(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のポリオレフィン樹脂組成物及び成形体について説明する。尚、本明細書において、「(共)重合体」は「単独重合体」または「共重合体」を意味する。また「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
【0012】
〔ポリオレフィン樹脂(A)〕
本発明において、ポリオレフィン樹脂(A)としては、公知のポリオレフィン樹脂を用いることができ、例えば以下のものが挙げられる。ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレンのランダム共重合体又はブロック共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテンのランダム共重合体又はブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エチレン又はプロピレンとシクロペンタジエンとの共重合体、エチレン又はプロピレンと50質量%以下のビニル系単量体(例えば、酢酸ビニル、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、芳香族ビニル単量体等)とから得られるランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト重合体。これらのポリオレフィン樹脂(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
これらの中でも、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンのランダム共重合体又はブロック共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテンのランダム共重合体又はブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、プロピレンとシクロペンタジエンとの共重合体、プロピレンと50質量%以下のビニル系単量体とから得られるランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト重合体が好ましく、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンのランダム共重合体又はブロック共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテンのランダム共重合体又はブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体がより好ましい。
プロピレンの(共)重合体であると、後述する第二の分散剤(D)の分散性に優れる。
【0014】
〔顔料(B)〕
本発明において、顔料(B)としては、一般にポリオレフィン樹脂の顔料として用いられているものであれば特に限定はされず、例えば以下のものが挙げられる。アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ペリレン系、イソインドリノン系等の有機顔料;及び、酸化チタン、弁柄、鉛丹、カーボンブラック、鉄黒、群青、コバルトブルー等の無機顔料;が挙げられる。これら有機顔料や無機顔料は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0015】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物中における顔料(B)の含有量は、ポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.05〜2質量部であることがより好ましい。顔料(B)の含有量が0.01質量部以上であると、成形体において優れた着色効果が得られる。また、顔料(B)の含有量が5質量部以下であると、顔料(B)の未分散物に由来する成形体の外観不良を抑制することができる。
【0016】
〔第一の分散剤(C)〕
本発明において第一の分散剤(C)としては、顔料の分散剤として知られている公知の脂肪酸金属塩及びワックスの少なくとも一方が用いられる。脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。ワックスとしては、例えば、モンタンワックス、パラフィンワックス、カルナウバワックス等の天然ワックス;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタン酸エステルワックス等の合成ワックス;が挙げられる。これらの第一の分散剤(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物中における第一の分散剤(C)の含有量は、ポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.05〜2質量部であることがより好ましい。第一の分散剤(C)の含有量が0.01質量部以上であると、ポリオレフィン樹脂(A)中での顔料(B)の分散性に優れる。また、第一の分散剤(C)の含有量が5質量部以下であると、ポリオレフィン樹脂組成物の滑性を抑制し、押出成形における樹脂組成物の吐出量の低下を抑制することができる。
【0018】
〔第二の分散剤(D)〕
本発明において第二の分散剤(D)は、炭素数が2以上のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(d1)単位を50質量%以上含むアルキルメタクリレート系重合体(以下、単に「アルキルメタクリレート系重合体」という場合がある。)を含む。即ち、当該重合体は、炭素数2以上のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(d1)単位50〜100質量%と他の単量体(d2)単位50〜0質量%との(共)重合体である。
【0019】
炭素数が2以上のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(d1)単位の原料となるアルキルメタクリレート(d1)としては、例えば以下のものが挙げられる。エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
これらの中でも、炭素数が2〜6のアルキル基を有するアルキルメタクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数が4のアルキルメタクリレートがより好ましく、i−ブチルメタクリレートが特に好ましい。アルキルメタクリレート(d1)のアルキル基の炭素数が2以上であると、ポリオレフィン樹脂(A)中での顔料(B)の分散性に優れる。また、アルキル基の炭素数が6以下であると、第二の分散剤(D)の粉体取扱性に優れる。アルキル基の炭素数が4であると、ポリオレフィン樹脂(A)中での顔料(B)の分散性が更に優れる。アルキル基がi−ブチルメタクリレートであると、ポリオレフィン樹脂(A)中での顔料(B)の分散性が特に優れる。
【0021】
共重合性成分として用いられる他の単量体(d2)としては、例えば以下のものが挙げられる。スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリル酸;n−ブチルアクリレート;メチル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン類。これらの他の単量体(d2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明のアルキルメタクリレート系重合体中における炭素数が2以上のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(d1)単位の含有率は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることがさらに好ましい。アルキルメタクリレート(d1)単位の含有率が60質量%以上であると、ポリオレフィン樹脂(A)中での顔料(B)の分散性に優れる。
【0023】
第二の分散剤(D)中において、アルキルメタクリレート系重合体は、同一の重合体を単独で用いてもよく、組成、分子量、粒子径等の異なる重合体を2種以上併用してもよい。
【0024】
アルキルメタクリレート系重合体の質量平均分子量は、1万5000〜200万であることが好ましく、1万5000〜50万であることがより好ましく、1万5000〜14万5000であることがさらに好ましく、2万〜13万であることが特に好ましく、2万5000〜10万であることが最も好ましい。アルキルメタクリレート系重合体の質量平均分子量が1万5000以上であると、第二の分散剤(D)の粉体取扱性に優れる。また、アルキルメタクリレート系重合体の質量平均分子量が200万以下であると、ポリオレフィン樹脂(A)中での顔料(B)の分散性に優れる。尚、アルキルメタクリレート系重合体の質量平均分子量の測定方法は後述する。
【0025】
ポリオレフィン樹脂組成物中における第二の分散剤(D)の含有量は、ポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましく、0.2質量部〜3質量部であることが更に好ましい。第二の分散剤(D)の含有量が0.01質量部以上であると、ポリオレフィン樹脂(A)中での顔料(B)の分散性に優れる。また、第二の分散剤(D)の含有量が10質量部以下であると、ポリオレフィン樹脂の基本特性を変えることなく、顔料(B)の分散性を向上させることができる。
【0026】
[重合方法]
本発明のアルキルメタクリレート系重合体の重合方法としては、例えば、乳化重合、ソープフリー乳化重合、微細懸濁重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合等の公知の重合方法が挙げられる。これらの重合方法の中でも、アルキルメタクリレート系重合体が粉体状または顆粒状の形態で得られ、ポリオレフィン樹脂(A)中での第二の分散剤(D)の分散性に優れることから、乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、懸濁重合法であることが好ましく、乳化重合法であることがより好ましい。
【0027】
乳化重合、ソープフリー乳化重合等の、粒子構造体を得ることができる重合方法を用いて重合する場合の粒子構造は、単層構造であっても多層構造であってもよい。粒子構造が多層構造である場合、経済性の観点から、3層構造以下であることが好ましい。
【0028】
乳化重合における乳化剤としては、公知の乳化剤を用いることができ、例えば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、高分子乳化剤、分子内にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する反応性乳化剤が挙げられる。
【0029】
アニオン性乳化剤としては、例えば以下のものが挙げられる。「ニューコール560SF」、「ニューコール562SF」、「ニューコール707SF」、「ニューコール707SN」、「ニューコール714SF」、「ニューコール723SF」、「ニューコール740SF」、「ニューコール2308SF」、「ニューコール2320SN」、「ニューコール1305SN」、「ニューコール271A」、「ニューコール271NH」、「ニューコール210」、「ニューコール220」、「ニューコールRA331」、及び「ニューコールRA332」(いずれも商品名、日本乳化剤(株)製);「ラテムルB−118E」、「レベノールWZ」、及び「ネオペレックスG15」(いずれも商品名、花王(株)製);「ハイテノールN08」(商品名、第一工業製薬(株)製)。
ノニオン性乳化剤としては、例えば、「ノニポール200」、及び「ニューポールPE−68」(いずれも商品名、三洋化成工業(株)製)が挙げられる。
高分子乳化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びポリビニルピロリドンが挙げられる。
反応性乳化剤としては、例えば以下のものが挙げられる。「Antox MS−60」、及び「Antox MS−2N」(いずれも商品名、日本乳化剤(株)製);「エレミノールJS−2」(商品名、三洋化成工業(株)製);「ラテムルS−120」、「ラテムルS−180」、「ラテムルS−180A」、及び「ラテムルPD−104」(いずれも商品名、花王(株)製);「アデカリアソープSR−10」、及び「アデカリアソープSE−10」(いずれも商品名、(株)ADEKA製);「アクアロンKH−05」、「アクアロンKH−10」、及び「アクアロンHS−10」(いずれも商品名、第一工業製薬(株)製)等の反応性アニオン乳化剤。「アデカリアソープNE−10」、「アデカリアソープER−10」、「アデカリアソープNE−20」、「アデカリアソープER−20」、「アデカリアソープNE−30」、「アデカリアソープER−30」、「アデカリアソープNE−40」、及び「アデカリアソープER−40」(いずれも商品名、(株)ADEKA製);「アクアロンRN−10」、「アクアロンRN−20」、「アクアロンRN−30」、及び「アクアロンRN−50」(いずれも商品名、第一工業製薬(株)製)等の反応性ノニオン性乳化剤。
これらの乳化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を用いることができ、例えば以下のものが挙げられる。過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩系化合物;アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等の油溶性アゾ系化合物;2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}及びその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)及びその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)及びその塩類、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]及びその塩類等の水溶性アゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物。
これらのラジカル重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、乳化重合法にて重合を行う場合には、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、アスコルビン酸塩等の還元剤を、上記ラジカル重合開始剤と組合せて用いることもできる。
【0031】
重合体の質量平均分子量の調整方法は、特に限定されるものではなく、例えば、重合開始剤の使用量を調整する方法、連鎖移動剤の使用量を調整する方法が挙げられる。
【0032】
連鎖移動剤としては、例えば以下のものが挙げられる。n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化合物;α−メチルスチレンダイマー。これらの連鎖移動剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の使用量は、アルキルメタクリレート系重合体の質量平均分子量、連鎖移動剤の種類、単量体の組成比等に応じて、適宜調整することができる。
【0033】
[重合体の粉体化]
このようにして製造された重合体は、通常、粉体として回収される。重合体の粉体化方法は、特に限定されるものではなく、重合方法に応じて適宜選択できる。例えば、乳化重合の場合の粉体化方法としては、例えば、凝析法、スプレードライ法、遠心分離法、凍結乾燥法が挙げられる。これらの粉体化方法の中でも、粉体の均質性の観点から、凝析法、スプレードライ法であることが好ましい。
【0034】
凝析法を用いて重合体のラテックスを粉体化する場合、ラテックスを30〜90℃で凝析剤に接触させ、攪拌しながら凝析させてスラリーとし、脱水乾燥することによって粉体を得ることができる。凝析剤としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸類;蟻酸、酢酸等の有機酸類;硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム等の無機塩類;酢酸カルシウム等の有機塩類が挙げられる。
【0035】
スプレードライ法を用いて重合体のラテックスを粉体化する場合、ラテックスを、入口温度120〜220℃、出口温度40〜90℃の条件で、噴霧乾燥することによって粉体を得ることができる。出口温度は、重合体粉体の1次粒子への解砕性の観点から、40〜80℃であることが好ましく、40〜70℃であることがより好ましい。
【0036】
第二の分散剤(D)は、アルキルメタクリレート系重合体以外に、ポリオレフィン樹脂(A)の本来の特性を損なわない範囲において、充填剤、難燃剤、安定化剤、結晶核剤、発泡剤、ブロッキング防止、帯電防止等の各種添加剤をさらに配合してもよい。
各種添加剤の含有率は、第二の分散剤(D)の全量100質量%中、30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下がより好ましい。各種添加剤の含有率が30質量%以下であると、ポリオレフィン樹脂(A)中での顔料(B)の分散性に優れる。
【0037】
〔ポリオレフィン樹脂組成物〕
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は各構成成分を混合することによって得ることができる。混合方法としては、押出混練、ロール混練等の公知の溶融混練方法を用いることができる。溶融混練方法は、特に限定されるものではなく、ポリオレフィン樹脂(A)、顔料(B)、第一の分散剤(C)及び第二の分散剤(D)を同時に溶融混練することができる。また、顔料(B)、第一の分散剤(C)及び第二の分散剤(D)の全量とポリオレフィン樹脂(A)の一部とを溶融混練してマスターバッチを製造した後、このマスターバッチ及びポリオレフィン樹脂(A)の残部を溶融混練することができる。溶融混練温度は、ポリオレフィン樹脂(A)の種類に応じて、適宜設定することができる。溶融混練温度は、160〜280℃であることが好ましく、180〜240℃であることがより好ましい。
【0038】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、必要に応じて、充填剤、難燃剤、安定化剤、結晶核剤、発泡剤、ブロッキング防止、帯電防止等の添加剤をさらに配合してもよい。
ポリオレフィン樹脂組成物中におけるこれら添加剤の含有量としては、ポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましい。これら添加剤の含有量が0.01質量部以上であると、各種添加剤の効果が優れ、10質量部以下であると、得られるポリオレフィン樹脂組成物の本来の特性を損なわない。
【0039】
〔成形体〕
本発明の成形体は、本発明のポリオレフィン樹脂組成物を成形して得られる。成形体の成形方法としては、公知の成形方法を用いることができ、例えば、押出成形、射出成形、カレンダー成形、ブロー成形、熱成形、発泡成形、溶融紡糸等の方法が挙げられる。
【0040】
本発明の成形体は、光学シート等のシート材、食品フィルム等のフィルム材、自動車用部材、家電用部材、医療用部材、建築部材に好適である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を説明する。実施例中の「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を示す。実施例に先立って、各種評価方法及び分散剤の製造方法を説明する。
【0042】
(1)質量平均分子量
アルキルメタクリレート系重合体のテトラヒドロフラン可溶分を試料として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて分子量の測定に供した。
GPCの測定条件は下記の通りであり、標準ポリスチレンによる検量線から質量平均分子量を求めた。
装置:東ソー(株)製「HLC8220」、
カラム:東ソー(株)製「TSKgel SuperMultiporeHZ−H」 (内径4.6mm×長さ15cm×2本、排除限界4×10
7(推定))、
溶離液:THF、
溶離液流量:0.35ml/分、
測定温度:40℃、
試料注入量:10μl(試料濃度0.1%)。
【0043】
(2)顔料の分散性(顔料の未分散物数)
シート成形体(幅80mm、長さ300mm、厚み0.3mm)中の面積1000cm
2(幅5cm、長さ20cmの任意の箇所、10箇所の合計)について実体顕微鏡を用いて観察し、長さ200μmを超える顔料の未分散物の数をカウントした。100cm
2あたりの未分散物の数の平均値を求め、以下の基準で分散性を評価した。
A:顔料の未分散物数が5個/100cm
2以下である。
B:顔料の未分散物数が5個/100cm
2を超え、10個/100cm
2以下である。
C:顔料の未分散物数が10個/100cm
2を超える。
【0044】
(3)成形体の生産性(シート成形体の吐出量)
シート成形時に、1分間当たりに製造される成形体を採取し、その質量から吐出量(g/分)を求めた。同一成形条件において、吐出量が高いものほど生産性が優れる。
【0045】
(4)成形体の外観(色ムラ)
得られたシート成形体の外観について、目視により以下の基準で評価した。
A:シート成形体に色ムラが認められない。
B:シート成形体に色ムラが認められる。
【0046】
[製造例1]
温度計、窒素導入管、冷却管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコ(容量5リットル)に、イオン交換水300部(3000グラム)、i−ブチルメタクリレート98部、n−ブチルアクリレート2部、n−オクチルメルカプタン1部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.1部を投入し、このセパラブルフラスコに窒素気流を通じることにより、フラスコ内雰囲気の窒素置換を行なった。次いで、内温を60℃まで昇温させ、過硫酸カリウム0.15部、脱イオン水5部を加えた。その後、加熱攪拌を2時間継続して重合を終了し、アルキルメタクリレート系重合体のラテックスを得た。
得られたラテックスを25℃まで冷却した。その後、酢酸カルシウム5部と水495部を含む70℃の溶液中にこのラテックスを滴下し、液温を90℃まで昇温させて重合体を凝析させた。得られた凝析物を分離して、水で洗浄した後、60℃で12時間乾燥させて、アルキルメタクリレート系重合体の粉体を得た。この粉体を分散剤(D1)とした。この分散剤(D1)の質量平均分子量を測定した結果を、表1に示した。
【0047】
[製造例2〜5]
単量体成分の組成及び連鎖移動剤量を表1に記載のように変更したこと以外は、製造例1と同様にして、アルキルメタクリレート系重合体を得た。
得られたアルキルメタクリレート系重合体粉体を分散剤(D2)〜(D5)とした。分散剤(D2)〜(D6)の質量平均分子量を測定した結果を、表1に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
なお、表1中の略号は、以下に示す通り。
i−BMA:i−ブチルメタクリレート
n−BMA:n−ブチルメタクリレート
n−BA :n−ブチルアクリレート
MMA :メチルメタクリレート
【0050】
[実施例1]
ポリオレフィン樹脂(A)としてポリプロピレン樹脂「ノバテック−PP FY−4」(商品名、日本ポリプロ(株)製、メルトフローレート:5g/10分)100部、顔料(B)として青色顔料「群青1900」(商品名、第一化成工業(株)製)0.5部、第一の分散剤(C)としてステアリン酸カルシウム0.2部、第二の分散剤(D)として分散剤(D1)0.3部を配合し、ハンドブレンドで混合してポリオレフィン樹脂組成物を調製した。その後、Tダイ金型(幅100mm、リップ間0.5mm)を取り付けたφ25mm単軸押出機(機種名「TP−25」、サーモプラスチクス工業(株)製、L/D=20)中にこの樹脂組成物を供給して、スクリュー回転数30rpm、シリンダー温度190℃の条件で押出成形し、シート成形体を得た。
シート成形体の生産性、シート成形体中における顔料の分散性、シート成形体の外観の評価結果を表2に示す。尚、表2中に記載した略記号は、表3の化合物を示す。
【0051】
[実施例2〜7、並びに、比較例1〜4]
樹脂組成物の配合組成を表2に記載の値に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でシート成形体を得た。評価結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
表2から明らかなように、本発明のポリオレフィン樹脂組成物を用いた実施例1〜7においては、シート成形体は顔料分散性が優れ、生産性が高く、また、シート成形体は色ムラもなく外観が優れていた。一方、第一の分散剤(C)を含まない比較例1においては、シート成形体に色ムラが認められ外観が劣っていた。また、第二の分散剤(D)を含まない比較例2〜4で得られたシート成形体は、顔料の分散性が劣り、生産性が劣っていた。