部には、集電体12aが露出していた。
【0054】
(活物質層の形成−1)
LiFePO
4粒子38.7g、導電助剤としてアセチレンブラック2.58g、分散剤としてカルボキシメチルセルロース0.43g、及び結着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)1.29gを混合し(質量比は90:6:1:3)、更に57gの水を加えて混合し、固形分43質量%の分散液を得た。この分散液を自転・公転ミキサー(商品名:あわとり練太郎、(株)シンキー製)にて2000rpmで10分間回転させて、更に混合・分散を行い、得られた混合物を正極活物質として用いた。
【0055】
ガイド孔が形成されたシリコンウェーハに対して、スクリーン印刷を行い、ガイド孔に上記正極活物質を充填し、100℃にて5分間乾燥させ、正極活物質層を形成させた。スクリーン印刷は、角度45°に研磨された硬さ60°のシリコンスキージを備えたスクリーン印刷機(MT−320T型、マイクロ・テック(株)製)を使用して、スキージ圧180MPa、スキージ速度15.0mm/sにて行った。
【0056】
(保護層の形成)
正極活物質が堆積されたシリコンウェーハの表面に、合成例2のレジスト組成物2をスピンコート法により塗布し、10μmのレジスト層を形成させ、140℃にて1分間乾燥させて、保護膜を形成させた。
(ガイド孔の作製−2)
形成された櫛型の集電体12bと平面視で同一形状となるポジマスクを使用して、櫛型の集電体の上部に位置するレジスト層に露光(ghi混合線、露光量60mJ/cm
2)した。次いで、活性化工程として85℃にて3分間ベークを行い、アルカリ現像液で現像した。これにより、正極活物質を上記保護層により保護しつつ、シリコンウェーハの表面に、集電体12bと平面視で同一形状となる櫛型形状のガイド孔を形成させた。なお、ガイド孔の底部には、集電体12bが露出していた。
【0057】
(活物質層の形成−2)
Li
4Ti
5O
12粒子38.7g、導電助剤としてアセチレンブラック2.58g、分散剤としてカルボキシメチルセルロース0.43g、及び結着剤としてSBR1.29gを混合し(質量比は90:6:1:3)、更に57gの水を加えて混合し、固形分43質量%の分散液を得た。この分散液を自転・公転ミキサー(商品名:あわとり練太郎、(株)シンキー製)にて2000rpmで10分間回転させて、更に混合・分散を行い、得られた混合物を負極活物質として用いた。
【0058】
ガイド孔が形成されたシリコンウェーハに対して、スクリーン印刷を行い、ガイド孔に上記負極活物質を充填し、100℃にて5分間乾燥させ、負極活物質層を形成させた。スクリーン印刷は、角度45°に研磨された硬さ60°のシリコンスキージを備えたスクリーン印刷機(MT−320T型、マイクロ・テック(株)製)を使用して、スキージ圧180MPa、スキージ速度15.0mm/sにて行った。
【0059】
(レジスト層の剥離)
最後にレジスト層をアセトンにて剥離して、櫛型電極11a及び11bを得た。スクリーン印刷法により電極活物質を充填するのに要した時間は、15分という非常に短い時間であった。
【0060】
[比較例1]
インジェクション法を用いて、
図2に示す櫛型電極11a及び11bを作製した。
(集電体の形成)
実施例1と同様にして、櫛型集電体12a及び12bを形成した。
【0061】
(ガイド孔の作製)
集電体の形成されたシリコンウェーハの表面に、合成例1のレジスト組成物をスピンコート法により塗布し、50μmのレジスト層を形成させ、140℃にて5分間乾燥させた。そして、形成された櫛型の集電体と平面視で同一形状となるポジマスクを使用して、櫛型の集電体の上部に位置するレジスト層に露光(ghi混合線、露光量60mJ/cm
2)した。次いで、活性化工程として85℃にて3分間ベークを行い、アルカリ現像液で現像した。これにより、シリコンウェーハの表面に、櫛型形状のガイド孔を形成させた。なお、ガイド孔の底部には、集電体が露出していた。
【0062】
(活物質層の形成)
マイクロピペットを使用して、上記で形成させたガイド孔のうち、正極に対応するものの周辺に実施例1の正極活物質を、負極に対応するものの周辺に実施例1の負極活物質を滴下し、櫛型パターンを有する各ガイド孔へ慎重に流しこんだ。その後、100℃にて5分間乾燥させ、活物質層を形成した。最後にレジスト層をアセトンにて剥離して、櫛型電極11a及び11bを得た。インジェクション法により電極活物質を充填するのに要した時間は、3時間という非常に長い時間であった。
【0063】
[実施例2]
実施例1で得られた櫛型電極11a及び11bの断面を、SEM及びEDX(エネルギー分散型X線分光法)で観察した。結果を
図3に示す。
図3(a)に示すとおり、櫛型電極11a及び11bにおいて、正極活物質及び負極活物質は、ガイド孔の形状に従って、ばらつきなく充填されていることが確認できた。また、
図3(b)に示すとおり、正極にはリンが存在することが観察され、正極活物質が充填されていることが確認できた。一方、
図3(c)に示すとおり、負極にはチタンが存在することが観察され、負極活物質が充填されていることが確認できた。
【0064】
<残渣の有無>
[実施例3]
正極活物質を調製する際、LiFePO
4粒子、アセチレンブラック、カルボキシメチルセルロース、及びSBRの質量比を87:6:5:2に変更し、分散液の固形分濃度を42質量%に変更し、また、負極活物質を調製する際、Li
4Ti
5O
12粒子、アセチレンブラック2.58g、カルボキシメチルセルロース、及びSBRの質量比を87:6:5:2に変更し、分散液の固形分濃度を42質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、
図2に示す櫛型電極11a及び11bを作製した。
ガイド孔への正極活物質又は負極活物質の充填の直後に、レジスト表面を光学顕微鏡で観察した。その結果、レジスト表面に、スキージの移動方向に帯状に延びる正極活物質又は負極活物質の残渣は観察されなかった。
また、作製した櫛型電極をSEMで観察したところ、正極活物質又は負極活物質のひげ状の残渣は観察されなかった。
【0065】
[参考例]
LiFePO
4粒子、アセチレンブラック、カルボキシメチルセルロース、及びSBRの質量比を81:12:5:2に変更し、Li
4Ti
5O
12粒子、アセチレンブラック2.58g、カルボキシメチルセルロース、及びSBRの質量比を81:12:5:2に変更した以外は、実施例3と同様にして、
図2に示す櫛型電極11a及び11bを作製した。
ガイド孔への正極活物質又は負極活物質の充填の直後に、レジスト表面を光学顕微鏡で観察した。その結果、レジスト表面に、スキージの移動方向に帯状に延びる正極活物質又は負極活物質の残渣が観察された。
また、作製した櫛型電極をSEMで観察したところ、正極活物質又は負極活物質のひげ状の残渣は観察された。
【0066】
以上から、正極活物質又は負極活物質において、導電助剤であるアセチレンブラックの量を12質量%から6質量%に半減させることで、正極活物質又は負極活物質のひげ状の残渣が発生しなくなり、電極間での短絡を防ぐことができることが分かった。
【0067】
<大面積化による高容量化>
[実施例4〜6]
櫛型電極全体のサイズ、歯の太さ、隣接する2本の歯同士の間隔、歯の長さ、歯の本数、及び活物質層の厚さを表1に示すとおりに設定した以外は、実施例3と同様にして、
図2に示す櫛型電極11a及び11bを作製した。
得られた櫛型電極11aと11bとの間隙を電解質液(1M LiClO
4溶液、溶媒は体積比1:1の炭酸エチレン・炭酸ジエチル混合液)で満たして、二次電池を作製した。この二次電池について、電流値を20μA(実施例4)、160μA(実施例5)、又は225μA(実施例6)に設定して、充電及び放電を行った。充放電曲線を
図4に示す。また、この充放電曲線から読み取った放電容量の値を表1に示す。なお、
図4における英文字A〜Cは、それぞれ櫛型電極A〜Cを表す。
【0068】
【表1】
【0069】
実施例4と5との対比から、本発明に係るパターン形成方法を用いて製造された櫛型電極を有する二次電池は、櫛型電極の全体のサイズを大きくし、活物質の占める面積を広くすることで、放電容量が向上することが分かった。また、実施例5と6との対比から、櫛型電極の面積が同じ場合、歯同士の間隔を狭め、活物質の占める面積を広くすることで、放電容量が向上することが分かった。
【0070】
<厚膜化による高容量化>
[実施例7及び8]
活物質層の厚さを表2に示すとおりに変更した以外は、実施例4又は5と同様にして、
図2に示す櫛型電極11a及び11bの作製、二次電池の作製、並びに充電及び放電を行った。なお、実施例7及び8について、電流値の設定は90μA(実施例7)又は353μA(実施例8)とした。充放電曲線を
図5に示す。また、この充放電曲線から読み取った放電容量の値を表2に示す。なお、比較のため、
図5及び表2には、実施例4及び5の結果も示す。また、
図5における英文字A、B、D、及びEは、それぞれ櫛型電極A、B、D、及びEを表す。
【0071】
【表2】
【0072】
実施例4と7との対比、及び、実施例5と8との対比から、本発明に係るパターン形成方法を用いて製造された櫛型電極を有する二次電池は、活物質層をより厚くすることで、放電容量が向上することが分かった。
【0073】
<添加剤の添加による長寿命化>
[実施例9]
実施例8と同様にして、
図2に示す櫛型電極11a及び11bの作製、二次電池の作製、並びに充電及び放電を行った。充電及び放電を100サイクル繰り返して行い、1、5、10、25、50、及び100サイクル目の充電容量及び放電容量を測定した。1サイクル目の放電容量を100%としたときの各サイクルにおける放電容量維持率を
図6に示す。
【0074】
[実施例10]
電解質液として、1M LiClO
4に加えて5質量%炭酸ビニレンを含む溶液(溶媒は体積比1:1の炭酸エチレン・炭酸ジエチル混合液)を用いた以外は、実施例9と同様にして、二次電池を作製し、1、5、10、25、50、及び100サイクル目の充電容量及び放電容量を測定した。1サイクル目の放電容量を100%としたときの各サイクルにおける放電容量維持率を
図6に示す。
【0075】
実施例9と10との対比から、本発明に係るパターン形成方法を用いて製造された櫛型電極を有する二次電池では、電解質液に添加剤として炭酸ビニレンを添加することにより、寿命が向上することが分かった。
【0076】
<電解質のゲル化>
[実施例11]
質量平均分子量80,000のポリエチレンオキシド3質量部、アセトニトリル10質量部、及び1M LiClO
4溶液(溶媒は体積比1:1の炭酸エチレン・炭酸ジエチル混合液)7.2質量部を混合して、電解質液を調製した。
この電解質液1,000μlを、SiO
2基板上に配置した厚さ3mmで幅2mmのエチレンプロピレンジエンゴム板で囲まれて形成されたガイドの中に滴下し、80℃で30分間乾燥させた後に状態を観察したところ、ゲル状になっていた。
上記のとおりに形成されたゲル状の電解質について、乾燥終了後3分以内に、大気下でテスターにて表面抵抗を測定したところ、100kΩであった。
上記ゲル状電解質について、以下のとおりにしてインピーダンス測定を行った。厚さ2mmのAu基板の上に、5mmφの貫通孔を有する8mmφ×厚さ60ミクロンのポリイミドフィルムを密着させ、上記のAu基板と貫通孔とで形成された凹部に、ポリエチレンオキシドを含む上記電解質液を滴下し、80℃で20分間乾燥させた。ポリイミドフィルム及び形成されたゲル状電解質の上に、厚さ2mmの別のAu基板を載せ、2枚の上記Au基板の間に下記条件で電圧をかけて、インピーダンスを測定したところ、5.66×10
−4Scm
−1であった。
条件:初期電圧0.2V、周波数範囲0.1〜10,000Hz、振幅0.005V、休止時間2秒、温度23℃
櫛型電極全体のサイズ、歯の太さ、隣接する2本の歯同士の間隔、歯の長さ、歯の本数、及び活物質層の厚さを表3に示すとおりに設定した以外は、実施例3と同様にして、
図2に示す櫛型電極11a及び11bを作製した。得られた櫛型電極11aと11bとの間隙に、ポリエチレンオキシドを含む上記電解質液を滴下し、80℃で20分間乾燥させた。これにより、上記間隙がゲル状電解質で満たされた二次電池を作製した。この二次電池について、電流値を50μAに設定して、充電及び放電を行った。充電及び放電を100サイクル繰り返して行い、1、25、50、75、及び100サイクル目の充電容量及び放電容量を測定した。充放電曲線を
図7に示す。なお、
図7における数字は、サイクル数を表す。
【0077】
【表3】
【0078】
これらの結果から、本発明に係るパターン形成方法を用いて製造された櫛型電極を有する二次電池は、ゲル状電解質を用いた場合でも、良好な充放電特性を有することが分かった。
【0079】
<レート特性>
[実施例12]
実施例4で作製した櫛型電極について、Cレートを1C、2C、5C、10C、20C、又は40Cに設定して、実施例4と同様にして、充電及び放電を行った。充放電曲線を
図8に示す。また、1Cにおける放電容量を100%としたときの各Cレートにおける放電容量維持率を表4に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
上記の結果から、本発明に係るパターン形成方法を用いて製造された櫛型電極を有する二次電池は、Cレートを上昇させた場合でも放電容量維持率が良好であり、インジェクション法で作製した櫛型電極を有する二次電池と同等の性能を有することが分かった。
【0082】
<サイクル特性>
[実施例13]
実施例4で作製した櫛型電極について、実施例4と同様にして、充電及び放電を行った。充電及び放電を250サイクル繰り返して行い、所定のサイクルにおいて充電容量及び放電容量を測定した。1サイクル目の充電容量及び放電容量を100%としたときの各サイクルにおける容量維持率を
図9(a)に示す。また、各サイクルにおけるクーロン効率(即ち、放電容量/充電容量)を
図9(b)に示す。
これらの結果から、本発明に係るパターン形成方法を用いて製造された櫛型電極を有する二次電池は、250サイクル後も、容量維持率が安定しており、クーロン効率は98.8%という高い値を維持していることが分かった。