【実施例】
【0106】
以下、本発明について、実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
【0107】
(実施例1)
[晶析工程]
まず、反応槽(5L)内に、水を半分の量まで入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定した。このときの反応槽内は、窒素雰囲気(酸素濃度:1容量%以下)とした。この反応槽内の水に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量加えて、反応槽内のpH値が、液温25℃基準で11.5に、アンモニア濃度が5g/Lとなるように調製した。また、硫酸マンガンと硫酸ニッケルの水和物を、マンガンとニッケルのモル比が、Mn:Ni=3:1となるように純水に溶かして2.0mol/Lの原料水溶液を調製した。
【0108】
この混合水溶液を、反応槽に一定速度で滴下し、反応水溶液とした。同時に、25質量%アンモニア水および25質量%水酸化ナトリウム水溶液も一定速度で滴下し、反応水溶液のpH値が、液温25℃基準で、11.5に、アンモニア濃度が5g/Lに維持されるように制御し、複合水酸化物粒子を晶析させた。その後、この複合水酸化物粒子を含むスラリーをろ過し、乾燥することで、複合水酸化物粒子を得た。
【0109】
この複合水酸化物粒子の組成を、ICP発光分光分析器(VARIAN社製、725ES)を用いて分析した結果、一般式:Mn
0.75Ni
0.25(OH)
2で表されるものであることが確認された。また、この複合水酸化物粒子について、全自動BET比表面積測定装置(株式会社マウンテック製、マックソーブ)を用いて測定したBET比表面積(S)は、30.0m
2/gであり、レーザ光回折散乱式粒度分析計(日機装株式会社製、マイクロトラックMT3000II)を用いて測定した体積平均粒径(MV)は、4.9μmであった。
【0110】
[混合工程]
得られた複合酸化物粒子と、この複合水酸化物粒子中のマンガンおよびニッケルの原子数の総和に対して、0.3原子%となるように秤量した酸化タングステン(体積平均粒径(MV)=0.8μm)と、この複合水酸化物粒子中のマンガンおよびニッケルと、酸化タングステン中のタングステンの原子数の総和に対して、50原子%となるように秤量した水酸化リチウム一水和物(体積平均粒径(MV)=4.5μm)とを、ターブラーシェイカーミキサ(株式会社ダルトン製、T2F)を用いて混合することにより、リチウム混合物を得た。
【0111】
[焼成工程]
雰囲気焼成炉(株式会社広築製、HAF−2020S)を用いて、リチウム混合物を、大気雰囲気下、1000℃で、12時間焼成した後、室温まで冷却し、得られたリチウム複合酸化物粒子を、ハンマーミル(IKAジャパン株式会社製、MF10)を用いて解砕した。
【0112】
[再焼成工程]
焼成工程で得られたリチウム複合酸化物粒子を、雰囲気焼成炉を用いて、大気雰囲気下、700℃で、36時間焼成することにより、正極活物質を得た。この正極活物質の組成を、ICP発光分光分析器を用いて分析した結果、一般式:LiMn
1.499Ni
0.496W
0.005O
4で表されるものであることが確認された。
【0113】
[正極活物質の性状]
このようにして得られた正極活物質の断面を、SEM(JEOL製、JSM-7001F)を用いて観察したところ、
図1に示すように、二次粒子の表面および結晶粒界に白色部位が確認された。エネルギ分散型X線分析(EDS)により、この部位の、マンガン、ニッケル、タングステンの原子数の総和に対するタングステンの原子数は、82原子%であることが確認された。
【0114】
また、この正極活物質に対して、全自動BET比表面積測定装置(株式会社マウンテック製、マックソーブ)を用いて測定したBET比表面積(S)は、0.20m
2/gであり、レーザ光回折散乱式粒度分析計(日機装株式会社製、マイクロトラックMT3000II)を用いて測定した体積平均粒径(MV)は11.0μmであった。これらの結果から、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)の積(S・MV)は、2.2×10
-6m
3/gと求められた。
【0115】
さらに、この正極活物質の結晶構造を、XRD(PANALYTICAL社製、X‘Pert、PROMRD)を用いて測定すると、空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群が検出された。このピーク群のうち、(311)面のピークの位置は、2θで36.45°であることが確認された。このXRD測定で得られたプロファイルを
図3に示す。
【0116】
[二次電池の作製]
得られた正極活物質の評価には、
図4に示す2032型コイン電池1(以下、「コイン型電池」という)を使用した。
【0117】
コイン型電池1は、ケース2と、ケース2内に収容された電極3とから構成されている。ケース2は、中空かつ一端が開口された正極缶2aと、この正極缶2aの開口部に配置される負極缶2bとを有しており、負極缶2bを正極缶2aの開口部に配置すると、負極缶2bと正極缶2aとの間に電極3を収容する空間が形成されるように構成されている。また、電極3は、正極3a、セパレータ3cおよび負極3bとからなり、この順で並ぶように積層されており、正極3aが正極缶2aの内面に接触し、負極3bが負極缶2bの内面に接触するようにケース2に収容されている。なお、ケース2はガスケット2cを備えており、このガスケット2cによって、正極缶2aと負極缶2bとの間が非接触の状態を維持するように相対的な移動が固定されている。また、ガスケット2cは、正極缶2aと負極缶2bとの隙間を密封してケース2内と外部との間を気密液密に遮断する機能も有している。
【0118】
このようなコイン型電池1は、以下のようにして作製した。
【0119】
初めに、得られた正極活物質52.5mgと、アセチレンブラック15mgと、ポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgとを混合し、直径10mmで10mg程度の質量になるまで薄膜化して、正極3aを作製し、これを真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。
【0120】
次に、正極3aを用いて、コイン型電池1を、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。この際、負極3bには、直径14mmの円盤状に打ち抜かれたリチウム箔、または平均粒径20μm程度の黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデンが銅箔に塗布された負極シートを用いた。また、セパレータ3cには、膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を、電解液には、1MのLiPF
6を支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の3:7混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。
【0121】
[二次電池の評価]
コイン型電池1の性能を示す初期放電容量、サイクル特性の容量維持率は、以下のように評価した。
【0122】
初期放電容量は、負極にリチウム箔を用いたコイン型電池1を製作してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cm
2としてカットオフ電圧5.0Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量(初期放電容量)を測定することにより評価した。
【0123】
また、サイクル特性は、負極に黒鉛粉末を用いたコイン型電池1を制作し、これを60℃に保持し、電流密度を0.6mA/cm
2として、カットオフ電圧4.9Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.5Vまで放電する操作を200回繰り返し、2回目の放電容量に対する200回目の放電容量の割合(容量維持率)を求めることにより評価した。
【0124】
この結果、実施例1のコイン型電池1の初期放電容量は139mAh/gであり、そのうち4.6Vまでに得られた容量は132mAh/gであった。また、200サイクル後の容量維持率は75%であった。
【0125】
(実施例2)
混合工程におけるタングステンの添加量を、複合水酸化物粒子中のマンガンおよびニッケルの原子数の総和に対して、0.5原子%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得た。ICP発光分光分析器を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:Li
1,01Mn
1.493Ni
0.495W
0.012O
4で表されるものであることが確認された。
【0126】
この正極活物質の断面を、SEMを用いて観察したところ、二次粒子の表面および結晶粒界に白色部位が確認された。EDSにより、この部位の、マンガン、ニッケル、タングステンの原子数の総和に対するタングステンの原子数は、80原子%であることが確認された。
【0127】
また、この正極活物質に対して、実施例1と同様にして、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)を測定したところ、BET比表面積(S)は0.13m
2/gであり、体積平均粒径(MV)は11.6μmであった。これらの結果から、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)の積(S・MV)は、1.5×10
-6m
3/gと求められた。
【0128】
さらに、この正極活物質の結晶構造を、XRDを用いて測定すると、空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群が検出された。このピーク群のうち、(311)面のピークの位置は、2θで36.45°であることが確認された。
【0129】
最後に、この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして、コイン型電池1を作製し、その性能を評価したところ、初期放電容量は138mAh/gであり、そのうち4.6Vまでに得られた容量は131mAh/gであった。また、200サイクル後の容量維持率は75%であった。
【0130】
(実施例3)
混合工程におけるタングステンの添加量を、複合水酸化物粒子中のマンガンおよびニッケルの原子数の総和に対して、0.7原子%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得た。ICP発光分光分析器を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:LiMn
1.491Ni
0.496W
0.013O
4で表されるものであることが確認された。
【0131】
この正極活物質の断面を、SEMを用いて観察したところ、二次粒子の表面および結晶粒界に白色部位が確認された。EDSにより、この部位の、マンガン、ニッケル、タングステンの原子数の総和に対するタングステンの原子数は、85原子%であることが確認された。
【0132】
また、この正極活物質に対して、実施例1と同様にして、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)を測定したところ、BET比表面積(S)は0.22m
2/gであり、体積平均粒径(MV)は11.6μmであった。これらの結果から、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)の積(S・MV)は、2.6×10
-6m
3/gと求められた。
【0133】
さらに、この正極活物質の結晶構造を、XRDを用いて測定すると、空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群が検出された。このピーク群のうち、(311)面のピークの位置は、2θで36.47°であることが確認された。
【0134】
最後に、この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして、コイン型電池1を作製し、その性能を評価したところ、初期放電容量は137mAh/gであり、そのうち4.6Vまでに得られた容量は131mAh/gであった。また、200サイクル後の容量維持率は75%であった。
【0135】
(実施例4)
混合工程におけるタングステンの添加量を、複合水酸化物粒子中のマンガンおよびニッケルの原子数の総和に対して、1.5原子%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得た。ICP発光分光分析器を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:LiMn
1.482Ni
0.490W
0.028O
4で表されるものであることが確認された。
【0136】
この正極活物質の断面を、SEMを用いて観察したところ、二次粒子の表面および結晶粒界に白色部位が確認された。EDSにより、この部位の、マンガン、ニッケル、タングステンの原子数の総和に対するタングステンの原子数は、82原子%であることが確認された。
【0137】
また、この正極活物質に対して、実施例1と同様にして、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)を測定したところ、BET比表面積(S)は0.20m
2/gであり、体積平均粒径(MV)は12.5μmであった。これらの結果から、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)の積(S・MV)は、2.5×10
-6m
3/gと求められた。
【0138】
さらに、この正極活物質の結晶構造を、XRDを用いて測定すると、空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群と、Li
2WO
4のピークが検出された。空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群のうち、(311)面のピークの位置は、2θで36.46°であることが確認された。
【0139】
最後に、この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして、コイン型電池1を作製し、その性能を評価したところ、初期放電容量は133mAh/gであり、そのうち4.6Vまでに得られた容量は127mAh/gであった。また、200サイクル後の容量維持率は77%であった。
【0140】
(実施例5)
混合工程におけるタングステンの添加量を、複合水酸化物粒子中のマンガンおよびニッケルの原子数の総和に対して、2.5原子%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得た。ICP発光分光分析器を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:Li
0.99Mn
1.468Ni
0.486W
0.046O
4で表されるものであることが確認された。
【0141】
この正極活物質の断面を、SEMを用いて観察したところ、二次粒子の表面および結晶粒界に白色部位が確認された。EDSにより、この部位の、マンガン、ニッケル、タングステンの原子数の総和に対するタングステンの原子数は、80原子%であることが確認された。
【0142】
また、この正極活物質に対して、実施例1と同様にして、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)を測定したところ、BET比表面積(S)は0.14m
2/gであり、体積平均粒径(MV)は12.8μmであった。これらの結果から、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)の積(S・MV)は、1.8×10
-6m
3/gと求められた。
【0143】
さらに、この正極活物質の結晶構造を、XRDを用いて測定すると、空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群と、Li
2WO
4のピークが検出された。空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群のうち、(311)面のピークの位置は、2θで36.44°であることが確認された。
【0144】
最後に、この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして、コイン型電池1を作製し、その性能を評価したところ、初期放電容量は127mAh/gであり、そのうち4.6Vまでに得られた容量は116mAh/gであった。また、200サイクル後の容量維持率は79%であった。
【0145】
(実施例6)
混合工程において、酸化タングステンに代えて、複合水酸化物粒子中のマンガンおよびニッケルの原子数の総和に対して、0.3原子%となるように秤量した酸化モリブデン(体積平均粒径(MV)=0.8μm)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得た。ICP発光分光分析器を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:LiMn
1.498Ni
0.496Mo
0.006O
4で表されるものであることが確認された。
【0146】
この正極活物質の断面を、SEMを用いて観察したところ、
図2に示すように、二次粒子の表面および結晶粒界に白色部位が確認された。EDSにより、この部位の、マンガン、ニッケル、モリブデンの原子数の総和に対するモリブデンの原子数は、83原子%であることが確認された。
【0147】
また、この正極活物質に対して、実施例1と同様にして、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)を測定したところ、BET比表面積(S)は0.25m
2/gであり、体積平均粒径(MV)は11.4μmであった。これらの結果から、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)の積(S・MV)は、2.9×10
-6m
3/gと求められた。
【0148】
さらに、この正極活物質の結晶構造を、XRDを用いて測定すると、空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群が検出された。このピーク群のうち、(311)面のピークの位置は、2θで36.45°であることが確認された。
【0149】
最後に、この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして、コイン型電池1を作製し、その性能を評価したところ、初期放電容量は139mAh/gであり、そのうち4.6Vまでに得られた容量は132mAh/gであった。また、200サイクル後の容量維持率は75%であった。
【0150】
(実施例7)
混合工程におけるモリブデンの添加量を、複合水酸化物粒子中のマンガンおよびニッケルの原子数の総和に対して、0.7原子%となるようにしたこと以外は、実施例6と同様にして、正極活物質を得た。ICP発光分光分析器を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:LiMn
1.492Ni
0.494Mo
0.014O
4で表されるものであることが確認された。
【0151】
この正極活物質の断面を、SEMを用いて観察したところ、二次粒子の表面および結晶粒界に白色部位が確認された。EDSにより、この部位の、マンガン、ニッケル、モリブデンの原子数の総和に対するモリブデンの原子数は、82原子%であることが確認された。
【0152】
また、この正極活物質に対して、実施例1と同様にして、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)を測定したところ、BET比表面積(S)は0.21m
2/gであり、体積平均粒径(MV)は11.5μmであった。これらの結果から、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)の積(S・MV)は、2.4×10
-6m
3/gと求められた。
【0153】
さらに、この正極活物質の結晶構造を、XRDを用いて測定すると、空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群が検出された。このピーク群のうち、(311)面のピークの位置は、2θで36.45°であることが確認された。
【0154】
最後に、この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして、コイン型電池1を作製し、その性能を評価したところ、初期放電容量は134mAh/gであり、そのうち4.6Vまでに得られた容量は126mAh/gであった。また、200サイクル後の容量維持率は73%であった。
【0155】
(実施例8)
混合工程におけるモリブデンの添加量を、複合水酸化物粒子中のマンガンおよびニッケルの原子数の総和に対して、1.5原子%となるようにしたこと以外は、実施例6と同様にして、正極活物質を得た。ICP発光分光分析器を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:LiMn
1.480Ni
0.490Mo
0.030O
4で表されるものであることが確認された。
【0156】
この正極活物質の断面を、SEMを用いて観察したところ、二次粒子の表面および結晶粒界に白色部位が確認された。EDSにより、この部位の、マンガン、ニッケル、モリブデンの原子数の総和に対するモリブデンの原子数は、82原子%であることが確認された。
【0157】
また、この正極活物質に対して、実施例1と同様にして、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)を測定したところ、BET比表面積(S)は0.24m
2/gであり、体積平均粒径(MV)は11.7μmであった。これらの結果から、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)の積(S・MV)は、2.8×10
-6m
3/gと求められた。
【0158】
さらに、この正極活物質の結晶構造を、XRDを用いて測定すると、空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群が検出された。空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群のうち、(311)面のピークの位置は、2θで36.47°であることが確認された。
【0159】
最後に、この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして、コイン型電池1を作製し、その性能を評価したところ、初期放電容量は132mAh/gであり、そのうち4.6Vまでに得られた容量は124mAh/gであった。また、200サイクル後の容量維持率は75%であった。
【0160】
(実施例9)
焼成工程における焼成温度を900℃としたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得た。ICP発光分光分析器を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:LiMn
1.499Ni
0.496W
0.005O
4で表されるものであることが確認された。
【0161】
この正極活物質の断面を、SEMを用いて観察したところ、二次粒子の表面および結晶粒界に白色部位が確認された。EDSにより、この部位の、マンガン、ニッケル、タングステンの原子数の総和に対するタングステンの原子数は、81原子%であることが確認された。
【0162】
また、この正極活物質に対して、実施例1と同様にして、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)を測定したところ、BET比表面積(S)は0.29m
2/gであり、体積平均粒径(MV)は6.9μmであった。これらの結果から、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)の積(S・MV)は、2.0×10
-6m
3/gと求められた。
【0163】
さらに、この正極活物質の結晶構造を、XRDを用いて測定すると、空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群が検出された。空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群のうち、(311)面のピークの位置は、2θで36.45°であることが確認された。
【0164】
最後に、この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして、コイン型電池1を作製し、その性能を評価したところ、初期放電容量は139mAh/gであり、そのうち4.6Vまでに得られた容量は132mAh/gであった。また、200サイクル後の容量維持率は75%であった。
【0165】
(実施例10)
焼成工程における焼成時間を20時間としたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得た。ICP発光分光分析器を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:LiMn
1.499Ni
0.496W
0.005O
4で表されるものであることが確認された。
【0166】
この正極活物質の断面を、SEMを用いて観察したところ、二次粒子の表面および結晶粒界に白色部位が確認された。EDSにより、この部位の、マンガン、ニッケル、タングステンの原子数の総和に対するタングステンの原子数は、87原子%であることが確認された。
【0167】
また、この正極活物質に対して、実施例1と同様にして、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)を測定したところ、BET比表面積(S)は0.19m
2/gであり、体積平均粒径(MV)は11.0μmであった。これらの結果から、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)の積(S・MV)は、2.1×10
-6m
3/gと求められた。
【0168】
さらに、この正極活物質の結晶構造を、XRDを用いて測定すると、空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群が検出された。空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群のうち、(311)面のピークの位置は、2θで36.45°であることが確認された。
【0169】
最後に、この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして、コイン型電池1を作製し、その性能を評価したところ、初期放電容量は139mAh/gであり、そのうち4.6Vまでに得られた容量は132mAh/gであった。また、200サイクル後の容量維持率は75%であった。
【0170】
(実施例11)
再焼成工程における焼成温度を500℃としたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得た。ICP発光分光分析器を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:LiMn
1.499Ni
0.496W
0.005O
4で表されるものであることが確認された。
【0171】
この正極活物質の断面を、SEMを用いて観察したところ、二次粒子の表面および結晶粒界に白色部位が確認された。EDSにより、この部位の、マンガン、ニッケル、タングステンの原子数の総和に対するタングステンの原子数は、83原子%であることが確認された。
【0172】
また、この正極活物質に対して、実施例1と同様にして、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)を測定したところ、BET比表面積(S)は0.20m
2/gであり、体積平均粒径(MV)は11.0μmであった。これらの結果から、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)の積(S・MV)は、2.2×10
-6m
3/gと求められた。
【0173】
さらに、この正極活物質の結晶構造を、XRDを用いて測定すると、空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群が検出された。空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群のうち、(311)面のピークの位置は、2θで36.45°であることが確認された。
【0174】
最後に、この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして、コイン型電池1を作製し、その性能を評価したところ、初期放電容量は139mAh/gであり、そのうち4.6Vまでに得られた容量は132mAh/gであった。また、200サイクル後の容量維持率は75%であった。
【0175】
(実施例12)
再焼成工程における焼成温度を800℃としたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得た。ICP発光分光分析器を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:LiMn
1.499Ni
0.496W
0.005O
4で表されるものであることが確認された。
【0176】
この正極活物質の断面を、SEMを用いて観察したところ、二次粒子の表面および結晶粒界に白色部位が確認された。EDSにより、この部位の、マンガン、ニッケル、タングステンの原子数の総和に対するタングステンの原子数は、82原子%であることが確認された。
【0177】
また、この正極活物質に対して、実施例1と同様にして、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)を測定したところ、BET比表面積(S)は0.20m
2/gであり、体積平均粒径(MV)は11.0μmであった。これらの結果から、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)の積(S・MV)は、2.2×10
-6m
3/gと求められた。
【0178】
さらに、この正極活物質の結晶構造を、XRDを用いて測定すると、空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群が検出された。空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群のうち、(311)面のピークの位置は、2θで36.45°であることが確認された。
【0179】
最後に、この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして、コイン型電池1を作製し、その性能を評価したところ、初期放電容量は139mAh/gであり、そのうち4.6Vまでに得られた容量は132mAh/gであった。また、200サイクル後の容量維持率は75%であった。
【0180】
(実施例13)
再焼成工程における焼成時間を5時間としたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得た。ICP発光分光分析器を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:LiMn
1.499Ni
0.496W
0.005O
4で表されるものであることが確認された。
【0181】
この正極活物質の断面を、SEMを用いて観察したところ、二次粒子の表面および結晶粒界に白色部位が確認された。EDSにより、この部位の、マンガン、ニッケル、タングステンの原子数の総和に対するタングステンの原子数は、85原子%であることが確認された。
【0182】
また、この正極活物質に対して、実施例1と同様にして、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)を測定したところ、BET比表面積(S)は0.20m
2/gであり、体積平均粒径(MV)は11.0μmであった。これらの結果から、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)の積(S・MV)は、2.2×10
-6m
3/gと求められた。
【0183】
さらに、この正極活物質の結晶構造を、XRDを用いて測定すると、空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群が検出された。空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群のうち、(311)面のピークの位置は、2θで36.45°であることが確認された。
【0184】
最後に、この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして、コイン型電池を作製し、その性能を評価したところ、初期放電容量は139mAh/gであり、そのうち4.6Vまでに得られた容量は132mAh/gであった。また、200サイクル後の容量維持率は75%であった。
【0185】
(実施例14)
再焼成工程における焼成時間を40時間としたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得た。ICP発光分光分析器を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:LiMn
1.499Ni
0.496W
0.005O
4で表されるものであることが確認された。
【0186】
この正極活物質の断面を、SEMを用いて観察したところ、二次粒子の表面および結晶粒界に白色部位が確認された。EDSにより、この部位の、マンガン、ニッケル、タングステンの原子数の総和に対するタングステンの原子数は、86原子%であることが確認された。
【0187】
また、この正極活物質に対して、実施例1と同様にして、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)を測定したところ、BET比表面積(S)は0.20m
2/gであり、体積平均粒径(MV)は11.0μmであった。これらの結果から、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)の積(S・MV)は、2.2×10
-6m
3/gと求められた。
【0188】
さらに、この正極活物質の結晶構造を、XRDを用いて測定すると、空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群が検出された。空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群のうち、(311)面のピークの位置は、2θで36.45°であることが確認された。
【0189】
最後に、この正極活物質を用いて、コイン型電池1を作製し、その性能を評価したところ、初期放電容量は139mAh/gであり、そのうち4.6Vまでに得られた容量は132mAh/gであった。また、200サイクル後の容量維持率は75%であった。
【0190】
(比較例1)
混合工程において、タングステンとモリブデンのいずれも添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得た。ICP発光分光分析器を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:Li
1.01Mn
1.503Ni
0.497O
4で表されるものであることが確認された。
【0191】
この正極活物質の断面を、SEMを用いて観察したところ、二次粒子の表面および結晶粒界に白色部位は確認されなかった。
【0192】
また、この正極活物質に対して、実施例1と同様にして、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)を測定したところ、BET比表面積(S)は0.75m
2/gであり、体積平均粒径(MV)は8.3μmであった。これらの結果から、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)の積(S・MV)は、6.2×10
-6m
3/gと求められた。
【0193】
さらに、この正極活物質の結晶構造を、XRDを用いて評価したところ、得られた回折パターン中に、空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造の回折パターンに帰属するLiMn
2O
4のピーク群が観測された。これらのピーク群のうち、(311)面に帰属されるピークの位置は、2θで36.45°であることが確認された。
【0194】
最後に、この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして、コイン型電池1を作製し、その性能を評価したところ、初期放電容量は141mAh/gであり、そのうち4.6Vまでに得られた容量は137mAh/gであった。また、200サイクル後の容量維持率は60%であった。
【0195】
(比較例2)
混合工程におけるタングステンの添加量を、複合水酸化物粒子中のマンガンおよびニッケルの原子数の総和に対して、3.0原子%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得た。ICP発光分光分析器を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:Li
0.98Mn
1.455Ni
0.481W
0.064O
4で表されるものであることが確認された。
【0196】
この正極活物質の断面を、SEMを用いて観察したところ、二次粒子の表面および結晶粒界に白色部位が確認された。EDSにより、この部位の、マンガン、ニッケル、タングステンの原子数の総和に対するタングステンの原子数は、84原子%であることが確認された。
【0197】
また、この正極活物質に対して、実施例1と同様にして、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)を測定したところ、BET比表面積(S)は0.22m
2/gであり、体積平均粒径(MV)は16.8μmであった。これらの結果から、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)の積(S・MV)は、3.7×10
-6m
3/gと求められた。
【0198】
さらに、この正極活物質の結晶構造を、XRDを用いて測定すると、空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群と、Li
2WO
4のピークが検出された。空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群のうち、(311)面のピークの位置は、2θで36.34°であることが確認された。
【0199】
最後に、この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして、コイン型電池1を作製し、その性能を評価したところ、初期放電容量は111mAh/gであり、そのうち4.6Vまでに得られた容量は86mAh/gであった。また、200サイクル後の容量維持率は85%であった。
【0200】
(比較例3)
混合工程におけるモリブデンの添加量を、複合水酸化物粒子中のマンガンおよびニッケルの原子数の総和に対して、3.0原子%となるようにしたこと以外は、実施例6と同様にして、正極活物質を得た。ICP発光分光分析器を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:Li
0.98Mn
1.455Ni
0.481Mo
0.064O
4で表されるものであることが確認された。
【0201】
この正極活物質の断面を、SEMを用いて観察したところ、二次粒子の表面および結晶粒界に白色部位が確認された。EDSにより、この部位の、マンガン、ニッケル、モリブデンの原子数の総和に対するモリブデンの原子数は、82原子%であることが確認された。
【0202】
また、この正極活物質に対して、実施例1と同様にして、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)を測定したところ、BET比表面積(S)は0.26m
2/gであり、体積平均粒径(MV)は13.4μmであった。これらの結果から、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)の積(S・MV)は、3.5×10
-6m
3/gと求められた。
【0203】
さらに、この正極活物質の結晶構造を、XRDを用いて測定すると、空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群と、Li
2MoO
4のピークが検出された。空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群のうち、(311)面のピークの位置は、2θで36.38°であることが確認された。
【0204】
最後に、この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして、コイン型電池1を作製し、その性能を評価したところ、初期放電容量は105mAh/gであり、そのうち4.6Vまでに得られた容量は74mAh/gであった。また、200サイクル後の容量維持率は85%であった。
【0205】
(比較例4)
焼成工程における焼成温度を1050℃としたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得た。ICP発光分光分析器を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:Li
0.98Mn
1.499Ni
0.496W
0.005O
4で表されるものであることが確認された。
【0206】
この正極活物質の断面を、SEMを用いて観察したところ、二次粒子の表面および結晶粒界に白色部位が確認された。EDSにより、この部位の、マンガン、ニッケル、タングステンの原子数の総和に対するタングステンの原子数は、82原子%であることが確認された。
【0207】
また、この正極活物質に対して、実施例1と同様にして、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)を測定したところ、BET比表面積(S)は0.15m
2/gであり、体積平均粒径(MV)は22.0μmであった。これらの結果から、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)の積(S・MV)は、3.3×10
-6m
3/gと求められた。
【0208】
さらに、この正極活物質の結晶構造を、XRDを用いて測定すると、空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群が検出された。空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群のうち、(311)面のピークの位置は、2θで36.45°であることが確認された。
【0209】
最後に、この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして、コイン型電池1を作製し、その性能を評価したところ、初期放電容量は120mAh/gであり、そのうち4.6Vまでに得られた容量は104mAh/gであった。また、200サイクル後の容量維持率は80%であった。
【0210】
(比較例5)
再焼成工程における焼成温度を850℃としたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得た。ICP発光分光分析器を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:Li
0.98Mn
1.499Ni
0.496W
0.005O
4で表されるものであることが確認された。
【0211】
この正極活物質の断面を、SEMを用いて観察したところ、二次粒子の表面および結晶粒界に白色部位が確認された。EDSにより、この部位の、マンガン、ニッケル、タングステンの原子数の総和に対するタングステンの原子数は、85原子%であることが確認された。
【0212】
また、この正極活物質に対して、実施例1と同様にして、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)を測定したところ、BET比表面積(S)は0.18m
2/gであり、体積平均粒径(MV)は11.4μmであった。これらの結果から、BET比表面積(S)と体積平均粒径(MV)の積(S・MV)は、2.1×10
-6m
3/gと求められた。
【0213】
さらに、この正極活物質の結晶構造を、XRDを用いて測定すると、空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群が検出された。空間群Fd−3mのスピネル型の結晶構造のピーク群のうち、(311)面のピークの位置は、2θで36.45°であることが確認された。
【0214】
最後に、この正極活物質を用いて、実施例1と同様にして、コイン型電池1を作製し、その性能を評価したところ、初期放電容量は123mAh/gであり、そのうち4.6Vまでに得られた容量は100mAh/gであった。また、200サイクル後の容量維持率は80%であった。
【0215】
【表1】
【0216】
【表2】
【0217】
[評価]
表1および表2より、実施例1〜14の正極活物質は、二次粒子の表面や結晶粒界にタングステンまたはモリブデンの濃縮部が存在し、1000℃以下の温度で焼成したにも関わらず、比表面積が小さく、かつ、比較的、平均粒径が大きなものであることが確認される。また、このような正極活物質を用いた二次電池では、初期放電容量を125mAh/g以上、4.6Vまでに得られる容量を115mAh/g以上とすることができ、かつ、200サイクル後の容量維持率を75%以上とすることができることが確認される。