特許第6174336号(P6174336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6174336クロマティック・レンジ・センサで測定されたスペクトルプロファイルから異常スペクトルプロファイルを識別する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174336
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】クロマティック・レンジ・センサで測定されたスペクトルプロファイルから異常スペクトルプロファイルを識別する方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 3/06 20060101AFI20170724BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   G01C3/06 120P
   G01B11/00 B
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-34271(P2013-34271)
(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2013-174594(P2013-174594A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2016年1月14日
(31)【優先権主張番号】13/405,214
(32)【優先日】2012年2月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー マイケル パッツウォルド
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−261960(JP,A)
【文献】 特開2004−108947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 3/00−3/32
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマティック・レンジ・センサ(CRS)により取得されたスペクトルプロファイルから、二次反射を含むワーク表面の複数点からの反射光に起因する異常スペクトルプロファイルを識別する方法であって、
異なる波長光をワークの被測定面に向けて異なる距離においてそれぞれ合焦させるように構成された光学要素と、入力スペクトルプロファイルを示す波長光を前記光学要素へ供給するために接続された光源と、測定軸に沿って配置された複数ピクセルを有するCRS波長検出器からなるCRS電子機器部と、を備え、前記複数ピクセルは、各波長光を受光してスペクトルプロファイルの出力データを供給するように設けられ、前記光学要素が、前記CRS電子機器部に接続され、ワーク表面に対して相対移動可能に配置されているときに、前記光学要素に入力スペクトルプロファイルが入力されて、前記光学要素が対応する放射光をワーク表面に向けて出力し、さらに、該ワーク表面からの反射光を受けて、前記CS波長検出器に出力スペクトルプロファイルを供給するために前記反射光を出力するように構成され、前記出力スペクトルプロファイルは、前記光学要素からワーク表面までの測定距離を表わす波長ピークを有するピーク領域を含んでいて、前記CS電子機器部は、対応するスペクトルプロファイルの出力データを供給するように構成されているCRS測定装置を用いて、
前記CRS測定装置を動作させて、ワーク表面の測定点から出力スペクトルプロファイルを取得し、対応するスペクトルプロファイルの出力データを供給する工程と、
前記CRS測定装置が前記スペクトルプロファイルの出力データを解析して、ピーク領域の非対称性を評価する工程と、
前記ピーク領域が異常な非対称性を有すると評価された場合に、前記CRS測定装置が対応する異常標識を供給する工程とを含む
ことを特徴とする異常スペクトルプロファイルの識別方法。
【請求項2】
請求項記載の方法において、前記ピーク領域の非対称性評価する工程を、前記CRS測定装置に自動的に実行させることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項記載の方法において、前記スペクトルプロファイルの出力データ供給する工程、前記ピーク領域の非対称性評価する工程、及び、前記異常標識供給する工程を含む工程群を、繰り返し実行させることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項記載の方法において、前記スペクトルプロファイルの出力データ供給する工程、前記ピーク領域の非対称性評価する工程、及び、前記異常標識供給する工程を含む工程群を、前記CRS測定装置の測定レートに合わせて、繰り返し実行させることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載の方法において、前記ピーク領域の非対称性評価する工程は、前記スペクトルプロファイルの出力データに基づいて、前記ピーク領域の非対称性の計測値を決定する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項記載の方法において、前記異常標識供給する工程は、前記ピーク領域の非対称性の計測値、及び、非対称性計測の閾値を比較、前記ピーク領域の非対称性の計測値が非対称性計測の閾値より大きい場合に、前記異常標識供給することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項記載の方法において、前記ピーク領域の非対称性計測値決定する工程は、
前記スペクトルプロファイルの出力データに基づいてピークピクセル座標を決定する工程と、前記スペクトルプロファイルの出力データに基づいてピーク領域の重心を決定する工程と、を含み、
前記ピークピクセル座標、及び、前記ピーク領域の重心の差に基づいて前記ピーク領域の非対称性計測値を決定することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項記載の方法において、
前記ピークピクセル座標、及び、前記ピーク領域の重心の差は、ピクセル数であり、
前記非対称性計測の閾値は、ピクセル数の閾値であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項記載の方法において、
前記ピクセル数の閾値は、少なくとも5であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項記載の方法において、
前記ピクセル数の閾値は、前記CRS測定装置に接続されたユーザインターフェイスにおいて使用者によって選択される値であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項記載の方法において、前記ピーク領域の非対称性計測値決定する工程は、ピアソン係数を決定する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の方法において、前記CRS測定装置が、対応する測定距離の出力値に関連付けられた前記異常標識出力ることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の方法において、前記CRS測定装置は、クロマティック・ポイント・センサから構成され、前記光学要素は、光学ペンから構成されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は精密測定機器の全般に関し、より詳しくは、クロマティック・レンジ・センサ及びこれと同様の光学的測長機器、並びに、これらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学的高さ、光学的距離、若しくは、光学的範囲の測定センサの分野において、クロマティック共焦点の技術を利用することが知られている。特許文献1に記載されているように、光軸方向に色収差(ここでは、光軸方向または長軸方向の色分散とも呼ぶ)を示す光学素子は、広波長帯域の光源を合焦させるのに用いられて、波長に応じて変化する焦点までの光軸方向距離を有している。だから、広波長帯域光源のうちの唯一つの波長光のみが被測定面上に正確に合焦し、また、合焦要素に関連する被測定面高さ又は光軸方向距離によって、どの波長光が最も良く合焦するかが決まる。その被測定面の反射光は、ピンホール又は光ファイバ端部のような小さな検出用アパーチャにて再び合焦する。被測定面を反射して入出力ファイバまでの光学系を通って逆戻りする光のうち、被測定面で良く合焦した波長光だけがアパーチャでも良く合焦する。他の波長光は、どれも、アパーチャでの合焦が不完全になって、エネルギーを殆どファイバへカップリングしない。従って、ファイバを通って戻る光として、被測定面高さ又は被測定面までの光軸方向距離によって決められた波長光の信号レベルが、最大になる。分光器形式の検出器は、波長毎の信号レベルを測定して、被測定面の高さ等を決定する。
【0003】
特許文献1には、さらに数社のメーカが、上述の作用を発揮し、工業的な据付に用いるクロマティック共焦点式の照準器に適するような、実用的で小型の光学系をクロマティック・ポイント・センサ(CPS)又はクロマティック・ライン・センサ等として、言及していることの記載がある。そのような光学系に使用される小型、かつ色分散する光学アセンブリが、「光学ペン」又は「ペン」として言及されている。光学ペンは、光ファイバによって、クロマティック・ポイント・センサの電子機器部に接続されている。この電子機器部は、光学ペンから出射されるように光をファイバに伝導するとともに、戻された光を検出し分析する分光器を備えている。戻された光は、波長毎に分散された強度プロファイルを形成し、分光器の検出器アレイによって受光される。波長毎に分散された強度プロファイルに対応するピクセルデータは分析され、強度プロファイルのピーク又は重心によって示される「主波長の位置座標」が定められる。また、結果として生じるピーク又は重心のピクセル座標は、被測定面までの距離を定めるためのルックアップテーブルとして使用される。ピクセル座標は、サブピクセル分解能を有するように決定され、以下では「距離表示座標(DIC)」と称する。
【0004】
特許文献1には、さらにCPS分光器が通常の動作において、或る一定の測定距離に対して、通常、或る一定の波長範囲または或る一定の波長のピーク領域の光を受光するという記載がある。CPS分光器は、波長のピーク領域の形状を歪める可能性を有している。そして、このことが、対応するピーク又は重心、及び、結果として得られる距離表示座標(DIC)に影響を及ぼすということが開示されている。特許文献1のシステム及び方法は、ある成分の校正データ(補正データとも呼んでいる。)を提供するものであるが、そのデータは、CPS分光器、及び/又は、CPS広波長帯域の光源における波長依存性の変動(例えば非均一応答)の影響をもたらすということが、言及されている。特許文献1の補正データは、分光器や光源におけるこれらの影響に伴って生じる誤差を低減させたり、又は除去したりする目的で使用される。分光器及び/又は光源の特性が変化する場合であっても(例えば、構成要素の経年変化や周辺環境の変動など)、誤差の低減又は除去に対して特許文献1の補正データが有効な状態を維持するように、その補正データは諸々の時点で再度決定され、及び/又は、置き換えられるようになっている。
【0005】
特許文献3は、クロマティック・レンジ・センサを開示している。そのセンサは、スリット状の開孔(アパーチャ)を使って、1点にというよりはむしろ1つの線に沿って光を合焦させる「ライン・センサ」であり、その線上の複数点を測定することによって被測定面までの距離を測定する。
【0006】
様々なクロマティック・レンジ・センサ測定装置では、予定した測定位置からの反射光に基づく1つ以上のスペクトルピークの検出を妨げるものはない。いくつかのケースでは、上記の影響が、透明薄膜の厚さ測定において有利になる。すなわち、1次スペクトルピークが、透明膜の表面までの第1距離に対応し、2次スペクトルピークが、透明膜の裏面、及び/又は、透明膜の基板の表面までの第2距離に対応する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,876,456号公報
【特許文献2】米国特許第5,790,242号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0188742号公報
【特許文献4】米国特許第7,990,522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、他のケースでは、予期できない2つのスペクトルピークが生じることがある。このようなことは、例えば、一次反射の測定位置(又は予定の測定位置)を通って戻ってくる予期しない二次反射光に起因して生じる。これによって、例えば、測定範囲の重要な位置における測定エラーが生じて、予期しない(及び/又は誤った)測定結果が導き出されてしまう。そこで、予期しない2次反射光に起因する測定エラーの存在を識別する手段を備えた改良されたクロマティック・レンジ・センサの測定装置を提供することが望まれている。
本発明の目的は、例えば予期しない2次反射光に起因する、異常なスペクトルプロファイルを識別し、及び/又は、そのような異常なスペクトルプロファイルに対応する測定点を識別する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る異常スペクトルプロファイルの識別方法によれば、使用者又はホストシステムは、異常スペクトルプロファイルに関連する潜在的な測定エラーの警告を受ける。このことは、そのような潜在的な測定エラーの知識のない比較的初心者には、非常に有益である。また、どの測定位置が結果として予期しない2次反射光を生じるかどうかを判断したい比較的経験者にも、有益である。さらに、膜厚測定において、非常に薄いために、上述したような2つのスペクトルピークを区別して得ることができない場合に、薄膜の厚さを決定したい比較的経験者にも、有益である。
【0010】
このような場合において、2つのピークは合併して、歪んだピークを形成する。歪んだピークを解析しても、薄膜の表面又は裏面のいずれも有効な測定値を提供することができない。本発明においては、異常スペクトルプロフィールを解析して、ピーク領域の非対称性を評価する。その評価は、予期しない2つのピーク、若しくは、ピークの歪み程度、又は、その両方を検出することによって行われる。そのような異常スペクトルプロファイルの検出は、特許文献1又は他の先行技術の測定装置においては考慮されていない。
【0011】
本発明に係る方法は、クロマティック・レンジ・センサ(CRS)測定装置を動作させて、ワーク表面の1以上の位置からの反射光に起因する異常なスペクトルプロファイルを識別するために提供される。(例えば、薄膜の全面と裏面をそれぞれ反射する光、又は、測定の基礎となる一次反射光を生じる測定位置を通って戻ってくるような予期しない2次反射光を対象とする。)
【0012】
すなわち、本発明に係る方法は、クロマティック・レンジ・センサ(CRS)により取得されたスペクトルプロファイルから、ワーク表面の複数点からの反射光に起因する異常スペクトルプロファイルを識別する方法であって、以下に示す構成のCRS測定装置を用いる。そのCRS測定装置は、
異なる波長光をワークの被測定面の直前の異なる距離においてそれぞれ合焦させるように構成された光学要素と、
入力スペクトルプロファイルを示す波長光を前記光学要素へ供給するために接続された光源と、
測定軸に沿って配置された複数ピクセルを有するCRS波長検出器からなるCRS電子機器部と、を備え、
前記複数ピクセルは、各波長光を受光してスペクトルプロファイルの出力データを供給するように設けられ、前記光学要素が、前記CRS電子機器部に接続され、ワーク表面に対して相対移動可能に配置されているときに、前記光学要素に入力スペクトルプロファイルが入力されて、前記光学要素が対応する放射光をワーク表面に向けて出力し、さらに、該ワーク表面からの反射光を受けて、前記CPS波長検出器に出力スペクトルプロファイルを供給するために前記反射光を出力するように構成され、前記出力スペクトルプロファイルは、前記光学要素からワーク表面までの測定距離を表わす波長ピークを有するピーク領域を含んでいて、前記CPS電子機器部は、対応するスペクトルプロファイルの出力データを供給するように構成されている。
【0013】
そして、本発明に係る異常スペクトルプロファイルの識別方法は、上記構成のCRS測定装置を用いて、
前記CRS測定装置を動作させて、ワーク表面の測定点から出力スペクトルプロファイルを取得し、対応するスペクトルプロファイルの出力データを供給する工程と、
前記スペクトルプロファイルの出力データを解析して、ピーク領域の非対称性を評価する工程と、
前記ピーク領域が異常な非対称性を有すると評価された場合に、対応する異常標識を供給する工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
ここで、前記ピーク領域の非対称性の評価工程を、前記CRS測定装置に実行させることが好ましい。
また、前記ピーク領域の非対称性の評価工程を、前記CRS測定装置に自動的に実行させることが好ましい。
また、前記スペクトルプロファイルの出力データの供給工程、前記ピーク領域の非対称性の評価工程、及び、前記異常標識の供給工程を含む工程群を、繰り返し実行させることが好ましい。
また、前記スペクトルプロファイルの出力データの供給工程、前記ピーク領域の非対称性の評価工程、及び、前記異常標識の供給工程を含む工程群を、前記CRS測定装置の測定レートに合わせて、繰り返し実行させることが好ましい。
【0015】
本発明において、前記ピーク領域の非対称性の評価工程は、前記スペクトルプロファイルの出力データに基づいて、前記ピーク領域の非対称性の計測値を決定する工程を含むことが好ましい。
また、前記異常標識の供給工程は、
前記ピーク領域の非対称性の計測値、及び、非対称性計測の閾値を比較する工程と、
前記ピーク領域の非対称性の計測値が非対称性計測の閾値より大きい場合に、前記異常標識供給する工程と、を含むことが好ましい。
ここで、前記ピーク領域の非対称性計測値の決定工程は、
前記スペクトルプロファイルの出力データに基づいてピークピクセル座標を決定する工程と、
前記スペクトルプロファイルの出力データに基づいて測定距離表示座標を決定する工程と、
前記ピークピクセル座標、及び、前記測定距離表示座標の差に基づいて前記ピーク領域の非対称性計測値を決定する工程と、を含むことが好ましい。
また、前記ピークピクセル座標、及び、前記測定距離表示座標の差は、ピクセル数であり、前記非対称性計測の閾値は、ピクセル数の閾値であることが好ましい。
また、前記ピクセル数の閾値は、少なくとも5であることが好ましい。
また、前記ピクセル数の閾値は、前記CRS測定装置に接続されたユーザインターフェイスにおいて使用者によって選択される値であることが好ましい。
さらに、前記ピーク領域の非対称性計測値の決定方法は、ピアソン係数を決定する工程を含むことが好ましい。
【0016】
本発明において、前記ピーク領域が異常な非対称性を有すると評価された場合に、前記CRS測定装置から対応する異常標識を出力する工程を含むことが好ましい。
また、前記CRS測定装置によって出力される測定距離に関連付けられた前記異常標識が出力されることが好ましい。
なお、前記CRS測定装置は、クロマティック・ポイント・センサから構成され、前記光学要素は、光学ペンから構成されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係るクロマティック・レンジ・センサ(CRS)の測定装置のブロック図である。
図2】検出器アレイ内のピクセルの電圧オフセット信号レベルを示す、CRSからのプロファイルデータの線図である。
図3】信頼性のある測定距離表示座標に対応する正常なピーク領域信号を示す、CRSからのプロファイルデータの線図である。
図4】既知の測定距離をクロマティック・ポイント・センサの距離表示座標に相関付けるためのCRS距離校正データの線図である。
図5】複数の測定位置において異常なスペクトルプロファイルを生じる被測定面に適用された一実施形態に係るCRS測定装置の図である。
図6】一次及び二次反射が合わさったことで生じる異常な非対称性のピーク領域信号および誤った測定距離表示座標を示す、CRSからの異常なスペクトルプロファイルデータの図である。
図7図5に示すものと同様のワークに応じて得られ、複数の測定点からなる表面プロファイルの図である。
図8】ワーク表面の1以上の位置からの反射光に起因する異常スペクトルプロファイルを識別するために、CRS測定装置を動作させるためのルーチンを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態のクロマティック・レンジ・センサ(CRS)測定装置100のブロック図である。図1に示すように、CRS測定装置100は、光学要素120と、CPS電子機器部(以下、単に電子機器部)160とを含む。図1に示す実施形態では、電子機器部160は、信号演算器166と、記憶部168と、CPS波長検出器(以下、単に波長検出器)162及び広波長帯域光源164(白色光源とも呼ばれる)からなるサブシステム(光源+検出器)161とを含む。図1のCRS測定装置100は、同時に1つの測定点を測定するクロマティック・ポイント・センサ測定装置である。図1の光学要素120は光学ペンである。しかし、様々な実施形態では、クロマティック・ライン・センサといった、クロマティック・レンジ・センサの変形タイプを、ここに開示された装置及び方法に従って動作させるために構成してもよい。
【0019】
様々な実施形態において、波長検出器162は、分光計の検出器アレイ163を含む。検出器アレイ163は、波長検出器162の測定軸に沿って配列された複数のピクセルから構成されていてもよい。なお、それら複数のピクセルは、それぞれの波長光を受光して、出力スペクトルプロファイルのデータを供給する。
【0020】
電子機器部160は、光ファイバケーブル112を含む光路を通じて、光学要素120に連結されている。図1に示す実施形態には、上記光路についての任意選択による態様、または代替の態様を示す。例えば、その光路は、光ファイバセグメント112Bの接続子CONNECT−Dで接続された第1セグメント112A及び第2セグメント112Bと、第2セグメント112Bを電子機器部160に接続する連結器COUPLER−Oとを含む。光源164は、波長光のスペクトルプロファイル(入力光)を入力するために光ファイバケーブル112に接続されている。
【0021】
光学要素120は、入出力(I/O)用の光ファイバ・サブアセンブリ105と、筐体130と、光学系部分150とを含む。入出力用の光ファイバ・サブアセンブリ105は、入出力用の光ファイバ113と、光ファイバ接続子108とを備える。入出力用の光ファイバ113は、この光ファイバ113を包んでいる光ファイバケーブル112から延長されたものである。入出力用の光ファイバ113は、開口部195を通して出力ビームを出力すると共に、反射された測定信号光(反射光)を開口部195を通して受け取る。
【0022】
動作中、ファイバ端部からの放射光は、開口部195を通して、光学系部分150により合焦する。その光学系部分150は、クロマティック共焦点センサで既知のように、光軸方向の色分散を供給するレンズを含んでいる。この光軸方向の色分散とは、光軸OAに沿った焦点が光の波長に応じて異なった距離の位置に生じることを言う。より詳細に後述するように、測定動作中、ワーク170の表面位置(被測定面)190上で光の焦点が合う。光が表面位置190を反射すると、光学系部分150によって開口部195上で再び光の焦点が合う。光学系部分150によって提供される光軸方向の色分散により、1つの波長光のみが、測定距離「Z」に一致する焦点距離を有することになる。
【0023】
その測定距離Zは、光学要素120に関連する固定の基準位置RPから表面位置190までの距離を示す。表面位置190で最もよく焦点が合う波長光が、開口部195において最もよく焦点が合う波長光にもなるように、クロマティック・レンジ・センサ(CRS)が形成されている。最も良く焦点の合った波長が、主に開口部195を通過して光ファイバケーブル112の光ファイバ113のコアに入るように、開口部195は、反射光を空間的にフィルタリングしている。以下の詳細な記載にあるように、光ファイバケーブル112は、信号光を波長検出器162に伝搬する。この波長検出器162は、表面位置190までの測定距離Zに応じた波長で、かつ、主強度を有する波長を決定するために利用される。
【0024】
通常測定の動作中、広波長帯域光源164は、信号演算器166により制御され、光ファイバの経路を通じてCRS光学要素120に連結されている。この光ファイバの経路は、照明ファイバセグメント165I、2×1連結器COUPLER−E、CONNECT−E、および光ファイバケーブル112を含んでいる。上述したように、光は、長軸方向の色収差を生じさせる光学要素120を通じて進行する。開口部195を通って光ファイバケーブル112内に最も効率よく戻ってくる光の波長は、表面位置190上で焦点の合う波長である。次に、反射された波長依存性の光強度は、光ファイバの経路を通って、電子機器部160及び連結器COUPLER−Eまで戻って行く。その結果、光の約50%が、信号ファイバセグメント165Sを通って、波長検出器162に向けられるようになる。波長検出器162は、波長依存性の光強度を受け取り、その光強度を検出器アレイ163の測定軸に沿ってピクセルの配列に渡って分布する出力スペクトル強度プロファイル(単に出力スペクトルプロファイルとも呼ばれる。)に変換する。そして、波長検出器162は、検出器アレイ163から出力されるピクセルデータに基づいて対応する出力スペクトルプロファイルデータを供給するように動作する。
【0025】
プロファイルデータ(出力スペクトルプロファイルデータ)についてのサブピクセル分解能を有する距離表示座標(DIC:distance-indicating coordinate)が、信号演算器166によって計算される。そして、図4について後でさらに述べるように、計算されたDICが、距離校正のルックアップテーブル等を介して表面位置190までの測定距離Zを決める。距離校正のルックアップテーブル等は、記憶部168に記憶されている。距離表示座標(DIC)は、さらに後述する様々な方法(例えば、プロファイルデータのピーク領域に含まれるプロファイルデータの重心を決定する方法)によって、決定され得る。距離表示座標(DIC)が校正動作中に決定される場合は、そのDICを校正距離表示座標と呼ぶ。また、距離表示座標(DIC)がワーク表面の測定動作中に決定される場合は、そのDICを測定距離表示座標と呼ぶ。サブピクセルの距離表示座標の決定に使用されるプロファイルデータについては、後でさらに詳細に説明する。
【0026】
図1は、基本的骨格として、XYZ直交座標軸を含んでいる。Z方向は、光学要素120の光軸または距離の測定軸に平行するものとして定義されている。図1に示すように、動作中、ワーク170は、光学要素120の光軸OAに沿って配置される。一実施形態では、ワーク170は、移動ステージ175上に載置された状態で、位置合わせされる。有利なことには、ガイドベアリング175Bによって拘束されたZ軸方向に沿って、それ(ワーク170)が移動できて、その表面175AがXY平面に名目上平行な状態になるように、その移動ステージ175自体が位置合わせされ得るようになっている。CRS測定装置100の他の例示的な特徴および動作について、より詳細に後述する。
【0027】
以下の図2の説明において、既知の雑音(バックグラウンド)の信号処理、及び/又は、校正動作の概要を説明する。これらは、本発明の様々な実施形態に結びついて、使用され得る。この説明の目的は、以下のことを強調することである。つまり、ここでさらに開示される本発明に係る方法は、これらの動作とは区別されるが、両立できるということである。図2は、CRSからのプロファイルデータの線図200である。この線図200は、測定表面が無い場合(例えば、図1のワーク170の表面位置190が無い場合)での、検出器アレイ163内のピクセルに関する電圧オフセットの信号レベルVoffsetについて説明している。これより、意図的な反射光が存在せず、かつ、結果として生じる強度プロファイル中に顕著な主波長ピークが存在しないことが分かる。図2に示すように、電圧オフセットの信号Voffsetは、1,024個のピクセルのそれぞれの正規化電圧でプロットされる。「正規化電圧」では、1.0の値が検出器アレイ163の飽和電圧に割り当てられている。電圧オフセットの信号Voffsetは、アレイ全体に渡って一定であるように示されているバイアスの信号レベルVbiasと、アレイ全体に渡ってピクセル座標pに依存しているように示されている雑音信号成分Vbackとを含む。変化する雑音信号Vbackは、CRS内の波長依存性の疑似反射等からの背景光といった信号はもちろん、様々なピクセルpの暗電流による信号を表している。
【0028】
様々な実施形態では、検出器アレイ163のピクセル配置を校正し、又は補正するために、継続して、その信号成分Vback(又は、これと同様の変動を示す信号。例えば電圧オフセット信号Voffset)が補正データ169に記憶され、また、各ピクセルpから後続する全てのプロファイルデータ信号を(例えば、減算によって)補正するために使用されれば、有利である。従って、雑音信号成分Vbackが、既知の方法で補正されることが想定されるので、後述する様々な強度プロファイル又は独創的な信号処理動作等に関連して、これ以上、明示的に考慮することも、又は説明することも必要がない。
【0029】
時間が経っても比較的安定している雑音信号成分Vbackとは対照的に、周囲温度の変化および動作中に電子機器部160の発熱に伴って生じる電圧ドリフトの結果として、座標非依存性のバイアス信号レベルVbiasは変化し得る。
【0030】
以下の図3および図4の説明において、より再現性のある距離測定が得られるように、プロファイルデータの距離指示サブセットに基づいて、距離表示座標(DIC)を決定することができる特定の信号処理動作について概説する。このプロファイルデータは、同時に発生するバイアス信号レベルVbiasの変化を補正することに対して動的に適合したものである。ここで概説する動作は、特許文献1及び特許文献4により詳細に説明されている。この説明の目的は、クロマティック・レンジ・センサの距離測定動作を全体的に理解するために有用となるような、バックグラウンド情報を提供することである。また、以下に開示される本発明の方法が、これらの動作と区別され、また両立できることを強調することである。
【0031】
図3には、CRS測定動作中に得られたCRS検出器(例えば、検出器162)からのプロファイルデータ310(測定プロファイル信号のデータ)の線図300が示されている。CPS測定動作中とは、特定の光学要素又は全体システムについての校正動作中でも、通常の測定動作中でもよい。このプロファイルデータ310は、比較的対称性があって、信頼できる測定距離表示座標に対応した、正常なピーク領域信号を示している。プロファイルデータ310は、プロファイル信号MSpとも称され得る。但し、MSpは、検出器アレイ(例えば、検出器アレイ163)の各ピクセルpに関連付けられる信号レベル(正規化電圧で示される)である。図3のグラフ300は、目標表面190を光学要素120の光軸OAに沿ってある距離に位置決めされた状態にして作成されており、図3に示すように、距離に対応する主波長のピーク領域を有する測定プロファイルデータ310が生成されている。
【0032】
図3は、測定バイアスの信号レベルMVbias(正規化電圧で示す)、ピークのピクセル座標ppc、ピーク位置のインデックス座標ppic、及び、データ閾値MVthresholdを示す。データ閾値MVthresholdは、ピーク領域内のデータの距離表示サブセットの下限を定義している。すべての「MV」値は正規化電圧である。図3は、校正スペクトルのピーク領域内のデータの距離表示サブセットに基づいて決定される距離指示座標(DIC)も示す。特許文献4に説明されるように、いくつかの実施形態では、データ閾値MVthresholdは、インデックス特性の閾値MVthreshold(ppic)としてもよい。
【0033】
簡潔に言えば、一実施形態において、距離表示座標(例えば、プロファイルデータ310と関連して説明した距離表示座標DIC)を決定する測定動作は、以下を含み得る。
・目標表面を光軸OAに沿って位置決めし、結果として生成されるプロファイルデータ310を取り込む。
・ピークのピクセル座標ppc(すなわち、最も高い信号を有するピクセル)を決定する。
・ピーク位置のインデックス座標ppicを決定する。このインデックス座標ppicは、特定の校正データ(例えば、インデックス特性の閾値校正データ)を記憶し、及びその校正データを検索するためのインデックスである。いくつかの実施形態では、これはピークのピクセル座標ppcと同じにしてもよい。
・測定バイアスの信号レベルMVbiasを決定する。
・データ閾値MVthresholdを決定する(例えば、ピーク高さの存在する割合として決定する。又は、現在のピーク位置のインデックス座標ppicに対応するインデックス特性の閾値校正データに基づいて決定する)。
・測定ピーク領域において、データ閾値MVthresholdよりも大きな値のデータである距離表示サブセットに基づいて、サブピクセル分解能での距離表示座標(DIC)を決定する。
・距離校正の測定の場合、(例えば、干渉計により、)所望の精度で目標表面までの対応する距離を独立して決定する。そして、距離校正のテーブル内または曲線上(例えば、図4に示す距離校正データ410により表されるような距離校正のテーブル内または曲線上)での距離校正データの位置を決定する。
・ワーク距離の通常測定の場合、記憶された距離校正データ内での対応する距離に、測定DICを相関付けることによって、測定距離Zを決定する。この距離校正データは、例えば、図4に示す距離校正データ410により表されるような距離校正のテーブル又は曲線とする。
【0034】
【数1】
【0035】
ここで、式(1)中のSM(p)は、次の式(2)で与えられる。
【数2】
【0036】
上記動作では、データ閾値MVthresholdよりも上のデータである距離表示サブセットに基づいて、距離表示座標DICをサブピクセル分解能で決定することができる。いくつかの異なる方法のうちの1つによって、測定DICを決定することができる。一実施形態では、測定DICは、データの距離表示サブセットの重心XCをサブピクセル分解能で表わした座標として、決定される。例えば、1024個のピクセルを有する検出器の場合、重心XCは、次の式(1)に従って決定することができる。
【0037】
特定の一例では、式(1)において、n=2である。式(2)は、重心の計算に使用されるデータを、距離表示サブセットのデータ内に制限することが好ましい。校正動作中に、距離表示座標DICが決定される場合は、距離表示座標DICを校正距離表示座標と呼ぶ。同様に、測定動作中に決定される場合は、距離表示座標DICを測定距離表示座標と呼ぶ。
【0038】
図4は、CRS測定距離校正データ410の図400である。この校正データは、縦軸に表わすクロマティック・レンジ・センサ(CRS)等の既知の又は校正された測定距離ZOUT(ミクロン単位)を、横軸に表わす距離表示座標DIC(ピクセル単位)に相関付けるものである。図4に示す例は、300ミクロンに指定された測定範囲MRを有する光学要素の場合であり、この校正データは、約150〜490個のピクセルの範囲内での校正距離表示座標に対応する。しかし、クロマティック・レンジ・センサ100は、望まれるならば、検出器アレイ163のより大きなピクセルの範囲に渡って、校正されてもよい。基準とする距離、又は、ZOUTが「ゼロ」となる距離は、多少、恣意的なものであり、光学要素120と関連して所望の基準距離に設定することができる。距離校正データ410は平滑な曲線を形成しているように見えるが、典型的な従来技術のCRS測定装置のための、特に経済的なCRS測定装置のための距離校正データ410は、小さい範囲での誤差又は不規則性を表わすことができるものであることが好ましい。
【0039】
いくつかの実施形態では、CRS測定距離校正データ410は、図3を参照して述べたように決定され、及び/又は、使用され得る。CRS距離校正データ410の性質をさらに明確にするため、例示的な実験室用の校正方法をここで簡潔に概説する。簡潔に言えば、ミラーが、(例えば、図1の表面190を代替するものとして)CRS光学要素の光軸OAに沿った校正表面を提供し得る。ミラーの変位は、約0.1ミクロン又は0.2ミクロンの刻みで制御され得る。刻み毎に、実際のミラーの位置または変位が、干渉計等の参照基準を使用して取得される。実際のミラー位置毎に、それに対応するCRSの校正距離表示座標(校正DIC)は、CRS検出器によって(例えば、上述したように)提供されるミラー位置に対応した強度プロファイルデータに基づいて決定される。校正距離表示座標および対応する実際の位置は、次に、校正データ410を提供するために記憶される。
【0040】
次に、測定動作中、ワーク表面(例えば、図1の表面190)の距離測定を提供するために、ワーク表面はCRS光学要素の光軸OAに沿って位置決めされる。CRSの測定距離表示座標は、CRS検出器により提供される強度プロファイルデータに基づいて決定される測定距離表示座標である。次に、距離校正データ410を使用して、その特定の測定距離表示座標に対応するCRS測定距離ZOUTが決定される。
【0041】
校正データ410は、光学的な振る舞いの良い表面(例えば、ミラー)を使って集められる。その結果、校正データは、予期しない2次反射光を生じないものとなる。それゆえ、校正動作中に測定された図3のプロファイルデータ310は、比較的対称性のあるピーク領域を有する。以下に説明するように、例えばピーク領域の重心法による距離表示座標(DIC)は、ピーク位置のインデックス座標ppicに非常に近くなる。
【0042】
しかし、プロファイルデータが、薄膜の表面及び裏面の反射光の状態に起因する2次反射光、又は、測定の基礎となる1次反射光を生じる測定位置を通って戻ってくるような予期しない2次反射光を伴った出力スペクトルプロファイルに対応するものである場合、ピーク領域は非対称性を有するようになり、かつ、光学的振る舞いの良い表面を使って行なわれる校正に対応するものでなくなる。例えば、ピーク領域の重心法によって決定された距離表示座標(DIC)は、複数ピークを有するスペクトル中の最も高いピークによって決定されるピーク位置のインデックス座標ppicから離れてしまう。したがって、比較的左右対称の「正常な」ピーク領域に対して適切に動作するように調整された、距離表示座標および対応するCRS測定距離の特定方法を、ピーク領域が異常に非対称である場合に用いると、予期されない及び/又は予測できない測定結果になってしまう。異常なスペクトルプロファイルと非対称のピーク領域に関する様々な検討結果を以下に概説する。
【0043】
図5は、概略的に示された表面の測定に適用された一実施形態に係るCRS測定装置500の図である。その表面は、ある測定位置において、例えば、非対称のピーク領域のように異常なスペクトルプロファイルを生じる。CRS測定装置500は、図1のCRS測定装置100と同様の要素からなる。図1の要素1XXに類似又は同一の要素には、要素5XXのように同様の符号を付する。また、図5において、図1との違いが明確な構成のみを説明する。
【0044】
図5に示すように、ある実施形態では、CRS電子機器部560が、CRS測定装置500の制御信号及びデータを受ける、及び/又は、交換する制御ホストシステム580に接続されている。測定装置の動作および方法がここで開示される。ピーク領域が異常に非対称であるかどうかを判定するピーク領域の非対称性評価を実行するための出力スペクトルプロファイルデータの解析は、CRS電子機器部560又はホストシステム580によって実行される。ある実施形態では、ホストシステム580は、(例えば、マシンビジョン検査システムで用いられているように、)自動動作制御を含む。また、非接触式測定プローブを用いて検査を行うためにCRS測定装置500を動作するパートプログラムを定義し、実行する。
【0045】
図5に示すように、CRS測定装置500は、ワーク570の表面について、表面位置590を有する測定点MPの測定に使用される。ある実施形態では、ワーク570は、図7に示す表面プロファイルの測定値を取得するために、X軸方向に沿って移動するのに有利に配置されたガイドベアリング575Bを有する移動ステージ575上に載置されている。ワーク570は、表面571及び表面572(比較的反射率の高い金属性のネジ山表面など)で構成されている。CRS測定装置500は、表面571上の予定の測定点MPでZ高さを測定できるように配置されている。破線によって、出力スペクトルプロファイルを与える合焦した波長光を示す。予定の測定点MPは、第1波長光を構成する測定光の一部による1次反射光を提供する。第1波長光は、第1波長ピークを出力スペクトルプロファイルに与える。しかし、測定光のかなりの部分は、表面571と連続する表面572とを反射した光である。測定光のかなりの部分は、表面572上の二次反射点SRPで焦点を結び、そこを反射した第2波長光を含む。光軸に沿って表面571に戻ってきた第2波長光は、表面571を反射して、CRS測定装置500の出力スペクトルプロファイルに第2波長ピークを与える。
【0046】
図5に示すように、第2反射点SRPは、予定の測定点MPに対して、測定光路長差ΔZを有する。測定光路長差ΔZが十分に長ければ、結果として、この測定点に関連するプロファイルデータ中に、図6に示すような明確に定義された2次ピークが得られる。測定光路長差ΔZが小さいとき、2次ピークは1次ピークに接近して、両者は組み合わさって、異常に歪んだ、及び/又は、非対称性のピーク領域を形成する。図5に示すように、概略的に示された表面570は、ネジ山に類似した表面プロファイルを有する。しかし、小さい穴又は溝などのような他のタイプのワーク形状の測定動作中は、2次反射の影響が同様に生じる。
【0047】
図6は、CRS測定装置500からの異常なプロファイルデータ610の線図600であり、1次反射と2次反射とが組み合わさった結果である非対称性のピーク領域信号と、その誤った測定距離表示座標とを示す。図6のプロファイルデータは、例えば図5に示した測定状態に対応する。図6に示すように、プロファイルデータ610の異常なピーク領域は、MP波長ピーク及びSRP波長ピークを含む。出力スペクトルプロファイルデータ中のMP波長ピークは、表面571上の予定された測定点MPに合焦され、反射した光に対応する。一方、SRP波長ピークは、表面572上の2次反射点SRPに合焦され、反射した光に対応する。
【0048】
SRP波長ピークは、MP波長ピークよりも強い信号レベルを示す。これは、表面571上の入射角によって、予定された測定点MPからCRS測定装置に向かう反射光は弱くなり、また、表面が高度に研磨仕上げされている結果、一層鏡面反射が生じて、2次反射点SRPがほぼ通常の入射で、多くの光が反射するにも関わらず、殆どの光が表面571で続けての反射によってCRS測定装置に戻されるからである。異常なピーク領域は、特にこの異例の影響を含んでいるか、含まないかである。いずれにせよ、正常なピーク領域は比較的対称性を有する。重心方法や比較的シンプルなカーブフィッティング法などの早い処理方法を使って、そのようなピーク領域の代表的な波長ピークを特定することは、再現性がよく信頼できるCRS測定装置の測定結果を得ることができる。しかし、そのような早い処理方法では、予期できない非対称性のピーク領域があるため、再現性がよく信頼できる測定結果を提供できない。このことは、校正にしようするための前提条件、および、早い処理方法の前提条件に反してしまう。
【0049】
例えば、図6に示すように、測定点MPのための実際の測定距離座標は、ピクセル456に近いMP波長ピークの付近になる。しかし、異常なピーク領域の測定距離表示座標を決定するために重心法(例えば、式1)を使用すると、測定距離表示座標はピクセル516の近くに位置する。これは非常に大きな測定エラーであり、SRP波長ピークに関連している概略532のピークピクセル座標に近い。
【0050】
異常なピーク領域が、二次反射ピークが一次反射光ピークよりも大きいところに、特定の特異な効果を含んでいるかもしれない。さらに、出力スペクトルプロファイルで別々に区別できるため、ピークをそれほど広い範囲で分解する必要がない。(例えば、それらは単独の歪んだピークを形成するように見えるかもしれない。)いずれにしても上述の説明によって、予期しない二次反射光が出力スペクトルプロファイルに大きな影響を与えると、そのピーク領域が著しく非対称になることが理解される。
【0051】
このように、異常な非対称性ピーク領域を識別することによって、多くの場合、十分に、潜在的に信頼できない測定値を識別することができる。少なくとも、透明薄膜などにおける予期された2つのピークを特定するために特別な信号処理が利用されていない場合には、十分に識別することができる。ここで開示されるように、幾つかの実施形態において、CRS測定装置(又はCRS測定装置に接続されたホストシステム)がピーク領域の非対称性を評価するためにピーク領域データを解析することができる点で、有利である。
【0052】
ピーク領域の非対称性が異常であるときに、このことを表示する、又は、関連する測定結果が信頼できないという指示を少なくとも供給するのが有利である。また、CPS測定装置のあらゆる測定サイクルの間、自動的にこれらの特徴を供給することが望ましい。また、ユーザ選択による関連の動作モード又はパラメータに応じて、これらの特徴を供給することが望ましい。このようにすれば、ユーザは、二次反射を生じやすいワーク又は測定点を測定する際には、それらの特徴を呼び出すことができ、二次反射を起こしそうにないワーク又は測定点を測定する際には、それらの特徴を隠しておくことができる。
【0053】
CRS測定装置500は、ワーク表面の測定点からの出力スペクトルプロファイルを取得して、対応するスペクトルプロファイルの出力データ(例えば、プロファイルデータ610)を供給するために動作する。スペクトルプロファイルの出力データは、ピーク領域の非対称性を評価するために解析される。もし、ピーク領域の非対称性評価がピーク領域の異常な非対称性を示す場合は、対応する異常標識が供給される。
【0054】
様々なタイプの非対称性評価がここに記載されており、ピーク領域の非対称性を評価する他の方法は、この開示に基づけば、先行技術の当業者に明白である。
【0055】
「異常である」と考えられる非対称性の度合いについては、測定基準の代表である「正常な」ワークを測定することによって、予期された非対称性の通常範囲を決定することによって、(選択された評価方法に応じて)発見的手法により決定される。「異常である」と考えられる非対称性の度合いは、解析によって決定される。例えば、(選択された評価方法に従って、)非対称性の量を決定することにより決定される。この非対称性の量とは、望ましい測定エラーの限度を超えるような距離測定エラーを生じて、重心位置が移動するような程度の量である。
【0056】
ピーク領域の非対称性評価を提供するためにスペクトルプロファイルの出力データを解析する工程は、その出力データに基づいてピーク領域の非対称性の計測値を決定する工程からなる。ピーク領域の非対称性評価がピーク領域の異常な非対称を示す場合、対応する異常標識を供給する工程は、非対称性の計測値、及び、非対称性計測の閾値を比較する工程を含む。(各値は、例えば、発見的手法又は解析により決定される値である)。また、ピーク領域の非対称性の計測値が非対称性計測の閾値を超える場合に、対応する異常標識を供給する工程を含む。
【0057】
ピーク領域の非対称性の計測値を決定する工程は、スペクトルプロファイルの出力データに基づいてピークピクセル座標を決定し(例えば、ピークピクセル座標、又はピーク位置のインデックス座標)、出力データに基づいて測定距離表示座標を決定し(例えば、ピーク領域の重心)、ピークピクセル座標と距離指示座標の差に基づいてピーク領域の非対称性の計測値を決定する。例えば、完全に左右対称のピーク領域にとって、これらの座標が名目上は同じであるとよい。かなり非対称であるピーク領域において(図6で示されたような)、ピークピクセル座標と測定距離表示座標の間に、かなりの差があるとよい。ピークピクセル座標と測定距離表示座標の差は、ピクセル数であり、非対称性計測の閾値は、少なくとも5ピクセルのピクセル数の閾値から構成される。図6で示された例に関しては、違いはおよそ16ピクセルである。このタイプの非対称性評価は、すでに通常の測定動作にも要求されているような、データの速い実行や再利用の点で有利である。しかしながら、それは単なる例示であって、これらに限定されない。一般に、様々なピーク領域の非対称性は、異常な非対称性のピーク領域を識別するために決定される。例えば、ひずみ測定は、3番目に標準化された方法、ピアソン係数、又は、公知のひずみ計測方法に従って、ピーク領域の非対称性を決定するために適用される。ピクセル数又はひずみの閾値は、CRS測定装置に接続されたユーザインターフェイスでユーザによって選択される。例えば、ホストシステム580のユーザインターフェイスでもよい。
【0058】
ピーク領域非対称評価がピーク領域の異常な非対称性を示す場合は、例えば、ホストシステム580に対して、CRS測定装置500から対応する異常標識が出力される。また、対応する測定距離の出力値と関連付けられた異常標識がCRS測定装置から出力される。(例えば、それぞれの測定サイクルにおいてCRS測定装置から出力される測定データセットに異常標識が関連付けられる。)
【0059】
図7はいくつかのロールネジ(例えば、ネジ山)の表面プロフィールのダイヤグラム700である。図5に示された概要の表面プロフィールに類似する。図5は複数の測定ポイントを包括する。表面プロフィールはZ高さとX位置のプロットとして説明される。測定点710は図5に示された測定点MPに類似する。二次反射で影響を及ぼされた測定値、及び、図6で示された関連する非対称性のピーク領域を生じている。CRS測定データに基づくねじ山のプロファイルデータ解析についての公知の方法は、例えば測定ポイント710のように幾何学的異常値解析に基づく測定点を除去できるかもしれない。しかし、ここに開示された測定装置及び方法に基づけば、CRS測定装置によって関連する距離測定値に沿って供給される、ピーク領域の異常標識に基づいて、そのような測定点をより高速に、より強力に、より信頼性よく、除去できる。
【0060】
本発明の手法の価値は、測定点720について検討することによっても証明される。測定点720は、測定エラーであると思われ、幾何学的異常値解析法のような先行技術によって除去できるかもしれない。しかし、実際には、その測定点720は、あるロールネジの現実の形状であり、距離測定値に関連付けて供給されるピーク領域の異常標識が存在しないことに基づいて力強く信頼性よく保たれている。
【0061】
図8は、異常なプロファイルデータ610に応じたスペクトルプロファイルのような、ワーク表面の1以上の位置からの反射光に起因する異常なスペクトルプロファイルを識別するために、クロマティック・レンジ・センサ(CRS)測定装置を動作させる際のルーチン800を示すフロー図である。
【0062】
ブロック810で、以下のように構成されるCRS測定装置を提供する。すなわち、CRS測定装置は、
異なる波長光をワークの被測定面の直前の異なる距離においてそれぞれ合焦させるように構成された光学要素と、
光学要素へ波長光の入力スペクトルプロファイルを供給するために接続された光源と、
測定軸に沿って配置された複数ピクセルを有するCRS波長検出器からなるCRS電子機器部と、を備える。
【0063】
ここで、複数ピクセルは、各波長光を受光してスペクトルプロファイルの出力データを供給するように設けられている。CRSは、その光学要素がCRS電子機器部に接続され、ワーク表面に対して相対移動可能に配置されているときに、光学要素に入力スペクトルプロファイルが入力されて、光学要素が対応する放射光をワーク表面に向けて出力し、さらに、該ワーク表面からの反射光を受けて、CPS波長検出器に出力スペクトルプロファイルを供給するために反射光を出力するように設けられている。出力スペクトルプロファイルは、光学要素からワーク表面までの測定距離を表わす波長ピークを有するピーク領域を含んでいる。CPS電子機器部は、対応するスペクトルプロファイルの出力データを供給するように設けられている。
【0064】
ブロック820で、CRS測定装置を動作させて、ワーク表面の測定点から出力スペクトルプロファイルを取得し、対応するスペクトルプロファイルの出力データを供給する。
【0065】
ブロック830で、スペクトルプロファイルの出力データを解析して、ピーク領域の非対称性を評価する。例えば、図3に関して説明したように出力データが解析される。ブロック830は、CRS測定装置で実行されてもよい。さらに、ブロック830は、CRS測定装置によって自動的に実行されてもよい。
【0066】
ブロック840で、異常な非対称性のピーク領域を有するかどうかの評価を行う。もし、非対称性計測において、そのピーク領域に異常な非対称性がないと評価されれば、ルーチンはブロック860へ進む。もし、そのピーク領域に異常な非対称性があると評価されれば、ルーチンはブロック850へ進んで、対応する異常標識を提供する。
【0067】
ブロック860で、次の測定点があるかどうかが判断される。ブロック820から850を、CRS測定装置の測定レートで、繰り返し実行させてもよい。
次の測定点があれば、ルーチンはブロック820に戻る。次の測定点がなければ、ルーチンは終了する。
このルーチンに、ユーザインターフェイスに標識を表示させる工程を加えてもよい。その標識は、測定値が異常なプロファイルに応じたものであることを示す。例えば、連続する測定点を示すグラフが、測定点が異常なスペクトルプロファイルに応じたものであることを示す独特の色又は形状のマークを有していてもよい。
以上の動作は、CRS測定装置又はホストシステムの制御下で実行されてもよい。例えば、信号処理システムが、非対称性を評価するために、記憶部に保存された所望の解析ルーチンを呼び出して、スペクトルプロファイルの出力データを評価してもよい。さらに、その結果を、予期される正常な結果または記憶部に保存された結果と比較してもよい。
【0068】
なお、本発明に係るCRS測定装置は、スリットアパーチャを用いるクロマティック・ライン・センサ測定装置から構成され、測定点はライン・センサ測定装置の光のラインに沿った測定点であってもよい。また、CRS測定装置は、2D視野を有するクロマティック・カメラ又はアレイセンサ測定装置から構成され、測定点は2D視野中の測定点であってもよい。また、クロマティック・ライン・センサの適用において、幾何学的異常値解析に基づいて、表面プロファイル(例えば、ねじネジ山の形)の異常測定点を除去することが知られている。なお、ここに開示された測定装置及び方法は、初心者及び熟練者のために、ワーク上の信頼できない測定値、及び/又は、測定位置を直接的に識別することによって、CRS測定の誤りを区別する方法であって、上記の特別な幾何学的方法よりも強固で信頼できる方法である。
【0069】
本発明の好適な実施形態を示し説明したが、この開示に基づいて、図示し説明した動作の特徴および動作の順序に対する多くの変形が、当業者には明白である。したがって、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、本明細書に様々な変更を行い得ることが明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8