特許第6179481号(P6179481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6179481複合粒子、その製造方法、当該粒子を含有する樹脂組成物、該樹脂組成物で形成されたリフレクター、及び該リフレクターを用いた発光半導体装置
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  • 特許6179481-複合粒子、その製造方法、当該粒子を含有する樹脂組成物、該樹脂組成物で形成されたリフレクター、及び該リフレクターを用いた発光半導体装置 図000011
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6179481
(24)【登録日】2017年7月28日
(45)【発行日】2017年8月16日
(54)【発明の名称】複合粒子、その製造方法、当該粒子を含有する樹脂組成物、該樹脂組成物で形成されたリフレクター、及び該リフレクターを用いた発光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20170807BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20170807BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20170807BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20170807BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20170807BHJP
   H01L 23/08 20060101ALI20170807BHJP
【FI】
   C01B33/18 Z
   C08L101/00
   C08K9/02
   H01L23/30 F
   H01L23/08 A
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-160563(P2014-160563)
(22)【出願日】2014年8月6日
(65)【公開番号】特開2015-63446(P2015-63446A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年7月28日
(31)【優先権主張番号】特願2013-176284(P2013-176284)
(32)【優先日】2013年8月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(72)【発明者】
【氏名】塩原 利夫
(72)【発明者】
【氏名】堤 吉弘
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−191970(JP,A)
【文献】 特開2010−285307(JP,A)
【文献】 特開2006−140207(JP,A)
【文献】 特開平04−236217(JP,A)
【文献】 特開平08−133817(JP,A)
【文献】 特開平01−242442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
C08K 9/02
C08L 101/00
H01L 23/28ー23/30
H01L 21/54
H01L 23/00−23/10
H01l 23/16−23/26
H01L 33/00
H01L 33/48−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)BET比表面積が50m/g以上の微粉末シリカ、2)シリカ以外の無機質粒子及び3)水の混合物を、300℃以上の温度で焼結させてガラス状物質とした後、粉砕することを特徴とする、複合粒子の製造方法。
【請求項2】
1)BET比表面積が50m/g以上の微粉末シリカ、2)シリカ以外の無機質粒子及び3)水の混合物を、1800℃以上の火炎中で溶融して球状化することを特徴とする、上記無機質粒子由来の無機化合物粒子とシリカとが一体化した球状複合粒子の製造方法。
【請求項3】
上記混合物を、火炎中で溶融する前に、300℃以上の温度で焼結させてガラス状物質とした後、粉砕する、請求項に記載の球状複合粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射率が高く、かつ光が透過しにくい発光半導体装置のリフレクター、これに最適な樹脂組成物、及び当該樹脂組成物に配合する複合粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発光半導体装置のリフレクターには、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂に、酸化チタンや酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの白色充填材と、シリカなどが配合された組成物が多用されてきた。
【0003】
しかし、熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂で形成されたリフレクターは、高輝度LEDなどを搭載した場合、温度や光で樹脂が劣化し黄変するといった問題がある(特許文献1,2)。また、白色に着色するため酸化チタンなどの微粉を多量に使用しなければならず、その結果樹脂の流動性が低下し、トランスファーやインジェクション成形などでリフレクターを成形する際、未充填やボイドなどの成形不良が出やすいといった問題を生じていた(特許文献3)。
【0004】
一方、シリコーン樹脂を用いれば高輝度LED搭載時でもリフレクターの変色は全く起こらないが、充填材にシリカを使用した場合、シリカの屈折率とシリコーン樹脂の屈折率が近いことから、発光した光が外部に抜けるといった問題があった(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−140207号公報
【特許文献2】特開2008−189833号公報
【特許文献3】特許第4778085号
【特許文献4】特開2009−221393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、光反射率が高く、かつ光が透過しにくい発光半導体装置のリフレクターとして最適な樹脂組成物、ならびに当該組成物に配合する複合粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる実情に鑑み本発明者らは鋭意検討した結果、特定のシリカと酸化チタンなどの白色無機質粒子を含有する下記複合粒子を用いることで、光反射率が高く、かつ光が透過しにくい発光半導体装置のリフレクターとして最適な樹脂組成物を提供できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、次の通りである。
【0008】
<1>
1)BET比表面積が50m/g以上の微粉末シリカ、2)シリカ以外の無機質粒子、及び3)水の混合物を、300℃以上の温度で焼結させてガラス状物質とした後、粉砕して製造された、シリカのマトリックス相中に上記無機質粒子由来の無機化合物粒子が均一に分散し焼結した、又は上記無機質粒子由来の無機化合物粒子のマトリックス相中にシリカが均一に分散し焼結した複合粒子。
【0009】
<2>
上記シリカ以外の無機質粒子が、粒径10ミクロン以下の金属酸化物粒子及び窒化物粒子から選ばれる1種以上である、<1>に記載の複合粒子。
【0010】
<3>
上記シリカ以外の無機質粒子が、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、アルミナ及び窒化アルミニウムから選ばれる1種以上である、<2>に記載の複合粒子。
【0011】
<4>
1)BET比表面積が50m/g以上の微粉末シリカ、2)シリカ以外の無機質粒子及び3)水の混合物を、1800℃以上の火炎中で溶融し球状化して製造された、シリカのマトリックス相中に上記無機質粒子由来の無機化合物粒子が均一に分散し焼結した、又は上記無機質粒子由来の無機化合物粒子のマトリックス相中にシリカが均一に分散し焼結した、無機質粒子由来の無機化合物粒子とシリカとが一体化した球状複合粒子。
【0012】
<5>
上記混合物を、火炎中で溶融する前に、300℃以上の温度で焼結させてガラス状物質とした後、粉砕する、<4>に記載の球状複合粒子。
【0013】
<6>
上記シリカ以外の無機質粒子が、粒径10ミクロン以下の金属酸化物粒子及び窒化物粒子から選ばれる1種以上である、<4>に記載の球状複合粒子。
【0014】
<7>
上記シリカ以外の無機質粒子が、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、アルミナ及び窒化アルミニウムから選ばれる1種以上である、<6>に記載の球状複合粒子。
【0015】
<8>
1)BET比表面積が50m/g以上の微粉末シリカ、2)シリカ以外の無機質粒子及び3)水の混合物を、300℃以上の温度で焼結させてガラス状物質とした後、粉砕することを特徴とする、複合粒子の製造方法。
【0016】
<9>
1)BET比表面積が50m/g以上の微粉末シリカ、2)シリカ以外の無機質粒子及び3)水の混合物を、1800℃以上の火炎中で溶融して球状化することを特徴とする、上記無機質粒子由来の無機化合物粒子とシリカとが一体化した球状複合粒子の製造方法。
【0017】
<10>
上記混合物を、火炎中で溶融する前に、300℃以上の温度で焼結させてガラス状物質とした後、粉砕する、<9>に記載の球状複合粒子の製造方法。
【0018】
<11>
<1>〜<7>のいずれか1つに記載の複合粒子と、熱硬化性樹脂とを含む熱硬化性樹脂組成物。
【0019】
<12>
上記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン・エポキシ混成樹脂及びシアネート樹脂から選ばれる1種以上である、<11>に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0020】
<13>
(A)熱硬化性樹脂100質量部に対して、(B)複合粒子を50〜1200質量部含む白色樹脂組成物である、<11>又は<12>に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0021】
<14>
<11>〜<13>のいずれか1つに記載の樹脂組成物で形成された発光半導体装置用リフレクター。
【0022】
<15>
<14>に記載の発光半導体装置用リフレクターに発光半導体素子を搭載した発光半導体装置。
【0023】
<16>
<11>〜<13>のいずれか1つに記載の樹脂組成物で発光半導体素子を封止した発光半導体装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、光反射率が高く、かつ光が透過しにくい発光半導体装置のリフレクターとして最適な樹脂組成物、ならびに当該組成物に配合する複合粒子を提供することができる。なかでも複合粒子が球状化したものは多量に充填することが可能となるうえ、更に、シリカと一体化する無機粒子の配合比を変えることで複合粒子の屈折率を自由に制御することが出来ることから、光抜けや光反射の不具合を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1Aで得られた複合酸化物粒子中のケイ素(Si)の電子線マイクロプローブアナライザ(EPMA)マッピング図である。
図2】実施例1Aで得られた複合酸化物粒子中のチタン(Ti)の電子線マイクロプローブアナライザ(EPMA)マッピング図である。
図3】実施例6のリフレクターを示す図である。図3aはマトリックスタイプ凹型リフレクター基板、図3bは個片化リフレクター基板にLED素子を搭載した装置の断面図、図3cはその平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下本発明について詳細に説明する。
【0027】
[1)シリカ]
本発明で使用されるBET比表面積が50m/g以上の微粉末シリカとしては、代表的には、四塩化ケイ素やテトラアルコキシシランなどを高温下で噴霧燃焼させて得られるフュームドシリカ(煙霧質シリカ)等の乾式シリカ;四塩化珪素やテトラアルコキシシランを水と反応させ、加水分解及び縮合させることで得られる沈降シリカ;及びゾル−ゲル法シリカ等の湿式シリカなど、表面積の大きな微細なシリカが好ましいものとして挙げられる。
【0028】
上市されているBET比表面積が50m/g以上の微粉末シリカとしては、アエロジル90、アエロジル130、アエロジル380(商品名、日本アエロジル社製)などの親水性フュームドシリカ;親水性フュームドシリカを、シラン、シラザン又はシロキサン等の有機ケイ素化合物で化学的に処理したアエロジルR−972、アエロジルR−812及びR−974(商品名、日本アエロジル社製)などの疎水性フュームドシリカであるフュームドシリカが代表的なものとして挙げられる。これらのシリカの比表面積は、通常、BET吸着法による比表面積が50m/g以上、特には、100〜400m/gと非常に大きいものである。また、これらBET比表面積が50m/g以上の微粉末シリカは、通常、平均粒子径が0.1μm(100nm)以下、特に0.001〜0.05μm(1〜50nm)程度に相当する、いわゆるナノシリカと称されるものである。
なお、本願において平均粒子径とは、通常、レーザー光回折法による粒度分布測定における累積質量平均径D50(又はメジアン径)等として求めたものである。
【0029】
[2)シリカ以外の無機質粒子]
上記の1)成分のBET比表面積が50m/g以上の微粉末シリカと混合して使用するシリカ以外の無機質粒子としては、微粉末の酸化物、窒化物などが挙げられ、具体的には、二酸化チタン、酸化亜鉛、フュームドアルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの窒化物などが挙げられる。上記無機質粒子としては、平均粒子径が100nm以下、好ましくは1〜50nmである微粒子が好ましい。
【0030】
ここで用いる二酸化チタンとしては、石原産業(株)製の商品名:CR50、CR80、R820、堺化学(株)製の商品名:R62N、GTR100、D918、R39、日本アエロジル(株)製の商品名:AEROXIDE TiO P25などの、平均粒子径が25nm程度の微細なTiO粒子が挙げられる。ルチル型及びアナターゼ型のいずれの二酸化チタンも使用可能である。また、酸化亜鉛としてはテイカ(株)製の商品名MZ−306X、MZ−506Xのような、平均粒子径が25nmや35nmの微細な酸化物粉末が挙げられる。フュームドアルミナ(Al)としては、キャボット社製の商品名:SpectrAl 100などが挙げられる。
【0031】
上記微粉末シリカ以外の無機質粒子としては、上記のものを主に使用することが好ましいが、水酸化物など、酸化物以外のものも本発明の効果を損なわない範囲で併用することもできる。
【0032】
[複合粒子]
本発明の複合粒子は、シリカと、シリカ以外の上記無機質粒子由来の(即ち、原料の上記無機質粒子から誘導された)無機化合物粒子、特に金属酸化物粒子、とが一体化した複合粒子である。上記無機化合物粒子とは、シリカとシリカ以外の上記無機質粒子と水との混合物を300℃以上の温度で焼結させた際に、上記無機質粒子から誘導された化合物粒子である。原料の無機質粒子が窒化物の場合は、300℃以上の温度での焼結の際に、上記窒化物は少なくとも一部が酸化されて酸化物に変化し得る。上記複合粒子は、原料のシリカと上記無機質粒子との配合比に依存して、シリカのマトリックス相中に上記無機化合物粒子が均一に分散し焼結した粉末であるか、或いは、上記無機化合物粒子からなるマトリックス相中にシリカが均一に分散し焼結した粉末である。上記複合粒子は、通常、シリカを10〜99質量%、好ましくは20〜90質量%、特に30〜80質量%、シリカ以外の無機化合物粒子、特に金属酸化物粒子、を1〜90質量%、好ましくは20〜90質量%、特に30〜80質量%含む。該複合粒子は、好ましくは複合酸化物粒子である。
【0033】
[複合粒子の製造方法]
本発明の複合粒子の製造方法としては、次の方法が挙げられる。すなわち、例えば微粉末シリカと、シリカ以外の一種以上の無機質粒子とをミキサーなどの高速混合装置で均一に混合した後、水などの液体を徐々に加えながら高速混合装置でゲル状になるまで混合する。その後、ゲル状となった微粉末混合物をセラミック容器などの耐熱容器に入れ、300℃以上、好ましくは400℃以上、更に好ましくは600℃以上の高温で焼結処理を行うことで均一な焼結体を製造することが出来る。この焼結体をボールミルなどの粉砕装置で微粉になるまで粉砕することで、シリカ(SiO)のマトリックス相中に無機化合物粒子が均一に分散し焼結した粉末、あるいは、シリカ以外の無機化合物粒子からなるマトリックス相中にシリカ(SiO)が均一に分散し焼結した複合粒子の粉末を得ることが出来る。
【0034】
[球状複合粒子の製造方法]
球状の複合粒子の製造方法としては、例えば上記したように、BET比表面積が50m/g以上の微粉末シリカ、シリカ以外の無機質粒子及び水を混合した混合物を、300℃以上の温度で焼結させてガラス状物質とし、粉砕して複合粒子を得た後、更に、これを通常1800℃以上の火炎中、高温で溶融球状化する工程を含む。
【0035】
簡便な球状の複合粒子を得る方法としては、BET比表面積が50m/g以上の微粉末シリカ、これ以外の無機質粒子及び水を混合した混合物を、スプレードライなどの方法で水分を除去して凝集粉末を得て、この凝集粉末を1800℃以上の火炎中、高温で溶融球状化する方法が挙げられる。溶融球状化は1800℃以上の火炎中で溶融させる必要があり、この温度は特に2000℃以上が望ましい。
【0036】
本発明の複合粒子及び球状複合粒子(両者を単に複合粒子とも云う)は、シリカの含有量が10〜99質量%、好ましくは20〜90質量%、特に30〜80質量%、シリカ以外の無機化合物粒子が1〜90質量%、好ましくは10〜80質量%、特に20〜70質量%程度のものが望ましい。シリカ含有量が30〜80質量%のものは安定した特性の複合粒子であることから、特に望ましい。
【0037】
シリカ含有量が10質量%以下では、他の酸化物や窒化物等の無機質相とのバインダー効果が乏しく、また99質量%以上では本発明の複合粒子としての特徴が不足してしまう。
【0038】
本発明の複合粒子は、LED用リフレクター材料の充填材として使用する場合は、最大粒径は150μm以下で平均粒径が5〜30μmの粒度のものが望ましい。なかでも粒度が最大粒径100μm以下、更に75μm以下であるものが好ましい。該複合粒子の形状は、球状であると、多量に樹脂に充填できることから望ましいが、破砕形状でも上記粒度のものであれば、なんら問題なく使用できる。また、球状と破砕形状のものを併用しても構わない。なお、ここで平均粒径とは、レーザー光回折法による粒度分布測定における累積質量平均径D50(又はメジアン径)として求めた値である。
【0039】
[樹脂組成物]
本発明の複合粒子を配合する樹脂としては、リフレクター材料としての用途を考慮すると、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン・エポキシハイブリッド樹脂、シアネート樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリフタル酸アミドなどの熱可塑性樹脂が好ましい樹脂として挙げられる。特に熱硬化性シリコーン樹脂が好ましい。熱硬化性シリコーン樹脂としては、ビニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジエンポリシロキサンとを含む付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物が挙げられる。該シリコーン樹脂組成物は、必要に応じて添加剤、例えば硬化触媒、反応抑制剤、離型剤、接着助剤、カップリング剤等、を含んでもよい。
【0040】
本発明の複合粒子の配合量は、上記したような樹脂100質量部に対し、本発明の複合粒子を50〜1200質量部、特に100〜1000質量部とすることが好ましい。該複合粒子が50質量部未満であると、リフレクター材料として使用するのに必要な光特性、例えば光反射率又は光透過率、が得られない。該複合粒子が1200質量部を超えると、成形に必要なスパイラルフロー値及び溶融粘度が得られない。
【0041】
本発明の樹脂組成物をリフレクター用に使用する場合は、本発明の上記樹脂組成物の各種成分以外に、従来公知の結晶性シリカ、溶融シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ガラス繊維、カーボンファイバー、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、クリストバライト、着色材などを、リフレクターとしての特性を損なわない範囲で、配合することができる。
【0042】
上記リフレクター用の着色材としては、酸化チタン、アルミニウム、酸化亜鉛、カーボンブラック、など公知の材料が使用可能である。酸化チタンを含有する本発明の複合粒子を使用した場合は白色顔料を使用する必要はないが、より白色度を上げたいような場合は、更に酸化チタンを単独で加えても良い。該着色材の添加量は、樹脂100質量部に対し、0.5質量部〜20質量部とすることが好ましい。
【0043】
本発明の複合粒子を発光半導体素子の封止剤(即ち、封止用樹脂組成物)中の充填材として使用する場合は、透明なシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン・エポキシ混成樹脂などの樹脂100質量%に対し、0.1〜500質量%、望ましくは0.5質量%〜300質量%用いることが好ましい。
【0044】
本発明の複合粒子を充填した封止用樹脂組成物は、硬化後できるだけ透明である必要があることから、複合粒子の屈折率は硬化した樹脂の屈折率に近いものが望ましい。そのため、封止剤の充填材として使用する複合粒子は、シリカと組み合わせる上記無機質粒子の比率を変化させることで屈折率を調整することが好ましい。
【0045】
例えば、屈折率が1.53程度のシリコーン樹脂に配合する複合粒子の場合、微粉末シリカ100質量部と微粉末アルミナ100質量部とを均一に混合し、焼結及び/又は火炎中で溶融した破砕状及び/又は球状の微粉末複合酸化物が、透明性や放熱性の面から望ましい。
【0046】
上記封止用樹脂組成物は、本発明の複合粒子以外に、YAGなどの蛍光体やチキソコントロールのために微粉末のアルミナやシリカが充填されていてもよい。
【0047】
発光半導体素子の封止方法としては、本発明の複合粒子を含んだ封止用樹脂組成物を、発光半導体素子が搭載したリフレクターの凹部に、ディスペンサーなどの吐出装置を用いて滴下し、100℃以上の温度で1〜4時間ほど加熱することで硬化封止する方法が挙げられる。
【0048】
[発光半導体装置用リフレクター]
本発明の発光半導体装置用リフレクターは、本発明の樹脂組成物を、銀メッキした銅のリードフレーム上に、トランスファー成形やインジェクション成形などで成形することで製造することが出来る。
【0049】
[発光半導体装置]
本発明の発光半導体装置は、本発明の複合粒子を含んだ封止用樹脂組成物を、該発光半導体素子を搭載したリフレクターの凹部に、ディスペンサーなどの吐出装置を用いて滴下し、100℃以上の温度で1〜4時間ほど加熱して、該発光半導体素子を硬化封止する方法により、得ることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。使用原料は以下の通りである。
1)親水性フュームドシリカ(SiO):日本アエロジル(株)製、品名 Aerosil 380、BET比表面積約380m/g、
2)疎水性フュームドシリカ(SiO):日本アエロジル(株)製、品名 Aerosil R−812、BET比表面積約260m/g、
3)フュームド混合酸化物(シリカとアルミナの物理的混合物、SiO/Al):日本アエロジル(株)製、品名 Aerosil MOX 84、
4)親水性フュームド二酸化チタン(TiO):日本アエロジル(株)製、品名 AEROXIDE TiO P25、
5)親水性フュームドアルミナ(Al):日本アエロジル(株)製、品名 AEROXIDE Alu C、
6)ヒュームドアルミナ(Al):キャボット社製、品名 SpectrAl 100、
7)二酸化チタン(TiO):石原産業(株)社製 品名 CR−60
【0051】
実施例1
表1に示されるように、フュームドシリカ(SiO)(日本アエロジル社製、Aerosil380)、二酸化チタン(TiO)(石原産業(株)製、CR−60)、ヒュームドアルミナ(Al)(キャボット社製 SpectrAl 100)、水を配合し、攪拌装置で均一になるまで混合することで粘土状の混合物を製造した。この混合物を400℃、600℃、又は800℃のマッフル炉にいれて5時間熱処理を行った後、室温まで冷却することで焼結物を得た。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例1A〜1Dの800℃で焼成しガラス化したブロックを粗割りした後、ボールミルで粉砕することで破砕状の複合酸化物粒子1A〜1Dを製造した。この粉末粒子の分布状況を分析したところ、アルミニウム元素やチタン元素が均一な分布で存在した。粉砕した粒子の粒度分布を下記表2に示す。なお、粒度分布はレーザー回折式粒度分布測定装置(日機装(株)製「MicrotracHRA(X−100)」)により質量基準で求めた。表2中の数値は、質量%を示す。
【0054】
【表2】
【0055】
比較例1
フュームドシリカ(SiO)(日本アエロジル社製、Aerosil 380)50質量部、二酸化チタン(TiO)(石原産業(株)製、CR−60)50質量部、水10質量部を攪拌装置で均一になるまで混合することで、粘土状の混合物を製造した。この混合物を200℃マッフル炉にいれて5時間熱処理を行った後、室温まで冷却した。得られた製品は全く焼結されていないもので、容易に手で擦ると崩れる粉体であった。
【0056】
実施例2
実施例1A〜Dにおいて、400℃で焼成して得た複合酸化物を、微粉になるまでボールミルで粉砕し、粉砕した粉末を篩で粒度が50μm以下になるように調整した。この粉末を2000℃の火炎中に降らせることで溶融させ、冷却することで球状の複合酸化物2A〜2Dを製造した。この複合酸化物は形状が球状で均一な組成分布からなる粒子であった。複合酸化物の粒度分布を表3に示す。表3中の数値は、質量%を示す。実施例1Aにおいて、400℃で焼成して得られた複合酸化物のケイ素(Si)及びチタン(Ti)の電子線マイクロプローブアナライザ(EPMA)マッピング図を、それぞれ図1及び図2に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
実施例3
表4で示される配合割合の原料(混合微粉末)を、少量の水の存在下、造粒装置で造粒させた。得られた造粒粉末を2000℃の火炎中に降らせることで溶融させて、球状の複合酸化物粒子3A〜3Dを得た。得られた複合酸化物の粒度分布を下記の表5に示す。表5中の数値は、質量%を示す。
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
(A)ビニル基を含有するオルガノポリシロキサン
[合成例1]
フラスコにキシレン1000g及び水5014gを加え、これにフェニルトリクロロシラン2285g(10.8mol)、ビニルジメチルクロロシラン326g(2.70mol)及びキシレン1478gを混合した混合物を滴下した。滴下終了後3時間攪拌し、廃酸を分離し、水洗した。これに、共沸脱水後にKOH6g(0.15mol)を加え、150℃で一夜加熱還流を行った。得られた生成物にトリメチルクロロシラン27g(0.25mol)を加え、酢酸カリウム24.5g(0.25mol)で中和し濾過した後、溶剤を減圧留去し、下記平均組成式(1)で示される透明で室温で固体のシロキサン樹脂(A−1)を合成した。ビニル当量は0.0013mol/g、水酸基含有量は0.01質量%であった。軟化点は65℃であった。
(CSiO3/20.80((CH=CH)(CHSiO1/20.20 (1)
【0062】
(B)Si−Hを持つ架橋剤
架橋剤として下記構造のオルガノハイドロジエンポリシロキサンを使用した。
架橋剤(B−1)
【0063】
【化1】
【0064】
水素発生量0.00377mol/g
n=2.0(平均値)、X:水素原子、SiH基当量は0.403であった。
【0065】
架橋剤(B−2)
【化2】
【0066】
水素発生量0.0076mol/g
【0067】
(C)付加反応触媒
塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金濃度2質量%)
(D)接着助剤
接着助剤として下記構造のオルガノハイドロジエンポリシロキサンを使用した。
【0068】
【化3】
(式中、j及びkは、それぞれ独立に1、2又は3、Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はイソプロピル基であり、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は3045である。)
【0069】
(E)反応抑制剤
3‐メチル‐トリデシン‐3‐オール
(F)離型剤
リケスターEW 440A(理研ビタミン株式会社製)
【0070】
実施例4
上記、合成例1で製造した(A)ビニル基含有シリコーン94質量部、架橋剤(B−1)4質量部、架橋剤(B−2)17質量部、(C)付加反応触媒0.1質量部、(D)接着助剤6.2質量部、(E)反応抑制剤6.5質量部、(F)離型剤0.7質量部及び(G)実施例3Aで製造した複合酸化物580質量部をプレ混合し、連続混練装置で混練することで、白色の熱硬化性シリコーン樹脂組成物を製造した。
【0071】
比較例2
合成例1で製造した(A)ビニル基含有シリコーン94質量部、架橋剤(B−1)4質量部、架橋剤(B−2)17質量部、(C)付加反応触媒0.1質量部、(D)接着助剤を6.2質量部、(E)反応抑制剤6.5質量部、(F)離型剤0.7質量部、(G’−1)平均粒径13μmの溶融球状シリカ460質量部及び(G’−2)ニ酸化チタン115質量部を連続混練装置で混練することで、白色の熱硬化性シリコーン樹脂組成物を製造した。
【0072】
実施例4と比較例2の各組成物につき、以下の諸特性を測定した。結果を表6に示す。成形はすべてトランスファー成形機で行った。
【0073】
<スパイラルフロー値>
EMMI規格に準じた金型を使用して、成型温度150℃、成型圧力6.9N/mm、成形時間180秒の条件でスパイラルフロー試験を行った。
<溶融粘度>
降下式フローテスターを用い、10kgfの加圧下、直径1mmのノズルを用い、温度150℃で粘度を測定した。
<曲げ強度及び曲げ弾性率>
JIS−K6911規格に準じた金型を使用して、成型温度150℃、成型圧力6.9N/mm、成形時間180秒の条件で成形し、その後150℃で4時間ポストキュアした試験片を室温で曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。
<光反射率及び光透過率>
成型温度150℃、成型圧力6.9N/mm、成形時間180秒の条件で、1辺50mm、厚さ0.35mmの正方形の硬化物を作成し、エス・デイ・ジー(株)製X−rite8200を使用して450nmの光反射率及び光透過率を測定した。
【0074】
【表6】
【0075】
表6の結果から、本発明の複合粒子を利用することで、それを含む樹脂組成物の硬化物を、機械強度などの特性を維持したまま、光特性、特に光透過率を向上させることができることがわかった。
【0076】
実施例5
(リフレクターの成形と物性)
実施例4及び比較例2で製造した樹脂組成物、及び全面銀メッキした銅リードフレーム102を用い、図3に示すマトリックスタイプの凹型リフレクター10(表面銀メッキした銅基板上に封止剤の厚み1mmで縦38mm、横16mmで成形)を、下記の成形条件でトランスファー成形し作製した。
【0077】
成形条件は下記の通りである。
成形温度:150℃
成形圧力:70kg/cm
成形時間:3分
更にポストキュアを150℃で4時間行った。
【0078】
<反り測定>
反りはポストキュアした上記形状の成形リフレクターを樹脂側で対角線の二方向で測定し、平均値で示した。その結果、実施例4で製造した樹脂組成物では反りは210μmであるのに対し、比較例2で製造した樹脂組成物では560μmとなり、本発明の複合酸化物の使用は、樹脂組成物の成型物のそり特性にも有効であることがわかった。
【0079】
実施例6
実施例4及び比較例2の樹脂組成物を用いて成形したマトリックスタイプのリフレクター10の、各リフレクター100の凹状の底辺に露出したリードフレーム102上に青色LED素子104を、シリコーンダイボンド剤105(品名:LPS632D、信越化学(株)製)で接着固定し、金線103で、もう一方のリード部とLED素子電極を電気的に接続した。その後、シリコーン封止剤(LPS380:信越化学(株)製)106を、LED素子104が配置された凹部開口部内にそれぞれ注入し、120℃で1時間、更に150℃で1時間硬化させて、LED素子104を封止した。
このマトリックスタイプのリフレクターをダイシングすることで個片化した。これら個片型した実施例4及び比較例2の樹脂組成物を成形したリフレクターで組み立てたLED装置を5個用い、コニカミノルタ(株)製CS−2000Aを用いて輝度を測定した。実施例4の樹脂組成物を成形したリフレクターを用いたLEDの輝度を100とした場合、比較例2の樹脂組成物で作製したLEDの輝度は93と低下していた。また、LEDパッケージの側面から発光しているLEDを見ると比較例2の樹脂組成物で作製したリフレクターを用いたものは光が漏れていた。
【符号の説明】
【0080】
10:凹型リフレクター基板
100:個片化した凹型リフレクター基板
101:樹脂組成物
102:リードフレーム
103:金線
104:発光素子
105:ダイボンド剤
106:透明封止樹脂
図1
図2
図3