(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分散剤が、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレンイミン(PEI)である、請求項1から3のうちのいずれか一項に記載のめっきの前処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、基板に形成された凹部(貫通ビアホール(TSV)となる凹部)にCu(銅)を埋め込むための一連の工程について説明する。この一連の工程には、発明の一実施形態に係るめっき前処理方法の各工程が含まれる。
【0012】
予めTSVとなる凹部(孔)2aが形成された基板(シリコン基板)2が用意される。凹部2aは、例えば、フォトリソグラフィ技術を用いて、公知のドライエッチングプロセス、例えばICP−RIE(誘導結合プラズマ反応性イオンエッチング)により形成することができる。
【0013】
以下にめっきの前処理について説明する。
【0014】
[親水化処理]
まず、基板2に対して親水化処理が施される。親水化処理は、UV(紫外線)照射処理、プラズマ酸化処理、SPM処理(ピラニア洗浄)等の任意の公知の方法により実施することができる。この親水化処理により、基板表面が、後述するカップリング剤が結合しやすい状態になる。親水化処理がSPM処理により行われる場合には、SPM処理の後にDIW(純水)によるリンス処理が施される。
【0015】
[シランカップリング処理]
次に、シランカップリング剤を、凹部2aの内側表面を含む基板の表面に吸着させてシラン系結合層21a(
図1(a)参照)を形成するシランカップリング処理が行われる。「シラン系結合層」とは、シランカップリング剤由来の自己組織化単分子膜(SAM)からなる層であって、当該層の下地(ここではシリコン)と上層(後述の触媒粒子含有
膜22)との間に介在して両者の結合を強化する層である。
【0016】
本実施形態では、シランカップリング処理を真空蒸着処理により行う。真空蒸着処理は、例えば
図3(a)に概略的に示した構成を有する真空蒸着装置30を用いて行うことができる。この場合、真空(減圧)雰囲気にされた処理チャンバ31内に設けた載置台32の上に基板2を載置し、載置台32の内部に設けたヒータ33により基板2を例えば100℃程度に加熱する。この状態で、タンク34内に貯留された液体状態のシランカップリング剤をヒータ35により加熱して気化させ、キャリアガス供給源36から供給されるキャリアガスに乗せて処理チャンバ31内に供給する。
【0017】
シランカップリング処理は、液処理によって行うことも可能である。液処理としては、後述するチタンカップリング処理で用いるスピナー(回転式液処理装置)を用いたスピンオン(SPIN-ON)処理、シランカップリング剤の浴に基板を浸漬する浸漬処理を用いることができる。なお、液処理によりシランカップリング処理を行った場合には、次のチタンカップリング処理に移行する前に、別途ベーク処理を行う必要がある。
【0018】
凹部2aのアスペクト比が高い場合(例えば本実施形態のように凹部2aが高アスペクト比のTSVの場合)には、液処理では凹部2aの底の部分までシランカップリング剤を到達させることが不可能若しくは困難であるか、あるいは生産技術的に受け入れがたい長時間が必要となるため、真空蒸着処理によりシランカップリング処理を行うことが好ましい。このため、本実施形態ではシランカップリング処理を真空蒸着処理により行っている。
【0019】
シランカップリング処理が終了した時点の状態が、
図1(a)に示されている。シランカップリング剤由来の膜すなわちシラン系結合層21aは、凹部2aの内側の表面の全体、並びに凹部2aの外側の基板2の表面(上面)の全体に付着している。
【0020】
[チタンカップリング処理]
次に、チタンカップリング剤を、凹部の内側表面を含む基板の表面に吸着させてチタン系結合層21b(
図1(b)を参照)を形成するチタンカップリング処理が行われる。「チタン系結合層」とは、チタンカップリング剤由来の自己組織化単分子膜からなる層であって、当該層の下地と上層との間に介在して両者の結合を強化する層である。
【0021】
チタンカップリング処理は液処理により行うことができる。液処理としては、チタンカップリング剤の浴に基板を浸漬する浸漬処理、あるいは、
図3(b)に概略的に構成を示したスピナー(回転式液処理装置)40を用いたスピンオン処理などを用いることができる。本実施形態では、チタンカップリング処理をスピンオン処理により行っている。
【0022】
スピンオン処理は、
図3(b)に示すように、スピンチャック41により基板2を水平姿勢に保持して鉛直軸線周りに回転させ、この回転する基板2の表面中央部に向けてノズル42からチタンカップリング剤を吐出することにより行うことができる。基板2の表面中央部に供給された液状のチタンカップリング剤は遠心力により基板周縁部に向けて広がり、これにより、基板の表面にチタンカップリング剤由来の膜、すなわち、チタン系結合層21bが形成される。この処理は、常温の空気中で行うことができる。
【0023】
チタンカップリング処理が終了したら、凹部2aの内部及びその周辺には、
図1(b)に概略的に示した態様で、シラン系結合層21a及びチタン系結合層21bが形成される。先に形成されたシラン系結合層21aのうちのチタンカップリング剤が作用した部分は、チタン系結合層21bに変わっている。本実施形態では、チタンカップリング処理は、比較的短時間で行い、凹部2aの奥にチタンカップリング剤が入っていかないようにしている。従って、凹部2aの奥の表面は、シラン系結合層21aが残っている。
【0024】
めっきの密着性が特に問題となるのは凹部2aの入口エッジ部の近傍領域である。この領域にはめっき膜に高い内部応力が発生し、また、後工程のCMP(化学機械研磨)を行う際に応力集中が生じ易いので、特に高い密着性が望まれる。一方、凹部2aの内部においては、上記領域ほどの密着性は要求されず、欠陥の無い均一なめっきを形成することが重視される。従って、
図1(b)に示すように、応力に耐えねばならない領域に高結合力のチタン系結合層21
bを形成し、それ以外の部分は高カバレッジの成膜が可能なシラン系結合層21
aを形成することにより上記の相反する要求を満足することができる。また、凹部2aの奥までチタンカップリング剤が入らないということにより、後工程の焼成処理を容易に行うことができるという利点もある。
【0025】
[焼成処理]
チタンカップリング処理が終了したら、チタンカップリング剤の焼成処理を行う。この焼成処理は、低酸素雰囲気例えば窒素ガス雰囲気で基板を加熱することにより行うことができる。具体的には、例えば、
図3(c)に概略的に示した構成を有する加熱装置(ベーク装置)50を用い、窒素ガス雰囲気にされた処理チャンバ51内に設けた載置台52の上に基板2を載置し、載置台52の内部に設けたヒータ53により基板2を例えば100℃程度に加熱する。この焼成処理により、チタン系結合層21bが完成する。
【0026】
これ以降の工程については
図2を参照して説明する。
図2では、図面の簡略化のため、シラン系結合層21aとチタン系結合層21bとを区別せず、単一の結合層21として表記している。
図2(a)は、上記焼成処理が終了した時点の状態を示している。
【0027】
[触媒粒子含有膜形成処理]
次に、金属触媒粒子としてのPdナノ粒子(Pd−NPs)と、Pdナノ粒子を被覆する分散剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)を溶媒中に分散させてなるPdナノコロイド溶液、すなわち触媒粒子溶液を基板に供給して、触媒粒子含有膜形成処理を行う。
【0028】
触媒粒子含有膜形成処理は、例えば、
図3(b)に概略的に示した構成を有するスピナー40を用い、スピンチャック41により基板2を水平姿勢に保持して鉛直軸線周りに回転させ、この回転する基板の表面中央部に向けてノズルから触媒粒子溶液を吐出することにより行うことができる。これにより、
図2(b)に示すように、凹部2aの内側の表面及び凹部2aの外側の基板の表面において、結合層21の上に、金属触媒粒子を含有する触媒粒子含有膜22が形成される。
【0029】
[第1加熱処理]
触媒粒子含有膜形成処理が終了したら、第1加熱処理を行う。第1加熱処理は、真空(減圧)雰囲気で基板2を加熱することにより行うことができる。具体的には、例えば、例えば
図3(c)に概略的に示す構成を有する加熱装置50を用いて、真空(減圧)雰囲気にした処理チャンバ51内(窒素ガスは供給しないで、真空引きするだけ)において、基板2を載置台52の上に載置して、基板2を100℃程度の温度で加熱することにより第1加熱処理を行うことができる。
【0030】
[第2加熱処理]
第1加熱処理が終了したら、第1加熱処理の処理温度より高い温度、例えば200〜280℃、ここでは250℃で第2加熱処理を行う。第2加熱処理は、低酸素雰囲気(好ましくは酸素濃度1%未満)、例えば窒素ガス雰囲気で基板2を加熱することにより行うことができる。具体的には、例えば、例えば
図3(c)に概略的に示す構成を有する加熱装置50を用いて、窒素ガス雰囲気にした処理チャンバ51内において、基板2を載置台52の上に載置して、基板2を250℃程度の温度で加熱することにより第2加熱処理を行うことができる。第2加熱処理が終了すると、触媒粒子含有膜22が下地の結合層21に強固に結合した状態となる。
【0031】
以上によりめっきの前処理が終了する。
【0032】
[バリア層形成処理]
第2加熱処理が終了したら、
図2(c)に示すように、公知の無電解めっき技術により、Co−W系の(コバルト及びタングステンを含むもの)バリア層23を形成する。このとき、触媒粒子は、無電解めっきの触媒として作用する。
【0033】
[シード層形成処理]
バリア層形成処理が終了したら、
図2(d)に示すように、公知の無電解めっき技術により、バリア層23の上にCuシード層24を形成する。
【0034】
[埋め込み処理]
シード層形成処理が終了したら、公知の電解めっき技術により、
図2(e)に示すように、Cuシード層24の上にCuめっき層25を形成し、このCuめっき層25により凹部2aを完全に埋め込む。
【0035】
埋め込み処理が終了したら、基板2の裏面をCMPにより削り、Cuめっき層25が裏面に露出するようにする。以上により、一連のTSVの埋め込み処理が終了する。
【0036】
以下に、本実施形態における触媒粒子含有膜形成処理後の二段階加熱処理(第1加熱処理及び第2加熱処理)ついてさらに詳細に説明する。
【0037】
触媒粒子含有膜形成処理により、Pdナノコロイド溶液(触媒粒子溶液)からなる膜を基板上に付着させた後に、まず比較的低温(本実施形態では100℃)で加熱し、その後に、比較的高温(本実施形態では250℃)で加熱することにより、基板2の表面に固着される触媒金属ナノ粒子(Pdナノ粒子)の数が飛躍的に増大することが実験により確認された。
【0038】
実験では、触媒粒子含有膜形成処理により基板の表面に単位面積当たり20000個のPdナノ粒子を付着させた後に、
条件1:(100℃加熱無しで250℃加熱を実施)、
条件2:(100℃加熱を実施して250℃加熱無し)、
条件3:(100℃加熱の実施後250℃加熱を実施)、
条件4:(100℃加熱及び250℃加熱の両方とも無し)
で加熱処理を行った。
なお100℃加熱は真空雰囲気中で、250℃加熱は窒素ガス雰囲気中で行った。
【0039】
加熱処理後の単位面積当たりのPdナノ粒子の数は、条件1で5000個、条件3で9000〜10000個、条件4で0個であった。条件2では、個数のデータは無いが、その後に生成したバリア層(無電解めっきによるCo−W系の膜)の密度低下が発生したため、条件1と同程度かそれ以下の個数であると考えられる。
【0040】
現状、上記の実験結果についての完全な解析が完了しているわけではないが、発明者は、上記実験結果について下記のように考えている。
【0041】
250℃程度の比較的高温で第2加熱工程を行うことにより、有機材料からなる分散剤(ここではポリビニルピロリドン(PVP))が重合(Polymerization)して、シート状(フィルム状)のポリマが形成される。このシート化されたポリマが、触媒金属ナノ粒子(ここではPdナノ粒子)を覆ってその内部に封じ込めるとともに、下地の結合層(カップリング処理により形成した層)に強固に結合する。このため、シート化されたポリマにより触媒金属ナノ粒子が下地の結合層上に強固に固定されるとともに、後に行われる無電解めっき時における触媒金属ナノ粒子のめっき液に対する耐食性も向上させる。
【0042】
PVPのような分散剤は水分を吸いやすく、触媒金属分散液が水を含んでいるため、分散剤中には多くの水分が含まれる。分散剤中に含まれる水分は、第2加熱工程中に発生する重合反応を阻害する。また、水分は、下地の結合層の結合基(例えば終端のNH基)と触媒金属ナノ粒子との健全な結合を阻害する。
【0043】
このため、第2加熱工程に先立ち比較的低温で第1加熱工程を行って分散剤中の水分を予め除去しておくことにより、第2加熱工程中に発生する重合反応が円滑に進行するものと考えられる。なお、第2加熱工程に先立ち第1加熱工程を行うことが有利であることの付加的な理由として、比較的低温で第1加熱工程を行うことにより分散剤の流動性が増し、その結果として形成される膜が均一化されるのではないかということも一つの仮説として考えられる。
【0044】
本発明は上記の原理に拘束されるものではないが、いずれにせよ、二段階の加熱処理により、金属ナノ粒子の固着数が著しく改善されることは実験結果より明らかである。
【0045】
上記実施形態においては、触媒粒子溶液に含まれる金属触媒がパラジウム(Pd)であったが、これに限定されるものではなく、例えば金(Au)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)であってもよい。
【0046】
上記実施形態においては、触媒粒子溶液に含まれる分散剤がポリビニルピロリドン(PVP)であったが、これに限定されるものではなく、例えばポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレンイミン(PEI
)であってもよい。
【0047】
上記実施形態においては、シランカップリング処理及びチタンカップリング処理の両方を行ったが、いずれか一方のみ、例えばシランカップリング処理のみを行ってもよい。チタンカップリング処理を行わないのであれば、焼成処理を省略して、真空蒸着により行われるシランカップリング処理後に触媒粒子含有膜形成処理に移行してもよい。上記の二段階加熱処理を行えば、めっきの密着性を大幅に向上させることができるため、シランカップリング処理のみであっても、実用上問題無いめっきの密着性を得ることができる。なお、カップリング処理がシランカップリング処理及びチタンカップリング処理のいずれの場合においても、触媒粒子含有膜形成処理後の二段階加熱処理は有益である。
【0048】
上記実施形態においては、加熱工程を低酸素濃度雰囲気または真空雰囲気で行っていたが、大気(空気)雰囲気で行うことも可能である。この場合、低酸素濃度雰囲気または真空雰囲気で加熱処理を行った場合と比較すると密着性が低下する傾向にあるが、低下した密着性のレベルが許容できるのであれば、処理コスト低減の観点から大気(空気)雰囲気での加熱処理を採用してもよい。
【0049】
上記実施形態においては、バリア層23がCo−W系のものであったが、これに限定されるものではなく、他の公知の適当なバリア層材料、例えばNi−W系(ニッケル及びタングステンを含むもの)材料からなるバリア層を形成することもできる。また、バリア層は、本件出願人の先行出願に係る特開2013−194306号に記載されているように、二層に形成してもよい。
【0050】
上記実施形態においては、シード層24及びめっき層25が銅(Cu)であったが、タングステン(W)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)またはその合金であってもよい。バリア層23は、シード層24及びめっき層25の材質に応じて適宜変更することができる。
【0051】
上記実施形態においては、凹部2aはTSVであったが、これに限定されるものではなく、凹部は通常のビア、トレンチ等であってもよい。さらに、処理対象の基板は凹部のあるものに限定されない。
【0052】
上述した一連の処理、すなわち親水化処理、シランカップリング処理、チタンカップリング処理、焼成処理、触媒粒子含有膜形成処理、第1及び第2加熱処理、バリア層形成処理、シード層形成処理及び埋め込み処理は、例えば
図4に概略的に示されためっき処理システムにより実行することができる。
【0053】
図4に示すめっき処理システム100において、搬入出ステーション200に設けられた基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCから基板2を取り出し、取り出した基板2を受渡部14に載置する。処理ステーションに設けられた処理ユニット16は、上記の一連の処理の少なくともいずれか一つを実行しうるように構成されている。すなわち、処理ユニット16のいくつかは、
図3に示した装置30、40、50である。受渡部14に載置された基板2は、処理ステーション300の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、上記の処理に対応する処理ユニット16へ順次搬入されて、各処理ユニット16で所定の処理が施される。一連の処理が終了した後、基板2は処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済の基板2は、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0054】
めっき処理システム100は、制御装置400を備える。制御装置400は、たとえばコンピュータであり、制御部401と記憶部402とを備える。記憶部402には、
めっき処理システム100において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部401は、記憶部402に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって
めっき処理システム100の動作を制御する。すなわち、制御装置400は、めっきに関連する上述した一連の処理を実施するために、各処理ユニット16の動作と、基板搬送装置13,17による基板2の搬送動作を制御する。
【0055】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。