特許第6179247号(P6179247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6179247電子部品装置の製造方法及び電子部品装置
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  • 特許6179247-電子部品装置の製造方法及び電子部品装置 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179247
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】電子部品装置の製造方法及び電子部品装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20170807BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20170807BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   H01L21/60 311Q
   H01L23/30 R
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-159867(P2013-159867)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-32637(P2015-32637A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直也
(72)【発明者】
【氏名】増田 智也
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−307584(JP,A)
【文献】 特開2009−096886(JP,A)
【文献】 特開2001−332520(JP,A)
【文献】 特開2002−053752(JP,A)
【文献】 特開2011−157529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 23/29
H01L 23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品と基板とをバンプを介して接合することで電子部品装置を製造する電子部品の製造方法であって、
前記電子部品の前記基板と対向する側の面及び前記基板の前記電子部品と対向する側の面からなる群より選択される少なくとも一方に、200℃におけるゲル化時間が2.0秒以下である硬化性組成物を付与する付与工程と、
前記電子部品と前記基板とが前記バンプを介して対向している状態で加圧して、前記電子部品と前記基板との間隙に前記硬化性組成物を充填し、かつ、前記電子部品と前記基板とを前記バンプを介して接触させる加圧工程と、
前記電子部品と前記基板とが前記バンプを介して接触している状態で熱処理して、前記電子部品と前記基板とを前記バンプを介して接合し、かつ、前記硬化性組成物を硬化する熱処理工程と、を有し、
前記加圧工程では、せん断速度200s−1において測定される前記硬化性組成物の粘度が2.0Pa・s以下となるように前記硬化性組成物の温度を制御する、電子部品装置の製造方法。
【請求項2】
前記硬化性組成物が無機充填材を含むものである、請求項1に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項3】
前記無機充填材の体積平均粒径が0.1μm〜5.0μmであり、前記硬化性組成物中の前記無機充填材の含有率が30質量%〜70質量%である、請求項2に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項4】
前記加圧工程における前記基板の温度が25℃〜100℃であり、前記電子部品の温度が25℃〜100℃である、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理工程における前記基板の温度が25℃〜100℃であり、前記電子部品の温度が240℃〜260℃である、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項6】
前記基板と前記電子部品との間の距離は40μm以下であり、前記電子部品が有するバンプ間の距離は100μm以下である、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電子部品装置の製造方法。
【請求項7】
前記硬化性組成物がアクリレート化合物及びビスマレイミド化合物から選択される少なくとも一種を含む、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の電子部品装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品装置の製造方法及び電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の電子部品は、外部環境から保護して各種信頼性を確保し、基板への実装を容易にするため、一般にパッケージに内蔵されている。パッケージには種々の形態があり、金属製リードフレームに形成されたタブに素子を固着し、素子表面の電極とインナーリードとを金ワイヤで電気的に接続し、素子、金ワイヤ及びリードフレームの一部を、エポキシ樹脂組成物を用いて低圧トランスファ成形法で封止したパッケージが従来より広く実用に供されている。このような樹脂封止型電子部品装置は、素子サイズに比べてパッケージの外形が大きい。そのため、高密度実装の観点からパッケージ形態はピン挿入型から表面実装型に移行するとともに小型化及び薄型化が積極的に進められている。しかし、金属製リードフレームに素子を搭載し、ワイヤボンディングしたものを樹脂で封止する構造を採用する以上、実装効率を高めるには限界があった。
【0003】
これに対してCOB(Chip on Board)、ハイブリッドIC、モジュール、カード等の分野では、一部の素子を高密度実装するため表面にバンプを形成したベアチップを、バンプを介して基板にフェイスダウンで実装するいわゆるフリップチップ実装が採用されている。最近は素子の高集積化、高機能化、多ピン化、システム化、高速化、低コスト化等に対応するためCSP(Chip Scale Package)と呼ばれる種々の小型パッケージが開発され、パッケージ用基板に素子を搭載する方法として、実装効率のほか電気特性及び多ピン化対応に優れるフリップチップ実装の採用が増えている。また、最近の表面実装型パッケージやCSPは、端子がエリアアレイ状に配置されたものが多い。この種のパッケージの実装形態はフリップチップ実装と同じである。
【0004】
ところで、フリップチップ実装を行う場合、素子と基板とはそれぞれ熱膨張係数が異なり、加熱により接合部に熱応力が発生するため、接続信頼性の確保が重要な課題である。また、ベアチップは回路形成面が充分に保護されていないため、水分及びイオン性不純物が浸入しやすく耐湿信頼性の確保も重要な課題である。これらの課題への対策として、素子と基板との間隙にアンダーフィル材として硬化性組成物を介在させ、加熱等により硬化させて接合部の補強及び素子の保護を図ることが通常行われている。硬化性組成物を介在させる方法には種々の方式がある。中でも、CSPの小型化、薄肉化に伴い、素子と基板との接合と、接合部の補強とを一括して行う、先塗布型の硬化性組成物を用いた方法が注目を集めている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−313841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、先塗布型の硬化性組成物を用いたパッケージ実装では、素子と基板との間への硬化性組成物の充填及び硬化性組成物の加熱硬化が短時間で行われる。そのため、素子、基板及びバンプ間の界面又は基板の回路形成面の配線やソルダーレジストに由来する凹凸部にボイドが残存(又は発生)する場合がある。ボイドに熱ストレスが加わると界面剥離やクラックが発生することがあり、ボイドの低減が重要な課題になっている。最近は、素子の高集積度化、多機能化及び多ピン化に伴ってバンプの小径化及び狭ピッチ化が進み、結果的に素子(チップ)と基板との間隙が狭まる傾向にある。そのため、上記課題の解決がますます難しくなっている。また、環境問題の観点から、バンプの材質が鉛はんだから脱鉛はんだへ、更にはCuポストへと変更されつつあり、仕様が多様化してきている。結果的に、基板の凹凸部が多く存在することとなり、硬化性組成物が間隙に流入する際に空気を巻き込みやすくなり、ボイドの発生の原因となっている。さらに、バンプの材質としてCuが一般化するに伴い、狭ピッチ化も加速する傾向にあり、ボイドの発生の抑制がますます困難になってきている。
【0007】
本発明はかかる状況を鑑みなされたもので、ボイドが少ない電子部品装置の製造方法、及び電子部品装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<1>電子部品と基板とをバンプを介して接合することで電子部品装置を製造する電子部品の製造方法であって、
前記電子部品の前記基板と対向する側の面及び前記基板の前記電子部品と対向する側の面からなる群より選択される少なくとも一方に、200℃におけるゲル化時間が2.0秒以下である硬化性組成物を付与する付与工程と、
前記電子部品と前記基板とが前記バンプを介して対向している状態で加圧して、前記電子部品と前記基板との間隙に前記硬化性組成物を充填し、かつ、前記電子部品と前記基板とを前記バンプを介して接触させる加圧工程と、
前記電子部品と前記基板とが前記バンプを介して接触している状態で熱処理して、前記電子部品と前記基板とを前記バンプを介して接合し、かつ、前記硬化性組成物を硬化する熱処理工程と、を有し、
前記加圧工程では、せん断速度200s−1において測定される前記硬化性組成物の粘度が2.0Pa・s以下となるように前記硬化性組成物の温度を制御する、電子部品装置の製造方法。
【0009】
<2>前記硬化性組成物が無機充填材を含むものである、<1>に記載の電子部品装置の製造方法。
【0010】
<3>前記無機充填材の体積平均粒径が0.1μm〜5.0μmであり、前記硬化性組成物中の前記無機充填材の含有率が30質量%〜70質量%である、<2>に記載の電子部品装置の製造方法。
【0011】
<4>前記加圧工程における前記基板の温度が25℃〜100℃であり、前記電子部品の温度が25℃〜100℃である、<1>〜<3>のいずれかに記載の電子部品装置の製造方法。
【0012】
<5>前記熱処理工程における前記基板の温度が25℃〜100℃であり、前記電子部品の温度が240℃〜260℃である、<1>〜<4>のいずれかに記載の電子部品装置の製造方法。
【0013】
<6>前記基板と前記電子部品との間の距離は40μm以下であり、前記電子部品が有するバンプ間の距離は100μm以下である、<1>〜<5>のいずれかに記載の電子部品装置の製造方法。
【0014】
<7>前記硬化性組成物がアクリレート化合物及びビスマレイミド化合物から選択される少なくとも一種を含む、<1>〜<6>のいずれかに記載の電子部品装置の製造方法。
【0015】
<8>基板と、硬化性組成物の硬化物と、電子部品とがこの順に配置され、前記基板と前記電子部品とがバンプを介して接合しており、かつ前記硬化性組成物の硬化物が前記基板と前記電子部品との間隙を充填している、<1>〜<7>のいずれかに記載の電子部品装置の製造方法によって得られる電子部品装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ボイドが少ない電子部品装置の製造方法、及び電子部品装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の電子部品装置の製造方法の製造工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0019】
<電子部品装置の製造方法>
本発明の電子部品装置の製造方法は、電子部品と基板とをバンプを介して接合することで電子部品装置を製造する電子部品の製造方法であって、
前記電子部品の前記基板と対向する側の面及び前記基板の前記電子部品と対向する側の面からなる群より選択される少なくとも一方に、200℃におけるゲル化時間が2.0秒以下である硬化性組成物を付与する付与工程と、
前記電子部品と前記基板とが前記バンプを介して対向している状態で加圧して、前記電子部品と前記基板との間隙に前記硬化性組成物を充填し、かつ、前記電子部品と前記基板とを前記バンプを介して接触させる加圧工程と、
前記電子部品と前記基板とが前記バンプを介して接触している状態で熱処理して、前記電子部品と前記基板とを前記バンプを介して接合し、かつ、前記硬化性組成物を硬化する熱処理工程と、を有し、
前記加圧工程では、せん断速度200s−1において測定される前記硬化性組成物の粘度が2.0Pa・s以下となるように前記硬化性組成物の温度を制御する。
【0020】
本発明の電子部品装置の製造方法によれば、基板と電子部品との間隙におけるボイドの発生が抑制された電子部品装置を製造することができる。この理由は、以下のように考えることができる。電子部品と基板とをバンプを介して接触させる前に先塗布型の硬化性組成物(以下、硬化性組成物ともいう)を電子部品と基板との間に介在させて電子部品装置を製造する場合、電子部品と基板とを加圧して硬化性組成物を電子部品と基板との間隙に充填する際の硬化性組成物の流動性が不充分であると、流動の際に気泡を巻き込み、基板の上に形成された回路等による凹凸部にボイドが発生する場合がある。このボイドが電子部品装置の信頼性を低下させる場合がある。また、たとえ上記工程で発生したボイドが電子部品装置の信頼性を低下させるほどではない微小な大きさであったとしても、硬化性組成物を硬化させる熱処理工程において微小なボイドが熱により膨張し、電子部品装置の信頼性を低下させるようなボイドに成長する場合がある。
【0021】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、加圧工程を硬化性組成物の粘度が充分に小さい温度条件で行い、かつ前記硬化性組成物として熱処理工程における硬化速度が充分に速い硬化性組成物を選択することで、上記課題を解決しうることを見出した。さらに、前記硬化性組成物の200℃におけるゲル化時間が2.0秒以下であり、かつ、前記加圧工程における前記硬化性組成物の温度が、せん断速度200s−1において測定される前記硬化性組成物の粘度が2.0Pa・s以下となる温度である場合に上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。以下、本発明の電子部品装置の製造方法について詳細に説明する。
【0022】
(付与工程)
本発明の電子部品装置の製造方法は、電子部品の基板と対向する面及び前記基板の前記電子部品と対向する側の面からなる群より選択される少なくとも一方に、200℃におけるゲル化時間が2.0秒以下である硬化性組成物を付与する付与工程を有する。前記工程の具体的な方法は特に制限されず、基板のみに硬化性組成物を付与しても、電子部品のみに硬化性組成物を付与しても、両方に硬化性組成物を付与してもよい。安定した樹脂流動の観点から、基板のみに硬化性組成物を付与する方法が好ましい。本発明の電子部品装置の製造方法に使用される硬化性組成物は、上記条件を満たすことができれば特に制限されない。具体的な構成の例については後述する。
【0023】
前記基板の種類は特に制限されず、例えば、FR4、FR5等の繊維基材を含む有機基板、繊維基材を含まないビルドアップ型の有機基板、ポリイミド、ポリエステル等の有機フィルム、半導体ウェハ、半導体チップ、アルミナ、ガラス、シリコン等の無機材料を含む基材に、接続用の電極を含む導体配線が形成された配線板などを挙げることができる。基板には、セミアディティブ法、サブトラクティブ法等の手法により、回路、基板電極等が形成されていてもよい。
【0024】
前記電子部品は特に制限されず、樹脂等によってパッケージングされていないダイ(チップ)そのもの、CSP(Chip Size Package)、BGA(Ball Grid Array)等と呼ばれている半導体パッケージなどを用いることができる。
【0025】
バンプの材質は特に制限されず、はんだ等の通常使用される材質から選択することができる。環境問題の観点から、Cu、Au、無鉛はんだ等を使用してもよい。バンプは電子部品側に形成されていても、基板側に形成されていてもよい。バンプと回路電極との接続には、Ag−Cu系、Sn−Cu系、Sn−Bi系などのはんだ等を使用してもよい。なお、バンプを無鉛はんだから形成する場合、無鉛はんだの濡れ不良に起因してバンプ周辺に微細な隙間が生じやすい。しかし、本発明の電子部品装置の製造方法によれば、無鉛はんだをバンプに使用した場合にもボイドの発生を効果的に抑制することができる。
【0026】
硬化性組成物を基板又は電子部品の上に付与する方法は特に制限されない。例えば、スクリーン印刷法、エアーディスペンサー、ジェットディスペンサー、オーガータイプディスペンサー等のディスペンサーを用いる方法などが挙げられる。付与する硬化性組成物の量の安定性の観点から、ディスペンサーを用いた方法が好ましい。
【0027】
硬化性組成物を基板又は電子部品に付与する際の形状は特に制限されない。硬化性組成物を基板の上に付与する場合は、例えば、電子部品の搭載位置の全体に付与する方法、電子部品の搭載位置に対応する四角形の対角線に沿った2本の線からなるクロス形状に付与する方法、前記クロス形状に更にクロス形状を45°ずらして重ねた米字形状に付与する方法、電子部品の搭載位置の中心に一点で付与する方法等が挙げられる。信頼性の観点から硬化性組成物のクリーピング等を抑制するためには、クロス形状又は米字形状で付与することが好ましい。基板に基板電極が設けられている場合は、前記基板電極が設けられた箇所を含む電子部品の搭載位置に硬化性組成物を付与することが好ましい。
【0028】
硬化性組成物を基板又は電子部品の上に付与する際の温度は、硬化性組成物の性質等に応じて選択することができる。硬化性組成物をエアーディスペンサーを用いて付与する場合には、硬化性組成物及び基板表面の温度をそれぞれ25℃〜150℃とすることが好ましく、吐出安定性の観点からは60℃〜100℃とすることがより好ましい。硬化性組成物をジェットディスペンサー、オーガータイプディスペンサー等の加熱装置を備えたディスペンサーを用いて付与する場合には、硬化性組成物及び基板表面の温度をそれぞれ25℃〜150℃とすることが好ましく、吐出安定性の観点からは60℃〜100℃とすることがより好ましい。
【0029】
ディスペンサーのニードル径は特に制限されず、付与時の気泡の巻き込みの程度及び吐出安定性を考慮して選択することが好ましい。具体的には、本発明の製造方法において硬化性組成物を吐出する場合には、0.1mm〜1.0mmの径のニードルを用いることが好ましく、0.2mm〜0.5mmの径のニードルを用いることがより好ましい。
【0030】
(加圧工程)
本発明の電子部品の製造方法は、電子部品と基板とがバンプを介して対向している状態で加圧して、電子部品と基板との間隙に硬化性組成物を充填し、かつ、電子部品と基板のバンプとを接触させる加圧工程を有する。前記加圧工程は、加圧工程における前記硬化性組成物の温度(以下、充填温度ともいう)が、せん断速度200s−1において測定される前記硬化性組成物の粘度(以下、流動粘度ともいう)が2.0Pa・s以下となる条件で行われる。
【0031】
前記加圧工程における硬化性組成物の充填温度を上述の流動粘度の条件を満たす温度に調節する具体的な方法は特に制限されない。例えば、基板及び電子部品の少なくとも一方の温度を充填温度に調節して硬化性組成物に接触させる方法を挙げることができる。
【0032】
前記硬化性組成物の充填温度における流動粘度は2.0Pa・s以下である。前記硬化性組成物の充填温度における流動粘度が2.0Pa・sを超えると、加圧により硬化性組成物を基板と電子部品との間隙に充填する際の硬化性組成物の流動性が不充分となり、ボイドの発生を充分に抑制することができない。
【0033】
硬化性組成物の流動粘度は、φ25mmのパラレルプレートを装着したレオメータAR2000(TA−インスツルメンツ社製)を用い、温度を充填温度±0.1℃に調節したステージ上に硬化性組成物を適量滴下し、ステージとプレートのギャップが0.5mmとなるように調整し、せん断速度200s−1における粘度と定義する。
【0034】
硬化性組成物の流動性をより良好にする観点からは、前記加圧工程における硬化性組成物の流動粘度が1.8Pa・s以下となるように硬化性組成物の充填温度を調節することが好ましく、1.5Pa・s以下となるように調節することがより好ましく、1.2Pa・s以下となるように調節することが更に好ましい。
【0035】
前記加圧工程における硬化性組成物の流動粘度の下限は特に制限されないが、硬化性組成物の流動性安定の観点からは0.01Pa・s以上となるように硬化性組成物の充填温度を調節することが好ましく、0.1Pa・s以上となるように調節することがより好ましく、1.0Pa・s以上となるように調節することが更に好ましい。
【0036】
前記硬化性組成物の流動粘度は、加圧工程において流動して基板と電子部品との間隙を充分に充填することができればよく、加圧の開始から終了までの全期間において2.0Pa・s以下であっても、期間の一部で2.0Pa・sを超えていてもよい。
【0037】
前記加圧工程における硬化性組成物の充填温度は、硬化性組成物の流動粘度が2.0Pa・sとなるのであれば特に制限されない。例えば、25℃〜150℃とすることができ、50℃〜125℃とすることが好ましく、80℃〜100℃とすることがより好ましい。硬化性組成物の充填温度が25℃以上であると、硬化性組成物の流動性が充分に得られる傾向にある。硬化性組成物の充填温度が150℃以下であると、硬化性組成物の硬化反応の進行に伴う粘度の上昇が抑制されて充分な流動性を確保できる傾向にある。加圧工程中の硬化性組成物の充填温度は、硬化性組成物の良好な流動性が得られる範囲であれば一定であっても、変化してもよい。
【0038】
前記加圧工程における基板の温度及び半導体チップの温度は、それぞれ25℃〜100℃及び25℃〜100℃の範囲内であることが好ましい。
【0039】
前記加圧工程において付与される圧力の大きさは、一般的なフリップチップの実装工程と同様に、バンプの数又は高さのばらつき、加圧によるバンプ又はバンプを受ける基板上の配線の変形量等を考慮して設定することができる。具体的には、例えば、バンプ1個あたりが受ける荷重が1g〜10g程度になるように設定することが好ましい。また、例えば、1チップあたりにかかる荷重が5N〜50N程度になるように設定することが好ましい。
【0040】
前記加圧工程における硬化性組成物の流動粘度を制御する方法は、硬化性組成物の充填温度を調節する方法であっても、硬化性組成物の成分及びその比率を調節する方法であっても、加圧工程時の圧力を調節する方法であっても、これらのいずれかの組み合わせであってもよい。
【0041】
(熱処理工程)
本発明の電子部品装置の製造方法は、電子部品と基板のバンプとが接触している状態で熱処理して、前記電子部品と前記基板とを前記バンプを介して接合し、かつ前記硬化性組成物を硬化する熱処理工程を有する。
【0042】
前記熱処理工程は、電子部品と基板とのバンプを介した接続を確保する観点から、バンプの融点以上の温度で行われることが好ましい。すなわち、バンプと基板上の配線等との金属接合が形成される温度で行われることが好ましい。例えば、バンプがはんだバンプである場合は、230℃以上であることが好ましい。硬化性組成物の耐熱性の観点からは、前記熱処理工程は320℃以下の温度で行われることが好ましく、300℃以下の温度で行われることがより好ましい。
【0043】
前記熱処理の方法は、特に制限されない。例えば、基板及び電子部品の少なくとも一方を加熱して所望の温度とする方法を挙げることができる。短時間での熱処理の観点からは、少なくとも電子部品を加熱して所望の温度とすることが好ましい。
【0044】
前記熱処理工程における基板の温度及び半導体チップの温度は、それぞれ25℃〜100℃及び240℃〜260℃の範囲内であることが好ましい。
【0045】
前記熱処理は、生産性の向上の観点からは、短時間で行われることが好ましい。具体的には、昇温速度が50℃/秒以上であることが好ましく、70℃/秒以上であることがより好ましく、100℃/秒以上であることが更に好ましい。熱処理時間は、バンプを構成する材料の種類により異なるが、生産性の向上の観点から短時間であるほど好ましい。バンプがはんだバンプである場合、熱処理時間は10秒以下が好ましく、5秒以下がより好ましく、3秒以下が更に好ましい。銅−銅又は銅−金の金属接続の場合は、熱処理時間は30秒以下が好ましい。
【0046】
前記熱処理工程において硬化性組成物内のボイドの膨張を抑制する観点から、硬化性組成物の200℃でのゲル化時間は2.0秒以下である。硬化性組成物の200℃でのゲル化時間が2.0秒を超えると、熱処理工程における硬化性組成物の硬化時間が長くなり、ボイドの膨張を充分に抑制することができない。前記ゲル化時間は1.8秒以下であることが好ましく、1.5秒以下であることがさらに好ましい。
【0047】
硬化性組成物の200℃でのゲル化時間は、JIS K 6910に準拠して測定される。具体的には、200℃の熱板上に0.5gの硬化性組成物を滴下し、スパチュラで広がりすぎないようにかき混ぜる。滴下した後、硬化性組成物の粘度が上がり、スパチュラを上に持ち上げたときに糸引き無く硬化性組成物が切断されるまでの時間をゲル化時間とする。
【0048】
<電子部品装置>
本発明の電子部品装置は、本発明の電子部品装置の製造方法により製造され、基板と、硬化性組成物の硬化物と、バンプを有する電子部品とがこの順に配置され、前記基板と前記電子部品とが前記バンプを介して接触している構造を有する。本発明の電子部品装置は、ボイドの発生が少なく、信頼性に優れる。
【0049】
本発明の効果は、基板と電子部品との間の距離及びバンプ間の距離が小さい電子部品装置において特に顕著である。具体的には、本発明の電子部品装置における基板と電子部品との間の距離は40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましい。また、本発明の電子部品装置におけるバンプ間の距離は100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることが更に好ましい。
【0050】
本発明において、前記基板は配線パターン及びレジストパターンによる凹凸部を有していてもよい。前記基板が配線パターン及びレジストパターンを有する場合は、例えば、前記配線パターンの幅は50μm〜300μmであり、前記レジスト開口部の幅が50〜150μmであり、前記レジストの厚みが10μm〜20μmであることが好ましい。本発明の電子部品装置の製造方法によれば、上記のような凹凸部を有する基板を使用した場合であってもボイドの発生を充分に抑制することができる。
【0051】
<硬化性組成物>
本発明の電子部品装置の製造方法に使用される硬化性組成物は、200℃におけるゲル化時間が2.0秒以下であり、かつ充填温度における流動粘度が2.0Pa・s以下である。
【0052】
前記硬化性組成物は、常温(25℃)において液状であることが好ましい。具体的には、25℃における流動粘度が300Pa・s以下であることが好ましく、200Pa・s以下であることがより好ましく、100Pa・s以下であることが更に好ましい。前記流動粘度は、φ25mmのパラレルプレートを装着したレオメータAR2000(TA−インスツルメンツ社製)を用い、25±0.1℃に温度を調節したステージ上に硬化性組成物を適量滴下し、ステージとプレートのギャップが0.5mmとなるように調整し、せん断速度200s−1における粘度として得られる。前記硬化性組成物の常温(25℃)における流動粘度の下限は特に制限されず、樹脂付与の観点からは0.01Pa・s以上であることが好ましく、0.05Pa・s以上であることがより好ましく、1.0Pa・s以上であることが更に好ましい。
【0053】
前記硬化性組成物は、硬化性組成物の付与性を向上させる観点から、加圧工程前の粘度が加圧工程における粘度よりも大きいことが好ましい。具体的には、加圧工程前の硬化性組成物の温度において、せん断速度200s−1において測定される前記硬化性組成物の粘度が2.0Pa・sよりも大きいことが好ましく、5.0Pa・sよりも大きいことがより好ましく、10.0Pa・sよりも大きいことが更に好ましい。
【0054】
(A)硬化性成分
前記硬化性組成物は、硬化性成分の少なくとも1種を含む。硬化性成分は、硬化性組成物が上記の流動粘度及びゲル化時間の条件を満たすことができれば特に制限されない。本発明の電子部品装置の製造方法に適用する観点からは、熱硬化性成分の少なくとも1種を含むことが好ましい。硬化性成分として具体的には、アクリレート化合物、ビスマレイミド化合物、エポキシ樹脂、シアネート化合物、フェノール樹脂等を挙げることができる。中でも、硬化性組成物の粘度、硬化物の熱膨張率の観点から、アクリレート化合物、ビスマレイミド化合物及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、耐リフロー性の観点から、アクリレート化合物及びビスマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。これらの硬化性成分は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
(A−1)アクリレート化合物
前記アクリレート化合物としては特に制限はなく、通常用いられるアクリレート化合物から適宜選択することができる。アクリレート化合物は単官能アクリレート化合物、2官能アクリレート化合物及び多官能アクリレート化合物のいずれであってもよい。アクリレート化合物としては、エリストール型ポリアクリレート化合物、グリシジルエーテル型アクリレート化合物、ビスフェノールA型ジアクリレート化合物、シクロデカン型ジアクリレート化合物、メチロール型アクリレート化合物、ジオキサン型ジアクリレート化合物、ビスフェノールF型アクリレート化合物、ジメチロール型アクリレート化合物、イソシアヌル酸型ジアクリレート化合物等を挙げることができる。中でも、イソシアヌル酸型ジアクリレート化合物、ビスフェノールF型アクリレート化合物、シクロデカン型ジアクリレート化合物及びグリシジルエーテル型アクリレート化合物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これらのアクリレート化合物は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
硬化性成分としてアクリレート化合物を使用する場合は、重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤の種類は特に制限されず、通常使用される重合開始剤から適宜選択することができる。短時間での重合の観点からは、過酸化物の少なくとも1種を含むことが好ましい。前記過酸化物は特に制限されず、アクリレート化合物の重合開始剤として一般に使用されているものから適宜選択することができる。中でも、硬化性の観点から、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のシクロヘキサン型の過酸化物が好ましい。
アクリレート化合物と重合開始剤との当量比は特に制限されない。各成分の未反応分を少なくし、成形性を向上させる観点からは、アクリレート化合物に対して重合開始剤を0.01当量以上0.1当量以下とすることが好ましく、0.02当量以上0.8当量以下とすることがより好ましく、0.04当量以上0.07当量以下とすることが更に好ましい。
【0057】
(A−2)ビスマレイミド化合物
前記ビスマレイミド化合物としては特に制限はなく、通常用いられるビスマレイミド化合物から適宜選択することができる。ビスマレイミド化合物としては、フェニレン型ビスマレイミド化合物、キシリレン型ビスマレイミド化合物、オリゴマー型ビスマレイミド化合物、イミド拡張型ビスマレイミド化合物等を挙げることができる。中でも、フェニレン型ビスマレイミド化合物及びキシリレン型ビスマレイミド化合物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これらのビスマレイミド化合物は、1種を単独で用いても2種を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
(A−3)エポキシ樹脂
前記エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に制限されるものではなく、電子部品用エポキシ樹脂組成物に一般的に使用されているエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂は固体であっても液体であってもよく、固体のエポキシ樹脂と液体のエポキシ樹脂とを併用してもよい。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ナフタレンジオール、水添ビスフェノールA等とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を代表とする、フェノール化合物とアルデヒド化合物とを縮合又は共重合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂;フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;p−アミノフェノール、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のアミン化合物とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;脂環族エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化性組成物の粘度を低くする観点からは液状のエポキシ樹脂が好ましく、反応性及び耐熱性の観点からはビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、ゴム粒子(例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・メタクリル酸・ジビニルベンゼン共重合物)を分散させた変性エポキシ樹脂であってもよい。
【0059】
硬化性成分としてエポキシ樹脂を使用する場合は、硬化剤が硬化性成分として含まれる。前記硬化剤は特に制限されず、通常用いられる硬化剤から選択することができる。硬化剤は固体であっても液体であってもよく、固体の硬化剤と液体の硬化剤を併用してもよい。短時間での硬化の観点からは、酸無水物の少なくとも1種を硬化剤として用いることが好ましい。
【0060】
エポキシ樹脂と硬化剤との当量比(エポキシ基と反応する官能基当量)は特に制限されない。各成分の未反応分を少なくする観点からは、エポキシ樹脂に対して硬化剤を0.6当量以上1.3当量以下とすることが好ましく、0.7当量以上1.2当量以下とすることがより好ましく、0.8当量以上1.1当量以下とすることが更に好ましい。
【0061】
前記硬化性組成物における硬化性成分の含有率は特に制限されない。充分な硬化性を得る観点からは、硬化性組成物総量中の硬化性成分の含有率は30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。硬化性組成物の流動性の観点からは、硬化性組成物総量中の硬化性成分の含有率は70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
【0062】
(B)無機充填材
前記硬化性組成物は、無機充填材の少なくとも1種を含むことが好ましい。前記無機充填材としては、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粒子;炭酸カルシウム、クレー、酸化アルミナ等のアルミナ粒子;窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミ、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粒子;これらの粒子を球形化したビーズ;ガラス繊維などが挙げられる。これらの無機充填材は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。微細な間隙への流動性及び浸透性の観点からは、無機充填材は球形シリカを含むことが好ましい。
【0063】
無機充填材の体積平均粒径は、0.1μm〜5.0μmの範囲が好ましく、0.3μm〜2.0μmの範囲がより好ましい。体積平均粒径が0.1μm以上であると、無機充填材の比表面積の増大が抑制され、硬化性組成物の粘度上昇が抑制され、無機充填材の増量が容易になる。また5.0μm以下であると、狭い間隙への充填性が向上し、無機充填材が硬化性組成物中で沈降することを抑制できる。
【0064】
前記硬化性組成物が無機充填材を含む場合、無機充填材の含有率は、硬化性組成物の総量中に30質量%〜70質量%であることが好ましく、40質量%〜60質量%であることがより好ましい。無機充填材の含有率が30質量%以上であると、熱膨張係数の低減効果がより大きくなり温度サイクル性が向上する傾向にあり、かつ耐湿信頼性が向上する傾向にある。また70質量%以下であると、硬化性組成物の粘度を低く抑えることができ、流動性及びディスペンス性が向上する傾向がある。
【0065】
無機充填材の含有率は、硬化性組成物の総量中に40体積%〜70体積%であることが好ましく、50体積%〜60体積%であることがより好ましい。硬化性組成物中における無機充填材の体積基準の含有量は、以下のようにして測定される。まず、25℃における硬化性組成物の質量(Wc)を測定し、その硬化性組成物を空気中400℃で2時間、次いで700℃で3時間熱処理し、樹脂分を分解・燃焼して除去した後、25℃における残存した無機充填材の質量(Wf)を測定する。次いで、電子比重計または比重瓶を用いて、25℃における無機充填材の比重(df)を求める。次いで、同様の方法で25℃における硬化性組成物の比重(dc)を測定する。次いで、硬化性組成物の体積(Vc)及び残存した無機充填材の体積(Vf)を求め、(式1)に示すように残存した無機充填材の体積を硬化性組成物の体積で除すことで、無機充填材の体積比率(Vr)として求める。
【0066】
(式1)
Vc=Wc/dc
Vf=Wf/df
Vr=Vf/Vc
【0067】
Vc:硬化性組成物の体積(cm)、Wc:硬化性組成物の質量(g)
dc:硬化性組成物の密度(g/cm
Vf:無機充填材の体積(cm)、Wf:無機充填材の質量(g)
df:無機充填材の密度(g/cm
Vr:無機充填材の体積比率
【0068】
前記硬化性組成物は、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、硬化促進剤、可撓化剤、カップリング剤、着色剤、溶剤、界面活性剤、イオントラップ剤等を挙げることができる。
【0069】
前記硬化促進剤は特に制限されず、通常用いられる硬化促進剤から適宜選択して用いることができる。具体的には、アミン化合物、イミダゾール化合物、オルガノホスフィン化合物、四級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物等を挙げることができる。反応性の観点からは、イミダゾール化合物及び三級アミン化合物が好ましく、保管安定性の観点からは、潜在性を有するイミダゾール化合物及び潜在性を有する三級アミン化合物が好ましい。潜在性を有するイミダゾール化合物及び潜在性を有する三級アミン化合物としては、イミダゾール化合物又は三級アミン化合物と、フェノール化合物又はカルボキシ基を有する化合物との包接錯体等を挙げることができる。前記硬化性組成物が硬化促進剤を含む場合、その含有率は硬化性成分に対して0.1質量%〜10質量%とすることができる。
【0070】
前記可撓化剤は特に限定されず、通常用いられる可撓化剤から適宜選択することができる。可撓化剤は液状であっても粒状であってもよい。なかでも充填性と流動性の観点から、粒状の可撓化剤が好ましい。粒状の可撓化剤として具体的には、シリコーンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム等の粒子を挙げることができる。中でも、弾性率の調整及び流動性の向上の観点から、比較的低弾性であるシリコーンゴムの粒子が好ましい。
【0071】
粒状の可撓化剤を用いる場合、その体積平均粒径は0.1μm〜5.0μmの範囲が好ましい。粒状可撓化剤の体積平均粒径が0.1μm以上であると、硬化性組成物の粘度上昇が抑制され、粒状可撓化剤の増量が容易になる傾向にある。また体積平均粒径が5.0μm以下であると狭い間隙への充填性が向上する傾向にある。
【0072】
また硬化性組成物が可撓化剤を含む場合、その含有率は硬化性成分に対して1質量%〜30質量%の範囲に設定されることが好ましい。含有率が1質量%以上であると、破壊靭性の向上効果がより効果的に得られ、可撓化剤の沈降が抑制され、さらに温度サイクル時の耐フィレットクラック性が向上する傾向にある。含有率が30質量%以下であると硬化性組成物の粘度上昇が抑制され、流動性、浸透性及びディスペンス性が向上する傾向がある。
【0073】
前記カップリング剤は特に制限されず、通常用いられるカップリング剤から適宜選択して用いることができる。カップリング剤を含むことで無機充填材と硬化後の硬化性成分との濡れ性が向上し、基板や電子部品への接着性が向上する傾向にある。具体的には、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドトリメトキシシラン、γ−ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン等のシラン化合物を挙げることができる。
前記硬化性組成物がカップリング剤を含む場合、その含有率は無機充填材に対して0.1質量%〜5質量%とすることができる。
【0074】
前記着色剤は特に制限されず、通常用いられる着色剤から適宜選択して用いることができる。具体的には、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等を挙げることができる。
【0075】
前記イオントラップ剤は特に制限されず、通常用いられるイオントラップ剤から適宜選択して用いることができる。イオントラップ剤を含むことで、IC等の電子部品の耐マイグレーション性、耐湿性及び高温放置特性が向上する傾向にある。中でもイオントラップ剤は、下記組成式(1)で表される化合物及び組成式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
Mg1−XAl(OH)(COX/2・mHO ・・・(1)
(0<X≦0.5、mは正の数)
BiO(OH)(NO ・・・(2)
(0.9≦x≦1.1、0.6≦y≦0.8、0.2≦z≦0.4)
【0076】
前記硬化性組成物がイオントラップ剤を含む場合、その含有率は、無機充填材を除く硬化性組成物の総量中に0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましい。またイオントラップ剤の体積平均粒径は0.1μm以上3.0μm以下であることが好ましく、最大粒径は10μm以下であることが好ましい。
【0077】
前記硬化性組成物に含まれる成分の種類と含有量を調整することで、硬化性組成物の流動粘度及び200℃でのゲル化時間を所望の範囲に調整することができる。例えば、流動粘度を低下させる手法としては、無機充填材の含有率を下げること、無機充填材の粒径を小さくすること等が挙げられる。また、ゲル化時間を短縮させる手法としては、アクリレート化合物を高含有率で含有させること等が挙げられる。
【0078】
前記硬化性組成物の調製方法は特に制限されず、各成分を均一に分散混合できる方法であればよい。一般的な方法としては、三本ロール、らいかい機、プラネタリミキサー等による分散混練を挙げることができる。また混合の間、必要に応じて減圧してもよい。
【0079】
以下、図面を参照しながら本発明の電子部品装置の製造方法について説明する。以下の電子部品装置の製造方法においては、基板の電子部品と対向する側の面に硬化性組成物を付与する態様について説明する。また、バンプは電子部品側に設けられており、当該バンプを介して電子部品と基板とが接合される。しかし、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。なお、図1において、1は半導体チップ(電子部品)、2ははんだバンプ、3は接続パッド、4はソルダーレジスト、5は基板、6は硬化性組成物である。
【0080】
まず、図1(a)に示すように、基板5の接続パッド3の設けられた側(基板5の半導体チップ1と対向する側)の面に、硬化性組成物6を付与する。次いで、図1(b)に示すように、半導体チップ1と基板5とをはんだバンプ2を介して対向させ、加圧することで、半導体チップ1と基板5との間隙に硬化性組成物6を充填し、かつ、半導体チップ1と基板5の接続パッド3とをはんだバンプ2を介して接触させる(加圧工程)。
【0081】
次いで、半導体チップ1と基板5の接続パッド3とがはんだバンプ2を介して接触している状態で熱処理して、半導体チップ1と基板5の接続パッド3とをはんだバンプ2を介して接合し、かつ、硬化性組成物6を硬化する(熱処理工程)。以上の工程を経ることで、本発明の電子部品装置が製造される。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0083】
[実施例1〜3]
表1に示す量(質量部)の下記の成分を真空らいかい機に入れ、混練して実施例1〜3の硬化性組成物をそれぞれ得た。
【0084】
エポキシ樹脂としては、以下のエポキシ樹脂を用いた
エポキシ1:三菱化学株式会社製、商品名「jER630」
エポキシ2:ゴム粒子(アクリロニトリル・ブタジエン・メタクリル酸・ジビニルベンゼン共重合物(JSR株式会社製、商品名「XER−91P」))をビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、商品名「YDF−8170C」)に質量比1/4で予め加熱混融し分散させた、エポキシ当量200g/eqの変性エポキシ樹脂
【0085】
硬化剤としては、以下の硬化剤を用いた。
硬化剤1:三菱化学株式会社製、商品名「YH307」
硬化剤2:三菱化学株式会社製、商品名「YH306」
【0086】
硬化促進剤としては、5−ヒドロキシイソフタル酸と2−エチル−4−メチルイミダゾールとを含有する包接錯体(日本曹達株式会社製、開発品名「HIPA−2E4MZ」)を用いた。
【0087】
アクリレート化合物としては、以下のアクリレート化合物を用いた。
アクリレート1:日立化成株式会社製、開発品名「FA−731AT」
アクリレート2:日本化薬株式会社製、商品名「KAYARAD R−712」
アクリレート3:日立化成株式会社製、商品名「FA513−AS」
アクリレート4:共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルG」
アクリレート5:新中村化学工業株式会社製、商品名「ABE−300」
アクリレート6:新中村化学工業株式会社製、商品名「A−DCP」
【0088】
過酸化物としては、化薬アクゾ株式会社製、商品名「トリゴノックス22−70E」を用いた。
【0089】
ビスマレイミド化合物としては、丸善石油化学株式会社製、商品名「BANI−M」を用いた。
【0090】
無機充填材としては、以下の無機充填材を用いた。
無機充填材1:株式会社アドマテックス製、商品名「SE2050−SEJ」
無機充填材2:株式会社アドマテックス製、商品名「SE2053−SEJ」
【0091】
得られた硬化性組成物について、以下のようにして流動粘度及び200℃におけるゲル化時間を測定した。また、硬化性組成物を用いて電子部品装置を作製し、ボイドの有無及び占有率を観察した。評価結果を表1に示す。
【0092】
(1)流動粘度の測定
硬化性組成物の流動粘度は、φ25mmのパラレルプレートを装着したレオメータAR2000(TA−インスツルメンツ製)を用い、温度を充填温度±0.1℃に調節したステージ上に硬化性組成物を適量滴下し、ステージとプレートのギャップが0.5mmとなるように調整し、せん断速度200s−1における粘度を測定して得た。
【0093】
(2)ゲル化時間の測定
硬化性組成物の200℃におけるゲル化時間は、JIS K 6910に準拠して測定した。具体的には、200℃の熱板上に0.5gの硬化性組成物を滴下し、スパチュラで広がりすぎないようにかき混ぜた。滴下した後、硬化性組成物の粘度が上がり、スパチュラを上に持ち上げたときに糸引き無く硬化性組成物が切断されるまでの時間をゲル化時間とした。
【0094】
(3)熱処理後のボイドの観察
評価用電子部品装置の材料として、7.3mm×7.3mm×0.1mmのアルミ配線を有するシリコンチップ(株式会社Walts製、商品名「WALTS−TEG CC80−0101JY−MODEL I」、バンプ:Sn−Ag−Cu系、バンプ間隔:80μm)及び18mm×18mm×0.4mmの回路が形成された基板(株式会社Walts製、商品名「WALTS−KIT CC80−0102JY−MODEL 1」、ソルダーレジスト:PSR4000−AUS703、基材:E679FGS)を用意した。
【0095】
上記で得られた硬化性組成物を、エアーディスペンサーを用いて、表1に記載の充填温度に温度を調節した基板の表面の電子部品搭載位置にクロス形状で付与した。次いで、充填温度となるように温度を調節したシリコンチップのバンプを有する面が基板側に向くようにして、バンプが基板と接触するようにシリコンチップの上から加圧した。この際、基板上に付与された硬化性組成物が加圧により流動して基板とシリコンチップとの間隙を充填した。このようにして、電子部品実装基板を作製した。
【0096】
次に、電子部品実装基板を260℃で3秒熱処理し、硬化性組成物の硬化及びはんだバンプと基板との接合を行い、電子部品装置を作製した。シリコンチップと基板との距離(ギャップ)は20μmであった。
【0097】
上記で得られた電子部品装置のシリコンチップを平面研磨によって除去し、基板の硬化性組成物の硬化物が存在する領域を光学顕微鏡で観察し、目視可能なボイドの状態を評価した。具体的には、光学顕微鏡で観察される範囲のボイドの回路基板上への投影面積からボイドの占有率を算出した。
【0098】
(4)流動時のボイドの観察
シリコンチップの代わりにカバーガラス(MATSUNAMI GLASS IND.,LTD社製)を使用した以外は上記と同様にして硬化性組成物を充填し、電子部品実装基板を作製した。熱処理を行わない状態で、電子部品実装基板のカバーバラス側から光学顕微鏡で観察し、目視可能なボイドの有無を調べた。
【0099】
熱処理後のボイドの観察及び流動時のボイドの観察の結果より、ボイドの状態を以下の評価基準に従って評価した。
【0100】
−評価基準−
A:硬化性組成物の流動時にボイドが観察されず、且つ熱処理後のボイドの占有率が基板の硬化性組成物の硬化物が存在する領域の1%未満であった。
B:硬化性組成物の流動時にボイドが観察されず、且つ熱処理後のボイドの占有率が基板の硬化性組成物の硬化物が存在する領域の1%以上であった。
C:硬化性組成物の流動時にボイドが観察された。
【0101】
[比較例1〜8]
硬化性組成物の組成を表1に示したように変更したこと以外は、実施例と同様にして、比較例1〜8の硬化性組成物を調製した。得られた硬化性組成物の流動粘度及び200℃におけるゲル化時間を表1に示す。また、得られた硬化性組成物を用いて、実施例と同様にして電子部品装置を作製し、ボイドの状態を評価した。結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
(参考例1〜4)
本発明の電子部品装置の製造方法における硬化性組成物の充填性を確認するため、以下の粘度校正標準液を用いて流動粘度の測定及びボイドの評価を行った。結果を表2に示す。
【0104】
粘度校正標準液としては、以下の標準液を用いた。
標準液1:日本グリース株式会社製、商品名「JS50」
標準液2:日本グリース株式会社製、商品名「JS2000」
標準液3:日本グリース株式会社製、商品名「JS52000」
標準液4:日本グリース株式会社製、商品名「JS160000」
【0105】
(1)流動粘度の測定
粘度校正標準液の流動粘度は、レオメータAR2000(TA−インスツルメンツ製)を用いて測定した。具体的には、φ25mmのパラレルプレートを装着したレオメータAR2000(TA−インスツルメンツ製)を用い、40±0.1℃に温度を調節したステージ上に粘度校正標準液を適量滴下し、ステージとプレートのギャップが0.5mmとなるように調整し、せん断速度200s−1における値を粘度校正標準液の流動粘度とした。
【0106】
(2)ボイドの観察
評価用TEGの材料として、7.3mm×7.3mm×0.7mmのガラスチップ(株式会社WALTS製、商品名「WALTS−TEG CC80−0101JY−MODEL 1−Glass」、バンプ間隔:80μm)及び基板として18mm×18mm×0.4mmの回路が形成された基板(株式会社Walts製、商品名「WALTS−KIT CC80−0102JY−MODEL 1」、ソルダーレジスト:PSR4000−AUS703、基材:E679FGS)を用意した。
【0107】
上記粘度校正標準液を、40℃に温度を調節した基板表面のシリコンチップ搭載位置の中心にエアーディスペンサーを用いて1点で付与した。次いで、40℃に温度を調節したガラスチップのバンプを有する面が基板側に向くようにして重ね、バンプが基板と接触するように加圧した。この際、基板上に付与された粘度校正標準液が加圧により流動して基板とガラスチップとの間隙を充填した。このようにして、評価用TEGを作製した。評価用TEGのガラスチップと基板との距離は20μmであった。
【0108】
上記で得られた評価用TEGのガラスチップの上から、基板の粘度校正標準液が存在する領域を光学顕微鏡で観察し、目視可能なボイドの有無を調べ、以下の評価基準に従って評価した。
−評価基準−
A:粘度校正標準液の流動時にボイドが観察されなかった。
B:粘度校正標準液の流動時にボイドが観察された。
【0109】
【表2】
【0110】
表1及び表2に示す結果から明らかなように、本発明の製造方法によれば、ピッチ間隔の狭いパッケージでもボイドの発生が抑制される電子部品装置を製造することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 半導体チップ(電子部品)
2 はんだバンプ
3 接続パッド
4 ソルダーレジスト
5 基板
6 硬化性組成物
図1