(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の正の誘電率異方性を有する液晶組成物は、誘電的に正の成分である成分(A)を含有する。さらに、成分(A)は式(1)
【0019】
で表される化合物を含有する。本発明の液晶組成物において、成分(A)を構成する式(1)で表される化合物の含有量は、本発明の液晶組成物の総量に対して2質量%以上であることが好ましく、5質量%がより好ましく、9質量%以上が更に好ましく、15質量%以上がまた更に好ましく、25質量%以上が特に好ましい。
【0020】
本発明の液晶組成物は、誘電的に正の成分(A)の中に、式(4.1)または(4.2)
【0023】
で表される化合物群から選ばれる化合物を含有することができる。成分(A)はこれらの化合物のうち1種類だけを含有していても2種類含有していても良いが、求められる性能に応じて適宜組み合わせることが好ましい。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、これらの化合物の中から1種〜2種含有することが好ましい。その含有量は本発明の液晶組成物の総量に対して3質量%以上であることが好ましく、6質量%であることがより好ましく、13質量%であることが更に好ましく20質量%であることが更に好ましく、26質量%であることが特に好ましい。
【0024】
本発明の液晶組成物は、また、誘電的に正の成分(A)の中に、式(6.1)から(6.4)
【0029】
で表される化合物群から選ばれる化合物を含有することもできる。成分(A)はこれらの化合物のうち1種類だけを含有していても2種類以上含有していても良いが、求められる性能に応じて適宜組み合わせることが好ましい。複屈折率が小さいものや粘性が小さいものが求められれば、式(6.1)または(6.2)で表される化合物を含有する組み合わせを選べばよく、Tniが高いことが求められれば、式(6.3)または(6.4)で表される化合物を含有する組み合わせを選べばよい。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、これらの化合物の中から1種〜4種含有することが好ましく、1種〜3種含有することがさらに好ましい。その含有量は本発明の液晶組成物の総量に対して2質量%以上であることが好ましく、6質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく14質量%以上であることが更に好ましく、18質量%以上であることが更に好ましく、21質量%以上であることが特に好ましい。
【0030】
本発明の液晶組成物は、更に、誘電的に正の成分(A)の中に、式(7.1)から(7.3)
【0034】
で表される化合物群から選ばれる化合物を含有することもできる。これらの化合物は末端のアルキル基構造または環構造の数によって分子量が異なるため、液晶組成物の粘度やTniの変化を期待して適宜含有量の調整を行う。例えば、式-(7.3)で表される化合物は分子量が大きいためTniを高める目的に有効であるが、大きな分子量がゆえに粘度も大きくなってしまう。そのため、正の成分(A)が、式- (7.3)で表される化合物を本発明の液晶組成物の総量に対して0.5質量%以上かつ15質量%未満含有することが好ましく、0.5質量%以上かつ11質量%未満含有することがさらに好ましい。また、正の成分(A)は、式(7.1)または(7.2)で表される化合物を本発明の液晶組成物の総量に対して0.5質量%以上20%未満含有することが好ましく、0.5質量%以上14質量%未満含有することが更に好ましく、0.5質量%以上10質量%未満含有することが更に好ましく、0.5質量%以上かつ8質量%未満含有することが特に好ましい。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、これらの化合物の中から1種〜3種含有することが好ましく、1種〜2種含有することが更に好ましい。
【0035】
本発明の液晶組成物は、更に、誘電的に正の成分(A)の中に、式(11.1)から(11.7)
【0037】
で表される化合物群から選ばれる化合物を含有することもできる。式(11.1)から(11.4)で表される化合物は大きな誘電率異方性(Δε)かつ低い複屈折率の液晶組成物を得るのに有用であり、式(11.5)から(11.7)で表される化合物は上記に加えて高いTniの液晶組成物を得るのに有用である。したがって、要求される複屈折率やTniを考慮して適宜組み合わせて使用するのが良い。成分(A)が、式(11.1)から(11.7)で表される化合物を本発明の液晶組成物の総量に対して5質量%以上含有することが好ましく、6質量%以上含有するとさらに好ましく、9質量%以上含有するとより好ましく、10質量%以上含有するといっそう好ましく、13質量%以上含有すると特に好ましい。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、これらの化合物の中から1種〜5種含有することが好ましく、1種〜4種含有することが更に好ましく、1種〜3種含有することが特に好ましい。
【0038】
本発明の液晶組成物は、更に、誘電的に正の成分(A)の中に、式(13.1)から(13.4)
【0040】
で表される化合物群から選ばれる化合物を含有することもできる。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、これらの化合物の中から1種〜4種含有することが好ましく、1種〜3種含有することが更に好ましい。また、成分(A)が、式(13.1)から(13.4)で表される化合物を本発明の液晶組成物の総量に対して5質量%以上かつ30質量%未満含有することが好ましく、11質量%以上28質量%未満含有することがさらに好ましく、15質量%以上かつ27質量%未満含有することが特に好ましい。
【0041】
本発明の液晶組成物は、更に、誘電的に正の成分(A)の中に、式(14.1)または(14.2)
【0043】
で表される化合物群から選ばれる化合物を含有することもできる。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、溶解度やTniを考慮して、これらの化合物の中から1種〜2種含有することが好ましい。成分(A)が、式(14.1)または(14.2)で表される化合物からなる群より選ばれる化合物を本発明の液晶組成物の総量に対して7質量%以上含有することが好ましく、9質量%以上含有することが更に好ましく、17質量%以上含有することが更に好ましい。
【0044】
本発明の液晶組成物は、更に、誘電的に正の成分(A)の中に、式(15.1)から(15.3)
【0046】
で表される化合物群から選ばれる化合物を含有することもできる。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、求められる性能に合わせて適宜組み合わせて使用することが好ましい。また、成分(A)が、式(15.1)から(15.3)で表される化合物から選ばれる1種類の化合物を含有する場合は、その含有量が10質量%以上であることが好ましく、式(15.1)から(15.3)で表される化合物から選ばれる2種類の化合物を含有する場合は、それらの含有量の合計が21質量%以上であることが好ましく、式(15.1)から(15.3)で表される化合物から選ばれる3種類の化合物を含有する場合は、それらの含有量の合計が24質量%以上であることが好ましい。
【0047】
本発明の液晶組成物は、更に、誘電的に正の成分(A)の中に、(式-18.1)から(式-18.5)
【0049】
で表される化合物群から選ばれる化合物を含有することもできる。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、これらの化合物の中から1種〜4種含有することが好ましく、1種〜3種含有することが更に好ましい。さらに、成分(A)はこれらの化合物を本発明の液晶組成物の総量に対して3質量%以上含有することが好ましく、特に式(18.2)から(18.5)で表される化合物を11質量%以上含有することが更に好ましく、かつ式(18.1)であらわされる化合物は0.5質量%以上5質量%未満含有することが更に好ましい。
【0050】
本発明の液晶組成物は、更に、誘電的に正の成分(A)の中に、式-(19.1)から(19.5)
【0052】
で表される化合物群から選ばれる化合物を含有することもできる。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、これらの化合物の中から1種〜4種含有することが好ましく、1種〜3種含有することが更に好ましい。また、成分(A)が、式- (19.2)から(19.5)で表される化合物からなる群より選ばれる化合物を本発明の液晶組成物の総量に対して6質量%以上含有することが好ましく、8質量%以上含有することが更に好ましい。さらに、成分(A)が、式- (19.5)で表される化合物を本発明の液晶組成物の総量に対して0.5質量%以上かつ4質量未満である含有することが好ましい。
【0053】
本発明の液晶組成物は、更に、誘電的に正の成分(A)の中に、式(20.1)から(20.3)
【0055】
で表される化合物群から選ばれる化合物を含有することもできる。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、これらの化合物の中から1種〜3種含有することが好ましい。また、成分(A)が、本発明の液晶組成物の総量に対して6質量%以上含有することが好ましく、10質量%以上含有することが更に好ましい。
【0056】
本発明の液晶組成物は、誘電的に中性な成分である成分(B)を含有する。さらに、成分(B)は式(2.1)または(2.2)
【0059】
で表される化合物を含有する。本発明の液晶組成物において、成分(B)を構成する式(2.2)で表される化合物の含有量は、本発明の液晶組成物の総量に対して10質量%であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、成分(B)が式(2.1)および(2.2)で表される化合物の両方を含有する場合は、それらの合計含有量が15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、25質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。
【0060】
本発明の液晶組成物は、誘電的に中性な成分(B)の中に、式(3.1)から(3.5)
【0066】
で表される化合物群から選ばれる化合物を含有することもできる。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、これらの化合物の中から1種〜4種含有することが好ましく、1種〜3種含有することが更に好ましく、1種〜2種含有することが特に好ましい。成分(B)を構成する式(3.1)から(3.5)で表される化合物の含有量は、本発明の液晶組成物の総量に対して19質量%であることが好ましく、21質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることが更に好ましく、56質量%以上であることが更に好ましく、61質量%以上であることが特に好ましい。
【0067】
本発明の液晶組成物は、誘電的に中性な成分(B)の中に、式(5.1)から(5.4)
【0072】
(式中、R
1、R
2はそれぞれ独立して炭素原子数1から10の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を表す。)
で表される化合物群から選ばれる化合物を含有することもできる。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、これらの化合物の中から1種〜4種含有することが好ましく、1種〜3種含有することが更に好ましく、1種〜2種含有することが特に好ましい。成分(B)を構成する式(5.1)から(5.4)で表される化合物の含有量は、本発明の液晶組成物の総量に対して6質量%であることが好ましく、14質量%以上であることがより好ましく、19質量%以上であることが更に好ましく、25質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。
式(5.1)で表される化合物は、具体的には次に挙げる化合物が好適に使用できる。
【0077】
本発明の液晶組成物は、更に、誘電的に中性な成分(B)の中に、式(8.1)から(8.4)
【0079】
で表される化合物群から選ばれる化合物を含有することもできる。成分(B)は、これらの化合物のうち1種類だけを含有していても2種類以上含有していても良いが、求められる屈折率異方性や室温および氷点下における溶解性に応じて適宜組み合わせることが好ましい。溶解性は、化合物両端のアルキル基の構造に影響を受けるため注意を要する。例えば、中性な成分(B)が、式(8.1)または(8.2)で表される化合物を本発明の液晶組成物の総量に対して12質量%以上含有することが好ましく、または中性な成分(B)が、式(8.3)から(8.4)で表される化合物からなる群より選ばれる化合物を本発明の液晶組成物の総量に対して7質量%以上かつ15質量%未満含有することが好ましく、11質量%以上かつ14質量%未満含有することが更に好ましい。
溶解性は、化合物両端のアルキル基の構造に影響を受けるため注意を要する。選ぶ化合物の分子量分布が広いことも溶解性に有効であるため、例えば、式(8.1)または(8.2)で表される化合物から1種類、式(8.3)または(8.4)で表される化合物から1種類の化合物を選び、これらを適宜組み合わせることが好ましい。
【0080】
本発明の液晶組成物は、更に、誘電的に中性な成分(B)の中に、式(9.1)から(9.5)
【0082】
で表される化合物群から選ばれる化合物を含有することもできる。成分(B)は、これらの化合物のうち1種類だけを含有していても2種類以上含有していても良いが、求められる屈折率異方性や室温および氷点下における溶解性に応じて適宜組み合わせることが好ましい。これらの化合物の中から1種〜5種含有することが好ましく、1種〜4種含有することがさらに好ましく、1種〜3種含有することが特に好ましい。中性な成分(B)が、式(9.4)または(9.5)で表される化合物を本発明の液晶組成物の総量に対して0.5質量%以上かつ5質量%未満含有することが好ましく、または中性な成分(B)が、式(9.1)から(9.3)で表される化合物からなる群より選ばれる化合物を本発明の液晶組成物の総量に対して7質量%以上かつ15質量%未満含有することが好ましく、11質量%以上かつ14質量%未満含有することが更に好ましい。
【0083】
溶解性は、化合物両端のアルキル基の構造に影響を受けるため注意を要する。選ぶ化合物の分子量分布が広いことも溶解性に有効であるため、例えば、式(9.4)または(9.5)で表される化合物から1種類、式(9.2)または(9.3)で表される化合物から1種類の化合物を選び、これらを適宜組み合わせることが好ましい。
本願発明の液晶組成物は、更に、誘電的に中性な成分(B)の中に、式(10.1)から(10.3)
【0085】
で表される化合物を含有することもできる。成分(B)は、この化合物を本発明の液晶組成物の総量に対して4質量%以上含有することが好ましく、7質量%以上含有することがさらに好ましく、10質量%以上含有することが特に好ましい。
【0086】
本願発明の液晶組成物は、更に、誘電的に中性な成分(B)の中に、式(12.1)から(12.2)
【0088】
で表される化合物群から選ばれる化合物を含有することもできる。本発明の液晶組成物の総量に対して4質量%以上含有することが好ましく、6質量%以上かつ10質量%未満含有することが好ましい。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、これらの化合物の中から1種〜2種含有することが好ましい。
【0089】
本願発明の液晶組成物は、更に、誘電的に中性な成分(B)の中に、式(16.1)から(16.3)
【0091】
(式中、R
1、R
2はそれぞれ独立して炭素原子数1から10の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を表す。)で表される化合物群から選ばれる化合物を含有することができる。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、屈折率異方性やTniを考慮して、これらの化合物の中から1種〜4種含有することが好ましく、1種〜3種含有することが更に好ましい。成分(B)が、式- (16.1)から (16.3) で表される化合物からなる群より選ばれる化合物を本発明の液晶組成物の総量に対して7重量%以上含有することが好ましく、11重量%以上含有することが更に好ましく、17重量%以上含有することが更に好ましい。
式-(16.1)で表される化合物は、具体的には次に挙げる化合物が好適に使用できる。
【0093】
本願発明の液晶組成物は、更に、誘電的に中性な成分(B)の中に、式(17.1)または(17.2)
【0095】
で表される化合物群から選ばれる化合物を含有することもできる。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、1種類または2種類組み合わせることが好ましい。さらに、求められる溶解性などを考慮して、本発明の液晶組成物の総量に対して6質量%以上含有することが好ましい。
本願発明の液晶組成物は、更に、誘電的に中性な成分(B)の中に、式(21.1)から(21.3)
【0097】
で表される化合物群から選ばれる化合物を含有することもできる。組み合わせることができる化合物の種類に特に制限は無いが、Tni、溶解度、Δnを考慮して適宜組み合わせて使用することが好ましい。特に、1種または2〜3種の化合物を組み合わせて使用することが好ましい。
本発明の液晶組成物は、成分(A)を73質量%以上含有するもの、あるいは、成分(B)を81質量%以上含有する場合も好適に利用される。
本発明の液晶組成物は、25℃におけるΔεが+3.5以上であるが、+3.5から+20.0がより好ましく、+3.5から+15.0が更に好ましい。25℃におけるΔnが0.08から0.14であるが、0.09から0.13がより好ましい。更に詳述すると、薄いセルギャップに対応する場合は0.10から0.13であることが好ましく、厚いセルギャップに対応する場合は0.08から0.10であることが好ましい。20℃におけるηが10から45mPa・sであるが、10から25mPa・sであることがより好ましく、10から20mPa・sであることが特に好ましい。Tniが60℃から120℃であるが、70℃から110℃がより好ましく、75℃から90℃が特に好ましい。
【0098】
本発明の液晶組成物は、上述の化合物以外に、通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶などを含有してもよい。
【0099】
本発明の液晶組成物には、PSモードなどの液晶表示素子を作製するために、重合性化合物を含有することができる。使用できる重合性化合物として、光などのエネルギー線により重合が進行する光重合性モノマーなどが挙げられ、構造として、例えば、ビフェニル誘導体、ターフェニル誘導体などの六員環が複数連結した液晶骨格を有する重合性化合物などが挙げられる。更に具体的には、一般式(V)
【0101】
(式中、X51及びX52はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、
Sp1及びSp2はそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜8のアルキレン基又は−O−(CH2)s−(式中、sは2から7の整数を表し、酸素原子は芳香環に結合するものとする。)を表し、
Z51は−OCH2−、−CH2O−、−COO−、−OCO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH2CH2−、−CF2CF2−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CH2CH2−、−OCO−CH2CH2−、−CH2CH2−COO−、−CH2CH2−OCO−、−COO−CH2−、−OCO−CH2−、−CH2−COO−、−CH2−OCO−、−CY1=CY2−(式中、Y1及びY2はそれぞれ独立して、フッ素原子又は水素原子を表す。)、−C≡C−又は単結合を表し、
M51は1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基又は単結合を表し、式中の全ての1,4−フェニレン基は、任意の水素原子がフッ素原子により置換されていても良い。)で表される二官能モノマーが好ましい。
【0102】
X51及びX52は、何れも水素原子を表すジアクリレート誘導体、何れもメチル基を有するジメタクリレート誘導体の何れも好ましく、一方が水素原子を表しもう一方がメチル基を表す化合物も好ましい。これらの化合物の重合速度は、ジアクリレート誘導体が最も早く、ジメタクリレート誘導体が遅く、非対称化合物がその中間であり、その用途により好ましい態様を用いることができる。PSA表示素子においては、ジメタクリレート誘導体が特に好ましい。
【0103】
Sp1及びSp2はそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜8のアルキレン基又は−O−(CH2)s−を表すが、PSA表示素子においては少なくとも一方が単結合であることが好ましく、共に単結合を表す化合物又は一方が単結合でもう一方が炭素原子数1〜8のアルキレン基又は−O−(CH2)s−を表す態様が好ましい。この場合1〜4のアルキル基が好ましく、sは1〜4が好ましい。
【0104】
Z51は、−OCH2−、−CH2O−、−COO−、−OCO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH2CH2−、−CF2CF2−又は単結合が好ましく、−COO−、−OCO−又は単結合がより好ましく、単結合が特に好ましい。
【0105】
M51は任意の水素原子がフッ素原子により置換されていても良い1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基又は単結合を表すが、1,4−フェニレン基又は単結合が好ましい。Cが単結合以外の環構造を表す場合、Z51は単結合以外の連結基も好ましく、M51が単結合の場合、Z51は単結合が好ましい。
【0106】
これらの点から、一般式(V)において、Sp1及びSp2の間の環構造は、具体的には次に記載する構造が好ましい。
【0107】
一般式(V)において、M51が単結合を表し、環構造が二つの環で形成される場合において、次の式(Va-1)から式(Va-5)を表すことが好ましく、式(Va-1)から式(Va-3)を表すことがより好ましく、式(Va-1)を表すことが特に好ましい。
【0109】
(式中、両端はSp1又はSp2に結合するものとする。)
これらの骨格を含む重合性化合物は重合後の配向規制力がPSA型液晶表示素子に最適であり、良好な配向状態が得られることから、表示ムラが抑制されるか、又は、全く発生しない。
【0110】
以上のことから、重合性モノマーとしては、一般式(V-1)〜一般式(V-4)が特に好ましく、中でも一般式(V-2)が最も好ましい。
【0112】
(式中、Sp2は炭素原子数2から5のアルキレン基を表す。)
本発明の液晶組成物にモノマーを添加する場合において、重合開始剤が存在しない場合でも重合は進行するが、重合を促進するために重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、アシルフォスフィンオキサイド類等が挙げられる。
【0113】
本発明の重合性化合物を含有した液晶組成物は、これに含まれる重合性化合物が紫外線照射により重合することで液晶配向能が付与され、液晶組成物の複屈折を利用して光の透過光量を制御する液晶表示素子に使用される。液晶表示素子として、AM−LCD(アクティブマトリックス液晶表示素子)、TN(ネマチック液晶表示素子)、STN−LCD(超ねじれネマチック液晶表示素子)及びOCB−LCDに有用であるが、AM−LCDに特に有用であり、透過型あるいは反射型の液晶表示素子に用いることができる。
【0114】
液晶表示素子に使用される液晶セルの2枚の基板はガラス又はプラスチックの如き柔軟性をもつ透明な材料を用いることができ、一方はシリコン等の不透明な材料でも良い。透明電極層を有する透明基板は、例えば、ガラス板等の透明基板上にインジウムスズオキシド(ITO)をスパッタリングすることにより得ることができる。
【0115】
カラーフィルターは、例えば、顔料分散法、印刷法、電着法又は、染色法等によって作成することができる。顔料分散法によるカラーフィルターの作成方法を一例に説明すると、カラーフィルター用の硬化性着色組成物を、該透明基板上に塗布し、パターニング処理を施し、そして加熱又は光照射により硬化させる。この工程を、赤、緑、青の3色についてそれぞれ行うことで、カラーフィルター用の画素部を作成することができる。その他、該基板上に、TFT、薄膜ダイオード、金属絶縁体金属比抵抗素子等の能動素子を設けた画素電極を設置してもよい。
【0116】
前記基板を、透明電極層が内側となるように対向させる。その際、スペーサーを介して、基板の間隔を調整してもよい。このときは、得られる調光層の厚さが1〜100μmとなるように調整するのが好ましい。1.5から10μmが更に好ましく、偏光板を使用する場合は、コントラストが最大になるように液晶の屈折率異方性Δnとセル厚dとの積を調整することが好ましい。又、二枚の偏光板がある場合は、各偏光板の偏光軸を調整して視野角やコントラトが良好になるように調整することもできる。更に、視野角を広げるための位相差フィルムも使用することもできる。スペーサーとしては、例えば、ガラス粒子、プラスチック粒子、アルミナ粒子、フォトレジスト材料などからなる柱状スペーサー等が挙げられる。その後、エポキシ系熱硬化性組成物等のシール剤を、液晶注入口を設けた形で該基板にスクリーン印刷し、該基板同士を貼り合わせ、加熱しシール剤を熱硬化させる。
【0117】
2枚の基板間に重合性化合物含有液晶組成物を狭持させる方法は、通常の真空注入法又はODF法などを用いることができるが、真空注入法においては滴下痕が発生しないものの、注入の跡が残る課題を有しているものであるが、本願発明においては、ODF法を用いて製造する表示素子により好適に使用することができる。ODF法の液晶表示素子製造工程においては、バックプレーンまたはフロントプレーンのどちらか一方の基板にエポキシ系光熱併用硬化性などのシール剤を、ディスペンサーを用いて閉ループ土手状に描画し、その中に脱気下で所定量の液晶組成物を滴下後、フロントプレーンとバックプレーンを接合することによって液晶表示素子を製造することができる。本発明の液晶組成物は、ODF工程における液晶組成物の滴下が安定的に行えるため、好適に使用することができる。
【0118】
重合性化合物を重合させる方法としては、液晶の良好な配向性能を得るためには、適度な重合速度が望ましいので、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を単一又は併用又は順番に照射することによって重合させる方法が好ましい。紫外線を使用する場合、偏光光源を用いても良いし、非偏光光源を用いても良い。また、重合性化合物含有液晶組成物を2枚の基板間に挟持させて状態で重合を行う場合には、少なくとも照射面側の基板は活性エネルギー線に対して適当な透明性が与えられていなければならない。また、光照射時にマスクを用いて特定の部分のみを重合させた後、電場や磁場又は温度等の条件を変化させることにより、未重合部分の配向状態を変化させて、更に活性エネルギー線を照射して重合させるという手段を用いても良い。特に紫外線露光する際には、重合性化合物含有液晶組成物に交流電界を印加しながら紫外線露光することが好ましい。印加する交流電界は、周波数10Hzから10kHzの交流が好ましく、周波数60Hzから10kHzがより好ましく、電圧は液晶表示素子の所望のプレチルト角に依存して選ばれる。つまり、印加する電圧により液晶表示素子のプレチルト角を制御することができる。横電界型MVAモードの液晶表示素子においては、配向安定性及びコントラストの観点からプレチルト角を80度から89.9度に制御することが好ましい。
【0119】
照射時の温度は、本発明の液晶組成物の液晶状態が保持される温度範囲内であることが好ましい。室温に近い温度、即ち、典型的には15〜35℃での温度で重合させることが好ましい。紫外線を発生させるランプとしては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等を用いることができる。また、照射する紫外線の波長としては、液晶組成物の吸収波長域でない波長領域の紫外線を照射することが好ましく、必要に応じて、紫外線をカットして使用することが好ましい。照射する紫外線の強度は、0.1mW/cm2〜100W/cm2が好ましく、2mW/cm2〜50W/cm2がより好ましい。照射する紫外線のエネルギー量は、適宜調整することができるが、10mJ/cm2から500J/cm2が好ましく、100mJ/cm2から200J/cm2がより好ましい。紫外線を照射する際に、強度を変化させても良い。紫外線を照射する時間は照射する紫外線強度により適宜選択されるが、10秒から3600秒が好ましく、10秒から600秒がより好ましい。
【0120】
本発明の液晶組成物を用いた液晶表示素子は高速応答と表示不良の抑制を両立させた有用なものであり、特に、アクティブマトリックス駆動用液晶表示素子に有用であり、VAモード、PSVAモード、又はTNモード用液晶表示素子に適用できる。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る液晶表示装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1は、互いに対向する二つの基板と、前記基板間に設けられたシール材と、前記シール材に囲まれた封止領域に封入された液晶とを備えている液晶表示素子を示す断面図である。
【0121】
具体的には、基板a100上に、TFT層102、画素電極103を設け、その上からパッシベーション膜104及び配向膜a105を設けたバックプレーンと、基板b200上に、ブラックマトリックス202、カラーフィルタ203、平坦化膜(オーバーコート層)201、透明電極204を設け、その上から配向膜b205を設け、前記バックプレーンと対向させたフロントプレーンと、前記基板間に設けられたシール材301と、前記シール材に囲まれた封止領域に封入された液晶層303とを備え、前記シール材301が接する基板面には突起304が設けられている液晶表示素子の具体的態様を示している。 前記基板a又は前記基板bは、実質的に透明であれば材質に特に限定はなく、ガラス、セラミックス、プラスチック等を使用することができる。プラスチック基板としてはセルロ−ス、トリアセチルセルロ−ス、ジアセチルセルロ−ス等のセルロ−ス誘導体、ポリシクロオレフィン誘導体、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコ−ル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレ−ト、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、さらにガラス繊維−エポキシ樹脂、ガラス繊維−アクリル樹脂などの無機−有機複合材料などを用いることができる。
【0122】
なおプラスチック基板を使用する際には、バリア膜を設けることが好ましい。バリア膜の機能は、プラスチック基板が有する透湿性を低下させ、液晶表示素子の電気特性の信頼性を向上することにある。バリア膜としては、それぞれ、透明性が高く水蒸気透過性が小さいものであれば特に限定されず、一般的には酸化ケイ素などの無機材料を用いて蒸着やスパッタリング、ケミカルベーパーデポジション法(CVD法)によって形成した薄膜を使用する。
【0123】
本発明においては、前記基板a又は前記基板bとして同素材を使用しても異素材を使用してもよく特に限定はない。ガラス基板を用いれば耐熱性や寸法安定性の優れた液晶表示素子を作製することができて好ましい。またプラスチック基板であれば、ロールツウロール法による製造方法に適し且つ軽量化あるいはフレキシブル化に適しており好ましい。また、平坦性及び耐熱性付与を目的とするならば、プラスチック基板とガラス基板とを組み合わせると良い結果を得ることができる。
なお後述の実施例においては、基板a100又は基板b200の材質として基板を使用している。バックプレーンには、基板a100上に、TFT層102及び画素電極103を設けている。これらは通常のアレイ工程にて製造される。この上にパッシベーション膜104及び配向膜a105を設けてバックプレーンが得られる。
パッシベーション膜104(無機保護膜ともいう)はTFT層を保護するための膜で、通常は窒化膜(SiNx)、酸化膜(SiOx)等を化学的気相成長(CVD)技術等により形成する。
【0124】
また、配向膜a105は、液晶を配向させる機能を有する膜であり、通常ポリイミドのような高分子材料が用いられることが多い。塗布液には、高分子材料と溶剤からなる配向剤溶液が使われる。配向膜はシール材との接着力を阻害する可能性があるため、封止領域内にパターン塗布する。塗布にはフレキソ印刷法のような印刷法、インクジェットのような液滴吐出法が用いられる。塗布された配向剤溶液は仮乾燥により溶剤が蒸発した後、ベーキングにより架橋硬化される。この後、配向機能を出すために、配向処理を行う。
【0125】
配向処理は通常ラビング法にて行われる。前述のように形成された高分子膜上を、レーヨンのような繊維から成るラビング布を用いて一方向にこすることにより液晶配向能が生じる。
また、光配向法を用いることもある。光配向法は、光感受性を有する有機材料を含む配向膜上に偏光を照射することにより配向能を発生させる方法であり、ラビング法による基板の傷や埃の発生が生じない。光配向法における有機材料の例としては二色性染料を含有する材料がある。二色性染料としては、光二色性に起因するワイゲルト効果による分子の配向誘起もしくは異性化反応(例:アゾベンゼン基)、二量化反応(例:シンナモイル基)、光架橋反応(例:ベンゾフェノン基)、あるいは光分解反応(例:ポリイミド基)のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じる基(以下、光配向性基と略す)を有するものを用いることができる。塗布された配向剤溶液は仮乾燥により溶剤が蒸発した後、任意の偏向を有する光(偏光)を照射することで、任意の方向に配向能を有する配向膜を得ることができる。 一方のフロントプレーンは、基板b200上に、ブラックマトリックス202、カラーフィルタ203、平坦化膜201、透明電極204、配向膜b205を設けている。
【0126】
ブラックマトリックス202は、例えば、顔料分散法にて作製する。具体的にはバリア膜201を設けた基板b200上に、ブラックマトリックス形成用に黒色の着色剤を均一分散させたカラーレジン液を塗布し、着色層を形成する。続いて、着色層をベーキングして硬化する。この上にフォトレジストを塗布し、これをプリベークする。フォトレジストにマスクパターンを通して露光した後に、現像を行って着色層をパターニングする。この後、フォトレジスト層を剥離し、着色層をベーキングしてブラックマトリックス202が完成する。
【0127】
あるいは、フォトレジスト型の顔料分散液を使用してもよい。この場合は、フォトレジスト型の顔料分散液を塗布し、プリベークしたのち、マスクパターンを通して露光した後に、現像を行って着色層をパターニングする。この後、フォトレジスト層を剥離し、着色層をベーキングしてブラックマトリックス202が完成する。 カラーフィルタ203は、顔料分散法、電着法、印刷法あるいは染色法等にて作成する。顔料分散法を例にとると、(例えば赤色の)顔料を均一分散させたカラーレジン液を基板b200上に塗布し、ベーキング硬化後、該上にフォトレジストを塗布しプリベークする。フォトレジストにマスクパターンを通して露光した後に現像を行い、パターニングする。この後フォトレジスト層を剥離し、再度ベーキングすることで、(赤色の)カラーフィルタ203が完成する。作成する色順序に特に限定はない。同様にして、緑カラーフィルタ203、青カラーフィルタ203を形成する。透明電極204は、前記カラーフィルタ203上に(必要に応じて前記カラーフィルタ203上に表面平坦化のためにオーバーコート層(201)を設け)を設ける。透明電極204は透過率が高い方が好ましく、電気抵抗が小さいほうが好ましい。透明電極204はITOなどの酸化膜をスパッタリング法などによって形成する。
また、前記透明電極204を保護する目的で、透明電極204の上にパッシベーション膜を設ける場合もある。
【0128】
配向膜b205は、前述の配向膜a105と同じものである。以上本発明で使用する前記バックプレーン及び前記フロントプレーンについての具体的態様を述べたが、本願においては該具体的態様に限定されることはなく、所望される液晶表示素子に応じた態様の変更は自由である。前記柱状スペーサーの形状は特に限定されず、その水平断面を円形、四角形などの多角形など様々な形状にすることができるが、工程時のミスアラインマージンを考慮して、水平断面を円形または正多角形にすることが特に好ましい。また該突起形状は、円錐台または角錐台であることが好ましい。前記柱状スペーサーの材質は、シール材もしくはシール材に使用する有機溶剤、あるいは液晶に溶解しない材質であれば特に限定されないが、加工及び軽量化の面から合成樹脂(硬化性樹脂)であることが好ましい。一方、前記突起は、フォトリソグラフィによる方法や液滴吐出法により、第一の基板上のシール材が接する面に設けることが可能である。このような理由から、フォトリソグラフィによる方法や液滴吐出法に適した、光硬化性樹脂を使用することが好ましい。
【0129】
例として、前面柱状スペーサをフォトリソグラフィ法によって得る場合について説明する。
前記フロントプレーンの透明電極204上に、柱状スペーサ形成用の(着色剤を含まない)レジン液を塗布する。続いて、このレジン層をベーキングして硬化する。この上にフォトレジストを塗布し、これをプリベークする。フォトレジストにマスクパターンを通して露光した後に、現像を行ってレジン層をパターニングする。この後、フォトレジスト層を剥離し、レジン層をベーキングして柱状スペーサが完成する。
【0130】
柱状スペーサの形成位置はマスクパターンによって所望の位置に決めることができる。従って、液晶表示素子の封止領域内と封止領域外(シール材塗布部分)との両方を同時に作成することができる。また柱状スペーサは封止領域の品質が低下することがないように、ブラックマトリックスの上に位置するように形成させることが好ましい。このようにフォトリソグラフィ法によって作製された柱状スペーサのことを、カラムスペーサ又はフォトスペーサと呼ぶことがある。
前記スペーサの材質は、PVA−スチルバゾ感光性樹脂などのネガ型水溶性樹脂や多官能アクリル系モノマー、アクリル酸共重合体、トリアゾール系開始剤などの混合物が使用される。あるいはポリイミド樹脂に着色剤を分散させたカラーレジンを使う方法もある。本発明においては特に限定はなく、使用する液晶やシール材との相性に従い公知の材質でスペーサを得ることができる。
このようにして、フロントプレーン上の封止領域となる面に柱状スペーサーを設けた後、該バックプレーンのシール材が接する面にシール材(
図1における301)を塗布する。
【0131】
シール材の材質は特に限定はなく、エポキシ系やアクリル系の光硬化性、熱硬化性、光熱併用硬化性の樹脂に重合開始剤を添加した硬化性樹脂組成物が使用される。また、透湿性や弾性率、粘度などを制御するために、無機物や有機物よりなるフィラー類を添加することがある。これらフィラー類の形状は特に限定されず、球形、繊維状、無定形などがある。さらに、セルギャップを良好に制御するために単分散径を有する球形や繊維状のギャップ材を混合したり、基板との接着力をより強化するために、基板上突起と絡まりやすい繊維状物質を混合しても良い。このとき使用する繊維状物質の直径はセルギャップの1/5〜1/10以下程度が望ましく、繊維状物質の長さはシール塗布幅よりも短いことが望ましい。
また、繊維状物質の材質は所定の形状が得られるものであれば特に限定されず、セルロース、ポリアミド、ポリエステルなどの合成繊維やガラス、炭素などの無機材料を適宜選ぶことが可能である。
【0132】
シール材を塗布する方法としては、印刷法やディスペンス法があるが、シール材の使用量が少ないディスペンス法が望ましい。シール材の塗布位置は封止領域に悪影響を及ぼさないように通常ブラックマトリックス上とする。次工程の液晶滴下領域を形成するため(液晶が漏れないように)、シール材塗布形状は閉ループ形状とする。
前記シール材を塗布したフロントプレーンの閉ループ形状(封止領域)に液晶を滴下する。通常はディスペンサーを使用する。滴下する液晶量は液晶セル容積と一致させるため、柱状スペーサの高さとシール塗布面積とを掛け合わせた体積と同量を基本とする。しかし、セル貼り合わせ工程における液晶漏れや表示特性の最適化のために、滴下する液晶量を適宜調整することもあれば、液晶滴下位置を分散させることもある。
【0133】
次に、前記シール材を塗布し液晶を滴下したフロントプレーンに、バックプレーンを貼り合わせる。具体的には、静電チャックのような基板を吸着させる機構を有するステージに前記フロントプレーンと前記バックプレーンとを吸着させ、フロントプレーンの配向膜bとバックプレーンの配向膜aとが向きあい、シール材ともう一方の基板が接しない位置(距離)に配置する。この状態で系内を減圧する。減圧終了後、フロントプレーンとバックプレーンとの貼り合せ位置を確認しながら両基板位置を調整する(アライメント操作)。貼り合せ位置の調整が終了したら、フロントプレーン上のシール材とバックプレーンとが接する位置まで基板を接近させる。この状態で系内に不活性ガスを充填させ、徐々に減圧を開放しながら常圧に戻す。このとき、大気圧によりフロントプレーンとバックプレーンが貼り合わされ、柱状スペーサの高さ位置でセルギャップが形成される。この状態でシール材に紫外線を照射してシール材を硬化することによって液晶セルを形成する。この後、場合によって加熱工程を加え、シール材硬化を促進する。シール材の接着力強化や電気特性信頼性の向上のために、加熱工程を加えることが多い。
【実施例】
【0134】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
実施例中、測定した特性および単位は以下の通りである。
【0135】
転移転(Tni) :ネマチック相−等方性液体相転移温度(℃)
複屈折率(Δn) :25℃における屈折率異方性
誘電率異方性(Δε) :25℃における誘電率異方性
粘度(η) :20℃における粘度(mPa・s)
回転粘性(γ1) :25℃における回転粘性(mPa・s)
電圧保持率(VHR):周波数60Hz,印加電圧1Vの条件下で60℃における電圧保持率(%)
焼き付き:
液晶表示素子の焼き付き評価は、表示エリア内に所定の固定パターンを1000時間表示させた後に、全画面均一な表示を行ったときの固定パターンの残像のレベルを目視にて以下の4段階評価で行った。
【0136】
◎残像無し
○残像ごく僅かに有るも許容できるレベル
△残像有り許容できないレベル
×残像有りかなり劣悪
滴下痕 :
液晶表示装置の滴下痕の評価は、全面黒表示した場合における白く浮かび上がる滴下痕を目視にて以下の4段階評価で行った。
【0137】
◎残像無し
○残像ごく僅かに有るも許容できるレベル
△残像有り許容できないレベル
×残像有りかなり劣悪
プロセス適合性 :
プロセス適合性は、ODFプロセスにおいて、定積計量ポンプを用いて1回に50pLずつ液晶を滴下することを100000回行い、次の「0〜100回、101〜200回、201〜300回、・・・・99901〜100000回」の各100回ずつ滴下された液晶量の変化を以下の4段階で評価した。
【0138】
◎変化が極めて小さい(安定的に液晶表示素子を製造できる)
○変化が僅かに有るも許容できるレベル
△変化が有り許容できないレベル(斑発生により歩留まりが悪化)
×変化が有りかなり劣悪(液晶漏れや真空気泡が発生)
低温での溶解性:
低温での溶解性評価は、液晶組成物を調製後、2mLのサンプル瓶に液晶組成物を1g秤量し、これに温度制御式試験槽の中で、次を1サイクル「−20℃(1時間保持)→昇温(0.1℃/毎分)→0℃(1時間保持)→昇温(0.1℃/毎分)→20℃(1時間保持)→降温(−0.1℃/毎分)→0℃(1時間保持)→降温(−0.1℃/毎分)→−20℃」として温度変化を与え続け、目視にて液晶組成物からの析出物の発生を観察し、以下の4段階評価を行った。
【0139】
◎600時間以上析出物が観察されなかった。
○300時間以上析出物が観察されなかった。
△150時間以内に析出物が観察された。
×75時間以内に析出物が観察された。
尚、実施例において化合物の記載について以下の略号を用いる。
(環構造)
【0140】
【化48】
(側鎖構造及び連結構造)
【0141】
【表1】
【0142】
(実施例1)
以下に示す液晶組成物LC−1を調製した。
【0143】
【化49】
LC−1の物性値は以下の通りであった。
【0144】
【表2】
【0145】
液晶組成物LC−1の初期のVHRは99.0%であったのに対し、150℃で1時間の高温放置後のVHRは、98.5%であった。低温での溶解性を評価したところ、以下の表に示す様に優れた性能を示した。また、液晶組成物LC−1を用いてODFプロセスによりTN液晶表示素子を作製し、前述の方法を用いて焼き付き、滴下痕及びプロセス適合性を検討したところ、以下に示す様に優れた結果を示した。
【0146】
【表3】
【0147】
(比較例1)
式(1)で表される化合物を含有しない、以下に示される液晶組成物LC−2を調製した。
【0148】
【化50】
LC−2の物性値は以下の通りであった。
【0149】
【表4】
【0150】
式(1)で表される化合物を含有しない液晶組成物LC−2は、式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物LC−1と比べて、粘度及び回転粘性が上昇することが示された。液晶組成物LC−2の初期のVHRは99.0%であったのに対し、150℃で1時間の高温放置後のVHRは、98.4%であった。低温での溶解性を評価したところ、以下の表に示す様にLC−1と比べて早期に析出が観察された。
また、液晶組成物LC−2を用いてTN液晶表示素子を作製し、前述の方法を用いて焼き付き、滴下痕及びプロセス適合性の測定したところ、以下に示すように実施例1に比べて劣る結果を示した。
【0151】
【表5】
【0152】
(実施例2)
以下に示す液晶組成物LC−3を調製した。
【0153】
【化51】
LC−3の物性値は以下の通りであった。
【0154】
【表6】
【0155】
液晶組成物LC−3の初期のVHRは99.6%であったのに対し、150℃で1時間の高温放置後のVHRは、98.8%であった。低温での溶解性を評価したところ、以下の表に示す様に優れた性能を示した。また、液晶組成物LC−3を用いてODFプロセスによりTN液晶表示素子を作製し、前述の方法を用いて焼き付き、滴下痕及びプロセス適合性を検討したところ、以下に示す様に優れた結果を示した。
【0156】
【表7】
【0157】
(比較例2)
式(1)で表される化合物を含有しない、以下に示される液晶組成物LC−4を調製した。
【0158】
【化52】
LC−4の物性値は以下の通りであった。
【0159】
【表8】
【0160】
式(1)で表される化合物を含有しない液晶組成物LC−4は、式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物LC−3と比べて、回転粘性が上昇することが示された。液晶組成物LC−4の初期のVHRは99.5%であったのに対し、150℃で1時間の高温放置後のVHRは、98.5%であった。低温での溶解性を評価したところ、以下の表に示す様にLC−3と比べて早期に析出が観察された。
また、液晶組成物LC−4を用いてTN液晶表示素子を作製し、前述の方法を用いて焼き付き、滴下痕及びプロセス適合性の測定したところ、以下に示すように実施例2に比べて劣る結果を示した。
【0161】
【表9】
【0162】
(実施例3)
次に示す液晶組成物LC−5を調製し、その物性値を測定した。この結果を次の表に示す。
【0163】
【化53】
LC−4の物性値は以下の通りであった。
【0164】
【表10】
【0165】
液晶組成物LC−5の初期のVHRは99.2%であったのに対し、150℃で1時間の高温放置後のVHRは、98.4%であった。低温での溶解性を評価したところ、以下の表に示す様に優れた性能を示した。また、液晶組成物LC−5を用いてODFプロセスによりTN液晶表示素子を作製し、前述の方法を用いて焼き付き、滴下痕及びプロセス適合性を検討したところ、以下に示す様に優れた結果を示した。
【0166】
【表11】
【0167】
(比較例3)
式(2.1)または(2.2)で表される化合物を含有しない、以下に示される液晶組成物LC−6を調製した。
【0168】
【化54】
LC−6の物性値は以下の通りであった。
【0169】
【表12】
【0170】
式(2.1)または(2.2)で表される化合物を含有しない液晶組成物LC−6は、式(2.1)で表される化合物を含有する液晶組成物LC−5と比べて、回転粘性が上昇することが示された。液晶組成物LC−6の初期のVHRは99.5%であったのに対し、150℃で1時間の高温放置後のVHRは、98.5%であった。低温での溶解性を評価したところ、以下の表に示す様にLC−5と比べて早期に析出が観察された。
また、液晶組成物LC−6を用いてTN液晶表示素子を作製し、前述の方法にを用いて焼き付き、滴下痕及びプロセス適合性の測定したところ、以下に示すように実施例3に比べて劣る結果を示した。
【0171】
【表13】
【0172】
(実施例4)
次に示す液晶組成物LC−7を調製し、その物性値を測定した。この結果を次の表に示す。
【0173】
【化55】
LC−7の物性値は以下の通りであった。
【0174】
【化56】
【0175】
液晶組成物LC−7の初期のVHRは99.5%であったのに対し、150℃で1時間の高温放置後のVHRは、98.6%であった。低温での溶解性を評価したところ、以下の表に示す様に優れた性能を示した。また、液晶組成物LC−7を用いてODFプロセスによりTN液晶表示素子を作製し、前述の方法を用いて焼き付き、滴下痕及びプロセス適合性を検討したところ、以下に示す様に優れた結果を示した。
【0176】
【表14】
【0177】
(比較例4)
式(2.1)または(2.2)で表される化合物を含有しない、以下に示される液晶組成物LC−8を調製した。
【0178】
【化57】
LC−8の物性値は以下の通りであった。
【0179】
【表15】
【0180】
式(2.1)または(2.2)で表される化合物を含有しない液晶組成物LC−8は、式(2.2)で表される化合物を含有する液晶組成物LC−7と比べて、回転粘性が上昇することが示された。液晶組成物LC−8の初期のVHRは99.0%であったのに対し、150℃で1時間の高温放置後のVHRは、98.1%であった。低温での溶解性を評価したところ、以下の表に示す様にLC−7と比べて早期に析出が観察された。
また、液晶組成物LC−8用いてTN液晶表示素子を作製し、前述の方法を用いて焼き付き、滴下痕及びプロセス適合性の測定したところ、以下に示すように実施例4に比べて劣る結果を示した。
【0181】
【表16】
【0182】
(実施例7から実施例10)
次に示す液晶組成物LC−9〜LC−12を調製し、その物性値を測定した。この結果を次の表に示す。
【0183】
【表17】
【0184】
【表18】
【0185】
液晶組成物LC−9〜LC−12の低温溶解性は良好であり、初期のVHR及び150℃で1時間の高温放置後のVHRは多少の変化が見られるものの、許容される変化であった。また、液晶組成物LC−9〜LC−12を用いて作製したTN液晶表示素子の焼き付き、滴下痕及びプロセス適合性の検討をしたところ、以下に示すように優れた結果を示した。
【0186】
【表19】
【0187】
(実施例11から実施例14)
次に示す液晶組成物LC−13〜LC−16を調製し、その物性値を測定した。この結果を次の表に示す。
【0188】
【表20】
【0189】
【表21】
【0190】
液晶組成物LC−13〜LC−16の低温溶解性は良好であり、初期のVHR及び150℃で1時間の高温放置後のVHRは多少の変化が見られたが、許容される変化であった。また、液晶組成物LC−13〜LC−16を用いて作製したTN液晶表示素子の焼き付き、滴下痕及びプロセス適合性の測定したところ、以下に示すように優れた結果を示した。
【0191】
【表22】
【0192】
(実施例15から実施例18)
次に示す液晶組成物LC−17〜LC−20を調製し、その物性値を測定した。この結果を次の表に示す。
【0193】
【表23】
【0194】
【表24】
【0195】
液晶組成物LC−17〜LC−20の低温溶解性は良好であり、初期のVHR及び150℃で1時間の高温放置後のVHRはほとんど変化がなかった。また、液晶組成物LC−17〜LC−20を用いて作製したTN液晶表示素子の焼き付き、滴下痕及びプロセス適合性の検討をしたところ、以下に示すように優れた結果を示した。
【0196】
【表25】
【0197】
(実施例19から実施例22)
次に示す液晶組成物LC−21〜LC−24を調製し、その物性値を測定した。この結果を次の表に示す。
【0198】
【表26】
【0199】
【表27】
【0200】
液晶組成物LC−21〜LC−24の低温溶解性は良好であり、初期のVHR及び150℃で1時間の高温放置後のVHRは多少の変化が見られたが、許容される変化であった。また、液晶組成物LC−21〜LC−24を用いて作製したTN液晶表示素子の焼き付き、滴下痕及びプロセス適合性の検討をしたところ、以下に示すように優れた結果を示した。
【0201】
【表28】
【0202】
(実施例23から実施例26)
次に示す液晶組成物LC−25〜LC−28を調製し、その物性値を測定した。この結果を次の表に示す。
【0203】
【表29】
【0204】
【表30】
【0205】
液晶組成物LC−25〜LC−28の低温溶解性は良好であり、初期のVHR及び150℃で1時間の高温放置後のVHRはほとんど変化がなかった。また、液晶組成物LC−25〜LC−28を用いて作製したTN液晶表示素子の焼き付き、滴下痕及びプロセス適合性の検討をしたところ、以下に示すように優れた結果を示した。
【0206】
【表31】
【0207】
(実施例27から実施例30)
次に示す液晶組成物LC−29〜LC−32を調製し、その物性値を測定した。この結果を次の表に示す。
【0208】
【表32】
【0209】
【表33】
【0210】
液晶組成物LC−29〜LC−32の低温溶解性は良好であり、初期のVHR及び150℃で1時間の高温放置後のVHRはほとんど変化がなかった。また、液晶組成物LC−29〜LC−32を用いて作製したTN液晶表示素子の焼き付き、滴下痕及びプロセス適合性の検討をしたところ、以下に示すように優れた結果を示した。
【0211】
【表34】
【0212】
(実施例31から実施例33)
次に示す液晶組成物LC−33〜LC−35を調製し、その物性値を測定した。この結果を次の表に示す。
【0213】
【表35】
【0214】
液晶組成物LC−33〜LC−35の低温溶解性は良好であり、初期のVHRと150℃で1時間の高温放置後のVHRとの間にはほとんど変化が見られなかった。また、液晶組成物LC−33〜LC−35を用いて作製したTN液晶表示素子の焼き付き、滴下痕及びプロセス適合性の検討をしたところ、以下に示すように優れた結果を示した。
【0215】
【表36】
【0216】
(実施例35)
実施例2に示すネマチック液晶組成物LC−1 99.7%に対して、式(V−2)
【0217】
【化58】
【0218】
で示される重合性化合物を0.3%添加し均一溶解することにより重合性液晶組成物CLC−1を調製した。CLC−1の物性は実施例1に示すネマチック液晶組成物の物性とほとんど違いはなかった。CLC−1をセルギャップ3.5μmのホモジニアス配向を誘起するポリイミド配向膜を塗布したITO付きセルに真空注入法で注入した。このセルに周波数1kHzの矩形波を印加しながら、320nm以下の紫外線をカットするフィルターを介して、高圧水銀灯により液晶セルに紫外線を照射した。セル表面の照射強度が10mW/cm2となるように調整して600秒間照射して、重合性液晶組成物中の重合性化合物を重合させた水平配向性液晶表示素子を得た。重合性化合物が重合することにより、液晶化合物に対する配向規制力が生じていることが確認できた。
【0219】
(実施例36)アクティブマトリックス駆動用液晶表示素子の製造
(フロントプレーンの作成)
(ブラックマトリックスの形成)
液晶表示素子用のホウ珪酸ガラス基板(日本電気硝子社製OA−10)に、下記の組成のブラックマトリックス形成用組成物を、ウェット状態で厚みが10μmになるようダイコーターを用いて塗布し、乾燥後、温度が90℃の条件で2分間プリベークして2μmの厚みのブラックマトリックス層を形成した。
(ブラックマトリックス形成用塗料組成物)
・ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(モル比=73/27) 300部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 160部
・カーボンブラック分散液 300部
・光重合開始剤(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1) 5部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 1200部
※部数はいずれも質量基準
その後、上流側から下流側に基板を搬送する装置を備えた露光装置に、上記で得られたブラックマトリックス層付きのガラス基板を導入し露光部まで搬送した。
【0220】
露光装置の本体の温度は23℃±0.1℃になるよう、また、相対湿度は60%±1%になるよう、それぞれ調整した。
【0221】
上記ブラックマトリックス層付きのガラス基板を露光台上に吸着固定した後、ガラス基板の塗膜表面とフォトマスクパターンとの間隔(ギャップ)が100μmになるよう自動調整した。またガラス基板の露光位置は、ガラス基板の端面からの距離を自動検出して、ガラス基板からフォトマスクパターン位置までが一定距離になるよう自動調整後に露光を行った。光源として高圧水銀ランプを用い、露光エリアを200mm×200mmとして、I線(波長;365nm)を用い、15mW/cm2の照度で20秒間露光し、300mJ/cm2の露光量とした。
【0222】
現像処理は、露光機の下流側に現像装置を設置して行った。露光処理後のガラス基材を400mm/minの一定速度で搬送し、所定のパターンのブラックマトリックスが積層されたブラックマトリックス層付きの基板(1)を得た。
【0223】
ブラックマトリックスと同素材で形成されたアライメントマークを寸法測定機(ニコン製NEXIV VMR−6555)で温度;23℃±0.1℃、相対湿度;60%±1%の条件で搬送方向、搬送方向に垂直な方向での寸法変化を測定した結果、フォトマスクの寸法値搬送方向:100.000mm、垂直方向:100.000mmに対して、実際にガラス基材上に形成されたパターンの寸法は、搬送方法:99.998mm、垂直方向:100.001mmであった。
【0224】
その後、ベーク炉にて220℃、30分のポストベークを行いブラックマトリックスを熱硬化した。得られたブラックマトリックスを、前記同条件(温度;23℃±0.1℃、相対湿度;60%±1%)で測定したところ、基板(1)上に形成されたパターンの寸法は、搬送方向:99.998mm、垂直方向:100.001mmであった。
【0225】
(RGB着色層の形成)
前記ブラックマトリックス層付きの基板(1)の上に、下記の組成の着色パターン形成用組成物を、ウェット状態で厚み;10μmになるようダイコーターを用いて塗布し、乾燥後、温度が90℃の条件で2分間プリベークして2μmの厚みのブラックマトリックス層・着色パターン形成用組成物付きの基板(1)を得た。
以下に、赤色の着色パターン形成用組成物の組成を示すが、赤色顔料を任意の緑色顔料にするとGREENの着色パターン形成用組成物が得られ、青色顔料にするとBLUEの着色パターン形成用組成物が得られる。赤色、緑色、青色のそれぞれの着色顔料は、発色や輝度向上を目的にした樹脂組成物を含む場合がある。このような目的の樹脂組成物としては、1級、2級または3級アミノ基を有するメタクリル酸とのブロック共重合体が使用される場合が多く、具体的には、例えばBYK社の「BYK6919」などが挙げられる。
【0226】
(赤色着色パターン形成用組成物)
・ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(モル比=73/27) 50部
・トリメチロールプロパントリアクリレート 40部
・赤色顔料(C.I.Pigment Red 254) 90部
・光重合開始剤(2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパノン−1) 1.5部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 600部
※部数はいずれも質量基準
【0227】
(緑色着色パターンの場合)
赤色着色パターン形成用組成物において、赤色顔料に変えて緑顔料(例えば、C.I.Pigment Green 58)を使用する以外は赤色着色パターン形成用組成物と同様にして製造した。
【0228】
(青色着色パターンの場合)
赤色着色パターン形成用組成物において、赤色顔料に変えて青顔料(例えば、C.I.Pigment Blue 15.6)を使用する以外は赤色着色パターン形成用組成物と同様にして製造した。
上流側から下流側に搬送装置を備えた露光装置に、上記で得られたブラックマトリックス層・着色パターン形成用組成物付きの基板(1)を導入し露光部まで搬送した。
露光装置の本体の温度は23℃±0.1℃になるよう、また、相対湿度は60%±1%になるよう、それぞれ調整した。
【0229】
ブラックマトリックス層・着色パターン形成用組成物付きの基板(1)を露光台上に吸着固定した後、ブラックマトリックス層・着色パターン形成用組成物付きの基板(1)の塗膜表面とフォトマスクパターンとの間隔(ギャップ)が100μmになるよう自動調整した。またブラックマトリックス層・着色パターン形成用組成物付きの基板(1)の露光位置は、ブラックマトリックス層・着色パターン形成用組成物付きの基板(1)の端面からの距離を自動検出して、ブラックマトリックス層・着色パターン形成用組成物付きの基板(1)からフォトマスクパターン位置が一定距離になるよう自動調整後、前記ブラックマトリックス形成時に同時形成したアライメントマークを用いてRED用フォトマスクとアライメントを行った後、露光を行った。光源としては、高圧水銀ランプを用いて、露光エリアを200mm×200mmとして、I線(波長;365nm)を用い、15mW/cm2の照度で20秒間露光し、100mJ/cm2の露光量とした。 現像は、露光機の下流側に現像装置を設置して行った。露光処理後のブラックマトリックス層・着色パターン形成用組成物付きの基板(1)を400mm/minの一定速度で搬送し、ガラス基材上のブラックマトリックスの開口部の所定位置にRED着色層が積層された基板(1)を得た。その後、ベーク炉にて220℃、30分のポストベークを行いRED着色層を熱硬化した。 上記REDと同様の方法で繰り返しGREEN、BLUEの着色層形成を行い、基板(1)上にブラックマトリックスおよびRGBの着色層が形成されたカラーフィルタが得られた。 なお、BLUE着色層のポストベーク処理後に、ブラックマトリックスを、前記と同じ条件(温度;23℃±0.1℃、相対湿度;60%±1%)で測定したところ、ガラス基板上に形成されたパターンの寸法は、搬送方向:99.999mm、垂直方向:100.002mmであった。 ブラックマトリックスの寸法変化は1層目(ブラックマトリックス層)の現像後から4層目(BLUE層)のポストベーク後までの製造工程において10ppmであり、これによりガラス基材上に4インチサイズで解像度が200ppi(BM線幅7μm、ピッチ42μm)にて、画素ズレを生じさせずにカラーフィルタを形成することができた。(ITO電極層の形成)
続いて、このカラーフィルタをスパッタリング装置に導入し、DCスパッタにより酸素を反応ガスに用いた反応性スパッタでITO(indium tin oxide)をターゲットとして用い、ブラックマトリックスおよびRGBの着色層上に膜厚150nmのITOの成膜を行い、これをITO電極層とした。このようにして作製したITO電極のシート抵抗値は45Ω/□であった。
【0230】
(柱状スペーサーの形成)
(ドライフィルムの準備)
柱状スペーサー形成用のドライフィルムとして、厚みが25μmのPETベースフィルム上に、ネガ型感光性樹脂からなる柱状スペーサー形成用組成物を、ウェット状態で厚み;20μmになるようダイコーターを用いて塗布し、乾燥後、温度;90℃の条件で2分間プリベークして4.5μmの厚みとした。その後、その上に、厚み25μmのPETカバーフィルムをラミネートし、柱状スペーサー形成用ドライフィルムとした。
【0231】
(積層基板の作成)
上記で得られたブラックマトリックス、RGB着色層、およびITO電極層が形成された基板(1)上に、カバーフィルムを予め剥離したパターンスペーサ形成用ドライフィルムを柱状スペーサー形成用組成物がITO電極層と向かい合うように積層して、柱状スペーサー形成用組成物層を、ローラ圧;5kg/cm2、ローラ表面温度;120℃、および速度;800mm/minの条件にて、連続的に転写した。この際、ベースフィルムは剥離せず、柱状スペーサー形成用組成物上に付いた状態で次の露光工程へと進めた。
【0232】
(露光処理工程)
上流側から下流側に搬送装置を備えた露光装置に、上記で得られた積層基板を導入し露光部まで搬送した。
露光装置の本体の温度は23℃±0.1℃になるよう、また、相対湿度は60%±1%になるよう、それぞれ調整した。
積層基板を露光台上に吸着固定した後、積層基板のベースフィルムとフォトマスクパターンとの間隔(ギャップ)を30μmになるよう自動調整した。このとき使用したフォトマスクパターンは、ブラックマトリックス上に形成するスペーサーパターンになるように設計した。
また積層基板のパターンの露光位置は、積層基板の端面からの距離を自動検出して、この検出結果にしたがって積層基板からフォトマスクパターン位置が一定距離になるよう自動調整後、前記ブラックマトリックス形成時に同時形成したアライメントマークを用いて柱状スペーサー用フォトマスクとアライメントを行った後、露光を行った。光源としては、高圧水銀ランプを用いて、露光エリアを200mm×200mmとして、I線(波長;365nm)を用い、15mW/cm2の照度で20秒間露光し、300mJ/cm2の露光量とした。
【0233】
(現像処理・ポストベーク処理工程)
現像処理は、露光機の下流側に現像装置を設置し、この現像装置内で露光後の積層基板からベースフィルムを剥離しながら、400mm/minの一定速度で搬送しながら行った。このようにして、前記ブラックマトリックス、RGB着色層、およびITO電極層が形成された基板(1)のブラックマトリックスの格子パターン部の所定位置にパターンスペーサが形成されたカラーフィルタを得た。その後、ベーク炉にて220℃、30分のポストベーク処理を行って、柱状スペーサーを熱硬化した。 このようにして、前記スペーサーパターンを使用した、基板(1)上にブラックマトリックス、RGB着色層、ITO電極層、柱状スペーサーが形成されたフロントプレーンを得た。
【0234】
(バックプレーンの作成)
(TFT電極層の形成)
透明基板として、液晶表示素子用のガラス板(日本電気硝子社製OA−10)を用い、特開2004−140381号公報に記載された方法にしたがって、透明基板上にTFT電極層を形成した。
すなわち、ガラス基板上にアモルファスSi層を100nm厚で形成した後、酸化Si層(SiOx)を真空成膜法により形成した。その後、上記酸化Si層上に、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いてTFT層および画素電極を形成しバックプレーンとなるTFTアレイ付ガラス基板を得た。
【0235】
(液晶表示素子の製造)
(配向膜形成)
上記のように作製されたフロントプレーン及びバックプレーンに液晶配向膜を形成した。両基板ともに純水にて洗浄後、ポリイミドを含む液晶配向剤を、液晶配向膜塗布用印刷機(フレキソ印刷機)を用いて塗布し、180℃のオーブン内で20分間乾燥し、フロントプレーンのITOを形成した面及びバックプレーンのTFT電極層を形成した面上に乾燥平均膜厚600Åの塗膜を形成した。この塗膜にレーヨン製の布を巻き付けたロールを有するラビング装置により、ロールの回転数400rpm、ステージの移動速度30mm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmでラビング処理を行い、水洗を行った後、120℃のオーブン上で10分間乾燥した。 フロントプレーンのシール材塗布部分に、ディスペンサーを用いてシール材の閉ループを描くように塗布した。
シール材として、ビスフェノールA型メタクリル酸変性エポキシ樹脂を含む光熱併用硬化型樹脂組成物を使用し、シール材の中に前述で形成した柱状スペーサとほぼ同じサイズの球状スペーサを樹脂成分に対して0.5質量%混合した。シール材の塗布量は、液晶表示素子のシール幅(0.7mm)となるように調製した。 続いて、シール材閉ループ内の所定の位置に定積計量ポンプ式のディスペンサーを用いて、実施例20に示した液晶組成物(LC−21)を、1枚のフロントプレーンにつき、1回24.7pLずつを90回に分けて滴下した。(合計2230pL)
液晶滴下後のフロントプレーンとバックプレーンとを静電チャックに吸着させた。フロントプレーンとバックプレーンとが互いに向き合うように配置し、バックプレーンをゆっくり降下させてフロントプレーンとの距離が300μmとなる距離で静止させた。この状態で真空チャンバー内を100Paまで減圧した。あらかじめ形成しておいたアライメントマークを用いて、フロントプレーンとバックプレーンとの貼り合せ位置を調整した。アライメント完了後、フロントプレーンとバックプレーンとをさらに接近させ、シール材とTFT電極層とが接する高さに両基材を保持した。この状態で真空チャンバー内に不活性ガスを導入し、系内を大気圧までもどした。大気圧によりフロントプレーンとバックプレーンが圧迫され、柱状スペーサーの高さでセルギャップが形成された。続いてシール材塗布部分に紫外線を照射して(365nm、30kJ/m2)シール材を硬化させ、お互いの基板を固定した。この状態で液晶組成物入りの基板を加熱装置に搬送し、表面温度が120℃の状態で1時間保持し、加熱終了後に空冷することによってアクティブマトリックス駆動用液晶表示素子を得た。