(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
融点を有する結晶性環状オレフィン樹脂からなる層および銅からなる層が、前記結晶性環状オレフィン樹脂の融点よりも低いガラス転移温度を有し、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、およびオキシシリル基からなる群から選択される官能基を全繰り返し単位に対して、0.1〜20モル%の割合で含有する脂環構造含有樹脂からなる層を介して接着されてなる積層体。
融点を有する結晶性環状オレフィン樹脂からなる層および銅からなる層を、前記結晶性環状オレフィン樹脂の融点よりも低いガラス転移温度を有し、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、およびオキシシリル基からなる群から選択される官能基を全繰り返し単位に対して、0.1〜20モル%の割合で含有する脂環構造含有樹脂からなる層を介して積層した後、これらを前記脂環構造含有樹脂のガラス転移温度以上で前記結晶性環状オレフィン樹脂の融点以下の温度で加熱することにより、前記結晶性環状オレフィン樹脂からなる層および前記銅からなる層を前記脂環構造含有樹脂からなる層を介して接着させる、積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の積層体は、融点を有する結晶性環状オレフィン樹脂からなる層および銅からなる層が、結晶性環状オレフィン樹脂の融点よりも低いガラス転移温度を有し、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、およびオキシシリル基からなる群から選択される官能基を全繰り返し単位に対して、0.1〜20モル%の割合で含有する脂環構造含有樹脂からなる層を介して接着されてなるものである。
【0013】
本発明の積層体において、融点を有する結晶性環状オレフィン樹脂からなる層を構成するために用いられる融点を有する結晶性環状オレフィン樹脂は、主鎖および/または側鎖に脂環式構造を含有する重合体からなり、示差走査熱量計(DSC)で結晶融点を観測することができる樹脂である。環状オレフィン樹脂は、一般的に低吸水性および電気特性に優れた樹脂であるが、本発明の積層体では、結晶性環状オレフィン樹脂を用いることにより、低吸水性および電気特性のみならず、耐熱性にも優れ、さらには、銅との接着が強固なものとなり、かつ、熱履歴を経た後であっても、その強固な接着が維持される。
【0014】
結晶性環状オレフィン樹脂の例としては、国際公開第2012/033076号に記載されるようなシンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素化物、特開2002−249553号に記載されるようなアイソタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素化物、特開2007−16102号に記載されるようなノルボルネン開環重合体水素化物などを挙げることができる。本発明の積層体では、公知の結晶性環状オレフィン樹脂を特に制限なく使用することができるが、積層体の作製し易さの観点からは、融点を有する結晶性環状オレフィン樹脂として、シンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素化物が特に好適に使用される。
【0015】
シンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素化物は、ジシクロペンタジエンを主たる単量体として開環重合を行い、得られる開環重合体中に存在する炭素−炭素二重結合の少なくとも一部を水素化(水素添加)することにより得ることができる。但し、最終的に得られるジシクロペンタジエン開環重合体水素化物にシンジオタクチック立体規則性を付与するために、開環重合を行うにあたり、得られる開環重合体にシンジオタクチック立体規則性を付与できる開環重合触媒を選定する必要がある。
【0016】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物は、シンジオタクチック立体規則性を有するものであれば、その立体規則性の程度は特に限定されないが、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物の結晶性を高めて耐熱性を特に良好なものとする観点からは、より立体規則性の程度が高いものが好ましい。より具体的には、ジシクロペンタジエンを開環重合して、次いで水素化して得られる繰り返し単位についてのラセモ・ダイアッドの割合が、51%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが特に好ましい。ラセモ・ダイアッドの割合が高いものほど、すなわち、シンジオタクチック立体規則性の高いものほど、高い融点を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素化物となる。なお、ラセモ・ダイアッドの割合は、
13C−NMRスペクトル分析で測定し、定量することができる。具体的な定量の方法としては、オルトジクロロベンゼン−d4を溶媒として、150℃でinverse−gated decoupling法を適用して
13C−NMR測定を行い、オルトジクロロベンゼン−d4の127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比からラセモ・ダイアッドの割合を決定する方法を挙げることができる。
【0017】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を得るために単量体として用いられるジシクロペンタジエンには、エンド体およびエキソ体の立体異性体が存在するが、そのどちらも単量体として用いることが可能であり、一方の異性体を単独で用いてもよいし、エンド体およびエキソ体が任意の割合で存在する異性体混合物を用いることもできる。但し、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物の結晶性を高めて耐熱性を特に良好なものとする観点からは、一方の立体異性体の割合を高くすることが好ましく、例えば、エンド体またはエキソ体の割合が、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。なお、割合を高くする立体異性体は、合成容易性の観点から、エンド体であることが好ましい。
【0018】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を得るために用いる単量体は、ジシクロペンタジエンが主たる単量体となる限りにおいて、ジシクロペンタジエンと共重合可能な化合物を含んでいてもよい。このような化合物の例としては、ジシクロペンタジエン以外のノルボルネン類や、環状のオレフィンもしくはジエン類を挙げることができる。但し、単量体におけるジシクロペンタジエン以外の化合物の含有量は、10重量%以下とすることが好ましく、5重量%以下とすることがより好ましい。
【0019】
開環重合触媒は、ジシクロペンタジエンを開環重合させることができるものであって、目的とするジシクロペンタジエン開環重合体水素化物にシンジオタクチック立体規則性を付与できるものであれば、特に限定されない。好ましく用いられる開環重合触媒としては、下記の式(1)で表される金属化合物を含んでなる開環重合触媒を挙げることができる。
【0020】
M(NR
1)X
4−a(OR
2)
a・L
b (1)
【0021】
(式(1)中、Mは周期律表第6族の遷移金属原子から選択される金属原子であり、R
1は3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、または−CH
2R
3で表される基であり、R
2は置換基を有していてもよいアルキル基および置換基を有していてもよいアリール基から選択される基であり、Xはハロゲン原子、アルキル基、アリール基およびアルキルシリル基から選択される基であり、Lは電子供与性の中性配位子であり、aは0または1であり、bは0〜2の整数である。R
3は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基および置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。)
【0022】
式(1)で表される金属化合物を構成する金属原子(式(1)中のM)は、周期律表第6族の遷移金属原子(クロム、モリブデン、タングステン)から選択される。なかでも、モリブデンまたはタングステンが好適に用いられ、タングステンが特に好適に用いられる。
【0023】
式(1)で表される金属化合物は、金属イミド結合を含んでなるものである。金属イミド結合を構成する窒素原子上の置換基(式(1)中のR
1)は、3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、または−CH
2R
3(但し、R
3は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基および置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。)で表される基である。3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基が有しうる置換基としては、メチル基、エチル基などのアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などのアルコキシ基;などが挙げられ、さらに、3,4,5位の少なくとも2つの位置に存在する置換基が互いに結合したものであってもよい。3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基の具体例としては、無置換フェニル基や、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基などの一置換フェニル基;3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基などの二置換フェニル基;3,4,5−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリクロロフェニル基などの三置換フェニル基;2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基などの置換基を有していてもよい2−ナフチル基;を挙げることができる。
【0024】
式(1)で表される金属化合物において、窒素原子上の置換基(式(1)中のR
1)として用いられうる、−CH
2R
3で表される基において、R
3は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基および置換基を有していてもよいアリール基から選択される基を表す。このR
3で表される基となりうる、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常1〜20、好ましくは1〜10である。また、このアルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。このアルキル基が有しうる置換基は、特に限定されないが、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基などの置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシル基;を挙げることができる。
【0025】
式(1)で表される金属化合物において、窒素原子上の置換基(式(1)中のR
1)として用いられうる、置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、およびこれらの基の水素原子が他の置換基に置き換わってなるアリール基などが挙げられる。また、このアリール基の置換基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基などの置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシル基;を挙げることができる。
【0026】
R
3で表される基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などの炭素数が1〜20のアルキル基が特に好適に用いられる。
【0027】
式(1)で表される金属化合物は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基およびアルキルシリル基から選択される基を3個または4個有してなる。すなわち、式(1)において、Xは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基およびアルキルシリル基から選択される基を表す。なお、式(1)で表される金属化合物においてXで表される基が2以上あるとき、それらの基は互いに結合していてもよい。
【0028】
Xで表される基となりうるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。また、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ベンジル基、ネオフィル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。
【0029】
式(1)で表される金属化合物は、1個の金属アルコキシド結合または1個の金属アリールオキシド結合を有するものであってもよい。この金属アルコキシド結合または金属アリールオキシド結合を構成する酸素原子上の置換基(式(1)中のR
2)は、置換基を有していてもよいアルキル基および置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。このR
2で表される基となりうる、置換基を有していてもよいアルキル基や置換基を有していてもよいアリール基としては、前述のR
3で表される基におけるものと同様のものを用いることができる。
【0030】
式(1)で表される金属化合物は、1個または2個の電子供与性の中性配位子を有するものであってもよい。この電子供与性の中性配位子(式(1)中のL)としては、例えば、周期律表第14族または第15族の原子を含有する電子供与性化合物が挙げられる。その具体例としては、トリメチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジンなどのアミン類;を挙げることができる。これらのなかでも、エーテル類が特に好適に用いられる。
【0031】
開環重合触媒として、特に好適に用いられる式(1)で表される金属化合物としては、フェニルイミド基を有するタングステン化合物(式(1)中のMがタングステン原子で、かつ、R
1がフェニル基である化合物)を挙げることができ、そのなかでも、タングステンフェニルイミドテトラクロリド(テトラヒドロフラン)錯体が特に好適である。
【0032】
式(1)で表される金属化合物は、第6族遷移金属のオキシハロゲン化物と、3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニルイソシアナート類、または一置換メチルイソシアナート類と、電子供与性の中性配位子(L)、および必要に応じてアルコール類、金属アルコキシド、金属アリールオキシドを混合することなど(例えば、特開平5−345817号公報に記載された方法)により合成することができる。合成された式(1)で表される金属化合物は、結晶化などにより精製・単離したものを用いてもよいし、精製することなく、触媒合成溶液をそのまま開環重合触媒として使用することもできる。
【0033】
開環重合触媒として用いる式(1)で表される金属化合物の使用量は、(金属化合物:用いる単量体全体)のモル比が、通常1:100〜1:2,000,000、好ましくは1:500〜1,000,000、より好ましくは1:1,000〜1:500,000でとなる量で用いる。触媒量が多すぎると触媒除去が困難となるおそれがあり、少なすぎると十分な重合活性が得られない場合がある。
【0034】
式(1)で表される金属化合物を開環重合触媒として用いるにあたっては、式(1)で表される金属化合物を単独で使用することもできるが、重合活性を高くする観点からは式(1)で表される金属化合物と有機金属還元剤とを併用することが好ましい。用いられうる有機金属還元剤としては、炭素数1〜20の炭化水素基を有する周期律表第1、2、12、13、14族の有機金属化合物を挙げることができる。そのなかでも、有機リチウム、有機マグネシウム、有機亜鉛、有機アルミニウム、または有機スズが好ましく用いられ、有機アルミニウムまたは有機スズが特に好ましく用いられる。有機リチウムとしては、n−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウムなどを挙げることができる。有機マグネシウムとしては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミドなどを挙げることができる。有機亜鉛としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛などを挙げることができる。有機アルミニウムとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムイソブトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジイソブトキシドなどを挙げることができる。有機スズとしては、テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズなどを挙げることができる。有機金属還元剤の使用量は、式(1)で表される金属化合物に対して、0.1〜100モル倍が好ましく、0.2〜50モル倍がより好ましく、0.5〜20モル倍が特に好ましい。使用量が少なすぎると重合活性が向上しない場合があり、多すぎると副反応が起こりやすくなるおそれがある。
【0035】
開環重合体を得るための重合反応は、通常、有機溶媒中で行う。用いる有機溶媒は、生じる開環重合体やその水素添加物が所定の条件で溶解もしくは分散させることが可能であり、重合反応や水素化反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素系溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル類;またはこれらの混合溶媒を挙げることができる。これらの溶媒のなかでも、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル類が好ましく用いられる。
【0036】
開環重合反応は、単量体と、式(1)で表される金属化合物と、必要に応じて有機金属還元剤とを混合することにより開始することができる。これらの成分を添加する順序は、特に限定されない。例えば、単量体に式(1)で表される金属化合物と有機金属還元剤との混合物を添加して混合してもよいし、有機金属還元剤に単量体と式(1)で表される金属化合物との混合物を添加して混合してもよく、また、単量体と有機金属還元剤との混合物に式(1)で表される金属化合物を添加して混合してもよい。また、各成分を混合するにあたっては、それぞれの成分の全量を一度に添加してもよいし、複数回に分けて添加してもよく、比較的に長い時間(例えば1分間以上)にわたって連続的に添加することもできる。
【0037】
有機溶媒中の重合反応時における単量体の濃度は、特に限定されないが、1〜50重量%であることが好ましく、2〜45重量%であることがより好ましく、3〜40重量%が特に好ましい。単量体の濃度が低すぎると重合体の生産性が悪くなるおそれがあり、高すぎる場合は重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の水素化反応が困難となる場合がある。
【0038】
重合反応系には、活性調整剤を添加してもよい。活性調整剤は、開環重合触媒の安定化、重合反応の速度および重合体の分子量分布を調整する目的で使用することができる。活性調整剤は、官能基を有する有機化合物であれば特に制限されないが、含酸素、含窒素、含りん有機化合物が好ましい。具体的には、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、フラン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エチルアセテートなどのエステル類;アセトニトリルベンゾニトリルなどのニトリル類;トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、キヌクリジン、N,N−ジエチルアニリンなどのアミン類;ピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2−t−ブチルピリジンなどのピリジン類;トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフェ−ト、トリメチルホスフェ−トなどのホスフィン類;トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフェ−ト、トリメチルホスフェ−トなどのホスフィン類;トリフェニルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド類;などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの活性調整剤は、1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。添加する活性調整剤の量は、特に限定されないが、通常、開環重合触媒として用いる金属化合物に対して0.01〜100モル%の間で選択すればよい。
【0039】
また、重合反応系には、開環重合体の分子量を調整するために分子量調整剤を添加してもよい。分子量調整剤としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレートなどの酸素含有ビニル化合物;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;アクリルアミドなどの窒素含有ビニル化合物;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエン;を挙げることができる。添加する分子量調整剤の量は目的とする分子量に応じて決定すればよいが、通常、用いる単量体に対して、0.1〜50モル%の範囲で選択すればよい。
【0040】
重合温度は特に制限はないが、通常、−78℃〜+200℃の範囲であり、好ましくは−30℃〜+180℃の範囲である。重合時間は、特に制限はなく、反応規模にも依存するが、通常1分間〜1000時間の範囲である。
【0041】
上述したような式(1)で表される金属化合物を含む開環重合触媒を用いて、上述したような条件でジシクロペンタジエンの開環重合反応を行うことにより、シンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体を得ることができる。水素化反応の条件を適切に設定すれば、水素化反応で開環重合体のタクチシチーが変化することはないので、このシンジオタクチック立体規則性を有する開環重合体を水素化反応に供することにより、目的のシンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を得ることができる。なお、開環重合体のシンジオタクチック立体規則性の度合いは、開環重合触媒の種類を選択することなどにより、調節することが可能である。
【0042】
水素化反応に供する開環重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、ポリスチレン換算で1,000〜1,000,000であることが好ましく、2,000〜500,000であることがより好ましい。このような重量平均分子量を有する開環重合体を水素化反応に供することによって、特に成形加工性と耐熱性とのバランスに優れたジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を得ることができる。開環重合体の重量平均分子量は、重合時に用いる分子量調整剤の添加量などを調節することにより、調節することができる。
【0043】
水素化反応に供する開環重合体の分子量分布〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量と重量平均分子量との比(Mw/Mn)〕は、特に限定されないが、通常1.0〜4.0であり、好ましくは1.5〜3.5である。このような分子量分布を有する開環重合体を水素化反応に供することによって、特に成形加工性に優れたジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を得ることができる。開環重合体の分子量分布は、重合反応時における単量体の添加方法や単量体の濃度により、調節することができる。
【0044】
開環重合体の水素化反応は、水素化触媒の存在下で、反応系内に水素を供給することにより行うことができる。水素化触媒としては、オレフィン化合物の水素化に際して一般に使用されているものであれば使用可能であり、特に制限されないが、例えば、次のようなものが挙げられる。
【0045】
均一系触媒としては、遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒系、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムなどの組み合わせが挙げられる。さらに、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムなどの貴金属錯体触媒を挙げることができる。
【0046】
不均一触媒としては、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、またはこれらの金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に担持させた固体触媒、例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどの触媒系が挙げられる。
【0047】
水素化反応は、通常、不活性有機溶媒中で行う。このような不活性有機溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの脂環族炭化水素;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;などが挙げられる。不活性有機溶媒は、通常は、重合反応に用いる溶媒と同じでよく、重合反応液にそのまま水素化触媒を添加して反応させればよい。
【0048】
水素化反応は、使用する水素化触媒系によっても適する条件範囲が異なるが、反応温度は通常−20℃〜+250℃、好ましくは−10℃〜+220℃、より好ましくは0℃〜200℃である。水素化温度が低すぎると反応速度が遅くなりすぎる場合があり、高すぎると副反応が起こる場合がある。水素圧力は、通常0.01〜20MPa、好ましくは0.05〜15MPa、より好ましくは0.1〜10MPaである。水素圧力が低すぎると水素化速度が遅くなりすぎる場合があり、高すぎると高耐圧反応装置が必要となる点において装置上の制約が生じる。反応時間は所望の水素化率とできれば特に限定されないが、通常0.1〜10時間である。水素化反応後は、常法に従って目的のジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を回収すればよく、回収にあたっては、ろ過などの手法により、触媒残渣を除去することができる。
【0049】
開環重合体の水素化反応における水素化率(水素化された主鎖二重結合の割合)は、特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高くなるほど、最終的に得られるジシクロペンタジエン開環重合体水素化物の耐熱性が良好なものとなる。
【0050】
本発明の積層体において、結晶性環状オレフィン樹脂からなる層を構成するために用いられる結晶性環状オレフィン樹脂の融点は、後述する脂環構造含有樹脂のガラス転移温度よりも高いものである限りにおいて特に限定されないが、好ましくは180〜350℃、より好ましくは200〜320℃、特に好ましくは220〜300℃である。結晶性環状オレフィン樹脂の融点が、この範囲にあることにより、成形性と耐熱性とのバランスが良好なものとなる。なお、シンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素化物は、通常、このような温度範囲内の融点を備える。
【0051】
結晶性環状オレフィン樹脂には、必要に応じて、酸化防止剤、結晶核剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、帯電防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、滑剤などの各種の添加剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、例えば、(テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンなどのフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などを特に制限なく使用することができる。結晶性環状オレフィン樹脂に酸化防止剤を配合する場合の配合量は、特に限定されないが、結晶性環状オレフィン樹脂100重量部に対して、通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜4重量部、より好ましくは0.1〜3重量部である。
【0052】
また、積層させる結晶性環状オレフィン樹脂の形態は、特に限定されないが、得られる積層体を優れた柔軟性を有するものとするために、フィルムの形態が好適である。結晶性環状オレフィン樹脂がフィルムである場合において、その厚さは特に限定されないが、10〜150μmであることが好ましく、15〜100μmであることがより好ましい。また、結晶性環状オレフィン樹脂には、より接着力を強固なものとする目的で、必要に応じて、プラズマ処理、紫外線(UV)処理、コロナ放電処理などの公知の表面処理を行ってもよい。
【0053】
本発明の積層体において、銅からなる層を構成するために用いられる銅の形態は特に限定されないが、銅の層を用いて電気回路を得ることを目的とする場合には、銅箔の形態が好適である。銅箔の厚みや粗化状態は、使用目的に応じて適宜選定すればよい。また、銅箔には、より接着力を強固なものとする目的で、必要に応じて、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤などで処理を行ってもよい。なお、後述する脂環構造含有樹脂として、カルボキシル基またはカルボン酸無水物基を含むものを用いる場合には、アミノシランカップリング剤を用いて銅箔の表面を処理すると、接着力をより強固なものとすることができる。
【0054】
本発明の積層体において、脂環構造含有樹脂からなる層を構成するために用いられる樹脂は、結晶性環状オレフィン樹脂の融点よりも低いガラス転移温度を有し、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、およびオキシシリル基からなる群から選択される官能基を全繰り返し単位に対して、0.1〜20モル%の割合で含有する脂環構造含有樹脂である。
【0055】
脂環構造含有樹脂は、主鎖および/または側鎖に脂環式構造を含有する重合体からなる樹脂であれば特に限定されず、例えば、ノルボルネン環を有するモノマーの開環重合体およびその水素化物、芳香環含有重合体の芳香環水素化物、ノルボルネン環を有するモノマーとα−オレフィン類との付加重合体、環状オレフィンや環状ジエンの付加重合体およびその水素化物などが挙げられる。これらの脂環構造含有樹脂は市販されており、市販品の具体例は、日本ゼオン社製ZEONEX(登録商標)、ZEONOR(ゼオノア:登録商標)、三井化学社製APEL(登録商標)、APO(登録商標)、ポリプラスチック社製TOPAS (登録商標)などである。但し、本発明の積層体を、特に柔軟性に優れるものとする観点からは、脂環構造含有樹脂のなかでも、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体との共重合体(以下の記載において、「共重合体A」と称する場合がある)について、その芳香環および共役ジエン単量体単位中の不飽和結合を水素化することにより得ることができる、共重合体水素化物(以下の記載において、単に「共重合体水素化物」と称する場合がある)が特に好適に用いられる。
【0056】
共重合体Aを得るために用いる芳香族ビニル単量体としては、芳香族ビニル化合物であれば特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、4−ブロモスチレン、2−メチル−4,6−ジクロロスチレン、2,4−ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらのなかでも、スチレンを用いることが好ましい。また、これらの芳香族ビニル単量体は、共重合体Aを得るにあたり、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
共重合体Aを得るために用いる共役ジエン単量体としては、共役ジエン化合物であれば特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらのなかでも、1,3−ブタジエンおよび/またはイソプレンを用いることが好ましく、さらに、後述するように共重合体水素化物に官能基を有する化合物を反応させる場合には、その反応が容易となることから、イソプレンを用いることが特に好ましい。
【0058】
共重合体Aにおける芳香族ビニル単量体単位と共役ジエン単量体単位との含有比率は、特に限定されないが、芳香族ビニル単量体単位:共役ジエン単量体単位の重量比で、20:80〜65:35であることが好ましく、30:70〜60:40であることがより好ましい。
【0059】
共重合体Aを得るにあたり、芳香族ビニル単量体および共役ジエン単量体以外の他の単量体を、本発明を逸脱しない範囲でさらに共重合させてもよい。他の単量体としては、α,β−不飽和ニトリル単量体、不飽和エポキシ単量体、不飽和カルボン酸または酸無水物単量体、不飽和アルコキシシラン単量体、不飽和カルボン酸エステル単量体、非共役ジエン単量体が例示されるが、これらに限定されるものではない。共重合体Aにおける、芳香族ビニル単量体単位および共役ジエン単量体単位以外の他の単量体単位の含有量は、特に限定されないが、全単量体単位に対する占める割合として、10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることが特に好ましい。
【0060】
共重合体Aの共重合様式は、特に限定されず、ランダム共重合、テーパー共重合、ブロック共重合、グラフト共重合などのいずれであってもよいが、得られる共重合体水素化物の柔軟性と強度とのバランスを良好なものとする観点からは、少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロック(芳香族ビニル単量体単位を主たる構成単位とする重合体ブロック)と少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロック(共役ジエン単量体単位を主たる構成単位とする重合体ブロック)とを有してなる、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体であることが好ましく、少なくとも2つの芳香族ビニル重合体ブロックと少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとを含有してなり、芳香族ビニル重合体ブロックが重合体鎖の両端部を占める芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体であることがより好ましく、共役ジエン重合体ブロックの両端に芳香族ビニル重合体ブロックが結合してなる芳香族ビニル−共役ジエントリブロック共重合体であることが特に好ましい。
【0061】
共重合体Aが、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとを有してなるブロック共重合体である場合において、芳香族ビニル重合体ブロックにおける芳香族ビニル単量体単位以外の他の単量体単位の含有量および共役ジエン重合体ブロックにおける共役ジエン単量体単位以外の他の単量体単位の含有量は、特に限定されないが、それぞれ、10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることが特に好ましい。
【0062】
共重合体Aを得るための重合方法は、特に限定されず、例えば、ラジカル重合、アニオン重合法、カチオン重合法、配位アニオン重合法、配位カチオン重合法などのいずれを用いてもよい。共重合体Aをブロック共重合体とする場合には、アニオン重合法が好適であり、なかでもリビングアニオン重合法が好適である。
【0063】
リビングアニオン重合法を用いる場合は、開始剤として、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウムなどのモノ有機リチウム、ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサンなどの多官能性有機リチウム化合物などが使用でき、なかでもモノ有機リチウムが好適である。また、重合反応温度は特に限定ないが、通常0℃〜100℃、好ましくは10℃〜80℃、特に好ましくは20℃〜70℃の範囲で選択される。
【0064】
共重合体Aを得るための重合反応形態も、特に限定されず、溶液重合、スラリー重合などのいずれを用いてもよいが、溶液重合を用いると、反応熱の除去が容易で好適である。溶液重合を用いる場合の溶媒としては、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリンなどの脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。なかでも脂環式炭化水素類を用いると、後述する水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用でき、共重合体Aの溶解性も良好であるため好ましい。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0065】
共重合体Aを得るための重合方法としてアニオン重合法を用いる場合には、反応の進行速度向上や共重合体Aのミクロ構造を制御するなどの目的で、重合反応系にルイス塩基化合物を添加することができる。このルイス塩基化合物としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテルなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどの第3級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシドなどのアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物;などが挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0066】
共重合体水素化物を得るにあたっての共重合体Aの水素化率は、共重合体Aの芳香環および共役ジエン単量体単位の両方について、それぞれの少なくとも一部の不飽和結合が水素化される限りにおいて特に限定されないが、共重合体A中の全不飽和結合のうちの水素化された不飽和結合の割合として、好ましくは90%以上、より好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上である。なお、共重合体水素化物を得るにあたっての共重合体Aの水素化率は、
1H−NMR測定に基づいて求めることができる。
【0067】
共重合体水素化物を得るにあたり、共重合体Aの不飽和結合の水素化方法や反応形態などは特に限定されず、公知の方法に従って行えばよいが、芳香環を含む不飽和結合の水素化率を高くでき、かつ、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような好ましい水素化方法としては、ニッケル、コバルト、ロジウム、パラジウム、白金などから選ばれる少なくとも1種の金属を含む触媒を用いて行う方法が挙げられる。水素化触媒は、不均一系触媒、均一系触媒のいずれも使用可能であり、水素化反応は有機溶媒中で行うのが好ましい。
【0068】
水素化触媒として、不均一系触媒を用いる場合は、金属または金属化合物のままで、または適当な担体に担持して用いることができる。担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化珪素、フッ化カルシウムなどが挙げられる。触媒の担持量は、触媒と担体との合計量に対して通常0.1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%の範囲である。
【0069】
水素化触媒として、均一系触媒を用いる場合は、例えば、ニッケルまたはコバルト化合物と有機金属化合物(例えば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒;ロジウム、パラジウム、白金などの有機金属錯体触媒などを用いることができる。ニッケルまたはコバルト化合物としては、例えば、各種金属のアセチルアセトナト化合物、カルボン酸塩、シクロペンタジエニル化合物などが用いられる。有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリドなどのハロゲン化アルミニウム;ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの水素化アルキルアルミニウムなどが挙げられる。有機金属錯体触媒としては、例えば、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、酢酸パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどの遷移金属錯体が挙げられる。
【0070】
これらの水素化触媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。水素化触媒の使用量は、重合体A100重量部に対して、通常0.01〜100重量部、好ましくは0.05〜50重量部、より好ましくは0.1〜30重量部である。
【0071】
水素化反応温度は、特に限定されないが、通常10℃〜250℃、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは80℃〜180℃である。また、水素圧も、特に限定されないが、通常0.1MPa〜30MPa、好ましくは1MPa〜20MPa、より好ましくは2MPa〜10MPaである。
【0072】
共重合体Aの水素化反応によって得られる共重合体水素化物は、水素化触媒および/または重合触媒を、共重合体水素化物を含む反応溶液から、例えば濾過、遠心分離などの方法により除去した後、反応溶液から回収される。反応溶液から共重合体水素化物を回収する方法としては、例えば、共重合体水素化物溶液から、スチームストリッピングにより溶媒を除去するスチーム凝固法、減圧加熱下で溶媒を除去する直接脱溶媒法、共重合体水素化物の貧溶媒中に溶液を注いで析出、凝固させる凝固法などの公知の方法を挙げることができる。
【0073】
本発明の積層体において、脂環構造含有樹脂は、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、およびオキシシリル基からなる群から選択される官能基を全繰り返し単位に対して、0.1〜20モル%の割合で含有するものであり、0.2〜15モル%であることが好ましく、0.5〜5モル%であることが特に好ましい。脂環構造含有樹脂に含まれる官能基の量が少なすぎると、結晶性環状オレフィン樹脂と銅と接着力が不足するおそれがあり、官能基の量が多すぎると、脂環構造含有樹脂の吸水性が高くなったり、電気特性が悪化したりするために、得られる積層体の低吸水性や優れた電気特性を損なうおそれがある。なお、共重合体水素化物がオキシシリル基を有するものである場合に、そのオキシシリル基の割合を求めるにあたっては、オキシシリル基中のケイ素原子の数を基準に求めるものとする。
【0074】
脂環構造含有樹脂に官能基を導入する手法は、特に限定されず、例えば、脂環構造含有樹脂を得るための単量体の少なくとも一部として、目的の官能基を有する化合物を用いることによって、脂環構造含有樹脂を、官能基を有するものとしてもよい。ただし、脂環構造含有樹脂を、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とのブロック共重合体の水素化物とする場合などには、官能基を導入するための反応の容易さの観点から、脂環構造含有樹脂に目的の官能基を有する化合物を反応させる方法が好適であり、なかでも、分子中に目的の官能基およびエチレン性不飽和結合を包含する化合物を、過酸化物の存在下で、共重合体水素化物に反応させる方法が特に好適である。
【0075】
脂環構造含有樹脂に官能基を導入するために用いられうる分子中に官能基およびエチレン性不飽和結合を包含する化合物としては、例えば、アリグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエチレン性不飽和基含有エポキシ化合物、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、アクリル酸、メタクリル酸、4−ペンテン酸などのエチレン性不飽和基含有カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物などのエチレン性不飽和ジカルボン酸無水物、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシランなどのエチレン性不飽和シラン化合物を挙げることができる。これらの分子中に官能基およびエチレン性不飽和結合を包含する化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。官能基およびエチレン性不飽和結合を包含する化合物の使用量は、脂環構造含有樹脂100重量部に対して、通常0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0076】
脂環構造含有樹脂に官能基を導入するために用いられうる過酸化物としては、例えば、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ラウロイルパーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、p−メンタンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物から選択される少なくとも1種類のものを用いることができる。これらの過酸化物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。過酸化物の使用量は、特に限定されないが、共重合体水素化物100重量部に対して、通常0.01〜2重量部、好ましくは0.05〜1重量部、より好ましくは0.1〜0.5重量部である。
【0077】
分子中に官能基およびエチレン性不飽和結合を包含する化合物を、過酸化物の存在下で、脂環構造含有樹脂と反応させる方法は、過熱混練機や反応器を用いて行うことができる。例えば、脂環構造含有樹脂と反応させる化合物と過酸化物との混合物を、二軸混練機にて、脂環構造含有樹脂の溶融温度以上で加熱溶融させて、所望の時間混練することにより反応を行うことができる。このときの反応温度(共重合体水素化物の温度)は、特に限定されないが、通常180〜240℃、好ましくは190〜230℃、より好ましくは200〜220℃である。反応時間(加熱混練時間)は、通常0.2〜10分、好ましくは0.3〜5分、より好ましくは0.5〜2分程度である。二軸混練機、短軸押出し機などの連続混練設備を使用する場合は、滞留時間が上記範囲になるようにして、連続的に混練、押し出しをすればよい。
【0078】
また、本発明において、用いる脂環構造含有樹脂は、積層される結晶性環状オレフィン樹脂の層を構成する結晶性環状オレフィン樹脂の融点よりも低いガラス転移温度を有する必要がある。脂環構造含有樹脂がこのようなガラス転移温度を有することにより、得られる積層体における銅からなる層の密着均一性が良好なものとなる。脂環構造含有樹脂のガラス転移温度は、結晶性環状オレフィン樹脂の融点よりも低いものである限りにおいて特に限定されないが、好ましくは80〜250℃、より好ましくは90〜220℃、特に好ましくは100〜200℃である。脂環構造含有樹脂のガラス転移温度が、この範囲にあることにより、得られる積層体を均一な厚さを有するものとすることが容易になる。
【0079】
脂環構造含有樹脂の分子量は、特に限定されないが、テトラヒドロフランを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として、通常30,000〜200,000、好ましくは40,000〜100,000、より好ましくは45,000〜60,000である。また、脂環構造含有樹脂の、テトラヒドロフランを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)に対する数平均分子量(Mn)の比として求められる分子量分布(Mw/Mn)も、特に限定されないが、通常3以下、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
【0080】
脂環構造含有樹脂には、必要に応じて、必要に応じて、酸化防止剤、架橋剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、帯電防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、滑剤などの各種の添加剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、例えば、(テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンなどのフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などを特に制限なく使用することができる。脂環構造含有樹脂に酸化防止剤を配合する場合の配合量は、特に限定されないが、脂環構造含有樹脂100重量部に対して、通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜4重量部、より好ましくは0.1〜3重量部である。
【0081】
架橋剤としては、例えば、過酸化物を挙げることができ、特に有機過酸化物が好ましく用いられる。具体的には、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ラウロイルパーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、p−メンタンハイドロパーオキサイドなどが例示される。これらの有機過酸化物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。架橋剤の使用量は、特に限定されないが、脂環構造含有樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部であり、より好ましくは1〜15重量部であり、特に好ましくは1.5〜10重量部である。なお、前述したように、過酸化物は脂環構造含有樹脂に官能基を導入する際にも用いうるが、過酸化物の使用量や反応温度を調節することにより、脂環構造含有樹脂を架橋させることなく、官能基を導入することが可能である。
【0082】
本発明の積層体を得る方法は特に限定されないが、より強固に接着された積層体を得る観点からは、次に述べる、本発明の積層体の製造方法が好適である。すなわち、本発明の積層体の製造方法は、融点を有する結晶性環状オレフィン樹脂からなる層および銅からなる層を、結晶性環状オレフィン樹脂の融点よりも低いガラス転移温度を有し、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、およびオキシシリル基からなる群から選択される官能基を全繰り返し単位に対して、0.1〜20モル%の割合で含有する脂環構造含有樹脂からなる層を介して積層した後、これらを脂環構造含有樹脂のガラス転移温度以上で結晶性環状オレフィン樹脂の融点以下の温度で加熱することにより、結晶性環状オレフィン樹脂からなる層および銅からなる層を脂環構造含有樹脂からなる層を介して接着させる、積層体の製造方法である。
【0083】
本発明の積層体の製造方法において、積層体の各層を接着させるための温度は、脂環構造含有樹脂のガラス転移温度以上で結晶性環状オレフィン樹脂の融点以下の温度である必要がある。このような温度範囲で加熱を行うことにより、より強固に各層が接着された積層体を得ることができる。加熱温度が、脂環構造含有樹脂のガラス転移温度未満であると、積層体の接着力が不足するおそれがあり、結晶性環状オレフィン樹脂の融点を超える温度であると、積層体が変形してしまうおそれがある。
【0084】
脂環構造含有樹脂からなる層を、結晶性環状オレフィン樹脂からなる層および銅からなる層に介在させて、それらを加熱する方法は、特に限定されず、例えば、脂環構造含有樹脂をフィルムの形態として、そのフィルムを結晶性環状オレフィン樹脂からなる層と銅からなる層との間に介在させた状態で、熱プレスする方法や、脂環構造含有樹脂を溶液の形態として、結晶性環状オレフィン樹脂からなる層および銅からなる層の少なくとも一方に塗布することにより脂環構造含有樹脂の層を形成し、その脂環構造含有樹脂の層が環状オレフィン樹脂からなる層と銅からなる層との間に介在するようにして熱プレスする方法を挙げることができる。
【0085】
脂環構造含有樹脂をフィルムの形態にする場合の成形方法は、特に限定されず、例えば、Tダイを備えた押出機を用いて溶融押し出し成形をするなどの従来公知の方法を特に制限なく採用することができる。このフィルムの厚さは、特に限定されないが、5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。
【0086】
また、脂環構造含有樹脂を、結晶性環状オレフィン樹脂からなる層や銅からなる層に塗布する場合には、脂環構造含有樹脂を、例えば、シクロヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンなどの有機溶媒に溶解させて溶液の形態として、その溶液をドクターブレードやワイヤーバーなどを用いて塗布したのち、溶媒を蒸発させればよい。このとき形成される脂環構造含有樹脂からなる層の厚さは、特に限定されないが、1〜50μmであることが好ましく、2〜20μmであることがより好ましい。なお、脂環構造含有樹脂からなる層の厚さは、塗布する溶液の濃度と塗布量で制御することができる。
【0087】
積層体を強固に接着させるために行うことができる、熱プレスの条件は、加熱温度が脂環構造含有樹脂のガラス転移温度以上で結晶性環状オレフィン樹脂の融点以下である限りにおいて特に限定されないが、例えば、ラミネータなどの装置を用いて、温度80〜250℃、圧着圧力0.1〜10MPa、圧着時間0.1〜3000秒の条件で行うことができる。また、接着剤の層から気泡を除去するために、真空ラミネータなどを用いて、減圧下で熱プレスを行ってもよい。
【0088】
例えば、以上のようにして得られる本発明の積層体の用途は特に限定されず、耐熱性、低吸水性、電気特性(低誘電率・低誘電正接)などに優れた結晶性環状オレフィン樹脂に、銅が強固に接着された構造を活かした、各種の用途に用いることができ、なかでも、プリント配線板などの回路基板を得るために好適に用いることができる。
【実施例】
【0089】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0090】
また、各例における測定および評価は、以下の方法により行った。
〔ガラス転移温度および融点〕
樹脂のガラス転移温度と融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温して求めた。
〔重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)〕
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム「HLC−8220」(東ソー社製)で、「Hタイプカラム」(東ソー社製)を用い、テトラヒドロフランを溶媒として40℃で測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
〔不飽和結合の水素化率〕
1H−NMR測定に基づいて求めた。
〔官能基の含有量〕
1H−NMR測定に基づいて、重合体(水素化物)を構成する全繰り返し単位に対する官能基の含有量(割合)を求めた。
〔引き剥がし強さ〕
試料となる積層フィルム(積層体)を10×100mmの大きさに切断した後、積層フィルムの銅箔の一部を引き剥がして、銅箔のみを引っ張れるように引っ張り試験器に固定し、10mm/分の速度で積層フィルムに対して垂直に銅箔を引っ張ったときの応力を測定し、その試料の引き剥がし強さとした。なお、この測定は、試料となる積層フィルム(積層体)の作製直後および150℃のオーブンに7日間静置した後の2回測定した。積層樹脂フィルム(積層体)の作製直後の測定で値が高いものほど、接着がより強固であるといえ、オーブンに7日間静置した後の測定で値が高いものほど、熱履歴を経た後での接着がより強固であるといえる。
【0091】
〔製造例1〕(結晶性環状オレフィン樹脂フィルム(A−1)の作製)
充分に乾燥した後、窒素置換したガラス製耐圧反応容器に、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の75重量%シクロヘキサン溶液40部(ジシクロペンタジエンの量として30部)と1−ヘキセン1.0部とを仕込み、さらに、シクロヘキサン76部を加え、続いて、ジエチルアルミニウムエトキシドの19重量%n−ヘキサン溶液0.46部を加えて攪拌した。次いで、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.11部を2部のトルエンに溶解した溶液を加えて、50℃に加温して開環重合反応を開始した。3時間後、少量のイソプロパノールを加えて、重合反応を停止した後、重合反応溶液を多量のイソプロパノール中に注ぎ込み、開環重合体を凝固させた。凝固した開環重合体はろ過により溶液より分離して回収した後、真空下40℃で20時間乾燥した。得られた開環重合体の収量は29部(収率97%)であった。次いで、得られた開環重合体10部とシクロヘキサン44部とを耐圧反応容器に加えて攪拌し、開環重合体をシクロヘキサンに溶解させた後、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0065部をトルエン6部に溶解させてなる水素化触媒液を添加し、水素圧4MPa、160℃で5時間水素化反応を行った。得られた水素化反応液を多量のイソプロピルアルコールに注いで重合体を完全に析出させ、濾別洗浄後、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性環状オレフィン樹脂(a−1)を得た。得られた樹脂(a−1)のガラス転移温度は98℃で融点は265℃であった。
【0092】
得られた結晶性環状オレフィン樹脂(a−1)100部に酸化防止剤(テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、商品名「イルガノックス1010」、BASFジャパン社製)0.8部添加し、二軸押出機により、樹脂温度平均280℃にて溶融混練し、ペレタイザーによりペレット化して原料樹脂のペレットを得た。このペレットを、幅300mmのTダイを備えた押出機(バレル温度:280℃、Tダイ温度:290℃、冷却ロール温度:90℃)を用いて、1.5m/分の速度で溶融押出し、その後200℃で結晶化アニール処理して、厚み50μmのフィルムを成形し、結晶性環状オレフィン樹脂フィルム(A−1)を得た。
【0093】
〔製造例2〕(結晶性環状オレフィン樹脂フィルム(A−2)の作製)
攪拌機付きガラス反応器に、合成例で得たビス{3,3’−ジ(t−ブチル)−5,5’,6,6’−テトラメチル−2,2’−ビフェノキシ}フェニルイミドタングステン(VI)0.0556部およびトルエン4部を添加し、これを−78℃に冷却した。そして、さらにn−ブチルリチウム0.00726部をヘキサン1部に溶解したものを添加して、これを室温まで戻し、15分間反応させた。次いで、得られた反応混合物に、ジシクロペンタジエン7.5部、シクロヘキサン27部および1−ヘキセン0.32部を添加し、80℃において重合反応を行った。重合反応開始後、速やかに白色の沈殿物が析出した。2時間反応させた後、重合反応液に大量のアセトンを注いで沈殿物を凝集させ、濾別洗浄後、40℃で24時間減圧乾燥した。得られた開環重合体の収量は7.4部であり、数平均分子量は17,800であった。次に、攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体3.0部およびシクロヘキサン47部を加えた。そして、シクロヘキサン10部にRuHCl(CO)(PPh
3)
20.00157部を分散させたものをさらに添加し、水素圧4.0MPa、160℃で8時間水素化反応を行った。この水素化反応液を多量のアセトンに注いで生成した開環重合体水素化物を完全に析出させ、濾別洗浄後、40℃で24時間減圧乾燥して結晶性環状オレフィン樹脂(a−2)を得た。得られた開環重合体水素化物の水素化率は99%以上であった。ガラス転移温度は102℃で融点は296℃であった。
【0094】
得られた結晶性環状オレフィン樹脂(a−2)100部に酸化防止剤(テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、商品名「イルガノックス1010」、BASFジャパン社製)0.8部添加し、二軸押出機により、樹脂温度平均320℃にて溶融混練し、ペレタイザーによりペレット化して原料樹脂のペレットを得た。このペレットを、幅300mmのTダイを備えた押出機(バレル温度:320℃、Tダイ温度:320℃、冷却ロール温度:90℃)を用いて、1.5m/分の速度で溶融押出し、その後200℃で結晶化アニール処理して、厚み50μmのフィルムを成形し、結晶性環状オレフィン樹脂フィルム(A−2)を得た。
【0095】
〔製造例3〕(オキシシリル基含有脂環構造含有樹脂フィルム(B−1)の作製)
窒素置換された撹拌装置を備えた反応器に、脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25部およびジ−n−ブチルエーテル0.475部を入れ、60℃で撹拌しながらn−ブチルリチウム(15重量%シクロヘキサン溶液)0.68部をさらに加えて重合を開始し、撹拌しながら60℃で60分間反応させた。次に、脱水イソプレン50部を加え、撹拌しながら60℃で30分間反応させた。次いで、脱水スチレンを25部加え、撹拌しながら60℃で30分間反応させた。その後、イソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止することにより、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体である共重合体を得た。次いで、得られた共重合体溶液を、撹拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒としてシリカ−アルミナ担持型ニッケル触媒(商品名「T−8400RL」、ズードケミー触媒社製)1.5部および脱水シクロヘキサン50部を添加して混合した。そして、反応器内部の気体を水素ガスで置換し、更に溶液を撹拌しながら水素を供給し、温度170℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。得られた水素化反応液を多量のイソプロピルアルコールに注いで共重合体水素化物を完全に析出させ、濾別洗浄後、60℃で24時間減圧乾燥して、共重合体水素化物を得た。水素化反応後の共重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は65,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.06で、全不飽和結合の水素化率は99%以上であった。次いで、得られた共重合体水素化物100部に対して、ビニルトリメトキシシラン2.0部およびジ−t−ブチルパーオキサイド0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(商品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度210℃、滞留時間80〜90秒で混練して、オキシシリル基含有脂環構造含有樹脂(b−1)を得た。この脂環構造含有樹脂(b−1)について、官能基(トリメトキシシリル基)の含有量およびガラス転移温度を測定したところ、官能基の含有量は重合体を構成する全繰り返し単位に対して1.4モル%で、ガラス転移温度は122℃であった。
【0096】
オキシシリル基含有脂環構造含有樹脂(b−1)100部に酸化防止剤(テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、商品名「イルガノックス1010」、BASFジャパン社製)0.8部添加し、二軸押出機により、樹脂温度平均210℃にて溶融混練し、ペレタイザーによりペレット化して原料樹脂のペレットを得た。このペレットを、幅300mmのTダイを備えた押出機(バレル温度:210℃、Tダイ温度:210℃、冷却ロール温度:50℃)を用いて、1.5m/分の速度で溶融押出し、その後200℃で結晶化アニール処理して、厚み50μmのフィルムを成形し、オキシシリル基含有脂環構造含有樹脂フィルム(B−1)を得た。
【0097】
〔製造例4〕(カルボン酸無水物基含有脂環構造含有樹脂(b−2)の合成)
ビニルトリメトキシシランに代えて、無水マレイン酸3.0部を共重合体水素化物100部に添加したこと以外は、製造例3と同様に操作をすることにより、カルボン酸無水物基含有脂環構造含有樹脂(b−2)を得た。この脂環構造含有樹脂(b−2)について、官能基(カルボン酸無水物基)の含有量およびガラス転移温度を測定したところ、官能基の含有量は重合体を構成する全繰り返し単位に対して2.5モル%で、ガラス転移温度は123℃であった。
【0098】
〔製造例5〕(オキシシリル基含有脂環構造含有樹脂(b−3)の合成)
市販の熱可塑性ノルボルネン系樹脂(商品名「ZEONEX 280」、水素添加率99.7%以上、日本ゼオン社製)100部に対して、ビニルトリメトキシシラン3.0部およびジクミルパーオキサイド0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(商品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度240℃、滞留時間80〜90秒で混練して、オキシシリル基含有脂環構造含有樹脂(b−3)を得た。この脂環構造含有樹脂(b−3)について、官能基(トリメトキシシリル基)の含有量およびガラス転移温度を測定したところ、官能基の含有量は重合体を構成する全繰り返し単位に対して1.5モル%で、ガラス転移温度は140℃であった。
【0099】
〔製造例6〕(カルボン酸無水物基含有脂環構造含有樹脂(b−4)の合成)
ビニルトリメトキシシランに代えて、無水マレイン酸3.0部を熱可塑性ノルボルネン系樹脂100部に添加したこと以外は、製造例5と同様に操作をすることにより、カルボン酸無水物基含有脂環構造含有樹脂(b−4)を得た。この脂環構造含有樹脂(b−4)について、官能基(カルボン酸無水物基)の含有量およびガラス転移温度を測定したところ、官能基の含有量は重合体を構成する全繰り返し単位に対して3.5モル%で、ガラス転移温度は141℃であった。
【0100】
〔製造例7〕(カルボキシル基含有脂環構造含有樹脂(b−5)の合成)
ビニルトリメトキシシランに代えて、マレイン酸モノメチル3.0部を共重合体水素化物100部に添加したこと以外は、製造例3と同様に操作をすることにより、カルボキシル基含有脂環構造含有樹脂(b−5)を得た。この脂環構造含有樹脂(b−5)について、官能基(カルボキシル基)の含有量およびガラス転移温度を測定したところ、官能基の含有量は重合体を構成する全繰り返し単位に対して2.1モル%で、ガラス転移温度は123℃であった。
【0101】
〔製造例8〕(エポキシ基含有脂環構造含有樹脂(b−6)の合成)
ビニルトリメトキシシランに代えて、アリルグリシジルエーテル3.0部を共重合体水素化物100部に添加したこと以外は、製造例3と同様に操作をすることにより、エポキシ基含有脂環構造含有樹脂(b−6)を得た。この脂環構造含有樹脂(b−6)について、官能基(エポキシ基)の含有量およびガラス転移温度を測定したところ、官能基の含有量は重合体を構成する全繰り返し単位に対して1.2モル%で、ガラス転移温度は122℃であった。
【0102】
〔比較製造例1〕(非晶性環状オレフィン樹脂フィルム(A’−1)の作製
窒素置換したガラス反応器に、(アリル)パラジウム(トリシクロヘキシルホスフィン)クロリド0.77部およびリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート1.14部を入れ、続けてトルエン2部を加えて触媒液を調製した。次いで、窒素置換した攪拌機付きの耐圧ガラス反応器に、2−ノルボルネン1,650部、5−エチル−2−ノルボルネン915部、分子量調整剤としてスチレン1,300部および重合溶媒としてトルエン7,200部を仕込み、上記の触媒液を添加して重合を開始した。45℃で4.5時間反応させた後、重合反応液を多量のメタノールに注いで重合体を完全に析出させ、濾別洗浄後、50℃で18時間減圧乾燥して重合体2,462部を得た。この重合体のガラス転移温度を測定したところ、281℃であった。得られた重合体の10重量%トルエン溶液を、平坦なガラス板上に流延し、室温で24時間、空気気流下において、トルエンを蒸発除去した後、80℃で24時間、真空乾燥して、膜厚50μmのフィルムを得た。
【0103】
〔比較製造例2〕(オキシシリル基を含有する芳香環構造含有樹脂(b’−1)の合成)
窒素置換された撹拌装置を備えた反応器に、脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25部およびジ−n−ブチルエーテル0.475部を入れ、60℃で撹拌しながらn−ブチルリチウム(15重量%シクロヘキサン溶液)0.68部をさらに加えて重合を開始し、撹拌しながら60℃で60分間反応させた。次に、脱水イソプレン50部を加え、撹拌しながら60℃で30分間反応させた。次いで、脱水スチレンを25部加え、撹拌しながら60℃で30分間反応させた。その後、イソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止することにより、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体である共重合体を得た。次いで、得られた共重合体溶液のうち300部を、撹拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒としてクロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.035部をトルエン10部に溶解させてなる水素化触媒液を添加し、水素圧4.5MPa、160℃で5時間水素化反応を行った。得られた水素化反応液を多量のイソプロピルアルコールに注いで共重合体水素化物を完全に析出させ、濾別洗浄後、60℃で24時間減圧乾燥して、共重合体水素化物を得た。水素化反応後の共重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は63,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.05で、イソプレン単位部分の不飽和結合は99%以上水素化され、スチレン単位部分の不飽和結合(芳香環)はほぼ100%水素化されずに残っていた。次に、得られた芳香環構造含有樹脂100部に対して、ビニルトリメトキシシラン2.0部およびジ−t−ブチルパーオキサイド0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(商品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度210℃、滞留時間80〜90秒で混練して、オキシシリル基を含有する芳香環構造含有樹脂(b’−1)を得た。この芳香環構造含有樹脂(b’−1)について、官能基(トリメトキシシリル基)の含有量およびガラス転移温度を測定したところ、官能基の含有量は重合体を構成する全繰り返し単位に対して1.5モル%で、ガラス転移温度は100℃であった。
【0104】
〔比較製造例3〕(オキシシリル基を含有するポリエチレンフィルム(B’−2)の作製)
市販の直鎖状低密度ポリエチレン(商品名「ユメリット20B」、融点119℃、宇部丸善ポリエチレン社製)のペレット100部に対して、ビニルトリメトキシシラン2.0部および2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシヘキサン)0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(商品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度200℃、滞留時間80〜90秒で混練して、オキシシリル基を含有するポリエチレン(b’−2)を得た。このオキシシリル基を含有するポリエチレン(b’−2)について、官能基(トリメトキシシリル基)の含有量およびガラス転移温度を測定したところ、官能基の含有量はポリエチレンの全繰り返し単位に対して0.3モル%で、ガラス転移温度は119℃であった。
【0105】
得られたオキシシリル基を含有するポリエチレン(b’−2)100部に酸化防止剤(テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、商品名「イルガノックス1010」、BASFジャパン社製)0.8部を添加し、二軸押出機により、樹脂温度平均210℃にて溶融混練し、ペレタイザーによりペレット化した。このペレットを、幅300mmのTダイを備えた押出機(バレル温度:210℃、Tダイ温度:210℃、冷却ロール温度:50℃)を用いて溶融押出成形し、厚み50μmのフィルムを成形し、オキシシリル基を含有するポリエチレンフィルム(B’−2)を得た。
【0106】
〔実施例1〕
製造例1で得た結晶性環状オレフィン樹脂フィルム(A−1)に、製造例3で得たオキシシリル基含有脂環構造含有樹脂(b−1)の30重量%トルエン溶液を、ドクターブレードを用いて塗工した後、これを200℃のイナートオーブン中で30分間加熱することにより、結晶性環状オレフィン樹脂フィルム(A−1)に厚さ10μmのオキシシリル基含有共重合体水素化物(b−1)の層が積層された積層フィルムを得た。次いで、この積層フィルムのオキシシリル基含有共重合体水素化物(b−1)層側に、厚さ12μmの電解銅箔(商品名「F3−WS−12」、表面粗さ(十点平均粗さRz):2.4μm、古河電工社製)を積層した。そして、この積層体を、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用いて、雰囲気を200Paに減圧して、温度170℃、圧着圧力1MPaで60秒間加熱圧着して、銅箔積層樹脂フィルムを作製した。得られた銅箔積層樹脂フィルムについては、引き剥がし強さを測定し、その後、150℃のオーブンで7日間静置した後の引き剥がし強さも測定した。これらの結果は表1にまとめた。
【0107】
【表1】
【0108】
〔実施例2〕
製造例1で得た結晶性環状オレフィン樹脂フィルム(A−1)、製造例3で得たオキシシリル基含有脂環構造含有樹脂フィルム(B−1)、および厚さ12μmの電解銅箔(商品名「F3−WS−12」、表面粗さ(十点平均粗さRz):2.4μm、古河電工社製)をこの順に重ね、その積層体を、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用いて、雰囲気を200Paに減圧して、温度170℃、圧着圧力1MPaで60秒間加熱圧着して、銅箔積層樹脂フィルムを作製した。得られた銅箔積層樹脂フィルムについては、引き剥がし強さを測定し、その後、150℃のオーブンで7日間静置した後の引き剥がし強さも測定した。これらの結果は表1にまとめた。
【0109】
〔実施例3〜11〕
用いるフィルム、樹脂および積層体を加熱圧着するときの温度を表1に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、銅箔積層樹脂フィルムを作製した。但し、実施例6〜10については、用いる銅箔に事前にアミノシランカップリング剤処理を施した。得られた銅箔積層樹脂フィルムについては、引き剥がし強さを測定し、その後、150℃のオーブンで7日間静置した後の引き剥がし強さも測定した。これらの結果は表1にまとめた。
【0110】
〔実施例12〕
厚さ12μmの電解銅箔(商品名「F3−WS−12」、表面粗さ(十点平均粗さRz):2.4μm、古河電工社製)に、製造例3で得たオキシシリル基含有脂環構造含有樹脂(b−1)の30重量%トルエン溶液を、ワイヤーバーを用いて塗工した後、これを200℃のイナートオーブン中で30分間加熱することにより、銅箔に厚さ5μmのオキシシリル基含有脂環構造含有樹脂(b−1)の層が積層された積層体を2枚作製した。次いで、製造例1で得た結晶性環状オレフィン樹脂フィルム(A−1)に、プラズマ処理を施した後、その結晶性環状オレフィン樹脂フィルム(A−1)をオキシシリル基含有脂環構造含有樹脂(b−1)の層側が接するように2枚の積層体で挟み、それを、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用いて、雰囲気を200Paに減圧して、温度170℃、圧着圧力1MPaで60秒間加熱圧着して、両面銅箔積層樹脂フィルムを作製した。得られた両面銅箔積層樹脂フィルムについては、引き剥がし強さを測定し、その後、150℃のオーブンで7日間静置した後の引き剥がし強さも測定した。これらの結果は表1にまとめた。
【0111】
〔実施例13〜19および比較例1〕
用いるフィルム、樹脂および積層体を加熱圧着するときの温度を表1に示すとおりに変更したこと以外は、実施例12と同様にして、両面銅箔積層樹脂フィルムを作製した。但し、実施例16〜19については、用いる銅箔に事前にアミノシランカップリング剤処理を施した。得られた両面銅箔積層樹脂フィルムについては、引き剥がし強さを測定し、その後、150℃のオーブンで7日間静置した後の引き剥がし強さも測定した。これらの結果は表1にまとめた。
【0112】
〔比較例2〕
積層体を加熱圧着するときの温度を300℃に変更したこと以外は、比較例1と同様にして両面銅箔積層樹脂フィルムを得ようとしたが、非晶性環状オレフィン樹脂フィルム(A’−1)が硬く脆くなって割れてしまい、両面銅箔積層樹脂フィルムを得ることができなかった。
【0113】
〔比較例3〕
厚さ12μmの電解銅箔(商品名「F3−WS−12」、表面粗さ(十点平均粗さRz):2.4μm、古河電工社製)に、製造例3で得たオキシシリル基含有脂環構造含有樹脂(b−1)の30重量%トルエン溶液を、ワイヤーバーを用いて塗工した後、これを200℃のイナートオーブン中で30分間加熱することにより、銅箔に厚さ5μmのオキシシリル基含有脂環構造含有樹脂(b−1)の層が積層された積層体を2枚作製した。次いで、市販の非晶性環状オレフィン樹脂フィルム(A’−2)(商品名「ゼオノアフィルム」、日本ゼオン社製)に、オキシシリル基含有脂環構造含有樹脂(b−1)の層側が接するように2枚の積層体で挟み、それを、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用いて、雰囲気を200Paに減圧して、温度120℃、圧着圧力1MPaで60秒間加熱圧着して、両面銅箔積層樹脂フィルムを作製した。得られた両面銅箔積層樹脂フィルムについては、引き剥がし強さを測定し、その後、150℃のオーブンで7日間静置した後の引き剥がし強さも測定した。これらの結果は表1にまとめた。
【0114】
〔比較例4〕
積層体を加熱圧着するときの温度を180℃に変更したこと以外は、比較例3と同様にして両面銅箔積層樹脂フィルムを得ようとしたが、市販の非晶性環状オレフィン樹脂フィルムが溶融して変形してしまい、両面銅箔積層樹脂フィルムを得ることができなかった。
【0115】
〔比較例5〕
オキシシリル基含有脂環構造含有樹脂(b−1)に代えて、比較製造例2で得たオキシシリル基を含有する芳香環構造含有樹脂(b’−1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、銅箔積層樹脂フィルムを作製した。得られた銅箔積層樹脂フィルムについては、引き剥がし強さを測定し、その後、150℃のオーブンで7日間静置した後の引き剥がし強さも測定した。これらの結果は表1にまとめた。
【0116】
〔比較例6〕
オキシシリル基含有脂環構造含有樹脂フィルム(B−1)に代えて、オキシシリル基を含有するポリエチレンフィルム(B’−2)を用いたこと以外は実施例2と同様にして、銅箔積層樹脂フィルムを作製した。得られた銅箔積層樹脂フィルムについては、引き剥がし強さを測定し、その後、150℃のオーブンで7日間静置した後の引き剥がし強さも測定した。これらの結果は表1にまとめた。
【0117】
表1から判るように、本発明の積層体に該当する銅箔積層樹脂フィルムは、作製直後の測定およびオーブンに7日間静置した後の測定で、引き剥がし強さの値が高いものであった。一方、結晶性環状オレフィン樹脂フィルムに代えて、非晶性環状オレフィン樹脂フィルムを用いた場合(比較例1、3)では、作製直後の測定では引き剥がし強さの値は比較的高いものであったが、オーブンに7日間静置した後の測定では、引き剥がし強さの値が大幅に低下した。また、脂環構造含有樹脂に代えて、他の樹脂を用いた場合(比較例5、6)は、いずれも、作製直後の測定およびオーブンに7日間静置した後の測定の両方で銅箔積層樹脂フィルムの引き剥がし強さの値が低いものであった。以上より、本発明の積層体では、結晶性環状オレフィン樹脂と銅とが、強固に接着され、熱履歴を経た後であっても、その強固な接着が維持されるといえる。