(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸化物前駆体含有液が着色されており、これにより前記含浸部が着色されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の無機繊維質断熱材ブロック。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業の加熱炉、熱処理炉などの高温炉等の各種耐火炉の炉壁を覆う無機繊維質断熱材ブロックとして、無機繊維を積層して不織布様にした無機繊維集合体を用いた無機繊維断熱材が用いられている。中でもニードリング加工された無機繊維集合体(ニードルブランケット)は、その軽量性、易加工性、耐熱衝撃性、耐風食性、低熱伝導率性に優れるといった特性を利用し、多く用いられている。
【0003】
特開2011−226771には、無機繊維ニードルブランケットを積層し、圧縮状態を維持した無機繊維断熱材ブロックを、高温炉等の炉壁や天井に隙間なく施工した後、圧縮を開放し、無機繊維ニードルブランケット自体の積層方向の反発力と復元力を利用して断熱材ブロック同士を密に突き合わせるライニング方法が記載されている。
【0004】
この無機繊維質断熱材ブロックは、上記の通り、軽量で断熱性に優れる等の長所を有する反面、炉内から発生するスケールやアルカリガスによる腐食が問題になっている。中でも鉄鋼業の加熱炉においては、炉内の酸化鉄と無機繊維が低融点化合物を生成し、そこを起点として浸食、脆性化が起こり、ライニングを短命化さえるための問題があった。
【0005】
特開平11−211357には、ブランケット積層方向の一面に、アルミナゾル、またはアルミナゾルとシリカゾルの混合ゾルを固形分換算で55〜300g/m
2塗布して塗布層を形成した後、乾燥(0031段落)することにより耐食性を高めた無機繊維ブロックが記載されている。
【0006】
特開2011−32119の0029段落には、耐FeO性コーティング材を炉内の無機繊維ブロックの表面にスプレーして2mm厚のコーティング層を形成することが記載されている。このコーティング層が炉内で加熱されると、CaO・6Al
2O
3が生成する。
【0007】
特開2011−208344には、無機繊維のニードルブランケットに、無機質ゾルを含浸後、乾燥させてなる無機繊維成形体であって、嵩密度が0.08〜0.20g/cm
3である軽量無機繊維成形体が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の無機繊維質断熱材ブロックは、好ましくは、ニードルブランケット又はマットの積層体を積層方向に圧縮後、固定手段により圧縮状態を維持したブロック状断熱材であり、炉内加熱面側から炉壁面側の深さ方向へ、施工時まで液状物質が含浸されている。含浸深さは、炉内加熱面側から炉壁面側の深さ方向へ、少なくとも3mm以上で60mm以下、好ましくは30mm以上50mm以下とする。
【0023】
本発明の無機繊維質断熱材ブロックは、ニードルブランケット又はマットを圧縮したものであるので、圧縮力の開放後反発力を有し、ライニングを行うことができる。ニードルブランケット又はマットの圧縮後の嵩密度は、使用するニードルブランケット又はマットの嵩密度を超えて0.3g/cm
3以下が望ましい、圧縮しすぎることで、繊維が圧壊するおそれがあり、また嵩密度が高すぎると高温使用時や急冷急昇温時の耐熱衝撃性が低下するおそれがある。
【0024】
圧縮状態に維持する保形手段としては、圧縮無機繊維成形体の加圧面のそれぞれの少なくとも一部を覆う加圧面当接部、及び前記加熱面当接部と繋がり、且つ繊維質断熱材ブロックが炉内にライニング施工された状態で加熱を受ける加熱面の少なくとも一部を覆う加熱面保護部を有し、前記加圧面当接部と前記加熱面保護部との境界部が、前記加圧面と前記加熱面とがなす前記単位ブロックの角部を覆っている保形板と結束バンドとで固定する手段が良い。かかる保形手段で圧縮状態を維持したのち、ブロック工法で施工し、バンド切断後断熱部材同士の反発力で圧縮状態を維持するなどの方法を選択しても良い。
【0025】
前記保形板の前記加熱面保護部には手掛り部が設けられていることが望ましい。
【0026】
前記保形板は、加熱面側や側面側に穴が開いていたり、保形性を損なわない程度で部分的に切り取られていても良い。これにより、保形板の裏側の無機繊維にも酸化物前駆体含有液を含浸することが容易になるため、無機繊維質断熱材ブロックの含浸状態をより均一にすることができる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について
図1〜3を参照して説明する。
【0028】
[第1の実施の形態]
図1は第1の実施の形態に係る無機繊維質断熱材ブロックの斜視図、
図2はその一部を拡大した側面図である。
【0029】
この無機繊維質断熱材ブロック1は、無機繊維成形体2の折り畳み体3と、この折り畳み体3の加圧面(
図1の上面及び下面)に重ね合された保形板4,4と、該保形板4,4及び折り畳み体3を固縛する結束バンド5とを有する。折り畳み体3は、所定幅の帯状のマット状無機繊維成形体2をつづら折り状に交互に折り返して積層した略直方体形状のものであり、積層方向(
図1では上下方向)の一端側の面と他端側の面にそれぞれ保形板4が重ね合されている。
【0030】
この折り畳み体3の保形板4,4が重なっていない側面であって、無機繊維成形体2の折り返し部が存在する一方の側面(
図1の左側面)に臨む領域が、酸化物前駆体含有液が含浸された含浸部6となっている。
【0031】
無機繊維成形体2としては、無機繊維のマットにニードリング加工を施したニードルブランケットが好適であるが、ニードリング加工を施していないマットであってもよい。なお、ニードルブランケットの好適な構成及び含浸部6に含浸される酸化物前駆体含有液の組成については後述する。
【0032】
保形板4は、折り畳み体3を両側から挟圧するための強度及び剛性を有した合成樹脂、紙、合板等の材料よりなる。保形板4の寸法は、折り畳み体3の加圧面と同等であることが好ましい。結束バンド5は、保形板4,4及び両者間の折り畳み体3を取り巻くように巻き掛けられている。結束バンド5としては、ポリプロピレン等の合成樹脂テープが好適である。
【0033】
保形板4,4で挟まれた折り畳み体3を、無加圧状態の厚みの50〜90%特に60〜80%程度となるように前記積層方向に圧縮して押し縮めた後、結束バンド5を巻き掛け、この圧縮状態に保形する。従って、この実施の形態では、保形板4,4と結束バンド5とによって保形手段が構成されている。
【0034】
結束バンド5で固縛して保形した後の無機繊維質断熱材ブロック1の奥行き方向の寸法aは100〜400m特に200〜300mm、これと直交方向の寸法bは100〜400mm特に200〜300mm、積層方向の寸法cは100〜400mm特に200〜300mm程度であることが好ましい。
【0035】
この実施の形態に係る無機繊維質断熱材ブロック1は、無機繊維成形体2を酸化物前駆体含有液を含浸する前に折り畳んで折り畳み体3とし、保形板4,4を重ねて圧縮し、結束バンド5を巻き掛けた後、酸化物前駆体含有液を含浸させて含浸部6を形成したものである。ただし、折り畳み体3を圧縮する前に含浸処理してもよい。また、無機繊維成形体2をつづら折状に折り畳む前に含浸処理し、その後折り畳んでもよい。ただし、規定の含浸厚みdとするためには、折り畳んで圧縮した後、含浸処理するのが好ましい。
【0036】
この含浸部6は、無機繊維質断熱材ブロック1が炉内に施工された状態において炉内を向く、無機繊維質断熱材ブロック加熱面の全面に設けられている。含浸部6は、好ましくは、折り畳み体3を酸化物前駆体含有液に浸し、次いで必要に応じ余剰の水分を吸引除去することにより形成される。ただし、スプレー等によって含浸部6を形成してもよい。このように含浸部6を形成した後、含浸部6は、乾燥処理されることなく、未乾燥状態とされる。
【0037】
折り畳み体3を酸化物前駆体含有液に浸すときの深さを調整することにより、含浸部6の厚みdが好ましくは3〜60mm特に好ましくは30〜50mmとなるようにする。dが3mmよりも小さいと、耐食性改善効果が低くなり、焼成後含浸部6が剥離しやすいといった問題点がある。60mmを超えると、折り畳み体3の復元性が低くなるおそれがある。
【0038】
この無機繊維質断熱材ブロック1の結束バンド5を切断すると、折り畳み体3はその弾力性により積層方向(
図1の上下方向)の厚みを増大させるように復元する。この無機繊維質断熱材ブロック1にあっては、含浸部6に付着した酸化物前駆体が未乾燥状態となっているため、折り畳み体3の復元力が強い。そのため、複数の無機繊維質断熱材ブロック1を炉内壁に沿って配列した後、結束バンド5を切断した場合、隣接する無機繊維質断熱材ブロック1同士が強く密着し、両者間に隙間が生じることが防止される。
【0039】
この無機繊維質断熱材ブロック1を炉にライニング施工する場合、無機繊維質断熱材ブロック1の加熱面すなわち含浸部6を有する面(
図1の左側面)が炉内を向き、それと反対側の背面(
図1の右側面)が炉壁、炉天井部等の炉体に対面するように配置される。
【0040】
各無機繊維質断熱材ブロック1をいわゆる市松工法によってライニングする場合、特許文献1のように、隣り合う無機繊維質断熱材ブロック1の積層方向(すなわち復元方向)が一致しないように、その加熱面から見て90°回転させた姿勢にて炉内面に沿って配列した後、結束バンド5を切断し、結束バンド5及び保形板4を撤去する。なお、市松工法以外のソルジャー工法などによってライニング施工されてもよい。
【0041】
含浸部6における水分含有量は、無機繊維100質量部に対し50〜700質量部であることが好ましい。含水量が過度に少ない場合は、バインダー効果により機繊維成型体同士の固着が起こり、反発力が小さくなる。逆に過度に多い場合は、無機繊維から液が漏れ出たり、含浸深さが過大となって、反発力が低下するおそれがある。
【0042】
含浸部6における無機繊維100質量部に対する酸化物前駆体の添着量は、好ましくは焼成後の酸化物添着量換算で2〜50質量部、更に好ましくは、5〜30質量部、最も好ましくは10〜25質量部である。添着量が少ない場合は、所望の耐スケール性が得られない場合がある。逆に多すぎると、熱収縮率の悪化や耐熱衝撃性、耐機械衝撃性の低下が見られる場合がある。
【0043】
反発力部7は、無機繊維成形体2の含浸部6以外の部分である。反発力部7の焼成後の酸化物添着量は、含浸部6の無機繊維100質量部に対して1質量部以下(0(ゼロ)を含む。)、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下である。反発力部7の焼成後の酸化物添着量が上記範囲にあることで、無機繊維ニードルブランケットの反発力を保つことができ、好ましい。
【0044】
本発明では、酸化物前駆体含有液の酸化物前駆体としては、焼成により酸化カルシウムを生成させる物質、具体的には、カルシウムの水酸化物、塩化物、酢酸化物、乳酸化物、又は硝酸化物を含むことが好ましい。また、酸化物前駆体としては、焼成により酸化アルミニウムを生成させる物質、具体的には、アルミニウムの水酸化物、塩化物、酢酸化物、乳酸化物、硝酸化物特にアルミナゾルを含むことが好ましい。
【0045】
酸化物前駆体としては、上記各物質を、焼成によりCaO:Al
2O
3の重量比が1:99〜10:90特に5:95〜9:91となるように含むものが好ましい。この配合比とした場合、炉内で加熱されたときに、耐スケール性の高いCaO・2Al
2O
3、CaO・6Al
2O
3等のアルミナ・カルシア系耐火性酸化物が生成する。
【0046】
酸化物前駆体含有液中の酸化物成分濃度は2〜30質量%特に5〜20質量%が好ましい。この濃度が低すぎると無機繊維成形体に対する酸化物前駆体成分の付着量(添着量)が低くなる恐れがある。また、濃度が高すぎると、酸化物前駆体含有液の粘性が高くなり、含浸しにくくなる恐れがある。
【0047】
酸化物前駆体含有液は、ゾル、スラリー、溶液のいずれでもよい。分散媒体や溶媒としては、水、アルコール等の有機溶媒またはこれらの混合物、好ましくは水が使用される。またポリビニルアルコール等のポリマー成分が含有されていても良い。またゾル、スラリー、又は溶液中の化合物の安定性を高めるために、分散安定剤を加えてもよい。分散安定剤としては、例えば、酢酸、乳酸、塩酸、硝酸、硫酸等が挙げられる。
【0048】
酸化物前駆体含有液は着色剤が配合されても良い。着色をすることにより、含浸部の厚みdを目視で観察することができる。着色の色は黒色や青色が好ましい。着色剤としては水溶性インクなどを用いることができる。
【0049】
酸化物前駆体含有液を含浸させた後、必要に応じ吸引又は圧縮などにより余剰な液を脱離させてもよい。吸引により余剰な液を脱離させるには、含浸部6に被さるアタッチメントを装着し、該アタッチメントに設けた吸引口を吸引するのが好ましい。
【0050】
未乾燥状態の含浸部6を有する無機繊維質断熱材ブロック1は、乾燥を防ぐため、真空梱包やシュリンク梱包などで梱包して保管、輸送されることが好ましい。
【0051】
次に、本発明において好適に用いられる無機繊維ニードルブランケットについて説明する。このニードルブランケットは、前記特許文献4に記載されたものであり、実質的に繊維径3μm以下の繊維を含まず、かつニードリング処理が施されたものが好ましい。なお、このニードルブランケットを用いることにより、無機繊維質断熱材ブロックの耐風食性を高めることができる。
【0052】
{無機繊維}
無機繊維としては、特に制限がなく、シリカ、アルミナ/シリカ、これらを含むジルコニア、スピネル、チタニア等の単独、又は複合繊維が挙げられるが、特に好ましいのは耐熱性、繊維強度(靭性)、安全性の点で、アルミナ/シリカ系繊維、特に多結晶質アルミナ/シリカ系繊維である。
【0053】
アルミナ/シリカ系繊維のアルミナ/シリカの組成比(質量比)は65〜98/35〜2のムライト組成、又はハイアルミナ組成と呼ばれる範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは70〜95/30〜5、特に好ましくは70〜74/30〜26の範囲である。
【0054】
本発明においては、無機繊維の80質量%以上、好ましくは90質量%以上、特に好ましくはその全量が上記ムライト組成の多結晶アルミナ/シリカ系繊維であることが好ましい。
【0055】
この無機繊維は、好ましくは繊維径3μm以下の繊維を実質的に含まない。ここで繊維径3μm以下の繊維を実質的に含まないとは、繊維径3μm以下の繊維が全繊維重量の0.1質量%以下であることをさす。
【0056】
無機繊維の平均繊維径は5〜7μmであることが好ましい。無機繊維の平均繊維径が太すぎると繊維集合体の反発力、靭性が失われ、細すぎると空気中に浮遊する発塵量が多くなり、繊維径3μm以下の繊維が含有される確率が高くなる。
【0057】
上述の好適な平均繊維径を有し、かつ、繊維径3μm以下の繊維を実質的に含まない無機繊維集合体は、ゾルーゲル法による無機繊維集合体の製造において、紡糸液粘度の制御、紡糸ノズルに用いる空気流の制御、延伸糸の乾燥の制御により得ることができる。
【0058】
{ニードル痕密度}
ニードルブランケットのニードル痕密度については、2〜200打/cm
2、特に2〜150打/cm
2、とりわけ2〜100打/cm
2、中でも2〜50打/cm
2であることが好ましい。このニードル痕密度が低過ぎると、無機繊維成形体としての厚みの均一性が低下し、かつ耐熱衝撃性が低下する等の問題があり、高過ぎると、繊維を傷め、焼成後に飛散し易くなる恐れがある。
【0059】
{嵩密度、面密度、厚さ}
ニードルブランケットの嵩密度は、0.05〜0.20g/cm
3であることが好ましく、0.08〜0.15g/cm
3であることがより好ましい。嵩密度が低すぎると脆弱な無機繊維成形体しか得られず、また、嵩密度が高すぎると無機繊維成形体の嵩密度が増大するとともに反発力が失われ、靭性の低い成形体となる。
【0060】
ニードルブランケットの面密度は、1000〜4000g/m
2、特に1500〜3800g/m
2、とりわけ2000〜3600g/m
2であることが好ましい。この無機繊維集合体の面密度が小さ過ぎると、繊維量が少なく、極薄い成形体しか得られず、断熱用無機繊維成形体としての有用性が低くなり、面密度が大き過ぎると繊維量が多すぎることにより、ニードリング処理による厚み制御が困難となる。
【0061】
ニードルブランケットの厚さは、好ましくは2〜35mm程度である。
【0062】
このニードルブランケットは、前記特許文献4に記載の通り、ゾル−ゲル法により無機繊維前駆体の集合体を得る工程と、得られた無機繊維前駆体の集合体に、ニードリング処理を施す工程と、ニードリング処理された無機繊維前駆体の集合体を焼成して無機繊維の集合体とする焼成工程とを経て製造される。
【0063】
[第2の実施の形態]
上記第1の実施の形態では、無機繊維成形体2をつづら折り状に交互に折り畳んだ折り畳み体3を用いているが、無機繊維成形体2を上記寸法a×bの大きさに切断して単板とし、この単板を積層してもよい。
図3はかかる無機繊維質断熱材ブロック1’の斜視図である。
【0064】
なお、
図3の無機繊維質断熱材ブロック1’では、無機繊維成形体2の単板同士のすべての重なり面が加熱面に露呈する。これに対し、
図1の無機繊維質断熱材ブロック1では、折り重ねた重なり面のうち半数のもののみが加熱面に露呈する。スケールによる腐食は目地から起こることが多く、目地の数を減らすことで断熱部材の寿命を延ばすことができる。従って、目地の少ない
図1の無機繊維質断熱材ブロック1の方が好ましい。
【0065】
[その他の実施の形態]
上記実施の形態では、保形板4として平板状のものを用いたが、特許文献1のように、平板(加圧面当接部)の側縁から折り畳み体3の側縁に回り込む起立片(加熱面当接部)を有するL字形板状体を用い、折り畳み体3の角縁を保護するようにしてもよい。また、特許文献1のように、無機繊維質断熱材ブロックの加熱面に重なる起立片に、作業者が手を掛けるための手掛り部を設けてもよい。折り畳み体3の背面側(
図1の右側面)に、無機繊維質断熱材ブロック1を炉壁に係止させるための係止部材を設けてもよい。
【実施例】
【0066】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0067】
[実施例1]
平均繊維径5.5μmであり、実質的に繊維径3μm以下の繊維を含まない、アルミナ72質量%とシリカ28質量%とを含む多結晶質アルミナ/シリカ系繊維を集積してニードリングしてなるニードルブランケット(商品名:三菱樹脂 MAFTEC MLS、厚さ25mm、嵩密度96kg/m
3)を幅300mm×長さ4800mmに加工し、長さ300mmで交互に折り畳み、16層に積層して折り畳み体3とした。この折り畳み体3の積層方向両端側の面に300mm×300mm×320mmのポリプロピレン製保形板4を重ね、積層方向に圧縮し、圧縮後結束バンド5で固定し、300mm×300mm×300mmの無機繊維成形体を得た。
【0068】
酸化物前駆体含有液として、アルミナゾル溶液に、酢酸カルシウム一水和物を焼成後の酸化物質量比が91.6:8.4になるように添加し酸化物換算の固形分濃度を7.0%に調整した液を作製した。この液4Lを加熱面側からd=50mmまで含浸させた後、加熱面にアタッチメントを装着し、吸引力3.0m
3/minとして加熱面から液を吸引し、無機繊維質断熱材ブロック1を製作した。
【0069】
この無機繊維質断熱材ブロック1において、耐スケール性、反発力、含浸部6における含水率及び添着量を後述の方法により測定した。結果を表1に示す。なお、反発力部7における酸化物前駆体含有液の含浸量は0(ゼロ)であった。
【0070】
[実施例2]
実施例1において、液の吸引力を10m
3/minとしたこと以外は同様にして無機繊維質断熱材ブロックを作成した。耐スケール性等の測定結果を表1に示す。
【0071】
[実施例3]
実施例1において、液の吸引力を0.5m
3/minとしたこと以外は同様にして無機繊維質断熱材ブロックを作成した。耐スケール性等の測定結果を表1に示す。
【0072】
[比較例1]
酸化物前駆体の液状物質を含浸させなかったこと以外は、実施例1と同様にして無機繊維質断熱材ブロックを作製した。耐スケール性等の測定結果を表1に示す。
【0073】
[比較例2]
実施例1において、無機繊維断熱ブロックを150℃で24時間乾燥させたこと以外は同様にして無機繊維質断熱材ブロックを作製した。耐スケール性等の測定結果を表1に示す。
【0074】
[比較例3]
実施例1において、無機繊維断熱ブロックを120℃で12時間乾燥させたこと以外は同様にして無機繊維質断熱材ブロックを作成した。耐スケール性等の測定結果を表1に示す。
【0075】
[参考例1]
実施例1において、含浸液を6.0L含浸させたこと以外は実施例1と同様にして無機繊維質断熱材ブロックを製作したが、液が加熱面側からもれ出てきた。なお、このときの添着量は51質量%、含浸部厚みdは70mmであった。
【0076】
[実施例4]
実施例1において、酸化物前駆体液状物質をアルミナゾル溶液と酢酸マグネシウム四水和物を焼成後の酸化物質量比が72:28になるように調整したこと以外、実施例1と同様にして無機繊維質断熱材ブロックを作製した。耐スケール性等の測定結果を表1に示す。
【0077】
≪特性の測定方法≫
[耐スケール性]
鉄鋼業の熱延加熱炉に設置し、1350℃の操業温度で6ヶ月間使用し、スケールによる侵食の状態を確認した。
【0078】
[積層方向の反発性]
無機繊維質ブロックの結束バンド5を切断し、復元力により積層方向に伸長させ、伸長後の積層方向寸法を計測した。反発性に優れているといえるのは、無機繊維断熱ブロックの結束バンド切断後の長さが、切断前の長さより+20%以上になる場合(すなわち360mm以上になる場合)である。
【0079】
[含水量]
無機繊維質断熱材ブロックを、加熱面と平行な切断面によって10mm毎に切断し、150℃で2時間乾燥した。乾燥前後の質量を測定し、含浸部の含水量を求めた。この含水量は、無機繊維100質量部に対する水分の質量である。
【0080】
[添着量]
無機繊維質断熱材ブロックから、酸化物前駆体含有液が含浸されていない部分を切断し無機繊維質断熱材ブロックを構成している無機繊維ニードルブランケット一枚辺りの面比重を5点求め、その平均値を添着前の面比重r
1とした。酸化物前駆体含有液含浸後の無機繊維質断熱材ブロックを1250℃で2時間で焼成した後、含浸部6の部分を切り出し同様の方法で面比重r
2を測定した。r
1、r
2を用いて計算式(r
2−r
1)/r
1により添着量を求めた。この添着量は、含浸部6における酸化物の添着量(質量%)を表わす。
【0081】
酸化物前駆体含有液が含浸されていない部分の面比重(反発力部7)については、実施例で使用したニードルブランケット(商品名:三菱樹脂 MAFTEC MLS、厚さ25mm、嵩密度96kg/m
3)と同等である。面比重は下記式により算出される。
面比重=原反重量/面積=原反重量/密度×厚み
【0082】
【表1】
【0083】
表1の通り、Al
2O
3−CaO系の含浸剤を適量含浸させ、かつ含浸後に未乾燥状態とした実施例1〜3の無機繊維質断熱材ブロックは、反発性に優れ、また耐スケール性に優れる。実施例4は、含浸剤がAl
2O
3−MgO系であるため、反発性には優れるが、耐スケール性に若干劣る。Al
2O
3−CaO系の含浸剤の含浸後に乾燥を施した比較例2,3は、耐スケール性には優れるが反発性が低い。比較例1は、何も含浸させなかったものであり、反発力は高いが、耐スケール性に劣る。