特許第6174331号(P6174331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6174331パターン形成方法、構造体、櫛型電極の製造方法、及び二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174331
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】パターン形成方法、構造体、櫛型電極の製造方法、及び二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20170724BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20170724BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20170724BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   H01M4/04 A
   G03F7/40 511
   H01M4/04 Z
   H01M4/13
   H01M4/64 A
   G03F7/40 521
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-26856(P2013-26856)
(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公開番号】特開2014-66992(P2014-66992A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年11月12日
(31)【優先権主張番号】特願2012-197802(P2012-197802)
(32)【優先日】2012年9月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】石川 薫
(72)【発明者】
【氏名】浅井 隆宏
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−238589(JP,A)
【文献】 特開2012−023418(JP,A)
【文献】 特開2000−113814(JP,A)
【文献】 特開2000−294628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/04、4/13、4/64、4/70
G03F 7/40、7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一又は異なるパターン材料からなるn個(nは2以上の整数)のパターンを支持体上に形成するパターン形成方法であって、
前記支持体の表面にポジ型レジスト組成物を塗布して1番目のレジスト層を形成させ、
k番目(kは1〜(n−1)の整数)のパターン材料及びk番目のレジスト層について、kが1の場合からkが(n−1)の場合まで順番に、下記(1)〜(3):
(1)露光及び現像により、1番目からk番目までのレジスト層を貫通するガイド孔を形成させること、
(2)スクリーン印刷法により前記ガイド孔にk番目のパターン材料を充填すること、及び
(3)k番目のレジスト層と前記ガイド孔に充填された前記k番目のパターン材料との上に、ポジ型レジスト組成物を塗布して(k+1)番目のレジスト層を形成させること
を繰り返し、
露光及び現像により、1番目からn番目までのレジスト層を貫通するガイド孔を形成させ、
スクリーン印刷法により前記ガイド孔にn番目のパターン材料を充填し、
1番目からn番目までのレジスト層を除去することを含むパターン形成方法。
【請求項2】
正極及び負極がそれぞれ櫛型形状として形成され、前記正極及び負極が櫛型形状の歯の部分で互い違いに組み合うように対向配置された櫛型電極の製造方法であって、
基板の表面に導電層を形成させ、当該導電層をパターニングして集電体を形成させ、
請求項1に記載のパターン形成方法を用いて、前記集電体上に前記正極及び負極を形成させることを含む製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一又は異なるパターン材料からなる複数個のパターンを支持体上に形成するパターン形成方法、このパターン形成方法により形成されるパターンを備える構造体、上記パターン形成方法を用いた櫛型電極の製造方法、及びこの製造方法により製造された櫛型電極を有する二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、支持体上に電極や蛍光体をパターニングする際、まず、支持体上にレジスト層を形成し、このレジスト層に、パターン形成時の鋳型となるガイド孔を形成し、形成されたガイド孔に、インジェクションや電気泳動等の方法により、電極や蛍光体となるパターン材料を充填する方法が用いられている。例えば、特許文献1の実施例には、レジスト組成物を使用して形成させたガイド孔に、電気泳動法で、正極活物質を堆積させることにより、櫛形電極を作製したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−238589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、インジェクションや電気泳動等の方法を用いてガイド孔を充填するには多大な時間を要し、これらの方法を用いたパターン形成方法では、パターンを量産することが難しい。
【0005】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであり、短時間で、同一又は異なるパターン材料からなる複数個のパターンを支持体上に形成することのできるパターン形成方法、このパターン形成方法により形成されるパターンを備える構造体、上記パターン形成方法を用いた櫛型電極の製造方法、及びこの製造方法により製造された櫛型電極を有する二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、パターンの形成に際し、スクリーン印刷法によりガイド孔にパターン材料を充填することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0007】
本発明の第一の態様は、同一又は異なるパターン材料からなるn個(nは2以上の整数)のパターンを支持体上に形成するパターン形成方法であって、上記支持体の表面にポジ型レジスト組成物を塗布して1番目のレジスト層を形成させ、k番目(kは1〜(n−1)の整数)のパターン材料及びk番目のレジスト層について、kが1の場合からkが(n−1)の場合まで順番に、下記(1)〜(3):(1)露光及び現像により、1番目からk番目までのレジスト層を貫通するガイド孔を形成させること、(2)スクリーン印刷法により上記ガイド孔にk番目のパターン材料を充填すること、及び(3)k番目のレジスト層と上記ガイド孔に充填された上記k番目のパターン材料との上に、ポジ型レジスト組成物を塗布して(k+1)番目のレジスト層を形成させることを繰り返し、露光及び現像により、1番目からn番目までのレジスト層を貫通するガイド孔を形成させ、スクリーン印刷法により上記ガイド孔にn番目のパターン材料を充填し、1番目からn番目までのレジスト層を除去することを含むパターン形成方法である。
【0008】
本発明の第二の態様は、上記パターン形成方法により形成されるパターンを備える構造体である。
【0009】
本発明の第三の態様は、正極及び負極がそれぞれ櫛型形状として形成され、上記正極及び負極が櫛型形状の歯の部分で互い違いに組み合うように対向配置された櫛型電極の製造方法であって、基板の表面に導電層を形成させ、当該導電層をパターニングして集電体を形成させ、上記パターン形成方法を用いて、上記集電体上に上記正極及び負極を形成させることを含む製造方法である。
【0010】
本発明の第四の態様は、上記製造方法により製造された櫛型電極を有する二次電池である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、短時間で、同一又は異なるパターン材料からなる複数個のパターンを支持体上に形成することのできるパターン形成方法、このパターン形成方法により形成されるパターンを備える構造体、上記パターン形成方法を用いた櫛型電極の製造方法、及びこの製造方法により製造された櫛型電極を有する二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るパターン形成方法を示す横断面図である。
図2】本発明の櫛型電極の製造方法の一実施形態で製造される櫛型電極を模式的に示す斜視図である。
図3】本発明の櫛型電極の製造方法の一実施形態で製造された櫛型電極の断面を、SEM及びEDX(エネルギー分散型X線分光法)で観察した結果を示す写真である。
図4】本発明の櫛型電極の製造方法の一実施形態で製造された櫛型電極において、活物質の占める面積を変化させて測定した充放電曲線を示すグラフである。図中の英文字は、櫛型電極の種類を表す。
図5】本発明の櫛型電極の製造方法の一実施形態で製造された櫛型電極において、活物質層の厚さを変化させて測定した充放電曲線を示すグラフである。図中の英文字は、櫛型電極の種類を表す。
図6】本発明の櫛型電極の製造方法の一実施形態で製造された櫛型電極について、サイクル数と放電容量維持率との関係を示すグラフである。
図7】本発明の櫛型電極の製造方法の一実施形態で製造された櫛型電極について、ゲル状電解質を用い、サイクル数を変化させて測定した充放電曲線を示すグラフである。図中の数字は、サイクル数を表す。
図8】本発明の櫛型電極の製造方法の一実施形態で製造された櫛型電極について、Cレートを変化させて測定した充放電曲線を示すグラフである。
図9】本発明の櫛型電極の製造方法の一実施形態で製造された櫛型電極のサイクル特性を示すグラフであり、(a)はサイクル数と容量維持率との関係を示すグラフであり、(b)はサイクル数とクーロン効率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るパターン形成方法を示す横断面図である。図1を参照して、本発明の実施形態に係るパターン形成方法について説明する。なお、図1では、n=2の場合について説明する。
【0014】
まず、図1(a)で示される支持体1の表面に、図1(b)で示される工程において、ポジ型レジスト組成物を塗布して1番目のレジスト層2を形成させる。
【0015】
支持体1の表面にポジ型レジスト組成物を塗布して1番目のレジスト層2を形成させる方法は、公知の方法を特に制限なく使用することができる。1番目のレジスト層2には、後に説明するように、パターン材料層4a及び4bを形成させるためのガイド孔3a及び3bが形成される。このガイド孔3a及び3bは、パターン材料層4a及び4bを形成させる際の鋳型となるので、パターン材料層4a及び4bを形成させるのに十分な深さを有するように形成させる必要がある。1番目のレジスト層2の厚さは、将来、ガイド孔3a及び3bの深さとなるので、必要とされるガイド孔3a及び3bの深さを考慮して、適宜決定される。1番目のレジスト層2の厚さとして、10〜100μmが例示されるが、特に限定されない。
【0016】
1番目のレジスト層2を形成させるためのポジ型レジスト組成物としては、公知のものを特に制限なく用いることができ、非化学増幅系、化学増幅系のいずれであってもよい。非化学増幅系ポジ型レジスト組成物としては、例えば、キノンジアジド基含有化合物(A)及びアルカリ可溶性樹脂(B)を少なくとも含有するものが挙げられる。一方、化学増幅系ポジ型レジスト組成物としては、例えば、酸解離性の脱離基を有し、当該脱離基が露光により光酸発生剤から発生する酸の作用で脱離することによりアルカリ可溶性が増大する樹脂、及び光酸発生剤を少なくとも含むものが挙げられる。
【0017】
次に、図1(c)で示される工程について説明する。
この工程において、まず、所望のマスクを介して、1番目のレジスト層2を選択露光させる。これにより、将来ガイド孔3aとなる部分が現像液に対して可溶となり、将来ガイド孔3aとならない箇所が現像液に対して不溶のままとなる。
【0018】
選択露光を受けた1番目のレジスト層2は、現像される。現像は、公知の現像液を使用し、公知の方法により行うことができる。このような現像液としては、例えば、アルカリ性の水溶液が例示される。また、現像方法としては、浸漬法、スプレー法等が例示される。
【0019】
現像された1番目のレジスト層2には、支持体1の表面まで貫通するガイド孔3aが形成される。ガイド孔3aは、図1(d)で示される工程(後述)において、パターン材料を堆積させるための鋳型として使用される。ガイド孔3aが形成された1番目のレジスト層2は、必要に応じて、紫外線等の活性エネルギー線を照射するアフターキュアや、追加の熱処理であるポストベークが施される。1番目のレジスト層2は、アフターキュアやポストベークが施されることにより、後述のとおり、パターン材料を充填する工程で必要とされる溶剤耐性やめっき液耐性が更に向上する。
【0020】
次に、図1(d)で示される工程について説明する。
この工程では、図1(c)で示される工程で形成されたガイド孔3aに、スクリーン印刷法により、1番目のパターン材料を充填する。即ち、ガイド孔3aを鋳型として、支持体1の表面に1番目のパターン材料層4aを形成させる。
【0021】
スクリーン印刷法は、例えば、市販のスクリーン印刷機を用い、適宜、スキージ圧、スキージ速度、用いるスキージの材質、硬さ、研磨角度等を調整して実行することができる。
【0022】
次に、図1(e)で示される工程について説明する。
この工程では、1番目のレジスト層2と、ガイド孔3aに充填された1番目のパターン材料(即ち、1番目のパターン材料層4a)との上に、ポジ型レジスト組成物を塗布して2番目のレジスト層5を形成させる。2番目のレジスト層5は、1番目のパターン材料層4aの保護層として機能する。即ち、2番目のレジスト層5を形成させないで、後述のとおり、ガイド孔3bを形成させると、その過程で1番目のパターン材料層4aが現像液に触れて、流出してしまう。上述のとおりに2番目のレジスト層5を形成させることで、1番目のパターン材料層4aが現像液に触れて流出してしまうのを防ぐことができる。
【0023】
ポジ型レジスト組成物の種類及び塗布方法は、図1(b)で示される工程について上述したのと同様である。図1(e)で示される工程に用いられるポジ型レジスト組成物は、図1(b)で示される工程に用いられるポジ型レジスト組成物と同一であってもよいが、組成成分又は種類の異なるものを用いることが好ましい。
【0024】
2番目のレジスト層5の厚さは、1番目のパターン材料層4aの保護層としての機能が確保される限り特に限定されないが、後述の図1(f)で示される工程で形成されるガイド孔3bに必要とされる深さを考慮して適宜決定され、1〜20μmが例示される。
【0025】
次に、図1(f)で示される工程について説明する。
この工程において、まず、所望のマスクを介して、1番目のレジスト層2及び2番目のレジスト層5を選択露光させる。これにより、将来ガイド孔3bとなる部分が現像液に対して可溶となり、将来ガイド孔3bとならない箇所が現像液に対して不溶のままとなる。
【0026】
選択露光を受けた1番目のレジスト層2及び2番目のレジスト層5は、現像される。現像液及び現像方法については、図1(c)で示される工程について説明したのと同様である。
【0027】
現像された1番目のレジスト層2及び2番目のレジスト層5には、支持体1の表面まで貫通するガイド孔3bが形成される。ガイド孔3bは、図1(g)で示される工程(後述)において、パターン材料を堆積させるための鋳型として使用される。ガイド孔3bが形成された1番目のレジスト層2及び2番目のレジスト層5は、必要に応じて、紫外線等の活性エネルギー線を照射するアフターキュアや、追加の熱処理であるポストベークが施される。1番目のレジスト層2及び2番目のレジスト層5は、アフターキュアやポストベークが施されることにより、後述のとおり、パターン材料を充填する工程で必要とされる溶剤耐性やめっき液耐性が更に向上する。
【0028】
次に、図1(g)で示される工程について説明する。
この工程では、図1(f)で示される工程で形成されたガイド孔3bに、スクリーン印刷法により、2番目のパターン材料を充填する。即ち、ガイド孔3bを鋳型として、支持体1の表面に2番目のパターン材料層4bを形成させる。
【0029】
スクリーン印刷法の条件は、図1(d)で示される工程について説明したのと同様である。
【0030】
次に、図1(h)で示される工程について説明する。
この工程では、1番目のレジスト層2及び2番目のレジスト層5を除去する。具体的には、例えば、剥離液を用いて、これらのレジスト層を剥離する方法が挙げられる。この場合、剥離方法は、特に限定されず、浸漬法、スプレー法、シャワー法、パドル法等を用いることができる。また、剥離液としては、例えば、3〜15質量%の水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、有機アミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエタノールアミン、N―メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン等が挙げられる。剥離処理時間は、特に限定されないが、例えば1〜120分間程度である。なお、剥離液は、25〜60℃程度に加温してもよい。
【0031】
以上のとおりにして、1番目及び2番目のパターン材料からなる2個のパターンを支持体上に形成することができる。
なお、図1では、n=2の場合について説明したが、nが3以上の場合については、図1(c)〜(e)で示される工程を必要回数繰り返すことにより、同一又は異なるパターン材料からなるn個のパターンを支持体上に形成することができる。
【0032】
パターン材料としては、特に限定されず、形成されるパターンの用途により適宜選択され、例えば、正極材/負極材、蛍光体(RGB)、医療関係のマーカー、商品タグ等が挙げられる。
【0033】
本発明に係る構造体は、上述したパターン形成方法により形成されるパターンを備える。このような構造体としては、例えば、電池が挙げられ、具体的には、櫛型電極を有する二次電池が挙げられる。
【0034】
櫛型電極としては、例えば、正極及び負極がそれぞれ櫛型形状として形成され、前記正極及び負極が櫛型形状の歯の部分で互い違いに組み合うように対向配置されたものが挙げられる。より具体的には、図2に示す櫛型電極11a及び11bが挙げられる。
【0035】
櫛型電極11a及び11bについて、図2を参照しながら簡単に説明する。櫛型電極11a及び11bは、それぞれ、櫛型形状として形成され、櫛型形状の歯の部分で互い違いに組み合うように対向配置されて形成される。ここで、櫛型電極11aは正極であり、櫛型電極11bは負極である。櫛型電極11a及び11bがこのような構成を採ることにより、電極間距離が短く、電解液抵抗が一定になりリチウムイオン交換が効率良く行われることで、電気容量を大きくすることができる。
櫛型電極11aと櫛型電極11bとの間には、空間又は両者を隔離するセパレータ(図示せず)が設けられ、両者が電気的に分離される。櫛型電極11a及び11bは、表面が不導体である基板14の表面に形成される。このような基板14としては、表面に酸化膜を有するシリコン基板が例示される。
【0036】
正極である櫛型電極11aは、電流を取り出すための集電体12aと、集電体12aの表面に形成された正極活物質層13aと、を有する。集電体12aは、平面視で櫛型形状として形成される。そして、正極活物質層13aは、櫛型形状である集電体12aの表面に形成され、集電体12aと同様に、平面視で櫛型形状として形成される。
【0037】
集電体12aは、導電性を付与するために金属で構成され、好ましくは金で構成される。そして、集電体12aと基板14との間の密着性を確保するために、必要に応じて、集電体12aと基板14との間に密着付与層(図示せず)が形成される。密着付与層は、集電体12aの材質と基板14の材質とを考慮して適宜決定される。一例として、集電体12aが金で構成され、かつ基板14がシリコンで構成される場合、密着付与層としてチタンの薄膜が好ましく使用される。集電体12aの厚さ及び密着付与層の厚さは、特に限定されず、任意に決定することができる。一例として、集電体12aの厚さとして100nm、密着付与層の厚さとして50nmが挙げられるが、限定されない。
【0038】
負極である櫛型電極11bは、電流を取り出すための集電体12bと、集電体12bの表面に形成された負極活物質層13bと、を有する。櫛型電極11bのそれ以外の事項については、正極である上記櫛型電極11aと同様であるので、説明を省略する。
【0039】
正極である櫛型電極11aと負極である櫛型電極11bとの間には、電解質(図示せず)が設けられる。これにより、櫛型電極11a及び櫛型電極11bではそれぞれ電極反応が起こり、集電体12a及び集電体12bから電流を取り出すことができる。
【0040】
櫛型電極全体のサイズ;櫛型電極11a又は櫛型電極11bにおける歯の太さ、長さ、及び本数;隣接する2本の歯同士の間隔;活物質層の厚さ等は、所望の充電容量及び放電容量に応じて、適宜、調整される。例えば、歯の太さは10〜50μm、隣接する2本の歯同士の間隔は30〜70μm、活物質層の厚さは10〜50μmとすることができる。
【0041】
正極活物質層13a及び負極活物質層13bを構成する材質、並びに電解質の種類は、どのような種類の電池を形成させるかに応じて適宜決定される。一例としてリチウムイオン二次電池を挙げると、正極活物質層13aを構成する材質としては、コバルト酸リチウム等の遷移金属酸化物等が挙げられ、負極活物質層13bを構成する材質としては、炭素、グラファイト、チタン酸リチウム等が挙げられ、電解質としては、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム等の塩と、この塩を溶解する、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等の炭酸エステル化合物、アセトニトリル、これらの少なくとも2種の混合液等の有機溶剤とを含む電解質液や、上記電解質液とポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル等のポリマーとを含むゲル状電解質が挙げられる。上記電解質として上記ゲル状電解質を用いることにより、得られる二次電池からの液漏れの発生を有効に軽減することができる。
【0042】
より具体的には、活物質としては、LiCoO、LiFePO、LiMn等の正極活物質粒子や、黒鉛、LiTi12、Sn合金、Si系化合物等の負極活物質粒子が例示される。活物質層を形成する際、上記の活物質は、分散媒に分散させた分散液の状態で用いることが好ましい。使用される分散媒としては、水、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、アセトン、エタノール等が例示される。分散媒の使用量は、上記分散液の固形分濃度が35〜60質量%となるような量であることが好ましい。
【0043】
上記分散液は、通常、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン等の結着剤を含む。上記分散液は、更に、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック)等の導電助剤、カルボキシメチルセルロース等の分散剤を含んでもよい。上記分散液の固形分における活物質、結着剤、導電助剤、及び分散剤の含有量は、特に限定されない。上記分散液の固形分において、活物質の含有量は、好ましくは85〜99質量%であり、結着剤の含有量は、好ましくは1〜15質量%であり、導電助剤の含有量は、好ましくは0〜9質量%であり、分散剤の含有量は、好ましくは0〜7質量%である。特に、導電助剤の含有量が上記の範囲内であると、図1(d)又は(g)で示される工程において、スクリーン印刷法によりガイド孔3a又は3bを上記分散液で充填する際、レジスト層2又は5の表面に、スキージの移動方向に帯状に延びる活物質の残渣が発生しにくく、また、得られる櫛型電極では、活物質のひげ状の残渣が発生しにくく、電極間での短絡を効果的に防ぐことができる。
【0044】
上記電解質において、塩の含有量は、この塩を構成する金属原子(例えば、リチウム原子)の濃度が0.2〜2.0Mとなるように、調整することが好ましい。上記ゲル状電解質において、ポリマーの含有量は、2〜80質量%であることが好ましい。上記電解質液は、更に、炭酸ビニレン等の不飽和環状炭酸エステル化合物;フルオロエチレンカーボネート等のハロゲン置換炭酸エステル化合物;1,3−プロパンスルトン等の環状スルホン酸系化合物;エチレンサルファイト等の環状亜硫酸エステル化合物;12−クラウン−4等のクラウンエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物等の添加剤を含んでもよい。上記電解質液が上記添加剤を含むと、得られる二次電池の寿命が向上しやすい。上記電解質液において、上記添加剤の濃度は、0.1〜20質量%であることが好ましい。
【0045】
図2に示す櫛型電極11a及び11bは、例えば、基板14の表面に導電層を形成させ、当該導電層をパターニングして集電体12a及び12bを形成させ、図1を参照して説明した本発明の実施形態に係るパターン形成方法を用いて、集電体12a及び12b上に正極及び負極を形成させることにより製造することができる。導電層並びに集電体12a及び12bは、例えば、特許文献1に記載の方法により形成することができる。正極及び負極は、例えば、図1における支持体1として、図2の集電体12a及び12bを用い、図1における1番目のパターン材料層4aとして、図2の正極活物質層13aを用い、図1における2番目のパターン材料層4bとして、図2の負極活物質層13bを用い、図1に従ってパターン形成を行うことにより、集電体12a及び12b上に形成させることができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0047】
[合成例1]
m−クレゾール及びp−クレゾールの混合物(m−クレゾール/p−クレゾール=6/4(質量比))とホルムアルデヒドとを酸触媒の存在下で常法により付加縮合して得たクレゾール型ノボラック樹脂(質量平均分子量30000)70質量部と、感光剤として1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピリデニル)ベンゼンのナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸ジエステル15質量部と、可塑剤としてポリメチルビニルエーテル(質量平均分子量100000)15質量部とに対して、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を固形分濃度が40質量%になるように添加してから、混合して溶解させ、レジスト組成物1を得た。このレジスト組成物1は、ノボラック系であり、非化学増幅系であり、ポジ型である。
【0048】
[合成例2]
m−クレゾール及びp−クレゾールの混合物(m−クレゾール/p−クレゾール=6/4(質量比))とホルムアルデヒドとを酸触媒の存在下で常法により付加縮合して得たクレゾール型ノボラック樹脂(質量平均分子量10000)52.5質量部と、ポリヒドロキシスチレン樹脂VPS−2515(日本曹達社製) 10質量部と、下記式(1)で表される樹脂27.5質量部と、下記式(2)で表される樹脂10質量部と、酸発生剤として下記式(3)で表される化合物2質量部と、増感剤として1,5−ジヒドロキシナフタレン2質量部と、添加剤としてトリエチルアミン0.01質量部及びサリチル酸0.02質量部と、溶剤としてPGMEA 107質量部及びガンマブチロラクトン6質量部とを混合して溶解させることによりレジスト組成物2を得た。このレジスト組成物2は、化学増幅系であり、ポジ型である。
【0049】
【化1】
【0050】
【化2】
【0051】
【化3】
【0052】
[実施例1]
スクリーン印刷法を用いて、図2に示す櫛型電極11a及び11bを作製した。
(集電体の形成)
まず、酸化膜を有するシリコン基板の表面に、スパッタ法により、導電層としてアルミニウム膜(厚さ:200nm)を形成した。この基板上に、合成例1のポジ型レジスト組成物1をスピンコート法により塗布し、1.5μmのレジスト層を形成させ、120℃にて1分間乾燥させた。そして、図2に示す櫛型電極11a及び11bに対応するパターンを有するマスクを用いて、レジスト層に選択露光(ghi混合線、露光量100mJ/cm)を行った。次いで、TMAH2.38質量%のアルカリ現像液で1分間現像した。現像後に、アルミニウムエッチング液(HPO:HNO:HO=4:1:1.6(質量比))でディップ法によりエッチングし、アルミニウムパターンを形成して、櫛型集電体12a及び12bを形成した。
【0053】
(ガイド孔の作製−1)
集電体の形成されたシリコンウェーハの表面に、合成例1のレジスト組成物をスピンコート法により塗布し、50μmのレジスト層を形成させ、140℃にて5分間乾燥させた。そして、形成された櫛型の集電体12aと平面視で同一形状となるポジマスクを使用して、櫛型の集電体の上部に位置するレジスト層に露光(ghi混合線、露光量60mJ/cm)した。次いで、活性化工程として85℃にて3分間ベークを行い、アルカリ現像液で現像した。これにより、シリコンウェーハの表面に、集電体12aと平面視で同一形状となる櫛型形状のガイド孔を形成させた。なお、ガイド孔の底部には、集電体12aが露出していた。
【0054】
(活物質層の形成−1)
LiFePO粒子38.7g、導電助剤としてアセチレンブラック2.58g、分散剤としてカルボキシメチルセルロース0.43g、及び結着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)1.29gを混合し(質量比は90:6:1:3)、更に57gの水を加えて混合し、固形分43質量%の分散液を得た。この分散液を自転・公転ミキサー(商品名:あわとり練太郎、(株)シンキー製)にて2000rpmで10分間回転させて、更に混合・分散を行い、得られた混合物を正極活物質として用いた。
【0055】
ガイド孔が形成されたシリコンウェーハに対して、スクリーン印刷を行い、ガイド孔に上記正極活物質を充填し、100℃にて5分間乾燥させ、正極活物質層を形成させた。スクリーン印刷は、角度45°に研磨された硬さ60°のシリコンスキージを備えたスクリーン印刷機(MT−320T型、マイクロ・テック(株)製)を使用して、スキージ圧180MPa、スキージ速度15.0mm/sにて行った。
【0056】
(保護層の形成)
正極活物質が堆積されたシリコンウェーハの表面に、合成例2のレジスト組成物2をスピンコート法により塗布し、10μmのレジスト層を形成させ、140℃にて1分間乾燥させて、保護膜を形成させた。
(ガイド孔の作製−2)
形成された櫛型の集電体12bと平面視で同一形状となるポジマスクを使用して、櫛型の集電体の上部に位置するレジスト層に露光(ghi混合線、露光量60mJ/cm)した。次いで、活性化工程として85℃にて3分間ベークを行い、アルカリ現像液で現像した。これにより、正極活物質を上記保護層により保護しつつ、シリコンウェーハの表面に、集電体12bと平面視で同一形状となる櫛型形状のガイド孔を形成させた。なお、ガイド孔の底部には、集電体12bが露出していた。
【0057】
(活物質層の形成−2)
LiTi12粒子38.7g、導電助剤としてアセチレンブラック2.58g、分散剤としてカルボキシメチルセルロース0.43g、及び結着剤としてSBR1.29gを混合し(質量比は90:6:1:3)、更に57gの水を加えて混合し、固形分43質量%の分散液を得た。この分散液を自転・公転ミキサー(商品名:あわとり練太郎、(株)シンキー製)にて2000rpmで10分間回転させて、更に混合・分散を行い、得られた混合物を負極活物質として用いた。
【0058】
ガイド孔が形成されたシリコンウェーハに対して、スクリーン印刷を行い、ガイド孔に上記負極活物質を充填し、100℃にて5分間乾燥させ、負極活物質層を形成させた。スクリーン印刷は、角度45°に研磨された硬さ60°のシリコンスキージを備えたスクリーン印刷機(MT−320T型、マイクロ・テック(株)製)を使用して、スキージ圧180MPa、スキージ速度15.0mm/sにて行った。
【0059】
(レジスト層の剥離)
最後にレジスト層をアセトンにて剥離して、櫛型電極11a及び11bを得た。スクリーン印刷法により電極活物質を充填するのに要した時間は、15分という非常に短い時間であった。
【0060】
[比較例1]
インジェクション法を用いて、図2に示す櫛型電極11a及び11bを作製した。
(集電体の形成)
実施例1と同様にして、櫛型集電体12a及び12bを形成した。
【0061】
(ガイド孔の作製)
集電体の形成されたシリコンウェーハの表面に、合成例1のレジスト組成物をスピンコート法により塗布し、50μmのレジスト層を形成させ、140℃にて5分間乾燥させた。そして、形成された櫛型の集電体と平面視で同一形状となるポジマスクを使用して、櫛型の集電体の上部に位置するレジスト層に露光(ghi混合線、露光量60mJ/cm)した。次いで、活性化工程として85℃にて3分間ベークを行い、アルカリ現像液で現像した。これにより、シリコンウェーハの表面に、櫛型形状のガイド孔を形成させた。なお、ガイド孔の底部には、集電体が露出していた。
【0062】
(活物質層の形成)
マイクロピペットを使用して、上記で形成させたガイド孔のうち、正極に対応するものの周辺に実施例1の正極活物質を、負極に対応するものの周辺に実施例1の負極活物質を滴下し、櫛型パターンを有する各ガイド孔へ慎重に流しこんだ。その後、100℃にて5分間乾燥させ、活物質層を形成した。最後にレジスト層をアセトンにて剥離して、櫛型電極11a及び11bを得た。インジェクション法により電極活物質を充填するのに要した時間は、3時間という非常に長い時間であった。
【0063】
[実施例2]
実施例1で得られた櫛型電極11a及び11bの断面を、SEM及びEDX(エネルギー分散型X線分光法)で観察した。結果を図3に示す。図3(a)に示すとおり、櫛型電極11a及び11bにおいて、正極活物質及び負極活物質は、ガイド孔の形状に従って、ばらつきなく充填されていることが確認できた。また、図3(b)に示すとおり、正極にはリンが存在することが観察され、正極活物質が充填されていることが確認できた。一方、図3(c)に示すとおり、負極にはチタンが存在することが観察され、負極活物質が充填されていることが確認できた。
【0064】
<残渣の有無>
[実施例3]
正極活物質を調製する際、LiFePO粒子、アセチレンブラック、カルボキシメチルセルロース、及びSBRの質量比を87:6:5:2に変更し、分散液の固形分濃度を42質量%に変更し、また、負極活物質を調製する際、LiTi12粒子、アセチレンブラック2.58g、カルボキシメチルセルロース、及びSBRの質量比を87:6:5:2に変更し、分散液の固形分濃度を42質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、図2に示す櫛型電極11a及び11bを作製した。
ガイド孔への正極活物質又は負極活物質の充填の直後に、レジスト表面を光学顕微鏡で観察した。その結果、レジスト表面に、スキージの移動方向に帯状に延びる正極活物質又は負極活物質の残渣は観察されなかった。
また、作製した櫛型電極をSEMで観察したところ、正極活物質又は負極活物質のひげ状の残渣は観察されなかった。
【0065】
[参考例]
LiFePO粒子、アセチレンブラック、カルボキシメチルセルロース、及びSBRの質量比を81:12:5:2に変更し、LiTi12粒子、アセチレンブラック2.58g、カルボキシメチルセルロース、及びSBRの質量比を81:12:5:2に変更した以外は、実施例3と同様にして、図2に示す櫛型電極11a及び11bを作製した。
ガイド孔への正極活物質又は負極活物質の充填の直後に、レジスト表面を光学顕微鏡で観察した。その結果、レジスト表面に、スキージの移動方向に帯状に延びる正極活物質又は負極活物質の残渣が観察された。
また、作製した櫛型電極をSEMで観察したところ、正極活物質又は負極活物質のひげ状の残渣は観察された。
【0066】
以上から、正極活物質又は負極活物質において、導電助剤であるアセチレンブラックの量を12質量%から6質量%に半減させることで、正極活物質又は負極活物質のひげ状の残渣が発生しなくなり、電極間での短絡を防ぐことができることが分かった。
【0067】
<大面積化による高容量化>
[実施例4〜6]
櫛型電極全体のサイズ、歯の太さ、隣接する2本の歯同士の間隔、歯の長さ、歯の本数、及び活物質層の厚さを表1に示すとおりに設定した以外は、実施例3と同様にして、図2に示す櫛型電極11a及び11bを作製した。
得られた櫛型電極11aと11bとの間隙を電解質液(1M LiClO溶液、溶媒は体積比1:1の炭酸エチレン・炭酸ジエチル混合液)で満たして、二次電池を作製した。この二次電池について、電流値を20μA(実施例4)、160μA(実施例5)、又は225μA(実施例6)に設定して、充電及び放電を行った。充放電曲線を図4に示す。また、この充放電曲線から読み取った放電容量の値を表1に示す。なお、図4における英文字A〜Cは、それぞれ櫛型電極A〜Cを表す。
【0068】
【表1】
【0069】
実施例4と5との対比から、本発明に係るパターン形成方法を用いて製造された櫛型電極を有する二次電池は、櫛型電極の全体のサイズを大きくし、活物質の占める面積を広くすることで、放電容量が向上することが分かった。また、実施例5と6との対比から、櫛型電極の面積が同じ場合、歯同士の間隔を狭め、活物質の占める面積を広くすることで、放電容量が向上することが分かった。
【0070】
<厚膜化による高容量化>
[実施例7及び8]
活物質層の厚さを表2に示すとおりに変更した以外は、実施例4又は5と同様にして、図2に示す櫛型電極11a及び11bの作製、二次電池の作製、並びに充電及び放電を行った。なお、実施例7及び8について、電流値の設定は90μA(実施例7)又は353μA(実施例8)とした。充放電曲線を図5に示す。また、この充放電曲線から読み取った放電容量の値を表2に示す。なお、比較のため、図5及び表2には、実施例4及び5の結果も示す。また、図5における英文字A、B、D、及びEは、それぞれ櫛型電極A、B、D、及びEを表す。
【0071】
【表2】
【0072】
実施例4と7との対比、及び、実施例5と8との対比から、本発明に係るパターン形成方法を用いて製造された櫛型電極を有する二次電池は、活物質層をより厚くすることで、放電容量が向上することが分かった。
【0073】
<添加剤の添加による長寿命化>
[実施例9]
実施例8と同様にして、図2に示す櫛型電極11a及び11bの作製、二次電池の作製、並びに充電及び放電を行った。充電及び放電を100サイクル繰り返して行い、1、5、10、25、50、及び100サイクル目の充電容量及び放電容量を測定した。1サイクル目の放電容量を100%としたときの各サイクルにおける放電容量維持率を図6に示す。
【0074】
[実施例10]
電解質液として、1M LiClOに加えて5質量%炭酸ビニレンを含む溶液(溶媒は体積比1:1の炭酸エチレン・炭酸ジエチル混合液)を用いた以外は、実施例9と同様にして、二次電池を作製し、1、5、10、25、50、及び100サイクル目の充電容量及び放電容量を測定した。1サイクル目の放電容量を100%としたときの各サイクルにおける放電容量維持率を図6に示す。
【0075】
実施例9と10との対比から、本発明に係るパターン形成方法を用いて製造された櫛型電極を有する二次電池では、電解質液に添加剤として炭酸ビニレンを添加することにより、寿命が向上することが分かった。
【0076】
<電解質のゲル化>
[実施例11]
質量平均分子量80,000のポリエチレンオキシド3質量部、アセトニトリル10質量部、及び1M LiClO溶液(溶媒は体積比1:1の炭酸エチレン・炭酸ジエチル混合液)7.2質量部を混合して、電解質液を調製した。
この電解質液1,000μlを、SiO基板上に配置した厚さ3mmで幅2mmのエチレンプロピレンジエンゴム板で囲まれて形成されたガイドの中に滴下し、80℃で30分間乾燥させた後に状態を観察したところ、ゲル状になっていた。
上記のとおりに形成されたゲル状の電解質について、乾燥終了後3分以内に、大気下でテスターにて表面抵抗を測定したところ、100kΩであった。
上記ゲル状電解質について、以下のとおりにしてインピーダンス測定を行った。厚さ2mmのAu基板の上に、5mmφの貫通孔を有する8mmφ×厚さ60ミクロンのポリイミドフィルムを密着させ、上記のAu基板と貫通孔とで形成された凹部に、ポリエチレンオキシドを含む上記電解質液を滴下し、80℃で20分間乾燥させた。ポリイミドフィルム及び形成されたゲル状電解質の上に、厚さ2mmの別のAu基板を載せ、2枚の上記Au基板の間に下記条件で電圧をかけて、インピーダンスを測定したところ、5.66×10−4Scm−1であった。
条件:初期電圧0.2V、周波数範囲0.1〜10,000Hz、振幅0.005V、休止時間2秒、温度23℃
櫛型電極全体のサイズ、歯の太さ、隣接する2本の歯同士の間隔、歯の長さ、歯の本数、及び活物質層の厚さを表3に示すとおりに設定した以外は、実施例3と同様にして、図2に示す櫛型電極11a及び11bを作製した。得られた櫛型電極11aと11bとの間隙に、ポリエチレンオキシドを含む上記電解質液を滴下し、80℃で20分間乾燥させた。これにより、上記間隙がゲル状電解質で満たされた二次電池を作製した。この二次電池について、電流値を50μAに設定して、充電及び放電を行った。充電及び放電を100サイクル繰り返して行い、1、25、50、75、及び100サイクル目の充電容量及び放電容量を測定した。充放電曲線を図7に示す。なお、図7における数字は、サイクル数を表す。
【0077】
【表3】
【0078】
これらの結果から、本発明に係るパターン形成方法を用いて製造された櫛型電極を有する二次電池は、ゲル状電解質を用いた場合でも、良好な充放電特性を有することが分かった。
【0079】
<レート特性>
[実施例12]
実施例4で作製した櫛型電極について、Cレートを1C、2C、5C、10C、20C、又は40Cに設定して、実施例4と同様にして、充電及び放電を行った。充放電曲線を図8に示す。また、1Cにおける放電容量を100%としたときの各Cレートにおける放電容量維持率を表4に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
上記の結果から、本発明に係るパターン形成方法を用いて製造された櫛型電極を有する二次電池は、Cレートを上昇させた場合でも放電容量維持率が良好であり、インジェクション法で作製した櫛型電極を有する二次電池と同等の性能を有することが分かった。
【0082】
<サイクル特性>
[実施例13]
実施例4で作製した櫛型電極について、実施例4と同様にして、充電及び放電を行った。充電及び放電を250サイクル繰り返して行い、所定のサイクルにおいて充電容量及び放電容量を測定した。1サイクル目の充電容量及び放電容量を100%としたときの各サイクルにおける容量維持率を図9(a)に示す。また、各サイクルにおけるクーロン効率(即ち、放電容量/充電容量)を図9(b)に示す。
これらの結果から、本発明に係るパターン形成方法を用いて製造された櫛型電極を有する二次電池は、250サイクル後も、容量維持率が安定しており、クーロン効率は98.8%という高い値を維持していることが分かった。
【符号の説明】
【0083】
1 支持体
2 1番目のレジスト層
3a、3b ガイド孔
4a、4b パターン材料層
5 2番目のレジスト層
11a、11b 櫛型電極
12a、12b 集電体
13a、13b 活物質層
14 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9