特許第6178052号(P6178052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6178052クレゾール類の精製方法、感光性樹脂組成物用ノボラック樹脂の製造方法、及び感光性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178052
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】クレゾール類の精製方法、感光性樹脂組成物用ノボラック樹脂の製造方法、及び感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 37/72 20060101AFI20170731BHJP
   C07C 39/07 20060101ALI20170731BHJP
   C08G 8/08 20060101ALI20170731BHJP
   G03F 7/023 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   C07C37/72
   C07C39/07
   C08G8/08
   G03F7/023 511
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-161475(P2012-161475)
(22)【出願日】2012年7月20日
(65)【公開番号】特開2014-19678(P2014-19678A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年4月23日
【審判番号】不服2016-8364(P2016-8364/J1)
【審判請求日】2016年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】竹堤 俊紀
(72)【発明者】
【氏名】田中 真司
【合議体】
【審判長】 佐藤 健史
【審判官】 井上 雅博
【審判官】 齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−12987(JP,A)
【文献】 特開2000−198827(JP,A)
【文献】 特開2002−332322(JP,A)
【文献】 特開昭61−55190(JP,A)
【文献】 特開昭59−30886(JP,A)
【文献】 特開平07−41768(JP,A)
【文献】 特開2000−319346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 37/72,39/07,34/70
C10C1/20,1/04,1/00
C08G8/00,8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性樹脂組成物用ノボラック樹脂の製造に用いられるクレゾール類の精製方法であって、
タール蒸留により得られた分留クレゾール中の塩基性物質を除去する除去工程を含み、
該除去工程では、前記分留クレゾールを塩酸の水溶液で洗浄し、又は前記分留クレゾールに塩酸を添加した後、再蒸留することを特徴とする精製方法。
【請求項2】
前記除去工程において、前記分留クレゾール中の前記塩基性物質を0.9ppm以下に除去する請求項1記載の精製方法。
【請求項3】
感光性樹脂組成物用ノボラック樹脂の製造方法であって、
触媒の存在下、クレゾール類とアルデヒド類及び/又はケトン類とを反応させる反応工程を含み、
前記クレゾール類が、請求項1又は2記載の精製方法によって精製された精製クレゾールを含有することを特徴とする製造方法。
【請求項4】
前記反応工程では、前記クレゾール類及び該クレゾール類以外のフェノール類と前記アルデヒド類及び/又は前記ケトン類とを反応させる請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
ノボラック樹脂を含有する感光性樹脂組成物の製造方法であって、
前記ノボラック樹脂は、触媒の存在下、クレゾール類とアルデヒド類及び/又はケトン類とを反応させる反応工程を含むノボラック樹脂の製造方法によって製造され、
前記クレゾール類が、タール蒸留により得られた分留クレゾール中の塩基性物質を除去する除去工程を含む精製方法によって精製された精製クレゾールを含有し、かつ
該除去工程では、前記分留クレゾールを塩酸の水溶液で洗浄し、又は前記分留クレゾールに塩酸を添加した後、再蒸留することを特徴とする感光性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物用ノボラック樹脂の製造に用いられるクレゾール類の精製方法、その精製方法によって精製された精製クレゾールを用いた感光性樹脂組成物用ノボラック樹脂の製造方法、及びその製造方法によって製造されたノボラック樹脂を含有する感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノボラック樹脂とキノンジアジド基含有化合物とを含有するポジ型の感光性樹脂組成物は、感度、解像性、耐熱性に優れる材料であるとして、半導体の集積回路(IC)の製造等の分野において広く実用に供されている。
【0003】
このうちノボラック樹脂としては、クレゾール類とアルデヒド類及び/又はケトン類との縮合反応により合成されるものが一般に用いられている。また、クレゾール類としては、化学合成したものが一般に用いられている。例えば、クレゾールの3種の異性体のうちo−クレゾールは、フェノール及びメタノールを原料とするフェノールメチル化法により製造することができる。また、m−クレゾール及びp−クレゾールは、トルエン及びプロピレンから得られるシメンを酸化するトルエンイソプロピル化法(シメン法)により製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−53080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、クレゾール類は、コールタール中にタール酸として含まれており、コールタールの蒸留・精製によっても得ることができる。しかし、コールタール中にはタール塩基としてピリジン、メチルピリジン、アニリン等の塩基性物質も含まれており、これらが分留クレゾール中に残留してしまうことが知られている。そこで、このような塩基性物質を除去する方法が数多く提案されている。例えば特許文献1では、タール酸に水酸化アルカリの水溶液を加えてタール酸塩の水溶液とし、この水溶液を活性炭と接触させることによりタール塩基等の不純物を吸着除去する方法が提案されている。
【0006】
しかし、本発明者らの検討によれば、クレゾール類を用いて製造したノボラック樹脂を感光性樹脂組成物に用いるには、分留クレゾール中の塩基性物質をほぼ完全に除去する必要があり、特許文献1のような従来の方法では不十分であることが判明した。
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、タール蒸留により得られた分留クレゾールを精製し、感光性樹脂組成物用として好適なノボラック樹脂を製造可能とするクレゾール類の精製方法、その精製方法によって精製された精製クレゾールを用いた感光性樹脂組成物用ノボラック樹脂の製造方法、及びその製造方法によって製造されたノボラック樹脂を含有する感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた。その結果、タール蒸留により得られた分留クレゾール中の塩基性物質を特定の方法で除去することにより、感光性樹脂組成物用として好適なノボラック樹脂が製造可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0009】
本発明の第一の態様は、感光性樹脂組成物用ノボラック樹脂の製造に用いられるクレゾール類の精製方法であって、タール蒸留により得られた分留クレゾール中の塩基性物質を除去する除去工程を含み、該除去工程では、前記分留クレゾールを酸性水溶液で洗浄し、又は前記分留クレゾールに酸性物質を添加した後、再蒸留することを特徴とする精製方法である。
【0010】
本発明の第二の態様は、感光性樹脂組成物用ノボラック樹脂の製造方法であって、触媒の存在下、クレゾール類とアルデヒド類及び/又はケトン類とを反応させる反応工程を含み、上記クレゾール類が、本発明の第一の態様に係る精製方法によって精製された精製クレゾールを含有することを特徴とする製造方法である。
【0011】
本発明の第三の態様は、本発明の第二の態様に係る製造方法によって製造されたノボラック樹脂を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、タール蒸留により得られた分留クレゾールを精製し、感光性樹脂組成物用として好適なノボラック樹脂を製造可能とするクレゾール類の精製方法、その精製方法によって精製された精製クレゾールを用いた感光性樹脂組成物用ノボラック樹脂の製造方法、及びその製造方法によって製造されたノボラック樹脂を含有する感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<クレゾール類の精製方法>
本発明に係るクレゾール類の精製方法は、タール蒸留により得られた分留クレゾール中の塩基性物質を除去する除去工程を含む。
【0014】
上記分留クレゾールとしては、特に限定されず、公知の方法により得られた分留クレゾールを用いることができるが、その中でも、m−クレゾール及びp−クレゾールを主成分とするm/p混合品は、塩基性物質の含有量が多い傾向にある。このため、特にm/p混合品を用いた場合にその効果が高い。
【0015】
塩基性物質を除去する第1の方法は、分留クレゾールを酸性物質の水溶液で洗浄するものである。すなわち、分留クレゾールと酸性物質の水溶液とを混合し、分留クレゾール中の塩基性物質を水相に移行させ、その後、分液することにより、分留クレゾール中の塩基性物質を除去することができる。
【0016】
酸性物質としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸やシュウ酸、酢酸等の有機酸が挙げられるが、無機酸が好ましく、無機酸の強酸がより好ましく、塩酸、硫酸がさらに好ましく、塩酸が最も好ましい。また、酸性物質の濃度は、分留クレゾール中の塩基性物質の含有量によっても異なるが、通常は0.1〜20質量%であり、好ましくは0.5〜15質量%である。
分留クレゾールに対する酸性物質の水溶液の量は、特に限定されないが、通常は5〜500質量%であり、好ましくは10〜300質量%である。
【0017】
なお、分液性を向上させるため、分留クレゾールには有機溶剤を混合しておくことが好ましい。有機溶剤としては、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等が挙げられる。有機溶剤の使用量は、特に限定されないが、通常は分留クレゾールに対して質量比で0.5〜5倍量である。
【0018】
具体的な分液方法は、連続法であっても回分法であってもよい。連続法は、ミキサーセトラー型や塔型の多段抽出装置を用い、分留クレゾール(又は分留クレゾールと有機溶剤との混合溶剤)と酸性物質の水溶液とを連続的にフィードし、分留クレゾール中の塩基性物質を抽出除去するものである。一方、回分法は、分留クレゾール(又は分留クレゾールと有機溶剤との混合溶剤)と酸性物質の水溶液とを混合撹拌した後、静置し、分液する方法である。
【0019】
また、塩基性物質を除去する第2の方法は、分留クレゾールに酸性物質を添加した後、再蒸留するものである。すなわち、分留クレゾール中に酸性物質を添加することにより塩を形成させた後、常法に従って再蒸留することにより、分留クレゾール中の塩基性物質を除去することができる。
【0020】
添加する酸性物質としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸やシュウ酸、酢酸等の有機酸が挙げられるが、無機酸が好ましく、塩酸、硫酸がより好ましく、塩酸が最も好ましい。また、酸性物質の添加量は、分留クレゾール中の塩基性物質の含有量によっても異なるが、通常は0.5〜20モル%であり、好ましくは1.0〜10モル%である。
【0021】
分留クレゾールを酸性物質の水溶液で洗浄する回数(分液回数)や分留クレゾールに酸性物質を添加した後、再蒸留する回数は、分留クレゾール中の塩基性物質の含有量や最終目標濃度に応じて適宜定められる。本発明者らの検討によれば、分留クレゾール中に存在する塩基性物質の中でも、ピリジン及び2−メチルピリジンの含有量が顕著に多いため、ピリジン及び2−メチルピリジンの含有量がそれぞれ2ppm未満となるまで、好ましくは1ppm未満となるまで、より好ましくは0ppm(すなわち検出限界未満)となるまで、除去工程を続けることが望ましい。
なお、本発明に係る精製方法は塩基性物質の除去効率が高いため、従来の方法よりも短時間で塩基性物質をほぼ完全に除去することができる。
【0022】
<感光性樹脂組成物用ノボラック樹脂の製造方法>
本発明に係る感光性樹脂組成物用ノボラック樹脂の製造方法は、触媒の存在下、クレゾール類とアルデヒド類及び/又はケトン類とを反応させる反応工程を含む。この反応工程では、クレゾール類に加えて、該クレゾール類以外のフェノール類をアルデヒド類及び/又はケトン類と反応させてもよい。
【0023】
上記クレゾール類としては、本発明に係る精製方法によって精製された精製クレゾールを用いることができる。また、感度等の諸特性を調整するため、化学合成によって得られたクレゾール類をさらに用いてもよい。一実施態様では、用いられるクレゾール類の50質量%以上が本発明に係る精製方法によって精製された精製クレゾールである。
【0024】
上記クレゾール類以外のフェノール類としては、フェノール;2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等のキシレノール類;o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール等のアルキルフェノール類;2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール等のトリアルキルフェノール類;レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール等の多価フェノール類;アルキルレゾルシン、アルキルカテコール、アルキルハイドロキノン等のアルキル多価フェノール類(いずれのアルキル基も炭素数1〜4である);α−ナフトール、β−ナフトール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA等が挙げられる。これらのフェノール類は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのフェノール類の中では、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノールが好ましい。
【0025】
上記アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、トリメチルアセトアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、シクロヘキサンアルデヒド、フルフラール、フリルアクロレイン、ベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、桂皮アルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒド類は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのアルデヒド類の中では、入手のし易さからホルムアルデヒドが好ましい。
【0026】
上記ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジフェニルケトン等が挙げられる。これらのケトン類は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
上記酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜リン酸等の無機酸類;蟻酸、シュウ酸、酢酸、ジエチル硫酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸類;酢酸亜鉛等の金属塩類等が挙げられる。これらの酸触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
このようにして得られるノボラック樹脂の質量平均分子量は、特に限定されないが、2000〜30000であることが好ましく、3000〜25000であることがより好ましい。質量平均分子量を2000以上にすることにより、調製した感光性樹脂組成物の成膜性が良好となり、耐熱性も良好となる。また、質量平均分子量を30000以下とすることにより、調製した感光性樹脂組成物の感度が良好となる。
なお、ノボラック樹脂の質量平均分子量は、適宜分別操作を行い、低分子量のものを除去することにより調整することもできる。
【0029】
また、ノボラック樹脂の分散度[質量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)]は、5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。分散度を5以下にすることにより、調製した感光性樹脂組成物を用いて樹脂パターンを形成した場合のパターン形状が良好なものとなる。なお、分散度は実質的には1以上である。
【0030】
<感光性樹脂組成物>
本発明に係る感光性樹脂組成物は、本発明に係る製造方法によって製造されたノボラック樹脂を含有する。ノボラック樹脂の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分に対して50〜95質量%であることが好ましく、60〜90質量%であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、現像性のバランスがとり易い傾向がある。
【0031】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、感光剤としてキノンジアジド基含有化合物を含有する。このキノンジアジド基含有化合物としては、フェノール化合物とキノンジアジド基含有スルホン酸化合物との完全エステル化物や部分エステル化物が好ましい。このようなキノンジアジド基含有化合物は、フェノール化合物とキノンジアジド基含有スルホン酸化合物とを、ジオキサン等の適当な溶剤中において、トリエタノールアミン、炭酸アルカリ、炭酸水素アルカリ等のアルカリの存在下で縮合させ、完全エステル化又は部分エステル化することにより得ることができる。
【0032】
上記フェノール化合物としては、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0033】
【化1】
【0034】
上記式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基を示す。R〜R11は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。Qは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、Rと結合した炭素数3〜6のシクロアルキル基、又は下記式(2)で表される基を示す。a,bは、それぞれ独立に1〜3の整数を示し、d,nは、それぞれ独立に0〜3の整数を示す。
【0035】
【化2】
【0036】
上記式(2)中、R12,R13は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基を示す。cは1〜3の整数を示す。
【0037】
このフェノール化合物の具体例としては、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のポリヒドロキシベンゾフェノン類;
トリス(4−ヒドロシキフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、4,4’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6−トリメチルフェノール)、5,5’−ジシクロヘキシル−4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−2,2’−ジメチルトリフェニルメタン等のトリスフェノール型化合物;
2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−5−ヒドロキシフェノール、2,6−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール等のリニア型3核体フェノール化合物;
1,1−ビス〔3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル〕イソプロパン、ビス[2,5−ジメチル−3−(4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン、ビス[2,5−ジメチル−3−(4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−エチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−エチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2,5−ジメチル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン等のリニア型4核体フェノール化合物;
2,4−ビス[2−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルベンジル]−6−シクロヘキシルフェノール、2,4−ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルベンジル]−6−シクロヘキシルフェノール、2,6−ビス[2,5−ジメチル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシベンジル]−4−メチルフェノール等のリニア型5核体フェノール化合物;
ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、2,3,4−トリヒドロキシフェニル−4’−ヒドロキシフェニルメタン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−2−(3’−フルオロ−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、4,4’−[1−[4−[2−[4−ヒドロキシフェニル]−2−プロピル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール等のビスフェノール型化合物;
1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1−[1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン等の多核枝分かれ型化合物;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等の縮合型フェノール化合物;等が挙げられる。
これらのフェノール化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
上記キノンジアジド基含有スルホン酸化合物としては、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸、オルトアントラキノンジアジドスルホン酸等が挙げられる。
【0039】
キノンジアジド基含有化合物の含有量は、ノボラック樹脂100質量部に対し5〜50質量部であることが好ましく、5〜25質量部であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、感光性樹脂組成物の感度が良好となる。
【0040】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、増感剤として、上記フェノール化合物を含有することが好ましい。フェノール化合物の含有量は、ノボラック樹脂100質量部に対し5〜50質量部であることが好ましく、10〜40質量部であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、感光性樹脂組成物の感度が良好となり、現像時の膜減りも抑えられる。
【0041】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、必要に応じて、界面活性剤、紫外線吸収剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ−2’,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、5−アミノ−3−メチル−1−フェニル−4−(4−ヒドロキシフェニルアゾ)ピラゾール、4−ジメチルアミノ−4’−ヒドロキシアゾベンゼン、4−ジエチルアミノアゾベンゼン、4−ジエチルアミノ−4’−エトキシアゾベンゼン、クルクミン等が挙げられる。
さらに必要に応じて、付加的樹脂、可塑剤、安定化剤、接着助剤、コントラスト向上剤等の慣用の添加剤を含有していてもよい。
【0042】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、塗布性を改善したり、粘度を調整したりするために、適当な有機溶剤に溶解した溶液として使用することが好ましい。
有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、あるいはこれらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、又はモノフェニルエーテル等の多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサン等の環式エーテル類;乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
有機溶剤の含有量は、特に限定されず、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。具体的には、感光性樹脂組成物の固形分濃度が10〜50質量%となる量が好ましく、20〜40質量%となる量がより好ましい。
【0044】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記各成分を混合、撹拌することにより調製することができる。必要に応じて、さらにメッシュ、メンブランフィルタ等を用いて濾過してもよい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
<分留クレゾールの精製>
[未処理1,2]
未処理の分留クレゾールとして、富梅化工製のm−p−クレゾール(m−クレゾール/p−クレゾール=66/33(モル比);未処理1)及び同社製のロット違いのm−p−クレゾール(m−クレゾール/p−クレゾール=66/33(モル比);未処理2)を準備した。そして、ガスクロマトグラフ質量分析(PerkinElmer製)を用いてピリジン及び2−メチルピリジンの含有量を測定した(検出限界は<0.1ppm)。結果を下記表1に示す。
【0047】
[比較精製例1]
温度計及び還流管を備えたフラスコ中に未処理1の分留クレゾール1800gを仕込み、最大130℃まで昇温させながら、初流180gを流出させた後、還流比10〜20の条件で本蒸分を採取し、1550gの精製クレゾールを得た。そして、上記と同様にして、この精製クレゾール中のピリジン及び2−メチルピリジンの含有量を測定した。結果を下記表1に示す。
【0048】
[精製例1]
未処理1の分留クレゾール700kgと酢酸ブチル700kgとを混合し、さらに1質量%塩酸水溶液1400kgを混合して60分間撹拌し、静置後、有機相を分取した。この有機相に1質量%塩酸水溶液1400kgを混合して60分間撹拌し、静置後、有機相を分取した。この有機相に純水1400kgを混合し、30分間撹拌し、静置後、有機相を分取した。純水を用いた洗浄作業を合計3回繰り返した。そして、水分1質量%、酢酸ブチル3質量%以下となるまで有機相を濃縮し、精製クレゾールを得た。そして、上記と同様にして、この精製クレゾール中のピリジン及び2−メチルピリジンの含有量を測定した。結果を下記表1に示す。
【0049】
[精製例2]
温度計及び還流管を備えたフラスコ中に未処理1の分留クレゾール1000g及び塩酸(分留クレゾール中のピリジン類と等モル)を仕込み、最大130℃まで昇温させながら、初流50gを流出させた後、還流比10〜20の条件で本蒸分を採取し、730gの精製クレゾールを得た。そして、上記と同様にして、この精製クレゾール中のピリジン及び2−メチルピリジンの含有量を測定した。結果を下記表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1から分かるように、未処理の分留クレゾール中にはピリジン及び2−メチルピリジンがそれぞれ200ppm前後含まれている。比較精製例1のように再蒸留することにより2−メチルピリジンの含有量を顕著に低減することができたが、ピリジンの含有量はそれほど低減できなかった。これに対して、精製例1,2のように未処理の分留クレゾールを塩酸水溶液で洗浄し、又は分留クレゾールに塩酸を添加した後、再蒸留することにより、分留クレゾール中のピリジン及び2−メチルピリジンをほぼ完全に除去することができた。
【0052】
<ノボラック樹脂の製造、感光性樹脂組成物の調製>
[実施例1]
m−クレゾール/p−クレゾール/3,5−キシレノール=50/30/20(モル比)となるように、精製例1で精製した分留クレゾールに対して、化学合成品のp−クレゾール及び3,5−キシレノールを添加した。そして、酸触媒としてシュウ酸を用い、縮合剤としてホルマリンを用いて常法により縮合反応を行うことによりノボラック樹脂を得た。なお、縮合反応条件は、分留クレゾールの代わりに化学合成品のクレゾールを用いた場合に質量平均分子量(Mw)8000のノボラック樹脂が得られる条件とした。
【0053】
このノボラック樹脂100質量部に対し、以下の感光剤、増感剤、及び界面活性剤を添加し、固形分濃度が35質量%となるように2−ヘプタノンを加えて混合することにより、感光性樹脂組成物を調製した。
・感光剤
4,4’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6−トリメチルフェノール)−ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸(モノ〜トリ)エステル・・・21質量部
5,5’−ジシクロヘキシル−4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−2,2’−ジメチルトリフェニルメタン−ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸(モノ〜テトラ)エステル・・・4.3質量部
・増感剤
4,4’−[1−[4−[2−[4−ヒドロキシフェニル]−2−プロピル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール・・・35質量部
・界面活性剤
パーフルオロアルキル基含有オリゴマー・・・8質量部
【0054】
[実施例2]
m−クレゾール/p−クレゾール/3,5−キシレノール=50/30/20(モル比)となるように、精製例1で精製した分留クレゾールに対して、化学合成品のp−クレゾール及び3,5−キシレノールを添加した。そして、酸触媒としてシュウ酸を用い、縮合剤としてホルマリンを用いて常法により縮合反応を行うことによりノボラック樹脂を得た。なお、縮合反応条件は、分留クレゾールの代わりに化学合成品のクレゾールを用いた場合に質量平均分子量4500のノボラック樹脂が得られる条件とした。
【0055】
このノボラック樹脂100質量部に対し、以下の感光剤、増感剤、及び界面活性剤を添加し、固形分濃度が32質量%となるように2−ヘプタノンを加えて混合することにより、感光性樹脂組成物を調製した。
・感光剤
4,4’−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6−トリメチルフェノール)−ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸(モノ〜トリ)エステル・・・21質量部
5,5’−ジシクロヘキシル−4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−2,2’−ジメチルトリフェニルメタン−ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸(モノ〜テトラ)エステル・・・4.3質量部
・増感剤
4,4’−[1−[4−[2−[4−ヒドロキシフェニル]−2−プロピル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール・・・35質量部
・界面活性剤
パーフルオロアルキル基含有オリゴマー・・・8質量部
【0056】
[比較例1,2]
精製例1で精製した分留クレゾールの代わりに未処理1の分留クレゾールを用いるほかは実施例1,2と同様にして、ノボラック樹脂を製造するとともに、感光性樹脂組成物を調製した。なお、ターゲットとなるノボラック樹脂の質量平均分子量は、比較例1が8000であり、比較例2が4500である。
【0057】
[比較例3,4]
ノボラック樹脂を製造する際の酸触媒の量を3倍に増量したほかは比較例1,2と同様にして、ノボラック樹脂を製造するとともに、感光性樹脂組成物を調製した。なお、ターゲットとなるノボラック樹脂の質量平均分子量は、比較例3が8000であり、比較例4が4500である。
【0058】
[比較例5]
精製例1で精製した分留クレゾールの代わりに未処理2の分留クレゾールを用いるほかは実施例1と同様にしてノボラック樹脂を製造した。なお、ターゲットとなるノボラック樹脂の質量平均分子量は8000である。
【0059】
[実施例3]
m−クレゾール/p−クレゾール=60/40(モル比)となるように、精製例2で精製した分留クレゾールに対して、化学合成品のp−クレゾールを添加した。そして、酸触媒としてシュウ酸を用い、縮合剤としてホルマリンを用いて常法により縮合反応を行うことによりノボラック樹脂を得た。なお、縮合反応条件は、分留クレゾールの代わりに化学合成品のクレゾールを用いた場合に質量平均分子量(Mw)16300のノボラック樹脂が得られる条件とした。
【0060】
このノボラック樹脂100質量部に対し、以下の感光剤、添加剤、及び界面活性剤を添加し、固形分濃度が20質量%となるように乳酸エチル/酢酸ブチル=90/10(質量比)の混合溶剤を加えて混合することにより、感光性樹脂組成物を調製した。
・感光剤
2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンの6−ジアゾ−5,6−ジヒドロ−5−オキソ−1−ナフタレンスルホン酸エステル・・・27質量部
・添加剤
2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン・・・12.7質量部
・界面活性剤
パーフルオロアルキル基含有オリゴマー・・・5.1質量部
【0061】
[比較例6]
精製例2で精製した分留クレゾールの代わりに未処理1の分留クレゾールを用いるほかは実施例3と同様にしてノボラック樹脂を製造した。なお、ターゲットとなるノボラック樹脂の質量平均分子量は16300である。
【0062】
[比較例7]
精製例2で精製した分留クレゾールの代わりに比較精製例1で精製した分留クレゾールを用いるほかは実施例3と同様にしてノボラック樹脂を製造した。なお、ターゲットとなるノボラック樹脂の質量平均分子量は16300である。
【0063】
<ノボラック樹脂及び感光性樹脂組成物の評価>
[ノボラック樹脂の質量平均分子量(Mw)の評価]
実施例1〜3、比較例1〜7で得られたノボラック樹脂の質量平均分子量を測定した。それぞれのターゲットとなる質量平均分子量に対する比率(%)を下記表2に示す。
【0064】
[ノボラック樹脂のアルカリ溶解速度(ADR)の評価]
実施例1〜3、比較例1〜7で得られたノボラック樹脂をそれぞれプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させて25質量%の樹脂溶液を調製した。この樹脂溶液をシリコンウェーハ上に塗布し、110℃で90秒間乾燥させることにより、膜厚1μmの樹脂膜を形成した。その後、樹脂膜を2.38質量%テトラメチルアンモニウム水溶液に一定時間浸漬し、樹脂膜の膜厚変化量を求めた。
【0065】
また、分留クレゾールの代わりに化学合成品のクレゾールを用いたほかは実施例1〜3と同様にして質量平均分子量4500,8000,16300のノボラック樹脂をそれぞれ製造し、同様に樹脂膜の膜厚変化量を求め、実施例1〜3、比較例1〜7の各分子量についての標準値とした。
実施例1〜3、比較例1〜7の膜厚変化量の標準値に対する比率(%)を下記表2に示す。
【0066】
[感光性樹脂組成物の感度評価]
実施例1,2、比較例1〜4で調製した感光性樹脂組成物をスピンナーを用いてシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で90℃にて90秒間乾燥させることにより、膜厚1.05μmの樹脂膜を得た。次いで、縮小投影露光装置NSR−2005i10D(ニコン社製)を用いて、ラインアンドスペースが1:1の0.5μmパターン対応のマスク(レチクル)を介して0.1秒から0.01秒間隔で樹脂膜を露光した後、110℃、90秒間のPEB(露光後加熱)処理を行った。その後、2.38質量%テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて、23℃にて60秒間、露光後の樹脂膜を現像し、30秒間水洗して乾燥させることにより、ラインアンドスペースパターンを形成した。そして、マスクどおりのラインアンドスペースパターンが形成される最適露光時間(Eop)をミリ秒(ms)単位で求め、感度の指標とした。
【0067】
また、実施例3で調製した感光性樹脂組成物をスピンナーを用いてシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で90℃にて90秒間乾燥させることにより、膜厚1.26μmの樹脂膜を得た。次いで、ghi混合光源(ただし、h線(405nm)以下の波長の光はフィルタで遮断)を用いて、ラインアンドスペースが1:1の1.0μmパターン対応のマスク(レチクル)を介して0.1秒から0.01秒間隔で樹脂膜を露光した後、110℃、90秒間のPEB(露光後加熱)処理を行った。その後、2.38質量%テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて、23℃にて60秒間、露光後の樹脂膜を現像し、30秒間水洗して乾燥させることにより、ラインアンドスペースパターンを形成した。そして、マスクどおりのラインアンドスペースパターンが形成される最適露光時間(Eop)をミリ秒(ms)単位で求め、感度の指標とした。
【0068】
また、分留クレゾールの代わりに化学合成品のクレゾールを用いたほかは実施例1〜3と同様にして質量平均分子量4500,8000,16300のノボラック樹脂をそれぞれ製造し、このノボラック樹脂を用いて、実施例1〜3、比較例1〜4と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。そして、上記と同様に最適露光時間(Eop)を求め、実施例1〜3、比較例1〜4の標準値とした。
実施例1〜3、比較例1〜4の最適露光時間(Eop)の標準値に対する比率(%)を下記表2に示す。
【0069】
なお、比較例5については、ノボラック樹脂の特性が比較例1と同様に劣ることが確認できたため、感光性樹脂組成物の評価は行わないこととした。また、比較例6,7については、ノボラック樹脂の特性結果から感度特性の劣化は明らかであり、耐熱性及び解像性評価において他の例のように感度を調整することができないため、感光性樹脂組成物の評価は行わないこととした。
【0070】
[感光性樹脂組成物の耐熱性評価]
感度を同程度に調整するため、実施例1の感光性樹脂組成物と実施例2の感光性樹脂組成物とを35:65の質量比で混合した。同様に、比較例1の感光性樹脂組成物と比較例2の感光性樹脂組成物とを84:16の質量比で混合するとともに、比較例3の感光性樹脂組成物と比較例4の感光性樹脂組成物とを12:88の質量比で混合した。
なお、実施例3の感光性樹脂組成物は混合調整せずにそのまま使用した。
【0071】
次いで、得られた感光性樹脂組成物(実施例3を除く)をスピンナーを用いてシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で90℃にて90秒間乾燥させることにより、膜厚1.05μmの樹脂膜を得た。次いで、縮小投影露光装置NSR−2005i10D(ニコン社製)を用いて樹脂膜を露光した後、110℃、90秒間のPEB(露光後加熱)処理を行った。次いで、2.38質量%テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて、23℃にて60秒間、露光後の樹脂膜を現像し、30秒間水洗して乾燥させることにより、300μmのラインパターンを形成した。その後、シリコンウェーハを130℃にて5分間加熱した後、ラインパターンの断面を観察した。そして、300μmラインパターンの角が残っているものを○、熱フローにより300μmラインパターンの角が丸くなっているものを×として、耐熱性を評価した。結果を下記表2に示す。
【0072】
なお、実施例3の感光性樹脂組成物については、樹脂膜の膜厚を1.26μmとし、露光の際にghi混合光源(ただし、h線(405nm)以下の波長の光はフィルタで遮断)を用いたほかは上記と同様にして耐熱性を評価した。結果を下記表2に示す。
【0073】
[感光性樹脂組成物の解像性評価]
感度を同程度に調整するため、実施例1の感光性樹脂組成物と実施例2の感光性樹脂組成物とを35:65の質量比で混合した。同様に、比較例1の感光性樹脂組成物と比較例2の感光性樹脂組成物とを84:16の質量比で混合するとともに、比較例3の感光性樹脂組成物と比較例4の感光性樹脂組成物とを12:88の質量比で混合した。
なお、実施例3の感光性樹脂組成物は混合調整せずにそのまま使用した。
【0074】
次いで、ラインアンドスペース幅が0.50μm、0.45μm、0.40μm、0.38μm、0.36μm、0.35μm、又は0.32μmのマスク(レチクル)を用いるほかは上記感度評価におけるパターン形成方法と同様にしてラインアンドスペースパターンを形成した(実施例3を除く)。そして、スペース部分の残渣の有無を確認することにより、解像可能な最小のスペース幅を求めた。結果を下記表2に示す。
【0075】
なお、実施例3の感光性樹脂組成物については、ラインアンドスペース幅が1.0μm、0.8μm、0.6μm、又は0.4μmのマスク(レチクル)を用いるほかは上記感度評価におけるパターン形成方法と同様にしてラインアンドスペースパターンを形成した。そして、スペース部分の残渣の有無を確認することにより、解像可能な最小のスペース幅を求めた。結果を下記表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
表2から分かるように、塩基性物質をほぼ完全に除去した分留クレゾールを用いてノボラック樹脂を製造した実施例1〜3では、質量平均分子量、アルカリ溶解速度がほぼ標準値どおりとなっていた。また、感光性樹脂組成物の感度もほぼ標準値どおりとなっており、耐熱性、解像性も良好であった。なお、実施例3の解像性の結果については、分留クレゾールの代わりに化学合成品のクレゾールを用いた場合と同等であり、良好な結果といえる。
【0078】
これに対して、未処理1の分留クレゾールを用いてノボラック樹脂を製造した比較例1,2では、質量平均分子量、アルカリ溶解速度が標準値から大きく外れていた。また、感光性樹脂組成物の感度も標準値から大きく外れ、耐熱性、解像性も実施例1、2より劣っていた。
また、比較例1,2よりも酸触媒の量を3倍に増量してノボラック樹脂を製造した比較例3,4では、質量平均分子量、アルカリ溶解速度はほぼ標準値どおりとなったものの、感光性樹脂組成物の感度が標準値から大きく外れ、耐熱性、解像性も実施例1、2より劣っていた。
また、未処理2の分留クレゾールを用いてノボラック樹脂を製造した比較例5、未処理1の分留クレゾールを用いて比較例1、2とは異なるノボラック樹脂を製造した比較例6、再蒸留した分留クレゾールを用いてノボラック樹脂を製造した比較例7においても、質量平均分子量、アルカリ溶解速度が標準値から大きく外れていた。