(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分子篩炭素が充填された2基以上の吸着塔間で、窒素ガスと酸素ガスとを含む原料ガスのうち、前記酸素ガスの吸着および脱着を交互に繰り返して前記窒素ガスを濃縮する窒素ガス濃縮システムであって、
濃縮された前記窒素ガスが貯留される貯留空間を備える貯留庫と、
前記貯留空間に一端と他端とが接続されたガス循環経路と、
前記ガス循環経路内に配置された前記2基以上の吸着塔を含む窒素分離装置と、
前記ガス循環経路のうち、前記窒素分離装置の上流側に配置され、前記原料ガスを吸引し、前記吸着塔内の圧力が0.05〜0.15MPaとなるように前記窒素分離装置に供給するブロワーと、
前記分子篩炭素に吸着された前記酸素ガスを脱着する真空ポンプと、
前記ガス循環経路のうち、前記貯留庫の下流側であって前記ブロワーの上流側に接続された第1の接続管路を介して設けられた外気吸入口と、
を備える窒素ガス濃縮システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、庫内の窒素ガス濃度を高める従来のPSA法では、吸着塔における吸着時の圧力を0.7〜0.9MPa程度とし、脱着時の圧力を100Torr(−0.09MPa〜大気圧(0MPa)程度とする条件が採用されている。このような条件では、吸着時の圧力が高いため、吸着剤の量が少なくて済み、特許文献2のシステムと比較して窒素分離装置の大きさを小さくすることができるが、庫内に貯留された窒素ガスは循環利用されず、あらたに分離された窒素ガスを庫内に供給する代わりに、庫内のガスが一部排気される。そのため、窒素濃度が高まりつつある庫内のガスが排気されてしまい、効率が悪いという問題がある。また、特許文献2に記載の循環システムでは、吸着および脱着の間に2基の吸着塔を連通させる際(均圧時)、それぞれの吸着塔内に、原料ガスから分離された窒素ガスを含むガスの残圧が発生する。このように残圧が発生した吸着塔の一方は、続いて酸素ガスの脱着工程に付されるため、塔内のガス(分離された窒素ガスを含む)は、排気されることとなる。そのため、従来の循環システムは、分離した窒素ガスを効率よく回収できず、高濃度の窒素ガスを得るために要する時間や電力量が増え、エネルギー効率が悪いという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、分離した窒素ガスを効率よく回収でき、高濃度の窒素ガスを得るために要する時間や電力量が抑えられ、エネルギー効率のよい窒素ガス濃縮システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の一局面の窒素ガス濃縮システムは、分子篩炭素が充填された2基以上の吸着塔間で、窒素ガスと酸素ガスとを含む原料ガスのうち、前記酸素ガスの吸着および脱着を交互に繰り返して前記窒素ガスを濃縮する窒素ガス濃縮システムであって、濃縮された前記窒素ガスが貯留される貯留空間を備える貯留庫と、前記貯留空間に一端と他端とが接続されたガス循環経路と、前記ガス循環経路内に配置された前記2基以上の吸着塔を含む窒素分離装置と、前記ガス循環経路のうち、前記窒素分離装置の上流側に配置され、前記原料ガスを吸引し、前記吸着塔内の圧力が0.05〜0.15MPaとなるように前記窒素分離装置に供給するブロワーと、前記分子篩炭素に吸着された前記酸素ガスを脱着する真空ポンプとを備えることを特徴とする。
【0009】
このような窒素ガス濃縮システムによれば、吸着時の吸着塔内の圧力が従来よりも低いため、均圧時に吸着塔間を連通した場合に略大気圧か負圧となり、窒素ガスの残圧が発生しにくい。そのため、原料ガスから分離された窒素ガスは、排気される量が減り、効率よく回収される。また、従来のように高圧でコンプレッサ等を使用する場合と比較して、ブロワーを上記圧力範囲で運転して原料ガスを吸着塔に供給する場合、同じ原料ガス量から得られる分離された窒素ガス量が増え、効率よく目標の窒素ガス濃度が達成される。その結果、本発明の窒素ガス濃縮システムは、従来よりも、システムの運転時間が短縮される。したがって、本発明の窒素ガス濃縮システムによれば、優れたエネルギー効率が達成される。
【0010】
上記構成において、窒素ガス濃縮システムは、前記貯留空間内の酸素ガス濃度を測定する酸素濃度計と、前記2基以上の吸着塔の下流側であって前記貯留庫の上流側に配置され、前記酸素濃度計の検出値に応じて、前記貯留空間内に供給される濃縮された前記窒素ガスの流量を制御する流量調節装置とをさらに備えることが好ましい。
【0011】
このような窒素ガス濃縮システムによれば、たとえば貯留空間内の酸素ガス濃度が高い場合(すなわち窒素ガス濃度が低い場合)には、貯留空間に供給される窒素ガス流量が多くなるよう制御して窒素ガス濃度を素早く上昇させ、その後、貯留空間内の酸素ガス濃度が低くなった場合(すなわち窒素ガス濃度が高められた場合)には、貯留空間に供給される窒素ガス流量が少なくなるように制御して、置換効率を高めることができる。その結果、効率よく窒素ガス濃度が高められ、システムの運転時間がさらに短縮される。
【0012】
上記構成において、窒素ガス濃縮システムは、前記ブロワーの下流側に配置され、前記窒素分離装置に供給される前記原料ガスを冷却する冷却装置をさらに備えることが好ましい。このような冷却装置は、ブロワーにより加圧された原料ガスの温度を下げることができる。その結果、吸着塔において吸着される酸素ガスの量が増え、分離される窒素ガスの量が増える。
【0013】
上記構成において、窒素ガス濃縮システムは、前記ブロワーの上流側と下流側とを接続する接続管路と、前記接続管路内に配置され、前記ブロワーから排出された前記原料ガスを、前記ブロワーの上流側へ戻す原料ガス圧調整装置とをさらに備えることが好ましい。
【0014】
このような原料ガス圧調整装置は、たとえば、2基の吸着塔を連通させる均圧工程のように、吸着塔への原料ガスの供給が遮断される際に、原料ガスをブロワーの前後において循環させておくことができる。その結果、吸着塔の上流側において原料ガスが必要以上に加圧されることを防ぐことができるとともに、ブロワーの故障を防ぐことができる。ほかにも、たとえば原料ガスを供給しない均圧工程や、吸着塔内の圧力が高まって原料ガスが供給されにくくなった吸着工程の後半など、加圧された原料ガスが余剰に存在している場合には、ブロワーにより余剰の原料ガスが大気中に放出されることを防ぐことができる。これにより、窒素分離装置への大気ガスの吸入を低減することができ、窒素分離装置の性能低下を防ぐことができる。さらに、冷却装置が備えられている場合には、冷却装置への負担が軽減される。あるいは、冷却装置により原料ガスが充分に冷却され、吸着塔における酸素ガスの吸着率が向上し得る。
【0015】
前記貯留庫は、青果物を保存するための保管庫であることが好ましい。この場合、窒素ガス濃縮システムは、青果物の保管庫に必要な窒素ガス濃度になるよう、貯留空間内の窒素ガス濃度を効率よく高めることができる。
【0016】
前記貯留庫は、書物の薫蒸、煙草の薫蒸または文化財の殺虫処理を行うための処理庫であることが好ましい。この場合、窒素ガス濃縮システムは、たとえば図書館に貯蔵されている書物の薫蒸、煙草の薫蒸または文化財の殺虫処理を行うために必要な窒素ガス濃度になるよう、貯留空間内の窒素ガス濃度を効率よく高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、分離した窒素ガスを効率よく回収でき、高濃度の窒素ガスを得るために要する時間や電力量が抑えられ、エネルギー効率のよい窒素ガス濃縮システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
<窒素ガス濃縮システム>
以下、本発明の窒素ガス濃縮システムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態の窒素ガス濃縮システムの概略図である。
【0020】
図1に示されるように、窒素ガス濃縮システム100は、貯留庫200と、ガス循環経路300と、ブロワー400と、窒素分離装置500と、真空ポンプ600とを備える。窒素ガス濃縮システム100は、貯留庫200と窒素分離装置500とを接続するガス循環経路300を有し、ブロワー400によりガス循環経路300内を循環する原料ガス(後述する貯留庫200に貯留されたガスと外部から吸入したガス(大気)との混合ガスであり、酸素ガスおよび窒素ガスを含む。以下同様)を加圧して、窒素分離装置500に供給する。窒素分離装置500では、原料ガスから酸素ガスを吸着することにより、窒素ガスが分離濃縮された製品ガスを調製する。真空ポンプ600は、吸着された酸素ガスの脱着を補助する。得られた製品ガスは、ガス循環経路300を流通し、貯留庫200に戻される。貯留庫200に戻された製品ガスは、必要に応じて、原料ガスとして循環経路300を再び循環され、窒素ガス濃度が高められ、最終的に所望の窒素ガス濃度を有する製品ガスとして貯留される。本実施形態の窒素ガス濃縮システム100では、特に、原料ガスがブロワー300により適切に加圧されて窒素分離装置500に供給される。その結果、高濃度の窒素ガスを含む製品ガスが従来よりも短時間かつ少ない電力量で得られる。以下、この機構の詳細について、貯留庫200を起点として、ガスの流通方向に沿って説明する。
【0021】
(貯留庫)
貯留庫200は、ガス循環経路300を循環するガス(後述する原料ガスおよび製品ガスを含む)が貯留される貯留空間210を備える比較的大きな箱体である。貯留庫200には、貯留空間210内の酸素ガス濃度を測定するための酸素濃度計、圧力計、湿度計などの各種計測器が備えられていてもよい。貯留庫200には、貯留空間210の開口部(図示せず)を閉止する扉部材(図示せず)が設けられており、貯留庫200を後述する用途(たとえば青果物の貯蔵庫)に使用する場合において、貯留対象物(たとえば青果物)を搬入出することができる。
【0022】
(ガス循環経路)
ガス循環経路300は、貯留空間210内のガスや、吸入される空気等のガスが循環する環状の経路である。ガス循環経路300の一端と他端とは、それぞれ貯留空間210と接続されており、貯留空間210に貯留されたガスが、ガス循環経路300を流通し、再度貯留空間210に供給されるよう構成されている。また、ガス循環経路300には、いずれかの位置に外気(大気)を経路内に吸入するための外気吸入口が設けられる。本実施形態では、貯留庫200の下流側であってブロワー400の上流側に、接続管路710を介して外気吸入口700が設けられている。このような外気吸入口からは、貯留庫200内が負圧にならないよう外気が吸入される。外気の吸入は、後述するブロワー400を駆動させて吸引力を発生させることにより行われる。また、上記した貯留庫200の貯留空間210内は、外気の侵入を防ぎ、かつ、加圧や真空にされることにより貯留庫200そのものが破壊されることがないように微加圧状態に調整されている。そのため、ブロワー400を駆動させて吸引力を発生させた場合には、微加圧状態の貯留空間210から押し出されるガスが主に循環経路300内を循環し、原料ガスとしての不足分が外気吸入口700から吸入される外気により補われる。なお、本実施形態では、説明の明瞭化のため、貯留庫200から後述する窒素分離装置500の吸着塔に至るまでのガス循環経路300を流通するガスを「原料ガス」といい、窒素分離装置500の吸着塔により窒素ガス濃度が高められ、貯留庫200に至るまでのガス循環経路300を流通するガスを「製品ガス」という。そのため、貯留庫200に供給された製品ガスが貯留庫200からガス循環経路300を流通して再度窒素分離装置500に向かう場合には、このような製品ガスは、原料ガスとして取り扱うこととする。
【0023】
ガス循環経路300を循環する原料ガスは、上記のとおり、貯留庫200に貯留されたガスと外部から吸入したガス(大気)との混合ガスであり、酸素ガスおよび窒素ガスを含む。なお、原料ガスには炭酸ガスなどの他のガスが少量含まれていてもよい。
【0024】
(ブロワー)
ブロワー400は、後述する窒素分離装置500の上流側に配置された送風設備であり、原料ガスを加圧して、窒素分離装置500に供給する。本実施形態では、ブロワー400は、窒素分離装置500に設けられた吸着塔内の圧力が0.05〜0.15MPaとなるように、原料ガスを窒素分離装置500に供給する。上記圧力の範囲は、省エネルギー化を図る観点から0.05〜0.15MPaであればよいが、さらなるエネルギー効率を考慮すると0.05〜0.13MPaであることが好ましく、0.05〜0.10MPaであることがより好ましい。また、配管の太さ等の装置設計も踏まえて考慮すると、0.08〜0.10MPaであることがさらに好ましい。ブロワー400は、吸着塔内の圧力が0.05〜0.15MPaという従来よりも低い圧力となるように原料ガスを供給することにより、酸素ガスの吸着後に均圧化された両吸着塔内の圧力が、略大気圧か負圧となる(後述する(ii)および(iv)の段階を参照)。その結果、均圧工程において吸着塔内に存在する製品ガスの残圧が低くなるため、続く脱着工程において排気される製品ガスの量を減らすことができる。したがって、大気ガスの吸込み量が減少し、原料ガス中の酸素濃度が低下するため、効率よく高濃度の窒素ガスを含む製品ガスを得ることができ、エネルギー効率が向上する。
【0025】
(窒素分離装置)
窒素分離装置500は、ガス循環経路300の経路内に配置された装置であり、原料ガスから酸素ガスを除去することにより窒素ガスを分離濃縮して、窒素ガス濃度が高められた製品ガスを製造するための装置である。窒素分離装置500は、2基の吸着塔(吸着塔510aおよび吸着塔510b)と、製品槽520と、酸素濃度計530と、流量計540とを備える。それぞれの構成要素間は、適宜分岐するガス循環経路300により接続されている。窒素分離装置500内のガス循環経路300には、経路を開閉するバルブV1〜V10が設置されている。バルブV1〜V10は、それぞれ独立に制御されるバルブ(たとえば電磁弁)である。具体的には、バルブV1およびV3は、それぞれ吸着塔510aおよび吸着塔510bに供給される原料ガスが通過するガス循環経路300を開閉する入口弁である。バルブV2およびV4は、それぞれ吸着塔510aおよび吸着塔510bから排気されるガスが通過するガス循環経路300を開閉する排気弁である。バルブV5およびV6は、それぞれ吸着塔510aおよび吸着塔510bから取り出される製品ガスが通過するガス循環経路300を開閉する出口弁である。バルブV7およびV8は、後述する均圧工程においてガスが通過するガス循環経路300を開閉する均圧弁である。バルブV9は、後述する外気(空気)を排気管310に供給するための供給配管320を開閉する外気供給弁である。バルブV10は、貯留空間210に供給される製品ガスの通過するガス循環経路300を開閉する調節弁である。これらバルブV1〜V10は、タイマー設定された制御装置(図示せず)により電気的に開閉を制御することができる。
【0026】
吸着塔510aおよび吸着塔510bには、それぞれ酸素ガスを吸着する分子篩炭素が充填されている。分子篩炭素とは、多数の細孔を備える木炭、石炭、コークス、やし殻、樹脂、ピッチなどの原料を高温で炭化し、細孔径を約3〜5Åに調整した木質系、石炭系、樹脂系、ピッチ系などの吸着剤である。このような分子篩炭素は、窒素ガスよりも酸素ガスを吸着しやすい性質を有しており、空気等の窒素ガスと酸素ガスとを含む混合気体から、酸素ガスを選択的に吸着する性質を有する。また、分子篩炭素は、高圧条件下において酸素ガスの吸着能が増大する。そのため、分子篩炭素は、吸着塔内を加圧することにより酸素ガスを多く吸着することができ、その後、吸着塔内を減圧することにより酸素ガスを脱着させることができる。このような分子篩炭素の具体例としては、たとえばクラレケミカル(株)製の商品名GN−UC−H、1.5GN−H、1.5GN−Sなどが挙げられる。窒素分離装置500では、吸着塔510aおよび吸着塔510bにより酸素ガスの吸着および脱着を交互に繰り返し、原料ガスから窒素ガスを分離濃縮して製品ガスを調製する。
【0027】
図1に加えて
図2を参照し、窒素ガス濃縮システム100において、原料ガスから窒素ガスを分離濃縮する流れを具体的に説明する。
図2は、原料ガスから窒素ガスを分離する工程を示すフロー図である。窒素ガスは、それぞれの吸着塔において、吸着工程、均圧工程(放出)、脱着工程および均圧工程(回収)を1サイクルとする工程を経て原料ガスから分離濃縮される。その際、一方の吸着塔が吸着工程に付されている間、他方の吸着塔は、脱着工程に付されるよう上記した各バルブが制御される。
【0028】
具体的には、
図2に示されるように、吸着塔510aが吸着工程に付されている間、吸着塔510bは脱着工程に付される((i)の段階)。また、吸着塔510aが均圧工程(放出)に付されている間、吸着塔510bは均圧工程(回収)に付され((ii)の段階)、吸着塔510aが脱着工程に付されている間、吸着塔510bは吸着工程に付され((iii)の段階)、吸着塔510aが均圧工程(回収)に付されている間、吸着塔510bは均圧工程(放出)に付される((iv)の段階)。以下、それぞれの段階について詳細に説明する。
【0029】
<(i)の段階>
(i)の段階は、吸着塔510aが吸着工程に付され、吸着塔510bが脱着工程に付される段階である。具体的には、(i)の段階では、バルブV2、バルブV3およびバルブV6〜V9が閉止され、バルブV1、バルブV4、バルブV5およびバルブV10が開放される。そのため、窒素分離装置500に供給される原料ガスは、吸着塔510aに供給される。吸着塔510aでは、供給された原料ガスのうち、酸素ガスが吸着され、分離された窒素ガスが製品槽520に送られる。製品槽520は、分離された窒素ガスを製品ガスとして適宜貯留する一次貯留空間521を有する箱体である。その後、製品ガスは、ガス循環経路300内を流通し、貯留空間210に供給される。この際、上記のとおり、吸着塔510a内における圧力は、0.05〜0.15MPaの範囲内となるように、ブロワー400または後述する原料ガス圧調整装置900が備えられている場合には原料ガス圧調整装置900の運転条件により調整される。一方、吸着塔510bに吸着された酸素ガスは、真空ポンプ600により吸引され、吸着塔510bから脱着して窒素分離装置500の外部(通常は大気中)に放出される。
【0030】
<(ii)の段階>
(ii)の段階は、吸着塔510aが均圧工程(放出)に付され、吸着塔510bが均圧工程(回収)に付される段階である。具体的には、(ii)の段階では、バルブV1〜V6が閉止され、バルブV7〜V9およびバルブV10が開放される。そのため、吸着塔510aと吸着塔510bとは連通され、両吸着塔内は均圧化される。この際、直前に吸着工程が行われていた吸着塔510aは、吸着塔510bよりも高圧であるため、吸着塔510aのガスが吸着塔510bに流入する。
【0031】
しかしながら、本実施形態の窒素ガス濃縮システム100によれば、上記のとおり吸着時の吸着塔510a内の圧力が0.05〜0.15MPaと従来よりも低圧に制御されている。そのため、均圧工程で吸着塔間を連通した場合であっても、吸着塔510aから吸着塔510bに流入するガス(分離された窒素ガスを含む)の量は少なく、略大気圧か負圧となるように均圧化される。
【0032】
<(iii)の段階>
(iii)の段階は、吸着塔510aが脱着工程に付され、吸着塔510bが吸着工程に付される段階である。具体的には、(iii)の段階では、バルブV1、バルブV4、バルブV5およびバルブV7〜V9が閉止され、バルブV2、バルブV3、バルブV6およびバルブV10が開放される。そのため、窒素分離装置500に供給される原料ガスは、吸着塔510bに供給される。吸着塔510bでは、供給された原料ガスのうち、酸素ガスが吸着され、分離された窒素ガスが製品槽520に送られる。その後、製品ガスは、ガス循環経路300内を流通し、貯留空間210に供給される。この際、(i)の段階と同様に、吸着塔510b内における圧力が、0.05〜0.15MPaの範囲内となるように、ブロワー400または後述する原料ガス圧調整装置900が備えられている場合には原料ガス圧調整装置900の運転条件により調整される。一方、吸着塔510aに吸着された酸素ガスは、真空ポンプ600により吸引され、吸着塔510aから脱着して窒素分離装置500の外部(通常は大気中)に放出される。窒素ガス濃縮システム100では、(ii)の段階において均圧化された際に、吸着塔510b内は略大気圧か負圧となっており、従来のシステムのような大きな残圧は発生していない。そのため、(iii)の段階において吸着塔510aから排気される窒素ガスは、均圧工程時に大きな残圧を生じる従来のシステムと比較して少ない。
【0033】
<(iv)の段階>
(iv)の段階は、吸着塔510aが均圧工程(回収)に付され、吸着塔510bは均圧工程(放出)に付される段階である。具体的には、(iv)の段階では、バルブV1〜V6が閉止され、バルブV7〜V9およびバルブV10が開放される。そのため、吸着塔510aと吸着塔510bとは連通され、両吸着塔内は均圧化される。この際、直前に吸着工程が行われていた吸着塔510bは、吸着塔510aよりも高圧であるため、吸着塔510bのガスが吸着塔510aに流入する。
【0034】
しかしながら、本実施形態の窒素ガス濃縮システム100によれば、上記のとおり吸着時の吸着塔510b内の圧力が0.05〜0.15MPaと従来よりも低圧に制御されている。そのため、均圧工程で吸着塔間を連通した場合であっても、吸着塔510bから吸着塔510aに流入するガス(分離された窒素ガスを含む)の量は少なく、略大気圧か負圧となるように均圧化される。
【0035】
以上の(i)〜(iv)の段階を1サイクルとして、吸着塔510aと吸着塔510bとにおいて酸素ガスの吸着および脱着が交互に繰り返され、原料ガスから窒素ガスが分離濃縮された製品ガスが調製される。再度行われる(i)の段階では、(iii)の段階において説明したと同様に、(iv)の段階において均圧化された際に、吸着塔510b内は略大気圧か負圧となっており、従来のシステムのような大きな残圧は発生していない。そのため、再度の(i)の段階において吸着塔510bから排気される窒素ガスは少ない。
【0036】
なお、1サイクルは、たとえば、82〜260秒で実施することができる。この場合、吸着塔510aの吸着工程((i)の段階)を40〜120秒で行い、均圧工程(放出)((ii)の段階)を1〜10秒で行い、脱着工程((iii)の段階)を40〜120秒で行い、均圧工程(回収)((i)の段階)を1〜10秒で行うことができる。
【0037】
また、窒素分離装置500は、このように少なくとも2基の吸着塔により交互に酸素ガスの吸着と脱着とを繰り返すことのできる構成であればよい。そのため、吸着塔の数は、2基以上であれば特に限定されない。この場合、たとえば2基の吸着塔を備える窒素分離装置を2台並列に設けてブロワー400と接続し、合計4台の吸着塔を使用して窒素ガスの分離濃縮を行ってもよく、1台の窒素分離装置に3基以上の吸着塔を設置してもよい。吸着塔の数は、窒素ガス濃縮システムの設置スペースの大きさや、分離濃縮すべき窒素ガスの量、貯留空間の容積等に応じて、適宜選択される。
【0038】
窒素分離装置500の説明に戻り、窒素分離装置500には、製品槽520の下流側に流量計540が設けられていることが好ましい。また、製品槽520の下流側と流量計540の上流側とを接続するガス循環経路300には、酸素濃度計530が接続されていることが好ましい。流量計540は、製品槽520の一次貯留空間521から貯留空間210に供給される製品ガスの流量を計測する。酸素濃度計530は、製品ガスの酸素ガス濃度を計測する。これら流量計540および酸素濃度計530により、貯留庫200の貯留空間210に供給される製品ガスの流量および製品ガス中の酸素ガス濃度が適切に管理される。
【0039】
(真空ポンプ)
真空ポンプ600は、吸着塔の分子篩炭素に吸着された酸素ガスの脱着を補助するための装置である。真空ポンプ600は、一端が窒素分離装置500内の吸着塔の上流側のガス循環経路300に接続され、他端が外部に解放された排気管310の途中に設けられている。排気管310のうち、真空ポンプ600の上流側には、外気(空気)を排気管310に供給するための供給配管320と、該配管内に設置されたバルブ(上記したバルブV9)とが設けられている。
【0040】
真空ポンプ600は、脱着工程において使用される。すなわち、本実施形態の窒素ガス濃縮システム100では、(ii)や(iv)の段階において説明したように、均圧工程(放出)において両吸着塔内は略大気圧か負圧とされるが、このような圧力下では酸素ガスは分子篩炭素から充分に脱着されない場合がある。そこで、本実施形態では、真空ポンプ600により脱着工程に付される吸着塔(たとえば(i)の段階における吸着塔510b)内を減圧して、酸素ガスの脱着を補助する。これにより、常圧(0MPa程度)で脱着するよりも、多くの酸素ガスを脱着することができる。その結果、単位体積あたりの原料ガスから吸着することのできる酸素ガスの量が多くなる。なお、(ii)や(iv)の段階では、吸着塔と真空ポンプ600とは連通されていない。そのため、真空ポンプの負荷を軽減するために、供給配管320から外気を吸入している。
【0041】
本実施形態の窒素ガス濃縮システム100によれば、ガス循環経路300によりガスを循環しながら上記(i)〜(iv)の段階を繰り返し実行することにより、空気を原料ガスとして、高濃度の窒素ガスを含む製品ガスを製造することができる。その際、本実施形態の窒素ガス濃縮システム100では、ブロワー400によって吸着工程における吸着塔510aまたは吸着塔510bの塔内の圧力が0.05〜0.15MPaとなるように、原料ガスが供給される。また、一方の吸着塔が吸着工程に付されている間、他方の吸着塔は、脱着工程に付されており、真空ポンプ600により真空引きがされている。そのため、酸素ガスの吸着後に均圧化された両吸着塔内の圧力は、略大気圧か負圧となる。その結果、均圧時に吸着塔内に存在する製品ガスの残圧が低くなるため、続く脱着工程において排気される製品ガスの量を減らすことができる。したがって、大気ガスの吸込み量が減少し、原料ガス中の酸素濃度が低下するため、効率よく高濃度の窒素ガスを含む製品ガスを得ることができ、エネルギー効率が向上する。特に、均圧工程時に両吸着塔内の圧力が負圧になる場合とは、吸着工程終了時に到達する吸着圧力の絶対値と、脱着工程終了時に到達する脱着圧力の絶対値とを比較した場合に、脱着圧力の絶対値の方が吸着圧力の絶対値よりも大きくなっている場合である。このように吸着圧力を高くするよりも脱着圧力をより低くした方が、省エネルギー効果が得られる。また、吸着圧力が低い場合、ブロワー400の仕様圧力も低くすることができる。そのため、ブロワー400により加圧された原料ガスの温度上昇が防がれ、冷却装置800への負荷が低減される。
【0042】
次に、本実施形態の窒素ガス濃縮システム100が好ましく備える構成について説明する。窒素ガス濃縮システム100は、冷却装置800と、接続管路910と、原料ガス圧調整装置900とを備えることが好ましい。
【0043】
(冷却装置800)
本実施形態の窒素ガス濃縮システム100は、冷却装置800を備えることが好ましい。ブロワー400から窒素分離装置500に供給される原料ガスは、吸着塔における酸素ガスの吸着効率を向上させるため、たとえば20〜50℃程度に調温されていることが好ましい。そこで、窒素ガス濃縮システム100は、ブロワー400の下流側に冷却装置800を備えることが好ましい。冷却装置800によれば、ブロワー400により加圧された原料ガスを上記温度範囲内に調節することができるため、吸着塔において酸素ガスが吸着されやすく、窒素ガスの分離濃縮効率が上昇する。なお、冷却装置800としては特に限定されず、たとえば空冷方式、水冷方式等を採用した公知の冷却装置を使用することができる。
【0044】
(原料ガス圧調整装置)
本実施形態の窒素ガス濃縮システム100は、原料ガス圧調整装置900を備えることが好ましい。
【0045】
すなわち、原料ガスから窒素ガスを分離濃縮する場合、2基の吸着塔を連通させる均圧工程が行われる(
図2参照)。この際、窒素分離装置500への原料ガスの供給が遮断されることとなる。このような状態でガス循環経路300内を原料ガスが流通させ続けると、窒素分離装置500の上流側において原料ガス圧が上昇し、故障等の原因となる可能性がある。そこで、窒素分離装置500への原料ガスの供給が遮断される際には、原料ガスをブロワー400の前後において循環させることが好ましい。
【0046】
そのため、窒素ガス濃縮システム100で、ブロワー400の下流側に、該下流側とブロワー400の上流側とを接続する接続管路910が設けられ、該接続管路910内に原料ガス圧調整装置900が設けられることが好ましい。このような接続管路910および原料ガス圧調整装置900を設けることにより、窒素ガス濃縮システム100では、ブロワー400から窒素分離装置500に供給される原料ガスの一部または全部を再度ブロワー400の上流側へ戻すことができる。その結果、吸着塔の上流側において原料ガスが必要以上に加圧されることを防ぐことができるとともに、ブロワー400の故障を防ぐことができる。ほかにも、たとえば原料ガスを供給しない均圧工程や、吸着塔内の圧力が高まって原料ガスが供給されにくくなった吸着工程の後半など、加圧された原料ガスが余剰に存在している場合には、ブロワー400により余剰の原料ガスが大気中に放出されることを防ぐことができる。また、これにより、窒素分離装置500に大気ガスを供給することを低減することができ、窒素分離装置500の性能低下を防ぐことができる。なお、ブロワー400の下流側において接続管路910が接続される位置は、冷却装置800の上流側であってもよく、冷却装置800の下流側であってもよい。接続管路910が冷却装置800の上流側に接続される場合には、冷却装置800への負担が軽減される。また、接続管路910が冷却装置800の下流側に接続される場合には、冷却装置800により原料ガスが充分に冷却され、吸着塔における酸素ガスの吸着率が向上し得る。
【0047】
<窒素ガス濃縮システムの用途>
次に、本実施形態の窒素ガス濃縮システム100の用途について説明する。窒素ガス濃縮システム100は、貯留庫200の貯留空間210内に、高濃度の窒素ガスを含む製品ガスを貯留することができる。そのため、貯留庫200は、窒素ガス雰囲気とすることにより所望の効果が得られる用途に好適に使用することができる。
【0048】
このような用途としては、たとえば、青果物を保存するための保管庫としての用途が挙げられる。この場合、窒素ガス濃縮システム100は、貯留空間210内を高濃度の窒素ガス雰囲気とすることにより、貯留空間210内に搬入された青果物の呼吸を抑制し、鮮度の低下を防ぐことができる。
【0049】
ほかにも、貯留庫200は、書物の薫蒸、煙草の薫蒸または文化財の殺虫処理を行うための処理庫としての用途もある。この場合、窒素ガス濃縮システム100は、貯留空間210内を高濃度の窒素ガス雰囲気とすることにより、貯留空間210内に搬入された書物や煙草を薫蒸したり、文化財を殺虫処理することができる。なお、本明細書において、文化財としては、たとえば絵画、彫刻、工芸品、書跡等の文化的所産をいう。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、本発明の窒素ガス濃縮システムの他の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図3は、本発明の一実施形態の窒素ガス濃縮システムの概略図である。
【0051】
図3に示されるように、本実施形態の窒素ガス濃縮システム101は、第1の実施形態の窒素ガス濃縮システム100における流量計540およびバルブV10に代えて、流量調節装置541が設けられており、貯留庫200内に酸素濃度計220が設けられている以外は、第1の実施形態の窒素ガス濃縮システム100と同様の構成である。そのため、重複する構成については同一の参照符号を付して説明を適宜省略する。
【0052】
(酸素濃度計)
本実施形態の窒素ガス濃縮システム101には、貯留空間210内に酸素濃度計220が設置されている。酸素濃度計220は、有線または無線により後述する流量調節装置541と接続されており、貯留空間210内の酸素濃度の計測値を流量調節装置541にフィードバックする。
【0053】
(流量調節装置)
また、本実施形態の窒素分離装置501は、製品槽520の下流側に流量調節装置541を備える。流量調節装置541は、酸素濃度計220により計測された酸素濃度の計測値のフィードバックを受けて、貯留空間210に供給する製品ガスの流量を段階的に調節することができる。
【0054】
具体的には、流量調節装置541は、たとえば貯留空間210内の酸素ガス濃度が高い場合(すなわち窒素ガス濃度が低い場合)には、貯留空間210に多くの製品ガスが供給されるよう流量を調整して、貯留空間210内の窒素ガス濃度を素早く上昇させることができる。その後、流量調節装置541は、貯留空間210内の酸素ガス濃度が低くなった場合(すなわち窒素ガス濃度が高められた場合)には、貯留空間210に供給される製品ガスの流量が少なくなるように調整して、置換効率を高めることができる。その結果、窒素ガス濃縮システム101は、効率よく貯留空間210内の製品ガス中の窒素ガス濃度を高めることができる。より具体的には、たとえば、貯留空間210内に98体積%の窒素ガスを含む製品ガスが貯留されるよう窒素ガス濃縮システム101を運転する場合には、製品ガスの窒素ガス濃度は、98体積%よりも高い濃度(たとえば99体積%)とする必要がある。ここで、窒素ガス濃縮システム101の運転開始時には、貯留空間210内には、空気(酸素ガス濃度約20体積%)が存在しており、酸素ガス濃度が高い。そのため、まずは貯留空間210に供給される製品ガスの流量が多くなるよう流量調節装置541を制御して、貯留空間210内の空気と製品ガスとの置換効率を高めることができる。この場合、窒素分離装置501より供給される製品ガスの流量が多くなると、製品ガス中の窒素ガス濃度は低くなる(98体積%を下回る場合もある)と推定されるが、貯留空間210内における窒素ガスの置換効率は向上する。一方、貯留空間210内の窒素ガス濃度がある程度高められた場合には、窒素ガス濃度の高い製品ガスを供給しなければ、貯留空間210内に貯留される製品ガスの濃度を上記した98体積%とすることができない。そのため、流量調節装置541は、貯留空間210内の製品ガスの酸素ガス濃度がある値以下(たとえば製品ガス中10体積%以下)となったことが酸素濃度計220によりフィードバックされた場合に、段階的に製品ガスの流量を減少させて、製品ガス中の窒素ガス濃度を高めることが好ましい。これにより、置換効率を大幅に低下させること無く、効率よく貯留空間210内の製品ガスにおける窒素ガス濃度を高め、目標の窒素ガス濃度である98体積%に到達させることができる。
【0055】
以上、本実施形態の窒素ガス濃縮システム101によれば、貯留空間210内の酸素濃度の検出値に応じて、貯留空間210に供給する製品ガスの流量を調節することができる。その結果、貯留空間210内に貯留される製品ガスの窒素ガス濃度を効率よく高めることができる。したがって、窒素ガス濃縮システム101は、運転時間がさらに短くなり、エネルギー効率がさらに向上する。
【実施例】
【0056】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
図1に示される窒素ガス濃縮システム100を使用し、貯留庫200に貯留されたガスと外部から吸入したガス(大気)との混合ガスを原料ガスとし、原料ガスから窒素ガスを分離濃縮し、時間の経過とともに97.8〜99.4体積%に変化していく窒素ガスを含む製品ガスを、貯留空間210に供給した。その際の両吸着塔における吸着および脱着のサイクル時間は126秒とした。内訳は、酸素ガスの吸着工程に60秒、均圧工程(放出)に3秒、脱着工程に60秒および均圧工程(回収)に3秒とした。吸着時の吸着塔の圧力が0.05MPaとなるようブロワー400により原料ガスを供給し、脱着時の吸着塔の圧力が−0.09MPaとなるまで真空ポンプ600により減圧した。均圧工程時の両吸着塔内の圧力は、−0.02MPaであった。貯留空間210の容積は350m
3とした。製品ガスの供給量は45Nm
3/hrとした。貯留空間210内の製品ガスの窒素ガス濃度が98体積%となるまで窒素ガス濃縮システム100を運転した。窒素ガス濃縮システム100の運転時における製品ガス中の窒素ガス濃度と、貯留空間210内の窒素ガス濃度について
図4に示す。また、窒素ガス濃度が98体積%に到達するまでに要した時間(到達時間)と吸着時の圧力との関係を
図5に示す。さらに、消費電力量と吸着時の圧力との関係を
図6に示す。
【0058】
(実施例2)
吸着時の吸着塔の圧力を0.1MPaとした以外は、実施例1と同様の方法により窒素ガス濃縮システム100を運転した。均圧工程時の両吸着塔内の圧力は、0.01MPaであった。到達時間と吸着時の圧力との関係を
図5に示す。また、消費電力量と吸着時の圧力との関係を
図6に示す。
【0059】
(実施例3)
吸着時の吸着塔の圧力を0.15MPaとした以外は、実施例1と同様の方法により窒素ガス濃縮システム100を運転した。均圧工程時の両吸着塔内の圧力は、0.03MPaであった。到達時間と吸着時の圧力との関係を
図5に示す。また、消費電力量と吸着時の圧力との関係を
図6に示す。
【0060】
(比較例1)
吸着時の吸着塔の圧力を0.01MPaとした以外は、実施例1と同様の方法により窒素ガス濃縮システム100を運転した。均圧工程時の両吸着塔内の圧力は、−0.04MPaであった。到達時間と吸着時の圧力との関係を
図5に示す。また、消費電力量と吸着時の圧力との関係を
図6に示す。
【0061】
(比較例2)
吸着時の吸着塔の圧力を0.2MPaとした以外は、実施例1と同様の方法により窒素ガス濃縮システム100を運転した。均圧工程時の両吸着塔内の圧力は、0.06MPaであった。到達時間と吸着時の圧力との関係を
図5に示す。また、消費電力量と吸着時の圧力との関係を
図6に示す。
【0062】
(比較例3)
吸着時の吸着塔の圧力を0.25MPaとした以外は、実施例1と同様の方法により窒素ガス濃縮システム100を運転した。均圧工程時の両吸着塔内の圧力は、0.08MPaであった。到達時間と吸着時の圧力との関係を
図5に示す。また、消費電力量と吸着時の圧力との関係を
図6に示す。
【0063】
(比較例4)
図7に示される窒素ガス濃縮システム102を使用し、空気を原料ガスとして窒素ガスを分離濃縮し、窒素ガスを99体積%含む製品ガスを調製し、貯留空間210に供給した。この窒素ガス濃縮システム102では、空気圧縮装置401(コンプレッサ)より取り込まれた原料ガス(空気)を乾燥装置801(乾燥条件:大気圧露点−17℃以下)により乾燥し、以下の条件により窒素ガスを分離濃縮して、貯留空間210に供給した。貯留空間210には、バルブV11を備えた接続管路602により、貯留空間210内のガスを外部に排出する庫内圧力調整装置601を接続した。庫内圧力調整装置601により、供給される製品ガスと貯留空間210内に貯留されたガスとを随時交換しながら貯留空間210内の窒素ガス濃度を高めた。貯留空間210内の窒素ガス濃度が98体積%に到達するまでの時間が、実施例1の窒素ガス濃縮システム100と同程度となる、空気圧縮装置401や窒素分離装置502の機器構成により比較した。窒素分離装置502の吸着塔のサイクル時間は、126秒とした。内訳は、酸素ガスの吸着工程に60秒、均圧工程(放出)に3秒、脱着工程に60秒および均圧工程(回収)に3秒とした。吸着時の吸着塔の圧力は0.70MPaとなり、脱着時の吸着塔の圧力は0MPaとなった。均圧工程時の両吸着塔内の圧力は、0.30MPaであった。貯留空間210の容積は350m
3とした。製品ガスの供給量は50Nm
3/hrとした。貯留空間210内の製品ガスの窒素ガス濃度が98体積%となるまで窒素ガス濃縮システム102を運転した。到達時間と吸着時の圧力との関係を
図5に示す。また、消費電力量と吸着時の圧力との関係を
図6に示す。
【0064】
(実施例4)
図3に示される窒素ガス濃縮システム101を使用し、窒素ガス流量を50Nm
3/hrから45Nm
3/hrまで段階的に減少させた以外は、実施例2と同様の方法により窒素ガス濃縮システム101を運転した。具体的には、運転開始時から5.2hrは窒素ガス流量を50Nm
3/hrとして運転した。貯留空間210内に設置された酸素濃度計により貯留空間210における酸素ガス濃度が10体積%となったことが確認された後、5.2〜10.3hrまでは窒素ガス流量を49Nm
3/hrとして運転した。貯留空間210内に設置された酸素濃度計により貯留空間210における酸素ガス濃度が5体積%となったことが確認された後、10.3〜15.6hrまでは窒素ガス流量を48Nm
3/hrとして運転した。貯留空間210内に設置された酸素濃度計により貯留空間210における酸素ガス濃度が2.5体積%となったことが確認された後、15.6hrから到達時間までは窒素ガス流量を45Nm
3/hrとして運転した。到達時間と吸着時の圧力との関係を
図5に示す。また、消費電力量と吸着時の圧力との関係を
図6に示す。
【0065】
図5に示されるように、ブロワーにより吸着工程における吸着塔内の圧力が0.05〜0.15MPaとなるように調整した実施例1〜4のシステムによれば、製品ガス中の窒素ガス濃度が98体積%となるまでに要した時間(到達時間)は、17〜21.5時間と短時間であった。一方、吸着塔内の圧力を上記範囲からはずれるように調整した比較例1〜3のシステムによれば、到達時間は、27〜36.5時間と長時間であった。特に、従来のように吸着塔内の圧力を0.25MPaとした比較例3のシステムでは、到達時間は、36.5時間と長時間であった。
【0066】
また、
図6に示されるように、ブロワーにより吸着工程における吸着塔内の圧力が0.05〜0.15MPaとなるように調整した実施例1〜4のシステムによれば、製品ガス中の窒素ガス濃度が98体積%となるまでの消費電力量は、95〜115kWhと小さかった。一方、吸着塔内の圧力を上記範囲からはずれるように調整した比較例1〜3のシステムによれば、消費電力量は、155〜250kWhと大きかった。特に、従来のように吸着塔内の圧力を0.25MPaとした比較例3のシステムでは、消費電力量は、250kWhと大きかった。
【0067】
さらに、従来のようにコンプレッサ(空気圧縮装置401)を使用して吸着工程における吸着塔内の圧力が0.7MPaとなる比較例4のシステムでは、
図5に示されるように到達時間が実施例1のシステムと同程度となる、空気圧縮装置401や窒素分離装置502の機器構成の場合において、
図6に示されるように、消費電力量が375kWhと極めて大きくなることが判った。これは、真空引きがなく、貯留空間210内に貯留されたガスも循環利用されないため、原料ガスが多く必要となり、空気圧縮装置401の消費電力(消費電力量)が増加するためと推測された。
【0068】
これらの結果より、本発明の実施例1〜4の窒素ガス濃縮システムによれば、98体積%の窒素ガスを含む製品ガスを、短時間かつ優れたエネルギー効率で調整できることが判った。すなわち、分子篩炭素が高圧条件下において酸素ガスの吸着能が増大するとの性質を有しているにもかかわらず、本発明の窒素ガス濃縮システムでは、ブロワーにより吸着工程における吸着塔内の圧力が従来よりも低くなるように調整した場合に、窒素ガスの分離濃縮効果が高まり、消費電力量も抑えられるという予期せぬ効果が得られることが判った。また、実施例2と実施例4の結果から判るように、貯留空間に供給される製品ガスの流量を段階的に調整することにより、さらに到達時間が短くなり、かつ、消費電力量が抑えられることが判った。