特許第6179455号(P6179455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179455
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】フッ化物蛍光体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20170807BHJP
   C09K 11/59 20060101ALI20170807BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20170807BHJP
【FI】
   C09K11/08 A
   C09K11/59CPF
   H01L33/00
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-100595(P2014-100595)
(22)【出願日】2014年5月14日
(65)【公開番号】特開2015-129252(P2015-129252A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-253272(P2013-253272)
(32)【優先日】2013年12月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 優
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/119486(WO,A1)
【文献】 特開2011−012091(JP,A)
【文献】 特開2015−129250(JP,A)
【文献】 特開2012−224536(JP,A)
【文献】 特表2013−533363(JP,A)
【文献】 C.Rissom et al.,,Crystal structure and thermal properties of a new double salt: K2SiF6・KNO3,Crystal Research and Technology,2008年,第43巻, 第1号,74-82頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00−11/89
H01L 33/00−33/64
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるフッ化物と、カリウムイオン及び硝酸イオンを含む処理液とを含む反応混合物中で、
フッ化物をカリウムイオン及び硝酸イオンと接触させる工程を含むフッ化物蛍光体の製造方法。
[M1−aMn4+] (I)
(式中、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を表し、aは0<a<0.2を満たす。)
【請求項2】
接触させる工程は、前記反応混合物を攪拌することを含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
接触させる工程は、前記反応混合物から処理液の少なくとも一部を除去することを含み、除去される処理液のマンガンイオン濃度を0.5ppm以下とすることを含む請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記処理液が、アルカリ性である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記処理液が、酸性である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記フッ化物を、過酸化水素と接触させる工程を更に含む請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
下記一般式(I)で表されるフッ化物と、下記一般式(II)で表される複塩とを含むフッ化物蛍光体。
[M1−aMn4+] (I)
MF・KNO (II)
(式中、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を表し、aは0<a<0.2を満たす。)
【請求項8】
前記フッ化物蛍光体の表面から深さ方向1μmまでの領域の少なくとも一部に複塩を有する請求項に記載のフッ化物蛍光体。
【請求項9】
請求項又はに記載のフッ化物蛍光体と、
380nm〜485nmの波長範囲の光を発する光源と、を備える発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ化物蛍光体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(Light emitting diode:LED)は、窒化ガリウム(GaN)のような金属化合物から生産される半導体発光素子である。この半導体発光素子と蛍光体とを組み合わせて白色や電球色、橙色等に発光する発光装置が種々開発されている。これらの白色等に発光する発光装置は、光の混色の原理によって得られる。白色光を放出する方式としては、紫外線を発光する発光素子と、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のそれぞれに発光する3種の蛍光体とを用いる方式と、青色を発光する発光素子及び黄色等を発光する蛍光体を用いる方式とがよく知られている。青色を発光する発光素子と黄色等を発光する蛍光体とを用いる方式の発光装置は、蛍光ランプ等の照明、車載照明、ディスプレイ、液晶用バックライト等の幅広い分野で求められている。このうち、ディスプレイ用途に用いる蛍光体としては、色度座標上の広範囲の色を再現するために、発光効率と共に色純度が良いことも求められている。特にディスプレイ用途に用いる蛍光体は、カラーフィルターとの組合せの相性が求められ、発光ピークの半値幅の狭い蛍光体が求められている。
【0003】
例えば、青色域に励起帯を有し、発光ピークの半値幅の狭い赤色発光蛍光体として、KAlF:Mn4+、KAlF:Mn4+、KGaF:Mn4+、ZnAlF:Mn4+、KIn:Mn4+、KSiF:Mn4+、KTiF:Mn4+、KZrF:Mn4+、Ba0.65Zr0.352.70:Mn4+、BaTiF:Mn4+、KSnF:Mn4+、NaTiF:Mn4+、NaZrF:Mn4+、KRbTiF:Mn4+、KSi0.5Ge0.5:Mn4+等の組成を有するフッ化物蛍光体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、これらの母体結晶であるフッ化物について、各種水溶液への溶解度など学術的な研究も行われている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−528429号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Crystal Research and Technology, Vol.43, No.1, 74-82(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ディスプレイ用途に好適とされる、発光ピークの半値幅が狭い赤色発光のMn4+付活のフッ化物蛍光体の実用化が望まれているが、従来技術ではその耐久性に改善の余地があり、照明用途など過酷な環境での使用には不充分であった。
以上のことから、本発明は、従来の問題を解決すべく、耐久性に優れる赤色発光の蛍光体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りであり、本発明は以下の態様を包含する。
本発明の第一の態様は、下記一般式(I)で表されるフッ化物と、カリウムイオン及び硝酸イオンの少なくとも一方を含む処理液とを含む反応混合物中で、フッ化物をカリウムイオン及び硝酸イオンの少なくとも一方と接触させる工程を含むフッ化物蛍光体の製造方法である。
[M1−aMn4+] (I)
式中、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を表し、aは0<a<0.2を満たす。
【0008】
本発明の第二の態様は、下記一般式(I)で表されるフッ化物と、下記一般式(II)で表される複塩とを含むフッ化物蛍光体である。
[M1−aMn4+] (I)
MF・KNO (II)
式中、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を表し、aは0<a<0.2を満たす。
本発明の第三の態様は、フッ化物蛍光体と、380nm〜485nmの波長範囲の光を発する光源と、を備える発光装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐久性に優れる赤色発光の蛍光体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る発光装置の一例を示す概略断面図である。
図2】本実施形態に係るフッ化物蛍光体のSEM画像の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係るフッ化物蛍光体のSEM画像の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係るフッ化物蛍光体のSEM画像の一例を示す図である。
図5】比較例に係るフッ化物蛍光体のSEM画像の一例を示す図である。
図6】本実施形態に係るフッ化物蛍光体の耐久性評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態に係るフッ化物蛍光体、その製造方法及び発光装置について、実施の形態及び実施例を用いて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための、フッ化物蛍光体、その製造方法及び発光装置を例示するものであって、本発明は、フッ化物蛍光体、その製造方法及び発光装置を以下のものに特定するものではない。
なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。具体的には、380nm〜455nmが青紫色、455nm〜485nmが青色、485nm〜495nmが青緑色、495nm〜548nmが緑色、548nm〜573nmが黄緑色、573nm〜584nmが黄色、584nm〜610nmが黄赤色、610nm〜780nmが赤色である。本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0012】
<フッ化物蛍光体の製造方法>
本実施形態のフッ化物蛍光体の製造方法における第一の態様は、下記一般式(I)で表されるフッ化物と、カリウムイオン及び硝酸イオンの少なくとも一方を含む処理液とを含む反応混合物中で、フッ化物をカリウムイオン及び硝酸イオンの少なくとも一方と接触させる工程(以下、「第一の工程」ともいう)を含むフッ化物蛍光体の製造方法である。
[M1−aMn4+] (I)
式中、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を表し、aは0<a<0.2を満たす。
【0013】
一般式(I)で表されるフッ化物にカリウムイオン及び硝酸イオンの少なくとも一方を接触させることで、耐久性に優れるフッ化物蛍光体が得られる。これは例えば、フッ化物の表面の少なくとも一部の領域に、下記一般式(II)で表される複塩が形成されるためと考えることができる。式中、Mは一般式(I)におけるMと同義である。
MF・KNO (II)
【0014】
一般式(II)で表される複塩が形成されることでフッ化物蛍光体の耐久性が向上する理由は明確ではないが、例えば、一般式(I)で表されるフッ化物の表面領域における結晶構造中にカリウムイオン及び硝酸イオンが入り込むことで、原子の配列が整い、結果的に強い結晶構造が形成されるためと考えることができる。
【0015】
一般式(II)で表される複塩については、例えば、Crystal Research and Technology, Vol.43, No.1, 74-82(2008)に、一般式(II)におけるMがSiである場合の複塩について記載されている。すなわち、KSiFと硝酸カリウムとを反応させることで、KSiF・KNOの化学式で表わされる複塩が生成することが明らかにされている。更にこの複塩は、KSiFの結晶構造中にカリウムイオン及び硝酸イオンが入り込む結晶構造となっていることが記載されている。
したがって、本実施形態における一般式(II)で表される複塩は、一般式(I)で表されるフッ化物に含まれるKMFで表される塩と、カリウムイオン及び硝酸イオンの少なくとも一方とを接触させることで形成され、例えば、KMF又はKMnFで表される塩の結晶構造中にカリウムイオン及び硝酸イオンが入り込んだ結晶構造をとっていると考えられる。
【0016】
本実施形態の製造方法では、カリウムイオン及び硝酸イオンの少なくとも一方を含む処理液を用いることで、フッ化物に含まれる余剰なマンガンイオンを取り除く効果もある。余剰なマンガンイオンは発光に寄与しないだけでなく、4価のマンガンイオンの一部が2価のマンガンイオンに還元されることで耐久性を低下させる原因となりうる。余剰なマンガンイオンを除く際に処理液がカリウムイオン及び硝酸イオンの少なくとも一方を含むことで、カリウムなどのフッ化物の母体に含まれるイオンの溶け出しを防ぐことができる。例えば、処理液がカリウムイオンを含む場合、処理液中のカリウムイオンの濃度を高くして平衡状態に近づけることで、フッ化物からのカリウムイオン等の溶け出しをより効果的に防ぐことができる。また、処理液中に硝酸イオンを含むことで、表面に複塩が形成され、フッ化物の溶け出しを防ぐことができる。
【0017】
更にフッ化物を処理液と接触させる工程において、フッ化物に含まれる比較的粒子径の小さい粒子が処理液と共に除去されるために、副次的に分布幅の狭い単一ピークの粒度分布に変化する傾向がある。これにより、得られるフッ化物蛍光体の耐久性が、より向上すると考えられる。
【0018】
本実施形態の製造方法で得られるフッ化物蛍光体は耐久性に優れる。フッ化物蛍光体の耐久性は、例えば、レーザー光を用いる加速試験により評価することができる。フッ化物蛍光体の耐久性は、発光装置に実装してその寿命を確認する方法によっても評価できるが、その場合、評価に千時間から数万時間を要することになる。
【0019】
レーザー光によるフッ化物蛍光体の耐久性評価試験は、例えば以下の手順にて実施することができる。
波長450nmの光を発生する半導体レーザーを準備し、光出力を安定させるために温度調整を行う。粉体輝度測定用のセルにフッ化物蛍光体約0.1gをセットする。半導体レーザーから出力した光をセル中のフッ化物蛍光体に照射する。このとき、光密度が3.5W/cmになるように半導体レーザーへの印加電流を調整する。レーザー光の照射されている部分からの光を光電子増倍管に取り込むことで粉体輝度の変化を測定する。このとき、粉体輝度に対するレーザー光の影響を除くため、光学フィルターを用いて蛍光体から反射されるレーザー光を除くことが好ましい。
【0020】
フッ化物
フッ化物蛍光体の製造方法に用いる一般式(I)で表されるフッ化物は、それ自体が蛍光体として機能する。本実施形態の製造方法は、一般式(I)で表されるフッ化物の蛍光体としての機能を損なうことなく、得られるフッ化物蛍光体の耐久性を向上させることができる。
【0021】
一般式(I)で表されるフッ化物(以下、単に「フッ化物」ともいう)の粒径及び粒度分布は特に制限されないが、発光強度と耐久性の観点から、単一ピークの粒度分布を示すことが好ましく、分布幅の狭い単一ピークの粒度分布であることがより好ましい。また、フッ化物の表面積や嵩密度は特に制限されない。
【0022】
フッ化物は、Mn4+で付活された蛍光体であり、可視光の短波長領域の光を吸収して赤色に発光可能である。可視光の短波長領域の光である励起光は、主に青色領域の光であることが好ましい。励起光は、具体的には、強度スペクトルの主ピーク波長が380nm〜500nmの範囲に存在することが好ましく、380nm〜485nmの範囲に存在することがより好ましく、400nm〜485nmの範囲に存在することが更に好ましく、440nm〜480nmの範囲に存在することが特に好ましい。
【0023】
またフッ化物の発光波長は、励起光よりも長波長であって、赤色であれば特に制限されない。フッ化物の発光スペクトルは、ピーク波長が610nm〜650nmの範囲に存在することが好ましい。また発光スペクトルの半値幅は、小さいことが好ましく、具体的には10nm以下であることが好ましい。
【0024】
一般式(I)におけるMは、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種であり、Mは、発光特性の観点から、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びスズ(Sn)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ケイ素(Si)、又はケイ素(Si)及びゲルマニウム(Ge)を含むことがより好ましく、ケイ素(Si)、又はケイ素(Si)及びゲルマニウム(Ge)であることが更に好ましい。
Mがケイ素(Si)、又はケイ素(Si)及びゲルマニウム(Ge)を含む場合、Si及びGeの少なくとも一方の一部が、Ti、Zr及びHfを含む第4族元素、並びにC及びSnを含む第14族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
【0025】
処理液
本実施形態の製造方法に用いる処理液は、カリウムイオン及び硝酸イオンの少なくとも一方を含む溶液であれば特に制限されない。処理液はカリウムイオン及び硝酸イオンの少なくとも一方に加えて溶媒を含む。溶媒としては特に制限されないが、少なくとも水を含むことが好ましい。
処理液は水以外の溶媒を更に含んでいてもよい。水以外の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール溶剤、アセトン、ジイソプロピルエーテル等のケトン溶剤、ジエチルエーテル等のエーテル溶剤等の有機溶剤を挙げることができる。処理液が水以外の有機溶剤を含む場合、その含有量は本実施形態の効果を損なわない限り特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。
【0026】
処理液に含まれるカリウムイオンは、カリウム又はカリウムを含む化合物を溶媒に溶解することで処理液に導入することができる。カリウムを含む化合物は、溶媒に溶解してカリウムイオンを放出可能であれば特に制限されない。カリウムを含む化合物として具体的には、AuBrKH、C1012MgN10、C1013BKNO、C1013、C1014、C101410K、C101413、C1014PK、C1017KO、C1019BFKN、C10KOS、C10BFK、C10NO、C10KN、C10KNO、C10KOS、C10SK、C10KNO、C1111BFKO、C1112BFKO、C1112BFNOK、C1112KNOS、C1113BBrKO、C1113BClKO、C1113BFKO、C1114BFNOK、C1114BKO、C1115BKNO、C1118KNO10、C1118NOK、C1119K、C1120KNO10、C1117KO、C11KN、C1212NOK、C1214BKO、C121435、C1216BKO、C1223KO、C12KO、C12KO、C1315BKNO、C1316BKO、C1318BKO、C1317KNOS、C1411KO、C1415BKNO、C1416KNO、C1418NOK、C1420BKO、C1513BFK、C1516BKO、C1522BKO、C1522BNK、C1612NOSK、C1613KNS、C1616、C1617KNS、C1617KNS、C1622、C1631KO、C1711KNNaO、C1718BKO、C1813NaPS、C1816BNK、C1833KO、C201311、C202030Zr、C2022BKO、C212716SPK、C2213BrKO、C222010、C2222ClKNO、C2230K、C231218、C231412、C2416BClK、C251612、C2725BNK、C2836、C2837NO、CKO、CKNO、CFKO、CBFK、CKO、CSK、CKNO、CBFKO、CKO、C、C、C3028BNK、C3031BNK、C3840KN10S、CHKO、CK、CKOP、CKNS、CP、CHFKO、C4067KO11、C426016、CKO、CKOS、CKOS、C12KNaO10、CBBrFSK、CKN、CKO、CBFSK、C、CKNaO、CKNOS、CKO、CKO、CNOK、CKO、C、CBClFNK、CBFOSK、CBFNK、CKO、CKO、CKNO、C1012、C11P、C11KO、C12BFKN、C18KNSi、CClKOS、CBFOK、CNOSK、CFKOS、CIKOS、CCOOK、C、CKOS、CKOS、CBFNOK、CKO、CKO、C2110、C18、CKOS、C15、CK、CK、CBFK、CBFOK、CKOS、CIKOS、CKNO、CKOS、C17KOS、C18KNO、C1015Sb、C15KO、C16、CBrClKNOS、C12Sb、CKO、CKNO

S、CKO、CKO、CKNO、CKNO、CKNOS、CSO17K、C10BNK、C12PK、C13PK、CKO、CK、CKN、CFSOK、CHK、CHCOSK、CHKO、CHKOS、CHKO、CKN、CrH24KO20、HKS、KAsF、KAu(CN)、K1016、K1212、K、KCO、KCr、KCrO、KCu(CN)、KCu(CN)、KCu(NO、KCuBr、KCuCl、KCuI、KFe(CN)、KFe(NO、KFeBr、KFeCl、KFeI、KPtO、KHg(CN)、KHg(NO、KHgBr、KHgCl、KHgI、KHPO、KIrCl、KIrF、KIrO、KMnF、KMnO、KNbF、KNi(CN)、KNi(NO、KNiBr、KNiCl、KNiCl、KNiF、KNiI、KNiO、KNO、KOsCl、KOsF、KOsO、KOsO、KPd(CN)、KPd(NO、KPdBr、KPdCl、KPdCl、KPdF、KPdI、KPdO、KPt(CN)、KPt(CN)、KPt(NO、KPtBr、KPtBr、KPtCl、KPtCl、KPtF、KPtI、KPtI、KPtO、KReCl、KReF、KReO、KRu(CN)、KRu(NO、KRuBr、KRuCl、KRuCl、KRuCl(NO)、KRuCl、KRuCl、KRuF、KRuI、KRuO、KS、K、K、K、K、KSbF、KSeCl、KSeF、KSeO、KSeO、KSiCl、KSiF、KSiO、KSnCl、KSnF、KSnO、KSO、KSO、KTaF、KTeCl、KTeF、KTeO、KTeO、KTi(CO、KTiCl、KTiF、KTiO、KVF、KWO、KZrF、KZrO、KAlCl、KAuCl、KBO、KCo(CN)、KCoCl、KFe(C、KFe(CN)、KFeCl、KIrCl、KPO、KPtCl、KRh(NO、KRhCl、KRuCl、KVO、KCu(CN)、KFe(CN)、KHg(CN)、KNi(CN)、K、KPd(CN)、KPt(CN)、KRu(CN)、KTiO、K10、KTaO1、KAl(SO、KAlCl(NH)、KAlCl、KAsF、KAu(CN)、KAu(CN)、KAu(SO、KAuCl(NH)、KAuCl、KBF、KBr、KBrO、KC(CN)、KCl、KClO、KClO、KCN、KCo(SO、KCoCl(NH)、KCoCl、KCr(SO、KCu(CN)、KF、KFe(SO、KFeCl(NH)、KFeCl、KHAsO、KHPO、KH(C、KHCO、KHF、KHSO、KI、KIO、KIO、KIr(SO、KIrCl(NH)、KIrCl、KIrCl(NO)、KMnO、KNaCO、KNbO、KNO、KNO、KO、KOCN、KOH、KOSONH、KPF、KPO、KPt(SO、KPtCl(C)、KPtCl(NH)、KPtCl、KReO、KRh(SO、KRhCl(NH)、KRhCl、KRu(SO、KRuCl(NH)、KRuCl、KRuCl、KRuO、KSCOC、KSb(OH)、KSCN、KSeCN、KTaO等を挙げることができる。また、実質的にこれらの組成を含む化合物であれば使用に問題は無く、例えば水和物等を使用することができる。上記の化合物には水等の溶媒に溶けにくい化合物も含まれている。このため、上記以外の化合物を加えてpHを調整することで処理液を調製することができる。また、溶媒としてアルコール等の有機溶剤を含む水や有機溶剤を使用することもできる。
【0027】
処理液がカリウムイオンを含む場合、処理液に含まれるカリウムイオンの含有量は本実施形態の効果を損なわない限り特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。カリウムイオンの含有量は、例えば、0.01モル/L以上とすることができ、0.1〜3.8モル/Lであることが好ましい。
カリウムイオンの含有量を0.01モル/L以上とすることで、フッ化物からのカリウムイオン、マンガンイオン等の溶出をより効果的に抑制することができる。カリウムイオンの含有量を3.8モル/L以下とすることで、過剰な反応を抑制することができる。
【0028】
処理液に含まれる硝酸イオンは、硝酸イオンを放出可能な化合物を溶媒に溶解することで処理液に導入することができる。硝酸イオンを放出可能な化合物として具体的には、Ag(NO)、Ag(NO)、Al(NO、Ba(NO、Bi(NO、Bi(OH)(NO)、Bi22、C1017、C1210INO、C1217S、C1224、C1415、C1636、C114Cl、C1815Cl、C1816Cl、NO1826NO3、1918ClS、C2123、C2421ClS、C2822、CNO、C3630CuNO、CNO、C4940l2CuN、C12、C16Pt、CNO、C11NO、C12、C、C、CNO、C20、Ca(NO、Cd(NO、Ce(NH)(NO、Ce(NH(NO、Ce(NH(NO、Ce(NO、CH(HNO)、CH(NH)NO、Co(NH(NO、Co(NO、Cr(NO、Cs(NO)、Cs(NO)、Cu(NO、Dy(NO、Er(NO、Eu(NO、Fe(NO、Ga(NO、Gd(NO、H(NO)、Hg(NO、Hg(NO、Ho(NO、In(NO、K(NO)、K(NO)、La(NO、Li(NO)、Li(NO)、Lu(NO、Mg(NO、Mn(NO、Na(NO)、Na(NO)、NaCo(NO、Nd(NO、NH(NO)、Ni(NO、Pb(NO、Pd(NH(NO、Pd(NH(NO、Pd(NO、Pr(NO、Pt(NH(NO、Pt(NH(NO、Rb(NO)、Rb(NO)、Rh(NO、Ru(NO)(NO、Sc(NO、Sm(NO、Sr(NO、Tb(NO、Tl(NO)、Tl(NO)、Tl(NO、Tm(NO、Y(NO、Yb(NO、Zn(NO、ZrO(NO等を挙げることができる。また、実質的にこれらの組成を含む化合物であれば使用に問題は無く、例えば水和物等を使用することができる。上記の化合物には水等の溶媒に溶けにくい化合物も含まれている。このため、上記以外の化合物を加えてpHを調整することで処理液を調製することができる。また、溶媒としてアルコール等の有機溶剤を含む水や有機溶剤を使用することもできる。
【0029】
処理液が硝酸イオンを含む場合、処理液に含まれる硝酸イオンの含有量は本実施形態の効果を損なわない限り特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。硝酸イオンの含有量は、例えば、0.01モル/L以上とすることができ、0.1〜3.8モル/Lであることが好ましい。硝酸イオンの含有量を3.8モル/L以下とすることで、過剰な反応を抑制することができる。
【0030】
処理液は、溶媒、カリウムイオン及び硝酸イオン以外のその他の成分を更に含んでいてもよい。その他の成分の種類及び含有量は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。その他の成分は、イオン性及び非イオン性のいずれであってもよい。
その他の成分としては、例えば、Li、Na、Rb、Cs、NH、Ge、Si、Sn、Ti、Zr、Mn、F、Cl、Br、I、B、Al、Ga、In等を含む化合物を挙げることができる。
処理液がその他の成分を含む場合、その他の成分を1種単独でも、2種以上を組合せて含んでいてもよい。
【0031】
処理液のpHは特に制限されず、処理液の成分等に応じて適宜選択することができる。例えば処理液のpHは、25℃において0〜14とすることができ、1〜12であることが好ましい。
【0032】
処理液は、カリウムイオン及び硝酸イオンの少なくとも一方を含むが、カリウムイオン及び硝酸イオンの両方を含むことが好ましい。カリウムイオン及び硝酸イオンを含むことで、より効率的に複塩を形成することが可能になる。処理液がカリウムイオン及び硝酸イオンの両方を含む場合、処理液のpHは、25℃において1〜12であることが好ましい。
【0033】
また処理液は、カリウムイオンを含みアルカリ性であることもまた好ましい。処理液がカリウムイオンを含みアルカリ性である場合、処理液のpHは25℃において7よりも大きければよいが、8以上であることが好ましく、8〜14であることがより好ましい。
【0034】
また処理液は、硝酸イオンを含み酸性であることもまた好ましい。処理液が硝酸イオンを含み酸性である場合、処理液のpHは25℃において7よりも小さければよいが、6以下であることが好ましく、0〜6であることがより好ましい。
【0035】
フッ化物蛍光体の製造方法では、フッ化物と処理液とを含む反応混合物中で、フッ化物と、カリウムイオン及び硝酸イオンの少なくとも一方とを接触させるが、フッ化物と、カリウムイオン及び硝酸イオンの両方とを接触させることが好ましい。
反応混合物に含まれるフッ化物と処理液の質量比は特に制限されず、処理液の構成等に応じて適宜選択することができる。反応混合物に含まれるフッ化物の処理液に対する質量比(フッ化物/処理液)は、例えば、0.1〜50重量%とすることができる。
【0036】
反応混合物中で、フッ化物と処理液に含まれるカリウムイオン及び硝酸イオンとが接触することで、例えば、フッ化物の表面に一般式(II)で表される複塩が形成される。
フッ化物とカリウムイオン及び硝酸イオンとの接触時間は、本実施形態の効果が得られる限り特に制限されない。接触時間は例えば、1時間以上とすることができ、1〜500時間であることが好ましい。
フッ化物とカリウムイオン及び硝酸イオンとの接触温度は、本実施形態の効果が得られる限り特に制限されない。接触温度は例えば、0〜80℃とすることができる。
反応混合物中で、フッ化物とカリウムイオン及び硝酸イオンとの接触は、大気下で行ってもよく、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
【0037】
第一の工程では反応混合物を攪拌してもよい。反応混合物を攪拌する方法は、処理液に溶解している成分の濃度勾配を緩和可能な方法であれば特に制限されず、通常用いられる攪拌方法から適宜選択することができる。攪拌方法としては例えば、撹拌子を一定速度で回転させる方法、処理液をポンプで加圧して流れを発生させることで反応混合物を混合する方法、回転容器型の混合機を使用する方法等を挙げることができる。中でも攪拌方法は、反応混合物に与える剪断力が小さい方法であることが好ましい。剪断力が小さい攪拌方法を用いることで耐久性により優れるフッ化物蛍光体を得ることができる。
【0038】
反応混合物を攪拌する場合、攪拌は連続して行ってもよく、断続的に行ってもよい。反応混合物の攪拌を断続的に行うことで、攪拌の剪断力による影響を抑制して、より耐久性に優れるフッ化物蛍光体が得られる傾向がある。攪拌を断続的に行う場合、その間隔は特に制限されず、一定の間隔で攪拌を行ってもよく、不規則な間隔で攪拌を行ってもよい。攪拌を一定の間隔で断続的に行う場合、例えば1分〜30分の間隔で行うことができる。
【0039】
第一の工程では、反応混合物から処理液の少なくとも一部を除去することができる。処理液の少なくとも一部が除去される反応混合物には、フッ化物と接触していない処理液(以下、「未使用処理液」ともいう)を補充してもよい。処理液の除去及び補充(すなわち、処理液の交換)を行う場合、処理液の反応混合物からの除去後に未使用処理液の補充を行う方法(以下、「逐次交換法」ともいう)で行ってもよく、処理液の反応混合物からの除去と未使用処理液の補充とを時間的に重複させて行う方法(以下、「連続交換法」ともいう)で行ってもよい。
【0040】
処理液の除去及び補充を逐次交換法で行う場合、処理液の除去量は特に制限されない。処理液の除去量は例えば、反応混合物に含まれる処理液の10重量%以上とすることができ、50重量%以上であることが好ましい。
処理液の少なくとも一部が除去された反応混合物への未使用処理液の補充量は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。未使用処理液の補充量は処理液の除去量と実質的に同じ量としてもよく、異なる量であってもよい。実質的に同じ量とは、除去量に対する補充量の重量比が、0.9〜1.1であることを意味する。
【0041】
処理液の除去方法は、反応混合物から実質的に処理液のみを除去可能であれば特に制限されない。処理液の除去方法としては例えば、反応混合物の上清をデカント、吸引等の手段で除去する方法、濾過処理により反応混合物からフッ化物と処理液とを分離する方法を挙げることができる。
【0042】
処理液の除去及び補充を逐次交換法で行う場合、処理液の除去及び補充の回数は特に制限されず、1回のみであっても2回以上であってもよい。処理液の交換を2回以上行う場合、2回〜10回であることが好ましい。また、後述する除去された処理液のマンガンイオン濃度を指標として交換回数を適宜設定してもよい。
【0043】
処理液の除去及び補充を連続交換法で行う場合、単位時間当たりの処理液の除去量及び補充量等の交換条件は、目的等に応じて適宜選択することができる。例えば、後述する除去された処理液のマンガンイオン濃度を指標として交換条件を適宜設定してもよい。
【0044】
第一の工程において処理液の除去を行う場合、除去される処理液に一般式(I)で表されるフッ化物に由来するマンガンイオンが含まれることがある。除去される処理液に含まれるマンガンイオンの濃度が所定の範囲となるように、処理液の除去と必要に応じて処理液の補充とを行うことで、より耐久性に優れるフッ化物蛍光体を得ることができる。
除去される処理液のマンガンイオン濃度は例えば、1ppm(w/v)以下とすることができ、0.5ppm以下とすることが好ましく、0.3ppm以下であることがより好ましい。除去される処理液のマンガンイオン濃度が1ppm以下であると、得られるフッ化物蛍光体の耐久性がより向上する傾向がある。処理液のマンガンイオン濃度は、ICP−AESを用いて測定することができる。
【0045】
第一の工程において除去される処理液のマンガンイオン濃度を0.5ppm以下とする方法としては、反応混合物における処理液に対するフッ化物の質量比を小さくする方法、処理液の除去及び補充を行う方法等を挙げることができる。処理液の除去及び補充を行う場合、除去される処理液のマンガンイオン濃度の測定値が0.5ppm以下となるように処理液の除去及び補充の方法及び条件を適宜設定すればよい。
【0046】
フッ化物蛍光体の製造方法は、得られるフッ化物蛍光体を洗浄処理する工程を含んでいてもよい。洗浄処理は例えば、反応混合物から処理液を除去した後、水等の洗浄液を加え、次いで洗浄液を除去することで行うことができる。洗浄に用いる洗浄液の量は適宜選択すればよい。また洗浄は1回のみでも2回以上行ってもよい。
【0047】
フッ化物蛍光体の製造方法は、フッ化物を過酸化水素と接触させる工程(以下、「第二の工程」ともいう)を更に含んでいてもよい。過酸化水素との接触を行うことで、得られるフッ化物蛍光体の耐久性が、より向上する傾向がある。これは例えば以下のように考えることができる。
フッ化物蛍光体は、4価のマンガンイオンで付活されている。例えば、4価のマンガンイオンの一部が2価のマンガンイオンに還元されることで、耐久性が低下すると考えられるが、フッ化物蛍光体を過酸化水素で処理することで、マンガンイオンを4価の状態とすることができるため、耐久性がより向上すると考えることができる。
【0048】
第二の工程は、第一の工程と独立して行ってもよく、第一の工程と時間的に重複して行ってもよい。第二の工程を第一の工程と独立して行う場合、第一の工程を行った後に第二の工程を行うことが好ましい。また第二の工程を第一の工程と時間的に重複して行う場合、第一の工程を行う前から第二の工程を開始してもよく、第一の工程と同時に行ってもよく、第一の工程の開始後に第二の工程を行ってもよい。
【0049】
フッ化物蛍光体の製造方法は、第一の工程及び必要に応じて含まれる第二の工程に加えて、フッ化物蛍光体の分離処理、精製処理、乾燥処理等の後処理工程を更に含んでいてもよい。
【0050】
フッ化物蛍光体の製造方法は、一般式(I)で表されるフッ化物を準備する工程を更に含んでいてもよい。準備する工程は、一般式(I)で表されるフッ化物の製造工程を含むことができる。
一般式(I)で表されるフッ化物は、フッ化水素を含む液媒体中で、4価のマンガンイオンを含む第一の錯イオンと、カリウムイオンと、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種を含む第二の錯イオンとを接触させることで製造することができる。
【0051】
一般式(I)で表されるフッ化物の製造工程は、例えば、4価のマンガンを含む第一の錯イオン、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種並びにフッ素イオンを含む第二の錯イオン、並びにフッ化水素を少なくとも含む溶液Aと、カリウムイオン及びフッ化水素を少なくとも含む溶液Bとを混合する工程を含むことができる。
【0052】
溶液A
溶液Aは、4価のマンガンを含む第一の錯イオンと、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種並びにフッ素イオンとを含む第二の錯イオンとを含むフッ化水素酸溶液である。
【0053】
4価のマンガンを含む第一の錯イオンを形成するマンガン源は、マンガンを含む化合物であれば特に制限はされない。第一の溶液を構成可能なマンガン源として、具体的には、KMnF、KMnO、KMnCl等を挙げることができる。中でも、付活することのできる酸化数(4価)を維持しながら、MnF錯イオンとしてフッ化水素酸中に安定して存在することができること等から、KMnFが好ましい。なお、マンガン源のうち、カリウムを含むものは、第二溶液に含まれるカリウム源を兼ねることができる。第一の錯イオンを形成するマンガン源は、1種を単独で用いて2種以上を併用してもよい。
【0054】
溶液Aにおける第一の錯イオンの濃度は特に制限されない。溶液Aにおける第一の錯イオン濃度の下限値は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上である。また、第一の溶液における第一の錯イオン濃度の上限値は、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0055】
第二の錯イオンは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びスズ(Sn)からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ケイ素(Si)、又はケイ素(Si)及びゲルマニウム(Ge)を含むことがより好ましく、フッ化ケイ素錯イオンであることが更に好ましい。
例えば、第二の錯イオンがケイ素(Si)を含む場合、第二の錯イオン源は、ケイ素とフッ素とを含み、溶液への溶解性に優れる化合物であることが好ましい。第二の錯イオン源として具体的には、HSiF、NaSiF、(NHSiF、RbSiF、CsSiF等を挙げることができる。これらの中でも、水への溶解度が高く、不純物としてアルカリ金属元素を含まないことにより、HSiFが好ましい。第二の錯イオン源は、1種を単独で用いて2種以上を併用してもよい。
【0056】
溶液Aにおける第二の錯イオン濃度の下限値は、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上である。また、溶液Aにおける第二の錯イオン濃度の上限値は、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。
【0057】
溶液Aにおけるフッ化水素濃度の下限値は、通常20重量%以上、好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上である。また、第一の溶液におけるフッ化水素濃度の上限値は、通常80重量%以下、好ましくは75重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。
【0058】
溶液B
溶液Bは、カリウムイオンとフッ化水素とを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。溶液Bは、例えば、カリウムイオンを含むフッ化水素酸の水溶液として得られる。溶液Bを構成可能なカリウムイオンを含むカリウム源として、具体的には、KF、KHF、KOH、KCl、KBr、KI、酢酸カリウム、KCO等の水溶性カリウム塩を挙げることができる。中でも溶液中のフッ化水素濃度を下げることなく溶解することができ、また、溶解熱が小さく安全性が高いことから、KHFが好ましい。溶液Bを構成するカリウム源は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0059】
溶液Bにおけるフッ化水素濃度の下限値は、通常20重量%以上、好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上である。また、溶液Bにおけるフッ化水素濃度の上限値は、通常80重量%以下、好ましくは75重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。
また、溶液Bにおけるカリウムイオン濃度の下限値は、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上である。また、溶液Bにおけるカリウムイオン濃度の上限値は、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。
【0060】
溶液A及び溶液Bの混合方法としては特に制限はなく、溶液Bを攪拌しながら溶液A液を添加して混合してもよく、溶液Aを攪拌しながら溶液Bを添加して混合してもよい。また、溶液A及び溶液Bをそれぞれ容器に投入して攪拌混合してもよい。
溶液A及び溶液Bを混合することにより、所定の割合で第一の錯イオンと、カリウムイオンと、第二の錯イオンとが反応して目的のフッ化物の結晶が析出する。析出した結晶は濾過等により固液分離して回収することができる。またエタノール、イソプロピルアルコール、水、アセトン等の溶媒で洗浄してもよい。更に乾燥処理を行ってもよく、通常50℃以上、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、また、通常110℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下で乾燥する。乾燥時間としては、フッ化物蛍光体に付着した水分を蒸発することができれば、特に制限はなく、例えば、10時間程度である。
なお、溶液A及び溶液Bの混合に際しては、溶液A及び溶液Bの仕込み組成と得られるフッ化物の組成とのずれを考慮して、生成物としてのフッ化物の組成が目的の組成となるように、溶液A及び溶液Bの混合割合を適宜調整することが好ましい。
【0061】
また、一般式(I)で表されるフッ化物の製造工程は、4価のマンガンを含む第一の錯イオン及びフッ化水素を少なくとも含む第一の溶液と、カリウムイオン及びフッ化水素を少なくとも含む第二の溶液と、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種並びにフッ素イオンを含む第二の錯イオンを少なくとも含む第三の溶液とを混合する工程を含む製造工程で、製造することもできる。
第一の溶液と、第二の溶液と、第三の溶液とを混合することで、所望の組成を有し、所望の重量メジアン径を有するフッ化物を、優れた生産性で簡便に製造することができる。
【0062】
第一の溶液
第一の溶液は、4価のマンガンを含む第一の錯イオンと、フッ化水素とを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。第一の溶液は、例えば、4価のマンガン源を含むフッ化水素酸の水溶液として得られる。マンガン源は、マンガンを含む化合物であれば特に制限はされない。第一の溶液を構成可能なマンガン源として、具体的には、KMnF、KMnO、KMnCl等を挙げることができる。中でも、付活することのできる酸化数(4価)を維持しながら、MnF錯イオンとしてフッ化水素酸中に安定して存在することができること等から、KMnFが好ましい。なお、マンガン源のうち、カリウムを含むものは、第二の溶液に含まれるカリウム源を兼ねることができる。第一の溶液を構成するマンガン源は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0063】
第一の溶液におけるフッ化水素濃度の下限値は、通常20重量%以上、好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上である。また、第一の溶液におけるフッ化水素濃度の上限値は、通常80重量%以下、好ましくは75重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。フッ化水素濃度が30重量%以上であると、第一の溶液を構成するマンガン源(例えば、KMnF)の加水分解に対する安定性が向上し、第一の溶液における4価のマンガン濃度の変動が抑制される。これにより得られるフッ化物蛍光体に含まれるマンガン付活量を容易に制御することができ、フッ化物蛍光体における発光効率のバラつき(変動)を抑制することができる傾向がある。またフッ化水素濃度が70重量%以下であると、第一の溶液の沸点の低下が抑制され、フッ化水素ガスの発生が抑制される。これにより、第一の溶液におけるフッ化水素濃度を容易に制御することができ、得られるフッ化物蛍光体の粒子径のバラつき(変動)を効果的に抑制することができる。
【0064】
第一の溶液における第一の錯イオンの濃度は特に制限されない。第一の溶液における第一の錯イオン濃度の下限値は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上である。また、第一の溶液における第一の錯イオン濃度の上限値は、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0065】
第二の溶液
第二の溶液は、カリウムイオンとフッ化水素とを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。第二の溶液は、例えば、カリウムイオンを含むフッ化水素酸の水溶液として得られる。第二の溶液を構成可能なカリウムイオンを含むカリウム源として、具体的には、KF、KHF、KOH、KCl、KBr、KI、酢酸カリウム、KCO等の水溶性カリウム塩を挙げることができる。中でも溶液中のフッ化水素濃度を下げることなく溶解することができ、また、溶解熱が小さく安全性が高いことから、KHFが好ましい。第二の溶液を構成するカリウム源は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0066】
第二の溶液におけるフッ化水素濃度の下限値は、通常20重量%以上、好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上である。また、第二の溶液におけるフッ化水素濃度の上限値は、通常80重量%以下、好ましくは75重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。
また、第二の溶液におけるカリウムイオン濃度の下限値は、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上である。また、第二の溶液におけるカリウムイオン濃度の上限値は、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。
【0067】
第三の溶液
第三の溶液は、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種と、フッ素イオンとを含む第二の錯イオンを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。第三の溶液は、例えば、第二の錯イオンを含む水溶液として得られる。
第二の錯イオンは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びスズ(Sn)からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ケイ素(Si)、又はケイ素(Si)及びゲルマニウム(Ge)を含むことがより好ましく、フッ化ケイ素錯イオンであることが更に好ましい。
【0068】
例えば、第二の錯イオンがケイ素(Si)を含む場合、第二の錯イオン源は、ケイ素とフッ素とを含み、溶液への溶解性に優れる化合物であることが好ましい。第二の錯イオン源として具体的には、HSiF、NaSiF、(NHSiF、RbSiF、CsSiF等を挙げることができる。これらの中でも、水への溶解度が高く、不純物としてアルカリ金属元素を含まないことにより、HSiFが好ましい。第三の溶液を構成する第二の錯イオン源は、1種を単独で用いて2種以上を併用してもよい。
【0069】
第三の溶液における第二の錯イオン濃度の下限値は、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上である。また、第三の溶液における第二の錯イオン濃度の上限値は、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。
【0070】
第一の溶液、第二溶液及び第三の溶液の混合方法としては特に制限はなく、第一の溶液を攪拌しながら第二の溶液及び第三の溶液を添加して混合してもよく、第三の溶液を攪拌しながら第一溶液及び第二の溶液を添加して混合してもよい。また、第一の溶液、第二溶液及び第三の溶液をそれぞれ容器に投入して攪拌混合してもよい。
【0071】
第一の溶液、第二溶液及び第三の溶液を混合することにより、所定の割合で第一の錯イオンと、カリウムイオンと、第二の錯イオンとが反応して目的の一般式(I)で表されるフッ化物の結晶が析出する。析出した結晶は濾過等により固液分離して回収することができる。またエタノール、イソプロピルアルコール、水、アセトン等の溶媒で洗浄してもよい。更に乾燥処理を行ってもよく、通常50℃以上、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、また、通常110℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下で乾燥する。乾燥時間としては、フッ化物に付着した水分を蒸発することができれば、特に制限はなく、例えば、10時間程度である。
【0072】
なお、第一の溶液、第二溶液及び第三の溶液の混合に際しては、第一〜第三の溶液の仕込み組成と得られるフッ化物の組成とのずれを考慮して、生成物としてのフッ化物の組成が目的の組成となるように、第一の溶液、第二の溶液及び第三の溶液の混合割合を適宜調整することが好ましい。
【0073】
<フッ化物蛍光体>
本実施形態のフッ化物蛍光体は、下記一般式(I)で表されるフッ化物と、下記一般式(II)で表される複塩とを含むフッ化物蛍光体である。
[M1−aMn4+] (I)
MF・KNO (II)
式中、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を表し、aは0<a<0.2を満たす。
【0074】
フッ化物蛍光体は既述のフッ化物蛍光体の製造方法で得られるものであることが好ましい。フッ化物蛍光体は、一般式(I)で表されるフッ化物を母体とし、一般式(II)で表される複塩を含むことで、耐久性に優れる。フッ化物蛍光体における複塩は、フッ化物蛍光体の表面領域に存在していることが好ましく、フッ化物蛍光体の表面から深さ方向1μmまでの領域の少なくとも一部に存在していることがより好ましい。
【0075】
<発光装置>
本実施形態の発光装置は、前記フッ化物蛍光体と、380nm〜485nmの波長範囲の光を発する光源とを含む。発光装置は、必要に応じて、その他の構成部材を更に含んでいてもよい。発光装置が前記フッ化物蛍光体を含むことで、耐久性に優れ、優れた長期信頼性を達成することができる。すなわち、前記フッ化物蛍光体を含む発光装置は、長期間にわたって、出力の低下と色度変化が抑制され、照明用途等の過酷な環境での使用に好適に適用することができる。
【0076】
(光源)
光源(以下、「励起光源」ともいう)としては、可視光の短波長領域である380nm〜485nmの波長範囲の光を発するものを使用する。光源として好ましくは420nm〜485nmの波長範囲、より好ましくは440nm〜480nmの波長範囲に発光ピーク波長(極大発光波長)を有するものである。これにより、フッ化物蛍光体を効率よく励起し、可視光を有効活用することができる。また当該波長範囲の励起光源を用いることにより、発光強度が高い発光装置を提供することができる。
【0077】
励起光源には半導体発光素子(以下単に「発光素子」ともいう)を用いることが好ましい。励起光源に半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。
発光素子は、可視光の短波長領域の光を発するものを使用することができる。例えば、青色、緑色の発光素子としては、窒化物系半導体(InAlGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いたものを用いることができる。
【0078】
(フッ化物蛍光体)
発光装置に含まれるフッ化物蛍光体の詳細については既述の通りである。フッ化物蛍光体は、例えば、励起光源を覆う封止樹脂に含有されることで発光装置を構成することができる。励起光源がフッ化物蛍光体を含有する封止樹脂で覆われた発光装置では、励起光源から出射された光の一部がフッ化物蛍光体に吸収されて、赤色光として放射される。380nm〜485nmの波長範囲の光を発する励起光源を用いることで、放射される光をより有効に利用することができる。よって発光装置から出射される光の損失を少なくすることができ、高効率の発光装置を提供することができる。
発光装置に含まれるフッ化物蛍光体の含有量は特に制限されず、励起光源等に応じて適宜選択することができる。
【0079】
(他の蛍光体)
発光装置は、前記フッ化物蛍光体に加えて、他の蛍光体を更に含むことが好ましい。他の蛍光体は、光源からの光を吸収し、異なる波長の光に波長変換するものであればよい。他の蛍光体は、例えば、前記フッ化物蛍光体と同様に封止樹脂に含有させて発光装置を構成することができる。
【0080】
他の蛍光体としては例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に付活される窒化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、サイアロン系蛍光体;Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に付活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類硫化物、アルカリ土類チオガレート、アルカリ土類窒化ケイ素、ゲルマン酸塩;Ce等のランタノイド系元素で主に付活される希土類アルミン酸塩、希土類ケイ酸塩;及びEu等のランタノイド系元素で主に付活される有機及び有機錯体等からなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0081】
他の蛍光体として具体的には例えば、(Ca,Sr,Ba)SiO:Eu、(Y,Gd)(Ga,Al)12:Ce、(Si,Al)(O,N):Eu(βサイアロン)、SrGa:Eu、(Ca,Sr)Si:Eu、CaAlSiN:Eu、(Ca,Sr)AlSiN:Eu、LuAl12:Ce、(Ca,Sr,Ba,Zn)MgSi16(F,Cl,Br,I):Eu等が挙げられる。
他の蛍光体を含むことにより、種々の色調の発光装置を提供することができる。
発光装置が他の蛍光体の更に含む場合、その含有量は特に制限されず、所望の発光特性が得られるように適宜調整すればよい。
【0082】
発光装置が他の蛍光体を更に含む場合、緑色蛍光体を含むことが好ましく、380nm〜485nmの波長範囲の光を吸収し。495nm〜573nmの波長範囲の光を発する緑色蛍光体を含むことがより好ましい。発光装置が緑色蛍光体を含むことで、照明装置、液晶表示装置等に、より好適に適用することができる。
【0083】
発光装置が緑色蛍光体を含む場合、緑色蛍光体の発光スペクトルの全半値幅は、発光装置を照明装置や画像表示装置に用いた際に照明対象や画像がより深い緑色を示す観点から、100nm以下であることが好ましく、70nm以下であることがより好ましい。
【0084】
このような緑色蛍光体としては、組成式がM11MgSi1611:Eu(M11=Ca,Sr,Ba,Zn;X11=F,Cl,Br,I)で示されるEu付活クロロシリケート蛍光体、M12SiO:Eu(M12=Mg,Ca,Sr,Ba,Zn)で示されるEu付活シリケート蛍光体、Si6−zAl8−z:Eu(0<z<4.2)で示されるEu付活βサイアロン蛍光体、M13Ga:Eu(M13=Mg,Ca,Sr,Ba)で示されるEu付活チオガレート蛍光体、(Y,Lu)Al12:Ceで示される希土類アルミン酸塩蛍光体等を挙げることができる。なかでも、緑色蛍光体は、色調、色再現範囲等の観点から、Eu付活クロロシリケート蛍光体、Eu付活シリケート蛍光体、Eu付活βサイアロン蛍光体、Eu付活チオガレート蛍光体及び希土類アルミン酸塩蛍光体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、Eu付活βサイアロン蛍光体であることがより好ましい。
【0085】
発光装置の形式は特に制限されず、通常用いられる形式から適宜選択することができる。発光装置の形式としては、砲弾型、表面実装型等を挙げることができる。一般に砲弾型とは、外面を構成する樹脂の形状を砲弾型に形成したものを指す。また表面実装型とは、凹状の収納部内に光源なる発光素子及び樹脂を充填して形成されたものを示す。さらに発光装置の形式としては、平板状の実装基板上に光源となる発光素子を実装し、その発光素子を覆うように、フッ化物蛍光体を含有した封止樹脂をレンズ状等に形成した発光装置等も挙げられる。
【0086】
以下、本発明の実施形態に係る発光装置の一例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る発光装置の一例を示す概略断面図である。この発光装置は、表面実装型発光装置の一例である。
発光装置100は、可視光の短波長側(例えば380nm〜485nm)の光を発する窒化ガリウム系化合物半導体の発光素子10と、発光素子10を載置する成形体40と、を有する。成形体40は第1のリード20と第2のリード30とを有しており、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂により一体成形されている。成形体40は底面と側面を持つ凹部を形成しており、凹部の底面に発光素子10が載置されている。発光素子10は一対の正負の電極を有しており、その一対の正負の電極は第1のリード20及び第2のリード30とワイヤ60を介して電気的に接続されている。発光素子10は封止部材50により封止されている。封止部材50はエポキシ樹脂やシリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。封止部材50は発光素子10からの光を波長変換するフッ化物蛍光体70を含有している。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
(製造例1)
MnFを16.25g秤量し、それを55重量%のHF水溶液1000gに溶解した後、40重量%のHSiF水溶液450gを加えて溶液Aを調製した。KHFを195.10g秤量し、それを55重量%のHF水溶液200gに溶解させて溶液Bを調製した。
次に、室温で溶液Bを撹拌しながら、約20分かけて溶液Aを滴下した。得られた沈殿物を固液分離後、IPA(イソプロピルアルコール)洗浄を行い、70℃で10時間乾燥することでフッ化物1を作製した。
【0089】
(実施例1)
製造例1で得られたフッ化物1を用いて以下のようにして、フッ化物蛍光体1を作製した。
硝酸カリウムを2.25g秤量し、それを純水15gに溶解して硝酸カリウム水溶液を調製した。製造例1で得られたフッ化物1を5g秤量し、調製した硝酸カリウム水溶液に加えて撹拌した。その後、室温(25℃)にて3時間、静置して反応した。反応している間、15〜30分おきに薬匙にて撹拌することで、フッ化物が硝酸カリウム水溶液中で分散するようにした。次に上澄みの硝酸カリウム水溶液を除いた後、純水100gを秤量して反応済みのフッ化物に加えて撹拌した。これによって残留した硝酸カリウムを洗浄した。洗浄に用いた純水を除いた後、新たに純水15gを加えて、さらに過酸化水素水(30%)を0.5g加えた。得られた沈殿物を固液分離後、70℃で10時間乾燥することで実施例1のフッ化物蛍光体1を作製した。
【0090】
(実施例2)
製造例1で得られたフッ化物1を用いて以下のようにして、フッ化物蛍光体2を作製した。
硝酸カリウムを2.25g秤量し、それを純水15gに溶解して硝酸カリウム水溶液を調製した。製造例1で得られたフッ化物1を5g秤量し、調製した硝酸カリウム水溶液に加えて撹拌した。その後、室温(25℃)にて3時間、静置して反応した。反応している間、15〜30分おきに薬匙にて撹拌することで、フッ化物が硝酸カリウム水溶液中で分散するようにした。また、薬匙で撹拌する直前に、反応中の硝酸カリウム水溶液を同じ濃度の新しい硝酸カリウム水溶液と交換した。反応終了後に上澄みの硝酸カリウム水溶液を除いた後、純水100gを秤量して反応済みのフッ化物に加えて撹拌した。これによって残留した硝酸カリウムを洗浄した。洗浄に用いた純水を除いた後、新たに純水15gを加えて、さらに過酸化水素水(30%)を0.5g加えた。得られた沈殿物を固液分離後、70℃で10時間乾燥することでフッ化物蛍光体2を作製した。
【0091】
反応開始から30分ごとに交換した硝酸カリウム水溶液のマンガンイオン濃度(w/v)を、ICP−AESを用いて測定した。測定結果を以下に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
(実施例3)
製造例1で得られたフッ化物1を用いて以下のようにして、フッ化物蛍光体3を作製した。
硝酸カリウムを1.50g秤量し、それを純水15gに溶解して硝酸カリウム水溶液を調製した。製造例1で得られたフッ化物1を5g秤量し、調製した硝酸カリウム水溶液に加えて撹拌した。その後、室温(25℃)にて336時間、撹拌しながら反応した。撹拌方法として回転容器型の混合機を採用し、フッ化物が硝酸カリウム水溶液中で分散するようにした。このとき、容器の回転速度は約40rpmとした。次に上澄みの硝酸カリウム水溶液を除いた後、純水100gを秤量して反応済みのフッ化物に加えて撹拌した。これによって残留した硝酸カリウムを洗浄した。洗浄に用いた純水を除いた後、新たに純水15gを加えて、さらに過酸化水素水(30%)を0.5g加えた。得られた沈殿物を固液分離後、70℃で10時間乾燥することで実施例3のフッ化物蛍光体3を作製した。
【0094】
<評価>
(発光輝度特性)
以上で得られた各フッ化物蛍光体について、通常の発光輝度特性の測定を行った。発光輝度特性は、反射輝度として、励起波長460nmの条件で測定した。測定結果を以下に示す。なお、比較例1のフッ化物蛍光体としては、製造例1で得られたフッ化物をそのまま用いた。
【0095】
【表2】
【0096】
(SEM画像)
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、フッ化物蛍光体のSEM画像を得た。
図2〜4に実施例1〜3で得られたフッ化物蛍光体のSEM画像を、図5に製造例1で得られたフッ化物蛍光体のSEM画像を示す。
【0097】
(耐久性)
波長450nmの光を発生する半導体レーザーを準備し、光出力を安定させるために温度調整を行った。粉体輝度測定用のセルにフッ化物蛍光体0.1gをセットし、半導体レーザーから出力した光をセル中のフッ化物蛍光体に連続して照射した。このとき、光密度が3.5W/cmになるように半導体レーザーへの印加電流を調整した。レーザー光の照射されている部分からの光を光電子増倍管に取り込むことで粉体輝度の変化を測定した。このとき、粉体輝度に対するレーザー光の影響を除くため、光学フィルターを用いて蛍光体から反射されるレーザー光を除いた。
レーザー光の照射時間と粉体輝度との関係を図6に示す。図6に示されるように、実施例1〜3で得られたフッ化物蛍光体は、比較例で得られたフッ化物蛍光体よりも耐久性に優れることが分かる。また、実施例1よりも実施例2、実施例2よりも実施例3のほうが、耐久性に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明に係るフッ化物蛍光体は耐久性に優れ、これを用いた発光装置は、経時的な出力低下と色度変化が抑制され、特に青色発光ダイオードを光源とする白色の照明用光源、バックライト光源、LEDディスプレイ、信号機、照明式スイッチ、各種センサ及び各種インジケータ等に利用でき、特に照明用途において優れた耐久性と発光特性を示す。
【符号の説明】
【0099】
10:発光素子、50:封止部材、70:フッ化物蛍光体、100:発光装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6