特許第6174943号(P6174943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174943
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】凹部を充填する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/20 20060101AFI20170724BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20170724BHJP
   C23C 16/56 20060101ALI20170724BHJP
   H01L 21/324 20060101ALI20170724BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   H01L21/20
   H01L21/205
   C23C16/56
   H01L21/324 W
   H01L21/302 105A
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-172430(P2013-172430)
(22)【出願日】2013年8月22日
(65)【公開番号】特開2015-41707(P2015-41707A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 聡
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】柿本 明修
【審査官】 右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−077924(JP,A)
【文献】 特開昭58−116722(JP,A)
【文献】 特開平10−056154(JP,A)
【文献】 特開2013−082986(JP,A)
【文献】 特開2012−109537(JP,A)
【文献】 特開2009−260015(JP,A)
【文献】 特開2008−198996(JP,A)
【文献】 特開平01−077924(JP,A)
【文献】 特開平08−139278(JP,A)
【文献】 特開平05−198503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
C23C 16/56
H01L 21/205
H01L 21/3065
H01L 21/324
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体の凹部を充填する方法であって、該被処理体は、半導体基板及び該半導体基板上に設けられた絶縁膜を有し、前記凹部は、前記半導体基板まで延在するよう前記絶縁膜を貫通しており、該方法は、
前記凹部を画成する壁面上にライナー層を形成する工程であり、該ライナー層は不純物を含有するアモルファス半導体層を含む、該工程と、
前記アモルファス半導体層上に半導体材料の薄膜を形成する工程と、
前記被処理体をアニールする工程であり、該被処理体をアニールすることにより、前記薄膜の半導体材料を前記凹部の底に向けて移動させて、前記半導体基板の結晶に応じたエピタキシャル領域を形成する、該工程と、
前記エピタキシャル領域を構成しない前記薄膜の残部及び前記ライナー層をエッチングする工程と、
を含み、
ライナー層を形成する前記工程、薄膜を形成する前記工程、前記被処理体をアニールする前記工程、及び、エッチングする前記工程を含むシーケンスが繰り返され、
前記半導体基板は、単結晶半導体基板又は多結晶半導体基板であり、
前記薄膜は、不純物を含有するアモルファス半導体膜であり、
前記アモルファス半導体層の不純物濃度は、前記薄膜の不純物濃度よりも高い、
方法。
【請求項2】
前記アモルファス半導体層は、アモルファスシリコン層であり、
前記ライナー層は、アミノシラン系ガス又は高次シランガスから形成されるシード層を更に含み、
前記シード層は前記壁面上に形成され、
前記アモルファスシリコン層は前記シード層上に形成される、
請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、凹部を充填する方法及び処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置といったデバイスの製造においては、絶縁膜に形成されたスルーホール又はコンタクトホールといった凹部内に、シリコンを充填する処理が行われることがある。トレンチに充填されたシリコンは、例えば、電極として利用され得る。このような処理は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
具体的に、特許文献1に記載された処理では、被処理体においてトレンチを画成する壁面上に多結晶シリコン膜が形成される。次いで、多結晶シリコン膜上にアモルファスシリコン膜が形成される。その後、被処理体がアニールされる。特許文献1に記載された処理では、被処理体のアニールにより、アモルファスシリコンをトレンチの底部に向かって移動させ、当該アモルファスシリコンによってトレンチを充填することが意図されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−56154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された処理では、アニールによってアモルファスシリコンをトレンチの底部に移動させる際に、アモルファシリコンが凝集し、ボイドやシームと称される空洞が形成される。
【0006】
このような背景から、凹部の充填において空洞の発生を抑制することが要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面においては、被処理体の凹部を充填する方法が提供される。被処理体は、半導体基板、及び、該半導体基板上に設けられた絶縁膜を有する。凹部は、半導体基板まで延在するよう絶縁膜を貫通している。この方法は、凹部を画成する壁面に沿って半導体材料の薄膜を形成する工程(a)と、被処理体をアニールする工程であり、該被処理体をアニールすることにより、薄膜の半導体材料を凹部の底に向けて移動させて、半導体基板の結晶に応じたエピタキシャル領域を形成する、該工程(b)と、薄膜をエッチングする工程(c)と、を含む。半導体材料は、例えば、シリコン又はゲルマニウムである。
【0008】
一形態においては、工程(a)、(b)、及び(c)を含むシーケンスが繰り返されてもよい。また、一形態においては、薄膜は、アモルファス半導体膜、例えば、アモルファス状態のシリコン膜、ゲルマニウム膜、又はシリコンゲルマニウム膜であり、半導体基板は、単結晶半導体基板又は多結晶半導体基板、例えば、単結晶シリコン基板又は多結晶シリコン基板であってもよい。また、一形態においては、薄膜は、多結晶半導体膜、例えば、多結晶のシリコン膜、ゲルマニウム膜、又はシリコンゲルマニウム膜であり、半導体基板は、単結晶半導体基板、例えば、単結晶シリコン基板であってもよい。
【0009】
上記方法によれば、工程(b)のアニールにより、薄膜の一部を構成する半導体材料が凹部の底に向けて移動し、半導体基板の結晶構造に倣った結晶構造を有するエピタキシャル領域が形成される。このエピタキシャル領域のエッチングレートは、薄膜の残部のエッチングレートよりも小さいので、工程(c)において、薄膜が除去され、凹部内にエピタキシャル領域が残される。本方法では、このように残されたエピタキシャル領域によって凹部を充填することができるので、空洞の発生を抑制することが可能となる。
【0010】
一形態においては、薄膜は不純物を含有していてもよい。不純物を含有する薄膜は、低温での成長が可能であり、したがって、被処理体に加わる熱履歴を低減させて、薄膜の応力を低減させることが可能である。故に、工程(b)のアニール時に薄膜を構成する半導体材料の凝集を抑制して、当該半導体材料を底部に流動させることが可能となる。
【0011】
また、一形態の方法は、薄膜がアモルファス半導体膜である場合に、工程(a)の前に、ライナー層を形成する工程を更に含んでいてもよい。このライナー層は、不純物を含有するアモルファス半導体層を含み、薄膜は、当該アモルファス半導体層上に形成される。この形態では、薄膜とその下地との間の応力差が緩和される。また、不純物を含有するアモルファス半導体層は、比較的平坦な表面を有する。さらに、ライナー層のアモルファス半導体層は不純物を含有しているので、当該アモルファス半導体層内の半導体材料の結晶化も抑制される。また更に、不純物を含むアモルファス半導体層は、多結晶の半導体層に比して、低温での成長が可能である。したがって、被処理体に加わる熱履歴を低減させて、当該アモルファス半導体層の応力を低減させることが可能である。故に、この形態の方法によれば、薄膜を構成する半導体材料の凝集を更に抑制しつつ、当該半導体材料を凹部の底に向けて流動させることが可能となる。
【0012】
また、一形態においては、ライナー層のアモルファス半導体層は、アモルファスシリコン層であり、ライナー層は、アミノシラン系ガス又は高次シランガスから形成されるシード層を更に含んでいてもよい。この形態において、シード層は凹部を画成する壁面上に形成され、ライナー層のアモルファスシリコン層はシード層上に形成される。このシード層により、ライナー層のアモルファスシリコン層とその下地の間の界面における表面エネルギーが低減される。これにより、ライナー層のアモルファスシリコン層の平坦性が更に向上される。
【0013】
また、一形態においては、薄膜は不純物を含有していてもよく、この形態において、ライナー層のアモルファス半導体層の不純物濃度は、薄膜の不純物濃度よりも高い。この形態によれば、薄膜を構成する半導体材料の凝集を抑制して、当該半導体材料を凹部の底に向けて流動させることが可能となる。
【0014】
別の側面においては、上述した方法の実施に用いることが可能な処理装置が提供される。この処理装置は、容器、ガス供給部、加熱装置、及び、制御部を備える。容器は、被処理体を収容する空間を画成する。ガス供給部は、半導体材料の薄膜を形成するための第1のガス、及び該薄膜をエッチングするための第2のガスを供給するように構成されている。加熱装置は、容器内の空間を加熱するよう構成されている。制御部は、ガス供給部及び加熱装置を制御するよう構成されている。この制御部は、第1制御、第2制御、及び第3制御を実行する。第1制御において、制御部は、容器内に第1のガスを供給するようガス供給部を制御し、容器内の空間を加熱するよう加熱装置を制御する。第1制御の後の第2制御において、制御部は、容器内の空間を加熱するよう加熱装置を制御する。第2制御の後の第3制御において、制御部は、容器内に第2のガスを供給するようガス供給部を制御する。この処理装置によれば、上述した凹部を充填する方法の実施が可能となる。一形態において、制御部は、第1の制御、第2の制御、及び第3の制御を含むシーケンスを繰り返してもよい。
【0015】
また、一形態においては、第1の制御により、前記薄膜として、アモルファス半導体膜が形成されてもよい。また、一形態においては、第1のガスは、不純物を含有していてもよい。
【0016】
また、一形態においては、ガス供給部は、不純物を含有するアモルファス半導体層を形成するための第3のガスを容器内に更に供給可能であってもよく、制御部は、第1の制御の前に、第3のガスを前記容器内に供給するようガス供給部を制御するための第4の制御を更に実行してもよい。また、一形態においては、第3のガスは、アモルファス半導体層として前記不純物を含有するアモルファスシリコン層を形成するためのガスであってもよく、ガス供給部は、アミノシラン系ガス又は高次シランガスを容器内に更に供給可能であってもよく、制御部は、第4の制御の前に、アミノシラン系ガス又は高次シランガスを容器内に供給するようガス供給部を制御するための第5の制御を更に実行してもよい。さらに、一形態においては、第1のガス及び第3のガスは不純物源のガスを更に含み、第3のガス中の不純物源のガスの濃度は、第1のガス中の不純物源のガスの濃度よりも高くてもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の種々の側面及び形態によれば、凹部の充填において空洞の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る凹部を充填する方法を例示する流れ図である。
図2図1に示す方法の各工程後の被処理体の状態を例示する図である。
図3】一実施形態に係る方法の実施に用いることが可能な処理装置を概略的に示す例示的な図である。
図4図3に示す処理装置の制御部の構成を示す例示的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0020】
図1は、一実施形態に係る凹部を充填する方法を例示する流れ図である。図1に示す方法MTは、被処理体の凹部に半導体材料を流動させることにより、当該凹部の底にエピタキシャル領域(以下、「エピ領域」という)を形成して、当該凹部を全体的に又は部分的に充填するものである。
【0021】
図2は、図1に示す方法の各工程後の被処理体の状態を例示する図である。なお、図2においては、被処理体の一部の拡大断面図が示されている。図2の(a)に示すように、被処理体(以下、「ウエハ」という)Wは、基板SB、及び、絶縁膜ISを含んでいる。基板SBは、単結晶半導体基板又は多結晶半導体基板であり、例えば、単結晶シリコン基板又は多結晶シリコン基板である。この基板SB上には、絶縁膜ISが設けられている。絶縁膜ISは、例えば、SiO又はSiNから構成されている。この絶縁膜ISには、トレンチ又はスルーホールといった凹部DRが、絶縁膜ISを貫通して基板SBまで延在するように形成されている。この凹部DRは、例えば、絶縁膜IS上にマスクを形成し、当該絶縁膜ISをエッチングすることによって、形成することができる。一実施形態においては、凹部DRは、絶縁膜ISを貫通し、且つ、基板SBと絶縁膜ISとの境界面よりも深さ方向に基板SBを彫り込むことによって形成されている。これにより、基板SBの汚染が抑制された面を凹部DRに露出させることが可能となる。かかる凹部DRは、例えば、200nmの深さ、40〜50nmの幅を有し得る。
【0022】
このようなウエハWに対して、一実施形態に係る方法MTでは、工程ST2、工程ST3、及び、工程ST4が行われる。また、一実施形態に係る方法MTでは、工程ST2、工程ST3、及び、工程ST4を含むシーケンスが、繰り返される。工程ST2は、ウエハWの凹部DRを画成する壁面に沿って、半導体材料の薄膜を形成する工程であり、工程ST3は、ウエハWをアニールする工程であり、工程ST4は、薄膜をエッチングする工程である。また、更なる実施形態では、シーケンスは、工程ST2の前に実行される工程ST1を含み得る。この工程ST1は、ライナー層を形成する工程である。
【0023】
ここで、工程ST1〜工程ST4の実施に用いることが可能な処理装置の一例について説明する。図3は、一実施形態に係る方法の実施に用いることが可能な処理装置を概略的に示す例示的な図である。図3に示す装置は、工程ST1〜工程ST4の実施に用いることができるが、工程ST1〜ST4の実施は、別の処理装置においても実施することが可能である。
【0024】
図3に示す処理装置10は、容器12を備えている。容器12は、略円筒形状を有する反応管であり、当該容器12の長手方向は垂直方向に向いている。容器12は、二重管構造を有しており、内管14及び外管16を含んでいる。内管14及び外管16は、耐熱及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。
【0025】
内管14は、略円筒形状を有しており、上端及び下端を含んでいる。内管14の上端及び下端は開放されている。外管16は、当該内管14を覆うように当該内管14と略同軸に設けられている。外管16と内管14との間には一定の間隔が設けられている。外管16の上端は閉塞されており、当該外管16の下端は開放されている。
【0026】
外管16の下方には、マニホールド18が設けられている。マニホールド18は、筒状に形成されており、例えば、ステンレス鋼(SUS)から構成されている。マニホールド18は、外管16の下端と気密に接続されている。また、マニホールド18の内壁には、当該内壁から内側に突出する支持リング20が一体に形成されている。この支持リング20は、内管14を支持している。
【0027】
マニホールド18の下方には、蓋体22が設けられている。この蓋体22は、ボートエレベータ24に接続されており、当該ボートエレベータによって上下動可能に構成されている。ボートエレベータ24により蓋体22が上昇すると、マニホールド18の下方側(即ち、炉口部分)が閉鎖される。一方、ボートエレベータ24により蓋体22が下降すると、マニホールド18の下方側(即ち、炉口部分)が開口される。
【0028】
蓋体22上には、ウエハボート26が載置されている。ウエハボート26は、例えば、石英から構成される。ウエハボート26は、複数のウエハWを垂直方向に所定の間隔をおいて収容することが可能であるよう構成されている。
【0029】
容器12の周囲には、当該容器12を取り囲むように、断熱体28が設けられている。断熱体28の内壁面には、ヒータ30(加熱装置)が設けられている。ヒータ30は、例えば、抵抗発熱体から構成されている。このヒータ30により、容器12の内部の空間が所定の温度に加熱される。これにより、ウエハWが加熱される。
【0030】
マニホールド18の側面には、一以上のガス導入管32が接続されている。ガス導入管32は、例えば、支持リング20より下方においてマニホールド18の側面に接続されている。このガス導入管32によって構成されるガスラインは、容器12の内部に連通している。
【0031】
ガス導入管32には、ガス供給部GFが接続されている。ガス供給部GFは、一実施形態においては、ガスソースGS1,GS2,GS3,GS4,GS5,GS6、バルブV11,V21,V21,V22,V31,V32,V41,V42,V51,V52、V61,V62、及び、マスフローコントローラといった流量制御器FC1,FC2,FC3,FC4,FC5、FC6を含んでいる。ガスソースGS1は、バルブV11、流量制御器FC1、及びバルブV12を介して、ガス導入管32に接続されている。ガスソースGS2は、バルブV21、流量制御器FC2、及びバルブV22を介して、ガス導入管32に接続されている。ガスソースGS3は、バルブV31、流量制御器FC3、及びバルブV32を介して、ガス導入管32に接続されている。ガスソースGS4は、バルブV41、流量制御器FC4、及びバルブV42を介して、ガス導入管32に接続されている。ガスソースGS5は、バルブV51、流量制御器FC5、及びバルブV52を介して、ガス導入管32に接続されている。ガスソースGS6は、バルブV61、流量制御器FC6、及びバルブV62を介して、ガス導入管32に接続されている。
【0032】
ガスソースGS1は、後述する工程ST1においてシード層を形成するための原料ガスのソースである。ガスソースGS1は、例えば、アミノシラン系ガスのソースであることができる。アミノシラン系ガスとしては、例えば、BAS(ブチルアミノシラン)、BTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)、DMAS(ジメチルアミノシラン)、BDMAS(ビスジメチルアミノシラン)、TDMAS(トリジメチルアミノシラン)、DEAS(ジエチルアミノシラン)、BDEAS(ビスジエチルアミノシラン)、DPAS(ジプロピルアミノシラン)、DIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)を用いることが可能である。また、アミノシラン系ガスとして、アミノジシランガスを用いることが可能である。例えば、アミノシラン系ガスとして、ジイソプロピルアミノジシラン(SiN(iPr))ジイソプロピルアミノトリシラン(SiN(iPr))、ジイソプロピルアミノジクロロシラン(SiClN(iPr))、ジイソプロピルアミノトリクロロシラン(SiClN(iPr))といったガスを用いることも可能である。なお、ガスソースGS1は、ジシランガス、トリシランガス、テトラシランガスといった高次シランガスのソースであってもよい。
【0033】
ガスソースGS2は、工程ST1において後述するようにライナー層中のアモルファス半導体層の形成に用いることができる原料ガスのソースである。また、ガスソースGS2は、工程ST2において薄膜の形成に用いることができる原料ガスのソースである。このガスソースGS2は、工程ST1において形成されるアモルファス半導体層及び工程ST2において形成される薄膜がシリコンから構成されている場合には、モノシランガス、ジシランガス、又は上述のアミノシラン系ガスのソースであることができる。また、ガスソースGS2は、工程ST1において形成されるアモルファス半導体層及び工程ST2において形成される薄膜がゲルマニウムから構成されている場合には、モノゲルマンといったゲルマン含有ガスであることができる。また、ガスソースGS2は、工程ST1において形成されるアモルファス半導体層及び工程ST2において形成される薄膜が、シリコンゲルマニウムから構成されている場合には、モノシランガス、ジシランガス、又はアミノシラン系ガスと、ゲルマン含有ガスとの混合ガスであることができる。なお、工程ST1で形成されるアモルファス半導体層と工程ST2で形成される薄膜はそれぞれ、別個のガスソースから供給される異なるガスを用いて形成されてもよい。
【0034】
ガスソースGS3は、工程ST1及び/又は工程ST2において用いられ得る不純物源のガスのソースである。不純物としては、例えば、ヒ素(As)、ボロン(B)、又は、P(リン)が例示される。不純物源のガスとしては、例えば、ホスフィン(PH)、ジボラン(B)、三塩化ホウ素(BCl)、又はアルシン(AsH)が用いられ得る。
【0035】
ガスソースGS4は、工程ST1のアモルファス半導体層の形成、及び/又は、工程ST2の薄膜の形成において用いられ得る添加ガスのソースである。このような添加ガスとしては、Cガス、NOガス、NOガス、又はNHガスが例示される。なお、添加ガスには、Cガス、NOガス、NOガス、及びNHガスのうち一以上のガスを用いることが可能である。
【0036】
ガスソースGS5は、工程ST3のアニールにおいて用いられ得る不活性ガスのソースである。このような不活性ガスとしては、水素ガス又は窒素ガス等が例示され得る。
【0037】
ガスソースGS6は、工程ST4のエッチングにおいて用いられ得るエッチングガスのソースである。このようなエッチングガスとしては、Cl、HCl、F、Br、及び、HBrのうち一種以上を含有するガスを用いることが可能である。なお、エッチングガスには、絶縁膜IS及びエピ領域に対して薄膜を選択的にエッチングすることが可能なガスであれば、任意のガスを用いることが可能である。
【0038】
図3に示すように、マニホールド18の側面には容器12内のガスを排気するための排気口34が設けられている。排気口34は、支持リング20より上方に設けられており、容器12内の内管14と外管16との間に形成された空間に連通している。よって、内管14で発生した排ガス等は、内管14と外管16との間の空間を通って排気口34に流れるようになっている。
【0039】
また、マニホールド18には、パージガス供給管36が接続されている。パージガス供給管36は、排気口34の下方において、マニホールド18に接続されている。パージガス供給管36には、パージガス供給源が接続されており、パージガス供給源からパージガス供給管36を介してパージガス、例えば、窒素ガスが容器12内に供給される。
【0040】
排気口34には、排気管38が気密に接続されている。排気管38には、その上流側から、バルブ40、及び、真空ポンプといった排気装置42が介設されている。バルブ40は、排気管38の開度を調整して、容器12内の圧力を所定の圧力に制御する。排気装置42は、排気管38を介して容器12内のガスを排気するとともに、容器12内の圧力を調整する。なお、排気管38には、トラップ、スクラバー等が介設されていてもよく、処理装置10は、容器12から排気された排ガスを、無害化した後、当該処理装置10外に排気するように構成されていてもよい。
【0041】
また、処理装置10は、当該処理装置10の各部の制御を実行する制御部100を備えている。図4に制御部100の構成を示す。図4に示すように、制御部100は、主制御部110を備えている。主制御部110には、操作パネル121、温度センサ(群)122、圧力計(群)123、ヒータコントローラ124、流量制御部125、バルブ制御部126等が接続されている。
【0042】
操作パネル121は、表示画面及び操作ボタンを備え、オペレータの操作指示を主制御部110に伝達する。また、操作パネル121は、主制御部110からの様々な情報を表示画面に表示する。
【0043】
温度センサ(群)122は、容器12内、ガス導入管32内、排気管38内等の各部の温度を測定し、その測定値を主制御部110に通知する。圧力計(群)123は、容器12内、ガス導入管32内、排気管38内等の各部の圧力を測定し、その測定値を主制御部110に通知する。
【0044】
ヒータコントローラ124は、ヒータ30を個別に制御するためのものであり、主制御部110からの指示に応答して、ヒータ30に通電して当該ヒータ30を加熱する。また、ヒータコントローラ124は、ヒータ30の消費電力を個別に測定して、主制御部110に通知する。
【0045】
流量制御部125は、ガス供給部GFの流量制御器FC1〜FC6を制御して、ガス導入管32にガスの流量を主制御部110から指示された量に設定する。また、流量制御部125は、実際に流れたガスの流量を測定して、主制御部110に通知する。バルブ制御部126は、各管に配置されたバルブの開度を主制御部110から指示された値に制御する。
【0046】
主制御部110は、レシピ記憶部111と、ROM112と、RAM113と、I/Oポート114と、CPU115と、これらを相互に接続するバス116とから構成されている。
【0047】
レシピ記憶部111には、セットアップ用レシピと複数のプロセス用レシピとが記憶されている。処理装置10の製造当初は、セットアップ用レシピのみが格納される。セットアップ用レシピは、各処理装置に応じた熱モデル等を生成する際に実行されるものである。プロセス用レシピは、ユーザが実際に行うプロセス毎に用意されるレシピであり、例えば容器12へのウエハWのロードから、処理済みのウエハWをアンロードするまでの、各部の温度の変化、容器12内の圧力変化、ガスの供給の開始及び停止のタイミングと供給量等を規定する。
【0048】
ROM112は、EEPROM、フラッシュメモリ、ハードディスクなどから構成され、CPU115の動作プログラム等を記憶する記録媒体である。RAM113は、CPU115のワークエリア等として機能する。
【0049】
I/Oポート114は、操作パネル121、温度センサ(群)122、圧力計(群)123、ヒータコントローラ124、流量制御部125、バルブ制御部126等に接続され、データや信号の入出力を制御する。
【0050】
CPU(Central Processing Unit)115は、主制御部110の中枢を構成し、ROM112に記憶された制御プログラムを実行し、操作パネル121からの指示に従って、レシピ記憶部111に記憶されているレシピ(プロセス用レシピ)に沿って、処理装置10の動作を制御する。すなわち、CPU115は、温度センサ(群)122、圧力計(群)123、流量制御部125等に容器12内、ガス導入管32内、及び、排気管38内の各部の温度、圧力、流量等を測定させ、この測定データに基づいて、ヒータコントローラ124、流量制御部125、バルブ制御部126等に制御信号等を出力し、上記各部がプロセス用レシピに従うように制御する。バス116は、各部の間で情報を伝達する。
【0051】
以下、かかる処理装置10を用いて実施することが可能な上述の方法MTを、図1及び図2を参照して、より詳細に説明する。
【0052】
工程ST1では、図1図2の(b)、及び図2の(c)に示すように、ライナー層LFが形成される。具体的には、図2の(b)に示すように、凹部DRを画成する壁面上にシード層SFが形成される。シード層SFは、凹部DRを閉塞しないよう、例えば、0.1nmの厚さで形成される。シード層SFが形成される壁面は、凹部DRを側方から画成する側壁面SW、及び、凹部DRを下方から画成する底面BWを含む。また、工程ST1では、絶縁膜ISの上面TW上にもシード層SFが形成される。
【0053】
工程ST1では、シード層SFの形成のために、ウエハWを収容した容器内にアミノシラン系ガス又は高次シランガスといった原料ガスが所定の流量で供給され、当該容器内の圧力が所定の圧力に設定され、また、当該容器内の温度が所定の温度に設定される。工程ST1では、原料ガスの流量は、例えば、10sccm〜500sccmの範囲内の流量に設定される。また、容器内の圧力は、例えば、0.1Torr(13.33Pa)〜10Torr(1333Pa)の範囲内の圧力に設定される。また、容器内の温度は、例えば、300℃〜600℃の範囲内の温度に設定される。
【0054】
この工程ST1におけるシード層SFの形成を処理装置10で実施する場合には、制御部100は以下に説明する制御(第5の制御)を実行する。この制御において、制御部100は、ガスソースGS1から容器12内に所定流量の原料ガスが供給されるよう、バルブV11、流量制御器FC1、バルブV12を制御し、容器12内の圧力が所定の圧力に設定されるよう排気装置42を制御し、容器12内の空間の温度が所定の温度に設定されるよう、ヒータ30を制御する。
【0055】
なお、シード層SFは、アミノシラン系ガス又は高次シランガスから形成される単層に限定されるものではない。例えば、シード層SFは、アミノシラン系ガスの吸着又は堆積によるシリコンを含む第1層の形成後、当該第1層上にシリコンを含む第2層を高次シランガスを用いて形成することにより、作成されてもよい。
【0056】
次いで、工程ST1では、図2の(c)に示すように、不純物を含有するアモルファス半導体層DFが形成される。アモルファス半導体層DFは、例えば、アモルファス状態のシリコン層、ゲルマニウム層、又はシリコンゲルマニウム層である。アモルファス半導体層DFは、側壁面SW、底面BW、及び、上面TWに沿って形成される。また、アモルファス半導体層DFは、凹部DRを閉塞しないよう、例えば、0.5nm〜10nmの厚さで形成される。なお、図2の(c)では、アモルファス半導体層DFはシード層SF上に形成されているが、当該アモルファス半導体層DFは、側壁面SW、底面BW、及び上面TW上に直接形成されてもよい。
【0057】
アモルファス半導体層DFは、上述したように不純物を含有している。「不純物とは」、Siと結合して電子又は正孔を発生させる原子であり、例えば、B、P、Asといった原子である。このような不純物を含有する層DFを形成するために、工程ST1のアモルファス半導体層DFの形成では、ウエハWを収容した容器内に第3のガスが供給される。具体的には、当該容器内に、半導体材料の原料ガスが所定の流量で供給され、また、不純物源のガスが所定の流量で供給される。また、工程ST1のアモルファス半導体層DFの形成では、容器内の圧力が所定の圧力に設定され、また、当該容器内の温度が所定の温度に設定される。工程ST1においてアモルファス半導体層DFを形成するために供給される原料ガスは、例えば、モノシランガス、ジシランガス、又は上述のアミノシラン系ガスである。また、原料ガスは、ゲルマン含有ガスであってもよい。或いは、原料ガスは、モノシランガス、ジシランガス、又は上述のアミノシラン系ガスとゲルマン含有ガスの混合ガスであってもよい。原料ガスは、例えば、50〜5000sccmの流量で容器内に供給される。また、不純物源のガスは、例えば、ホスフィン(PH)、ジボラン(B)、三塩化ホウ素(BCl)、又はアルシン(AsH)である。このような不純物源のガスは、例えば、1sccm〜1000sccmの流量で容器内に供給される。また、工程ST1においてアモルファス半導体層DFを形成するために、容器内の圧力は、例えば、0.1Torr(13.33Pa)〜10Torr(1333Pa)の範囲内の圧力に設定され、容器内の温度は、例えば、300℃〜600℃の範囲内の温度に設定される。
【0058】
なお、工程ST1においてアモルファス半導体層DFを形成するために、Cガス、NOガス、NOガス、及びNHガスのうち一以上のガスを含む添加ガスが、容器内に供給されてもよい。添加ガスを用いる場合には、当該添加ガスの流量は、例えば、5〜1000sccmに設定される。
【0059】
この工程ST1におけるアモルファス半導体層DFの形成を処理装置10で実施する場合には、制御部100は以下に説明する制御(第4の制御)を実行する。この制御において、制御部100は、ガスソースGS2から容器12内に所定流量の原料ガスが供給されるよう、バルブV21、流量制御器FC2、バルブV22を制御し、ガスソースGS3から容器12内に所定流量の不純物源のガスが供給されるよう、バルブV31、流量制御器FC3、バルブV32を制御し、容器12内の圧力が所定の圧力に設定されるよう排気装置42を制御し、容器12内の空間の温度が所定の温度に設定されるよう、ヒータ30を制御する。なお、工程ST1の層DFの形成において、添加ガスを更に用いる場合には、制御部100は、ガスソースGS4から容器12内に所定流量の原料ガスが供給されるよう、バルブV41、流量制御器FC4、バルブV42を制御する。
【0060】
次いで、方法MTでは、工程ST2が行われる。工程ST2では、図2の(d)に示すように、薄膜TFが形成される。薄膜TFは、凹部DRを閉塞しないように、凹部DRを画成する壁面に沿って形成される。例えば、薄膜TFは、側壁面SW、底面BW、及び、上面TWに沿って形成される。一実施形態においては、薄膜TFは、層DF上に形成されるが、別の実施形態においては、薄膜TFは、壁面SW、底面BW、及び、上面TW上に直接的に形成されてもよい。この薄膜TFの膜厚は、例えば、12.5nmの膜厚に設定される。また、一実施形態においては、薄膜TFは、不純物を含有していてもよい。薄膜TFに含有させ得る不純物としては、アモルファス半導体層DFが含有する不純物と同様の不純物を用いることができるが、アモルファス半導体層DFに含有される不純物の濃度は、薄膜TFに含有される不純物の濃度よりも高く設定される。
【0061】
工程ST2では、薄膜TFの形成のために、ウエハWを収容した容器内に第1のガスが供給される。具体的には、当該容器内に半導体材料の原料ガスが所定の流量で供給される。また、工程ST2では、容器内の圧力が所定の圧力に設定され、また、当該容器内の温度が所定の温度に設定される。工程ST3において供給される原料ガスは、例えば、モノシランガス、ジシランガス、又は上述のアミノシラン系ガスである。また、原料ガスは、ゲルマン含有ガスであってもよい。或いは、原料ガスは、モノシランガス、ジシランガス、又は上述のアミノシラン系ガスとゲルマン含有ガスの混合ガスであってもよい。この原料ガスは、例えば、50〜5000sccmの流量で容器内に供給される。また、工程ST2では、容器内の圧力は、例えば、0.1Torr(13.33Pa)〜10Torr(1333Pa)の範囲内の圧力に設定され、容器内の温度は、例えば、300℃〜700℃の範囲内の温度に設定される。なお、原料ガスとしてモノシランを用いる場合には、容器内の温度は例えば530℃に設定される。また、原料ガスとしてジシランを用いる場合には、容器内の温度は例えば400℃に設定される。
【0062】
一実施形態では、工程ST2において、Cガス、NOガス、NOガス、及びNHガスのうち一以上のガスを含む添加ガスが容器内に供給されてもよい。添加ガスを用いる場合には、当該添加ガスの流量は、例えば、5〜1000sccmに設定される。
【0063】
この工程ST2を処理装置10で実施する場合には、制御部100は以下に説明する制御(第1の制御)を実行する。この制御において、制御部100は、ガスソースGS2から容器12内に所定流量の原料ガスが供給されるよう、バルブV21、流量制御器FC2、バルブV22を制御し、容器12内の圧力が所定の圧力に設定されるよう排気装置42を制御し、容器12内の空間の温度が所定の温度に設定されるよう、ヒータ30を制御する。なお、薄膜TFに不純物を含有させる場合には、制御部100は、ガスソースGS3から容器12内に所定流量の不純物源のガスが供給されるよう、バルブV31、流量制御器FC3、バルブV32を制御することができる。また、工程ST2において、添加ガスを更に用いる場合には、制御部100は、ガスソースGS4から容器12内に所定流量の添加ガスが供給されるよう、バルブV41、流量制御器FC4、バルブV42を制御することができる。
【0064】
次いで、方法MTでは、工程ST3が行われる。工程ST3では、ウエハWがアニールされる。この工程ST3により、薄膜TFの全部分のうち凹部DRの底側に設けられている一部を構成する半導体材料が溶融して、凹部DRの底に向けて流動し、図2の(e)に示すように、基板SBの結晶構造に倣った結晶構造を有するエピタキシャル領域ERを形成する。なお、薄膜TFの下地としてライナー層LFが形成されている場合には、工程ST3により、ライナー層LFの全部分のうち凹部DRの底側に設けられている一部を構成する半導体材料も溶融して、凹部DRの底に向けて流動し、当該半導体材料がエピタキシャル領域ERを構成する。
【0065】
工程ST3では、ウエハWを収容した容器内の温度が所定温度に設定される。例えば、容器内の温度は300〜600℃の範囲内の温度に設定される。一例においては、容器内の温度は、550℃に設定される。また、工程ST3では、容器内の圧力が所定圧力に設定される。例えば、工程ST3における容器内の圧力は、1×10−10Torr(1.333×10−7Pa)〜1Torr(133.3Pa)の範囲内の圧力に設定される。一例においては、容器内の圧力は、1×10−6Torr(1.333×10−3Pa)に設定される。この工程ST3では、ウエハWは、例えば約5時間、アニールされる。なお、工程ST3においては、水素ガス又は窒素ガス等の不活性ガスが容器内に供給されてもよい。
【0066】
この工程ST3を処理装置10で実施する場合には、制御部100は以下に説明する制御(第2の制御)を実行する。この制御において、制御部100は、容器12内の圧力が所定の圧力に設定されるよう排気装置42を制御し、容器12内の空間の温度が所定の温度に設定されるよう、ヒータ30を制御する。また、不活性ガスを用いる場合には、制御部100は、ガスソースGS5から容器12内に所定流量の不活性ガスが供給されるよう、バルブV51、流量制御器FC5、バルブV52を制御する。
【0067】
次いで、方法MTでは、工程ST4が行われる。工程ST4では、工程ST3においてエピタキシャル領域ERを構成せずに残された薄膜TFの残部がエッチングされる。工程ST4では、ウエハWを収容した容器内に第2のガスが所定の流量で供給される。この第2のガスは、Cl、HCl、F、Br、及び、HBrのうち一種以上を含有し得る。第2のガスの流量は、例えば、10sccm〜5000sccmである。また、工程ST4では、容器内の圧力が所定の圧力に設定され、容器内の温度が所定の温度に設定される。工程ST4における容器内の圧力は、例えば、1×10−10Torr(1.333×10−7Pa)〜100Torr(133.3×10Pa)の範囲内の圧力であり、工程ST4における容器内の温度は、例えば、200℃〜700℃の範囲内の温度である。一例においては、工程ST4における容器内の圧力及び温度は、4×10−2Torr(5.333Pa)及び550℃に設定される。上述した第2のガスに対して、薄膜TFのエッチングレートはエピタキシャル領域ERのエッチングレートよりも高い。したがって、工程ST4の結果、図2の(f)に示すように、エピタキシャル領域ERを残したまま、薄膜TFを除去することが可能となる。なお、ライナー層LFが設けられている場合には、工程ST4により、ライナー層LFも除去される。
【0068】
この工程ST4を処理装置10で実施する場合には、制御部100は以下に説明する制御(第3の制御)を実行する。この制御において、制御部100は、ガスソースGS6から容器12内に所定流量の第2のガスが供給されるよう、バルブV61、流量制御器FC6、バルブV62を制御し、容器12内の圧力が所定の圧力に設定されるよう排気装置42を制御し、容器12内の空間の温度が所定の温度に設定されるよう、ヒータ30を制御する。
【0069】
次いで、方法MTでは、工程ST5において、工程ST1〜ST4を含むシーケンスが最終回のシーケンスであるか否かが判定される。最終回のシーケンスが終了している場合には、方法MTは終了し、一方、最終回のシーケンスが終了していない場合には、工程ST1〜工程ST4を含むシーケンスが繰り返される。なお、別の実施形態では、1回のシーケンスのみが実行されてもよい。また、更に別の実施形態では、2回目以降のシーケンスにおいて、工程ST3のアニールが省略されてもよい。即ち、工程ST1〜ST4を含む1回のシーケンスを終了した後には、工程ST2において原料ガスの供給を行うことにより、エピタキシャル領域ERの結晶構造に倣うようにエピタキシャル領域ER上に半導体材料を堆積させることができ、同時に形成される薄膜TFを工程ST4のエッチングによって除去することが可能である。また、更なる実施形態では、凹部DRをエピタキシャル領域ERによって完全に充填する必要はなく、凹部DRの深さ方向の途中までをエピタキシャル領域ERによって充填し、凹部DRの残余の部分を金属材料で充填してもよい。
【0070】
かかる方法MTは、上述したように、薄膜TFの一部をアニールによって凹部DRの底に向けて移動させて、エピタキシャル領域ERを形成し、薄膜TFの残部をエッチングによって除去する。これにより、方法MTでは、空洞が生じないように、凹部DRをエピタキシャル領域で充填することが可能となる。また、方法MTでは、基板SBの結晶構造に倣ったエピタキシャル領域ERで凹部DRを充填するので、基板SBと凹部DRを充填する材料との間のコンタクト抵抗を低減させることも可能である。
【0071】
また、一実施形態においては、不純物を含有する薄膜TFを形成することにより、当該薄膜TFを、低温で成長させることが可能である。したがって、ウエハWに加わる熱履歴を低減させて、薄膜TFの応力を低減させることが可能である。故に、工程ST3のアニール時に薄膜TFを構成する半導体材料の凝集を抑制して、当該半導体材料を凹部DRの底に向けて流動させることが可能となる。
【0072】
また、一実施形態においては、アモルファス半導体層DFが、凹部DRを画成する壁面と薄膜TFとの間に設けられる。これにより、薄膜TFとその下地との間の応力差が緩和される。また、不純物を多く含有するアモルファス半導体層DFは、表面の平坦性に優れる。さらに、アモルファス半導体層DFは不純物を含有しているので、層DF内での半導体材料の結晶化も抑制される。また更に、不純物を含むアモルファス半導体層DFは、低温での成長が可能である。したがって、ウエハWに加わる熱履歴を低減させて、アモルファス半導体層DFの応力を低減させることが可能である。故に、工程ST3のアニール時に、アモルファス半導体層DFに由来する半導体材料の凝集が抑制される。その結果、空洞の発生を抑制することが可能となる。
【0073】
また、一実施形態においては、工程ST1において、シード層SFが形成される。かかるシード層SFを形成することによって、当該シード層SFとアモルファス半導体層DFとの間の界面の表面エネルギーを低減させることが可能となる。これにより、アモルファス半導体層DFの平坦性が更に向上される。
【0074】
また、一実施形態においては、工程ST1及び工程ST2の少なくとも一方において、NOガス又はエチレンガスが容器内に更に供給される。この実施形態によれば、半導体材料の結晶化を抑制し、且つ、粒径サイズを低減させることが可能となる。
【0075】
以上、種々の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、上述した実施形態では、基板SBは単結晶シリコン基板又は多結晶シリコン基板であり、薄膜TFはアモルファス半導体膜であったが、変形態様においては、基板SBが単結晶シリコン基板であり、薄膜TFは多結晶半導体膜であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
10…処理装置、12…容器、14…内管、16…外管、18…マニホールド、20…支持リング、22…蓋体、24…ボートエレベータ、26…ウエハボート、28…断熱体、30…ヒータ、32…ガス導入管、36…パージガス供給管、38…排気管、40…バルブ、42…排気装置、GF…ガス供給部、100…制御部、MT…方法、W…ウエハ(被処理体)、SB…基板、IS…絶縁膜、DR…凹部、BW…底面、SW…側壁面、TW…上面、SF…シード層、DF…不純物含有アモルファス半導体層、TF…薄膜、ER…エピタキシャル領域。
図1
図2
図3
図4