(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
磁性体を含有するトナーと現像スリーブと該現像スリーブ上の該トナーを帯電させるステンレススチール製のトナー層厚規制部材とを有する電子写真トナーカートリッジに用いられる静電荷像現像用トナーであって、前記磁性体は六面体形状を有し、且つ前記トナーは表面にハイドロタルサイト類化合物を有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
磁性体を含有するトナーと現像スリーブと該現像スリーブ上の該トナーを帯電させるトナー層厚規制部材とを有する電子写真トナーカートリッジであって、前記磁性体は六面体形状を有し、且つ前記トナーは表面にハイドロタルサイト類化合物を有し、且つ前記トナー層厚規制部材がステンレススチール製であることを特徴とする電子写真トナーカートリッジ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、以下<1.静電荷像現像用トナーの構成>にて詳述するように、磁性体を含有するトナーであって、該磁性体が六面体形状を有し、且つ該トナーの表面に下記式(1)で表されるハイドロタルサイト類化合物を有するものであり、<2.画像形成装置及び電子写真トナーカートリッジの構成>にて詳述するように、ステンレススチール製のトナー層厚規制部材を有する電子写真トナーカートリッジに用いることにより、本発明の効果を発揮する。
詳細は不明であるが、後述する実施例及び比較例から分かるように、これらの条件を全て満足した場合にのみ、本発明の効果が発揮されることが分かった。
【0012】
<1.静電荷像現像用トナーの構成>
(1−1.磁性体)
本発明においては、トナー中に含有される磁性体は形状として六面体形状を有する。六面体形状を有する磁性体を用いることにより、画像濃度やトナー量検知センサー感度の点で優れた効果を発揮することができる。
磁性体としては、例えば、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、これらとマンガン、クロム、希土類元素等との合金(例えば、ニッケル−鉄合金、コバルト−鉄合金、アルミニウム−鉄合金等)、及びフェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が用いられる。これらの中でも、特性が安定しており、かつ毒性が少ない点で有利である点で、マグネタイトが好ましい。
【0013】
磁性体の平均粒子径は、特に限定されないが、下限は、通常0.05μm以上であり、
好ましくは0.10um以上であり、より好ましくは0.15μm以上である。一方で、上限は、通常0.50μm以下であり、好ましくは0.45μm以下であり、より好ましくは0.40μm以下である。
磁性体のトナー粒子に対する含有量は、特に限定されないが、トナー粒子100質量部に対して、下限は、通常30質量部以上であり、好ましくは35質量部以上であり、より好ましくは40質量部以上である。一方で、上限は、通常130質量部以下であり、好ましくは120質量部以下であり、より好ましくは110質量部以下である。磁性体のトナー粒子に対する含有量が少なすぎると着色力が足りず画像濃度不足となったり、磁気力が不十分な為スリーブとの摩擦帯電が不十分となり紙かぶりを引き起こす原因となる場合があり、一方、多すぎると磁気力が強すぎる為スリーブからドラムへとトナーが現像されずに画像濃度不足となる場合がある。
【0014】
本発明においては、トナーは、本発明の効果を損なわない限りにおいて、六面体形状を有する磁性体以外にも磁性体を含有していてもよい。
その他の本発明で使用できる磁性体としては、公知の磁性体を用いることができる。具体的には、マグネタイト、マグヘマタイト、マグネタイトとマグヘマタイトの中間物や混合物、フェライト等の酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属、或いはこれらの金属と、アルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムの如き金属との合金及びその混合物が挙げられる。中でも、マグネタイト、マグヘマタイト、またはマグネタイトとマグヘマタイトの中間物が好ましい。
【0015】
(1−2.化合物粒子)
本発明では、トナーの表面にハイドロタルサイト類化合物を用いる。
本発明に用いられるハイドロタルサイト類化合物粒子としては、下記一般式(1)で示されるハイドロタルサイト類であれば特に限定はない。
M1
2+y1M2
2+y2…Mj
2+yjL1
3+x1L2
3+x2…Lk
3+xk(OH)
2 ・(X/n)A
n-・mH
2O(1)
式(1)中、0<〔X=(x1+x2+…+xk)〕≦0.5、Y=(y1+y2+…+yj)=1−Xであり、j及びkは1以上の整数、M1
2+,M2
2+,…及びMj
2+はそれぞれ異なる2価の金属イオン、L1
3+,L2
3+,…及びLk
3+はそれぞれ異なる3価の金属イオン、A
n-はn価のアニオンを示し、m≧0である。
すなわち、2価の金属が2種以上かつ3価の金属が1種以上の固溶体を用いる。また、アニオンは1種類でもよいし複数種有していても構わない。
【0016】
ハイドロタルサイト類化合物としては、より具体的には、下記一般式(2)で示される化合物である。
Mg
2+y1M2
2+y2…Mj
2+yjAl
3+x1L2
3+x2…Lk
3+xk(OH)
2 ・(X/n)A
n-・mH
2O(2)
式(2)中、0<〔X=(x1+x2+…+xk)〕≦0.5、Y=(y1+y2+…+yj)=1−X、j及びkは1以上の整数、M2,M3,…及びMjはZn、Ca、Ba、Ni、Sr,Cu及びFeからなる群より選ばれるそれぞれ異なる金属、L2,L3…及びLkはB、Ga、Fe、Co及びInからなる群より選ばれるそれぞれ異なる金属、A
n-はn価のアニオンを示し、m≧0である。
【0017】
又、ハイドロタルサイト類化合物は、Mg以外の2価金属としてZnを含有していることがより好ましい。
本発明に使用されるハイドロタルサイト類化合物のA
n-(n価のアニオン)としては、CO
3 2-、OH
- 、Cl
- 、I
- 、F
- 、Br
- 、SO
4 2- 、HCO
3 -、CH
3 CO
O
- 、NO
3 - が例示され、単独或いは複数種存在していても構わない。
【0018】
また、ハイドロタルサイト類化合物は、その分子内に水を有していることが好ましい。
本発明に使用されるハイドロタルサイト類の比表面積は、1〜50m
2 /g以上であることが好ましく、より好ましくは3〜20m
2 /gである。
比表面積はBET法に従って、比表面積測定装置オートソープ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出した。
【0019】
本発明に使用されるハイドロタルサイト類化合物は、必要に応じて表面処理剤によって疎水化処理を行なってもよい。表面処理剤としては、高級脂肪酸類、カップリング剤類、エステル類、シリコーンオイルの如きオイル類等が使用可能である。
中でも高級脂肪酸類が好ましく用いられ、具体的には、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸が例示される。
【0020】
ハイドロタルサイト類化合物のトナー粒子に対する添加量としては、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、トナー粒子100重量部に対して、下限は、通常0.01質量部以上であり、好ましくは0.02質量部以上であり、より好ましくは0.03質量部以上である。一方で、上限は、通常0.5質量部以下であり、好ましくは0.4質量部以下であり、より好ましくは0.3質量部以下である。添加量が0.01質量部未満となると画像濃度が不十分となる場合があり、また、0.5質量部を超えるとベタ追従性や現像スリーブ上のトナー層形成が不十分となる場合がある。
【0021】
(1−3.トナー粒子の製造方法)
トナー粒子の製造方法は特に限定されず、溶融混練粉砕法や懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法などの湿式法による製造方法などが挙げられる。
溶融混練粉砕法で製造する場合は、従来公知の方法に従って行うことができる。すなわち、結着樹脂、磁性粉ならびに荷電制御剤に、必要に応じて、ワックス(離型剤)、着色剤等を乾式混合した後、押出機等で溶融混練し、次いで粉砕、分級し、トナー粒子を得る方法である。具体的には、結着樹脂、着色剤と、必要に応じてその他成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等がある。
【0022】
次に、上記配合し、混合したトナー原料を溶融混練して、樹脂類を溶融し、その中に着色剤等を分散させる。その溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリミキサー、密閉式ニーダー又は一軸若しくは二軸の押出機等で溶融混練することができる。更に、トナー原料を溶融混練することによって得られる着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
【0023】
上記で得られた着色樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕され、更に、ジェットミル、高速ローター回転式ミル等で細粉砕し、風力分級機(例えば、慣性分級方式のエルボジェット、遠心力分級方式のミクロプレックス、DSセパレーターなど)等で分級しトナー粒子を得ることができる。
【0024】
懸濁重合法は、重合性単量体、重合開始剤、着色剤などを成分とする組成物を水系媒体中に懸濁分散した後に重合して粒子を製造し、それら粒子の洗浄乾燥等を行い、トナー粒子を得る方法である。
乳化重合凝集法は、重合開始剤及び乳化剤を含有する水性媒体中に重合性単量体を乳化
し、攪拌下に重合性単量体を重合して重合体一次粒子を得て、これに着色剤並びに必要に応じて帯電制御剤等を添加して重合体一次粒子を凝集させ、さらに得られた凝集粒子を熟成させ粒子を製造し、それら粒子の洗浄乾燥等を行い、トナー粒子を得る方法である。
溶解懸濁法は結着樹脂を有機溶剤に溶解し、着色剤などを添加分散して得られる溶液相を、分散剤等を含有した水相において機械的な剪断力で分散し液滴を形成し、液滴から有機溶剤を除去して粒子を製造し、それら粒子の洗浄乾燥等を行い、トナー粒子を得る方法である。
【0025】
上記方法で得たトナー粒子表面に上述したハイドロタルサイト類化合物の粒子やその他の外添剤を付着または固着させることによりトナーを得ることが出来る。外添剤を付着又は固着させる方法は特に限定はなく、一般にトナーの製造に用いられる混合機を使用することができる。具体的には、上記トナー粒子製造方法により得られたトナー粒子と外添剤を混合し、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、レディゲミキサー、Q−ミキサー等の混合機により均一に攪拌、混合することによりなされる。
【0026】
上述したハイドロタルサイト類化合物の粒子をトナー粒子に付着又は固着させる方法としては、前記のヘンシェルミキサー等の混合機を用いる方法以外に、外添剤をトナー表面に固着処理を行う方法もある。固着処理の方法としては、圧縮剪断応力を加えることの出来る装置(以下、圧縮剪断処理装置という)やトナー粒子表面を溶融または軟化することの出来る装置(以下、粒子表面溶融処理装置という)の利用等が挙げられる。この処理により上述したハイドロタルサイト類化合物の粒子がトナー粒子表面に強固に固着されるため、高温保存下での耐ブロッキング性が向上し、連続実写時にも複写機/プリンター部材への付着の起こりにくいトナーを製造することができる。
【0027】
<1−4.結着樹脂>
トナー粒子を構成する結着樹脂としては特に限定はないが、用いることができる決着樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル系共重合体樹脂、ビニル系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−アクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等を挙げることができる。これらの結着樹脂は単独あるいは複数を併用する形で用いてもよい。
更に、トナー粒子の機械的強度を高めるためにバインダー樹脂の合成時に架橋剤を用いることが可能である。
また、前結着樹脂は、揮発性不純物を極力含まないものを使用することが好ましい。
【0028】
<1−5.着色剤>
当該発明で使用される磁性体は着色剤の役割を兼ねることもできるが、必要に応じて公知の着色剤を併用することもできる。着色剤の具体的な例としては、カーボンブラック、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系染顔料など、公知の任意の染顔料を単独あるいは混合して用いることができる。
【0029】
このうち、黒色顔料としてカーボンブラックは、非常に微細な一次粒子の凝集体として存在し、顔料分散体として分散させたときに、再凝集による粒子の粗大化が発生しやすい。カーボンブラック粒子の再凝集の程度は、カーボンブラック中に含まれる不純物量(未分解有機物量の残留程度)の大小と相関が見られ、不純物が多いと分散後の再凝集による
粗大化が激しい傾向を示した。そして、不純物量の定量的な評価として、以下の方法で測定されるカーボンブラックのトルエン抽出物の紫外線吸光度が0.05以下であるのが好ましく、0.03以下であるのが一層好ましい。一般に、チャンネル法のカーボンブラックは不純物が多い傾向を示すので、本発明に用いられるカーボンブラックとしては、ファーネス法で製造されたものが好ましい。
【0030】
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、下限が、通常、30.1質量部以上であり、好ましくは0.3質量部以上であり、より好ましくは0.5質量部以上である。一方、上限は、通常、10質量部以下であり、好ましくは8質量部以下であり、より好ましくは5質量部以下である。
また、前記着色剤は、揮発性不純物を極力含まないものを使用することが好ましい。
【0031】
<1−6.ワックス(離型剤)>
トナーは、必要に応じてトナー中にワックスを含有していてもよい。ワックスとしては、公知のワックスを任意に使用することができるが、具体的には以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムの如き石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンの如きポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックス及びその誘導体(誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物が挙げられる)、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、シリコ−ンワックス。これらワックスは単独で又は2種以上を併せて用いることが可能である。
【0032】
ワックスを含有する場合の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、下限が、通常、0.5質量部以上であり、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは2質量部以上である。一方、上限は、通常、20質量部以下であり、好ましくは15質量部以下であり、より好ましくは10質量部以下である。トナー中のワックス含有量が少なすぎる場合は、耐オフセット性が不十分となる場合があり、多すぎる場合は、耐ブロッキング性が不十分であったり、ワックスがトナーから漏出することにより装置を汚染したりする場合がある。
【0033】
<1−7.帯電制御剤>
本発明のトナーは、トナーへの帯電性付与の観点から、帯電制御剤あるいは帯電制御樹脂を含有してもよい。帯電制御剤としては、アジン系化合物(ニグロシン)、4級アンモニウム塩系化合物、2:1型含金属錯体(クロム錯体)、モノアゾ含金錯体化合物、樹脂による帯電制御剤等が挙げられ、帯電制御剤としては、公知のものを適宜選択して用いられる。
【0034】
<1−8.外添剤>
本発明では、トナーの流動性と帯電性を維持する観点から、トナー表面にシリカ粒子が外添されていてもよい。本発明の効果を著しく損なわない限り、シリカ粒子は特に限定されないが、環境安定性の観点から、表面に疎水化処理が施されているシリカ粒子が好ましい。疎水化処理剤および処理方法は特に限定されず、それぞれ公知のものが用いられるが、より高い疎水性が付与できることから、シリコーン化合物又はシリコーン系の処理剤にて処理され、例えばヘキサメチルジシラザン、ジメチルポリシロキサン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリエトキシシラン、オクチルシラン、等が挙げられる。より高い疎水性が付与できることから、ヘキサメチルジシラザン及びジメチルポリシロキサンが好ましく、特にジメチルポリシロキサンが好ましい。
【0035】
前記シリカ粒子の平均粒子径は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されないが、下限が、通常、5nm以上であり、好ましくは10nm以上である。一方、上限が、通常、200nm以下であり、好ましくは50nm以下である。
前記シリカ粒子の添加量は、特に限定されないが、トナー母粒子100質量部に対して、下限は、通常0.1質量部以上であり、好ましくは0.3質量部以上であり、より好ましくは0.5質量部以上である。一方、上限は、通常3.0質量部以下であり、好ましくは2.5質量部以下であり、より好ましくは2.0質量部以下である。
【0036】
本発明では、フィルミング防止や外添剤の埋没防止の観点から、ワックス粒子として、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸金属塩及びラウロイルリシン等の高級脂肪酸アミノ酸エステルをトナー表面に外添してもよい。また、必要に応じて、ポリエチレンワックス粒子、ポリプロピレンワックス粒子、パラフィンワックス粒子等の炭化水素系ワックス粒子やエステルワックスを外添してもよい。
本発明においては、トナーの流動性向上や帯電制御性向上のために、必要により上述したハイドロタルサイト類化合物や上記シリカ粒子やワックス粒子以外の外添剤を添加することができる。そのような外添微粒子としては、公知の各種無機または有機微粒子の中から適宜選択して使用することができる。
【0037】
<2.現像装置及び電子写真カートリッジの構成>
現像装置及び電子写真トナーカートリッジの実施の形態について、装置の要部構成を
図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
本発明においては、現像装置または電子写真カートリッジのいずれかに、現像スリーブ上のトナーを帯電させ且つトナー層厚を制御するトナー層厚規制部材を有し、該トナー層厚規制部材はステンレススチール製である。本発明の効果をより発揮する観点から、前記トナー層厚規制部材はシリコンゴムで被覆されていることが好ましい。
【0038】
<2−1.現像装置>
まず、本発明に用いられるジャンピング現像装置の一実施態様を
図1に基づいて説明する。
図1は本発明に用いられる現像装置の構成断面図である。
図1において1は矢印A方向に回転する潜像形成媒体としての感光ドラムであり、該感光ドラム1としては、通常アルミニウム等の導電性支持体上に感光層を設けてなるものが使用でき、適宜の方法により、静電潜像(あるいは電位潜像)を形成保持させる。感光ドラムの導電性支持体と感光層との間には、必要に応じて中間層(ブロッキング層)を設けることもできる。
【0039】
上記感光ドラム1には現像装置が対向配設されており、該現像装置は、現像剤供給容器(以下、単に容器と記す)2と、現像剤担持体としての現像スリーブ3と、現像剤規制手段たるトナー層厚規制部材4と、現像剤供給手段たる供給ローラ5とを備えている。
容器2は現像装置の長手方向(紙面に直角な方向)に延在する開口部を有し、該開口部には上記現像スリーブ3が配設されている。該現像スリーブ3は、SUS、アルミニウム等の非磁性材料製で、後述する如くの表面を有している。また、該現像スリーブ3は、上記開口部に右略半周面を容器2内へ突入させ、左略半周面を容器2外へ露出させて回転自在に軸支して横設してあり、矢印B方向に回転駆動される。そして、この現像スリーブ3の容器外露出面は、感光ドラム1の表面に僅少な隙間を存して対面しており、担持搬送したトナー6により感光ドラム1上の静電潜像を現像するようになっている。なお、本実施形態においては、上記現像スリーブ3として具現化される現像剤担持体は、円筒体(スリーブ)に限らず、回転駆動される無端ベルト形態等にしても良く、ゴムローラを用いても良い。
【0040】
また、上記現像スリーブ3の後方には、供給ローラ5が上記現像スリーブ3の容器2内突入面に摺接回転するように配設されている。上記供給ローラ5は上記現像スリーブ3と同方向(図中矢印C)に回転してトナー6を該現像スリーブ3へと供給すると共に該現像スリーブ3上のトナーを剥離する。
さらに、上記供給ローラ5と上記現像スリーブ3との最近接部よりも該現像スリーブ3の回転方向下流側には、トナー層厚規制部材4が上記現像スリーブ3に当接配設されており、該当接部において上記現像スリーブ3上のトナー6の通過を規制している。従って、供給ローラ5の回転により現像スリーブ3近傍に供給された非磁性のトナー6は、現像スリーブ3の回転によってトナー層厚規制部材4と現像スリーブ3との当接部に進入し、現像スリーブ3表面上に担持される。
【0041】
そして、非磁性のトナー6は、トナー層厚規制部材4と現像スリーブ3との当接部を通過するときに、現像スリーブ3表面とトナー層厚規制部材4によって摺接され、摩擦帯電を受ける。このようにして摩擦帯電を受けたトナー6は、上記当接部を通過して現像スリーブ3上のトナー薄層として形成され、現像スリーブ3上を感光ドラム1と対向する現像部へ運ばれる。
【0042】
現像部においては、一部のトナーが現像動作により消費され、他のトナーは現像スリーブ3の下部より回収される。この回収部分にはシール部材9が設けられ、現像で消費されなかったトナーの容器2内への通過を許容すると共に、容器2内のトナー6が容器2の下部から漏出することを防止する。また、回収された現像スリーブ3上のトナーは、供給ローラ5と現像スリーブ3との最近接部において剥離されると同時に、現像スリーブ3上には新たなトナーが供給され再びトナー層厚規制部材4と現像スリーブ3の当接部で、トリボ付与及び薄層化され現像部へと搬送されて行く。
【0043】
本発明に用いられる現像装置において、トナーは現像スリーブ3に接触するトナー層厚規制部材4により薄層を形成されるがこのとき受けるストレスに十分耐えうることが必要である。また、供給ローラ5と現像スリーブ3は、接触している場合と、接触していない場合とがある。供給ローラ5と現像スリーブ3が接触している場合、トナーは大きなストレスを受けることになるので、ストレスに強いトナーを用いる必要がある。一方、供給ローラ5と現像スリーブ3が接触していない場合、トナーの性質としては耐ストレス性よりも現像スリーブへの供給性能を上げるため、流動性を上げ劣化を防ぐことが必要となる。
【0044】
現像スリーブ3は、アルミニウム、ステンレススチール等の非磁性金属で作られた円筒状の基体上にニッケルや亜鉛などの被覆処理を施したものである。本発明においては、本発明の効果を顕著に発揮する観点から、通常の被覆処理に加えて、さらにモリブデンを主成分とする非焼失皮膜処理も施されていることが好ましく、モリブデン亜鉛メッキが施されていることがより好ましい。
【0045】
トナー層厚規制部材4は、シリコン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレススチール、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅などの金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されるが、本発明においては、ステンレススチール製であることを必須とする。このトナー層厚規制部材4は、現像スリーブ3に当接し、ばね等によって現像スリーブ3側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。また、このトナー層厚規制部材4は、トナー6との摩擦帯電によるトナー6への帯電付与を良好にする観点から、シリコンゴムを被覆させることが好ましい。
【0046】
<2−2.電子写真トナーカートリッジ>
本発明に用いられる電子写真トナーカートリッジは、本発明の磁性体を含有するトナー
と現像スリーブと該現像スリーブ上の該トナーを帯電させるトナー層厚規制部材とを有していれば特に限定はなく、公知の構成を適宜選択して用いればよい。現像スリーブ及びトナー層厚規制部材については、<2−1.現像装置>で記載した内容に準じればよい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下の例で「部」とあるのは「質量部」を意味する。
【0048】
<印字評価>
評価装置には、市販の磁性一成分現像方式を採用したプリンターNEC製プリンター「MultiWriter 8500N」を用いた。トナー層厚規制部材としてはシリコンゴム被覆したステンレススチール製のブレードを用い、現像スリーブとしてはモリブデン亜鉛メッキを施したアルミニウム基体を用いた。
上記プリンターを温度23℃、相対湿度50%の雰囲気に設置し、トナー640gを実装して印字率5%で14、000枚の連続印刷を行った。
印字試験には標準紙(明度 92 、紙厚 70g/m
2、サイズ A4)を用いた。
【0049】
<画像濃度評価>
印字物上の画像濃度はマクベス社のマクベス濃度計RD914を用いて測定した。初期印刷時、と2、000枚毎印刷時の画像濃度をマクベス濃度計にて測定し、印刷濃度が1.2未満を×、印刷濃度が1.2以上1.4未満を△、印刷濃度が1.4以上を○と判定した。
【0050】
<紙かぶり評価>
印字物上の紙かぶりは、印刷前後の標準紙の白度を日本電色製SE-6000(標準光/視野
角:C/2、UV cut filter 420nm装着あり)を用いて測定し、その差を計算して紙かぶ
りとした。初期印刷時及び2,000枚毎印刷時、各々の紙かぶりについて、0.8未満
を○、0.8以上1.5未満を△、1.5以上を×と判定した。
【0051】
<ベタ追従性評価>
また、初期印刷時、2,000枚毎印刷時には印字面が印字率100%で印刷される画像パターンをとり、トナーの追従性を確認した。全面がトナーでしっかり覆われており、紙の印字方向を基準にした紙の先端部と後端部の画像濃度差がみられないものを○、先端部はトナーで覆われているが、後端部はやや画像濃度が低くなっており、先端部と後端部で画像濃度の違いが目視でかろうじてわかるものを△、先端部と後端部の画像濃度差が目視で明らかに違うものを×とした。
【0052】
<トナー層形成不良評価>
また、初期印刷時、2,000枚毎印刷時には印字面が印字率100%で印刷される画像パターンをとり、現像スリーブ上のトナー層形成の状態と、印字サンプルの両方を比較することでトナー層形成不良を確認した。現像スリーブ上のトナー層が均一に形成され、印字サンプルは全面がトナーでしっかり覆われており、画像濃度が均一で差がみられないものを○、現像スリーブ上のトナー層形成に波状のムラが目視でやや観察されるものの、印字サンプルは全面がトナーでしっかり覆われており、画像濃度が均一で差がみられないものを△、現像スリーブ上のトナー層形成に波状のムラが目視ではっきりとわかり、印字サンプル上にも画像濃度に波状のむらがあるものを×とした。
【0053】
<実施例1>
以下に示す配合比により負帯電性磁性一成分用トナーを作製した。
・ スチレン−アクリル系樹脂A 70部(軟化点温度:155℃、ガラス転移点温度:53℃、主成分:スチレン/ブチルアクリレート)
・ スチレン−アクリル系樹脂B 30部(軟化点温度:139℃、ガラス転移点温度:56℃、主成分:スチレン/ブチルアクリレート)
・ 帯電制御剤(オリエント化学工業社製 S34) 1部
・ 磁性粉A(六面体マグネタイト BET:7.5m
2/g、Hc:93.5Oe、σs:85Am
2/kg、σr:9Am
2/kg)95部
・ エステルワックス(日油社製 WEP5) 6部
上記の原材料を高速ミキサーで混合し、二軸押出機で溶融混練した後、ハンマーミルで粗粉砕し、機械式粉砕機で微粉砕した後、分級して体積平均粒径9μmのトナー粒子Aを得た。
【0054】
以下の配合比により外添剤を高速ミキサーで混合し現像剤Aを得た。
・ トナー粒子A 100部
・ 疎水性シリカA(日本アエロジル社製 RY200L) 1.2部
・ ステアリン酸亜鉛微粒子A(D50:6.0um、16um以下重量%:1.0%以下
、) 0.06部
・ ハイドロタルサイト微粒子A(構造式:Mg
3ZnAl
2(OH)
12CO
3・mH
2O、比表面積:6.5m
2/g、平均粒子径0.66um) 0.1部
【0055】
<実施例2>
実施例1と同様の配合比により負帯電性磁性一成分用トナー粒子を得たのち、以下の配合比により外添剤を高速ミキサーで混合し現像剤Bを得た。
・ トナー粒子 100部
・ 疎水性シリカA 1.2部
・ ステアリン酸亜鉛微粒子A 0.06部
・ ハイドロタルサイト微粒子A 0.06部
【0056】
<比較例1>
実施例1と同様の配合比により負帯電性磁性一成分用トナー粒子を得たのち、以下の配合比により外添剤を高速ミキサーで混合し現像剤Cを得た。
・ トナー粒子 100部
・ 疎水性シリカA 1.2部
・ ステアリン酸亜鉛微粒子A 0.06部
【0057】
<比較例2>
実施例1の磁性粉を磁性粉Bにする事以外は実施例1と同様にトナーを作成し、体積平均粒径8.5μmのトナー粒子Bを得た。
・ 磁性粉B(球形マグネタイト BET:8.1m
2/g、Hc:90Oe、σs:86Am
2/kg、σr:9Am
2/kg)
トナー粒子Bに実施例1と同様の外添を施し現像剤Dを得た。
【0058】
<比較例3>
実施例1の磁性粉を磁性粉Cにする事以外は実施例1と同様にトナーを作成し、体積平均粒径8.5μmのトナー粒子Cを得た。
・ 磁性粉C(八面体マグネタイト BET:5.3m
2/g、Hc:118Oe、σs:83Am
2/kg、σr:10Am
2/kg)
トナー粒子Cに実施例1と同様の外添を施し現像剤Eを得た。
以下に実施例1,2及び比較例1,2,3にて製造したトナーについて、上記評価項目について評価を行った結果を表−1に示す。
【0059】
【表1】