特許第6179373号(P6179373)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6179373-液晶媒体、光素子および液晶化合物 図000090
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179373
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】液晶媒体、光素子および液晶化合物
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/20 20060101AFI20170807BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20170807BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20170807BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20170807BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20170807BHJP
   C07C 69/76 20060101ALI20170807BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   C09K19/20
   C09K19/34
   C09K19/54 B
   C09K19/54 Z
   C09K19/30
   C09K19/12
   C07C69/76 ACSP
   G02F1/13 500
【請求項の数】18
【全頁数】85
(21)【出願番号】特願2013-244614(P2013-244614)
(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公開番号】特開2015-101686(P2015-101686A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長谷場 康宏
(72)【発明者】
【氏名】佐郷 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】山本 真一
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/046626(WO,A1)
【文献】 特開2009−144135(JP,A)
【文献】 特表2010−540733(JP,A)
【文献】 特開2011−001342(JP,A)
【文献】 特開昭59−084846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00
C07C 69/76
G02F 1/13
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物1を少なくとも1つ以上含むアキラル成分Tとキラル剤とを含有し、光学的に等方性の液晶相を発現する液晶組成物。


式(1)中、Rは水素または炭素数1〜20のアルキルであり、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、当該アルキル中および当該アルキル中の−CH−が−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられた基中の少なくとも1つの水素はハロゲンまたは炭素数1〜3のアルキルで置き換えられてもよく;
11、L12、L13、L14、L15、L16およびL17はそれぞれ独立して水素またはフッ素であり;
はハロゲン、−CF、−OCF、−C≡N、または−N=C=Sであり、
n11は0または1である。
【請求項2】
式(1)において、n11が0である請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
式(1)において、L11が水素であり、L12,L13、L16およびL17がフッ素である請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項4】
式(1)で表される化合物が、式(1−1)または(1−2)で表される化合物である、請求項1に記載の液晶組成物。


上記式中、R1aは炭素数1〜10のアルキルであり、;
1aはフッ素、塩素、−C≡N、−CFまたは−OCFである。
【請求項5】
下記式(3)で表される化合物3および式(7)で表される化合物7からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶組成物。


式(3)中、Rは水素または炭素数1〜20のアルキルであり、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、当該アルキル中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、当該アルキルにおいて−O−と−CH=CH−および−CO−と−CH=CH−が隣接することはなく;
31、Z32およびZ33はそれぞれ独立して、単結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、当該アルキレン中の少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−または−CFO−で置き換えられてもよく;
31、L32、L33,L34およびL35はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
は水素、ハロゲン、−SFまたは炭素数1〜10のアルキルであり、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、当該アルキル中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、当該アルキルにおいて−O−と−CH=CH−とが隣接することはなく、−CO−と−CH=CH−とが隣接することはない。


式(7)中、Rは炭素数1〜20のアルキルであり、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、当該アルキル中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、当該アルキルにおいて−O−と−CH=CH−および−CO−と−CH=CH−が隣接することはなく;
71、L72、L73、L74、L75、L76、L77およびL78はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
71、72およびZ73はそれぞれ独立して、単結合、−COO−または−CFO−であるが、少なくとも一つは−COO−または−CFO−であり;
n71およびn72はそれぞれ独立して0または1であり、かつn71≧n72であり、;
は水素、ハロゲン、−SFまたは炭素数1〜10のアルキルであり、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、当該アルキル中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、当該アルキルにおいて−O−と−CH=CH−とが隣接することはなく、−CO−と−CH=CH−とが隣接することはない。
【請求項6】
化合物3が、式(3−2)および式(3−3)で表される化合物の群から選ばれる1つ以上である、請求項5に記載の液晶組成物。


上記式中、R3Aはそれぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニルまたは少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数2〜12のアルケニルであり;
31、L32、L33,L34およびL35はそれぞれ独立して水素またはフッ素であり;
3Aはフッ素、塩素、−CFまたは−OCFである。
【請求項7】
化合物7が、式(7−1)〜(7−8)で表される化合物の群から選ばれる1つ以上である、請求項5に記載の液晶組成物。


上記式中、R7Aは水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜11のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルであり;
72、L74、L75、L76、L77およびL78はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
式(7−1)〜(7−3)および(7−6)〜(7−8)において、Z71およびZ72はそれぞれ独立して、単結合、−COO−または−CFO−であるが、少なくとも一つは−COO−または−CFO−であり、式(7−4)および(7−5)においては、Z71はそれぞれ独立して、−COO−または−CFO−であり、
7Aは、フッ素、塩素、−CFまたは−OCFである。
【請求項8】
化合物7が、式(7−2−2−E)、(7−2−5−E)、(7−2−2−F)、(7−2−5−F)および(7−2−6−F)で表される化合物の群から選ばれる1つ以上である、請求項7に記載の液晶組成物。


(上記式中、R7Aは、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜11のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルであり;
7Aは、フッ素、塩素、−CFまたは−OCFである。)
【請求項9】
アキラル成分Tの全重量に対して、化合物1を合計で3重量%〜20重量%含有し、化合物3を合計で20重量%〜67重量%、化合物7を合計で30重量%〜77重量%含有する、請求項5に記載の液晶組成物。
【請求項10】
アキラル成分Tが、さらに式(4)で表される化合物4、および(2)で表される化合物2の群から選ばれる少なくとも1つの化合物をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶組成物。


式(4)中、Rは、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルであり;
環Bはそれぞれ独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジクロロ−1,4−フェニレンまたはピリミジン−2,5−ジイルであり;
41はそれぞれ独立して、単結合、エチレン、−COO−、−OCO−、−CFO−または−OCF−であり;
48およびL49はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
はフッ素、塩素、−CFまたは−OCFであり;
n41は、1、2、3または4であり、ただしn41が3または4である場合、少なくとも1つのZ41は−CFO−または−OCF−であり、n41が3の場合は、環Bのすべてがフッ素で置換された1,4−フェニレンであることはない。


式(2)中、Rは水素または炭素数1〜20のアルキルであり、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、当該アルキル中、アルキル中の少なくとも1つの−CH−が−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられた基中、またはアルキル中の少なくとも1つの−CH−が−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられた基中の少なくとも1つの−CH−CH−が−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられた基中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、Rにおいて−O−と−CH=CH−および−CO−と−CH=CH−が隣接することはなく;
環A21、環A22、環A23、環A24および環A25はそれぞれ独立して、1,4−シクロへキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、1つまたは2つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、2つの水素がそれぞれフッ素と塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイルであり;
21、Z22、Z23、Z24、Z25およびZ26はそれぞれ独立して、単結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、当該アルキレン中の少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−または−CFO−で置き換えられてもよく;
21、L22およびL23はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
はフッ素、塩素、−CF、−CHF、−CH−OCF、−OCHF、−OCHF、−OCFCFHCFまたは−CH=CHCFであり;
n21、n22、n23、n24およびn25はそれぞれ独立して、0または1であり、2≦n21+n22+n23+n24+n25≦3である。
【請求項11】
アキラル成分Tが、式(4−1)〜(4−9)で表される化合物の群から選ばれる1つ以上の化合物4、および式(2−1−1−2)、(2−1−2−1)、(2−1−3−1)、(2−1−3−2)、(2−1−4−2)および(2−1−4−3)で表される化合物の群から選ばれる1以上の化合物2を、さらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶組成物。


(上記式中、R4Aはそれぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニルまたは少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルであり;
4Aはフッ素、塩素、−CFまたは−OCFであり;
40〜L49はそれぞれ独立して水素またはフッ素である。


上記式中、R2Aは炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニル、または、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルであり;
(F)はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
2Aは、フッ素、塩素、−CFまたは−OCFである。
【請求項12】
キラル剤が、式(K1)〜(K6)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の液晶組成物。


(上記式中、Rはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、−C≡N、−N=C=O、−N=C=Sまたは炭素数1〜20のアルキルであり、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、当該アルキル中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
Aはそれぞれ独立して、芳香族性の6〜8員環、非芳香族性の3〜8員環、または、炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の少なくとも1つの水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたはハロアルキルで置き換えられてもよく、環の−CH−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;
Bはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、炭素数1〜3のハロアルキル、芳香族性の6〜8員環、非芳香族性の3〜8員環、または、炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の少なくとも1つの水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたはハロアルキルで置き換えられてもよく、当該アルキル中の−CH−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;
Zはそれぞれ独立して、単結合、炭素数1〜8のアルキレンであり、当該アルキレン中の少なくとも1つの−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−または−N=CH−で置き換えられてもよく、当該アルキレン中の少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、当該アルキレン中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
Xはそれぞれ独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、または−CHCH−であり;
mKはそれぞれ独立して、1〜4の整数である。)
【請求項13】
−20℃〜70℃のいずれかの温度においてキラルネマチック相を示し、この温度範囲の少なくとも一部において螺旋ピッチが700nm以下である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の液晶組成物と、重合性モノマーとを含む混合物。
【請求項15】
請求項14に記載の混合物を重合して得られる、光学的に等方性の液晶相で駆動される素子に用いられる高分子/液晶複合材料。
【請求項16】
一方または両方の基板に電極が配置され、基板間に配置された液晶媒体、および電極を介して液晶媒体に電界を印加する電界印加手段を備えた光素子であって、液晶媒体が、請求項1〜13のいずれか一項に記載の液晶組成物、または、請求項15に記載の高分子/液晶複合材料である光素子。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の液晶組成物または請求項15に記載の高分子/液晶複合材料の光素子への使用。
【請求項18】
式(1−1)または式(1−2)で表される化合物。


上記式中、R1aは炭素数1〜10のアルキルであり、;
1aはフッ素、塩素、−C≡N、−CFまたは−OCFである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば光素子用の材料として有用な液晶化合物、液晶組成物、当該液晶組成物を用いた光素子等に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶組成物を用いた液晶表示素子は、時計、電卓、携帯電話、パーソナルコンピュータ、テレビなどのディスプレイに広く利用されている。これらの液晶表示素子は液晶化合物の屈折率異方性、誘電率異方性などを利用したものである。液晶表示素子における動作モードとしては、主として1枚以上の偏光板を利用して表示するTN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、BTN(Bistable twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(opticallycompensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)などが知られている。さらに近年は光学的に等方性の液晶相において電場を印加し、電気複屈折を発現させるモードも研究されている(特許文献1〜15、非特許文献1〜3)。
【0003】
さらに光学的に等方性の液晶相の1つであるブルー相における電気複屈折を利用した波長可変フィルター、波面制御素子、液晶レンズ、収差補正素子、開口制御素子、光ヘッド装置などが提案されている(特許文献10〜12)。
素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とAM(active matrix)である。PM(passive matrix)はスタティック(static)とマルチプレックス(multiplex)などに分類され、AMはそのスイッチング素子の種類によって、TFT(thin film transistor)、MIM(metal insulator metal)などに分類される。
またクロロベンゼンとエステル基を有する組成物が、特許文献15に開示されている。ただし、特許文献15に開示されている化合物は、駆動電圧低減効果が小さく、これらを含む組成物の駆動電圧は高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−327966号公報
【特許文献2】国際公開2005/90520号
【特許文献3】特開2005−336477号公報
【特許文献4】特開2006−89622号公報
【特許文献5】特開2006−299084号公報
【特許文献6】特表2006−506477号公報
【特許文献7】特表2006−506515号公報
【特許文献8】国際公開2006/063662号
【特許文献9】特開2006−225655号公報
【特許文献10】特開2005−157109号公報
【特許文献11】国際公開2005/80529号
【特許文献12】特開2006−127707号公報
【特許文献13】国際公開1998/023561号
【特許文献14】国際公開2010/058681号
【特許文献15】特開2009−144135号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Nature Materials, 1, 64, (2002)
【非特許文献2】Adv. Mater., 17, 96, (2005)
【非特許文献3】Journal of the SID, 14, 551, (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記状況の下、熱、光などに対する安定性、広い液晶相温度範囲、極めて大きな誘電率異方性を有し、光学的に等方性の液晶相を発現する液晶媒体が求められている。また、広い温度範囲で使用可能であり、短い応答時間、大きなコントラスト比、および低い駆動電圧を有する各種光素子が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、たとえば、以下のような液晶化合物、液晶媒体(液晶組成物、高分子/液晶複合材料等)、重合モノマーと液晶組成物との混合物、液晶媒体等を含有する光素子、液晶化合物等を提供する。
【0008】
本発明は、以下のような化合物、液晶媒体(液晶組成物または高分子/液晶複合体)および液晶媒体を含有する光素子等を提供する。
【0009】
[1]式(1)で表される化合物1を少なくとも1つ以上含むアキラル成分Tとキラル剤とを含有し、光学的に等方性の液晶相を発現する液晶組成物。


式(1)中、Rは水素または炭素数1〜20のアルキルであり、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、当該アルキル中および当該アルキル中の−CH−が−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられた基中の少なくとも1つの水素はハロゲンまたは炭素数1〜3のアルキルで置き換えられてもよく;
11、L12、L13、L14、L15、L16およびL17はそれぞれ独立して水素またはフッ素であり;
はハロゲン、−CF、−OCF、−C≡N、または−N=C=Sであり、
n11は0または1である。
【0010】
[2]式(1)において、n11が0である[1]に記載液晶組成物。
【0011】
[3]式(1)において、L11が水素であり、L12,L13、L16およびL17がフッ素である[1]に記載の液晶組成物。
【0012】
[4]式(1)で表される化合物が、式(1−1)〜(1−2)で表される化合物である、[1]に記載の液晶組成物。


上記式中、R1aは炭素数1〜10のアルキルであり、;
1aはフッ素、塩素、−C≡N、−CFまたは−OCFである。
【0013】
[5]下記式(3)で表される化合物3および式(7)で表される化合物7からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物をさらに含む、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の液晶組成物。


式(3)中、Rは水素または炭素数1〜20のアルキルであり、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、当該アルキル中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、当該アルキルにおいて−O−と−CH=CH−および−CO−と−CH=CH−が隣接することはなく;
31、Z32およびZ33はそれぞれ独立して、単結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、当該アルキレン中の少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−または−CFO−で置き換えられてもよく;
31、L32、L33,L34およびL35はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
は水素、ハロゲン、−SFまたは炭素数1〜10のアルキルであり、X中の少なくとも1つの−CH−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、X中の少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、X中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、Xにおいて−O−と−CH=CH−とが隣接することはなく、−CO−と−CH=CH−とが隣接することはない。


式(7)中、Rは炭素数1〜20のアルキルであり、該アルキル中の少なくとも1つの−CH−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、該アルキル中の少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、該アルキル中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、該アルキルにおいて−O−と−CH=CH−および−CO−と−CH=CH−が隣接することはなく;
71、L72、L73、L74、L75、L76、L77およびL78はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
71、72およびZ73はそれぞれ独立して、単結合、−COO−または−CFO−であるが、少なくとも一つは−COO−または−CFO−であり;
n71およびn72はそれぞれ独立して0または1であり、かつn71≧n72であり、;
は水素、ハロゲン、−SFまたは炭素数1〜10のアルキルであり、当該アルキレン中の少なくとも1つの−CH−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、当該アルキレン中の少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、当該アルキレン中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、当該アルキレンにおいて−O−と−CH=CH−とが隣接することはなく、−CO−と−CH=CH−とが隣接することはない。
【0014】
[6]化合物3が、式(3−2)および式(3−3)で表される化合物の群から選ばれる1つ以上である、[5]に記載の液晶組成物。


上記式中、R3Aはそれぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニルまたは少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数2〜12のアルケニルであり;
31、L32、L33,L34およびL35はそれぞれ独立して水素またはフッ素であり;
3Aはフッ素、塩素、−CFまたは−OCFである。
【0015】
[7]化合物7が、式(7−1)〜(7−8)で表される化合物の群から選ばれる1つ以上である、[5]に記載の液晶組成物。


上記式中、R7Aは水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜11のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルであり;
72、L74、L75、L76、L77およびL78はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
式(7−1)〜(7−3)および(7−6)〜(7−8)において、Z71およびZ72はそれぞれ独立して、単結合、−COO−または−CFO−であるが、少なくとも一つは−COO−または−CFO−であり、式(7−4)および(7−5)においては、Z71はそれぞれ独立して、−COO−または−CFO−であり、
7Aは、フッ素、塩素、−CFまたは−OCFである。
【0016】
[8]化合物7が、式(7−2−2−E)、(7−2−5−E)、(7−2−2−F)、(7−2−5−F)および(7−2−6−F)で表される化合物の群から選ばれる1つ以上である、[7]に記載の液晶組成物。


(上記式中、R7Aは、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜11のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルであり;
7Aは、フッ素、塩素、−CFまたは−OCFである。)
【0017】
[9]アキラル成分Tの全重量に対して、化合物1を合計で3重量%〜20重量%含有し、化合物3を合計で20重量%〜67重量%、化合物7を合計で30重量%〜77重量%含有する、[5]に記載の液晶組成物。
【0018】
[10]アキラル成分Tが、さらに式(4)で表される化合物4、および(2)で表される化合物2の群から選ばれる少なくとも1つの化合物をさらに含む、、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の液晶組成物。


式(4)中、Rは、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルであり;
環Bはそれぞれ独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジクロロ−1,4−フェニレンまたはピリミジン−2,5−ジイルであり;
41はそれぞれ独立して、単結合、エチレン、−COO−、−OCO−、−CFO−または−OCF−であり;
48およびL49はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
はフッ素、塩素、−CFまたは−OCFであり;
n41は、1、2、3または4であり、ただしn41が3または4である場合、少なくとも1つのZ41は−CFO−または−OCF−であり、n41が3の場合は、環Bのすべてがフッ素で置換された1,4−フェニレンであることはない。


式(2)中、Rは水素または炭素数1〜20のアルキルであり、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、当該アルキル中、アルキル中の少なくとも1つの−CH−が−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられた基中、またはアルキル中の少なくとも1つの−CH−が−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられた基中の少なくとも1つの−CH−CH−が−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられた基中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、Rにおいて−O−と−CH=CH−および−CO−と−CH=CH−が隣接することはなく;
環A21、環A22、環A23、環A24および環A25はそれぞれ独立して、1,4−シクロへキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、1つまたは2つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、2つの水素がそれぞれフッ素と塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイルであり;
21、Z22、Z23、Z24、Z25およびZ26はそれぞれ独立して、単結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、当該アルキレン中の少なくとも1つの−CH−は、−O−、−COO−または−CFO−で置き換えられてもよく;
21、L22およびL23はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
はフッ素、塩素、−CF、−CHF、−CHF、、−OCF、−OCHF、−OCHF、−OCFCFHCFまたは−CH=CHCFであり;
n21、n22、n23、n24およびn25はそれぞれ独立して、0または1であり、2≦n21+n22+n23+n24+n25≦3である。
【0019】
[11]化合物4が、式(4−1)〜(4−9)で表される化合物の群から選ばれる1つ以上であり、化合物2が、式(2−1−1−2)、(2−1−2−1)、(2−1−3−1)、(2−1−3−2)、(2−1−4−2)および(2−1−4−3)で表される化合物の群から選ばれる1以上である[10]に記載の液晶組成物。


(上記式中、R4Aはそれぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニルまたは少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルであり;
4Aはフッ素、塩素、−CFまたは−OCFであり;
40〜L49はそれぞれ独立して水素またはフッ素である。


上記式中、R2Aは炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニル、または、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルであり;
(F)はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
2Aは、フッ素、塩素、−CFまたは−OCFである。
【0020】
[12]キラル剤が、式(K1)〜(K6)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である、[1]〜[11]のいずれか一項に記載の液晶組成物。


(上記式中、Rはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、−C≡N、−N=C=O、−N=C=Sまたは炭素数1〜20のアルキルであり、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、当該アルキル中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
Aはそれぞれ独立して、芳香族性の6〜8員環、非芳香族性の3〜8員環、または、炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の少なくとも1つの水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたはハロアルキルで置き換えられてもよく、環の−CH−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;
Bはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、炭素数1〜3のハロアルキル、芳香族性の6〜8員環、非芳香族性の3〜8員環、または、炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の少なくとも1つの水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたはハロアルキルで置き換えられてもよく、当該アルキル中の−CH−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;
Zはそれぞれ独立して、単結合、炭素数1〜8のアルキレンであり、当該アルキレン中の少なくとも1つの−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−または−N=CH−で置き換えられてもよく、当該アルキレン中の少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、当該アルキレン中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
Xはそれぞれ独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、または−CHCH−であり;
mKはそれぞれ独立して、1〜4の整数である。)
【0021】
[13]−20℃〜70℃のいずれかの温度においてキラルネマチック相を示し、この温度範囲の少なくとも一部において螺旋ピッチが700nm以下である、[1]〜[12]のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【0022】
[14][1]〜[13]のいずれか一項に記載の液晶組成物と、重合性モノマーとを含む混合物。
【0023】
[15][14]に記載の混合物を重合して得られる、光学的に等方性の液晶相で駆動される素子に用いられる高分子/液晶複合材料。
【0024】
[16]一方または両方の基板に電極が配置され、基板間に配置された液晶媒体、および電極を介して液晶媒体に電界を印加する電界印加手段を備えた光素子であって、液晶媒体が、[1]〜[13]のいずれか一項に記載の液晶組成物、または、[15]に記載の高分子/液晶複合材料である光素子。
【0025】
[17][1]〜[13]のいずれか一項に記載の液晶組成物または[15]に記載のの高分子/液晶複合材料の光素子への使用。
【0026】
[18]式(1−1)および式(1−2)で表される化合物。


上記式中、R1aは炭素数1〜10のアルキルであり、;
1aはフッ素、塩素、−C≡N、−CFまたは−OCFである。
【0027】
本明細書において、「液晶化合物」とはメソゲンを有する化合物を表し、液晶相を発現する化合物に限定されない。具体的には、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を発現する化合物および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。
「液晶媒体」とは、液晶組成物および高分子/液晶複合体の総称である。
「アキラル成分」とはアキラルなメソゲン化合物であって、光学活性化合物および重合性官能基を有する化合物を含まない成分である。したがって、「アキラル成分」には、キラル剤、モノマー、重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、硬化剤、安定剤等は含まれない。
「キラル剤」は、光学活性化合物であり、液晶組成物に所望のねじれた分子配列を与える為に添加されるために用いられる成分である。
「液晶表示素子」は、液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。
また、「光素子」とは、電気光学効果を利用して、光変調や光スイッチングなどの機能を奏する各種の素子を指し、たとえば、表示素子(液晶表示素子)、光通信システム、光情報処理や種々のセンサーシステムに用いられる光変調素子が挙げられる。光学的に等方性の液晶媒体への電圧印加による屈折率の変化を利用した光変調については、カー効果が知られている。カー効果とは電気複屈折値Δn(E)が電場Eの二乗に比例する現象であり、カー効果を示す材料ではΔn(E)=KλEが成立する(K:カー係数(カー定数)、λ:波長))。ここで、電気複屈折値とは、等方性媒体に電界を印加した時に誘起される屈折率異方性値である。
【0028】
「液晶化合物」、「液晶組成物」、「液晶表示素子」をそれぞれ「化合物」、「組成物」、「素子」と略すことがある。
また、たとえば液晶相の上限温度は液晶相−等方相の相転移温度であり、そして単に透明点または上限温度と略すことがある。液晶相の下限温度を単に下限温度と略すことがある。式(1)で表わされる化合物を化合物1と略すことがある。この略記は式(2)などで表される化合物にも適用することがある。式(2)〜(5)において、六角形で囲んだA、B、Cなどの記号はそれぞれ環A、環B、環Cなどに対応する。百分率で表した化合物の量は組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。環A、Y、Bなど複数の同じ記号を同一の式または異なった式に記載したが、これらはそれぞれが同一であってもよいし、または異なってもよい。
【0029】
本明細書中、「アルキル」の具体例は、−CH、−C、−C、−C、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021、−C1123、−C1225、−C1327、−C1429、および−C1531が挙げられる。
【0030】
本明細書中、「アルコキシ」の具体例は、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−OC13および−OC15、−OC17、−OC19、−OC1021、−OC1123、−OC1225、−OC1327、および−OC1429が挙げられる。
【0031】
本明細書中、「アルコキシアルキル」の具体例は、−CHOCH、−CHOC、−CHOC、−(CH−OCH、−(CH−OC、−(CH−OC、−(CH−OCH、−(CH−OCH、および−(CH−OCHが挙げられる。
【0032】
本明細書中、「アルケニル」の具体例は、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHC、−(CH−CH=CHCH、および−(CH−CH=CHが挙げられる。
【0033】
本明細書中、「アルケニルオキシ」の具体例は、−OCHCH=CH、−OCHCH=CHCH、および−OCHCH=CHCが挙げられる。
【0034】
本明細書中、「アルキニル」の具体例は、−C≡CH、−C≡CCH、−CHC≡CH、−C≡CC、−CHC≡CCH、−(CH−C≡CH、−C≡CC、−CHC≡CC、−(CH−C≡CCH、および−C≡C(CHが挙げられる。
【0035】
本明細書中、「ハロゲン」の具体例は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の好ましい化合物は液晶性を示し、比較的高い透明点、広いネマチック相温度範囲、大きな誘電率異方性を有する。
本発明の好ましい液晶組成物および高分子/液晶複合材料等は、熱、光などに対する安定性、光学的に等方性の液晶相の高い上限温度と低い下限温度を示し、大きな誘電率異方性を有する。また、本発明の好ましい態様の高分子/液晶複合材料は、光学的に等方性の液晶相の高い上限温度、低い下限温度を示し、光学的に等方性の液晶相で駆動させる光素子において低い駆動電圧を有する。
また、本発明の好ましい態様の光学的に等方性の液晶相で駆動される光素子は、幅広い温度範囲で使用可能であり、低電圧駆動が可能であり、高速な電気光学応答が可能であり、大きなコントラスト比を有する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】実施例で用いた櫛型電極基板を示す。
図2】実施例で用いた光学系を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の光学的に等方性の液晶相を有する液晶組成物は、アキラル成分Tとキラル剤を含有し、アキラル成分Tは第一成分として、前記式(1)で表される化合物を含む。本発明の液晶組成物の第1の態様は、第一成分と本明細書中で特に成分名を示していないその他の成分を含有する組成物である。まず、式(1)で表される化合物について説明する。また、本発明の液晶組成物は上記成分の他に、溶媒、モノマー、重合開始剤、硬化剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤等)等をさらに含有してもよい。
【0039】
1−1 化合物1
式(1)において、Rは水素または炭素数1〜20のアルキルであり、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、当該アルキル中および当該アルキル中の−CH−が−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられた基中の少なくとも1つの水素はハロゲンまたは炭素数1〜3のアルキルで置き換えられてもよい。
たとえば、CH(CH−において少なくとも1つの−CH−を−O−、−S−または−CH=CH−で置き換えた基の例として、CH(CHO−、CH−O−(CH−、CH−O−CH−O−、CH(CHS−、CH−S−(CH−、CH−S−CH−S−、CH=CH−(CH−、CH−CH=CH−(CH−、CH−CH=CH−CHO−、CHCHC≡C−等が挙げられる。たとえば、CH(CH−または、CH(CH−において少なくとも1つの−CH−を−O−、−C≡C−または−CH=CH−で置き換えた基中の少なくとも1つの水素がハロゲンに置き換えられた基の例として、ClCH(CH−、CF=CH−(CH−、CHF(CHO−、CHFCHC≡C−等が挙げられる。
【0040】
における−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH、−CH=CHC、−CH=CHC、−CH=CHC、−CCH=CHCH、および−CCH=CHCのような奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。−CHCH=CHCH、−CHCH=CHC、および−CHCH=CHCのような偶数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109およびMol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327に詳細な説明がある。また、アルケニル基の位置はベンゼン環と共役を作らない位置が好ましい。
【0041】
におけるアルキルとしては、直鎖でも分岐鎖でもよく、アルキルの具体的な例は、−CH、−C、−C、−C、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021、−C1123、−C1225、−C1327、−C1429、および−C1531である。
【0042】
におけるアルコキシとしては、直鎖でも分岐鎖でもよく、アルコキシの具体的な例は、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−OC13および−OC15、−OC17、−OC19、−OC1021、−OC1123、−OC1225、−OC1327、および−OC1429である。
【0043】
におけるアルコキシアルキルとしては、直鎖でも分枝でもよく、アルコキシアルキルの具体的な例は、−CHOCH、−CHOC、−CHOC、−(CH−OCH、−(CH−OC、−(CH−OC、−(CH−OCH、−(CH−OCH、および−(CH−OCHである。
【0044】
におけるアルケニルとしては、直鎖でも分枝でもよく、アルケニルの具体的な例は、−CHCH=CH、−CHCH=CHCH、−(CH−CH=CH、−CHCH=CHC、−(CH−CH=CHCH、および−(CH−CH=CHである。
【0045】
におけるアルケニルオキシとしては、直鎖でも分枝でもよく、アルケニルオキシの具体的な例は、−OCHCH=CH、−OCHCH=CHCH、および−OCHCH=CHCである。
【0046】
におけるアルキニルとしては、直鎖でも分岐鎖でもよく、アルキニルの具体的例は、−C≡CH、−C≡CCH、−CHC≡CH、−C≡CC、−CHC≡CCH、−(CH−C≡CH、−C≡CC、−CHC≡CC、−(CH−C≡CCH、および−C≡C(CHである。
【0047】
は式(CHN−1)〜(CHN−6)で表される構造が好ましい。より好ましくは(CHN−1)または(CHN−2)である。


(上記式中、R1aは水素または炭素数1〜20のアルキルである。)
【0048】
式(1)においてL11、L12、L13、L14、L15、L16およびL17はそれぞれ独立して水素またはフッ素であるが、L11が水素である化合物は、低温での相溶性が良好であり、L11がフッ素であるものは誘電率異方性が大きい。好ましいL11は水素である。L12〜L16いずれも水素である化合物は、透明点が高く、低温での相溶性が良好である。L12〜L16いずれか一方のみフッ素である化合物は、誘電率異方性が大きい。L12、L13、存在する場合L14、L16およびL17がフッ素であり、L11および、存在する場合L15が水素である化合物は、誘電率の大きさと相溶性のバランスが良好である。
【0049】
式(1)において、Xはハロゲン、−CF、−OCF、−C≡N、または−N=C=S、である。
【0050】
の好ましい例は、フッ素、−C≡N、−CFである。
より好ましいXの例は、フッ素、および−CFである。
【0051】
化合物1として、好ましくは式(1−1)〜(1−2)で表される化合物である。


(上記式中、R1aは炭素数1〜10のアルキルであり、;
1aはフッ素、塩素、−C≡N、−CFまたは−OCFである。)
【0052】
1−2 化合物1の性質
化合物1は、素子が通常使用される条件下で物理的および化学的に極めて安定であり、n11=1のものは、比較的大きな誘電率異方性と大きな屈折率異方性を有し、透明点が高く、他の化合物との相溶性が比較的よい。この化合物を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で安定である。したがって、液晶組成物においてn11=1の化合物1を用いると、液晶相の温度範囲を広げることが可能となり、幅広い温度範囲で表示素子として使用することができる。
化合物1においてn11=0のものは、大きな誘電率異方性と比較的大きな屈折率異方性を有するため、この化合物1は光学的に等方性の液晶相で駆動される液晶組成物の駆動電圧を下げるための成分として有用である。
化合物1は、少量使用するだけで透明点を上げることができる、または駆動電圧を低下させる、低温側の温度範囲を広げるという、優れた特長を有する。
【0053】
1−3 化合物1の合成
化合物1は公知の有機合成化学における手法を適切に組み合わせることにより合成できる。化合物1を合成する方法は複数あり、市販の試薬から適宜、合成することが可能である。
また、化合物1を合成する際、出発物に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載されている。
【0054】
以下に、化合物1を合成するスキームの一例を示すが、化合物1の合成が当該スキームに限定されることはない。
【0055】

【0056】
1−3−1 化合物(102)の合成
ハロゲン化合物(101)および(102)は市販されている、もしくは一般的な有機化学合成法により準備できる。ハロゲン化合物(102)にマグネシウム等の金属を作用させてGrignard試薬を調製し、さらにパラジウム触媒下でハロゲン化合物(101)とクロスカップリング反応を行うことにより化合物(103)に誘導できる。
1−3−2 化合物(104)の合成
化合物(103)にブチルリチウムなどを用いてリチウム試薬とした後に、ヨウ素を作用させてヨウ素化合物を得る。次いで、得られたヨウ素化合物を炭酸カリウムなどの塩基とパラジウム触媒の存在下で3−フルオロ−5−クロロ−フェニルボロン酸と鈴木カップリング反応を行うことにより化合物(104)を得ることができる。
【0057】
1−3−3 化合物(106)の合成
化合物(104)にブチルリチウムなどを用いてリチウム試薬とした後に、ヨウ素を作用させてヨウ素化合物を得る。次いで、得られたヨウ素化合物を炭酸カリウムなどの塩基とパラジウム触媒の存在下で、対応するフェニルボロン酸(105)と鈴木カップリング反応を行うことにより化合物(106)を得ることができる。
【0058】
1−3−4 化合物(1)の合成
化合物(106)にブチルリチウムなどを用いてリチウム試薬とした後に、炭酸ガスを作用させてカルボン酸誘導体(107)を得る。得られたカルボン酸誘導体(107)にジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびジメチルアミノピリジン(DMAP)を用いてエステル化反応を行うことにより、化合物(1)を得ることができる。
【0059】
2−1 液晶組成物
本発明の液晶組成物は、式(1)で表される化合物1を含有し、光学的に等方性の液晶相を発現する組成物である。また、光学的に等方性の液晶組成物は化合物1を含むアキラル成分Tの他に、キラル剤を含み、さらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤等を含んでもよい。
【0060】
アキラル成分Tは、化合物1として1つの化合物からなる場合も、化合物1として式(1)で表される2つ以上の化合物を含有する場合も含む。さらに、アキラル成分は、必要に応じて化合物3〜7からなる群から選ばれる1つ以上の化合物を含む。アキラル成分Tは、化合物1の他に、化合物2,3,5および7を含むことが好ましく、化合物3、7を含むことが特に好ましく、さらに求められる性質に応じて化合物4と6を含むことができる。化合物1および3〜7は液晶化合物である。
化合物1は比較的高い透明点、大きな誘電率異方性、比較的良好な低温での相溶性を併せ持つため、化合物1を用いたアキラル成分Tも、広い液晶相温度範囲、または大きな誘電率異方性を発現する。このため、アキラル成分Tを用いた光学的に等方性の液晶組成物も、光素子に用いる組成物として有用である。
アキラル成分Tの全重量に対して、化合物1を合計で1重量%〜30重量%含有することが好ましく、3重量%〜20重量%含有することがさらに好ましく、5重量%〜15重量%含有することが特に好ましい。
大きな誘電率異方性を発現させるためには、化合物3と7で表される群から選択される化合物をさらに添加することが好ましい。この組成物は非常に大きな誘電率異方性を発現するため、光素子の低電圧化に極めて有効な組成物である。
【0061】
2−2−1 化合物2
本発明のアキラル成分は、化合物1に加えて、さらに式(2)で表される化合物2を1つ以上含んでもよい。すなわち、本発明は、アキラル成分Tにおいて、化合物2として1つの化合物からなる場合も、化合物2として式(2)で表される複数の化合物を含有する場合も含む。


式中、Rは水素または炭素数1〜20のアルキルであり、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、当該アルキル中および当該アルキル中の−CH−が−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられた基中の少なくとも1つの水素はハロゲンまたは炭素数1〜3のアルキルで置き換えられてもよく;環A21、環A22、環A23、環A24、および環A25は独立して、1,4−シクロへキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、1つまたは2つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、2つの水素がそれぞれフッ素と塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイルであり;Z21、Z22、Z23、Z24、Z25、およびZ26は独立して、単結合または−CFO−であり、;L21、L22およびL23は独立して、水素またはフッ素であり;Xはフッ素、塩素、−CF、または−OCFであり;n21、n22、n23、n24、およびn25は独立して、0または1であり、2≦n21+n22+n23+n24+n25≦3である。
【0062】
式(2)中のRは、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルが好ましい。
【0063】
化合物の安定性や大きな誘電率異方性の点から、式(2)中の環A21、環A22、環A23、環A24および環A25は、1,4−フェニレン、1つまたは2つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンが好ましい。
【0064】
式(2)中のZ21、Z22、Z23、Z24、Z25およびZ26は、すべて単結合であるか少なくとも一つが−CFO−であることが好ましく、他の液晶化合物との相溶性が重視される場合は、少なくとも一つが−CFO−であることが好ましい。
式(2)中、n24=1であり、Z25が−CFO−であることが特に好ましい。
【0065】
式(2)中のXはフッ素、塩素、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF、−OCHF、−OCFCFHCFまたは−CH=CHCFであり、好ましくはフッ素、塩素、−CFおよび−OCFである。
式(2)中、n21+n22+n23+n24+n25=2の化合物は透明点が高く、n21+n22+n23+n24+n25=1の化合物は融点が低い。
式(2)中のR2Aがアルケニルであるとき、好ましい立体配置は、式(1)のRにおける−CH=CH−の好ましい立体配置に準ずる。
式(2)中の結合基Z21〜Z26は単結合、または−CFO−であるため、化学的に比較的安定であって、比較的劣化を起こしにくい。さらに結合基が単結合であるときは、粘度が小さい。また、結合基が−CFO−であるときは、誘電率異方性が大きい。
式(2)中の右末端基Xがフッ素、塩素、−OCFであるときは、他の液晶化合物との低温での相溶性に優れ、−CFであるときは、駆動電圧低下効果が大きい。
【0066】
化合物2において、式(2−1)の化合物を用いることが好ましい。


(式中、R2Aは、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニル、または少なくとも1以上の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルであり;
21、Z22、Z23、Z24、Z25、およびZ26はそれぞれ独立して、単結合または−CFO−であり;
式(2−1)中のn22、n23、n24およびn25は独立して、0または1であり、n22+n23+n24+n25は1〜2の整数である。
2Aはフッ素、塩素、−CFおよび−OCFであり;
(F)はそれぞれ独立して水素またはフッ素を表す。)
【0067】
式(2)および式(2−1)中のR2AおよびZ21〜Z26中のアルケニルにおいて、−CH=CH−の好ましい立体配置は、式(1)のRにおける−CH=CH−の好ましい立体配置に準ずる。
【0068】
21、Z22、Z23、Z24、Z25およびZ26はそれぞれ独立して、単結合または−CFO−であり、他の液晶化合物との相溶性が重視される場合は、Z21、Z22、Z23、Z24、Z25およびZ26は、少なくとも1つが−CFO−であることが好ましい。
式(2−1)中、n24=1であり、Z25が−CFO−であることが特に好ましい。
【0069】
化合物2において、式(2−1−1)〜(2−1−5)で表される化合物を用いることがさらに好ましい。


(式中、R2A,Z21〜Z26、X2Aおよび(F)の定義は式(2−1)と同じである)
【0070】
化合物2として、式(2−1−1)〜(2−1−5)の化合物を用いる場合において、下記式(2−1−1−1)〜(2−1−1−3)、(2−1−2−1)〜(2−1−2−3)、(2−1−3−1)〜(2−1−3−3)、(2−1−4−1)〜(2−1−4−3)、または(2−1−5−1)〜(2−1−5−3)で表される化合物を用いることが好ましく、式(2−1−1−1)、(2−1−1−2)、式(2−1−2−1)、(2−1−2−2)、式(2−1−3−1)、(2−1−3−2)、(2−1−4−2)、(2−1−4−3)または(2−1−5−3)で表される化合物を用いることがさらに好ましい。




(上記式中、R2A、(F)、およびX2Aの定義は式(2−1)と同じである)
【0071】
これらの化合物の中でも、化合物2が、式(2−1−1−2)、(2−1−2−1)、(2−1−3−1)、(2−1−3−2)、(2−1−4−2)または(2−1−4−3)で表される化合物が好ましい。
【0072】
化合物2は、良好な相溶性と大きな誘電率異方性と大きな屈折率異方性を有する。
アキラル成分Tの全重量に対して、化合物2を合計で0.5重量%〜70重量%含有することが好ましく、5重量%〜60重量%含有することがさらに好ましく、10重量%〜50重量%含有することが特に好ましい。
【0073】
2−2−2 化合物2の性質
化合物2はクロロベンゼン環を有する。化合物2は、素子が通常使用される条件下で物理的および化学的に極めて安定であり、他の液晶化合物との相溶性がよい。さらにスメクチック相を発現しにくい。この化合物を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で安定である。
【0074】
式(2)中の環構造、末端基、結合基などの種類を適当に選択することにより目的の物性を有する化合物を得ることができる。
【0075】
2−3−1 化合物3
本発明のアキラル成分は、化合物1に加えて、さらに式(3)で表される化合物3を少なくとも1つ含んでもよい。すなわち、本発明は、アキラル成分Tにおいて、化合物3として1つの化合物からなる場合も、化合物3として式(3)で表される複数の化合物を含有する場合も含む。また、たとえば、本発明の液晶組成物は化合物1と化合物3の他に、化合物4〜7からなる群から選ばれる1つ以上を含んでもよい。

【0076】
式(3)中、Rは前述のとおりであるが、Rにおけるアルケニルの−CH=CH−の好ましい立体配置は、式(1)のRにおける−CH=CH−の好ましい立体配置に準ずる。
【0077】
式(3)中、Z31、Z32、およびZ33は独立して、単結合、−COO−または−CFO−であるが、少なくとも一つは−CFO−である。Z31、Z32、およびZ33の好ましい例は、単結合または−CFO−である。
【0078】
式(3)中、L31、L32、L33、L34およびL35は独立して、水素またはフッ素である。Z32が−COO−または−CFO−である場合は、L32、L34およびL35がフッ素であることが好ましく、Z33が−COO−または−CFO−である場合は、L33、L34およびL35がフッ素であることが好ましい。
【0079】
式(3)のXにおける1以上の水素がハロゲンで置き換えられたアルキルの具体的な例として、−CHF、−CHF、−CF、−(CH−F、−CFCHF、−CFCHF、−CHCF、−CFCF、−(CH−F、−(CF−F、−CFCHFCF、−CHFCFCF、−(CH−F、−(CF−F、−(CH−F、および−(CF−Fが挙げられる。
1以上の水素がハロゲンで置き換えられたアルコキシの具体的な例として、−OCHF、−OCHF、−OCF、−O−(CH−F、−OCFCHF、−OCFCHF、−OCHCF、−O−(CH−F、−O−(CF−F、−OCFCHFCF、−OCHFCFCF、−O(CH−F、−O−(CF−F、−O−(CH−F、および−O−(CF−Fが挙げられる。
1以上の水素がハロゲンで置き換えられたアルケニルの具体的な例として、−CH=CHF、−CH=CF、−CF=CHF、−CH=CHCHF、−CH=CHCF、−(CH−CH=CF、−CHCH=CHCF、−CH=CHCF、および−CH=CHCFCFが挙げられる。
【0080】
式(3)中、Xは、フッ素、塩素、−CF、−CHF、−OCFまたは−OCHFが好ましく、フッ素、塩素、−CFまたは−OCFがさらに好ましい。
【0081】
化合物3において、式(3−1)〜(3−3)で表される化合物を用いることが好ましく、式(3−2)および(3−3)で表される化合物を用いることがより好ましい。式(3−2)で表される化合物においては、式(3−2A)〜(3−2H)で表される化合物を用いることがさらに好ましく、式(3−2A)〜(3−2D)で表される化合物を用いることが特に好ましく、式(3−2A)および(3−2C)で表される化合物を用いることが最も好ましい。式(3−3)で表される化合物においては、式(3−3A)〜(3−3D)で表される化合物を用いることがさらに好ましく、式(3−3A)および(3−3C)で表される化合物を用いることが特に好ましく、式(3−3A)で表される化合物を用いることが最も好ましい。


(式中、R3Aはそれぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニルまたは少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数2〜12のアルケニルであり;
31〜L35はそれぞれ独立して水素またはフッ素であり;
3Aはフッ素、塩素、−CF、または−OCFである。)



(上記式中、R3Aは独立して、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニルまたは少なくとも1以上の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルであり;
3Aはフッ素、塩素、−CFまたは−OCFである。)
【0082】
化合物3は透明点が比較的高く、大きな誘電率異方性と大きな屈折率異方性を有する。
アキラル成分Tの全重量に対して、化合物3を合計で0.5重量%〜70重量%含有することが好ましく、5重量%〜60重量%含有することがさらに好ましく、10重量%〜50重量%含有することが特に好ましくである。
【0083】
2−3−2 化合物3の性質
化合物3は4個のベンゼン環を有し、少なくとも1個の−CFO−連結基を有する。化合物3は、素子が通常使用される条件下で物理的および化学的に極めて安定であり、そして他の液晶化合物との相溶性がよい。この化合物を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で安定である。
【0084】
式(3)における左末端基R、ベンゼン環上の基(L31〜L35およびX)、あるいは結合基Z31〜Z33を適切に選択することによって、透明点、屈折率異方性、誘電率異方性などの物性を任意に調整することが可能である。左末端基R、ベンゼン環上の基(L31〜L35およびX)、あるいは結合基Z31〜Z33の種類が、化合物(3)の物性に与える効果を以下に説明する。
【0085】
式(3)におけるRがアルケニルであるとき、アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、式(1)のRにおける−CH=CH−の好ましい立体配置に準ずる。
【0086】
式(3)における結合基Z31、Z32およびZ33が単結合、または−CFO−であるときは粘度が小さい。結合基がZ31、Z32およびZ33が−CFO−であるときは誘電率異方性が大きい。式(3)におけるZ31、Z32およびZ33が単結合、−CFO−であるときは化学的に比較的安定であって、比較的劣化をおこしにくい。
【0087】
式(3)における右末端基Xがフッ素、塩素、−SF、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHFまたは−OCHFであるときは誘電率異方性が大きい。Xがフッ素、−OCF、または−CFであるときは、化学的に安定である。
【0088】
式(3)において、L31〜L35におけるフッ素の数が多いときは誘電率異方性が大きい。L31が水素であるときは他の液晶との相溶性に優れる。L34およびL35がともにフッ素である場合は、誘電率異方性が特に大きい。
【0089】
以上のように、末端基、結合基などの種類を適当に選択することにより目的の物性を有する化合物を得ることができる。
【0090】
2−4−1 化合物4
本発明のアキラル成分は、化合物1に加えて、さらに式(4)で表される化合物4を少なくとも1つ含んでもよい。すなわち、本発明は、アキラル成分Tにおいて、化合物4として1つの化合物からなる場合も、化合物4として式(4)で表される複数の化合物を含有する場合も含む。また、たとえば、本発明の液晶組成物は化合物1と化合物4の他に、化合物2、3および5〜7からなる群から選ばれる1つ以上を含んでもよい。

【0091】
式(4)中のRは、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルである。式(4)中の好ましいRは、紫外線に対する安定性を上げるため、または熱に対する安定性のために、炭素数1〜12のアルキルである。式(4)中のRは、粘度を下げる点から、炭素数2〜12のアルケニルが好ましく、紫外線に対する安定性を上げる点または熱に対する安定性を上げる点から、炭素数1〜12のアルキルが好ましい。
【0092】
式(4)中のRにおいて好ましいアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルであり、さらに好ましいアルキルは、粘度を下げるために、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘプチルである。
【0093】
式(4)中のRにおいて好ましいアルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、またはヘプチルオキシであり、さらに好ましいアルコキシは、粘度を下げるために、メトキシまたはエトキシである。
【0094】
式(4)中のRにおいて好ましいアルケニルは、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、または5−ヘキセニルであり、さらに好ましいアルケニルは、粘度を下げるために、ビニル、1−プロペニル、3−ブテニル、または3−ペンテニルである。
式(4)中のRにおいてアルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、式(1)のRにおける−CH=CH−の好ましい立体配置に準ずる。粘度を下げるために、1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ペンテニル、3−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランスが好ましい。2−ブテニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシスが好ましい。これらのアルケニルにおいては、分岐鎖よりも直鎖のアルケニルが好ましい。
【0095】
式(4)中のRにおいて、1以上の水素がフッ素で置き換えられたアルケニルの好ましい例としては、2,2−ジフルオロビニル、3,3−ジフルオロ−2−プロペニル、4,4−ジフルオロ−3−ブテニル、5,5−ジフルオロ−4−ペンテニル、および6,6−ジフルオロ−5−ヘキセニルであるが挙げられ、液晶組成物の粘度を下げるためには、2,2−ジフルオロビニル、および4,4−ジフルオロ−3−ブテニルであるが好ましい。
【0096】
式(4)中のRにおけるアルキルは環状アルキルを含まない。アルコキシは環状アルコキシを含まない。アルケニルは環状アルケニルを含まない。少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルケニルは、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた環状アルケニルを含まない。
式(4)中のn41は、1、2、3または4であり、ただしn41が3または4である場合、少なくとも1つのZ41は−CFO−または−OCF−であり、n41が3の場合は、環Bのすべてがフッ素で置換された1,4−フェニレンであることはない。
【0097】
式(4)中の環Bは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジクロロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルであり、n41が2以上である時、そのうちの少なくとも2つの環Bは同じであっても、異なってもよい。式(4)中の環Bは光学異方性を上げるために1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレンまたは3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり、粘度を下げるために1,4−シクロへキシレンであることが好ましい。
【0098】
式(4)中のZ41は独立して、単結合、エチレン、−COO−、−OCO−、−CFO−または−OCF−であり、ただしn41が3または4である場合、一つのZ41は−CFO−である。n41が2以上である時、それぞれのZ41は同じであっても、異なってもよい。式(4)中のZ41は、粘度を下げるために単結合が好ましい。式(4)中のZ41は、誘電率異方性を上げるためおよび相溶性を良好にするために−CFO−が好ましい。
【0099】
式(4)中のL48およびL49は独立して、水素、またはフッ素であり、誘電率異方性を上げるため、L48およびL49ともにフッ素が好ましく、透明点を上げるため、L48およびL49ともに水素が好ましい。
【0100】
式(4)中のXは、フッ素、塩素、−CFまたは−OCFである。誘電率異方性を上げるために、−CFであることが好ましく、相溶性を良好にするためにフッ素、−OCFが好ましく、屈折率異方性を上げるために塩素が好ましい。
【0101】
化合物4において、式(4−1)〜(4−10)で表される化合物を用いることが好ましい。

【0102】
上記式(4−1)〜(4−10)において、R4Aは独立して、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルであり、X4Aはフッ素、塩素、−CF、−OCFであり、L40〜L49は独立して水素またはフッ素である。
(4−1)〜(4−4)は透明点が高く、5環としては相溶性に優れる。(4−5)〜(4−7)は透明点が高く、Δnが大きく、(4−8)〜(4-10)は相溶性に優れる。なお、L40〜L49において、フッ素の数が多いほど、誘電率異方性が大きい。
化合物4は、大きな誘電率異方性あるいは低温での良好な相溶性を有する組成物の調製に適している。アキラル成分Tの全重量に対して、化合物4を合計で5重量%〜40重量%含有することが好ましく、5重量%〜30重量%含有することがさらに好ましく、5重量%〜20重量%含有することが特に好ましい。
【0103】
2−5−1 化合物5
本発明のアキラル成分は、化合物1に加えて、さらに式(5)で表される化合物5を少なくとも1つ含んでもよい。すなわち、本発明は、アキラル成分Tにおいて、化合物5として1つの化合物からなる場合も、化合物5として式(5)で表される複数の化合物を含有する場合も含む。また、たとえば、本発明の液晶組成物は化合物1と化合物5の他に、化合物2〜4、6および7からなる群から選ばれる1つ以上を含んでもよい。


(式(5)中、Rは水素または炭素数1〜20のアルキルであり、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、当該アルキル中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、Rにおいて−O−と−CH=CH−および−CO−と−CH=CH−が隣接することはなく;
(F)はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
は水素、ハロゲン、−SFまたは炭素数1〜10のアルキルであり、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、当該アルキル中および当該アルキル中の−CH−が−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられた基中の少なくとも1つの−CH−CH−が−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられもよく、当該アルキル中、当該アルキル中の−CH−が−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられた基中および当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−CH−が−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられた基中の少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただし、Xにおいて−O−と−CH=CH−とが隣接することはなく、−CO−と−CH=CH−とが隣接することはない。)
【0104】
式(5)中のRにおいて、アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は式(1)のRにおける−CH=CH−の好ましい立体配置に準ずる。
【0105】
式(5)中のRとXにおいて、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルキルの具体的な例は、−CHF、−CF、−CFCHF、−CFCHF、−CHCF、−CFCF、−(CH−F、−(CF−F、−CFCHFCF、および−CHFCFCFである。
【0106】
式(5)中のRとXにおいて、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルコキシの具体的な例は、−OCHF、−OCF、−OCFCHF、−OCFCHF、−OCHCF、−O−(CF−F、−OCFCHFCF、および−OCHFCFCFである。
【0107】
式(5)中のRとXにおいて、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルケニルの具体的な例は、−CH=CF、−CF=CHF、−CH=CHCHF、−CH=CHCF、−(CH−CH=CF、−CHCH=CHCF、および−CH=CHCFCFである。
【0108】
式(5)中のXの具体的な例として、フッ素、塩素、−CF、−CHF、−OCFおよび−OCHFが挙げられ、フッ素、塩素、−CFおよび−OCFが好ましい。式(5)中のXが塩素、フッ素である場合、化合物5の融点が比較的低く、他の液晶化合物との相溶性が特に優れている。式(5)中のXが−CF、−CHF、−OCFおよび−OCHFである場合は、化合物5は比較的大きな誘電率異方性を示す。
式(5)中のXがフッ素、塩素、−SF、−CF、−OCF、または−CH=CH−CFであるとき、化合物5の誘電率異方性が比較的大きく、Xがフッ素、−CF、または−OCFであるときは、比較的、化学的に安定する。
【0109】
化合物5において、式(5−1)〜(5−4)で表される化合物を用いることが好ましく、(5−1)〜(5−3)で表される化合物がさらに好ましい。これらの化合物の中でも、式(5−1−1)、(5−1−2)、(5−2−1)〜(5−2−4)、(5−3−1)または(5−3−2)で表される化合物が特に好ましく、式(5−2−1)、(5−2−2)または(5−3−2)で表される化合物が最も好ましい。



(式中、R5Aは、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニルまたは少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルであり;
(F)はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
5Aは、フッ素、塩素、−CFまたは−OCFである。)
【0110】
化合物5は、大きな誘電率異方性を有する組成物の調製に適している。
透明点を上げるために、アキラル成分Tの全重量に対して、化合物5を合計で約1.0重量%以上含有することが好ましい。また、液晶相の下限温度を下げるために、アキラル成分Tの全重量に対して、化合物5を合計で1重量%〜50重量%含有することが好ましい。さらに、アキラル成分Tの全重量に対して、化合物5を1重量%〜25重量%含有することが好ましく、1重量%〜15重量%含有することがさらに好ましい。
【0111】
2−5−2 化合物5の性質
化合物5はジオキサン環と3個のベンゼン環を有する。化合物5は、素子が通常使用される条件下で物理的および化学的に極めて安定であり、そして透明点が高いにも関らず、他の液晶化合物との相溶性が比較的よい。化合物5を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で安定である。したがって、化合物5を含む組成物では、光学的に等方性の液晶相の温度範囲を広げることが可能となり、幅広い温度範囲で表示素子として使用することができる。また、化合物5は光学的に等方性の液晶相で駆動される組成物の駆動電圧を下げるための成分として有用である。キラル剤および化合物5を含む好ましい態様の組成物でブルー相を発現させると、N*相や等方相との共存がない均一なブルー相となる。このように、化合物5を含む好ましい態様の組成物は均一なブルー相を発現しやすい。また、化合物5を用いると液晶組成物の透明点が高くなる傾向がある。
【0112】
2−5−3 化合物5の合成
次に、化合物(5)の合成について説明する。化合物(5)は有機合成化学における公知の手法を適切に組み合わせることにより合成できる。出発物に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載されている。
【0113】
たとえば、特許2959526号公報(JP 2959526B)の方法を準用しても、本願式(5)の化合物を合成することが可能である。
【0114】
2−6−1 化合物6
本発明のアキラル成分は、化合物1に加えて、さらに式(6)で表される化合物6を少なくとも1つ含んでもよい。すなわち、本発明は、アキラル成分Tにおいて、化合物6として1つの化合物からなる場合も、化合物6として式(6)で表される複数の化合物を含有する場合も含む。また、たとえば、本発明の液晶組成物は化合物1と化合物6の他に、化合物2〜5および7からなる群から選ばれる1つ以上を含んでもよい。化合物6は、誘電率異方性値の絶対値が小さく、中性に近い化合物である。

【0115】
式(6)中rは、1、2または3である。
式(6)においてrが1の化合物は主として粘度調整または屈折率異方性値の調整の効果があり、また式(6)においてrが2または3である化合物は透明点を高くするなどの光学的に等方性の液晶相の温度範囲を広げる効果、または屈折率異方性値を調整する効果がある。
【0116】
式(6)で表される化合物の含有量を増加させると液晶組成物の駆動電圧が高くなり、粘度が低くなるので、液晶組成物の粘度の要求値を満たす限り、駆動電圧の観点から含有量は少ないほうが望ましい。アキラル成分Tの化合物6の含有量は、アキラル成分Tの全重量に対して、0重量%〜40重量%含有することが好ましく、1重量%〜40重量%含有することがさらに好ましく、1重量%〜20重量%含有することが特に好ましい。
【0117】
式(6)中のR6AおよびR6Bは、それぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルである。化合物6の、粘度を下げるためには、式(6)中のR6AおよびR6Bは炭素数2〜12のアルケニルが好ましい。紫外線に対する安定性を上げるため、または熱に対する安定性を上げるためには、式(6)中のR6AおよびR6Bは、炭素数1〜12のアルキルであることが好ましい。
【0118】
式(6)中のR6AおよびR6Bにおいて、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルであることが好ましく、粘度を下げるために、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘプチルであることが好ましい。
【0119】
式(6)中のR6AおよびR6Bにおいて、アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、またはヘプチルオキシが好ましく、、粘度を下げるためには、メトキシまたはエトキシが好ましい。
【0120】
式(6)中のR6AおよびR6Bにおいて、アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、式(1)のRにおける−CH=CH−の好ましい立体配置に準ずる。
【0121】
式(6)中のR6AおよびR6Bにおいて、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルケニルは、2,2−ジフルオロビニル、3,3−ジフルオロ−2−プロペニル、4,4−ジフルオロ−3−ブテニル、5,5−ジフルオロ−4−ペンテニル、および6,6−ジフルオロ−5−ヘキセニルが好ましい。化合物6を含む組成物の粘度を下げるためにはR6AおよびR6Bは2,2−ジフルオロビニル、および4,4−ジフルオロ−3−ブテニルであることが好ましい。
【0122】
式(6)中の環Cおよび環Dは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり、rが2以上である時、そのうちの少なくとも2つの環Cは同じであっても、異なってもよい。化合物6の光学異方性を上げるためには、環Cおよび環Dは1,4−フェニレンまたは3−フルオロ−1,4−フェニレンであることが好ましい。化合物6の粘度を下げるためには、環Cおよび環Dは1,4−シクロへキシレンである。
【0123】
式(6)中のZ61はそれぞれ独立して、単結合、エチレン、または−COO−、−OCO−であり、rが2以上である時、そのうちの少なくとも2つのZ61は同じであっても、異なってもよい。好ましいZ61は、粘度を下げるために単結合である。
【0124】
化合物6において、式(6−1)〜(6−13)で表される化合物を用いることが好ましい。


これらの化合物の中でも、(6−1)〜(6−3)で表される化合物は比較的粘度が低く、(6−4)〜(6−8)で表される化合物は透明点が比較的高く、(6−9)〜(6−13)で表される化合物は比較的透明点が高い。
【0125】
化合物6は、必要に応じて粘度を下げるため、あるいは透明点を上げるために用いられる。ただし、駆動電圧を上昇させるので、駆動電圧を重視する場合は、使用しないか、少ない使用量で使用されることが好ましい。化合物6を合計で0重量%〜30重量%含有することが好ましく、0重量%〜20重量%含有することがさらに好ましく、0重量%〜10重量%含有することが特に好ましい。
【0126】
2−7−1 化合物7
本発明のアキラル成分は、化合物1に加えて、さらに式(7)で表される化合物7を少なくとも1つ含んでもよい。すなわち、本発明は、アキラル成分Tにおいて、化合物7として1つの化合物からなる場合も、化合物7として式(7)で表される複数の化合物を含有する場合も含む。また、たとえば、本発明の液晶組成物は化合物1と化合物7の他に、化合物2〜6からなる群から選ばれる1つ以上を含んでもよい。

【0127】
式(7)中のRとXにおいて、アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、式(1)のRにおける−CH=CH−の好ましい立体配置に準ずる。
【0128】
式(7)中のXにおいて、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルキルの具体的な例は、−CHF、−CF、−CFCHF、−CFCHF、−CHCF、−CFCF、−(CH−F、−(CF−F、−CFCHFCF、および−CHFCFCFである。
【0129】
式(7)中のXにおいて、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルコキシの具体的な例は、−OCHF、−OCF、−OCFCHF、−OCFCHF、−OCHCF、−O−(CF−F、−OCFCHFCF、および−OCHFCFCFである。
【0130】
式(7)中のXにおいて、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルケニルの具体的な例は、−CH=CF、−CF=CHF、−CH=CHCHF、−CH=CHCF、−(CH−CH=CF、−CHCH=CHCF、および−CH=CHCFCFである。
【0131】
式(7)において、Xの好ましい具体的としては、フッ素、塩素、−CF、−CHF、−OCFおよび−OCHFが挙げられ、フッ素、塩素、−CFおよび−OCFがさらに好ましい。
式(7)のXが塩素、フッ素である場合は化合物7の融点が比較的低く、他の液晶化合物との相溶性が特に優れている。式(7)Xが−CF、−SF5、−CHF、−OCFおよび−OCHFである場合は、化合物7は比較的大きな誘電率異方性を示す。
がフッ素、−CF、または−OCFであるときは、化学的に安定である。
【0132】
化合物7において、式(7−1)〜(7−8)で表される化合物を用いることが好ましく、式(7−1−1)、(7−1−2)、(7−2−1)〜(7−2−7)、(7−3−1)〜(7−3−4)、(7−4−1)、(7−5−1)または(7−5−2)で表される化合物を用いることがより好ましく、式(7−2−1)〜(7−2−7)で表される化合物を用いることがさらに好ましく、(7−2−2−E)、(7−2−5−E)、(7−2−2−F)、(7−2−5−F)または(7−2−6−F)で表される化合物が特に好ましい。





(式中、R7Aは、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜11のアルコキシ、炭素数2〜12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2〜12のアルケニルであり;
7Aは、フッ素、塩素、−CFまたは−OCFである。)
【0133】
化合物7は、大きな誘電率異方性を有する組成物の調製に適しており、本発明の素子における駆動電圧を低下させることができる。アキラル成分Tの全重量に対して、化合物7を合計で5重量%〜80重量%含有することが好ましく、20重量%〜75重量%含有することがさらに好ましく、30重量%〜70重量%含有することが特に好ましい。
【0134】
2−7−2 化合物7の性質
化合物7はジオキサン環と2〜4個のベンゼン環を有し、かつ少なくとも一つの−CFO−または−COO−連結基を有する。化合物7は、素子が通常使用される条件下で物理的および化学的に極めて安定であり、そして透明点が高いにも関らず、他の液晶化合物との相溶性が比較的よい。化合物7を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で比較的安定している。したがって、化合物7を含む組成物において光学的に等方性の液晶相の温度範囲を広げることが可能となり、幅広い温度範囲で表示素子として使用することができる。さらに化合物7は光学的に等方性の液晶相で駆動される組成物の駆動電圧を下げるための成分として有用である。また、化合物7とキラル剤とを含む組成物においてブルー相を発現させると、N*相や等方相との共存がない均一なブルー相となりやすい。すなわち、化合物7は均一なブルー相を発現させやすい化合物である。また、極めて大きな誘電率異方性を発現する。
【0135】
2−7−3 化合物7の合成
化合物7は有機合成化学における手法を適切に組み合わせることにより合成できる。出発物に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載されている。
【0136】
3 光学的等方性液晶組成物
本発明の液晶組成物は、アキラル成分Tとキラル剤とを含み、光学的に等方性の液晶相を発現する組成物の態様を含む(光学的等方性液晶組成物)。
【0137】
3−1 アキラル成分T
本発明の光学的等方性液晶組成物に含まれるアキラル成分Tは化合物1を含み、必要に応じて化合物2〜7からなる群から選ばれる1以上を含む。アキラル成分Tは、化合物1の他に、化合物2,3,5および7を含むことが好ましく、化合物3、7を含むことが特に好ましく、さらに求められる性質に応じて化合物4と6を含むことができる。
化合物1は比較的高い透明点、比較的大きな誘電率異方性、低温での比較的良好な相溶性を併せ持つため、化合物1を用いた光学的等方性を発現する液晶組成物も、高い透明点、広い液晶相温度範囲、または大きな誘電率異方性を発現するため、光素子に用いる組成物として有用である。化合物1を含有する光学的等方性液晶組成物は、高い透明点と低い駆動電圧を同時に発現する。
さらに、大きな誘電率異方性を発現させるためには、化合物3と7で表される化合物をさらに添加することが好ましい。この組成物は非常に大きな誘電率異方性を発現するため、光素子の低電圧化に極めて有効な組成物である。
【0138】
3−2 キラル剤
本発明の光学的等方性液晶組成物等が含有するキラル剤は光学活性化合物であり、ラジカル重合性基を有さない化合物から選ばれた化合物からなることが好ましい。
本発明の液晶組成物に用いられるキラル剤としては、ねじり力(Helical Twisting Power)が大きい化合物が好ましい。ねじり力が大きい化合物は所望のピッチを得るために必要な添加量が少なくできるので、駆動電圧の上昇を抑えられ、実用上有利である。具体的には、式(K1)〜(K6)で表される化合物が好ましい。なお、式(K4)〜(K6)は、ビナフチル基、オクタヒドロナフチル基が光学活性部位であり、かつ、キラル剤の掌性は問わない。


これらの化合物の中でも、液晶組成物に添加されるキラル剤としては、式(K4)に含まれる式(K4−1)〜式(K4−6)、式(K5)に含まれる式(K5−1)〜式(K5−3)および式(K6)に含まれる式(K6−1)〜式(K6−6)が好ましく、式(K4−5)、式(K5−1)〜式(K5−3)および式(K6−5)〜式(K6−6)がさらに好ましい。




(式中、Rは独立して、炭素数3〜10のアルキルまたは炭素数3〜10のアルコキシであり、アルキル中またはアルコキシ中の少なくとも1以上の−CH−CH−は、−CH=CH−で置き換えられてもよい。)。
【0139】
液晶組成物に含有されるキラル剤として1つの化合物を用いても、複数の化合物を用いてもよい。
【0140】
光学的に等方性の液晶相の発現を容易にするために、本発明の液晶組成物の全重量に対して、キラル剤を1〜40重量%含有することが好ましく、3〜25重量%含有することがさらに好ましく、3〜15重量%含有することが特に好ましい。
【0141】
3−3 光学的に等方性の液晶相
本明細書において、液晶組成物が光学的に等方性を有するとは、巨視的には液晶分子配列は等方的であるため光学的に等方性を示すが、微視的には液晶秩序が存在することをいう。「液晶組成物が微視的に有する液晶秩序に基づくピッチ(以下では、単に「ピッチ」と呼ぶことがある)」は700nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがさらに好ましく、350nm以下であることが最も好ましい。
【0142】
本明細書において、「非液晶等方相」とは一般的に定義される等方相、すなわち、無秩序相であり、局所的な秩序パラメーターがゼロでない領域が生成したとしても、その原因がゆらぎによるものである等方相である。たとえばネマチック相の高温側に発現する等方相は、本明細書では非液晶等方相に該当する。本明細書におけるキラルな液晶についても、同様の定義があてはまるものとする。
本明細書において「光学的に等方性の液晶相」とは、ゆらぎではなく光学的に等方性の液晶相を発現する相を表し、プレートレット組織を発現する相(狭義のブルー相)はその一例である。
本明細書において、特に言及がなければ、ネマチック相はキラルネマチック相を含まない、狭義のネマチック相を意味する。
【0143】
本発明の光学的に等方性の液晶組成物において、光学的に等方性の液晶相ではあるが、偏光顕微鏡観察下、ブルー相に典型的なプレートレット組織が観測されないことがある。そこで本明細書において、プレートレット組織を発現する相をブルー相と称し、ブルー相を含む光学的に等方性の液晶相を光学的に等方性の液晶相と称する。すなわちブルー相は光学的に等方性の液晶相に包含される。
【0144】
一般的に、ブルー相は、ブルー相I、ブルー相II、ブルー相IIIの3種類に分類され、これら3種類のブルー相はすべて光学活性であり、かつ、等方性である。ブルー相Iやブルー相IIのブルー相では異なる格子面からのブラッグ反射に起因する2種以上の回折光が観測される。ブルー相は一般的に非液晶等方相とキラルネマチック相の間で観測される。
【0145】
光学的に等方性の液晶相が二色以上の回折光を示さない状態とは、ブルー相I、ブルー相IIに観測されるプレートレット組織が観測されず、概ね一面単色であることを意味する。二色以上の回折光を示さない光学的に等方性の液晶相では、色の明暗が面内で均一であることまでは不要である。
【0146】
二色以上の回折光を示さない光学的に等方性の液晶相は、ブラッグ反射による反射光強度が抑えられる、あるいは低波長側にシフトするという利点がある。
また、可視光の光を反射する液晶媒体では、表示素子として利用する場合に色味が問題となることがあるが、二色以上の回折光を示さない液晶では、反射波長が低波長シフトするため、狭義のブルー相(プレートレット組織を発現する相)より長いピッチで可視光の反射を消失させることができる。
【0147】
アキラル成分Tとキラル剤とを含む本発明の液晶組成物において、キラル剤は好ましくはピッチが700nm以下になるような濃度で添加される。なお、ネマチック相を発現する組成物は、化合物1および必要に応じてその他の成分を含む。
【0148】
また、本発明の光学的等方性液晶組成物は、キラルネマチック相を有し、光学的に等方性の液晶相を有さない組成物にキラル剤を添加して得ることもできる。なお、キラルネマチック相を有し光学的に等方性の液晶を有さない組成物は、化合物1、光学活性化合物および必要に応じてその他の成分を含む。この際、光学的に等方性の液晶相を発現させないために、好ましくはピッチが700nm以上になるような濃度でキラル剤が添加される。ここで、添加されるは、前述のねじり力が大きい化合物である式(K1)〜(K5)が使用でき、より好ましくは、式(K2−1)〜(K2−8)、式(K4−1)〜(K4−6)、式(K5−1)〜(K5−3)、または式(K6−1)〜(K6−6)で表される化合物が用いられる。
【0149】
本発明の好ましい態様の液晶組成物が光学的に等方性の液晶相を発現する温度範囲は、ネマチック相またはキラルネマチック相と等方相の共存温度範囲が広い液晶組成物に、キラル剤を添加し、光学的に等方性の液晶相を発現させることにより、広くすることができる。たとえば、透明点の高い液晶化合物と透明点の低い液晶化合物とを混合し、広い温度範囲でネマチック相と等方相の共存温度範囲が広い液晶組成物を調製し、これにキラル剤を添加することで、広い温度範囲で光学的に等方性の液晶相を発現する組成物を調製することができる。
【0150】
ネマチック相またはキラルネマチック相と等方相の共存温度範囲が広い液晶組成物としては、キラルネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が3〜150℃である液晶組成物が好ましく、差が5〜150℃である液晶組成物が更に好ましい。また、ネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が3〜150℃である液晶組成物が好ましい。
【0151】
光学的に等方性の液晶相において本発明の液晶媒体に電界を印加すると、電気複屈折が生じるが、必ずしもカー効果である必要はない。
光学的に等方性の液晶相における電気複屈折はピッチが長くなるほど大きくなるので、その他の光学特性(透過率、回折波長など)の要求を満たす限り、キラル剤の種類と含有量を調整して、ピッチを長く設定することにより、電気複屈折を大きくすることができる。
【0152】
3−4 その他の成分
本発明の液晶組成物は、その組成物の特性に大きな影響を与えない範囲で、さらに、溶媒、モノマー、高分子物質、重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、硬化剤、安定剤、二色性色素、フォトクロミック化合物等を含んでもよい。
また、本発明の液晶組成物に用いられる二色性色素の例としては、メロシアニン系、スチリル系、アゾ系、アゾメチン系、アゾキシ系、キノフタロン系、アントラキノン系、テトラジン系などが挙げられる。
【0153】
4 光学的に等方性の高分子/液晶複合材料
4−1 高分子/液晶複合材料
本発明の高分子/液晶複合材料は、液晶組成物と高分子とを含む複合材料であり、光学的に等方性を示すものであり、光学的に等方性の液晶相で駆動される光素子に用いることができる。本発明の高分子/液晶複合材料に含まれる液晶組成物は本発明の液晶組成物である。
【0154】
本明細書中、「高分子/液晶複合材料」とは、液晶組成物と高分子の化合物の両者を含む複合材料であれば特に限定されないが、高分子の一部または全部が液晶組成物や溶媒等に溶解していない状態で高分子が液晶組成物と相分離している状態でもよい。
【0155】
本発明の好ましい態様に係る光学的に等方性の高分子/液晶複合材料は、光学的に等方性の液晶相を広い温度範囲で発現させることが可能である。また、本発明の好ましい態様に係る高分子/液晶複合材料は、応答速度が極めて速い。また、本発明の好ましい態様に係る高分子/液晶複合材料は、これらの効果に基づいて表示素子等の光素子等に好適に用いることができる。
【0156】
4−2 高分子化合物
本発明の複合材料は、光学的に等方性の液晶組成物と、予め重合されて得られた高分子とを混合しても製造できるが、高分子の材料となる低分子量のモノマー、マクロモノマー、オリゴマー等(以下、まとめて「モノマー等」という)と液晶組成物CLCとを混合してから、当該混合物において重合反応を行うことによって、製造されることが好ましい。モノマー等と液晶組成物とを含む混合物を本件明細書では、「重合性モノマー/液晶混合物」と呼ぶ。「重合性モノマー/液晶混合物」には必要に応じて、後述する重合開始剤、硬化剤、触媒、安定剤、二色性色素、またはフォトクロミック化合物等を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。たとえば、本件発明の重合性モノマー/液晶混合物には必要に応じて、重合開始剤を重合性モノマー100重量部に対して0.1〜20重量部含有してもよい。「重合性モノマー/液晶混合物」は、ブルー相で重合する場合は液晶媒体であることが必須となるが、等方相で重合する場合は、必ずしも液晶媒体である必要はない。
【0157】
重合温度は、高分子/液晶複合材料が高透明性と等方性を示す温度であることが好ましい。より好ましくはモノマーと液晶材料の混合物が等方相またはブルー相を発現する温度で、かつ、等方相ないしは光学的に等方性の液晶相で重合を終了する。すなわち、重合後は高分子/液晶複合材料が可視光線より長波長側の光を実質的に散乱せずかつ光学的に等方性の状態を発現する温度とするのが好ましい。
【0158】
本発明の複合材料を構成する高分子の原料としては、たとえば低分子量のモノマー、マクロモノマー、オリゴマーを使用することができ、本明細書において高分子の原料モノマーとは低分子量のモノマー、マクロモノマー、オリゴマー等を包含する意味で用いる。また、得られる高分子が三次元架橋構造を有するものが好ましく、そのために、高分子の原料モノマーとして2つ以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーを用いることが好ましい。重合性の官能基は特に限定されないが、アクリル基、メタクリル基、グリシジル基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニル基などを上げることができるが、重合速度の観点からアクリル基およびメタクリル基が好ましい。高分子の原料モノマー中、二つ以上の重合性のある官能基を持つモノマーをモノマー中に10重量%以上含有させると、本発明の複合材料において高度な透明性と等方性を発現しやすくなるので好ましい。
また、好適な複合材料を得るためには、高分子はメソゲン部位を有するものが好ましく、高分子の原料モノマーとしてメソゲン部位を有する原料モノマーをその一部に、あるいは全部に用いることができる。
【0159】
4−2−1 メソゲン部位を有する単官能性・二官能性モノマー・三官能性モノマー
メソゲン部位を有する単官能性、または二官能性モノマーは構造上特に限定されないが、たとえば下記の式(M1)または式(M2)で表される化合物を挙げることができる。 R−Y−(A−Zm1−A−Y−R(M1)
−Y−(A−Zm1−A−Y−R(M2)
【0160】
式(M1)中、Rは、水素、ハロゲン、−C≡N、−N=C=O、−N=C=S、または炭素数1〜20のアルキルであり、これらのアルキルにおいて少なくとも1つの−CH2−は−O−、−S−、−CO−、−COO−、または−OCO−、で置き換えられてもよく、このアルキル中の少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−、−CF=CF−、または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらのアルキル基中、当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−が−O−、−S−、−COO−、または−OCO−で置き換えられた基中、または当該アルキル中の少なくとも1つの−CH−CH−が−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられた基中の少なくとも1つの水素はハロゲンまたは−C≡Nで置き換えられてもよい。Rは、それぞれ独立して、式(M3−1)〜式(M3−7)の重合性基である。

【0161】
好ましいRは、水素、ハロゲン、−C≡N、−CF、−CFH、−CFH、−OCF、−OCFH、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜19のアルコキシ、炭素数2〜21のアルケニル、および炭素数2〜21のアルキニルである。特に好ましいRは、−C≡N、炭素数1〜20のアルキルおよび炭素数1〜19のアルコキシである。
【0162】
式(M2)中、Rは、それぞれ独立して、式(M3−1)〜(M3−7)の重合性基である。
【0163】
ここで、式(M3−1)〜(M3−7)におけるRは、それぞれ独立して水素、ハロゲンまたは炭素数1〜5のアルキルであり、これらのアルキルにおいて少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。好ましいRは、水素、ハロゲンおよびメチルである。特に好ましいRは、水素、フッ素およびメチルである。
また、式(M3−2)、式(M3−3)、式(M3−4)、式(M3−7)はラジカル重合で重合するのが好適である。式(M3−1)、式(M3−5)、式(M3−6)はカチオン重合で重合するのが好適である。いずれも少量のラジカルあるいはカチオン活性種が反応系内に発生すれば重合は開始する。活性種の発生を加速する目的で重合開始剤を使用できる。活性種の発生にはたとえば光または熱を使用できる。
【0164】
式(M1)および(M2)中、Aは、それぞれ独立して芳香族性または非芳香族性の5員環、6員環または炭素数9以上の縮合環であるが、環中の−CH−は−O−、−S−、−NH−、または−NCH−で、環中の−CH=は−N=で置き換わってもよく、環上の水素原子はハロゲン、および炭素数1〜5のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換わってもよい。好ましいAの具体例は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、またはビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイルであり、これらの環において少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH=は−N=で置き換えられてもよく、これらの環において少なくとも1つの水素はハロゲン、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のハロゲン化アルキルで置き換えられてもよい。
化合物の安定性を考慮して、酸素と酸素とが隣接した−CH−O−O−CH−よりも、酸素と酸素とが隣接しない−CH−O−CH−O−の方が好ましい。硫黄においても同様である。
【0165】
これらの中でも、特に好ましいAは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−メチル−1,4−フェニレン、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレン、2,3−ビス(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、9−メチルフルオレン−2,7−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、およびピリミジン−2,5−ジイルである。なお、前記1,4−シクロヘキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置はシスよりもトランスの方が好ましい。
2−フルオロ−1,4−フェニレンは、3−フルオロ−1,4−フェニレンと構造的に同一であるので、後者は例示しなかった。この規則は、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンと3,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンの関係などにも適用される。
【0166】
式(M1)および(M2)中、Yは、それぞれ独立して単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、これらのアルキレンにおいて少なくとも1つの−CH2−は−O−、−S−で置き換えられてもよく、このアルキル中の少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよい。好ましいYは、単結合、−(CH2m2−、−O(CH2m2−、および−(CH2m2O−(前記式中、m2は1〜20の整数である)である。特に好ましいYは、単結合、−(CH2m2−、−O(CH2m2−、および−(CH2m2O−(前記式中、m2は1〜10の整数である)である。化合物の安定性を考慮して、−Y−Rおよび−Y−Rは、それらの基中に−O−O−、−O−S−、−S−O−、または−S−S−を有しない方が好ましい。
【0167】
式(M1)および(M2)中、Zは、それぞれ独立して単結合、−(CH2m3−、−O(CH2m3−、−(CH2m3O−、−O(CH2m3O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−(CF22−、−(CH2−COO−、−OCO−(CH2−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−CH=CH−(CH22−、−(CH22−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−CH=CH−、−CH=CH−C≡C−、−OCF−(CH2−、−(CH2−CFO−、−OCF−または−CFO−(前記式中、m3は1〜20の整数である)である。
【0168】
好ましいZは単結合、−(CH2m3−、−O(CH2m3−、−(CH2m3O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−(CH2−COO−、−OCO−(CH2−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−OCF−、および−CFO−である。
【0169】
式(M1)および(M2)中、m1は1〜6の整数である。好ましいm1は、1〜3の整数である。m1が1のときは、6員環などの環を2つ有する二環の化合物である。m1が2と3のときは、それぞれ三環と四環の化合物である。たとえばm1が1であるとき、2つのAは同一であってもよいし、または異なってもよい。また、たとえばm1が2であるとき、3つのA(または2つのZ)は同一であってもよいし、または異なってもよい。m1が3〜6であるときについても同様である。R、R、R、Z、AおよびYについても同様である。
【0170】
式(M1)で表される化合物(M1)および式(M2)で表される化合物(M2)はH(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量よりも多く含んでいても同様の特性を有するので好ましく用いることができる。
【0171】
化合物(M1)および化合物(M2)の更に好ましい例は、式(M1−1)〜(M1−41)および式(M2−1)〜(M2−27)で表される化合物(M1−1)〜(M1−41)および化合物(M2−1)〜(M2−27)である。これらの化合物において、R、R、R、Z、A、Yおよびpの定義は、本発明の態様に記載した式(M1)および式(M2)のそれらと同一である。
【0172】
化合物(M1−1)〜(M1−41)および(M2−1)〜(M2−27)における下記の部分構造について説明する。部分構造(a1)は、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンを表す。部分構造(a2)は、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンを表す。部分構造(a3)は、少なくとも1つの水素がフッ素またはメチルのいずれかで置き換えられてもよい1,4−フェニレンを表す。部分構造(a4)は、9位の水素がメチルで置き換えられてもよいフルオレンを表す。




















【0173】
前述のメソゲン部位を有さないモノマー、およびメソゲン部位を持つモノマー(M1)、および(M2)以外の重合性化合物を必要に応じて使用することができる。
【0174】
本発明の高分子/液晶複合材料の光学的に等方性を最適化する目的で、メソゲン部位を持ち3つ以上の重合性官能基を持つモノマーを使用することもできる。メソゲン部位を持ち3つ以上の重合性官能基を持つモノマーとしては公知の化合物を好適に使用できるが、たとえば、(M4−1)〜(M4−3)であり、より具体的な例として、特開2000−327632号(JP 2000-327632A)、特開2004−182949号(JP 2004-182949A)、特開2004−59772号(JP 2004-59772A)に記載された化合物をあげることができる。ただし、(M4−1)〜(M4−3)において、R、Z、Y、および(F)は前述と同一の定義を示す。

【0175】
4−2−2 メソゲン部位を有さない重合性官能基を持つモノマー
メソゲン部位を有さない重合性官能基を持つモノマーとして、たとえば、炭素数1〜30の直鎖あるいは分岐鎖のアクリレート、炭素数1〜30の直鎖あるいは分岐鎖のジアクリレート、三つ以上の重合性官能基を有するモノマーとしては、グリセロール・プロポキシレート(1PO/OH)トリアクリレート、ペンタエリスリトール・プロポキシレート・トリアクリレート、ペンタエリスリトール・トリアクリレート、トリメチロールプロパン・エトキシレート・トリアクリレート、トリメチロールプロパン・プロポキシレート・トリアクリレート、トリメチロールプロパン・トリアクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ペンタエリスリトール・テトラアクリレート、ジ(ペンタエリスリトール)ペンタアクリレート、ジ(ペンタエリスリトール)ヘキサアクリレート、トリメチロールプロパン・トリアクリレートなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0176】
4−2−3 重合開始剤
本発明の複合材料を構成する高分子の製造における重合反応は特に限定されず、たとえば、光ラジカル重合、熱ラジカル重合、光カチオン重合等が行われる。
【0177】
光ラジカル重合において用いることができる光ラジカル重合開始剤の例は、ダロキュア(DAROCUR)1173および4265(いずれも商品名、BASFジャパン(株))、イルガキュア(IRGACURE)184、369、500、651、784、819、907、1300、1700、1800、1850、および2959(いずれも商品名、BASFジャパン(株))である。
【0178】
熱ラジカル重合において用いることができる熱によるラジカル重合の好ましい開始剤の例は、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル(MAIB)、ジt−ブチルパーオキシド(DTBPO)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(ACN)である。
【0179】
光カチオン重合において用いることができる光カチオン重合開始剤の例は、ジアリールヨードニウム塩(以下、「DAS」という。)およびトリアリールスルホニウム塩(以下、「TAS」という。)である。
【0180】
DASの例は、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、および4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホナートである。
【0181】
DASには、チオキサントン、フェノチアジン、クロロチオキサントン、キサントン、アントラセン、ジフェニルアントラセン、ルブレンなどの光増感剤を添加することで高感度化することもできる。
【0182】
TASの例は、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、および4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホネートである。
【0183】
光カチオン重合開始剤の具体的な商品名の例は、サイラキュア(Cyracure)UVI−6990、サイラキュアUVI−6974、サイラキュアUVI−6992(それぞれ商品名、UCC(株))、アデカオプトマーSP−150、SP−152、SP−170、SP−172(それぞれ商品名、(株)ADEKA)、Rhodorsil Photoinitiator 2074(商品名、ローディアジャパン(株))、イルガキュア(IRGACURE)250(商品名、BASFジャパン(株))、およびUV−9380C(商品名、GE東芝シリコーン(株))である。
【0184】
4−2−4 硬化剤等
本発明の複合材料を構成する高分子の製造において、前記モノマー等および重合開始剤の他にさらに1つまたは2つ以上の他の好適な成分、たとえば、硬化剤、触媒、安定剤等を加えてもよい。
【0185】
硬化剤としては、通常、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されている従来公知の潜在性硬化剤が使用できる。潜在性エポキシ樹脂用硬化剤の例は、アミン系硬化剤、ノボラック樹脂系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、酸無水物系硬化剤等である。アミン系硬化剤の例は、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、m−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等の脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ラロミン等の脂環式ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、メタフェニレンジアミン等の芳香族ポリアミンである。
【0186】
ノボラック樹脂系硬化剤の例は、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂である。イミダゾール系硬化剤の例、2−メチルイミダゾール、2−エチルへキシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウム・トリメリテートである。
【0187】
酸無水物系硬化剤の例は、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルへキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物である。
【0188】
また、グリシジル基、エポキシ基、オキセタニル基を有する重合性化合物と硬化剤との硬化反応を促進するための硬化促進剤をさらに用いてもよい。硬化促進剤の例は、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルシクロヘキシルアミン等の3級アミン類、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等の有機リン系化合物、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩類、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類、三フッ化ホウ素、トリフェニルボレート等のホウ素化合物である。これらの硬化促進剤は単独または複数を混合して使用することができる。
【0189】
また、たとえば貯蔵中の不所望な重合を防止するために、安定剤を添加することが好ましい。安定剤として、当業者に知られているすべての化合物を用いることができる。安定剤の代表例としては、4−エトキシフェノール、ハイドロキノン、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)等が挙げられる。
【0190】
4−3 高分子/液晶複合材料の組成
本発明の高分子/液晶複合材料中における液晶組成物の含有率は、複合材料が光学的に等方性の液晶相を発現できる範囲であれば、可能な限り高含有率であることが好ましい。液晶組成物の含有率が高い方が、本発明の複合材料の電気複屈折値が大きくなるからである。
【0191】
本発明の高分子/液晶複合材料において、液晶組成物の含有率は複合材料に対して60〜99重量%であることが好ましく、60重量%〜98重量%がさらに好ましく、80重量%〜97重量%が特に好ましい。また、本発明の高分子/液晶複合材料において、高分子の含有率は複合材料に対して1重量%〜40重量%であることが好ましく、2重量%〜40重量%がさらに好ましく、3重量%〜20重量%が特に好ましい。
【0192】
5 光素子
本発明の光素子は、液晶組成物または高分子/液晶複合材料(以下では、本発明の液晶組成物および高分子/液晶複合材料を総称して液晶媒体と呼ぶことがある)を含む光学的に等方性の液晶相で駆動される光素子である。
電界無印加時には液晶媒体は光学的に等方性であるが、電場を印加すると、液晶媒体は光学的異方性を生じ、電界による光変調が可能となる。
液晶表示素子の構造例としては、図1に示すように、櫛型電極基板の電極が、左側から伸びる電極1と右側から伸びる電極2が交互に配置された構造を挙げることができる。電極1と電極2との間に電位差がある場合、図1に示すような櫛型電極基板上では、1本の電極に注目すると、図面上の上方向と下方向の2つの方向の電界が存在する状態を提供できる。
本発明の液晶組成物は光素子に利用できる。本発明の液晶組成物は、低い駆動電圧と短い応答時間を示すため、本発明の好ましい態様の光素子は低電圧で駆動が可能であり、高速応答が可能である。
【0193】
6 化合物
本発明の液晶化合物は、式 (1−1)および(1−2))で表される化合物である。

式(1−1)および式(1−2)で表される化合物。


(上記式中、R1aは炭素数1〜10のアルキルであり、;
1aはフッ素、塩素、−C≡N、−CFまたは−OCFである。)
式(1−1)で表される化合物は、高い透明点と大きな誘電率異方性値、大きな屈折率異方性値を有し、式(1−2)で表される化合物は、比較的高い透明点、大きな誘電率異方性値、比較的良好な低温での相溶性を有する、したがって、これらの化合物は、低い駆動電圧、あるいは広い液晶相温度範囲を有する液晶組成物の成分として有用である。
【実施例】
【0194】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によっては制限されない。なお特に言及のない限り、「%」は「重量%」を意味する。
また、得られた化合物は、1H−NMR分析で得られる核磁気共鳴スペクトル、ガスクロマトグラフィー(GC)分析で得られるガスクロマトグラムなどにより同定した。分析方法は以下のとおりであった。
【0195】
1)分析方法
1−1)1H−NMR分析
測定装置は、DRX−500(商品名、ブルカーバイオスピン(株))を用いた。測定は、実施例等で製造したサンプルを、CDCl3等のサンプルが可溶な重水素化溶媒に溶解し、室温で、500MHz、積算回数24回の条件で行った。なお、得られた核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレットであることを意味する。また、化学シフトδ値のゼロ点の基準物質としてはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0196】
1−2)GC分析
測定装置は、島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。カラムは、島津製作所製のキャピラリーカラムCBP1−M25−025(長さ25m、内径0.22mm、膜厚0.25μm);固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。キャリアーガスとしてはヘリウムを用い、流量は1ml/分に調整した。試料気化室の温度を300℃、検出器(FID)部分の温度を300℃に設定した。
【0197】
試料はトルエンに溶解して、1重量%の溶液となるように調製し、得られた溶液1μlを試料気化室に注入した。
記録計としては島津製作所製のC−R6A型Chromatopac、またはその同等品を用いた。得られたガスクロマトグラムには、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積値が示されている。
【0198】
なお、試料の希釈溶媒としては、たとえば、クロロホルム、ヘキサンを用いてもよい。また、カラムとしては、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty.Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)などを用いてもよい。
【0199】
ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は成分化合物の割合に相当する。一般には、分析サンプルの成分化合物の重量%は、分析サンプルの各ピークの面積%と完全に同一ではないが、本発明において上述したカラムを用いる場合には、実質的に補正係数は1であるので、分析サンプル中の成分化合物の重量%は、分析サンプル中の各ピークの面積%とほぼ対応している。成分の液晶化合物における補正係数に大きな差異がないからである。ガスクロマトグラムにより液晶組成物中の液晶化合物の組成比をより正確に求めるには、ガスクロマトグラムによる内部標準法を用いる。一定量正確に秤量された各液晶化合物成分(被検成分)と基準となる液晶化合物(基準物質)を同時にガスクロ測定して、得られた被検成分のピークと基準物質のピークとの面積比の相対強度をあらかじめ算出する。基準物質に対する各成分のピーク面積の相対強度を用いて補正すると、液晶組成物中の液晶化合物の組成比をガスクロ分析からより正確に求めることができる。
【0200】
1−3)液晶化合物等の物性値の測定試料
液晶化合物の物性値を測定する試料としては、化合物そのものを試料とする場合、化合物を母液晶と混合して試料とする場合の2種類がある。
【0201】
化合物を母液晶と混合した試料を用いる後者の場合には、以下の方法で測定を行う。まず、得られた液晶化合物15重量%と母液晶85重量%とを混合して試料を作製する。そして、得られた試料の測定値から、下記の計算式に基づく外挿法にしたがって、外挿値を計算する。この外挿値をこの化合物の物性値とする。
【0202】
〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉)/〈液晶化合物の重量%〉
【0203】
液晶化合物と母液晶との割合がこの割合(15重量%:85重量%)であっても、スメクチック相、または結晶が25℃で析出する場合には、液晶化合物と母液晶との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、スメクチック相、または結晶が25℃で析出しなくなった組成で試料の物性値を測定し上記式にしたがって外挿値を求めて、これを液晶化合物の物性値とする。
【0204】
測定に用いる母液晶としては様々な種類が存在するが、たとえば、母液晶Aの組成(重量%)は以下のとおりである。

【0205】
1−4)液晶化合物等の物性値の測定方法
物性値の測定は後述する方法で行った。これら測定方法の多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。また、測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0206】
測定値のうち、液晶化合物そのものを試料とした場合は、得られた値を実験データとして記載した。液晶化合物と母液晶との混合物を試料として用いた場合は、外挿法で得られた値を実験データとして記載した。
【0207】
1−4−1)相構造および相転移温度(℃):
以下(1)、および(2)の方法で測定を行った。
(1)偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に化合物を置き、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、液晶相の種類を特定した。
(2)パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め(on set)、相転移温度を決定した。
【0208】
以下、結晶はKと表し、さらに結晶の区別がつく場合は、それぞれK1またはK2と表した。また、スメクチック相はSm、ネマチック相はN、キラルネマチック相はNと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。スメクチック相の中で、スメクチックB相、またはスメクチックA相の区別がつく場合は、それぞれSmB、またはSmAと表した。BPはブルー相または光学的に等方性の液晶相を表す。2相の共存状態は(N+I)、(N+BP)という形式で表記することがある。具体的には、(N+I)は、それぞれ非液晶等方相とキラルネマチック相がと共存する相を表し、(N+BP)は、BP相または光学的に等方性の液晶相とキラルネマチック相が共存した相を表す。Unは光学的等方性ではない未確認の相を表す。相転移温度の表記として、たとえば、「K 50.0 N 100.0 I」とは、結晶からネマチック相への相転移温度(KN)が50.0℃であり、ネマチック相から液体への相転移温度(NI)が100.0℃であることを示す。他の表記も同様である。
【0209】
1−5)ネマチック相の上限温度(TNI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に、試料(液晶化合物と母液晶との混合物)を置き、1℃/分の速度で加熱しながら偏光顕微鏡を観察した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度をネマチック相の上限温度とした。以下、ネマチック相の上限温度を、単に「上限温度」と略すことがある。
【0210】
1−6)低温相溶性
母液晶と液晶化合物とを、液晶化合物が、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、および1重量%の量となるように混合した試料を作製し、試料をガラス瓶に入れる。このガラス瓶を、−10℃または−20℃のフリーザー中に一定期間保管したあと、結晶もしくはスメクチック相が析出しているかどうか観察をした。
【0211】
1−7)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s)
液晶化合物と母液晶との混合物を、E型粘度計を用いて測定した。
【0212】
1−8)屈折率異方性(Δn)
測定は25℃の温度下で、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料(液晶化合物と母液晶との混合物)を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。屈折率異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥の式から計算した。
【0213】
1−9)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ツイスト角が80度の液晶セルに試料(液晶化合物と母液晶との混合物)を入れた。このセルに20ボルトを印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。0.5ボルトを印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0214】
1−10)ピッチ(P;25℃で測定;nm)
ピッチ長は選択反射を用いて測定した(液晶便覧196頁 2000年発行、丸善)。選択反射波長λには、関係式<n>p/λ=1が成立する。ここで<n>は平均屈折率を表し、次式で与えられる。<n>={(n2+n2)/2}1/2。選択反射波長は顕微分光光度計(日本電子(株)、商品名MSV-350)で測定した。得られた反射波長を平均屈折率で除すことにより、ピッチを求めた。可視光より長波長領域に反射波長を有するコレステリック液晶のピッチは、光学活性化合物濃度が低い領域では光学活性化合物の濃度の逆数に比例することから、可視光領域に選択反射波長を有する液晶のピッチ長を数点測定し、直線外挿法により求めた。「光学活性化合物」は本発明におけるキラル剤に相当する。
【0215】
本発明において、液晶組成物の特性値の測定は下記の方法にしたがって行うことができる。それらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0216】
1−11)ネマチック相の上限温度(NI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0217】
1−12)ネマチック相の下限温度(TC;℃)
ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。たとえば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶(またはスメクチック相)に変化したとき、TCを≦−20℃と記載する。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0218】
1−13)光学的に等方性の液晶相の転移温度
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、クロスニコルの状態で、まず試料が非液晶等方相になる温度まで昇温した後、1℃/分の速度で降温し、完全にキラルネマチック相または光学的に等方性の液晶相を出現させた。その降温過程での相転移した温度を測定し、次いで1℃/分の速度で昇熱し、その昇温過程における相転移した温度を測定した。本発明において、特に断りの無い限り、昇温過程での相転移した温度を相転移温度とした。光学的に等方性の液晶相においてクロスニコル下では暗視野で相転移温度の判別が困難な場合は、偏光板をクロスニコルの状態から1〜10°ずらして相転移温度を測定した。
【0219】
1−14)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s)
(1)誘電率異方性が正である試料:測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。ツイスト角が0°であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。TN素子に16ボルト〜19.5ボルトの範囲で0.5ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文の40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度の測定で使用した素子にて、下記の誘電率異方性の測定方法で求めた。
【0220】
(2)誘電率異方性が負である試料:測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料を入れた。この素子に30ボルト〜50ボルトの範囲で1ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性は、下記の誘電率異方性で測定した値を用いた。
【0221】
1−15)屈折率異方性(Δn;25℃で測定)
測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビング(rubbing)したあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。屈折率異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。試料が組成物のときはこの方法によって屈折率異方性を測定した。
【0222】
1−16)誘電率異方性(Δε;25℃で測定):
(1)誘電率異方性が正である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ツイスト角が80度の液晶セルに試料を入れた。このセルに20ボルトを印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。0.5ボルトを印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0223】
(2)誘電率異方性が負である組成物:ホメオトロピック配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε‖)を測定した。ホモジニアス配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0224】
1−17)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V)
1)誘電率異方性が正である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が(0.5/Δn)μmであり、ツイスト角が80度である、ノーマリーホワイトモード(normally white mode)の液晶表示素子に試料を入れた。Δnは上記の方法で測定した屈折率異方性の値である。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率が90%になったときの電圧の値を測定した。
【0225】
2)誘電率異方性が負である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μmであり、ホメオトロピック配向に処理したノーマリーブラックモード(normally black mode)の液晶表示素子に試料を入れた。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率10%になったときの電圧の値を測定した。
【0226】
1−18)電圧保持率(VHR;25℃で測定;%)
測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は6μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0227】
1−19)螺旋ピッチ(20℃で測定;μm)
螺旋ピッチの測定には、カノのくさび型セル法を用いた。カノのくさび型セルに試料を注入し、セルから観察されるディスクリネーションラインの間隔(a;単位はμm)を測定した。螺旋ピッチ(P)は、式P=2・a・tanθから算出した。θは、くさび型セルにおける2枚のガラス板の間の角度である。
【0228】
あるいは、ピッチ長は選択反射を用いて測定した(液晶便覧196頁 2000年発行、丸善)。選択反射波長λには、関係式<n>p/λ=1が成立する。ここで<n>は平均屈折率を表し、次式で与えられる。<n>={(n‖2+n⊥2)/2}1/2。選択反射波長は顕微分光光度計(日本電子(株)、商品名MSV-350)で測定した。得られた反射波長を平均屈折率で除すことにより、ピッチを求めた。
可視光より長波長領域に反射波長を有するコレステリック液晶のピッチは、キラル剤濃度が低い領域ではキラル剤の濃度の逆数に比例することから、可視光領域に選択反射波長を有する液晶のピッチ長を数点測定し、直線外挿法により求めた。
【0229】
成分または液晶化合物の割合(百分率)は、液晶化合物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。組成物は、液晶化合物などの成分の重量を測定してから混合することによって調製される。したがって、成分の重量%を算出するのは容易である。
【0230】
[実施例1]
本願の式(1−2)で表される化合物の合成実施例およびその特性を下記合成例1〜4に記す。
【0231】
[合成例1] 化合物(1−2−S1) の合成


式(1−2)において、R1aがC、およびX1aが−CFである、上記式(1−2−S1)で表される化合物(化合物(1−2−S1))を以下のとおりに合成した。

【0232】
(第1段)化合物(S107)の合成
窒素雰囲気下で、化合物(S106)(15.0g, 38.2mmol)のTHF(150mL)溶液を−40℃まで冷却し、n−ブチルリチウム/n−ヘキサン溶液(1.57mol/L, 29.0mL)を滴下してそのままの温度で1時間撹拌した。さらにそのままの温度でドライアイス(2.01g, 45.8mmoL)を少しずつ加え、徐々に室温に戻しながら1時間撹拌した。反応液を2N−HCl水に空け、リトマス試験紙で溶液が酸性になっていることを確認した後にジエチルエーテル(200mL)で2回抽出し、水で3回洗浄した後に有機相を減圧濃縮した。残渣にn−ヘプタンを加え、40℃で5分間加熱撹拌した後に−20℃までゆっくりと冷却して固形物をろ過した。ろ晶を取り出して減圧乾燥し、カルボン酸誘導体(S107)(15.8g, 36.1mmoL)を得た。
【0233】
(第2段)化合物(1−2−S1)の合成
窒素雰囲気下で、フェノール誘導体(S108)(2.72g, 13.7mmoL)のジクロロメタン(120mL)溶液を0℃まで冷却し、N,N’−ジクロロヘキシルカルボジイミド(2.96g, 14.4mmoL)、4−ジメチルアミノピリジン(0.168g, 1.37mmoL)、およびカルボン酸誘導体(S107)(6.00g, 13.7mmoL)加え、常温にて8時間撹拌した。反応液を水に空けてジクロロメタン(120mL)を追加し、重層水で2回、水で3回洗浄し、次いで減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/n−ヘプタン=1/2(容量))、さらに再結晶ろ過(溶媒:トルエン/n−ヘプタン=1/4(容量))にて精製して化合物(1−2−S1)(4.14g, 6.70mmoL)を得た。この化合物の融点(℃)は、C 123.6 Iであった。
H−NMR(CDCl,ppm): δ 0.944-0.974(3H, t), 1.36-1.43(2H, m), 1.61-1.67(2H, m), 2.65-2.68(2H, t), 7.00-7.04(2H, dd), 7.02-7.05(1H, dd), 7.07-7.09(1H, dd), 7.12-7.14(2H, d), 7.33-7.37(2H, dd), 7.53(1H, dd)
19F−NMR(CDCl,ppm): δ -109.23- -109.25(2F, d), -111.92- -111.94(1F, d), -118.64- -118.68(1F, dd), -132.74- 132.81(2F, dd), -163.07- -163.08(1F, tt)
次に、上述した母液晶Aとして記載された4つの化合物を混合し、ネマチック相を有する母液晶Aを調製した。この母液晶Aの物性は以下の通りであった。
上限温度(TNI)=71.7℃; 誘電率異方性(Δε)=11.0; 屈折率異方性(Δn)=0.137。
【0234】
母液晶A(95重量%)と、合成例1で得られた化合物(1−2−S1)(5重量%)とからなる液晶組成物AS1を調製した。得られた液晶組成物AS1の物性値を測定し、測定値を外挿することで化合物(1−2−S1)の物性の外挿値を算出した。その値は以下の通りであった。
上限温度(TNI)=55℃; 誘電率異方性(Δε)=75.4; 屈折率異方性(Δn)=0.170。
これらのことから化合物(1−2−S1)は、屈折率異方性(Δn)と誘電率異方性(Δε)の大きい化合物であることが分かった。
【0235】
[合成例2] 化合物(1−2−S2) の合成


式(1−2)において、R1aがC、およびX1aが−Fである、上記式(1−2−S2)で表される化合物(化合物(1−2−S2))を合成例1の方法に準じて合成した。相転移点(℃)は、C 118.1(N 104.7) Iであった。
【0236】
母液晶A(95重量%)と、合成例2で得られた化合物(1−2−S2)(5重量%)とからなる液晶組成物AS1を調製した。得られた液晶組成物AS1の物性値を測定し、測定値を外挿することで化合物(1−2−S2)の物性の外挿値を算出した。その値は以下の通りであった。
上限温度(TNI)=49.7℃; 誘電率異方性(Δε)=63.9; 屈折率異方性(Δn)=0.177。
これらのことから化合物(1−2−S2)は、屈折率異方性(Δn)と誘電率異方性(Δε)の大きい化合物であることが分かった。
【0237】
[合成例3] 化合物(1−2−S3) の合成


式(1−2)において、R1aがC11、およびX1aが−CFである、上記式(1−2−S3)で表される化合物(化合物(1−2−S3))を合成例1の方法に準じて合成した。相転移点(℃)は、C 114.9 Iであった。
【0238】
母液晶A(95重量%)と、合成例3で得られた化合物(1−2−S3)(5重量%)とからなる液晶組成物AS1を調製した。得られた液晶組成物AS1の物性値を測定し、測定値を外挿することで化合物(1−2−S3)の物性の外挿値を算出した。その値は以下の通りであった。
上限温度(TNI)=55.7℃; 誘電率異方性(Δε)=78.1; 屈折率異方性(Δn)=0.177。
これらのことから化合物(1−2−S3)は、屈折率異方性(Δn)と誘電率異方性(Δε)の大きい化合物であることが分かった。
【0239】
[合成例4] 化合物(1−2−S4) の合成


式(1−2)において、R1aがC13−、およびX1aが−CFである、上記式(1−2−S4)で表される化合物(化合物(1−2−S4))を合成例1の方法に準じて合成した。相転移点(℃)は、C 117.8 Iであった。
【0240】
母液晶A(95重量%)と、合成例3で得られた化合物(1−2−S4)(5重量%)とからなる液晶組成物AS1を調製した。得られた液晶組成物AS1の物性値を測定し、測定値を外挿することで化合物(1−2−S4)の物性の外挿値を算出した。その値は以下の通りであった。
上限温度(TNI)=53.7℃; 誘電率異方性(Δε)=73.9; 屈折率異方性(Δn)=0.157。
これらのことから化合物(1−2−S4)は、屈折率異方性(Δn)と誘電率異方性(Δε)の大きい化合物であることが分かった。
【0241】
[実施例2]ネマチック液晶組成物(NLC)の調製
表1に示すように、実施例1で合成した化合物(1−2−S1)〜(1−2−S4)を含むネマチック液晶組成物NLC−A、NLC−B、NLC−C、NLC−D、NLC−EおよびNLC−Fを調製した。また、NLC−AとNLC−Bのリファレンスとして、NLC−Rを調製した。
【表1】
表1の続き



表1の続き



表1の続き

【0242】
各ネマチック液晶組成物の相転移点は表2に示すとおりであった。
【表2】
【0243】
[実施例3]キラル液晶組成物(CLC)の調製
次に、表1に示す各ネマチック液晶組成物を、下記に示すキラル剤BN−H4、BN−H5およびCD1と混合して、キラル液晶組成物CLC−A、CLC−B、CLC−C、CLC−D、CLC−E、CLC−FおよびCLC−Rを調製した。当該キラル液晶組成物の組成は下記の通りで、相転移点は表3に示すとおりであった。
CLC−A
NLC−A 94.7重量%
BN−H4 2.65重量%
BN−H5 2.65重量%
CLC−B
NLC−B 94.7重量%
BN−H4 2.65重量%
BN−H5 2.65重量%
CLC−C
NLC−C 95.2重量%
CD1 4.8重量%
CLC−D
NLC−C 95.5重量%
CD1 4.5重量%
CLC−E
NLC−C 95.5重量%
CD1 4.5重量%
CLC−F
NLC−C 95.5重量%
CD1 4.5重量%
CLC−R
NLC−C 95.2重量%
BN−H4 2.65重量%
BN−H5 2.65重量%
【0244】
【表3】
【0245】
BN−H4


BN−H5


CD1

【0246】
[実施例4]重合性モノマーとの混合物である液晶組成物(MLC)の調製
実施例3で調製された各キラル液晶組成物(CLC)を重合性モノマーとの混合物を等方相で加熱混合することで、液晶組成物MLC−A、MLC−B、MLC−C、MLC−D、、MLC−E、MLC−FおよびMLC−Rを調製した。これらの液晶組成物の組成を下記に示し、相転移温度は表4に示した。
MLC−A
CLC−A 88.8重量%
n−ヘキサデシルアクリレート 6.0重量%
LCA−12 4.8重量%
DMPA 0.4重量%
MLC−B
CLC−B 88.8重量%
n−ヘキサデシルアクリレート 6.0重量%
LCA−12 4.8重量%
DMPA 0.4重量%
MLC−C
CLC−C 88.8重量%
n−ヘキサデシルアクリレート 6.0重量%
LCA−12 4.8重量%
DMPA 0.4重量%
MLC−D
CLC−D 88.8重量%
n−ヘキサデシルアクリレート 6.0重量%
LCA−12 4.8重量%
DMPA 0.4重量%
MLC−E
CLC−E 88.2重量%
n−ヘキサデシルアクリレート 6.0重量%
LCA−12 4.8重量%
DMPA 0.8重量%
MLC−F
CLC−F 88.8重量%
n−ヘキサデシルアクリレート 6.0重量%
LCTA−6 4.8重量%
DMPA 0.4重量%
MLC−R
CLC−R 88.8重量%
n−ヘキサデシルアクリレート 6.0重量%
LCA−12 4.8重量%
DMPA 0.4重量%
【0247】
上記のLCA−6、LCA−12、DMPAはそれぞれ、1,4−ジ(4−(6−(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ)ベンゾイルオキシ)−2−メチルベンゼン(LCA−6)、1,4−ジ(4−(6−(アクリロイルオキシ)ドデシルオキシ)ベンゾイルオキシ)−2−メチルベンゼン(LCA−12)、2,2’−ジメトキシフェニルアセトフェノンを表し、DMPAは光重合開始剤である。LCTA−6は、下記に化学構造を示した。
【0248】
【表4】

【0249】

LCA−6


LCA−12


LCTA−6

【0250】
[実施例5]高分子/液晶複合材料の調製が狭持されたセル
キラル液晶組成物(CLC)と重合性モノマーとの混合物である液晶組成物(MLC)をを配向処理の施されていない櫛型電極基板と対向ガラス基板(非電極付与)の間に狭持し、ブルー相まで加熱した。この状態で、紫外光(紫外光強度23mWcm−2(365nm))を1分間照射して、重合反応を行い、高分子/液晶複合材料PSBP−A、PSBP−B、PSBP−C、PSBP−D、PSBP−E、PSBP−FおよびPSBP−Rが挟持されたセルを作成した(セル厚7〜9μm)。重合温度は表5に示すとおりであった。
【0251】
【表5】
【0252】
このようにして得られた高分子/液晶複合材料(PSBP)は、いずれも、室温まで冷却しても光学的に等方性の液晶相を維持していた。
【0253】
[実施例6]セルを用いた光学系
実施例5で得られた高分子/液晶複合材料が狭持されたセルを、図2に示した光学系にセットした。具体的には、光源として偏光顕微鏡(ニコン製 エクリプス LV100POL)の白色光源を用い、セルへの入射角度がセル面に対して垂直となるようにし、櫛型電極の線方向がPolarizerとAnalyzer偏光板に対してそれぞれ45°となるように実施例5で得られた高分子/液晶複合材料が狭持されたセルがセットされた(図2)。
当該光学系を用いて、実施例5で得られた高分子/液晶複合材料の室温で印加電圧と透過率との関係を調べた。セルに挟持された高分子/液晶複合材料(PSBP)の物性値は表5に示すとおりであった。なお応答時間のデータは、飽和電圧印加、除去時のものである。
【0254】
CLC−AおよびCLC−Bは、CLC−Rに式(1)の化合物を添加した組成物である。
PSBP−Aの飽和電圧(Vmax)は40.4V、コントラスト比は968.4であり、リファレンスとなるPSBP−Rと比べて、駆動電圧が低下し、コントラストが向上した。また、PSBP−Bの飽和電圧(Vmax)は45.2V、コントラスト比は1211であり、リファレンスとなるPSBP−Rと比べて、駆動電圧は同等であるが、コントラストが著しく向上した。式(1)の化合物は、駆動電圧の低下とコントラストの向上に有効な化合物であることがわかった。
【0255】
上記実施例および比較例から明らかなように、本発明の光素子は、駆動電圧が低く、あるいは、コントラストが高いことから従来技術より優れている。
【産業上の利用可能性】
【0256】
本発明の活用法として、たとえば、高分子/液晶複合体を用いる表示素子などの光素子が挙げられる。
【符号の説明】
【0257】
1 電極
2 電極
3 光源
4 偏光子(偏光板)(Polarizer)
5 櫛型電極セル
6 検光子(偏光板)(Analyzer)
7 受光器(Photodetector)
図1
図2