(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録用水性顔料分散体と、質量換算で液媒体全体を100%とした際に多価アルコール40%未満と水60%以上とからなる液媒体から調製されたインクジェット記録用水性インク。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明で提供されるインクジェット記録用水性インク調整のための水性顔料分散体は、顔料100部あたり、スチレン−アクリル樹脂10〜70部で分散した水性顔料分散体と、ポリプロピレングリコールから構成されるウレタン樹脂粒子を用いることを特徴とするインクジェット記録用水性インク調整のための水性顔料分散体および該水性顔料分散体から調整されたインクジェット記録用水性インクである。
【0019】
本発明の特徴は、インクジェット記録用水性インク調整のための水性顔料分散体において、従来、経時安定性を付与するために、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)やポリエチレングリコール(PEG)を構成成分とした、高分子量のポリウレタン樹脂分散体が使用されおり、発一性が極めて低かったが、顔料と皮膜形成樹脂からなる顔料分散体に、ポリオール成分としてポリプロピレングリコールを構成成分とする、低分子量のポリウレタン樹脂分散体を混合することで、経時安定性の付与に加え、発一性が高く、さらに着弾ズレが無く、吐出速度の速い分散体を得られることがわかった。
【0020】
構成成分をポリプロピレングリコールとしたことや、低分子量としたことで、インクジェット記録用水性インク調整のための水性顔料分散体およびそれを用いたインクジェット記録用水性インクの顔料とウレタン樹脂の吸着作用を維持しつつ、系の親水性を高めることができた結果、インクジェットプリンターの吐出口において、ウレタン樹脂の皮膜を形成が抑制され、貯蔵安定性・光択と、発一性・着弾ズレの少なさ・吐出速度の両立ができた。
【0021】
本発明のインクジェット記録用水性インクを調製する際、顔料としては、公知慣用の無機顔料や有機顔料がいずれも使用できる。
【0022】
無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー、アルミナ白、酸化鉄黄、ビリジアン、硫化亜鉛、リトボン、カドミウムイエロー、朱、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデートオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、炭酸カルシウム、鉛白、紺青、マンガンバイオレット、カーボンブラック、アルミニウム粉、パール系顔料等が挙げられる。
【0023】
有機顔料としては、例えば、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、フタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、メチン・アゾメチン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アゾレーキ顔料系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料等が挙げられる。
【0024】
本発明においてポリウレタン樹脂とは、ウレタン結合以外に尿素結合をも含有する樹脂(ポリウレタンポリ尿素樹脂という。) を包含する広義のウレタン樹脂を意味する。本発明に用いられるポリウレタン樹脂は、ポリプロピレングリコールから構成されるポリウレタン樹脂であり、酸価52±10mgKOH/gであり、より好ましくは酸価55±5mgKOH/gである。
【0025】
ポリエーテル系ポリウレタン樹脂は、ポリエーテル部分が加水分解を受けないので、ポリエステル系ポリウレタン樹脂に比べて、湿熱履歴後の着色画像の被記録媒体上での密着性やその光沢が低下し難いという優れた特徴を持っている。中でもポリプロピレングリコールから構成されるウレタン樹脂は、その他のポリエーテル系ポリウレタン樹脂比べて、ポリオール成分の疎水骨格と親水骨格のバランスが、顔料との相互作用による分散安定化と、インクの親水性向上による発一性良化の双方に効果的であるという特徴が顕著である。
【0026】
また酸価とは、酸基含有ポリエーテル系ポリウレタン樹脂の不揮発分1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数を意味する。酸価の単位は、mgKOH/gである。この酸価は、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂中の中和されていない(遊離の)酸基に基づくものである。酸基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられる。
【0027】
本発明に用いられるポリウレタン樹脂中のポリプロピレングリコール構造の含有量は、特に制限されるものではないが、着色画像の優れた光沢と水性媒体中への優れた初期分散性と分散安定性を兼備することができる点で、40〜70重量%とすることが好ましい。ポリプロピレングリコール構造以外の構造は、例えば2〜3官能のアルコール、2価
以下の酸性基を持つ2〜3官能のアルコール、ジイソシアネート化合物等で構成することができる。
【0028】
本発明に用いられるポリウレタン樹脂は、前記した要件を満たしたものであればどの様な製造方法で得られたものでも良いが、それは、例えば、ポリプロピレングリコールと、有機ジイソシアネート化合物と、酸基とそれ以外の活性水素原子を2つ含有する活性水素化合物とを必須成分として、必要に応じて前記以外の活性水素化合物を用いて反応させることで得ることが出来る。勿論、末端イソシアネート基のプレポリマーを製造し、これを鎖伸長させる方法で製造することも出来る。
【0029】
ポリプロピレングリコールとは、当業界においてPPGと略記され、後記一般式(1)で表されるポリプロピレン構造を分子内に含有するジオール化合物である。後記一般式(1)中の繰り返し単位数n については、種々の繰り返し単位数n のものの混合物であることから、n は平均値として表される。
【0030】
−(-CH2CH(CH3)-O-)n− n=34 一般式(1)
【0031】
有機ジイソシアネート化合物としては、特に限定はなく、例えばヘキサメチレンジイソシート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネー卜化合物、イソホロンジイソシアネー卜、水添キシリレンジイソシアネート、4,4−シクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネー卜化合物、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネー卜等の芳香脂肪族ジイソシアネー卜化合物、トルイレンジイソシアネー卜、フェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネー卜化合物が挙げられる。
【0032】
有機ジイソシアネート化合物としては、着色画像の耐光変色が起こり難い点では、一般に脂肪族または脂環族ジイソシアネート化合物が好ましく、着色画像の光沢がより高い点では、芳香族または脂環族ジイソシアネート化合物が好ましい。
【0033】
このような活性水素化合物としては、例えば、酸基としてカルボキシル基及び/ 又はスルホン酸基を含有しそれ以外の活性水素原子を2つ含有する活性水素化合物が特に制限なく使用できるが、例えば、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸等が挙げられる。酸基とそれ以外の活性水素原子を2つ含有する活性水素化合物の使用量は、ポリウレタン樹脂の酸価が前記範囲となる様な量である。
【0034】
本発明に用いられるポリウレタン樹脂は、前記した様にポリプロピレングリコールと、有機ジイソシアネート化合物と、酸基とそれ以外の活性水素原子を2つ含有する活性水素化合物のみに基づく化学構造の樹脂であっても良いが、着色画像に対応する皮膜の硬度の調整等のために、その他の活性水素化合物に基づく化学構造を含有していても良い。
【0035】
酸基を導入するため以外に必要に応じて用いる活性水素化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等の低分子ジオールが挙げられる。
【0036】
この際の活性水素化合物としては、分岐構造を有する低分子ジオールを併用することが好ましい。分岐構造を有する低分子ジオールと有機ジイソシアネートとの重付加反応構造をポリウレタン樹脂に導入すると、側鎖の立体障害により結晶性が乱されるため水性媒体中での分散粒子の初期分散性や分散安定性が向上する。このような分岐構造を有する低分子ジオールとしては、例えば、ネオペンチルグリコールやブチルエチルプロパンジオール等の脂肪族ジオールが挙げられる。
【0037】
本発明に用いるポリウレタン樹脂は、直鎖状( リニアー) であることが着色画像の皮膜物性の観点からは好ましいが、直鎖状ポリウレタン樹脂であることの特徴を損なわない範囲において、必要に応じて、前記した原料に加えて、3 官能以上の活性水素化合物や3官能以上の有機ポリイソシアネート化合物を適宜併用して、3 次元網目構造を有するポリウレタン樹脂を、直鎖状のポリウレタン樹脂に極少量含有させても良い。
【0038】
本発明に用いられるポリウレタン樹脂は、酸価52±10mgKOH/gにあることが、塩基性物質を添加した際の、水性媒体への顔料の初期分散性や水性媒体中の分散安定性が良好で、また調製されたインクジェット記録用水性インクの印字安定性が良く、着色画像の耐水性も良好な上、耐摩擦性、耐棒積み性等の画像保存性も良好となるので好ましい。
【0039】
塩基性物質としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−エチル−1−プロパノール等の有機アミン類、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの無機アルカリ類等が挙げられる。塩基性物質の使用量は、ポリウレタン樹脂の物性に応じて適宜設定されるが、塩基性物質の使用量は特に制限されるものではないが、通常、ポリウレタン樹脂の酸価の70〜130%を中和するのに必要な量の塩基性物質が用いられる。
【0040】
本発明に用いられるポリウレタン樹脂は、通常重量平均分子量で、8000〜17000、好ましくは9000〜16500、さらに好ましくは12000〜15400である。ポリウレタン樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定され、ポリスチレン換算の値として表される。以下、特に断りのない限り、本発明においてポリウレタン樹脂の分子量は重量平均を基準とする。
【0041】
ポリウレタン樹脂の分子量が2000未満であると、被記録媒体への顔料の定着性が乏しくなるとともに水性媒体中での顔料の分散安定性が低下し好ましくない。一方、ポリウレタン樹脂の分子量が100000を超えると、塩基性物質を添加しても水性媒体中へのポリウレタン樹脂の溶解性が低下すると共に、調製されるインクジェット記録用水性インクの粘度が高くなるので好ましくない。
【0042】
本発明のインクジェット記録用水性インクを調製するに当たっては、質量換算で顔料1100部に対してポリウレタン樹脂の不揮発分を通常5〜80部、好ましくは10〜40部となる様にする。インク中の顔料に対するポリウレタン樹脂の量が少ないと着色画像の耐擦性が低下する傾向にあるし、一方、多いとインク粘度や流動性の面から使用しにくくなるので好ましくない。
【0043】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、例えば顔料濃度がより高いポリウレタン樹脂を含む水性顔料分散体を調製し、それを希釈する等して調製することが出来る。
このポリウレタン樹脂を含む水性顔料分散体は、例えば後記する様な1)〜4)の方法で製造することが出来る。
1)ポリウレタン樹脂の水性分散体に、顔料を機械的に強制分散する水性顔料分散体の製造方法。
2)顔料の存在下の液媒体中で分散剤を用いて、ポリウレタン樹脂の各原料成分を反応させポリウレタン樹脂とした後、かつ任意の工程で水を含ませ、必要に応じて会合や脱溶剤を行う水性顔料分散体の製造方法。
3)顔料とポリウレタン樹脂と有機溶剤の混合物を、水と塩基性物質を用いて徐徐に油相から水相に転相させてから脱溶剤して、顔料がポリウレタン樹脂で被覆されたマイクロカプセル型複合粒子とする、同複合粒子を含む水性顔料分散体の製造方法。
4)顔料とポリウレタン樹脂と塩基性物質と有機溶剤と水との均一混合物から脱溶剤を行い、酸を加えて酸析し析出物を洗浄後、この析出物を塩基性物質と共に水性媒体に分散させる、顔料がポリウレタン樹脂で被覆されたマイクロカプセル型複合粒子とする、同複合粒子を含む水性顔料分散体の製造方法。
【0044】
本発明において、水性媒体とは水のみ又は水と有機溶剤との混合物であって水の含有割合が質量換算で60%以上であるものを言う。水性媒体としては、有機溶剤を全く含まないか又は極力含有しないものを用いることが、火災防止や環境安全の面から好ましい。これは後記する水性顔料分散体の場合も、本発明のインクジェット記録用水性インクの場合でも同様である。
【0045】
水性顔料分散体の製造方法では、前記いずれの製造方法をとるにせよ、顔料、ポリウレタン樹脂、塩基性物質および水からなる混合物を分散する工程を必須として含ませることが好ましい。この混合物には水溶性有機溶剤を含めるのが好ましい。より具体的には、少なくとも顔料、ポリウレタン樹脂、塩基性物質、水溶性有機溶剤および水からなる混合物を分散する工程(分散工程)を含ませることが好ましい。
【0046】
また、分散工程において水溶性有機溶剤を併用することができ、それにより分散工程における液粘度を低下させることができる場合がある。水溶性有機溶剤の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、等のケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−メトキシエタノール、等のアルコール類; テトラヒドロフラン、1 ,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、等のアミド類が挙げられ、とりわけ炭素原子数が3〜6のケトンおよび炭素原子数が1〜5のアルコールからなる群から選ばれる化合物を用いるのが好ましい。これらの水溶性有機溶剤はポリウレタン樹脂溶液として用いられても良く、別途独立に分散混合物中に加えられても良い。
【0047】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、少なくとも顔料、酸基含有ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、塩基性物質および水からなる混合物を分散装置により分散する工程を含むプロセスによって製造することができる。
【0048】
製造プロセスに組み込み得るその他の工程の例としては、予備分散工程、溶解工程、希釈工程、蒸留工程、遠心分離工程、酸析工程、濾過工程、再分散工程、p H調整工程、充填工程等が挙げられる。
【0049】
予備分散工程の例には、溶液状態または溶融状態の樹脂と顔料を混合、分散し、スラリー状、ペースト状もしくはマスターバッチまたはチップと呼ばれる固体状態にする工程等がある。溶解工程の例には、固体状の酸基含有ポリエーテル系ポリウレタン樹脂を有機溶剤、好ましくは水溶性有機溶剤中、または塩基性物質を含む水性媒体中に溶解させる工程、もしくは酸基含有ポリエーテル系ポリウレタン樹脂の水溶性有機溶剤溶液を塩基性物質を含む水性媒体中に溶解させる工程等がある。
【0050】
蒸留工程の例には、分散工程において有機溶剤を使用した場合にこれを除去する工程、所望の固形分濃度にするため余剰の水を除去する工程がある。遠心分離工程の例には、インクジェット記録用水性インクとしての使用適性に悪影響を及ぼす分散体中の粗大粒子を除去する工程等がある。
【0051】
酸析工程の例には、分散工程で得られた水性顔料分散体に塩酸、硫酸、酢酸等の酸を加えて酸性化し、塩基と塩を形成することによって溶解状態にある酸基含有ポリエーテル系ポリウレタン樹脂を顔料表面に析出させる工程がある。この工程により顔料と酸基含有ポリエーテル系ポリウレタン樹脂との相互作用を高めることができる。その結果、顔料が酸基含有ポリエーテル系ポリウレタン樹脂の濃密な層によって被覆される。これにより、顔料が酸基含有ポリエーテル系ポリウレタン樹脂によって被覆された、いわゆるマイクロカプセル化顔料が水性媒体中に分散している形態を取らせることができ、水性顔料分散体として、分散到達レベルや分散安定性等の物性面や耐溶剤性等の使用適性の面で、より優れた特性を発揮させることができる。
【0052】
濾過工程の例には、遠心分離工程と同様に分散粒子中の粗大粒子をカートリッジフィルターやメンブレンフィルターにより除去する工程、前述した酸析工程後にフィルタープレス、ヌッチェ式濾過装置、加圧濾過装置等により濾過する工程等がある。
【0053】
再分散工程の例には、酸析工程、濾過工程によって得られた固形分に塩基性物質および必要により水や添加物を加えて再び分散体とする工程がある。それにより酸基含有ポリエーテル系ポリウレタン樹脂中のイオン化した酸基の対イオンを分散工程で用いたものから変更することができる。
【0054】
分散工程において用いることのできる分散装置として、既に公知の種々の方式による装置が使用でき、特に限定されるものではないが、例えば、スチール、ステンレス、ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素、ガラス等でできた直径0.1〜10mm程度の球状分散媒体の運動エネルギーを利用する方式、機械的攪拌によるせん断力を利用する方式、高速で供給された被分散物流束の圧力変化、流路変化あるいは衝突に伴って発生する力を利用する方式、等の分散方式を採ることができる。
【0055】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、少なくとも顔料、酸基含有ポリエーテル系リウレタン樹脂および塩基性物質を含有する水性顔料分散体に、例えば、水溶性有機溶剤、水等を更に混合して調製される。本発明のインクジェット記録用水性インクは、顔料100部に対して不揮発分にして5〜80部のポリエーテル系ポリウレタン樹脂を含有する様に調製することが好ましい。本発明のインクジェット記録用水性インクの調製に当たっては、必要に応じて界面活性剤、水溶性樹脂、防腐剤、粘度調整剤、p H調整剤、キレート化剤等を添加することもできる。
【0056】
インクジェット記録用水性インクの調製に用いることのできる水溶性有機溶剤としては、例えば、前記したものの他に、1−プロパノール、2−ブトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−( 2−ブトキシエトキシ)エトキシ]エタノール等のアルコール類;1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,2 ´ −オキシビスエタノール、2,2 ´ ―エチレンジオキシビス( エタノール) 、チオエタノール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール等の多価アルコール類;ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド類; メチルn− ブチルケトン等のケトン類;1,2−ジエトキシエタン、2,2 ´−オキシビス(2−メトキシエタン) 、2,2 ´−オキシビス(2−エトキシエタン) 、2, 2 ´ エチレンジオキシビス(2−メトキシエタン) 、2,2 ´ ―エチレンオキシビス( 2 − メトキシエタン)等のエーテル類が挙げられる。記録液中の水溶性有機溶剤の含有割合は、50重量%以下が好ましく、5〜40重量%の範囲が特に好ましい。
【0057】
本発明のインクジェット記録用水性インクを調製する際には、アニオン性、カチオン性、両性イオン性、非イオン性のいずれの界面活性剤を用いることが出来る。
【0058】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ベンゼンスルホン酸塩類、ナフタレンスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類、ポリオキシエチレン硫酸エステル塩類、リン酸エステル類が挙げられる。
【0059】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類が挙げられる。両性イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン類等が挙げられる。
【0060】
非イオン性活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンフェニルエーテル類、オキシラン重合体類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ソルビトール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類が挙げられる。これらの非イオン性活性剤の中でもHLBが14以上のものが特に好ましい。
【0061】
本発明のインクジェット記録用水性インク及びその前駆体である水性顔料分散体における、顔料粒子とポリウレタン樹脂粒子或いは顔料がポリウレタン樹脂で被覆されたマイクロカプセル型複合粒子からなる分散粒子は、着色画像特性や吐出安定性の面から、100nm以上200nm未満であることが好ましい。
【0062】
本発明のインクジェット記録用水性インクの調製には水溶性樹脂を用いることが出来る。この水溶性樹脂としては、例えば、にかわ、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、アラビアゴム、フィッシュグリュー、アルギン酸、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリ酸化エチレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、スチレン− マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0063】
スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体の様なスチレン−アクリル樹脂は、本発明で用いる前記した様なポリウレタン樹脂との相溶性に優れており、本発明における特定ポリウレタン樹脂との併用により、初期顔料分散性を損ねることなく、被記録媒体上における着色画像の濃度や耐光性をより高めることが出来る。この際、前記した様な共重合体は、質量換算でポリウレタン樹脂の不揮発分100部当たり、不揮発分0.5〜100部とすることが好ましい。
【0064】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、前記した様な水性顔料分散体に質量換算で顔料が3〜10%となる様に添加剤や液媒体を添加して希釈し、必要に応じて遠心分離や濾過する等することで調製することが出来る。
【0065】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、各種の被記録媒体への印字記録等に用いることが出来る。この際の被記録媒体としては、例えば、普通紙、写真用紙、マット紙、合成樹脂フイルム・シート等が挙げられる。本発明のインクジェット記録用水性インクで印字記録を行うことで、特に優れた光沢が得られるのは、写真用紙である。
【0066】
以下、実施例にて本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を具体的に説明するものであり、実施の態様がこれにより限定されるものではない。
【0067】
<製造例1>(ポリウレタンA樹脂分散体の作成)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、重量平均分子量2000のポリプロピレングリコール(PPG)を480g 、イソホロンジイソシアネート( I P D I) を263g 、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL) を0.007g仕込み、窒素ガス雰囲気下100 ℃ で1時間反応させた。その後65℃ 以下に冷却しジメチロールプロピオン酸(DMPA)115g 、ネオペンチルグリコール(NPG)14gおよびメチルエチルケトン(MEK)291gを添加し、75 ℃で2.5時間反応させ、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量が8700になったことを確認したのち、M E K 140g、メタノールを加えて反応を停止し、酸価52 、直鎖状の酸基含有ポリエーテル系ポリウレタン樹脂を得た。
さらに、48%水酸化カリウム95gを加え1時間攪拌した。その後、イオン交換水4107gを加え、40℃にて減圧蒸留を行なった。メチルエチルケトンを完全に留去し、ウレタン樹脂分散体を得た。
【0068】
<製造例2>(ポリウレタンB樹脂分散体の合成)
製造例1のDMPA、NPG、MEKを添加後の反応時間を75℃で4時間とし、反応停止時の重量平均分子量が12000とした意外は、同様の方法で、ポリウレタンB樹脂分散体の合成行なった。
【0069】
<製造例3>(ポリウレタンC樹脂分散体の合成)
製造例1のDMPA、NPG、MEKを添加後の反応時間を75℃で6時間とし、反応停止時の重量平均分子量が15400とした意外は、同様の方法で、ポリウレタンC樹脂分散体の合成行なった。
【0070】
<製造例4>(ポリウレタンD樹脂分散体の合成)
製造例1のDMPA、NPG、MEKを添加後の反応時間を75℃で7時間とし、反応停止時の重量平均分子量が16500とした意外は、同様の方法で、ポリウレタンD樹脂分散体の合成行なった
<製造例5>(ポリウレタンE樹脂分散体の合成)
製造例1の重量平均分子量2000のPPG480gの代わりに、重量平均分子量1000のPPG 480gを用い、DMPA、NPG、MEKを添加後の反応時間を75℃で6時間とし、反応停止時の重量平均分子量が15000とした意外は、同様の方法で、ポリウレタンE樹脂分散体の合成行なった
<製造例6>(ポリウレタンF樹脂分散体の合成)
製造例1の重量平均分子量2000のPPG480gの代わりに、重量平均分子量2000のPTMG 480gを用い、DMPA、NPG、MEKを添加後の反応時間を75℃で6時間とし、反応停止時の重量平均分子量が15000とした意外は、同様の方法で、ポリウレタンF樹脂分散体の合成行なった
<製造例7>(ポリウレタンG樹脂分散体の合成)
製造例1の重量平均分子量2000のPPG480gの代わりに、重量平均分子量2000のPEG 480gを用い、DMPA、NPG、MEKを添加後の反応時間を75℃で6時間とし、反応停止時の重量平均分子量が15200とした意外は、同様の方法で、ポリウレタンG樹脂分散体の合成行なった
<製造例8>(ポリウレタンH樹脂分散体の合成)
製造例1のDMPA、NPG、MEKを添加後の反応時間を75℃で1.5時間とし、反応停止時の重量平均分子量が7800とした意外は、同様の方法で、ポリウレタンH樹脂分散体の合成行なった。
<製造例9>(ポリウレタンI樹脂分散体の合成)
製造例1のDMPA、NPG、MEKを添加後の反応時間を75℃で8時間とし、反応停止時の重量平均分子量が17400とした意外は、同様の方法で、ポリウレタンI樹脂分散体の合成行なった。
<製造例10>(ポリウレタンJ樹脂分散体の合成)
製造例1の重量平均分子量2000のPPG480gの代わりに、重量平均分子量700のPPG 480gを用い、DMPA、NPG、MEKを添加後の反応時間を75℃で6時間とし、反応停止時の重量平均分子量が15300とした意外は、同様の方法で、ポリウレタンJ樹脂分散体の合成行なった
<製造例11>(ポリウレタンK樹脂分散体の合成)
製造例1の重量平均分子量2000のPPG480gの代わりに、重量平均分子量3200のPPG 480gを用い、DMPA、NPG、MEKを添加後の反応時間を75℃で6時間とし、反応停止時の重量平均分子量が15200とした意外は、同様の方法で、ポリウレタンK樹脂分散体の合成行なった
【0071】
<顔料分散体の作成>
冷却用ジャケットを備えた混合槽に、任意の顔料(例:BASF製 マゼンタ顔料Cromophtal Jet Magennta 2BC)450部と、WHL−701(DIC(株)製、スチレン−アクリル系樹脂43.4%を含むIPAとMEKの比率8:2の溶液)259部、25%水酸化ナトリウム水溶液77.5部、イソプロピルアルコール78部 イオン交換水1010部を仕込み、スリーワンモーターで1時間攪拌し混合した。得られた混合液を直径0.3mmのジルコニアビーズを充填した分散装置(SCミル SC100/32型、三井鉱山(株)製)に通し、循環方式(分散装置より出た分散液を混合槽に戻す方式)により分散した。分散工程中は、冷却用ジャケットに冷水を通して分散液温度を30℃以下に保つよう制御し、分散装置のローター周速を11.25m/秒に固定して4.5時間分散した。分散終了後、混合槽より分散原液を抜き採り、次いで水1400部で混合槽および分散装置流路を洗浄し、分散原液と合わせてミル分散液を得た。
ガラス製蒸留装置にミル分散液を入れ、イソプロピルアルコールおよびメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去した。室温まで放冷後、攪拌しながら2%塩酸を滴下してpH4.5に調整した後、固形分をヌッチェ式濾過装置で濾過、水洗した。水洗後、分散液に含有されるCa Mg Siは50PPM以下に減少していることを確認した。ケーキを容器に採り、25%水酸化ナトリウム水溶液部を加えた後、ディスパー(TKホモディスパー20型、特殊機化工業(株)製)にて再分散した。さらに水を加えて不揮発分23重量%に調整後、6000Gで30分間の遠心分離処理を行って、水性の顔料分散原液を得た。
【0072】
[実施例1](インク1の製造方法)
上記顔料分散体の作成した顔料分散体とウレタン樹脂分散体Aを、顔料濃度1.5〜5%、ウレタン樹脂濃度0.15〜5.0%となるようにインクを作製した。その他成分は下記の通りである。
1,2−ヘキサンジオール 5%
グリセリン 10%
サーフィノール465(エアプロダクツ・アンド・ケミカル社製) 1%
イオン交換水 その他
【0073】
[実施例2](インク2の製造方法)
実施例1の樹脂分散体Aを樹脂分散体Bに変更した以外は、同様にしてインクを作成した。
【0074】
[実施例3](インク3の製造方法)
実施例1の樹脂分散体Aを樹脂分散体Cに変更した以外は、同様にしてインクを作成した。
【0075】
[実施例4](インク4の製造方法)
実施例1の樹脂分散体Aを樹脂分散体Dに変更した以外は、同様にしてインクを作成した。
【0076】
[実施例5](インク5の製造方法)
実施例1の樹脂分散体Aを樹脂分散体Eに変更した以外は、同様にしてインクを作成した。
【0077】
[比較例1](インク6の製造方法)
製造例1の樹脂分散体Aを樹脂分散体Fに変更した以外は、同様にしてインクを作成した。
【0078】
[比較例2](インク7の製造方法)
製造例1の樹脂分散体Aを樹脂分散体Gに変更した以外は、同様にしてインクを作成した。
【0079】
[比較例3](インク8の製造方法)
製造例1の樹脂分散体Aを樹脂分散体Hに変更した以外は、同様にしてインクを作成した。
【0080】
[比較例4](インク9の製造方法)
製造例1の樹脂分散体Aを樹脂分散体Iに変更した以外は、同様にしてインクを作成した。
【0081】
[比較例5](インク10の製造方法)
製造例1の樹脂分散体Aを樹脂分散体Jに変更した以外は、同様にしてインクを作成した。
【0082】
[比較例6](インク11の製造方法)
製造例1の樹脂分散体Aを樹脂分散体Kに変更した以外は、同様にしてインクを作成した。
比較例1〜比較例6
【0083】
<評価方法>
作製したインクを任意の吐出回数を設定できるインクジェット試験機(例:Micro jet社製 Labo Jet−500)を用いて以下の要領で吐出試験を行なう。液滴速度の測定は、高速度カメラ(キーエンス社製 VW−900)を用いて行った。
評価内容は下記の通りである。
1.連続吐出を行なう。
2.高速度カメラなどで液滴のスピードを測定する。
3.吐出を停止する。30秒。
4.5滴吐出させる。このとき、下部の紙は一定速度でスライドさせる。
5.1滴目の吐出速度を測定する。(吐出再開時の液滴の吐出速度を測定する。)
6.5滴分印刷された紙を観察し、着弾ずれなどの有無を確かめる。(着弾ズレの有無を測定する。)
【0084】
<発一性試験>
発一性は下記の式で求める。
発一性=吐出再開時の速度/連続吐出時の速度
発一性評価のスコアは下記の通りである。
0:吐出再開時に吐出しない。
1:発一性0.2以下。
2:発一性0.2〜0.4
3:発一性0.4〜0.6
4:発一性0.6〜0.8
5:発一性0.8以上
【0085】
<着弾ズレテスト>
上記評価方法の4の一定速度でスライドさせた紙に並んでいる五つの液滴が均等かつ直線上に並んでいるか確認を行なう。
【0086】
<吐出速度>
上記評価方法の連続吐出時の吐出速度を比較する。
【0090】
表1および表2の結果から明らかなように、構成成分であるポリオールを分子量1000〜2000程度のPPG、重合反応停止後の分子量を8700〜16500程度とした場合のみ、良好な発一性を得られる。