(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トナー中に含有された状態におけるワックスの融点に起因するピークまたはショルダーが2回目のDSC昇温過程において55℃以上90℃以下に少なくとも1点存在し、
静電荷像現像用トナーの粉塵放散量(Dt)が、下記式(2)を満たし、
60≦Dt≦117,262/Vp−1,039 (2)
DSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダーを65.6℃以上70.8℃以下に有し、
かつ、140℃における動的粘弾性測定において角速度20〜100rad/secにおけるtanδの平均値が1.62以上2.20以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
[上記式(2)中、Dtは前記静電荷像現像用トナーを加熱した際に発生する1分当たりの粉塵放散量(CPM)を表し、Vpは前記画像形成方法におけるA4横換算での印刷速度(枚/分)を表す。但しVpは、106以下とする。]
前記トナー中に含有された状態におけるワックスの融点に起因するピークまたはショルダーが2回目のDSC昇温過程において55℃以上90℃以下に少なくとも1点存在し、
静電荷像現像用トナーの粉塵放散量(Dt)が、下記式(3)を満たし、
60≦Dt≦71,653/Vp−1,039 (3)
DSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダーを65.6℃以上70.8℃以下に有し、
かつ、140℃における動的粘弾性測定において角速度20〜100rad/secにおけるtanδの平均値が1.62以上2.20以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成方法。
[上記式(3)中、Dtは前記静電荷像現像用トナーを加熱した際に発生する1分当たりの粉塵放散量(CPM)を表し、Vpは前記画像形成方法におけるA4横換算での印刷速度(枚/分)を表す。但しVpは、65以下とする。]
前記トナー中に含有された状態におけるワックスの融点に起因するピークまたはショルダーが2回目のDSC昇温過程において55℃以上90℃以下に少なくとも1点存在し、
静電荷像現像用トナーの粉塵放散量(Dt)が、下記式(4)を満たし、
60≦Dt≦52,104/Vp−1,039 (4)
DSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダーを65.6℃以上70.8℃以下に有し、
かつ、140℃における動的粘弾性測定において角速度20〜100rad/secにおけるtanδの平均値が1.62以上2.20以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
[上記式(4)中、Dtは前記静電荷像現像用トナーを加熱した際に発生する1分当たりの粉塵放散量(CPM)を表し、Vpは前記画像形成方法におけるA4横換算での印刷速度(枚/分)を表す。但しVpは、47以下とする。]
DSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダーを66.5℃以上69.6℃以下に有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
140℃における動的粘弾性測定において角速度20〜100rad/secにおけるtanδの平均値が1.82以上2.13以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
前記静電電荷現像用トナー中にワックスが2以上含有され、前記静電荷現像用トナー中に含まれた状態におけるワックスの融点に起因するピークまたはショルダーが、55℃以上73℃以下と77℃以上90℃以下とにそれぞれ1点以上存在することを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像形成方法。
前記静電荷像現像用トナーがワックス成分Xよりもワックス成分Yの存在比率が高い領域を有し、且つ該領域が前記静電荷像現像用トナーの中心側よりも外郭側に多いことを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の画像形成方法。
前記静電荷像現像用トナーがシェルコア構造を有し、該シェルコア構造のシェル材に含まれる前記ワックスが実質的に前記ワックス成分Yのみを含有し、前記シェルコア構造のコア材に含まれる前記ワックスが実質的に前記ワックス成分Xのみを含有することを特徴とする請求項12乃至15のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。ここで、“重量%”及び“重量部”と、“質量%”及び“質量部”とは、それぞれ同義である。
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、「現像用トナー」又は「トナー」と略記する場合がある。)を製造する方法は特に限定されるものではなく、湿式法トナーや粉砕法トナーの製造方法において、以下に説明する構成を採用すればよい。
【0019】
本発明のトナーは、トナー中に含有された状態におけるワックスの融点に起因するピークまたはショルダーが2回目のDSC昇温過程において55℃以上90℃以下に少なくとも1点存在し、トナーの粉塵放散量(Dt)が下記に詳述する範囲を満たすトナーであることが前提であり、このような条件を満たすトナーの中でも、DSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダーを65.6℃以上70.8℃以下に有し、140℃における動的粘弾性測定において角速度20〜100rad/secにおけるtanδの平均値が1.62以上2.20以下であるトナーとすることで得られる。
【0020】
<1.トナーの粉塵放散量(Dt)及びトナーの粉塵放散量(Dt)を制御する方法>
まず、本発明の前提であるトナーの粉塵放散量(Dt)及びトナーの製造の際にトナーの粉塵放散量(Dt)を制御する方法について詳述する。
(1−1.トナーの粉塵放散量(Dt)について)
本発明は、結着樹脂、着色剤及びワックスを含有する静電荷像現像用トナーであって、前記静電荷像現像用トナー中に含有された状態におけるワックスの融点が55℃以上90℃以下に少なくとも1点存在するし、かつ、前記静電荷像現像用トナーの粉塵放散量(Dt)が、下記式(1)を満たすことを前提とする静電荷像現像用トナーである。
【0021】
60≦Dt≦195,449/Vp−1,040 (1)
[上記式中、Dtは前記トナーを静的環境下で加熱した際に発生する粉塵放散量(CPM(1分間の計測値:Counter Per Minute))を表し、Vpは画像形成装置におけるA4横換算での印刷速度(枚/分)を表す。但しVpは、177以下とする。]
ここで、トナーの粉塵とはトナーが加熱された際にトナーから遊離して発せられる物質を意味し、トナーの粉塵放散量(Dt)は静電荷像現像用トナーをダスト測定装置(SIBATA社製デジタル粉塵計LD−3K2)により後述する実施例に記載の方法で測定した値である。
【0022】
また、Vpにおける画像形成装置とはプリンター・複写機・ファクシミリ等を表すものである。
Vpを規格化するためのA4横換算での印刷速度(枚/分)とは、用紙サイズがA4判である紙の短軸方向に印刷した場合に、本発明の静電荷像現像用トナーを搭載する画像形成装置が1分当たりに印刷可能な枚数を表す。なお、A4判とは297mm×210mmなので、A4横とは210mmである。
【0023】
またワックスとしては、満足いく定着性を静電荷像現像用トナーに付与させる為に、該トナー中に含有された状態におけるワックスの融点(以下、単にワックスの融点として記載する。)が90℃以下であるワックスを含む事が必須となる。これは融点の高すぎるワ
ックスはいくら昇華エネルギーが低くてもトナーが定着器で溶融された際にトナー内からの拡散速度が遅くなり、結果的にトナー表面に移行しないが故に、十分な離形性能を付与する事ができないからである。
【0024】
更に、あまりに融点が低すぎるワックスは、トナーの耐熱性を低下させる原因となり、輸送時のブロッキングなどの問題が発生する恐れがあるために使用する事ができず、融点55℃以上のワックスを含む事が必須となる。
ワックス自体の融点は55℃以上90℃以下である。なお、静電荷像現像用トナー中に含有された状態におけるワックスの融点は、後述する実施例に記載の方法;熱分析装置(DSC)を用い、トナー中の樹脂のガラス転移点に伴うエンタルピー緩和に由来するピーク(熱履歴)を消失させた状態で測定される値である。
【0025】
式(1)の左辺である60の値は、ホットオフセットを発生させないトナーの粉塵放散量(Dt)の下限値である。すなわち、静電荷像現像用トナーの粉塵放散量(Dt)が、60に満たない場合、紙面上に静電的に付着している静電荷像現像用トナーから定着ローラー表面に昇華するワックスを主体とする離形性成分の絶対量が少なすぎて、十分な離形能力を付与できない事によりホットオフセットが発生する。
【0026】
式(1)の左辺は、ホットオフセットを発生させないトナーの粉塵放散量(Dt)の下限値である。
例えば、後述する参考例において、高付着量HOS性を満足するトナーDtの下限値は
、参考例2に示す112である。更に高付着量HOS性を満足できなかったDtは参考例4に示す21である。この
両者の中間の値は、(112+21)/2=66.5となる。
【0027】
一方、本発明の実施例・比較例においてトナーの粉塵放散量を測定したダスト測定装置(SHIBATA社製デジタル粉塵計LD−3K2)の測定精度は±10%である為、66.5に測定精度上ありえる値の0.9を乗じ、66.5×0.9=60の数値をトナーの粉塵放散量の下限値とした。
本発明において、トナーの粉塵放散量(Dt)は、例えば日本国特開2010−2338号公報に開示されている粉塵検出測定装置を使用し、粉塵検出測定装置を使用して放散された粉塵量をダスト測定装置(SIBATA社製デジタル粉塵計LD−3K2)を使用して測定することができる。
【0028】
式(1)の右辺は、画像形成装置で連続印刷した際に、1時間当たりに発生するダスト量(ダスト放散速度:Vd)を3.0以下にする為に必要となるトナーの粉塵放散量上限(DtL)から決定したものである。この右辺に値する195,449/Vp−1,040という数式は、実施例に示す条件で測定した静電荷像現像用トナーの粉塵放散量(Dt)及びダストの放散速度(Vd)の実測値から必然的に求められる関数である。
【0029】
トナーから粉塵が放散する環境や粉塵検出測定装置によって、式(1)の左辺に示す下限値は異なり、画像形成装置で連続印刷した際に1時間当たりに発生するダスト量(ダスト放散速度:Vd)の設定値によって、式(1)の右辺に示す数値は変化する。トナーから粉塵が放散する環境や粉塵検出測定装置を同条件とした場合には、印刷速度(Vp)の異なる画像形成装置であっても、式(1)の条件を満たす場合には、定着時に発生するダストを抑制しつつ、ホットオフセットの発生を抑制することができる。
【0030】
以下、この右辺の関数について説明する。
図4は、静電荷像現像用トナーの粉塵放散量(Dt)と画像形成装置から発生するダスト放散速度(Vd)との関係を示すグラフである。横軸にトナーを静的環境下で加熱した際に発生する粉塵放散量(Dt)を示し、縦軸に画像形成装置で連続印刷した際に、1時
間当たりに発生するダスト量(ダスト放散速度:Vd)を示す。図中の右上がりの実線は1分当たりA4横換算で36枚(Vp=36)の印刷速度で連続印刷した4点(実施例1及び参考例1乃至3)の実測値を、最小二乗法を用い一次線形直線で結んだものである。この一次線形式は、Vd=5.53×10
−4×Dt+0.574であり、その相関係数の二乗は0.999となる。そのため、画像形成装置から発生するダスト量(ダスト放散速度:Vd)は、トナーの粉塵放散量(Dt)に一次線形比例している事が解かる。ここでダスト量(ダスト放散速度:Vd)は、ブルーエンジェルマーク認定の測定法(RAL
UZ122 2006)に従って捕集した粉塵を、後述する実施例の方法によって測定する。
【0031】
さらに、前述の通り単位時間当たりに印刷する枚数が多い画像形成装置では、より静電荷像現像用トナーを多く消費する為、結果的に単位時間当たりに発生するダスト量が多くなり、そのダスト量(ダスト放散速度:Vd)は印刷速度に比例する事となる。
例えば1分間に1枚印刷される装置と2枚印刷される装置では、後者の方が2倍のトナーを消費するので、画像形成装置から発生する粉塵量も2倍となるという事を意味する。すなわち、印刷速度36枚/分で連続印刷した静電荷像現像用トナーの粉塵放散量(Dt)と、この静電荷像現像用トナーを用いた画像形成装置から発生するダスト量(ダスト放散速度:Vd)との実測値から、印刷速度が増減した際の画像形成装置から発生するダスト量(ダスト放散速度:Vd)を比例計算し、その計算値を最小二乗法により一次線形で結んだものが、
図4における点線となる。
【0032】
さらに詳しい説明を加えると、
図4において、実線で示すA4横換算での印刷速度が36枚/分における画像形成装置のダスト放散速度(Vd)が3.7(mg/hr)となる静電荷像現像用トナーの場合、この静電荷像現像用トナーの粉塵放散量(Dt)の実測値は5,665(CPM)である。この静電荷像現像用トナーを用いて、A4横換算での印刷速度を120枚/分に増加させると仮定すると、この現像用トナーを用いた画像形成装置から発生するダスト量(ダスト放散速度:Vd)は、増加した印刷速度に比例するため、(120/36)×3.7=12.3(mg/hr)となる。この静電荷像現像用トナーの粉塵放散量(Dt)は5,665(CPM)であるため、
図4において、横軸(トナー粉塵放散量:Dt)5,665、縦軸(ダスト放散速度:Vd)12.3のポイントに△(三角形)のドットを記載した。
【0033】
この様に
図4において、実線は、後述する実施例1及び参考例1乃至3から、A4横換算での印刷速度36枚/分において実測したトナー粉塵放散量(Dt)と、このトナーを用いて画像形成装置から1時間当たりに発生するダスト放散速度(Vd)とから最小二乗法を用いて、各測定結果を一次線形で結んだものである。
点線は、実測した結果から、印刷速度の増減に伴う画像形成装置から発生するダスト量(ダスト放散速度:Vd)を比例計算し、各印刷速度(Vp)におけるトナー粉塵放散量(Dt)と画像形成装置から発生するダスト放散速度(Vp)の関係を表したものである。
【0034】
さらに、
図4において、Vd=3.0の水平線を描いた。この水平線と最小二乗法を用いて一次線形でトナーの粉塵放散量(Dt)と画像形成装置から発生するダスト放散速度(Vd)の関係を結んだ点線及び実線との交点座標の横軸値は、ダスト放散速度(Vd)を3.0以下の特定値にした場合のトナー粉塵放散量上限(DtL)を示す。
図5は、各印刷速度(Vp)を横軸に、トナー粉塵放散量上限(DtL)を縦軸に示した。
図5に示すように、印刷速度が速くなると単位時間当たりに消費される静電荷像現像用トナーも多くなるので、粉塵放散量を特定値(例えば規制値)以下にするためには、単位質量当たりの静電荷像現像用トナーから放散される粉塵量の上限も少なく設定しなければならない事が明確に解かる。
【0035】
図5の○(円形)ドットで示す印刷速度(Vp)とトナー粉塵放散量上限(DtL)の関係を、最小二乗法を用いて逆比例する形で式を与えるとトナー粉塵放散量上限DtL=195,449/Vp−1,040という式が成立する。これが、各印刷速度(Vp)におけるトナー粉塵放散量上限(DtL)となり、式(1)の右辺はそれに対応する形となる。
【0036】
画像形成装置で連続印刷した際の1時間当たりに発生するダスト量(ダスト放散速度:Vd)は数値が小さい方が好ましく、好ましいダスト放散速度(Vd)が1.8以下の特定値を満たすためには、静電荷像現像用トナーからの粉塵放散量(Dt)は、式(2)を満たすことが好ましい。
60≦Dt≦117,262/Vp−1,039 (2)
式(2)は、画像形成装置から1時間当たりに発生するダスト量(ダスト放散速度:Vd)を好適な特定値である1.8以下にする為の要件であり、式(1)を決定する方法と同様に、実施例に示すような静電荷像現像用トナーの粉塵放散量(Dt)及びダストの放散速度(Vd)の実測値から必然的に求められる関数である。
【0037】
上記式(2)中、Dtは前記静電荷像現像用トナーを加熱した際に発生する1分当たりの粉塵放散量(CPM)を表し、Vpは画像形成装置におけるA4横換算での印刷速度(枚/分)を表す。但しVpは、106以下とする。
具体的には、
図4において、Vd=1.8の水平線と、トナー粉塵放散量(Dt)と画像形成装置から発生するダスト放散速度(Vd)の関係を最小二乗法を用いて一次線形で結んだ点線との交点座標の横軸値は、ダスト放散速度(Vd)を1.8以下の特定値にした場合のトナー粉塵放散量上限(DtL)を示す。そして、
図5に示すように横軸の各印刷速度(Vp)の値と、縦軸の各トナー粉塵放散量上限(DtL)の値とを△(三角形)ドットで示し、この△ドットで示す印刷速度(Vp)とトナー粉塵放散量上限(DtL)を最小二乗法により逆比例する形で式を与えると、トナー粉塵放散量上限DtL=117,262/(Vp−1,039)という式が成立する。これが、式(2)の右辺に対応する各印刷速度(Vp)におけるトナー粉塵放散量上限(DtL)の関係となる。
【0038】
画像形成装置で連続印刷した際の1時間当たりに発生するダスト量(ダスト放散速度)Vdのより好適な数値である1.1以下にする為には、Dtは式(3)を満たすことがより好ましい。
60≦Dt≦71,653/Vp−1,039 (3)
式(3)は、画像形成装置から1時間当たりに発生するダスト量(ダスト放散速度:Vd)を好適な特定値である1.1以下にする為の要件であり、式(1)を決定する方法と同様に、実施例に示すような静電荷像現像用トナーの粉塵放散量(Dt)及びダストの放散速度(Vd)の実測値から必然的に求められる関数である。
【0039】
上記式(3)中、Dtは前記静電荷像現像用トナーを加熱した際に発生する1分当たりの粉塵放散量(CPM)を表し、Vpは画像形成装置におけるA4横換算での印刷速度(枚/分)を表す。但しVpは、65以下とする。
具体的には、
図4において、Vd=1.1の水平線と、トナー粉塵放散量(Dt)と画像形成装置から発生するダスト放散速度(Vd)の関係を最小二乗法を用いて一次線形で結んだ点線との交点座標の横軸値は、ダスト放散速度(Vd)を1.1以下の特定値にした場合のトナー粉塵放散量上限(DtL)を示す。そして、
図5に示すように横軸の各印刷速度(Vp)の値と、縦軸の各トナー粉塵放散量上限(DtL)の値とを□(四角形)ドットで示し、この□ドットで示す印刷速度(Vp)とトナー粉塵放散量上限(DtL)を最小二乗法により逆比例する形で式を与えると、トナー粉塵放散量上限DtL=71,653/Vp−1,039という式が成立する。これが、式(3)の右辺に対応する各印
刷速度(Vp)におけるトナー粉塵放散量上限(DtL)の関係となる。
【0040】
画像形成装置で連続印刷した際の1時間当たりに発生するダスト量(ダスト放散速度)(Vd)の最も好適な数値である0.8以下にする為に、トナーの粉塵放散量(Dt)は式(4)を満たすことが特に好ましい。
60≦Dt≦52,104/Vp−1,039 (4)
式(4)は、画像形成装置から1時間当たりに発生するダスト量(ダスト放散速度:Vd)を好適な特定値である0.8以下にする為の要件であり、式(1)を決定する方法と同様に、実施例に示すような静電荷像現像用トナーの粉塵放散量(Dt)及びダストの放散速度(Vd)の実測値から必然的に求められる関数である。具体的には、
図4において、Vd=0.8の水平線と、トナー粉塵放散量(Dt)と画像形成装置から発生するダスト放散速度(Vd)の関係を最小二乗法を用いて一次線形で結んだ点線との交点座標の横軸値は、ダスト放散速度(Vd)を0.8以下の特定値にした場合のトナー粉塵放散量上限(DtL)を示す。そして、
図5に示すように横軸の各印刷速度(Vp)の値と、縦軸の各トナー粉塵放散量上限(DtL)の値とを◇(菱形)ドットで示し、この◇ドットで示す印刷速度(Vp)を最小二乗法により逆比例する形で式を与えると、トナー粉塵放散量上限DtL=52,104/Vp−1,039という式が成立する。これが、式(4)の右辺に対応する各印刷速度(Vp)におけるトナー粉塵放散量上限(DtL)の関係となる。
【0041】
上記式(4)中、Dtは前記静電荷像現像用トナーを加熱した際に発生する1分当たりの粉塵放散量(CPM)を表し、Vpは画像形成装置におけるA4横換算での印刷速度(枚/分)を表す。但しVpは、47以下とする。
(1−2.トナーの粉塵放散量(Dt)を上記式(1)乃至(4)とする制御方法)
静電荷像現像用トナーの粉塵放散量Dtが上記式(1)の範囲を満たすためには、ワックス、結着樹脂、着色剤、外添剤、その他物質の選択と添加量を調整すればよい。特に、粉塵の主体要因はワックスである事から、ワックスの昇華エネルギーにおいて適切な物質を選択し、その添加量を調整する事により静電荷像現像用トナーの粉塵放散量Dtを上記式(1)の範囲になる様に調整することができる。
【0042】
同様に、粉塵放散量Dtが式(2)の範囲を満たすためには、式(1)で選択したワックスよりも粉塵発生量の少ないワックスを選択するか、またはワックスの添加量を減らすことが好ましい。
また、粉塵放散量Dtが式(3)の範囲を満たすためには、式(2)で選択したワックスよりも粉塵発生量の少ないワックを選択するか、またはワックスの添加量を減らすことが好ましい。
【0043】
さらに、粉塵放散量Dtが式(4)を満たすためには、式(3)で選択したワックスよりも粉塵発生量の少ないワックス選択するか、またはワックスの添加量を減らすことが好ましい。
また、式(1)のみを満たす静電荷像現像用トナーに比べて、式(2)を満たす静電荷像現像用トナーは、より画像形成装置が高速機(単位時間当たりに印字するスピードが速い)でダスト放散速度を低減できる点からより好ましいと言える。同様に、式(1)および(2)のみを満たす静電荷像現像用トナーよりも式(3)を満たす静電荷像現像用トナーが、式(1)〜(3)を満たす静電荷像現像用トナーよりも式(4)を満たす静電荷像現像用トナーが、それぞれより画像形成装置が高速機(単位時間当たりに印字するスピードが速い)でダスト放散速度を低減できる点からより好ましいと言える。
【0044】
静電荷像現像用トナーの粉塵放散量Dtが上記式(1)の範囲を満たすためには、例えば、以下の(I)または(II)の方法に従い静電荷像現像用トナーとすればよい。
(I)結着樹脂、着色剤及び前記静電荷像現像用トナー中に含有された状態における融点が55℃以上90℃以下に少なくとも一点存在するワックスを含有する静電荷像現像用トナーにおいて、下記(a)から(c)を満足するようにする。
【0045】
(a)前記静電荷像現像用トナーが少なくともワックス成分Xとワックス成分Yの2種類のワックスを含有する。
(b)前記ワックス成分Yの粉塵放散量は前記ワックス成分Xの粉塵放散量よりも多い。
(c)前記ワックス成分Xの含有量が前記ワックス成分Yの含有量よりも多い。
(II)結着樹脂、着色剤及び前記静電荷像現像用トナー中に含有された状態における融点が55℃以上90℃以下に少なくとも一点存在するワックスを含有する静電荷像現像用トナーにおいて、下記(a)、(b)及び(e)を満足するようにする。
【0046】
(a)前記静電荷像現像用トナーが少なくともワックス成分Xとワックス成分Yの2種類のワックスを含有する。
(b)前記ワックス成分Yの粉塵放散量は前記ワックス成分Xの粉塵放散量よりも多い。
(e)前記ワックス成分Xと前記ワックス成分Yのワックス粉塵放散量と含有量のバランスを調整する。
【0047】
前記(b)及び(c)におけるワックス粉塵放散量とワックスの含有量について詳述する。
ワックス成分Xのワックス粉塵放散量をDw
Xとし、ワックス成分Yのワックス粉塵放散量をDw
Yとし、それぞれの静電荷像現像用トナー中の濃度をCw
X、Cw
Yとした場合に、以下の式を考える。
【0048】
Dw
All=ΣDw
n・Cw
n/100=(Dw
X×Cw
X+Dw
Y×Cw
Y)/100 (5)
上記式(5)において、Dw
Allはワックス起因粉塵放散量を表し、計算で導出される値であるが、トナー中に含まれるワックス成分がすべて放散したとしたらどの程度の放散量となるかを表す値である。すなわち、ワックス単体を放散させた際の放散量と、該放散量のワックスのトナー中の含有量の積となる。ワックスとしてワックス成分Xとワックス成分Yのように、複数のワックスをトナー中に存在させる場合には、それらの積の和がDw
Allとなる。
【0049】
なお、ワックスの粉塵放散量の定義及び測定方法は実施例に記載の通りである。
また、ワックスの静電荷像現像用トナー中の濃度は、その配合処方より計算することができる。
実施例1〜5、比較例1〜4及び参考例1〜4についての詳細は後述するが、各々のDw
All(CPM)の値を横軸にとり、縦軸にDt(静電荷像現像用トナーを加熱した際に発生する1分当たりの粉塵放散量)を取ったものを
図1に示す。
【0050】
最小二乗法により切片をゼロとした二次関数でフィッティングすると、以下の式が導かれる。
Dt=3.36×10
−5×Dw
All2−8.59×10
−2×Dw
All
(R
2=1.00) (6)
上記相関係数の2乗が1.00であることより、トナーから発生する粉塵量DtはDw
All、すなわちトナー中に存在させるワックスの粉塵放散量とトナー中に存在させるワックス含有量でほぼ決定されることが分かる。
【0051】
次に、後述する
図4からDtをDw
Allに換算し、ダスト放散速度Vdとの関係をみると、
図2に示すような一次線形でフィッティングすることができることが分かる。ここでの相関係数の二乗は1.00となることから、VdとDw
Allは非常に高い相関性を示すことが分かった。
さらに、
図4と同様に、本発明におけるダスト放散速度Vdの臨界点であるVdが3.0、1.8、1.1及び0.8の値に水平線を引くと、該水平線と一次線形線との交点のX座標の値が、それぞれの画像形成装置の印刷速度に応じたワックス起因粉塵放散量Dw
Allの最大値となる。
【0052】
前記交点となったDw
Allの最大値を縦軸に、その際のプリント速度Vpを横軸にプロットした図を
図3に示す。先述したように、DtとDw
Allとは相関があり一義に定まるので、
図3は、後述する
図5におけるDtをDw
Allに変換したものと同様となる。
図3は
図5と同様にDw
AllがVpに反比例する関数の形となり、相関係数の二乗も1.00であったことから、非常によい相関を示しているといえる。
【0053】
すなわち、設計した画像形成装置のプリント速度を決定すると、画像形成装置からの粉塵発生速度Vdの許容値ごとに、ワックス起因粉塵放散量Dw
Allの上限値を導出することができる。
以上より、電荷像現像用トナーの粉塵放散量Dtが上記式(1)の範囲を満たすための定性的な方向性を以下に示す。
(A)ワックスの粉塵放散量が多いと、耐ホットオフセット性(HOS)は良くなる一方で、画像形成装置からの粉塵発生速度Vdが増える。
(B)ワックス含有量が多いと、HOSは良くなる一方で、画像形成装置からの粉塵発生速度Vdが増える。
(C)ワックスの粉塵放散量が少なすぎると、HOSは悪くなるが、画像形成装置からの粉塵発生速度Vdは減少する。
(D)ワックス含有量が少なすぎると、HOSは悪くなるが、画像形成装置からの粉塵発生速度Vdは減少する。
(E)プリント速度Vpが遅いと、単位時間当たりに発生するダスト量が減り、Vdが減る。
(F)プリント速度Vpが速いと、単位時間当たりに発生するダスト量が増え、Vdが増える。
(G)Vdのしきい値を下げると、ワックスの粉塵放散量が多いものは選択しづらくなり、さらにワックスのトナー中濃度も上げにくくなるため、プリント速度も上げにくい。
【0054】
以上より、本発明の前提であるトナーを得るためには、トナーからの粉塵発生量Dtを制御することが肝要である。そのためには、ワックスの選定とワックスの含有量を制御することが最も重要であると言える。
次に、任意のワックスを選定した際のワックス含有量の最大許容値について述べる。 まずは、画像形成装置における印刷速度Vpを任意の値で設定する。これは画像形成装置の設計要件であり、その印刷速度における画像形成装置からの粉塵発生速度Vdが3.0以下に抑えることが必要である。
【0055】
Vpは
図3のX軸の値となるので、Vd=3.0mg/hrの曲線におけるY軸の値も決まる(
図3中マル印:○)。Y軸の値が決まると、ワックス起因粉塵放散量(Dw
All)について画像形成装置からの粉塵発生速度(Vd)3.0mg/hr以下を達成する為に許される最大量が決まる。
続いて、使用したいワックスの粉塵放散量(Dw)を実施例記載の方法にて測定する。
【0056】
これによりDwとDw
Allの値が決まる。上記式(5)の関係式を単純化すると、Cw=Dw
All/Dwとなるので、Dw
AllとDwに実際の値を代入すれば、Cwが求まることになる。
以上より、任意のVpを設定した際の粉塵発生速度(Vd)3.0mg/hr以下を達成する為に許されるワックスのトナー中に占める最大許容濃度(最大許容ワックス量)を導き出す事ができる。
【0057】
なお、上記導出方法を簡略化すると、次の手順により最大許容ワックスを求めることができる。
(a−1)Vpを任意の値で設定する。
(a−2)
図3のDw
All=3.70×10
4/Vp+1.61×10
3の数式に上記(a−1)で設定したVpを代入して、Dw
Allを求める。
(a−3)使用したいワックスの粉塵放散量(Dw)を実施例記載の方法にて測定する。(a−4)Cw=Dw
All/Dwの関係式に、上記(a−2)で求めたDw
Allと上記(a−3)で測定したDwを代入して、Cwを求める。
【0058】
以上のようにして、任意のVpや任意のワックスを選択した際、トナー中に含有させる事ができる最大許容ワックス濃度を求める事ができる。
先述したように、ワックスからの粉塵放散量が少なすぎる場合にはHOSが悪くなる。そこで、本発明に係るトナーでは、ワックスについて、最大許容ワックス濃度のみでなく、最小ワックス含有量も規定する。
【0059】
後述する実施例や比較例で検討した結果、本発明に係るトナーからの粉塵発生量Dtが60を下回り、定着ローラーに十分な離形性を付与できなくなるとHOSが悪くなる。そのため、Dtは60以上に設計する事が必須となる。
図1より、DtとDw
Allには上記式(6)の関係がある。式(6)におけるDtに60を代入することにより、Dw
Allは一義に定まる。
【0060】
Dw
Allが算出された事により、選択したワックスの粉塵放散量Dwを実施例記載の方法にて測定することにより、Cw=Dw
All/Dwの関係式におけるDw
All/Dwの値を出すことができ、Cwを得ることができる。ここで得られたCwが任意のワックスを選択した際の最小ワックス含有量となる。
上記導出方法を簡略化すると、次の手順により最小許容ワックスを求めることができる。
(b−1)式(6)のDtに101を代入し、Dw
Allを求める。(Dw
All=3,272となる。)
(b−2)使用したワックスの粉塵放散量Dwを実施例記載の方法にて測定する。
(b−3)Cw=Dw
All/Dwの関係式に上記(b−1)で求めたDw
Allと上記(b−2)で求めたDwの値を代入してCwを求める。
【0061】
以上のようにして、トナーの付着量の多いグラフィックスユースの場合のHOSを悪くしないための最小ワックス含有量を求めることができる。
同様に、粉塵放散量Dtが式(2)〜(4)のいずれかの範囲を満たす静電荷像現像用トナーは、前記方法(I)においては、シェルコア構造を有する静電荷像現像用トナーとし、シェル材にワックス成分Yを含有させ、コア材にワックス成分Xを含有させることにより得られる。
【0062】
方法(II)においては、後述する重合体一次粒子にワックスを含有させて外添し、静電荷像現像用トナーとする前のトナー母粒子全体にワックス成分X及びワックス成分Yを分散させた状態とすることで得られる。ワックス成分X及びワックス成分Yの粉塵放散量
及びトナー中の含有量は上述した関係をそれぞれ満たすことが必要となる。
本発明の現像用トナーは、実施例の<静電荷現像用トナー中に含まれた状態におけるワックス融点の測定方法と定義>に記載の方法で測定することにより、トナー中に含有された状態におけるワックスの融点が求めることができる。本発明の現像用トナーは、トナー中に含有された状態におけるワックスの融点が55℃以上90℃以下に少なくとも1点存在するトナーであることが前提となる。
【0063】
また、前記方法(I)及び(II)で得られた現像用トナーは、前記トナー中に含まれた状態におけるワックス融点の測定方法によれば、トナー中に含まれた状態におけるワックスの融点が、少なくとも、55℃以上70℃未満に1点存在し、且つ70℃以上80℃以下に1点存在するトナーであることが好ましい。
さらに本発明の現像用トナーは、単位時間当たりに多くの静電荷像現像用トナーを消費する高速機や、グラフィックユースにおける静電荷像現像用トナーの紙への付着量が多くなる場合においても、定着時に発生するダストを抑制しつつ、グラフィックスユースなどのトナー付着量が多い場合の耐ホットオフセット性も向上させる事ができることから、高速印刷時に好適に用いられる。中でも印刷速度(Vp)が20(枚/分)以上、より好ましくは印刷速度(Vp)が30(枚/分)以上の高速機において、前記効果を特に発揮することから、好適に用いられる。
【0064】
<2.DSC2回目昇温過程の吸熱量について>
本発明の現像用トナーは、DSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダーを、65.6℃以上70.8℃以下に有することを必須とする。本発明は、該減衰するピークまたはショルダーを、66.5℃以上に有することが好ましく、66.9℃以上に有することが更に好ましく、67.5℃以上に有することが特に好ましい。一方、本発明は、該減衰するピークまたはショルダーを、69.6℃以下に有することが好ましく、69.4℃以下に有することが更に好ましく、69.2℃以下に有することが特に好ましい。該減衰するピークまたはショルダーを、65.6℃より低い範囲で有すると現像用トナーの保存性が悪くなる場合があり、一方、該減衰するピークまたはショルダーを、70.8℃より高い範囲で有すると低温定着性が悪化し、実用的でなくなる場合がある。
【0065】
上述のDSC1回目および2回目の測定方法及び、減衰するピークまたはショルダーの定義方法については、実施例に記載の方法に従う。
上述したような、トナーの加熱時に結着樹脂のエンタルピー緩和あるいは一部分が結晶化している事などに由来する吸熱ピークまたはショルダー温度をある特定の非常に狭い範囲に有する本発明の現像用トナーは、以下(III−1)〜(III−4)に記載の方法によって得られる。
【0066】
(III−1)本発明のトナーを構成する結着樹脂として、共重合体樹脂を採用し、モノマーとしてTgの異なるモノマーを用い、さらに、そのTgの異なるモノマーの共重合組成比率をTgの異なるモノマー量を調整する。具体的には、結着樹脂としてスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−アクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等を挙げることができる。これらの樹脂は単独で用いることも、いくつかを併用することもできる。その際、例えば、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体の場合、アクリル酸アルキルに比しスチレン成分を増やせば結着樹脂のエンタルピー緩和あるいは一部分が結晶化している事
などに由来する吸熱ピークまたはショルダー温度を上げる事ができ、このスチレン−アクリル酸アルキル共重合体の比率を調整する事で、DSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダーを65.6℃以上70.8℃以下に有するように制御する事ができる。
【0067】
(III−2)モノマーをポリマーにコンバートする際に添加する連鎖移動剤の量を調整したり、重合開始剤の添加量または重合温度を調整するなどして結着樹脂の重合反応中のラジカル濃度を変化させる事により、臨界分子量(Mc)以下の成分を調整することによってもDSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダーを65.6℃以上70.8℃以下に有するように制御する事ができる。
【0068】
臨界分子量(Mc)とは、絡み合い転換分子量(Me)の2倍の分子量に相当し、絡み合い転換分子量とは、モノマーに固有の値であって分子鎖が絡みあっている点間の分子量である。更に分子鎖が絡み合い折り返して他の分子に絡み合い始めて高分子的振る舞いをみせる。この絡み合い転換分子量(Me)の2倍の分子量に相当するのが、臨界分子量(Mc)である。臨界分子量以上の高分子鎖は、モノマーに応じ固有のTgを有するが、臨界分子量以下の低分子鎖はその分子鎖長に応じDSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダー温度が減衰する。つまり、モノマーをポリマーにコンバートする際に添加する連鎖移動剤の量を増量し、臨界分子量以下の成分を増やすことによりDSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダー温度を下げる事ができる。この様にして前記の結着樹脂に応じた、連鎖移動剤を選択しその量を調整する事で、DSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダー温度を制御する事ができる。
【0069】
不飽和二重結合を有するモノマーをラジカル重合する場合には、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタンなどの連鎖移動剤を選択する事ができる。
また多価アルコールと多塩基酸とを縮合重合させる事により得られるポリエステル樹脂においては、2価のアルコールとして、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノールAアルキレンオキシド付加物、その他を挙げることができ、多塩基酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、これらの酸の無水物、低級アルキルエステル、又はn−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸等のアルケニルコハク酸類若しくはアルキルコハク酸類、その他の2価の有機酸を挙げることができ、縮合反応中の減圧度や温度を下げれば脱水反応が抑制されDSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダー温度が下がる。この様にしてDSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダー温度を制御する事ができる。
【0070】
(III−3)本発明のトナーを構成する結着樹脂として、結晶性樹脂成分を含有させる。
結晶性樹脂成分としてとしては、長鎖アルキル基をもつ、ステアリルアクリレートやベ
ヘニルアクリレート等のアクリル酸誘導体やステアリルメタクリレートやベヘニルメタクリレートなどのメタクリル酸誘導体等やポリエステル系の結晶性樹脂であれば、多価アルコールとして脂肪族炭化水素を含んだものが好ましく、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1 , 4 -ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、1 ,
5 -ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタングリコール、1 , 6 -ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1 , 7 -ヘプタンジオール、1 , 8 -オクタンジオール、1 , 9 -ノナンジオール、1 , 1 0 -デカンジオール、ジプロピレ
ングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールを使用する事により得られたポリエステル系結晶性樹脂を5〜30質量%含有させる事により、DSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダー温度が下がる。この様にしてDSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダー温度を制御する事ができる。
【0071】
(III−4)本発明のトナーを構成する結着樹脂と相溶性の高いワックス成分を含有させる。
相溶性の高いワックス成分とは、結着樹脂成分とソリュビリティーパラーメーターの近いワックスを選定するか、異なるソリュビリティーパラーメーターでも低分子量のものを選択するなどしてDSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダー温度を制御する事ができる。ソリュビリティーパラーメーターは、昇華性の総和値からも計算されているように、ワックス起因粉塵放散量、ひいてはトナー粉塵放散量と密接な係わり合いがある。つまり昇華性を低くする方向性は極性基を有するか炭化水素であれば分子量が高い場合であるため、ソリュビリティーパラーメーター値の大きなものは昇華性が低くなる。例えば同一分子量の炭化水素系ワックスとエステル系ワックスとでは、エステル部分の極性が高いためソリュビリティーパラーメーターは多きくなり昇華性は低くなる。エステル系ワックスは炭化水素系ワックスに比し、一般的に静電荷現像用トナーの結着樹脂成分として用いられるスチレンアクリル系樹脂やポリエステル系樹脂への相溶性は大きくなり、DSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダー温度は低下する方向性となる。
【0072】
<3.角速度20〜100rad/secにおけるtanδの平均値について>
本発明の現像用トナーは、140℃における動的粘弾性測定において、角速度20〜100rad/secにおけるtanδの平均値が1.62以上2.20以下であることを必須とする。本発明においては、該tanδの平均値が、1.82以上であることが好ましく、1.8
6以上であることが更に好ましく、1.94以上であることが特に好ましい。一方、該tanδの平均値は、2.13以下であることが好ましく、2.12以下であることがより好
ましく、2.11以下であることが特に好ましい。該tanδの平均値が、1.62より低
いとグロスが悪化し実用的でなくなる場合があり、一方、該tanδの平均値が、2.20
より高いと対ホットオフセット性が悪化し、ホットオフセットが発生し易くなる場合がある。
【0073】
上述したような、トナーの粘弾性測定において20rad/sec以上の高周波数領域でのみ観
測されるtanδ(位相差)のプラトー領域の平均値をある特定の狭い範囲に有する本発明
の現像用トナーは、以下(IV−1)〜(IV−2)に記載の方法によって得られる。
(IV−1)本発明のトナーを構成する結着樹脂に用いられるモノマーの一次分子鎖長に応じて、結着樹脂を重合して得る際に架橋成分量を調整する。
【0074】
不飽和二重結合を有するモノマーをラジカル重合する場合には、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリ
コールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。また、反応性基をペンダントグループに有する重合性モノマー、例えばグリシジルメタクリレート、メチロールアクリルアミド、アクロレイン等の添加量を増量する事で、20rad/sec以上の高周波数領域でのみ観測
されるtanδ値を下げる事ができ、多価アルコールと多塩基酸とを縮合重合させる事によ
り得られるポリエステル樹脂においては、3価以上の多塩基酸として、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、及びこれらの無水物の添加量を増量する事で、20rad/sec以上の高周波数領域でのみ観測されるtanδ値を下げる事ができる。これら架橋剤の添加量を調整する事で架橋成分量を調整し、20rad/sec以上の高周波数領域で
のみ観測されるtanδ値を制御する事ができる。
【0075】
(IV−2)本発明のトナーを構成する結着樹脂に用いられるモノマーの一次分子鎖長を調整する。
不飽和二重結合を有するモノマーをラジカル重合する場合には、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタンなどの連鎖移動剤を下げる事により、一次分子鎖長を長くでき、同一架橋剤量でも架橋成分を増やすことができるため、tanδ値を下げる事ができる。ポリエステ
ル系樹脂であれば縮合反応過程において一価のアルコール成分量を減らしたり、減圧度や温度を下げる事によりtanδ値を下げる事ができる。このように一次分子鎖長を調整する
事によりtanδ値を制御する事ができる。
【0076】
<4.動的粘弾性測定から求められる可塑化開始温度について>
本発明の現像用トナーは、本発明の効果を著しく損なわない限り、動的粘弾性測定から求められる可塑化開始温度に限定はないが、トナーの保存性と低温定着性の観点から、動的粘弾性測定から求められる可塑化開始温度は、通常、73.5℃以上であり、好ましくは、74.8℃以上であり、更に好ましくは75.2℃以上であり、特に好ましくは75.9℃以上であり、一方、通常、80.5℃以下であり、好ましくは79.2℃以下であり、更に好ましくは78.9℃以下であり、特に好ましくは78.4℃以下である。動的粘弾性測定から求められる可塑化開始温度が、73.5℃より低いとトナーの保存性が悪化し実用的でなくなる場合があり、一方、動的粘弾性測定から求められる可塑化開始温度が、80.5℃より高いと低温定着性が悪化し実用的でなくなる場合がある。
【0077】
上述したような、動的粘弾性測定から求められる可塑化開始温度を特定の範囲に有する本発明の現像用トナーは、以下(V−1)〜(V−4)に記載の方法によって得られる。
上記の動的粘弾性測定から求められる可塑化開始温度を満たすトナーは以下の様にして得ることができる。
(V−1)本発明のトナーを構成する結着樹脂として、共重合体樹脂を採用し、モノマーとしてTgの異なるモノマーを用い、さらに、そのTgの異なるモノマーの共重合組成比率をTgの異なるモノマー量を調整する。
【0078】
具体的には、結着樹脂としてスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−アクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重
合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等を挙げることができる。これらの樹脂は単独で用いることも、いくつかを併用することもできる。その際、例えば、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体の場合、アクリル酸アルキルに比しスチレン成分を増やせば動的粘弾性測定から求められる可塑化開始温度を上げる事ができ、このスチレン−アクリル酸アルキル共重合体の比率を調整する事で、動的粘弾性測定から求められる可塑化開始温度を制御する事ができる。
【0079】
(V−2)モノマーをポリマーにコンバートする際に添加する連鎖移動剤の量を調整したり、重合開始剤の添加量または重合温度を調整するなどして結着樹脂の重合反応中のラジカル濃度を変化させる事により、臨界分子量(Mc)以下の成分を調整することによっても動的粘弾性測定から求められる可塑化開始温度を制御する事ができる。
臨界分子量(Mc)とは、絡み合い転換分子量(Me)の2倍の分子量に相当し、絡み合い転換分子量とは、モノマーに固有の値であって分子鎖が絡みあっている点間の分子量である。更に分子鎖が絡みあい折り返して他の分子に絡み合い始めて高分子的振る舞いをみせる。この絡み合い転換分子量(Me)の2倍の分子量に相当するのが、臨界分子量(Mc)である。臨界分子量以上の高分子鎖は、モノマーに応じ固有のTgを有するが、臨界分子量以下の低分子鎖はその分子鎖長に応じTgが低くなる。つまり、モノマーをポリマーにコンバートする際に添加する連鎖移動剤の量を増量し、臨界分子量以下の成分を増やすことにより動的粘弾性測定から求められる可塑化開始温度を下げることができる。この様にして前記の結着樹脂に応じた、連鎖移動剤を選択しその量を調整する事で、動的粘弾性測定から求められる可塑化開始温度を制御する事ができる。不飽和二重結合を有するモノマーをラジカル重合する場合には、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタンなどの連鎖移動剤を選択する事ができる。
【0080】
また多価アルコールと多塩基酸とを縮合重合させる事により得られるポリエステル樹脂においては、2価のアルコールとして、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノールAアルキレンオキシド付加物、その他を挙げることができ、多塩基酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、これらの酸の無水物、低級アルキルエステル、又はn−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸等のアルケニルコハク酸類若しくはアルキルコハク酸類、その他の2価の有機酸を挙げることができ、縮合反応中の減圧度や温度を下げれば脱水反応が抑制されDSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダー温度が下がる。この様にしてDSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダー温度を制御する事ができる。
【0081】
(V−3)本発明のトナーを構成する結着樹脂として、結晶性樹脂成分を含有させる。
結晶性樹脂成分としてとしては、長鎖アルキル基をもつ、ステアリルアクリレートやベヘニルアクリレート等のアクリル酸誘導体やステアリルメタクリレートやベヘニルメタクリレートなどのメタクリル酸誘導体等やポリエステル系の結晶性樹脂であれば、多価アルコールとして脂肪族炭化水素を含んだものが好ましく、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1 , 4 -ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、1 ,
5 -ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタングリコール、1 , 6 -ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1 , 7 -ヘプタンジオール、1 , 8 -オクタンジオール、1 , 9 -ノナンジオール、1 , 1 0 -デカンジオール、ジプロピレ
ングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールを使用する事により得られたポリエステル系結晶性樹脂を5〜30質量%含有させる事により、動的粘弾性測定から求められる可塑化開始温度を下げることができる。動的粘弾性測定から求められる可塑化開始温度を制御する事ができる。
【0082】
(V−4)本発明のトナーを構成する結着樹脂と相溶性の高いワックス成分を含有させる。
相溶性の高いワックス成分とは、結着樹脂成分とソリュビリティーパラーメーターの近いワックスを選定するか、異なるソリュビリティーパラーメーターでも低分子量のものを選択するなどして動的粘弾性測定から求められる可塑化開始温度を制御する事ができる。ソリュビリティーパラーメーターは、昇華性の総和値からも計算されているように、ワックス起因粉塵放散量、ひいてはトナー粉塵放散量と密接な係わり合いがある。つまり昇華性を低くする方向性は極性基を有するか炭化水素であれば分子量が高い場合であるため、ソリュビリティーパラーメーター値の大きなものは昇華性が低くなる。例えば同一分子量の炭化水素系ワックスとエステル系ワックスとでは、エステル部分の極性が高いためソリュビリティーパラーメーターは多きくなり昇華性は低くなる。エステル系ワックスは炭化水素系ワックスに比し、一般的に静電荷現像用トナーの結着樹脂成分として用いられるスチレンアクリル系樹脂やポリエステル系樹脂への相溶性は大きくなり、動的粘弾性測定から求められる可塑化開始温度を下げる事ができる。
【0083】
<5.トナーの構成>
本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂、着色剤及び静電荷現像用トナー中に含有された状態におけるワックスの融点に起因するピークまたはショルダーが2回目のDSC昇温過程において55℃以上90℃以下に少なくとも1点存在し、かつ静電荷現像用トナーの粉塵放散量(Dt)が、下記式(1)を満たす静電荷像現像用トナーにおいて、
60≦Dt≦195,449/Vp−1,040 (1)
DSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダーを65.6℃以上70.8℃以下に有し、140℃における動的粘弾性測定において、角速度20〜100rad/secにおけるtanδの平均値が1.62以上2.20以下であればよい。また、本発明の効果をより顕著に発揮させる観点から、更に動的粘弾性測定から求められる可塑化開始温度を73.5℃以上80.5℃以下にすることが好ましい。本発明の現像用トナーを得る手段の例としては前述した(III−1)〜(III−4)、(IV−1〜IV−2)及び(V−1)〜(V−4)に記載の通りである。
【0084】
本発明の現像用トナーを製造する方法は特に限定されるものではなく、湿式法トナーや粉砕法トナーの製造方法において、前述した(III−1)〜(III−4)、(IV−1〜IV−2)及び(V−1)〜(V−4)の製造方法を適宜採用しながら、以下に説明する構成を採用すればよい。
本発明のトナーを構成する結着樹脂としては、トナーに用い得ることが知られているものの中から適宜選択して用いればよい。例えば、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−アクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等を挙げることができる。これらの樹脂は単
独で用いることも、いくつかを併用することもできる。
【0085】
本発明のトナーを構成する着色剤としては、トナーに用い得ることが知られているものの中から適宜選択して用いればよい。例えば、以下に示すイエロー顔料、マゼンタ顔料及びシアン顔料が挙げられ、黒色顔料としてはカーボンブラック又は以下に示すイエロー顔料/マゼンタ顔料/シアン顔料を混合して黒色に調色されたものが利用される。
このうち、黒色顔料としてカーボンブラックは、非常に微細な一次粒子の凝集体として存在し、顔料分散体として分散させたときに、再凝集による粒子の粗大化が発生しやすい。カーボンブラック粒子の再凝集の程度は、カーボンブラック中に含まれる不純物量(未分解有機物量の残留程度)の大小と相関が見られ、不純物が多いと分散後の再凝集による粗大化が激しい傾向を示す。
【0086】
不純物量の定量的な評価として、以下の方法で測定されるカーボンブラックのトルエン抽出物の紫外線吸光度が0.05以下であることが好ましく、0.03以下であることが一層好ましい。一般に、チャンネル法のカーボンブラックは不純物が多い傾向を示すので、本発明におけるカーボンブラックとしては、ファーネス法で製造されたものが好ましい。
【0087】
カーボンブラックの紫外線吸光度(λc)は、次の方法で求める。
まずカーボンブラック3gをトルエン30mlに充分に分散、混合させ、続いてこの混合液をNo.5C濾紙を使用して濾過する。その後、濾液を吸光部が1cm角の石英セルに入れて市販の紫外線分光光度計により、波長336nmの吸光度(λs)を測定する。そして同じ方法でリファレンスとしてトルエンのみの吸光度(λo)を測定し、紫外線吸光度λc=λs−λoにより求めることができる。市販の分光光度計としては、例えば島津製作所製紫外可視分光光度計(UV−3100PC)等を用いることができる。
【0088】
イエロー顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物等に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、150、155、168、180、194等が好適に用いられる。
マゼンタ顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキウ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。
【0089】
具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、173、184、185、202、206、207、209、220、221、238、254、C.I.ピグメントバイオレット19等が好適に用いられる。中でもC.I.ピグメントレッド122、202、207、209、C.I.ピグメントバイオレット19で示されるキナクリドン系顔料が特に好ましい。キナクリドン系顔料の中でも、C.I.ピグメントレッド122で示される化合物が、特に好ましい。
【0090】
シアン顔料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等及び、C.I.ピグメントグリーン7、36等が特に好適に利用できる。
<6.湿式法トナー>
湿式法トナーについて説明する。
【0091】
水系媒体中でトナーを得る湿式法としては、懸濁重合法、乳化重合凝集法等の水系媒体
中で不飽和二重結合を有するモノマーをラジカル重合または水系媒体中でポリエステル樹脂の様に縮合重合を行う方法や、乳化凝集法(ポリエステル樹脂等を高圧条件及びまたは溶剤存在下で水中に微粒子化しトナーサイズ以下であるサブミクロンサイズの大きさとし、その後その微粒子をトナーサイズであるミクロンサイズまで凝集させる方法)、化学粉砕法が好適に利用されている。以下、「重合法」と略記し、得られたトナーを「重合法トナー」と略記する。)例えば、従来の重合法トナーの製造工程において、懸濁重合法の場合は、重合性モノマー滴を生成する工程で高いせん断力を与えたり、分散安定剤等を増量させたりする方法等が挙げられる。
【0092】
特定範囲の粒径を有するトナーを得る方法としては、前記した懸濁重合法、乳化重合凝集法、乳化凝集法、化学粉砕法等の重合法何れの製造方法をも使用することができるが、懸濁重合法、化学粉砕法においては、何れもトナー母粒子径より大きなサイズから小さなサイズへ調製する。そのため、平均粒子径を小さくしようとすると小粒子側の粒子径割合が増加する傾向にあり、分級工程等の過度の負担が強いられる。
【0093】
これに対して、乳化重合凝集法や乳化凝集法に代表される水中でのビルドアップ法は、トナー母粒子径より小さなサイズから、大きな粒子へ調製するため、比較的粒子径分布がシャープで、分級工程等の工程を介さずに、整った粒子径分布をもつトナーが得られる。以上の理由により、乳化重合凝集法または乳化凝集法により本発明のトナーを製造することが特に好ましい。
【0094】
なお、粉砕法トナーでは通常分級工程が必須であるが、湿式法トナーでは、特に乳化重合凝集法によれば、分級しなくても所望の粒径分布を得ることができる。
以下、重合トナーの製造方法の中でも、本発明において特に好ましい製法の一例である水系媒体中で不飽和二重結合を有するモノマーをラジカル重合を行う乳化重合凝集法により製造されるトナーについて更に詳細に説明する。
【0095】
乳化重合凝集法によりトナーを製造する場合、通常、重合工程、混合工程、凝集工程、熟成工程、洗浄・乾燥工程を有する。すなわち、一般的には乳化重合により得た重合体一次粒子を含む分散液に、着色剤、帯電制御剤、ワックス等の分散液を混合し、この分散液中の一次粒子を凝集させて粒子凝集体とし、微粒子等を付着した後に融着させて得られた粒子を必要に応じて洗浄、乾燥することによりトナー母粒子が得られる。トナーがシェルコア構造を形成したものである場合には、重合、混合、凝集によりコア材凝集工程を経て形成したコアに、シェル材となる重合体一次粒子分散液を添加、保持したのち、円形化工程、洗浄乾燥工程によって、シェルコア構造を形成することができる。
【0096】
乳化重合凝集法に用いられる重合体一次粒子を構成する結着樹脂は乳化重合法により重合可能な1種又は2種以上の重合性モノマーを適宜用いればよい。コア材、シェル材、又はシェルコア構造を形成しないトナー母粒子に用いる重合性モノマーとしては、ブレンステッド酸性基を有する重合性モノマー(以下、単に「酸性モノマー」と称すことがある。)又はブレンステッド塩基性基を有する重合性モノマー(以下、単に「塩基性モノマー」と称することがある。)と、ブレンステッド酸性基及びブレンステッド塩基性基の何れをも有さない重合性モノマー(以下、「その他のモノマー」と称することがある。)とを原料重合性モノマーとして使用することが好ましい。この際、各重合性モノマーは別々に加えても、予め複数の重合性モノマーを混合しておいて同時に添加しても良い。更に、重合性モノマーの添加途中で重合性モノマー組成を変化させることも可能である。また、重合性モノマーはそのまま添加しても良いし、予め水や乳化剤等と混合、調製した乳化液として添加することもできる。
【0097】
「酸性モノマー」としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ
皮酸等のカルボキシル基を有する重合性モノマー、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有する重合性モノマー、ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有する重合性モノマー等が挙げられる。
「塩基性モノマー」としては、アミノスチレン等のアミノ基を有する芳香族ビニル化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の窒素含有複素環含有重合性モノマー、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0098】
これら酸性モノマー及び塩基性モノマーは、単独で用いても複数を混合して用いてもよく、また、対イオンを伴って塩として存在していてもよい。中でも、酸性モノマーを用いるのが好ましく、より好ましくはアクリル酸及び/又はメタクリル酸であるのがよい。重合体一次粒子としてのバインダー樹脂を構成する全重合性モノマー100質量%中に占める酸性モノマー及び塩基性モノマーの合計量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上である。上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0099】
「その他のモノマー」としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、アクリル酸アミド等が挙げられる。重合性モノマーは、単独で用いてもよく、また複数を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
本発明においては、上述した重合性モノマー等を組み合わせて用いる中でも、好ましい実施態様として酸性モノマーとその他のモノマーを組み合わせて用いるのがよい。より好適には、酸性モノマーとしてアクリル酸及び/又はメタクリル酸を、その他のモノマーとしてスチレン類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類の中から選択される重合性モノマーを用いるのがよく、より好ましくは酸性モノマーとしてアクリル酸及び/又はメタクリル酸を、その他のモノマーとしてスチレンとアクリル酸エステル類及び/又はメタクリル酸エステル類との組み合わせであるのがよく、特に好適には酸性モノマーとしてアクリル酸及び/又はメタクリル酸を、その他のモノマーとしてスチレンとアクリル酸n−ブチルとの組み合わせであるのが好適である。
【0101】
更に、重合体一次粒子を構成するバインダー樹脂として架橋樹脂を用いる場合、上述の重合性モノマーと共用される架橋剤としてはラジカル重合性を有する多官能性モノマーが用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。また、反応性基をペンダントグループに有する重合性モノマー、例えばグリシジルメタクリレート、メチロールアクリルアミド、アクロレイン等を用いることも可能である。中でもラジカル重合性の二官能性モノマーが好ましく、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレートが特に好ましい。
【0102】
これら多官能性モノマーは、単独で用いても複数を混合して用いてもよい。重合体一次
粒子を構成するバインダー樹脂として架橋樹脂を用いる場合は、樹脂を構成する全重合性モノマー中に占める多官能性モノマーの配合率は、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上で、更に好ましくは0.3質量%以上であり、上限は好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0103】
乳化重合に用いる乳化剤としては公知のものが使用できるが、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤を併用して用いることができる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
【0104】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム等の脂肪酸石けん、硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
【0105】
乳化剤の使用量は、通常、重合性単量体100質量部に対して1〜10質量部とされ、また、これらの乳化剤に、例えば、部分または完全ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体類等の1種もしくは2種以上を保護コロイドとして併用することができる。
重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸カリウム等の過硫酸塩類;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等の有機過酸化物類;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物類;レドックス系開始剤等が用いられる。それらは1種または2種以上が、通常、重合性単量体100質量部に対して0.1〜3質量部程度の量で用いられる。中でも、開始剤としては少なくとも一部あるいは全部が過酸化水素あるいは有機過酸化物類であるのが好ましい。
【0106】
また、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の1種または2種以上の懸濁安定剤を、重合性単量体100質量部に対して通常1〜10質量部の範囲で用いてもよい。
前記重合開始剤及び懸濁安定剤は、何れも、重合性モノマー添加前、添加と同時、添加後の何れの時期に重合系に添加しても良く、必要に応じてこれらの添加方法を組み合わせても良い。
【0107】
乳化重合に際しては、必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用することもできるが、その様な連鎖移動剤の具体的な例としては、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン等が挙げられる。連鎖移動剤は単独又は2種類以上の併用でもよく、全重合性モノマーに対して通常5質量%以下の範囲で用いられる。また、反応系には、更に、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤等を適宜配合することができる。
【0108】
乳化重合は、前記の重合性モノマー類を重合開始剤の存在下で重合するが、重合温度は、通常50〜120℃、好ましくは60〜100℃、更に好ましくは70〜90℃である
。
乳化重合により得られた重合体一次粒子の体積平均径(Mv)は、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.1μm以上であり、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下であることが望ましい。重合体一次粒子の体積平均径(Mv)が前記範囲内であると、比較的容易に凝集速度を制御することができ、目的とする粒径のトナーを得ることができる
重合体一次粒子を構成するバインダー樹脂のDSC法によるガラス転移温度(Tg)は、好ましくは40〜80℃である。ここで、バインダー樹脂のTgが他の成分に基づく熱量変化、例えばポリラクトンやワックスの融解ピークと重なるために明確に判断できない場合には、このような他の成分を除いた状態でトナーを作製した際のTgを意味するものとする。
【0109】
重合体一次粒子を構成するバインダー樹脂の酸価は、JISK−0070(1992)の方法によって測定した値として、好ましくは3〜50mgKOH/g、より好ましくは5〜30mgKOH/gであるのがよい。
着色剤としては、通常用いられる着色剤であればよく、特に限定はされない。例えば、前述した顔料、ファーネスブラックやランプブラック等のカーボンブラック、磁性着色剤等が挙げられる。前記着色剤の含有割合は、得られるトナーが現像により可視像を形成するのに十分な量であればよく、例えば、トナー中に1〜25質量部の範囲が好ましく、更に好ましくは1〜15質量部、特に好ましくは3〜12質量部である。
【0110】
着色剤は磁性を有していてもよく、磁性着色剤としては、プリンター、複写機等の使用環境温度である0〜60℃付近においてフェリ磁性或いはフェロ磁性を示す強磁性物質、具体的には、例えば、マグネタイト(Fe
3O
4)、マグヘマタイト(γ−Fe
2O
3)、マグネタイトとマグヘマタイトの中間物や混合物、M
xFe
3−xO
4(Mは、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd等)で表されるスピネルフェライト、BaO・6Fe
2O
3、SrO・6Fe
2O
3等の6方晶フェライト、Y
3Fe
5O
12、Sm
3Fe
5O
12等のガーネット型酸化物、CrO
2等のルチル型酸化物、及び、Cr、Mn、Fe、Co、Ni等の金属或いはそれらの強磁性合金等のうち0〜60℃付近において磁性を示すものが挙げられる。中でも、マグネタイト、マグヘマタイト、又はマグネタイトとマグヘマタイトの中間体が好ましい。
【0111】
非磁性トナーとしての特性を持たせつつ、飛散防止や帯電制御等の観点で含有する場合は、トナー中の前記磁性粉の含有量は、0.2〜10質量%、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜5質量%である。また、磁性トナーとして使用する場合は、トナー中の前記磁性粉の含有量は、通常15質量%以上、好ましくは20質量%以上であり、通常70質量%以下、好ましくは60質量%以下であることが望ましい。磁性粉の含有量が前記範囲未満であると、磁性トナーとして必要な磁力が得られない場合があり、前記範囲を超過すると、定着性不良の原因となる場合がある。
【0112】
乳化重合凝集法における着色剤の配合方法としては、通常、重合体一次粒子分散液と着色剤分散液とを混合して混合分散液とした後、これを凝集させて粒子凝集体とする。着色剤は、乳化剤の存在下で水中にサンドミル、ビーズミル等の機械的手段により乳化させた状態で用いるのが好ましい。この際、着色剤分散液は、水100質量部に対して、着色剤を10〜30質量部、乳化剤を1〜15質量部加えるのがよい。なお、分散液中の着色剤の粒径を分散途中でモニターしながら行い、最終的にその体積平均径(Mv)を0.01〜3μmとするのがよく、より好適には0.05〜0.5μmの範囲に制御するのがよい。また、個数平均径(Mn)は0.01〜3μmとするのがよく、より好適には0.05〜0.5μmとするのがよい。乳化凝集時における着色剤分散液の配合は、凝集後のでき上がりのトナー母粒子中に2〜10質量%となるように計算して用いられる。
【0113】
また、本発明の現像用トナーに含まれるワックスは、上述したトナーの粉塵放散量Dtの範囲とするために、少なくとも2種類のワックスを含み緻密な構造制御をする事が好ましい。すなわち、本発明の現像用トナーが下記(a)から(c)の要件を満たす事が好ましい。
(a)前記現像用トナーは少なくともワックス成分Xとワックス成分Yの2種類のワックスを含有する。
(b)前記ワックス成分Yの粉塵放散量は前記ワックス成分Xの粉塵放散量よりも多い。(c)前記ワックス成分Xの含有量が前記ワックス成分Yの含有量よりも多い。
【0114】
ここでワックス成分Xとワックス成分Yとは、現像用トナーが含む2種のワックスを表すのであって、それぞれ「ワックスX」、「ワックスY」と同義である。
中でも、ワックス成分Xの含有量がワックス成分Yの含有量よりも多いことが好ましい。
また、ワックス成分Yの全ワックス成分中における割合が0.1質量%以上10質量%未満であることが好ましい。
【0115】
また、本発明のトナーは、上記要件(a)から(c)に加えて、又は、上記要件(c)に代えて、下記要件(f)を満たすことが好ましい。
(f)前記静電荷像現像用トナーがワックス成分Xよりもワックス成分Yの存在比率が高い領域を有し、且つ該領域が前記静電荷像現像用トナーの中心側よりも外郭側に多い。
すなわち、現像用トナーの中心側に粉塵放散量の小さいワックスを用い、トナーの外郭側に粉塵放散量の大きいワックスを用いた時の方が、双方のワックスをトナー内に略均一に分散させた場合よりも、耐ホットオフセット性がさらに良化する。
【0116】
これは、ワックスは定着ローラーからの現像用トナーの離形性を付与する目的で添加されているが、現像用トナー内でもその外郭側に高離形性を有する昇華性の高いワックスを選択的に集中的に存在させた方が、定着時に現像用トナー内からワックスが拡散する速度が速くなるため、より高い離形性を付与できると考えられる。
本明細書において、トナー母粒子がコアシェル構造をとる場合には、トナーの外郭側とはシェル層のことを表し、トナーの中心側とはコア層のことを表す。しかしながら、実際にはシェル部分とコア部分を明確に分けることができずに、ひとつのトナー母粒子中に複数のシェル部分とコア部分がランダムに存在することがある。そのような場合の前記(f)「前記現像用トナーはワックス成分Xよりもワックス成分Yの存在比率が高い領域を有し、且つ該領域が前記静電荷像現像用トナーの中心側よりも外郭側に多い」状態とは次のように定義する。
【0117】
すなわち、トナー母粒子内に存在するコア成分のすべてが、それぞれ周囲の50%以上をシェル成分で覆われている状態を、前記(f)の状態とする。
前記(f)の状態を表す具体的な例を
図10に示す。
図10において、白部分がコア成分、白点線がコア成分の周囲を表し、グレー部分がシェル成分、黒実線がシェル成分の周囲を表す。なお、(f)の状態とは、これらに限定されるものではない。
【0118】
ワックス成分Xとワックス成分Yの存在比率は製造時におけるワックスの仕込み方で決定される。そのため、現像用トナーの外郭側に高離形性を有する昇華性の高いワックスを選択して集中的に存在させるためには、昇華性の高いワックスをコア成分よりもシェル成分に多く配置させればよい。
その方法としては、例えば以下に記載する方法が挙げられる。
【0119】
1.コア成分よりも小さな粒子をシェル成分として配合する。
2.シェル成分をコア成分よりも後に添加する。
3.水を含む溶媒中でトナーを製造する場合には、シェル成分の方がコア成分に比べて極性の高い成分を用いる。
上記3.において極性の高い成分とは、例えばカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基又はアルコキシ基等を含む成分が挙げられる。
【0120】
上記1.〜3.のうち一つの方法を用いても、複数の方法を併せて用いてもよい。
本発明の静電荷像現像用トナーは、トナーの中心側に粉塵放散量の小さいワックスの存在比率が高いコアと、トナーの外郭側に粉塵放散量の大きいワックスの存在比率が高いシェルを有する、シェルコア構造を形成していることが好ましい。本発明において、シェルコア構造を形成する場合の中でも、該シェルコア構造のシェル材に含まれる前記ワックスが実質的にワックス成分Yのみを含有し、該シェルコア構造のコア材に含まれる前記ワックスが実質的にワックス成分Xのみを含有することが更に好ましい。なお、シェルコア構造を形成していない場合であっても、トナー外郭側がトナー中心側よりも、粉塵放散量の大きいワックスの存在比率が高い領域を有していればよい。
【0121】
実質的にワックス成分Y(又はX)のみを含有するとは、その他に微量の不可避不純物が混入してもよいことを示す。ここでの不可避不純物とはワックス成分Y(又はX)以外のワックスのことを表す。
また、ワックス成分Xの粉塵放散量(Dw)が50,000CPM以下であり、かつワックス成分Yの粉塵放散量(Dw)が100,000CPM以上であることが好ましい。これは、トナーの中心側に存在させるワックス成分Xの粉塵放散量(Dw)を50,000CPM以下にする事で、画像形成装置から1時間当たり発生するダスト量(ダスト放散速度:Vd)をより低い値に制御する事ができ、さらにトナーの外郭側に存在させるワックス成分Yの粉塵放散量(Dw)を100,000CPM以上にする事でより高い耐ホットオフセット性を獲得できるからである。
【0122】
なお、上記ワックス成分Xまたはワックス成分Yの粉塵放散量Dwは、トナーの粉塵放散量と同様に、実施例に記載の方法により測定することができる。ここで静的環境下とは実施例に記載の条件下のことをいい、加熱条件は実施例に記載のとおりである。
具体的には、粉塵放散量が小さいワックス成分Xとしては炭化水素系ワックス、エステル系ワックスが挙げられ、中でも放散量抑制の点から昇華エネルギーの大きいマイクロクリスタリンワックスやエステル系ワックスが好ましく用いられる。
【0123】
また、粉塵放散量が大きなワックス成分Yとしては炭化水素系ワックスが挙げられ、中でも離形性付与の点から直鎖状分子の多いパラフィンワックスが好ましく用いられる。
さらに本発明の現像用トナーはシェルコア構造を有し、ワックスを内包する体積平均径(Mv)が50nm以上500nm以下の重合体一次粒子を、シェル材の少なくとも一つとして用いる事が好ましい。
【0124】
本発明のシェルコア構造を有する現像用トナーの製法としては特に限定されるものではないが、粉砕法、乳化重合凝集法、懸濁重合法、化学粉砕法(溶融懸濁法)の何れかにより作製されたコア粒子表面に、乳化重合法、ミニエマルジョン法、またはコアセルベーション法を用いて作製されたシェル微粒子を付着させ、その後必要に応じてシェルとコアを加熱融着させる事などにより作製する事ができる。
【0125】
このシェルコア構造をとるのは、ワックスはより外側に配置させた方が離形能力の面から有利である一方で、現像用トナーの最表面にワックスが存在すると感光体などの部材を汚染し満足いく画質を得る事ができない場合がある為である。
その達成手段として、前記の様な体積平均径(Mv)を有するワックスを樹脂成分で、乳化重合法、ミニエマルジョン法、またはコアセルベーション法等を用いて内包した重合体一次粒子をシェル材の一つとして用いる事が好ましい。例えば、乳化重合法でシェル材とする重合体一次粒子を得る場合は、上記乳化重合凝集法でトナーを製造する過程で得られる重合体一次粒子と同様にすることで得られる。
【0126】
ワックスとしては、満足いく定着性を静電荷像現像用トナーに付与させる為に、融点90℃以下であるワックスを含む事が必須となる。これは融点の高すぎるワックスはいくら昇華エネルギーが低くてもトナーが定着器で溶融された際にトナー内からの拡散速度が遅くなり、結果的にトナー表面に移行しないが故に、十分な離形性能を付与する事ができないからである。
【0127】
更に、あまりに融点が低すぎるワックスは、トナーの耐熱性を低下させる原因となり、輸送時のブロッキングなどので問題が発生する恐れがあるために使用する事ができず、融点55℃以上のワックスを含む事が必須となる。
ワックス自体の融点は55℃以上90℃以下である。なお、静電荷像現像用トナー中に含有された状態におけるワックスの融点は、後述する実施例に記載の方法;熱分析装置(DSC)を用い、トナー中の樹脂のガラス転移点に伴うエンタルピー緩和に由来するピーク(熱履歴)を消失させた状態で測定される値である。
【0128】
更に、本願明細書に記載した式(1)〜(4)のいずれかを満たす粉塵放散量Dt(CPM)の値になる様に静電荷像現像用トナーを製造するために用いられるワックスは、上述の融点以外は特に限定されるものではないが、具体的にはオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス;水添ひまし油、カルナバワックス等の植物系ワックス;ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン;アルキル基を有するシリコーン;ステアリン酸等の高級脂肪酸;エイコサノール等の長鎖脂肪族アルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと長鎖脂肪酸により得られる多価アルコールのカルボン酸エステル、又は部分エステル;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;低分子量ポリエステル等が例示される。
【0129】
中でも好ましくは炭化水素系(フィッシャートロフィッシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス)ワックスやエステル系(長鎖脂肪酸と長鎖アルコールのエステル化物や長鎖脂肪酸と多価アルコールのエステル化物)ワックスが好適に用いられる。
ワックスの使用量は、トナーがシェルコア構造を形成しているものであっても、シェルコア構造を形成することなく、結着樹脂、着色剤及びワックスが略均一に内包されているものであっても特に制限されない。また、先述した範囲内の融点を有するワックスを用いて、本願明細書に記載した式(1)〜(4)のいずれかを満たす粉塵放散量Dt(CPM)となる様に静電荷像現像用トナーを製造すれば、特に限定されるものではない。
【0130】
中でもコア材、シェル材及びシェルコア構造を形成しないトナー母材のいずれもが、結着樹脂100質量部に対して、ワックスを好ましくは4〜30質量部、より好ましくは5〜20質量部、さらに好ましくは7〜15質量部を配合する事ができる。ワックスの使用量が、前記範囲より少ないと離形力不足により、満足いく耐ホットオフセットを獲得する事が困難となりやすく、前記範囲より多いと、ダストを抑制する事が困難となる可能性が出てくる。
【0131】
しかし、本明細書に記載の融点範囲のワックスを用いて本明細書に記載の粉塵放散量Dt(CPM)となる様に静電荷像現像用トナーを製造すれば、特にワックスの使用量につ
いては、なんら限定されるものではない。
また、トナーがワックス成分Xとワックス成分Yの2種類のワックスを含有する場合には、該ワックス成分Xよりもワックス成分Yの粉塵放散量が多いものを選択すれば、先に例示したワックスを任意に用いることができる。
【0132】
乳化重合凝集法におけるワックスの配合方法としては、予め水中に体積平均径(Mv)0.01〜2.0μm、より好ましくは0.01〜1.0μm、さらに好ましくは0.01〜0.5μmに乳化分散したワックス分散液を乳化重合時に添加するか、あるいは凝集工程で添加することが好ましい。
トナー中に好適な分散粒径でワックスを分散させるためには、乳化重合時にワックスをシードとして添加することが好ましい。シードとして添加することにより、ワックスが内包された重合体一次粒子が得られるので、ワックスがトナー表面に多量に存在することがなく、トナーの帯電性や耐熱性の悪化を抑制することができる。重合体一次粒子中のワックスの存在量は、好ましくは4〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%、特に好ましくは7〜15質量%となるように計算して用いられる。
【0133】
本発明に係るトナーには、帯電量、帯電安定性付与のため、帯電制御剤を配合しても良い。帯電制御剤としては、従来公知の化合物が使用される。例えば、ヒドロキシカルボン酸の金属錯体、アゾ化合物の金属錯体、ナフトール系化合物、ナフトール系化合物の金属化合物、ニグロシン系染料、第4級アンモニウム塩及びこれらの混合物が挙げられる。帯電制御剤の配合量は樹脂100質量部に対し、0.1〜5質量部の範囲が好ましい。
【0134】
乳化重合凝集法においてトナー中に帯電制御剤を含有させる場合は、乳化重合時に重合性モノマー等とともに帯電制御剤を配合する、重合体一次粒子及び着色剤等とともに凝集工程で配合する、または重合体一次粒子及び着色剤等を凝集させてほぼトナーとして適当な粒径となった後に配合する等の方法によって配合することができる。これらのうち、帯電制御剤を、乳化剤を用いて水中で乳化分散させ、体積平均径(Mv)0.01μm〜3μmの乳液として使用することが好ましい。乳化凝集時における帯電制御剤分散液の配合は、凝集後のでき上がりのトナー母粒子中に0.1〜5質量%となるように計算して用いられる。
【0135】
前記の分散液中の重合体一次粒子、着色剤分散粒子、ワックス分散粒子、帯電制御剤分散粒子等の体積平均径(Mv)は、実施例に記載の方法でナノトラックを用いて測定し、その測定値として定義される・BR>B
乳化重合凝集法における凝集工程においては、上述の、重合体一次粒子、着色剤粒子、必要に応じて帯電制御剤、ワックス等の配合成分は、同時にあるいは逐次に混合するが、予めそれぞれの成分の分散液、即ち、重合体一次粒子分散液、着色剤粒子分散液、帯電制御剤分散液、ワックス微粒子分散液を作製しておき、これらを混合して混合分散液を得ることが、組成の均一性及び粒径の均一性の観点から好ましい。
【0136】
前記の凝集処理は通常、攪拌槽内で、加熱する方法、電解質を加える方法、これらを組み合わせる方法等がある。一次粒子を攪拌下に凝集してほぼトナーの大きさに近い粒子凝集体を得ようとする場合、粒子同士の凝集力と攪拌による剪断力とのバランスから粒子凝集体の粒径が制御されるが、加熱するか又は電解質を加えることによって凝集力を大きくすることができる。
【0137】
電解質を添加して凝集を行う場合の電解質としては、有機塩、無機塩の何れでも良いが、具体的には、NaCl、KCl、LiCl、Na
2SO
4、K
2SO
4、Li
2SO
4、MgCl
2、CaCl
2、MgSO
4、CaSO
4、ZnSO
4、Al
2(SO
4)
3、Fe
2(SO
4)
3、CH
3COONa、C
6H
5SO
3Na等が挙げられる。これら
のうち、2価以上の多価の金属カチオンを有する無機塩が好ましい。
【0138】
前記電解質の配合量は、電解質の種類、目的とする粒径等によって異なるが、混合分散液の固形成分100質量部に対して、通常0.05〜25質量部、好ましくは0.1〜15質量部、更に好ましくは0.1〜10質量部である。配合量が前記範囲未満の場合は、凝集反応の進行が遅くなり、凝集反応後も1μm以下の微粉が残る場合や、得られた粒子凝集体の平均粒径が目的の粒径に達しない等の場合がある。また、前記範囲の上限を超えた場合は、急速な凝集となりやすく粒径の制御が困難となり、得られた凝集粒子中に粗粉や不定形のものが含まれる等の問題を生じる場合がある。
【0139】
ここで、本発明の特定範囲の粒径に制御する方法として、電解質の配合量を抑える方法を採用してもよい。一般に、電解質の配合量を抑えると粒子の成長速度が遅くなり、生産効率の点で工業的に好ましくない。しかしながら、工業的見地に反して、敢えて電解質の配合量を抑えることによっても本発明の特定範囲の粒径に制御できる。
また、電解質を加えて凝集を行う場合の凝集温度は、20〜70℃が好ましく、30〜60℃が更に好ましい。ここで、凝集工程前の温度を制御することも特定範囲の粒径に制御する方法の一つである。凝集工程に加える着色剤の中には、前記電解質の性質も有するものがあり、電解質を加えずとも凝集することがある。そこで、着色剤分散液の混合時に予め、重合体1次粒子分散液の温度を冷やしておくことで、前記凝集を防ぐことができる。この凝集が微粉を発生させ易く、かつ、粒度分布にムラを生じさせる原因となる。本発明では、重合体1次粒子を予め、好ましくは0〜15℃、より好ましくは0〜12℃、より更に好ましくは2〜10℃の範囲に冷やしておくのがよい。
【0140】
電解質を用いずに加熱のみによって凝集を行う場合の凝集温度は、通常、重合体一次粒子のガラス転移温度Tgに対して(Tg−20℃)〜Tgの温度範囲であり、(Tg−10℃)〜(Tg−5℃)の範囲であることが好ましい。
凝集に要する時間は装置形状や処理スケールにより最適化されるが、トナー母粒子の粒径を目的とする粒径に到達するためには、前記範囲内の温度で通常、少なくとも30分以上保持することが望ましい。所定の温度へ到達するまでの昇温は、一定速度で昇温しても良いし、段階的に昇温することもできる。
【0141】
本発明においては、上述の凝集処理後の粒子凝集体に、必要に応じて重合体一次粒子分散液を添加(付着又は固着)してシェルコア構造のトナー母粒子を形成することができる。
シェル材は、ワックスを含有または内包した重合体一次粒子の体積平均径(Mv)が好ましくは50nm以上500nm以下、より好ましくは80nm以上450nm以下、さらに好ましくは100nm以上400nm以下、特に好ましくは150nm以上350nm以下のものを含むことが好ましい。
【0142】
シェル材であるワックスを内包した重合体一次粒子の体積平均径(Mv)が、前記範囲内であると、効率良くシェル剤をコア剤に付着させる事ができ、トナーの外郭側に粉塵放散量の大きいワックスの存在比率が高い領域を形成させる場合に、より高い離形性を付与できるとともに、画像形成装置から1時間当たり発生するダスト量(ダスト放散速度:Vd)をより低い値に制御しやすくなり、より高い耐ホットオフセット性を獲得することができる。
【0143】
以上より、前記静電荷像現像用トナーがシェルコア構造を有し、該シェルコア構造のコア材に、実質的に前記ワックス成分Xのみを含有または内包した体積平均径(Mv)50nm以上500nm以下の重合体一次粒子を含み、かつ前記シェルコア構造のシェル材に前記ワックス成分Yのみを含有または内包した体積平均径(Mv)50nm以上500n
m以下の重合体一次粒子を含むことも、静電荷像現像用トナーとして好ましい。
【0144】
この樹脂微粒子は、通常、乳化剤により水又は水を主体とする液中に分散した分散液として用いるが、前記の帯電制御剤を凝集処理後に加える場合には、粒子凝集体を含む分散液に帯電制御剤を加えた後に樹脂微粒子を加えることが好ましい。
乳化重合凝集法においては、凝集で得られた粒子凝集体の安定性を増すために、分散安定剤として乳化剤やpH調整剤を添加して粒子同士の凝集力を低下させ、トナー母粒子の成長を止めた後に、凝集した粒子間の融着を起こす熟成工程を加えることが好ましい。
【0145】
ここで、本発明のトナーは、粒度分布がシャープであることが好ましく、特定範囲の粒径に制御する方法として、乳化剤やpH調整剤を添加する工程の前に攪拌回転数を低下させる、即ち、攪拌によるせん断力を下げる方法が挙げられる。
熟成工程では、加熱により結着樹脂の粘度を下げ円形化させるが、そのまま加熱するとトナー母粒子径の成長が停止しないため、加熱による粒子径の成長を停止させる目的で、通常、分散安定剤として、乳化剤やpH調整剤を添加したり、攪拌回転数を上げたりしてせん断力をかける事ができる。
【0146】
また、分散安定剤を添加する工程の前でなくとも、攪拌回転数を下げて凝集粒子へのせん断力を低減させても特定の粒度分布のトナーを得ることができる。ただし、分散安定剤の配合量を調整できる点を考慮すると、分散安定剤を添加する工程の前に行うことの方が好ましい。
熟成工程の温度は、好ましくは一次粒子を構成するバインダー樹脂のTg以上、より好ましくは前記Tgより5℃高い温度以上であり、また、好ましくは前記Tgより80℃高い温度以下、より好ましくは前記Tgより50℃高い温度以下である。また、熟成工程に要する時間は、目的とするトナーの形状により異なるが、一次粒子を構成する重合体のガラス転移温度以上に到達した後、通常0.1〜10時間、好ましくは1〜6時間保持することが望ましい。
【0147】
なお、乳化重合凝集法においては、前記凝集工程以降、好ましくは熟成工程以前又は熟成工程中の段階で、乳化剤を添加するか、凝集液のpH値を上げることが好ましい。ここで用いられる乳化剤としては、前記の重合体一次粒子を製造する際に用いることのできる乳化剤から1種以上を選択して用いることができるが、特に重合体一次粒子を製造した際に用いた乳化剤と同じものを用いることが好ましい。
【0148】
乳化剤を配合する場合の配合量は限定されないが、混合分散液の固形成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。凝集工程以降、熟成工程の完了前の間に乳化剤を添加するか、凝集液のpH値を上げることにより、凝集工程で凝集した粒子凝集体同士の凝集等を抑制することができ、熟成工程後のトナー中に粗大粒子が生じることを抑制できる。
【0149】
このような加熱処理により、凝集体における一次粒子同士の融着一体化がなされ、凝集体としてのトナー母粒子形状も球形に近いものとなる。熟成工程前の粒子凝集体は、一次粒子の静電的あるいは物理的凝集による集合体であると考えられるが、熟成工程後は、粒子凝集体を構成する重合体一次粒子は互いに融着しており、トナー母粒子の形状も球状に近いものとすることが可能となる。この様な熟成工程によれば、熟成工程の温度及び時間等を制御することにより、一次粒子が凝集した形状である葡萄型、融着が進んだジャガイモ型、更に融着が進んだ球状等、目的に応じて様々な形状のトナーを製造することができる。
【0150】
前記の各工程を経ることにより得た粒子凝集体は、公知の方法に従って固/液分離し、粒子凝集体を回収し、次いで、これを必要に応じて洗浄した後、乾燥することにより目的とするトナー母粒子を得ることができる。
また、前記の乳化重合凝集法により得られた粒子の表面に、例えば、スプレードライ法、in−situ法、或いは液中粒子被覆法等の方法によって、更に、重合体を主成分とする外層を、好ましくは0.01〜0.5μmの厚みで形成させることによって、カプセル化されたトナー母粒子とすることもできる。
【0151】
また、乳化重合凝集法トナーにおいては、フロー式粒子像分析装置FPIA−3000(マルバーン社製)を用いて測定した50%円形度が好ましくは0.90以上、より好ましくは0.92以上、更に好ましくは0.95以上である。球形に近いほど粒子内での帯電量の局在化が起こりにくく、現像性が均一になる傾向にあるが、完全な球状トナーを作ることは製造上困難であるので、前記平均円形度は、好ましくは0.995以下、より好ましくは0.990以下である。
【0152】
また、トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す場合がある。)におけるピーク分子量のうち少なくとも1つが、好ましくは1万以上、より好ましくは1.5万以上、更に好ましくは2万以上であり、好ましくは10万以下、より好ましくは8万以下、更に好ましくは5万以下であることが望ましい。ピーク分子量が何れも前記範囲より低い場合は、非磁性一成分現像方式における機械的耐久性が悪化する場合があり、ピーク分子量が何れも前記範囲より高い場合は、低温定着性や定着強度が悪化する場合がある。
【0153】
トナーのTHF不溶分は、セライト濾過による質量法で測定した場合、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であるのがよい。前記範囲にない場合は、機械的耐久性と低温定着性の両立が困難となる場合がある。
乳化重合凝集法トナーの帯電性は、正帯電であっても負帯電であってもよく、トナーの帯電性の制御は、帯電制御剤の選択及び含有量、外添剤の選択及び配合量等によって調整することができる。
【0154】
<7.粉砕法トナー>
粉砕法トナーを製造する方法としては、本願記載の粉塵放散量(CPM)であれば、特に限定はされないが、例えば、以下の様な製法等が挙げられる。
粉砕トナーを製造する際に用いる樹脂としては、トナーに用い得ることが知られているものの中から適宜選択して用いればよい。例えば、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−アクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が用いられる。これらの樹脂は単独で用いることも、いくつかを併用することもできる。
【0155】
粉砕トナーの製造の際に使用されるポリエステル樹脂は多価アルコールと多塩基酸とより成り、必要に応じてこれら多価アルコール及び多塩基酸の少なくとも一方が3価以上の多官能成分(架橋成分)を含有する重合性モノマー組成物を重合することにより得られる。以上において、ポリエステル樹脂の合成に用いられる2価のアルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシ
エチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノールAアルキレンオキシド付加物、その他を挙げることができる。これらのモノマーのうち、特にビスフェノールAアルキレンオキシド付加物を主成分モノマーとして用いるのが好ましく、中でも1分子当たりのアルキレンオキシド平均付加数2〜7の付加物が好ましい。
【0156】
ポリエステルの架橋化に関与する3価以上の多価アルコールとしては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ショ糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、その他を挙げることができる。
【0157】
一方、多塩基酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、これらの酸の無水物、低級アルキルエステル、又はn−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸等のアルケニルコハク酸類若しくはアルキルコハク酸類、その他の2価の有機酸を挙げることができる。
【0158】
ポリエステルの架橋化に関与する3価以上の多塩基酸としては、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、及びこれらの無水物、その他を挙げることができる。
【0159】
これらのポリエステル樹脂は、通常の方法にて合成することができる。具体的には、反応温度(170〜250℃)、反応圧力(5mmHg〜常圧)等の条件をモノマーの反応性に応じて決め、所定の物性が得られた時点で反応を終了すればよい。ポリエステル樹脂の軟化点(Sp)は90〜135℃が好ましく、その中でも95〜133℃のものがより好適である。また、Tgの範囲は、例えば軟化点が90℃の時50〜65℃であり、軟化点が135℃の時60〜75℃である。この場合、Spが前記範囲より低い場合は定着時のオフセット現象が発生し易く、前記範囲より高い場合は定着エネルギーが増大し、カラートナーでは光沢性や透明性が悪化する傾向にあるので好ましくない。また、Tgが前記範囲より低い場合はトナーの凝集塊や固着を生じ易く、前記範囲より高い場合は熱定着時の定着強度が低下する傾向にあるため好ましくない。
【0160】
Spは主として樹脂の分子量で調節でき、樹脂のテトラヒドロフラン可溶分をGPC法により測定した場合に数平均分子量として好ましくは2000〜20000、より好ましくは3000〜12000とするのがよい。また、Tgは主として樹脂を構成するモノマー成分を選択することによって調節でき、具体的には酸成分として芳香族の多塩基酸を主成分とすることによりTgを高めることができる。すなわち、前述した多塩基酸のうち、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸等及びこれらの無水物、低級アルキルエステル等を主成分として用いるのが望ましい。
【0161】
SpはJIS K7210(1999)及びK6719(1999)に記載されるフロ
ーテスターを用いて測定した値と定義される。具体的には、フローテスター(CFT−500、島津製作所製)を用いて、約1gの試料を予熱時間50℃5分間、昇温速度3℃/分で加熱しながら、面積1cm
2のプランジャーにより30kg/cm
2の荷重を与え、孔径1mm、長さ10mmのダイから押し出す。これにより、プランジャーストローク−温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするとき、h/2に対応する温度を軟化点と定義する。また、Tgの測定は、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC7又はセイコー電子社DSC120)を用いて、常法に従って測定したものとして定義される。
【0162】
一般にポリエステル樹脂の酸価が高すぎる場合、安定した高帯電量を得ることが難しく、また高温高湿時における帯電安定性も悪化する傾向にあるので、本発明においてはその酸価を50mgKOH/g以下とするのがよく、より好ましくは30mgKOH/g以下、最適には3〜15mgKOH/gとなるよう調製するのがよい。酸価を前記範囲内に調節するための方法としては、樹脂合成時に使用するアルコール系及び酸系のモノマーの配合割合を制御する方法の他、例えばエステル交換法により酸モノマー成分をあらかじめ低級アルキルエステル化したものを用いて合成する方法やアミノ基含有グリコール等の塩基性成分を組成中に配合することにより、残存酸基を中和する方法等が挙げられるが、これらに限らず公知のあらゆる方法を採用できることは言うまでもない。ポリエステル樹脂の酸価は、JIS K0070(1992)の方法に準じて測定される。ただし、樹脂が溶媒に溶解しにくい場合は、ジオキサン等の良溶媒を用いる。
【0163】
前記ポリエステル樹脂としては、そのガラス転移温度(Tg)をx軸の変数とし、軟化点(Sp)をy軸の変数としてxy座標にプロットした時、下記の式(i)〜(iv)で表される直線で囲まれる範囲内の物性を有するものが好ましい。TgとSpの単位は「℃」である。
式(i) Sp=4×Tg−110
式(ii) Sp=4×Tg−170
式(iii) Sp=90
式(iv) Sp=135
前記式(i)〜(iv)に表される直線で囲まれる物性を有したポリエステル樹脂を粉砕トナーに用いた場合、前記粉砕法トナーは、機械的なストレスに対する耐性が極めて大きく、しかも連続使用時等においては発生する摩擦熱によって、トナーが凝集したり固化したりすることも回避でき、長期に渡って適度な帯電性を保持できる。
【0164】
粉砕トナーにおいても、通常用いられる着色剤であればよく、特に限定されない。例えば、前述した重合トナーに用いる着色剤を使用することができる。前記着色剤の含有割合は、得られるトナーが現像により可視像を形成するのに十分な量であればよく、例えば、重合トナーと同程度のトナー中に1〜25質量部の範囲が好ましく、更に好ましくは1〜15質量部、特に好ましくは3〜12質量部である。
【0165】
粉砕トナーにおいては、その他の構成材料を含んでもよい。例えば、帯電制御剤としては、公知のものがすべて使用可能である。例えば、正帯電性用としてニグロシン染料、アミノ基含有ビニル系コポリマー、四級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂等があり、負帯電性用としてクロム、亜鉛、鉄、コバルト、アルミニウム等の金属を含有する含金属アゾ染料、サリチル酸若しくはアルキルサリチル酸の前記した金属との塩、金属錯体等が知られている。
【0166】
使用量としては、樹脂100質量部に対し0.1〜25質量部がよく、より好ましくは1〜15質量部がよい。この場合、帯電制御剤は樹脂中に配合してもよく、またトナー母粒子表面に付着させた形で用いてもよい。
これらの帯電制御剤のうち、そのトナーに対する帯電賦与能力やカラートナー適応性(
帯電制御剤自体が無色ないし淡色でトナーへの色調障害がないこと)を勘案すると、正帯電性用としてはアミノ基含有ビニル系コポリマー及び/又は四級アンモニウム塩化合物が好ましく、負帯電性用としては、サリチル酸若しくはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウム、ボロン等との金属塩、金属錯体が好ましい。
【0167】
これらのうち、アミノ基含有ビニル系コポリマーとしては、例えばN,N−ジメチルアミノメチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノメチルアクリレート等のアミノアクリレート類とスチレン、メチルメタクリレート等との共重合樹脂が挙げられる。また四級アンモニウム塩化合物としては、例えばテトラエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライドとナフトールスルホン酸との造塩化合物等が挙げられる。正帯電性トナー用としては、以上のアミノ基含有ビニル系コポリマーと四級アンモニウム塩化合物とを単独で配合してもよく、併用してもよい。
【0168】
また、サリチル酸若しくはアルキルサリチル酸の金属塩、金属錯体としては、各種公知の物質のうち、特に3,5−ジターシャリーブチルサリチル酸のクロム、亜鉛あるいはボロン錯体が好ましい。また、以上の着色剤や帯電制御剤は、トナー中での分散性、相溶性を改良するためにあらかじめ樹脂との前混練等によって予備分散処理、いわゆるマスターバッチ処理を行ってもよい。
【0169】
粉砕トナーは、その粒子の表面に少なくとも1種の微粒子添加剤を含有するのがよい。これらは、トナー母粒子の粘着性、凝集性、流動性等を改良するとともに、トナーとしての摩擦帯電性や耐久性等の改善を主たる目的とするものである。具体的には、平均一次粒子径が0.001〜5μm、特に好ましくは0.002〜3μmの表面を処理されてもよい有機及び無機微粒子が挙げられ、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレートやシリコーン樹脂等を主成分とする樹脂ビーズ類、タルク、ハイドロタルサイト等の鉱物類、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ等の金属酸化物等が挙げられる。
【0170】
これらの中でも酸化珪素微粒子がより好ましく、その表面が疎水化処理された酸化珪素微粒子が特に望ましい。疎水化の方法としては、例えば酸化珪素微粒子とヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、ジメチルジクロルシラン、シリコーンオイル等の有機珪素化合物等とを反応あるいは物理吸着させ、化学的に処理する方法が挙げられる。そのBET比表面積が20〜200m
2/gの範囲内であるのが好適である。粉砕トナーに対するこれらの微粒子添加剤の配合割合は、トナー母粒子全体の0.01〜10質量%の範囲内であるのが好ましく、特に0.05〜5質量%であるのがより好ましい。
【0171】
粉砕トナーにおけるワックスにおいても、本願記載の粉塵放散量(CPM)になる様に静電荷像現像用トナーを製造すれば特に限定されるものではないが、例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス;水添ひまし油、カルナバワックス等の植物系ワックス;ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン;アルキル基を有するシリコーン;ステアリン酸等の高級脂肪酸;エイコサノール等の長鎖脂肪族アルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと長鎖脂肪酸により得られる多価アルコールのカルボン酸エステル、又は部分エステル;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;低分子量ポリエステル等が例示される。中でも好ましくは炭化水素系(フィッシャートロフィッシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス)ワックスやエステル系(長鎖脂肪酸と長鎖アルコールのエステル化物や長鎖脂肪酸と多価アルコールのエステル化物)ワックス
が好適に用いられる。
【0172】
粉砕トナーの製造法としては次の例が挙げられる。
1.樹脂、帯電制御物質、着色剤及び必要に応じて加えられる添加剤をヘンシェルミキサー等で均一に分散する。
2.分散物をニーダー、エクストルーダー、ロールミル等で溶融混練する。
3.混練物をハンマーミル、カッターミル等で粗粉砕した後、ジェットミル、I式ミル等で微粉砕する。
4.微粉砕物を分散式分級機、ジグザグ分級機等で分級する。
5.場合により、分級物中にシリカ等をヘンシェルミキサー等で分散する。
【0173】
このようにして得られる粉砕法トナーは、機械的なストレスに対する耐性が極めて大きく、しかも連続使用時等においては発生する摩擦熱によって、トナーが凝集したり固化したりすることも回避でき、長期に渡って適度な帯電性を保持できるので、非磁性一成分現像方式用のトナーとして特に好適である。
<8.トナー>
静電荷像現像用トナーの体積中位径(以下単に、「Dv50」と略記する場合がある)は、ベックマンコールター社製マルチサイザーIII(アパーチャー径100μm)を用い、分散媒には同社製アイソトンIIを用い、分散質濃度0.03質量%になるように分散させて測定する。測定粒子径範囲は2.00から64.00μmまでとし、この範囲を対数目盛で等間隔となるように256分割に離散化し、それらの体積基準での統計値をもとに算出したものを体積中位径(Dv50)と定義する。また、個数基準での統計値をもとに算出したものを個数中位径(Dn50)と定義する。
【0174】
本発明においては、「トナー」は「トナー母粒子」に、後述する外添剤等を配合させて得られるものである。前記のDv50は「トナー」のDv50であるから、当然「トナー」を測定試料として前記方法に従い測定する。ただし、外添前のトナー母粒子を測定しても実質的にトナーと同じDv50を与えるので、トナーのみならずトナー母粒子の体積中位径(Dv50)も前記方法により測定する。更に、乳化重合凝集法等の湿式法トナーを、濾過・乾燥前の分散液の状態のものを、実質的に、分散媒アイソトンIIに、分散質濃度0.03質量%になるように分散させて測定しても、実質的にトナーと同じDv50を与えるので、濾過・乾燥前の分散液の状態のトナー母粒子である場合も前記方法により測定する。
【0175】
こうして得られたトナー母粒子には、流動性や現像性を制御する為に、トナー母粒子表面に公知の外添剤が配合されてトナーとなっていても良い。外添剤としては、アルミナ、シリカ、チタニア、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、タルク、ハイドロタルサイト等の金属酸化物や水酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸金属塩、窒化チタン、窒化珪素等の窒化物、炭化チタン、炭化珪素等の炭化物、アクリル系樹脂やメラミン樹脂等の有機粒子等が挙げられ、複数組み合わせることが可能である。中でも、シリカ、チタニア、アルミナが好ましく、また、例えばシランカップリング剤やシリコーンオイル等で表面処理されたものがより好ましい。
【0176】
その平均一次粒子径は1〜500nmの範囲が好ましく、より好ましくは5〜100nmの範囲がよい。また、前記粒径範囲において小粒径のものと大粒径のものとを併用することも好ましい。外添剤の配合量の総量は、トナー母粒子100質量部に対して0.05〜10質量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量部である。
更に、DvをDnで除した値(Dv/Dn)が、好ましくは1.0〜1.25、より好ましくは1.0〜1.20、更に好ましくは1.0〜1.15であり、1.0に近い方が望ましい。静電荷像現像用トナーの粒度分布がシャープなものの方が粒子固体間の帯電性
が均一になる傾向にあるので、高画質及び高速化を達成するための静電荷像現像用トナーのDv/Dnは前記範囲であるのが好ましい。
【0177】
本発明の静電荷像現像用トナーは、トナーを磁力により静電潜像部に搬送するためのキャリアを共存させた磁性二成分現像剤用、又は、磁性粉をトナー中に含有させた磁性一成分現像剤用、或いは、現像剤に磁性粉を用いない非磁性一成分現像剤用の何れに用いてもよい。本発明の効果を顕著に発現するためには、特に非磁性一成分現像方式用の現像剤として用いるのが好ましい。
【0178】
前記磁性二成分現像剤として用いる場合には、トナーと混合して現像剤を形成するキャリアとしては、公知の鉄粉系、フェライト系、マグネタイト系キャリア等の磁性物質又は、それらの表面に樹脂コーティングを施したものや磁性樹脂キャリアを用いることができる。キャリアの被覆樹脂としては、一般的に知られているスチレン系樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が利用できるが、これらに限定されるものではない。キャリアの平均粒径は、特に制限はないが10〜200μmの平均粒径を有するものが好ましい。これらのキャリアは、トナー1質量部に対して5〜100質量部使用する事が好ましい。
【実施例】
【0179】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下の例で「部」とあるのは「質量部」を意味する。
[測定方法と定義]
<DSC1回目昇温時の61〜73℃に観測されるpeak温度(TT1)の測定方法と定義>
エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社(旧セイコーインスツルメンツ株式会社)製の熱分析装置(DSC220U/SSC5200システム)を使用した。
測定方法としては窒素雰囲気下で実施し、標準パンには酸化アルミを7mg入れ、サンプルパンには静電電荷現像用トナーを10mg入れた。次に10℃から121℃まで10℃/分の速度で昇温し、この1回目の昇温時に61.0以上73.0以下に観測される最も深い吸熱ピークまたはショルダーをTT1(℃)と定義し、表2に結果を記載した。
【0180】
<DSC2回目昇温時のTT1の減衰度(TT1R)の測定方法と定義>
前記TT1測定と同一の装置を用い、測定方法としては窒素雰囲気下で実施し、標準パンには酸化アルミを7mg入れ、サンプルパンには静電電荷現像用トナーを10mg入れた。次に10℃から121℃まで10℃/分の速度で昇温し、121℃で10分間温度保持した。ついで121℃から10℃まで10℃/分の速度で降温し、10℃で5分間温度保持した。更に10℃から120℃まで10℃/分の速度で昇温した。
【0181】
この測定過程で、1回目の昇温過程での50℃におけるHeatFlow(W/g)値をHF1_50℃と定義し、これを1回目の昇温過程でのHeatFlowベースラインとして採用し、表2に結果を記載した。更に、1回目の昇温過程で61℃〜73℃の間に観測される最も深い吸熱ピークまたはショルダー温度TT1におけるHeatFlow(W/g)値をHF1_Pと定義し、表2に記載した。このHF1_P値からベースラインとなるHF1_50℃を引いたものを1回目昇温過程での実質的なHeatFlow(W/g)値とし、HF1_T1として表2に記載した。
【0182】
次に2回目の昇温過程での50℃におけるHeatFlow(W/g)値をHF2_50℃と定義し、これを2回目の昇温過程でのHeatFlowベースラインとして採用し、表2に結果を記載した。更に、1回目の昇温過程で61℃〜73℃の間に観測される最
も深い吸熱ピークまたはショルダー温度TT1における2回目昇温過程でのHeatFlow(W/g)値をHF2_Pと定義し、表2に記載した。このHF2_P値からベースラインとなるHF2_50℃を引いたものを2回目昇温過程での実質的なHeatFlow(W/g)値とし、HF2_T1として表2に記載した。
HF2_T1は、HF1_T1よりも低い値となり、これは静電電荷現像用トナーのエンタルピー緩和に由来し減衰する為であり、HF2_T1÷HF1_T1の値をRTT1として表2に示した。
【0183】
<静電電荷現像用トナー中に含まれた状態におけるワックス融点の測定方法と定義>
前記TT1測定と同一の装置を用い、測定方法としては窒素雰囲気下で実施し、標準パンには酸化アルミを7mg入れ、サンプルパンには静電電荷現像用トナーを10mg入れた。次に10℃から121℃まで10℃/分の速度で昇温し、121℃で10分間温度保持した。ついで121℃から10℃まで10℃/分の速度で降温し、10℃で5分間温度保持した。更に10℃から120℃まで10℃/分の速度で昇温し、この2回目の昇温時の吸熱ピークまたはショルダー温度を静電電荷現像用トナー中に含まれた状態でのワックスの融点とした。つまり2回目の昇温時のピークを見る事で、トナー中の樹脂のガラス転移点に伴うエンタルピー緩和に由来するピークは消失し、ワックスの融点が明瞭に観察できる事から、2回目の昇温時のデータを静電電荷現像用トナー中に含まれた状態でのワックスの融点として採用し、その吸熱ピークまたはショルダーの深い順にHFW1,HFW2として
表1に記載した。
【0184】
また、ワックス単体の融点も試料重量を3.5mgとする事以外は上記方法と同様にDSC2回目昇温時のピークまたはショルダーを観測する事により測定した。
静電荷現像用トナー中に含まれた状態におけるワックスの融点とワックス単体またはワックス混合物の融点は、ワックスと樹脂またはワックスと異なるワックスが相溶した場合など、異なる融点及びDSC測定での温度に対しての吸熱プロファイルを示す事が多い為、ワックス単体の融点と静電電荷現像用トナー中に含まれた場合のワックスの融点を別々に測定した。
【0185】
<高歪速度領域における位相差の平均値(tanδの平均値)の測定方法と定義>
事前の試料作成として、1.3gの静電荷現像用トナーを直径25mmの金属製の筒に入れ
、この金属容器毎50℃に加熱し30kg/cm2の加重をかけた状態で10分間プレス成形した。
TA Instruments社製動的粘弾性測定器(ARES)を用い、解析操作ソフトには、同社のTA Orchestrator Ver7.2.0.2を使用した。
【0186】
事前作成した試料を直径25mmのパラレルプレートにはさみ120℃まで昇温した。その後パラレルプレートの間隔を3.2mmまで狭める事により軟化した試料を押しつぶしその時点で法線応力を固定した。
その後、歪0.1%の条件で温度120℃と140℃における、周波数を1〜100rad/secの範囲で掃引した。詳細な測定条件は下記である。
Strain:0.1%
Sweep Mode:Log
Initial Frequency:1.0rad/sec
Final Frequency:100rad per sec
Point per Decade:20
Initial Temp 120.0℃
Final Temp 140.0℃
Temp Increment:20.0℃
Soak Time:1:00
この様にして測定した結果から、140℃測定で周波数20〜100rad/secにおけるtanδ
の値を平均する事により高歪速度領域における位相差の平均値(表2中ではtanδAveと表示する)を決定し、結果を表2に記載した。
【0187】
<可塑化開始温度(TPR)の測定方法と定義>
事前の試料作成として、1.3gの静電荷現像用トナーを直径25mmの金属製の筒に入れ
、この金属容器毎50℃に加熱し30kg/cm2の加重をかけた状態で10分間プレス成形した。
TA Instruments社製動的粘弾性測定器(ARES)を用い、解析操作ソフトには、同社のTA Orchestrator Ver7.2.0.2を使用した。
【0188】
事前作成した試料を直径25mmのパラレルプレートにはさみ120℃まで昇温した。その後パラレルプレートの間隔を3.2mmまで狭める事により軟化した試料を押しつぶしその時点で法線応力を固定し、一度40℃まで温度を下げた。
その後周波数6.28rad/sec・歪0.1%で4℃/minの昇温速度で40〜100℃まで温度掃引した際に、貯蔵弾性率が10
6(Pa)となった際の温度(TPR)を静電荷現像用トナーの可塑化開始温度と定義し、その温度を表2に記載した。
【0189】
詳細な測定条件はTA Orchestrator Ver7.2.02内で下記の通りで実施した。
Test setup:Predefined (Test SetupDynamic Temperature Ramp Test)
Test Type:Strain Controlled
Mesure Type:Dynamic
Frequency:6.28rad/sec
Initial Temp:40.0℃
Final Temp.:205℃
Ramp Rate 4.0℃/min
Soak Time After Ramp:20
Time per Mesure:1
Strain:0.1%
Options
Auto tension Adjustment
Auto Tension Direction :Tension
Initial Static Forece:0.0g
Auto Tension Sensitivity 2.0g
Switch Auto Tension to Programmed Extension When Sample Modulaus:1.0e+8
Auto Strain Adjustment
MAX Applied Strain:40.0%
MAX Allowed Torque:1000g-cm
MIN Allowed Torque:2.0g-cm
Strain Adjustment:20.0% of Current Strain
【0190】
<顔料分散液と重合体一次粒子分散液とワックス分散液の体積平均径(Mv)、個数平均径(Mn)の測定方法と定義>
顔料分散液と重合体一次粒子分散液、又はワックス分散液の体積平均径(Mv)及び個数平均径(Mn)は、日機装社製、型式:Microtrac Nanotrac 150(以下、「ナノトラック」と略記する)を用いて、ナノトラックの取り扱い説明書に従い、同社解析ソフトMicrotrac Particle Analyzer Ver10.1.2.−019EEを用い、電気伝導度が0.5μS/cmのイオン交換水を分散媒として、それぞれ、下記の条件で又は下記の条件を入力し、取り扱い説明書に記載された方法で測定した。
【0191】
重合体一次粒子分散液、ワックス分散液については、
・溶媒屈折率:1.333
・測定時間 :100秒
・測定回数 :1回
・粒子屈折率:1.59
・透過性 :透過
・形状 :真球形
・密度 :1.04
顔料プレミックス液及び着色剤分散液については、
・溶媒屈折率:1.333
・測定時間 :100秒
・測定回数 :1回
・粒子屈折率:1.59
・透過性 :吸収
・形状 :非球形
・密度 :1.00
【0192】
<静電荷現像用トナーの体積中位径(Dv50)、個数中位径(Dn50)の測定方法と定義>
外添工程を経て、最終的に得られたトナーの測定前処理として次の様にした。
内径47mm、高さ51mmの円筒形のポリエチレン(PE)製ビーカーに、スパチュラーを用いてトナーを0.100g、スポイトを用いて20質量%DBS水溶液(第一工業製薬社製、ネオゲンS−20D)を0.15g添加した。この際、ビーカーの縁等にトナーが飛び散らない様にビーカーの底部にのみトナー及び20%DBS水溶液を入れた。次に、スパチュラーを用いてトナーと20%DBS水溶液がペースト状になるまで3分間攪拌した。この際もビーカーの縁等にトナーが飛び散らない様にした。
【0193】
続いて、分散媒アイソトンIIを30g添加し、スパチュラーを用いて2分間攪拌し全体を目視で均一な溶液とした。次に、長さ31mm、直径6mmのフッ素樹脂コート回転子をビーカーの中に入れて、スターラーを用いて400rpmで20分間分散させた。この際、3分間に1回の割合でスパチュラーを用いて気液界面とビーカーの縁に目視で観察される巨視的な粒をビーカー内部に落とし込み均一な分散液となるようにした。続いて、これを目開き63μmのメッシュで濾過し、得られたろ液を「トナー分散液」とした。
【0194】
なお、トナー母粒子の製造工程中の粒径の測定については、凝集中のスラリーを63μmのメッシュで濾過したろ液を「スラリー液」とした。
粒子の中位径(Dv50とDn50)はベックマンコールター社製マルチサイザーIII(アパーチャー径100μm)(以下、「マルチサイザー」と略記する。)を用い、分散媒には同社製アイソトンIIを用い、上述の「トナー分散液」又は「スラリー液」を、分散質濃度0.03質量%になるように希釈して、マルチサイザーIII解析ソフトで、KD値は118.5として測定した。測定粒子径範囲は2.00から64.00μmまでとし、この範囲を対数目盛で等間隔となるように256分割に離散化し、それらの体積基準での統計値をもとに算出したものを体積中位径(Dv50)、個数基準での統計値をもとに算出したものを個数中位径(Dn50)とした。
この様に測定した静電荷現像用トナーの体積中位径(Dv50)、個数中位径(Dn50)を表1に記載した。
【0195】
<平均円形度の測定方法と定義>
本発明における「平均円形度」は、以下のように測定し、以下のように定義する。すなわち、トナー母粒子を分散媒(アイソトンII、ベックマンコールター社製)に、5720〜7140個/μLの範囲になるように分散させ、フロー式粒子像分析装置(シスメッ
クス社製、FPIA3000)を用いて、以下の装置条件にて測定を行い、その値を「平均円形度」と定義する。本発明においては、同様の測定を3回行い、3個の「平均円形度」の相加平均値を、「平均円形度」として採用する。
・モード :HPF
・HPF分析量 :0.35μL
・HPF検出個数:8,000〜10,000個
以下は、前記装置で測定され、前記装置内で自動的に計算されて表示されるものであるが、「円形度」は下記式で定義される。
【0196】
[円形度]=[粒子投影面積と同じ面積の円の周長]/[粒子投影像の周長]そして、HPF検出個数である8,000〜10,000個を測定し、この個々の粒子の円形度の算術平均(相加平均)が「平均円形度」として装置に表示される。
この様に測定した静電荷現像用トナーの平均円形度を表1に記載した。
【0197】
<粉塵検出測定装置>
本実施例で用いた粉塵検出測定装置について説明する。
図6は、本実施例で用いた粉塵検出測定装置の概略構成を示す図である。
図6に示すように、本実施例で用いた粉塵検出測定装置は、ドラフト1に、外気や不活性ガスを導入する吸気口9と、これらのガスを排出する排出口7を有する排気ファン8とを備え、ドラフト1内に試料カップ(アルミカップ)3に入れたサンプル4を加熱して粉塵放散量を測定するために加熱する加熱装置(ホットプレート)2を備えている。加熱装置2の上部には、試料カップ3に入れたサンプル4を加熱装置2で加熱した際に発生する粉塵を捕集するための漏斗状のコーン捕集機10が配置されている。コーン捕集機10は、吸引ダクト5を介して、ダスト測定装置6と接続されている。
【0198】
なお、
図6において試料カップ3は円筒状であるが、実際にはすり鉢状のものを用いた。ただし、試料カップの形状は開口上部が狭くなるような形状でない限り、特に限定されない。
図6に示す粉塵検出測定装置において、ダスト測定装置6は、SHIBATA社製デジタル粉塵計「ダストメイト LD−3K2型」を用いた。また、ドラフト1は、ラボフードFUMRHOOD LF−600セット(風量:6.7m3/分、静圧:0.36kPa、消費電力:93W)を用いた。更に、排気ファン8には三菱電機社製NS−K−20PSを用いた。
【0199】
図7は、
図6に示す粉塵検出測定装置のドラフト1の具体的な形状及び大きさを示す説明図である。
図7において示す各長さ(cm)は、実施例の粉塵検出測定装置に用いた具体的なドラフト1の各部位の長さを示す。
図7中1aは、ドラフト用の空気導入口(吸気口)兼電源ケーブル口であり、直径が3cmである。また、
図7中1bは、ドラフト用の排気口を示し、直径が10cmである。なお、
図7中ドラフト1と、排気ファン8とを分割して示したが、
図6に示すように、排気ファン8は、ドラフト用の排気口1bと連通する。なお、ドラフト1は装置正面の28cm×60cmの部分が開閉可能となっており、そこから試料の出し入れを行うことができる。
【0200】
図8は、
図6に示す粉塵検出測定装置の内部の一部を上方からみた平面図である。
図8に示すように、加熱装置(ホットプレート)2上に載置された試料カップ(アルミカップ)3は、該試料カップの中心がドラフト1の右側壁1cから20cm、ドラフト1の後側壁1dから25cmの位置に配置される。試料カップ(アルミカップ)3は、直径6cmのものを用いた。また、
図8中の高さ12cmは、ドラフト1の床から試料カップ3に入れられた試料の表面までの高さを示す。
【0201】
図9は、
図6に示す粉塵検出測定装置内において、加熱装置(ホットプレート)2、試料カップ(アルミカップ)3及びコーン捕集機10の高さ方向の位置関係と、コーン捕集機10に接続された吸引ダクト5の大きさ、並びに吸引ダクト5とダスト測定装置6との高さ方向の位置関係を説明する図である。
図9に示すように、加熱装置(ホットプレート)2上に載置された試料カップ(アルミカップ)3から上方向に7cmの位置にコーン捕集機10のロート状部分の下端部が配置される。また、コーン捕集機10のロート状部分の下端部からロート状部分の上端部までの高さは12cmである。さらに、コーン捕集機10のロート状部分の上端部から吸引ダクト5に接続される接続部までの長さ(高さ)は10cmである。コーン捕集機10のロート状部分の下端部の直径は15cmである。さらに、吸引ダクト5の長さは50cmであり、吸引ダクト5の内径は1.5cmである。この吸引ダクト5は、ポリプロピレン製のものを用いた。
【0202】
図9に示すように、粉塵検出測定装置は、加熱装置(ホットプレート)2の表面温度を測定する温度計2aと、試料カップ(アルミカップ)3内に保持したサンプルの表面温度を測定するサンプル温度計4aとを備えている。
【0203】
<静電荷像現像用トナーの粉塵放散量(Dt)及びワックスの粉塵放散量(Dw)の測定方法と定義>
図6〜9に示す粉塵検出測定装置を用いて、温度22〜28℃、湿度50〜60%に調整された前記ドラフト1の中で、以下の条件及び手順でサンプルから放散する粉塵量を測定した。
(I)排気ファン8を稼動させ、加熱装置(ホットプレート)2を200℃まで昇温させてからすぐに100℃まで温度を下げて、100℃に保持した。200℃まで上げる意味は、ダスト測定最高温度でサンプル以外から発生する粉塵値をバックグラウンド(BG)値に含ませる目的で実施した。
(II)加熱装置2が100℃の状態で、ダスト測定装置6のバックグラウンド(BG)測定(1分間)及びダスト校正値測定を行った。更に(III)の実測定後にも同様に1分間のバックグラウンド測定を実施し、(III)の実測定前と後の2回のバックグラウンド値の平均値をバックグラウンド値として採用した。
(III)加熱装置2が100℃の状態で、直径6cmの試料カップ(アルミカップ)3にサンプル4を1.0〜1.1gを秤量し、加熱装置2の中央に載置した。試料カップ3内に、
図9に示す窒素導入口3aから流速100ml/分で窒素ガスを内径2mmの導管を通して流入させ、サンプルを不活性雰囲気下とした。なお、
図6〜9には示していないが、ドラフト1の外から試料カップ3の近くまで管が引かれており、窒素ガスが該管の内部を通って窒素導入口3aから排出されることにより、サンプルを不活性雰囲気にすることができる。また、
図9には試料カップ3の近くだけ前記管を記載し、窒素導入口3aを明確に表したものである。
【0204】
この窒素ガス導入の意味は、高温時にサンプルが酸化反応等により発火などの危険な状態とならない様に、不活性ガス雰囲気下で加熱する事を目的として実施した。よって、窒素ガス流入によりダストがコーン捕集機10に集塵されるのを阻害しない様に非常に低い流速(100ml/分)で流入させた。ここで、サンプルとは静電荷像現像用トナーまたはワックス単体である。
(IV)加熱装置2が100℃の状態から、プログラム昇温で200℃までを60分間で昇温し、その後200℃で5分間維持した。この65分間の間に発生したダストを1分間隔でダスト測定装置を用いて測定し65回測定分の総和を持ってバックグラウンドを考慮する前のダスト値を求めた。その後(II)で予め測定しておいたバックグラウンド(BG)値を引く事により、静電荷像現像用トナーの粉塵放散量(Dt)、またはワックスの粉塵放散量(Dw)とした。
【0205】
例えば、試料を(III)記載の昇温プロファイルで1分間隔で65回測定したバックグラウンド考慮前の総和が345CPMであり、1分間測定したバックグラウンド測定値(試料測定前)が3CPM、バックグラウンド測定値(試料測定後)が4CPMであった場合、345−((3+4)/2))×65=118となるので、118を試料の正式な粉塵放散量として表2に示した。
【0206】
単位は、ダスト測定装置SHIBATA社製デジタル粉塵計「ダストメイト LD−3K2型」に表示される「CPM」とした。
この様に測定した静電荷現像用トナーの静電荷像現像用トナーの粉塵放散量(Dt)及びワックスの粉塵放散量(Dw)を表1に記載した。
【0207】
<高付着量HOS性の測定方法と判定方法>
カラーページプリンターML9600PS(沖データ社製)を用い、現像バイアスと供給バイアスを調整し、エクセレントホワイトA4紙(沖データ社製)に感光体上の画像濃度1.0〜2.0の範囲において画像濃度0.2きざみで201mm×287mmのベタ画像を実写する事により試験を行なった。定着器の温度を安定させる為、各々の画像濃度で30枚の印刷を行い、最後の1枚で判定を行った。最後の1枚が画像濃度1.6以下でホットオフセットに起因するブリスター(光沢のムラ)が発生するものに×、画像濃度1.6を超え1.8以下でブリスターが発生するものを○、画像濃度が1.8を超えてもブリスターが発生しないものを◎とし、耐ホットオフセット性の判定を行った。マシンのプロセススピードはA4横換算36枚/分で実施した。
【0208】
<低速印字時HOS性の測定方法と判定方法>
(株)沖データ社製エクセレントホワイト用紙(A4)を縦置きで、上部を5mmの空白とし、横200mm×縦40mmの面積で、付着量0.5mg/cm2の未定着画像を用意した。縦置きの為、A4用紙は横幅210mmの為、左右の空白は双方とも5mmとなる。
【0209】
この未定着画像を用い、ローラー直径27mm、ニップ幅9mm、上下ローラー伴にヒーターを有しローラー表面がPFA(テトラフルオロエチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)から構成されている定着器をシリコーンオイルの塗布なしの条件で評価した。
定着機のローラーの回転数は82rpmとした為、A4横換算では紙間30mmと仮定し
た場合、29枚/分の印字速度となる。この状態でローラー表面温度を195℃に設定し、定着画像を取得した。
【0210】
この定着画像を目視判定し、ホットオフセットに起因するブリスター(光沢のムラ)が発生しないものは○、発生しているものは×と判定した。
この様に測定・判定した静電荷現像用トナーの低速印字時HOS性を表2に記載した。
<高速印字時COS性及び高速印字時光沢の測定方法と判定方法>
(株)沖データ社製エクセレントホワイト用紙(A4)を縦置きで、上部を5mmの空白とし、横200mm×縦40mmの面積で、付着量0.5mg/cm2の未定着画像を用意した。縦置きの為、A4用紙は横幅210mmの為、左右の空白は双方とも5mmとなる。
【0211】
この未定着画像を用い、ローラー直径27mm、ニップ幅9mm、上下ローラー伴にヒーターを有しローラー表面がPFA(テトラフルオロエチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)から構成されている定着器をシリコーンオイルの塗布なしの条件で評価した。
定着機のローラーの回転数は162rpmとした為、A4横換算では紙間30mmと仮定
した場合、57枚/分の印字速度となる。この状態でローラー表面温度150℃から180℃まで5℃刻みで変化させ定着画像を得た。この定着画像のテープ剥離残存率を以下の方法で測定した。まず定着画像にメンディングテープを貼り、定着画像を下向きにした状態で表面が滑らかな机上に置き、裏からメンディングテープを中心に2kgの錘を1cm/secの速度で4秒かけて通過させテープと定着画像を密着させた。その後、メンディングテ
ープを4秒かけて剥離させ、テープ剥離部分とテープ非剥離部分の画像濃度をX-Rite社
製のX-Riteで測定した。この際、テープ剥離部分が非テープ剥離部分の画像濃度の95
%以上残存していれば合格と判定し、合格する最低ローラー表面温度を高速印字時COS性の指標とし以下の様に判定した。
◎:160℃以下で合格となる。
○:165℃以上170℃以下で合格となる。
× :170℃を超えないと合格とならない。
【0212】
高速印字時光沢は、前記高速印字時COS性と同様の手法で試験し、ローラー表面温度を185℃とした際の定着画像の表面光沢をNIPPON DENSHOKU社のGlossMeter VG2000により、角度75°で測定しその光沢度に応じ以下の様に判定した。
◎:25%以上の光沢度。
○:18%以上25%未満の光沢度。
× :18%未満の光沢度。
この様に測定・判定した静電荷現像用トナーの高速印字時COS性及び高速印字時光沢を表2に記載した。
【0213】
<保存性>
鉄製プレート上に、内径15mm、長さ80mmの円筒状の容器をたて、パラフィン紙を筒の内側に巻きつけた容器を予め準備し、500メッシュのふるいにかけた静電荷現像用トナー10gを筒のなかに投入した。上から20gに調整した錘(直径15mmのサンプル瓶)をのせ、静電荷現像用トナーに20gの加重をかけた状態でプレートごと恒温恒湿機(50℃、40%)内にいれ、24時間保持した。取り出した後、2時間室温で放置し錘、パラフィン紙、円筒の容器をゆっくりと外し、トナー母粒子の塊を取り出し、順に錘をのせていき、トナー塊が崩壊する錘の重さを測定した。
【0214】
この崩壊する錘の最低加重重量毎に静電荷現像用トナーの保存性を以下の様に判定した。
尚、崩壊させるまでもなく、円筒の容器をゆっくりと外した際にすでに崩壊したものは0gとした。
◎(良好) :50g未満の荷重で崩れる。
○(実用可) :50g以上100g未満の荷重で崩れる。
×(使用不可):100g以上の荷重をかけないと崩れない。
【0215】
<ダスト放散速度(Vd)の測定方法と定義>
後述する方法により調製した現像用トナーをカラーページプリンターML9600PS(沖データ社製)のカートリッジに4本ともに入れ、上質紙PA4(富士ゼロックス社製)を用い、ブルーエンジェルマーク認定の測定法(RAL_UZ122_2006)に従って粉塵を捕集し、フィルター上に捕集された物質の質量測定からダストの放散速度を求めた。
【0216】
具体的には、予め放散試験チャンバー(VOC−010/容積1000L/エスペック社製)をベーキング処理してブランク測定した後、前述のプリンターとダスト測定用フィ
ルターを設置して、60分間以上槽内の温度湿度が規定値(23±2℃/50±5%)に収まる様に待機した。遠隔操作でプリンターを作動させると同時にフィルターからの吸引を開始し、規定枚数印刷して2時間後まで吸引捕集を行った。尚、印刷パターンはVE110−7,Version2006−06−01(RAL_UZ122/RALC00.PDF)を用いた。
ダストの放散速度は以下の式より求めた。
【0217】
(1)温湿度補正後のダスト質量mSt=(mMFbrutto−mMFtara)+(mRF1−mRF2)
mMFtara:ダスト試料採取前の質量が安定した測定フィルターの質量(mg)
mMFbrutto:ダスト試料採取後の質量が安定した測定フィルターの質量(mg)
mRF1:試験前の基準フィルターの質量(mg)
mRF2:試験後の基準フィルターの質量(mg)
【0218】
(2)Vd=(mSt×n×V×to)/(VS×tp)
Vd:ダスト放散速度(mg/hr)
n :換気回数(h−1)
to:総サンプリング時間(min)
tp:印刷時間(min)
V:チャンバー容積(m3)
VS:フィルターを通過して吸引された空気の体積(m3)
Vdが0.7以下のものを◎、0.7を超え3.0以下のものを○、Vdが3.0を超えるものを×と判定した。
【0219】
この様に測定・判定した静電荷現像用トナーのダスト放散速度(Vd)を表2に記載した。
なお、実施例2〜5、比較例1〜4のVd値は、推測値が記載してある。この推測値は、
図4に示すように、Dt(トナー粉塵放散量)とVd(ダスト放散速度)の間には、前記のとおりVd=5.53×10
−4×Dt+0.574(相関係数の二乗=0.999)
のという相関がある為、表2に示した実施例2〜5、比較例1〜4のDtの実測値を上式に代入し求めたVdである。この様にして求めたVd値にもとづきVdが0.7以下のものを◎、0.7を超え3.0以下のものを○、Vdが3.0を超えるものを×と判定した。
【0220】
<外添剤のBET比表面積の測定方法と定義>
BET比表面積はマウンテック社製Macsorb model−1201を使用し、液体窒素を用いる1点法によって測定した。具体的には以下の通りである。
まずガラス製の専用セルに測定サンプルを1.0g程度充填した(以下、サンプル充填量をA(g)とする)。次いで、セルを測定器本体にセットし、窒素雰囲気下で200℃、20分の乾燥脱気を行った後、セルを室温まで冷却した。その後、セルを液体窒素で冷却しつつ、セル内に測定ガス(第一級の窒素30%・ヘリウム70%混合ガス)を流量25mL/minで流し、測定ガスのサンプルへの吸着量V(cm3)を測定した。サンプルの総表面積をS(m2)とすると、求めるBET比表面積(m2/g)は以下の計算式によって算出できる。
(BET比表面積)=S/A={K×(1−P/P0)×V}/A
K:ガス定数(本測定においては、4.29)
P/P0:吸着ガスの相対圧力であり、混合比の97%(本測定においては、0.29)である。
【0221】
[実施例1]
<着色剤分散液の調整>
プロペラ翼を備えた攪拌機の容器に、トルエン抽出液の紫外線吸光度が0.02であり、真密度が1.8g/cm3のファーネス法で製造されたカーボンブラック(三菱化学社製、三菱カーボンブラックMA100S)20部、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンS−20D)1部、非イオン性界面活性剤(花王社製、エマルゲン120)4部、導電率が1μS/cmのイオン交換水75部を加え、予備分散して顔料プレミックス液を得た。プレミックス後の分散液中カーボンブラックの体積中位径Dv50は約90μmであった。
【0222】
前記プレミックス液を原料スラリーとして湿式ビーズミルに供給し、ワンパス分散を行った。なお、ステータの内径は120mmφ、セパレータの径が60mmφ、分散用のメディアとして直径が50μmのジルコニアビーズ(真密度6.0g/cm3)を用いた。ステータの有効内容積は約2リットルであり、メデイアの充填容積は1.4リットルとしたので、メディア充填率は70%である。
【0223】
ロータの回転速度を一定(ロータ先端の周速が約11m/sec)として、供給口より前記プレミックススラリを無脈動定量ポンプにより供給速度約40リットル/hrで供給し、所定粒度に達した時点で排出口より製品を取得した。なお、運転時にはジャケットから約10℃の冷却水を循環させながら行い、体積平均径(Mv)160nm、個数平均径(Mn)104nmの着色剤分散液を得た。
【0224】
<ワックス分散液A1の調製>
加圧循環ライン付きのホモジナイザー(ゴーリン社製、LAB60−10TBS型)のジャケット付きポットにHiMic−1090(日本精蝋社製:融点82℃(カタログ値は89℃))26.7部(1068g)、ペンタエリスリトールテトラステアレート(酸価3.0、水酸基価1.0、融点77℃と67℃)3.0部、デカグリセリンデカベヘネート(水酸基価27、融点70℃)0.3部を添加し、95℃で30分間攪拌しながら加熱した。その後、20%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(第一工業製薬社製、ネオゲンS20D、以下20%DBS水溶液と略す)2.8部、脱塩水67.2部を予め95℃に加熱した混合物を加えて100℃に加熱し、10MPaの加圧条件で1次循環乳化を行った。
【0225】
体積中位径を10分おきに測定し、メジアン径が500nm前後まで下がったら更に圧力条件を25MPaに上げて引き続き2次循環乳化を行った。体積中位径が230nmになるまで分散した後、速やかに冷却しワックス分散液A1(エマルジョン固形分濃度=30.3%)を作製した。
また、HiMic−1090(日本精蝋社製:融点82℃(カタログ値は89℃))26.7部、ペンタエリスリトールテトラステアレート(酸価3.0、水酸基価1.0、融点77℃と67℃)3.0部、デカグリセリンデカベヘネート(水酸基価27、融点70℃)0.3部を95℃で30分間攪拌しながら加熱した混合物を室温まで冷却した、ワックス混合物(ワックスA1)の粉塵放散量(Dw)は、26,723CPMであった。
【0226】
<ワックス分散液A2の調製>
加圧循環ライン付きのホモジナイザー(ゴーリン社製、LAB60−10TBS型)のジャケット付きポットに、パラフィンワックス(日本精鑞社製HNP−9、融点76℃)27部(1080g)、ステアリルアクリレート(東京化成社製)2.8部を添加し、90℃で30分間攪拌しながら加熱した。その後、20%DBS1.9部、脱塩水68.3部を予め90℃に加熱した混合物を加えて90℃に加熱し、10MPaの加圧条件で1次
循環乳化を行った。体積中位径を10分おきに測定し、メジアン径が500nm前後まで下がったら更に圧力条件を20MPaに上げて引き続き2次循環乳化を行った。体積中位径が230nmになるまで分散した後、速やかに冷却しワックス・分散液A2(エマルジョン固形分濃度=29.4%)を作製した。
【0227】
また、パラフィンワックス(日本精鑞社製HNP−9、融点76℃)27部(540g)、ステアリルアクリレート(東京化成社製)2.8部を95℃で30分間攪拌しながら加熱した混合物を室温まで冷却したワックス混合物(ワックスA2)の粉塵放散量(Dw)は、155,631CPMであった。
【0228】
<重合体一次粒子分散液B1の調製>
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器に、前記ワックス分散液A1 35.0部(700.1g)、脱塩水259部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。その後、前記液の攪拌を続けたまま、そこへ下記の「重合性モノマー類等」と「乳化剤水溶液」との混合物を5時間かけて添加した。この混合物を滴下開始した時間を「重合開始」とし、下記の「開始剤水溶液」を重合開始30分後から4.5時間かけて添加し、更に重合開始5時間後から、下記の「追加開始剤水溶液」を2時間かけて添加し、更に攪拌を続けたまま内温90℃のまま1時間保持した。
[重合性モノマー類等]
スチレン 75.9部
アクリル酸ブチル 24.1部
アクリル酸 1.2部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.73部
トリクロロブロモメタン 1.0部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 67.0部
[開始剤水溶液]
8質量%過酸化水素水溶液 15.5部
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 15.5部
[追加開始剤水溶液]
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 14.2部
重合反応終了後冷却した。この操作を2回繰り返し、得られた2回分の重合体一次粒子分散液を均一に混合し、乳白色の重合体一次粒子分散液B1を得た。ナノトラックを用いて測定した体積平均径(Mv)は242nmであり、固形分濃度は22.7質量%であった。
【0229】
<重合体一次粒子分散液B2の調製>
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器に、前記ワックス分散液A2 36.1部(722.2g)、脱塩水259部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。その後、前記液の攪拌を続けたまま、そこへ下記の「重合性モノマー類等」と「乳化剤水溶液」との混合物を5時間かけて添加した。この混合物を滴下開始した時間を「重合開始」とし、下記の「開始剤水溶液」を重合開始30分後から4.5時間かけて添加し、更に重合開始5時間後から、下記の「追加開始剤水溶液」を2時間かけて添加し、更に攪拌を続けたまま内温90℃のまま1時間保持した。
[重合性モノマー類等]
スチレン 76.8部
アクリル酸ブチル 23.2部
アクリル酸 1.5部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.70部
トリクロロブロモメタン 1.0部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 67.1部
[開始剤水溶液]
8質量%過酸化水素水溶液 15.5部
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 15.5部
[追加開始剤水溶液]
8質量%L(+)−アスコルビン酸水溶液 14.2部
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液B2を得た。ナノトラックを用いて測定した体積平均径(Mv)は232nmであり、固形分濃度は22.6質量%であった。
【0230】
<トナー母粒子C1の調製>
下記の各成分を用いて、以下の凝集工程、円形化工程を実施することによりトナー母粒子C1を製造した。現像用トナー母粒子の成分となる固形分は以下の通りである。
コア材として、
重合体一次粒子分散液B1:固形分として90部(重合体一次粒子分散液B1:4011g)
着色剤微粒子分散液:着色剤固形分として6.0部
シェル材として、
重合体一次粒子分散液B2:固形分として10部(重合体一次粒子分散液B2:448g)
【0231】
(コア材凝集工程)
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器(容積12リットル、内径208mm、高さ355mm)に重合体一次粒子分散液B1(4011g)と20%DBS水溶液(2.53g)を仕込み、内温10℃で5分間均一に混合した。続いて脱塩水(541.5g)を添加し、内温10℃、250rpmで攪拌を続けながら第一硫酸鉄(FeSO
4・7H
2O)の5%水溶液(113.2g)を5分かけて添加してから着色剤微粒子分散液(303.5g)を5分かけて添加し、内温10℃で均一に混合し、更に同一の条件のまま0.5%硫酸アルミニウム水溶液(101.2g)を添加し、続いて脱塩水(101.2g)を添加した。その後、コア凝集工程の温度として54℃まで昇温し、回転数250rpmのまま内温を54.0℃から段階的に56.0℃まで160分かけて昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し6.8μmまで成長させた。
【0232】
(シェル被覆工程)
その後、重合体一次粒子分散液B2(447.6g)を8分かけて添加して、そのまま30分間保持した。
(円形化工程)
続いて回転数を150rpmに落としてから20%DBS水溶液(303.5g)を8分かけて添加し、更に脱塩水(232.5g)を添加した。その後円形化工程の温度として90℃に昇温して平均円形度が0.967になるまで加熱及び攪拌を続けた。その後20分かけて30℃まで冷却し、スラリー液を得た。
【0233】
(洗浄乾燥工程)
得られたスラリーを全量、目開き24μmの篩を装着した湿式電磁篩振盪機(AS20
0/レッチェ社製)を用いて、粗大粒子の除去を目的に濾過処理を行い、攪拌装置付きのタンクにて一旦蓄えた。その後、このスラリーを濾布(ポリエステル TR815C、中尾フィルター工業/厚み0.3mm/通気度48(cc/cm
2/min)が装着された横型遠心分離機(HZ40Si型/三菱化工機社製)へ、加速度800G条件で遠心脱水洗浄を行った。
【0234】
電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水を、リムから溢れない速度でスラリー固形分の約50倍量加えると、濾液の電気伝導度が2μS/cmとなった。最後に十分水を振り切り、掻き取り装置でケーキを回収した。ここで得られたケーキをステンレス製バットに高さ20mmとなる様に敷き詰め、40℃に設定された送風乾燥機内で48時間乾燥することにより、トナー母粒子C1を得た。
得られたトナー母粒子を用いて、以下の外添工程を実施することにより現像用トナーを製造した。
【0235】
<現像用トナーD1の調製>
(外添工程)
得られたトナー母粒子C1(100部:250g)を、外添機(協立理工社製SK−M2000型)に投入し、ついで外添剤としてシリコーンオイルで疎水化処理された体積平均一次粒径8nm、BET比表面積の150m
2/gのシリカ微粒子0.5部とシリコーンオイルで疎水化処理された体積平均一次粒径40nm、BET比表面積の42m
2/gのシリカ微粒子0.3部、さらにヘキサメチレンジシラザンで疎水化処理された体積平均一次粒径110nm、BET比表面積の26m
2/gのシリカ微粒子1.5部を添加し、6000rpmで1分間混合する操作を5回繰り返した後、150メッシュで篩別して現像用トナーD1を得た。
【0236】
[実施例2]
<重合体一次粒子分散液B3の調製>
スチレンを74.1部、アクリル酸ブチルを25.9部とする事以外は、重合体一次粒子分散液B1の調製と同様に実施し、重合体一次粒子分散液B3を得た。
<トナー母粒子C2の調製>
以下に示す変更点以外は、トナー母粒子C1の調製と同様の調整によりトナー母粒子C2を得た。
重合体一次粒子分散液B1の替わりに、重合体一次粒子分散液B3を用いた。
コア凝集工程の温度として44℃まで昇温し、回転数250rpmのまま内温を段階的に54.0℃まで310分かけて昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し6.8μmまで成長させた。
【0237】
<現像用トナーD2の調製>
トナー母粒子C1の替わりに、トナー母粒子C2を用いた事以外は、現像用トナーD1の調製と同様の調整を行い、現像用トナーD2を得た。
【0238】
[実施例3]
<重合体一次粒子分散液B4の調製>
スチレンを77.7部、アクリル酸ブチルを22.3部とする事以外は、重合体一次粒子分散液B1の調製と同様に実施し、重合体一次粒子分散液B4を得た。
<トナー母粒子C3の調製>
以下に示す変更点以外は、トナー母粒子C1の調製と同様の調整によりトナー母粒子C3を得た。
【0239】
重合体一次粒子分散液B1の替わりに、重合体一次粒子分散液B4を用いた。
コア凝集工程の温度として56℃まで昇温し、回転数250rpmのまま内温を段階的に58.0℃まで210分かけて昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し6.8μmまで成長させた。
【0240】
<現像用トナーD3の調製>
トナー母粒子C1の替わりに、トナー母粒子C3を用いた事以外は、現像用トナーD1の調製と同様の調整を行い、現像用トナーD3を得た。
【0241】
[実施例4]
<重合体一次粒子分散液B5の調製>
ヘキサンジオールジアクリレートを0.53部とする事以外は、重合体一次粒子分散液B1の調製と同様に実施し、重合体一次粒子分散液B5を得た。
<トナー母粒子C4の調製>
以下に示す変更点以外は、トナー母粒子C1の調製と同様の調整によりトナー母粒子C4を得た。
【0242】
重合体一次粒子分散液B1の替わりに、重合体一次粒子分散液B5を用いた。
コア凝集工程の温度として54℃まで昇温し、回転数250rpmのまま内温を段階的に55.5℃まで165分かけて昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し6.8μmまで成長させた。
<現像用トナーD4の調製>
トナー母粒子C1の替わりに、トナー母粒子C4を用いた事以外は、現像用トナーD1の調製と同様の調整を行い、現像用トナーD4を得た。
【0243】
[実施例5]
<重合体一次粒子分散液B6の調製>
ヘキサンジオールジアクリレートを0.90部とする事以外は、重合体一次粒子分散液B1の調製と同様に実施し、重合体一次粒子分散液B6を得た。
<トナー母粒子C5の調製>
以下に示す変更点以外は、トナー母粒子C1の調製と同様の調整によりトナー母粒子C5を得た。
【0244】
重合体一次粒子分散液B1の替わりに、重合体一次粒子分散液B6を用いた。
コア凝集工程の温度として55℃まで昇温し、回転数250rpmのまま内温を段階的に56.0℃まで170分かけて昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し6.8μmまで成長させた。
<現像用トナーD5の調製>
トナー母粒子C1の替わりに、トナー母粒子C5を用いた事以外は、現像用トナーD1の調製と同様の調整を行い、現像用トナーD5を得た。
【0245】
[比較例1]
<重合体一次粒子分散液B7の調製>
スチレンを73.2部、アクリル酸ブチルを26.8部とする事以外は、重合体一次粒子分散液B1の調製と同様に実施し、重合体一次粒子分散液B7を得た。
<トナー母粒子C6の調製>
以下に示す変更点以外は、トナー母粒子C1の調製と同様の調整によりトナー母粒子C6を得た。
【0246】
重合体一次粒子分散液B1の替わりに、重合体一次粒子分散液B7を用いた。
コア凝集工程の温度として41℃まで昇温し、回転数250rpmのまま内温を段階的に
53.0℃まで330分かけて昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し6.8μmまで成長させた。
<現像用トナーD6の調製>
トナー母粒子C1の替わりに、トナー母粒子C6を用いた事以外は、現像用トナーD1の調製と同様の調整を行い、現像用トナーD6を得た。
【0247】
[比較例2]
<重合体一次粒子分散液B8の調製>
スチレンを78.6部、アクリル酸ブチルを21.4部とする事以外は、重合体一次粒子分散液B1の調製と同様に実施し、重合体一次粒子分散液B8を得た。
<トナー母粒子C7の調製>
以下に示す変更点以外は、トナー母粒子C1の調製と同様の調整によりトナー母粒子C7を得た。
【0248】
重合体一次粒子分散液B1の替わりに、重合体一次粒子分散液B8を用いた。
コア凝集工程の温度として56℃まで昇温し、回転数250rpmのまま内温を段階的に59.0℃まで300分かけて昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し6.8μmまで成長させた。
<現像用トナーD7の調製>
トナー母粒子C1の替わりに、トナー母粒子C7を用いた事以外は、現像用トナーD1の調製と同様の調整を行い、現像用トナーD7を得た。
【0249】
[比較例3]
<重合体一次粒子分散液B9の調製>
ヘキサンジオールジアクリレートを0.48部とする事以外は、重合体一次粒子分散液B1の調製と同様に実施し、重合体一次粒子分散液B9を得た。
<トナー母粒子C8の調製>
以下に示す変更点以外は、トナー母粒子C1の調製と同様の調整によりトナー母粒子C8を得た。
【0250】
重合体一次粒子分散液B1の替わりに、重合体一次粒子分散液B9を用いた。
コア凝集工程の温度として54℃まで昇温し、回転数250rpmのまま内温を段階的に55.5℃まで180分かけて昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し6.8μmまで成長させた。
<現像用トナーD8の調製>
トナー母粒子C1の替わりに、トナー母粒子C8を用いた事以外は、現像用トナーD1の調製と同様の調整を行い、現像用トナーD8を得た。
【0251】
[比較例4]
<重合体一次粒子分散液B10の調製>
ヘキサンジオールジアクリレートを1.00部とする事以外は、重合体一次粒子分散液B1の調製と同様に実施し、重合体一次粒子分散液B10を得た。
<トナー母粒子C9の調製>
以下に示す変更点以外は、トナー母粒子C1の調製と同様の調整によりトナー母粒子C9を得た。
【0252】
重合体一次粒子分散液B1の替わりに、重合体一次粒子分散液B10を用いた。
コア凝集工程の温度として55℃まで昇温し、回転数250rpmのまま内温を段階的に56.5℃まで155分かけて昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し6.8μmまで成長させた。
<現像用トナーD9の調製>
トナー母粒子C1の替わりに、トナー母粒子C9を用いた事以外は、現像用トナーD1の調製と同様の調整を行い、現像用トナーD9を得た。
【0253】
[参考例1]
<トナー母粒子C10の調製>
以下に示す変更点以外は、トナー母粒子C1の調製と同様の調整によりトナー母粒子C10を得た。
コア材として、重合体一次粒子分散液B1:固形分として80部(重合体一次粒子分散液B1:3607g)着色剤微粒子分散液:着色剤固形分として6.0部、シェル材として、重合体一次粒子分散液B2:固形分として20部(重合体一次粒子分散液B2:906g)とした。
【0254】
コア凝集工程の温度として55℃まで昇温し、回転数250rpmのまま内温を段階的に56.0℃まで165分かけて昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し6.8μmまで成長させた。
<現像用トナーD10の調製>
トナー母粒子C1の替わりに、トナー母粒子C10を用いた事以外は、現像用トナーD1の調製と同様の調整を行い、現像用トナーD10を得た。
【0255】
[参考例2]
<トナー母粒子C11の調製>
以下に示す変更点以外は、トナー母粒子C1の調製と同様の調整によりトナー母粒子C11を得た。
重合体一次粒子分散液B1:固形分として90部(重合体一次粒子分散液B1:4011g)重合体一次粒子分散液B2:固形分として10部(重合体一次粒子分散液B2:448g)着色剤微粒子分散液:着色剤固形分として6.0部とし、シェル材はなしとした。
【0256】
凝集工程の温度として55℃まで昇温し、回転数250rpmのまま内温を段階的に56.0℃まで200分かけて昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し7.3μmまで成長させた。続いて円形化工程として回転数を150rpmに落としてから20%DBS水溶液(303.5g)を8分かけて添加し、更に脱塩水(232.5g)を添加した。その後72分かけて90℃に昇温して平均円形度が0.967になるまで加熱及び攪拌を続けた。その後20分かけて30℃まで冷却し、スラリー液を得た。
【0257】
<現像用トナーD11の調製>
トナー母粒子C1の替わりに、トナー母粒子C11を用いた事以外は、現像用トナーD1の調製と同様の調整を行い、現像用トナーD11を得た。
[参考例3]
<トナー母粒子C12の調製>
以下に示す変更点以外は、トナー母粒子C1の調製と同様の調整によりトナー母粒子C12を得た。
【0258】
コア材として、重合体一次粒子分散液B2:固形分として90部(重合体一次粒子分散液B1:4011g)着色剤微粒子分散液:着色剤固形分として6.0部、シェル材として重合体一次粒子分散液B2:固形分として10部(重合体一次粒子分散液B1:447g)とした。コア凝集工程の温度として55℃まで昇温し、回転数250rpmのまま内温を段階的に56.0℃まで150分かけて昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径
(Dv50)を測定し6.8μmまで成長させた。
【0259】
<現像用トナーD12の調製>
トナー母粒子C1の替わりに、トナー母粒子C12を用いた事以外は、現像用トナーD1の調製と同様の調整を行い、現像用トナーD12を得た。
[参考例4]
<トナー母粒子C13の調製>
以下に示す変更点以外は、トナー母粒子C1の調製と同様の調整によりトナー母粒子C13を得た。
【0260】
コア材として、重合体一次粒子分散液B1:固形分として90部(重合体一次粒子分散液B1:4013g)着色剤微粒子分散液:着色剤固形分として6.0部、シェル材として重合体一次粒子分散液B1:固形分として10部(重合体一次粒子分散液B1:446g)とした。コア凝集工程の温度として55℃まで昇温し、回転数250rpmのまま内温を段階的に56.0℃まで180分かけて昇温し、マルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定し6.8μmまで成長させた。
【0261】
<現像用トナーD13の調製>
トナー母粒子C1の替わりに、トナー母粒子C13を用いた事以外は、現像用トナーD1の調製と同様の調整を行い、現像用トナーD13を得た。
【0262】
【表1】
【0263】
【表2】
【0264】
参考例1〜4よれば、本発明における静電荷現像用トナーの前提となる高付着量HOS性とダスト放散速度(Vd)を両立できるトナーとするためには、例えば、36枚/分の
画像形成装置の場合、トナーの粉塵放散量(Dt)を、下記式(7)を満たすように制御することが必要であることが分かる。
具体的には、実施例1及び参考例1〜4の対比から分かるように、参考例4のようなDtが21と前記範囲から低い側に逸脱している現像用トナーは、高付着量HOS性が実用範囲外であり使用に耐えない。また、参考例3に示す現像用トナーのようなDtが上限の5,665と高い側に逸脱している現像用トナーは、ダスト放散速度(Vd)が速すぎて実用に耐えない。これに対して、Dtの範囲が下記式(7)を満足する実施例1並びに参考例1及び2は、高付着量HOS性とダスト放散速度(Vd)を両立できることが分かる。
【0265】
なお、本発明において、36枚/分の画像形成装置の場合のトナーの粉塵放散量(Dt
)は、
Vp=36として、上記式(1)に代入すると、
60≦Dt≦195,449/36−1,040
となり、
60≦Dt≦4,389 (7)
であることが分かる。
【0266】
また、実施例1〜5及び比較例1〜4を対比すると、参考例1及び2のような定着時に発生するダストを抑制しつつ紙への静電荷像現像用トナー付着量が多くなるグラフィックユース時の耐ホットオフセット性を向上させた静電荷像現像用トナーにおいても、保存性を維持したまま通常(低付着量)高速印刷時の低温定着性を改善させるには、DSC2回目昇温過程の吸熱量がDSC1回目の昇温過程の吸熱量の80%以下に減衰するピークまたはショルダーを65.6℃以上70.8℃以下に有するトナーとすることが肝要であり、加えて、熱を長い時間熱を与えられる事により厳しくなる低速印字時の耐ホットオフセット性を維持したまま、熱を受ける時間が短くなる事により厳しくなる高速印字時のグロスを向上させるには140℃における動的粘弾性測定において、角速度20〜100rad/secにおけるtanδの平均値を1.62以上2.20以下とすることが必須要件であると分かる。
【0267】
よって、本発明の現像用トナーに限り、グラフィックユースから通常印刷時まで更には低速から高速印字までの幅広い用途に適合する静電荷像現像用トナーを提供する事が可能となることが分かる。