(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリオール(a1)と、数平均分子量が4,000以上であり、イソシアネート基と反応する官能基を有する反応性シリコーン(a2)と、ポリイソシアネート(a3)とを必須原料とした反応物であるウレタン樹脂(A)、及び、水性媒体(B)を含有し、乳化剤を含有しないことを特徴とする水性ウレタン樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、ポリオール(a1)と、数平均分子量が4,000以上であり、イソシアネート基と反応する官能基を有する反応性シリコーン(a2)と、ポリイソシアネート(a3)とを必須原料とした反応物であるウレタン樹脂(A)、及び、水性媒体(B)を含有するものである。
【0010】
前記ウレタン樹脂(A)は、後述する水性媒体(B)中に分散等し得るものであり、例えば、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等の親水性基を有するウレタン樹脂;乳化剤で強制的に水性媒体(B)中に分散したウレタン樹脂などを用いることができる。これらのウレタン樹脂(A)は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製造安定性の点から、親水性基を有するウレタン樹脂を用いることが好ましく、より一層優れた耐摩耗性、及び耐加水分解性が得られる点から、アニオン性基を有するウレタン樹脂を用いることがより好ましい。
【0011】
前記アニオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、カルボキシル基を有するグリコール化合物及びスルホニル基を有する化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を原料として用いる方法が挙げられる。
【0012】
前記カルボキシル基を有するグリコール化合物としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−吉草酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0013】
前記スルホニル基を有する化合物としては、例えば、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,6−ジアミノベンゼンスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルスルホン酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0014】
前記カルボキシル基及びスルホニル基は、水性ウレタン樹脂組成物中で、一部又は全部が塩基性化合物に中和されていてもよい。前記塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミン;モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン;ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム等を含む金属塩基化合物などを用いることができる。
【0015】
前記ウレタン樹脂(A)として、アニオン性基を有するウレタン樹脂(以下、「アニオン性ウレタン樹脂」と略記する。)を用いる場合、前記アニオン性ウレタン樹脂の酸価としては、親水性基が加水分解を促進するため一層優れた耐加水分解性が得られる点から、20mgKOH/g以下であることが好ましく、3〜17mgKOH/gの範囲であることがより好ましく、5〜14mgKOH/gの範囲が更に好ましく、5〜13mgKOH/gの範囲が特に好ましい。前記アニオン性ウレタン樹脂の酸価の測定方法は、後述する実施例にて記載する。なお、前記アニオン性ウレタン樹脂の酸価を調整する方法としては、アニオン性基を付与する前述のカルボキシル基を有するグリコール化合物及びスルホニル基を有する化合物の使用量を調整する方法が挙げられる。
【0016】
前記カルボキシル基を有するグリコール化合物及びスルホニル基を有する化合物の使用量としては、より一層優れた耐加水分解性が得られる点から、ウレタン樹脂(A)を構成する原料の合計質量中0.1〜5質量%の範囲であることが好ましく、0.3〜4質量%の範囲がより好ましく、0.5〜3.5質量%の範囲が更に好ましい。
【0017】
前記カチオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、アミノ基を有する化合物の1種又は2種以上を原料として用いる方法が挙げられる。
【0018】
前記アミノ基を有する化合物としては、例えば、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン等の1級及び2級アミノ基を有する化合物;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン、N−メチルジアミノエチルアミン、N−エチルジアミノエチルアミン等のN−アルキルジアミノアルキルアミンなどの3級アミノ基を有する化合物などを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記ノニオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、オキシエチレン構造を有する化合物の1種又は2種以上を原料として用いる方法が挙げられる。
【0020】
前記オキシエチレン構造を有する化合物としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール等のオキシエチレン構造を有するポリエーテルポリオールを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記強制的に水性媒体(B)中に分散するウレタン樹脂を得る際に用いることができる乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン性乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン性乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン性乳化剤などを用いることができる。これらの乳化剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記ウレタン樹脂(A)としては、具体的には、ポリオール(a1)、前記した親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料、数平均分子量が4,000以上であり、イソシアネート基と反応する官能基を有する反応性シリコーン(a2)、及びポリイソシアネート(a3)の反応物が挙げられる。
【0023】
前記ポリオール(a1)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記ポリオール(a1)としては、より一層優れた耐摩耗性、及び耐加水分解性が得られる点から、ポリエーテルポリオール及び/又はポリカーボネートポリオールを用いることが好ましく、ポリテトラメチレングリコール及び/又はポリカーボネートポリオールを用いることがより好ましい。また、前記ポリカーボネートポリオールとしては、同様の理由により、1,6−ヘキサンジオール及び/又は1,4−ブタンジオールを原料としたポリカーボネートポリオールを用いることが好ましく、1,6−ヘキサンジオール及び1,4−ブタンジオールを原料としたポリカーボネートポリオールを用いることがより好ましい。なお、ウレタン樹脂(A)としてノニオン性基を有するウレタン樹脂を用いる場合、前記ポリオール(a1)としては前記オキシエチレン構造を有する化合物以外のものを用いる。
【0024】
前記ポリオール(a1)の数平均分子量としては、得られる皮膜の機械的強度の点から、500〜8,000の範囲であることが好ましく、800〜5,000の範囲であることがより好ましい。なお、前記ポリオール(a1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定し得られた値を示す。
【0025】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0026】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0027】
前記ポリオール(a1)の使用量としては、皮膜の機械的強度の点から、ウレタン樹脂(A)を構成する原料の合計質量中40〜90質量%の範囲であることが好ましく、45〜88質量%の範囲がより好ましく、50〜85質量%の範囲が更に好ましい。
【0028】
前記ポリオール(a1)には必要に応じて数平均分子量が50〜450の範囲の鎖伸長剤(a1−1)を併用してもよい。なお、前記鎖伸長剤(a1−1)の数平均分子量は、前記ポリオール(a1)の数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
【0029】
前記鎖伸長剤(a1−1)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、トリメチロールプロパン等の水酸基を有する鎖伸長剤;エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、ヒドラジン等のアミノ基を有する鎖伸長剤などを用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐加水分解性や耐熱性等の耐久性の点から、アミノ基を有する鎖伸長剤を用いることが好ましく、エチレンジアミン、イソホロンジアミン、及びピペラジンからなる群より選ばれる1種以上の鎖伸長剤を用いることがより好ましい。
【0030】
前記鎖伸長剤(a1−1)を用いる場合の使用量としては、耐加水分解性や耐熱性等の耐久性の点から、ウレタン樹脂(A)を構成する原料の合計質量中0.1〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.5〜7質量%の範囲がより好ましく、0.8〜5質量%の範囲が更に好ましい。
【0031】
前記反応性シリコーン(a2)としては、ウレタン樹脂(A)中に組み込まれ、優れた耐摩耗性、及び耐加水分解性を得る上で、イソシアネート基と反応する官能基を有し、かつ数平均分子量が4,000以上のものを用いることが必須である。このような比較的高分子量の反応性シリコーン(a2)を導入することにより、極めて高い滑り性が付与されるため、優れた耐摩耗性、及び耐加水分解性を得ることができる。前記反応性シリコーン(a2)の数平均分子量としては、より一層優れた耐摩耗性、及び耐加水分解性が得られる点から、4,500〜50,000の範囲が好ましく、4,700〜30,000の範囲がより好ましく、5,000〜20,000の範囲が更に好ましい。なお、前記反応性シリコーン(a2)の数平均分子量は、前記ポリオール(a1)と同様の方法で測定して得られた値を示す。
【0032】
前記反応性シリコーン(a2)としては、例えば、下記式(1)で示される片末端ジオール型反応性シリコーン、片末端モノオール型反応性シリコーン、片末端ジアミン型反応性シリコーン、及び片末端モノアミン型反応性シリコーン、下記式(2)で示される両末端ジオール型反応性シリコーン、両末端ジアミン型反応性シリコーン、両末端ジメルカプト型反応性シリコーン、及び両末端ジシラノール型反応性シリコーン、並びに、下記式(3)で示される側鎖モノアミン型反応性シリコーン等を用いることができる。これらの反応性シリコーンは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0033】
【化1】
(式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜10の範囲のアルキル基を示し、Xは下記式(X−1)〜(X−12)に示される構造を示し、nは50〜670の範囲の整数を示す。)
【0034】
【化2】
(式(X−1)及び(X−2)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示し、R
3は水素原子又は炭素原子数1〜8の範囲のアルキル基を示す。)
【0035】
【化3】
(式(X−3)及び(X−4)中、R
1は炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示し、R
2は水素原子又は炭素原子数1〜8の範囲のアルキル基を示す。)
【0036】
【化4】
(式(X−5)及び(X−6)中、R
1は炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示し、R
2は水素原子又は炭素原子数1〜8の範囲のアルキル基を示す。)
【0037】
【化5】
(式(X−7)及び(X−8)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示し、R
3は水素原子又は炭素原子数1〜8の範囲のアルキル基を示す。)
【0038】
【化6】
(式(X−9)及び(X−10)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示す。)
【0039】
【化7】
(式(X−11)及び(X−12)中、R
1は炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示す。)
【0040】
【化8】
(式(2)中、R
1は炭素原子数1〜10の範囲のアルキル基を示し、Yは下記式(Y−1)〜(Y−5)に示される構造を示し、nは50〜670の範囲の整数を示す。)
【0042】
【化10】
(式(Y−2)〜(Y−4)中、R
1は炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示す。)
【0043】
【化11】
(式(Y−5)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示す。)
【0044】
【化12】
(式(3)中、R
1及びR
2はそれぞれ炭素原子数1〜8の範囲のアルキル基を示し、Zは下記式(Z−1)〜(Z−2)に示される構造を示し、mは50〜670の範囲の整数を示し、nは1〜10の範囲の整数を示す。)
【0045】
【化13】
(式(Z−1)中、R
1は炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示す。)
【0046】
【化14】
(式(Z−2)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して炭素原子数1〜10の範囲のアルキレン基を示す。)
【0047】
前記反応性シリコーン(a2)としては、例えば、JNC株式会社製「サイラプレーン FM−3321」、「サイラプレーン FM−3325」、「サイラプレーン FM−4421」、「サイラプレーン FM−4425」、「サイラプレーン FM−0421」、「サイラプレーン FM−0425」、「サイラプレーン FM−DA21」、「サイラプレーン FM−DA26」、信越化学工業株式会社製「X−22−176GX−A」、「X−22−176F」等を市販品として入手することができる。
【0048】
前記反応性シリコーン(a2)としては、ウレタン樹脂(A)の側鎖にシリコーン鎖が導入されるため、一層高い滑り性が付与され、より一層優れた耐摩耗性、及び耐加水分解性が得られる点から、前記式(1)で示される反応性シリコーンを用いることが好ましく、前記式(1)で示される反応性シリコーンの内、Xが前記式(X−1)、(X−7)、及び(X−9)からなる群より選ばれる1種以上である反応性シリコーンを用いることがより好ましく、Xが前記式(X−1)及び/又は(X−7)を示す反応性シリコーンを用いることが更に好ましい。また、前記式(1)中のR
1及びR
2がそれぞれ炭素原子数1〜3の範囲のアルキル基であり、nが50〜270の範囲の整数であり、前記式(X−1)及び(X−7)中のR
1及びR
2がそれぞれ炭素原子数1〜3の範囲のアルキレン基であり、R
3が炭素原子数1〜3の範囲のアルキル基を示すものを用いることが好ましい。
【0049】
前記反応性シリコーン(a2)の使用量としては、より一層優れた耐摩耗性、及び耐加水分解性が得られる点から、ウレタン樹脂(A)を構成する原料の合計質量中1〜25質量%の範囲であることが好ましく、3〜20質量%の範囲がより好ましく、3.8〜19質量%の範囲が更に好ましい。
【0050】
前記ポリイソシアネート(a3)としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート及び/又は脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐光変色の点から、脂肪族ポリイソシアネート及び/又は脂環式ポリイソシアネートを用いることが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のポリイソシアネートを用いることがより好ましい。
【0051】
前記ポリイソシアネート(a3)の使用量としては、製造安定性、及び得られる皮膜の機械物性の点から、ウレタン樹脂(A)を構成する原料の合計質量中5〜40質量%の範囲であることが好ましく、7〜30質量%の範囲がより好ましく、10〜25質量%の範囲が更に好ましい。
【0052】
前記ウレタン樹脂(A)の製造方法としては、例えば、前記ポリオール(a1)、前記親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料、前記反応性シリコーン(a2)、前記ポリイソシアネート(a3)、及び必要に応じて前記鎖伸長剤(a1−1)を一括に仕込み反応させる方法が挙げられる。これらの反応は、例えば50〜100℃で3〜10時間行うことが挙げられる。
【0053】
前記ウレタン樹脂(A)を製造する際の、前記ポリオール(a1)が有する水酸基、鎖伸長剤(a1−1)が有する水酸基及びアミノ基、前記親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料が有するイソシアネート基と反応する官能基、並びに前記反応性シリコーン(a2)が有するイソシアネート基と反応する官能基の合計と、前記ポリイソシアネート(a3)が有するイソシアネート基とのモル比[イソシアネート基/イソシアネート基と反応する官能基の合計]としては、0.8〜1.2の範囲であることが好ましく、0.9〜1.1の範囲であることがより好ましい。
【0054】
前記ウレタン樹脂(A)を製造する際には、前記ウレタン樹脂(A)に残存するイソシアネート基を失活させることが好ましい。前記イソシアネート基を失活させる場合には、メタノール等の水酸基を1個有するアルコールを用いることが好ましい。前記アルコールの使用量としては、ウレタン樹脂(A)100質量部に対し、0.001〜10質量部の範囲が好ましい。
【0055】
また、前記ウレタン樹脂(A)を製造する際には、有機溶剤を用いてもよい。前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル化合物;アセトニトリル等のニトリル化合物;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物などを用いることができる。これらの有機溶媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、前記有機溶剤は、水性ウレタン樹脂組成物を得る際には蒸留法等によって除去されることが好ましい。
【0056】
前記水性媒体(B)としては、例えば、水、水と混和する有機溶剤、これらの混合物等を用いることができる。前記水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール溶媒;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル溶媒;N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム溶媒等を用いることができる。これらの水性媒体は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、安全性、及び環境負荷の軽減化の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いることが好ましく、水のみ用いることがより好ましい。
【0057】
前記ウレタン樹脂(A)と前記水性媒体(B)との質量比[(A)/(B)]としては、作業性の点から、10/80〜70/30の範囲であることが好ましく、20/80〜60/40の範囲であることがより好ましい。
【0058】
本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、前記ウレタン樹脂(A)、前記水性媒体(B)を含有するものであるが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0059】
前記その他の添加剤としては、例えば
、中和剤、増粘剤、ウレタン化触媒、架橋剤、発泡剤、顔料、染料、撥油剤、中空発泡体、難燃剤、消泡剤、レべリング剤、ブロッキング防止剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0060】
次に、本発明の合成皮革について説明する。
【0061】
前記合成皮革は、本発明の前記水性ウレタン樹脂組成物により形成された表皮層及び/又は表面処理層を有するものである。
【0062】
前記合成皮革としては、例えば、ウレタン系合成皮革やポリ塩化ビニル(PVC)系合成皮革が挙げられる。
【0063】
前記ウレタン系合成皮革としては、例えば、繊維基材層、中間層(接着層)、及び表皮層、並びに、必要に応じて表面処理層が順次積層されたものが挙げられる。
【0064】
前記繊維基材としては、例えば、不織布、織布、編み物等を使用することができる。前記繊維基材を構成するものとしては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維、綿、麻、絹、羊毛、それらの混紡繊維等を使用することができる。
【0065】
前記中間層(接着層)としては、例えば、公知の水系ウレタン樹脂組成物、溶剤系ウレタン樹脂組成物、無溶剤系ウレタン樹脂組成物等を用いて形成されたものが挙げられる。
【0066】
前記表皮層及び表面処理層として、本発明の前記水性ウレタン樹脂組成物を用いない場合には、公知の水系ウレタン樹脂組成物、溶剤系ウレタン樹脂組成物、水系アクリル樹脂組成物、溶剤系アクリル樹脂組成物等を用いて形成することができる。これらの中でも、環境負荷の低減化の点から、水系ウレタン樹脂組成物及び/又は水系アクリル樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0067】
前記ウレタン系合成皮革を製造する方法としては、例えば、離型紙上に表面処理層を形成する樹脂組成物を塗布し、乾燥させた後に、その上に表皮層を形成する樹脂組成物を塗布し、乾燥させた後に、その上に更に中間層(接着層)を形成する樹脂組成物を塗布し、乾燥させた後に、前記繊維基材と貼り合せる方法が挙げられる。この貼り合せの際には、必要に応じて、例えば80〜140℃に加熱された圧着ロール等を使用して、例えば5〜10MPa/m
2の圧力で、熱圧着してもよい。その後、必要に応じて20〜60℃の温度下でエージングを行ってもよい。
【0068】
本発明の水性ウレタン樹脂組成物を用いて表面層及び/又は表面処理層を形成する際に、前記水性ウレタン樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、ロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、アプリケーター等を使用する方法が挙げられる。前記水性ウレタン樹脂組成物の乾燥後の厚さとしては、例えば、5〜100μmの範囲である。
【0069】
本発明の水性ウレタン樹脂組成物の乾燥方法としては、例えば、60〜130℃の温度で30秒〜10分間乾燥させる方法が挙げられる。
【0070】
また、前記PVC系合成皮革としては、例えば、繊維基材層、スポンジ層、PVC層、及び、本発明の水性ウレタン樹脂組成物により形成された表面処理層が順次積層されたものが挙げられる。前記表面処理層以外の各層は、公知の材料により形成されるものであり、前記表面処理層の形成方法は、前記ウレタン系合成皮革における表面処理層と同様の方法を使用することができる。
【0071】
以上、本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、耐摩耗性、及び耐加水分解性に優れるものである。よって、本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、合成皮革の表皮層や表面処理層として好適に使用することができ、従来技術では水系化への置換が困難とされてきた自動車内装材、家具、スポーツシューズ等の高い耐摩耗性、及び耐加水分解性が必要とされる合成皮革の製造に好適に使用することができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0073】
[実施例1]水性ウレタン樹脂組成物(X−1)の調製
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリカーボネートジオール(宇部興産株式会社製「ETERNACOLL UH−200」数平均分子量:2,000、以下「PC−1」と略記する。)500質量部、両末端ジオール型反応性シリコーン(JNC株式会社製「サイラプレーンFM−4425」数平均分子量:10,000、以下「両末端ジオール型Si−1」と略記する。)125質量部、ジメチロールプロピオン酸(以下「DMPA」と略記する。)25質量部、メチルエチルケトン360質量部を加え、均一に混合した後、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下「H
12MDI」と略記する。)177質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。次いで、得られたウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液にトリエチルアミン19質量部を加え、前記ウレタンプレポリマー中にカルボキシル基を中和した後、イオン交換水1960質量部を加え、次いで、エチレンジアミン(以下「EDA」と略記する。)14質量部を加え反応させた。反応終了後、メチルエチルケトンを減圧下留去することによって、水性ウレタン樹脂組成物(X−1)(不揮発分;30質量%、酸価;13KOHmg/g)を得た。
【0074】
[実施例2]水性ウレタン樹脂組成物(X−2)の調製
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素還流管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ株式会社製「DURANOL T5652」、数平均分子量:2,000、以下「PC−2」と略記する。)500質量部、片末端ジオール型反応性シリコーン(信越化学工業株式会社製「X−22−176GX−A」、数平均分子量:14,000、以下「片末端ジオール型Si−1」と略記する。)26質量部、DMPA8質量部、メチルエチルケトン269質量部を加え、均一に混合した後、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」と略記する。)86質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。次いで、得られたウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液にトリエチルアミン6質量部を加え、前記ウレタンプレポリマー中にカルボキシル基を中和した後、イオン交換水1463質量部を加え、次いで、ピペラジン(以下「PZ」と略記する。)7質量部を加え反応させた。反応終了後、メチルエチルケトンを減圧下留去することによって、水性ウレタン樹脂組成物(X−2)(不揮発分;30質量%、酸価;5KOHmg/g)を得た。
【0075】
[実施例3]水性ウレタン樹脂組成物(X−3)の調製
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素還流管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ株式会社製「DURANOL T4692、数平均分子量:2,000、以下「PC−3」と略記する。)500質量部、片末端ジオール型反応性シリコーン(JNC株式会社製「サイラプレーン FM−DA21」、数平均分子量:5,000、以下「片末端ジオール型Si−2」と略記する。)88質量部、DMPA26質量部、メチルエチルケトン332質量部を加え、均一に混合した後、H
12MDIを145質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。次いで、得られたウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液にトリエチルアミン20質量部を加え、前記ウレタンプレポリマー中にカルボキシル基を中和した後、イオン交換水1808質量部を加え、次いで、イソホロンジアミン(以下「IPDA」と略記する。)16質量部を加え反応させた。反応終了後、メチルエチルケトンを減圧下留去することによって、水性ウレタン樹脂組成物(X−3)(不揮発分;30質量%、酸価;14KOHmg/g)を得た。
【0076】
[実施例4]水性ウレタン樹脂組成物(X−4)の調製
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素還流管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、PC−2を500質量部、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量:1,000、以下「PTMF1000」と略記する。)133質量部、片末端ジオール型反応性シリコーン(信越化学工業株式会社製「X−22−176F」、数平均分子量:12,000、以下「片末端ジオール型Si−3」と略記する。)33質量部、DMPA17質量部、メチルエチルケトン385質量部を加え、均一に混合した後、IPDIを86質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。次いで、得られたウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液にトリエチルアミン13質量部を加え、前記ウレタンプレポリマー中にカルボキシル基を中和した後、イオン交換水2098質量部を加え、次いで、EDA15質量部を加え反応させた。反応終了後、メチルエチルケトンを減圧下留去することによって、水性ウレタン樹脂組成物(X−4)(不揮発分;30質量%、酸価;8KOHmg/g)を得た。
【0077】
[実施例5]水性ウレタン樹脂組成物(X−5)の調製
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素還流管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ株式会社製「DURANOL G3452」、数平均分子量:1,000、以下「PC−4」と略記する。)500質量部、片末端モノオール型反応性シリコーン(JNC株式会社製「サイラプレーンFM−0425」、数平均分子量:10,000、以下「片末端モノオール型Si−1」と略記する。)56質量部、DMPA17質量部、メチルエチルケトン291質量部を加え、均一に混合した後、ヘキサンメチレンジイソシアネート(以下「HDI」と略記する。)86質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。次いで、得られたウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液にトリエチルアミン13質量部を加え、前記ウレタンプレポリマー中にカルボキシル基を中和した後、イオン交換水1586質量部を加え、次いで、IPDA22質量部を加え反応させた。反応終了後、メチルエチルケトンを減圧下留去することによって、水性ウレタン樹脂組成物(X−5)(不揮発分;30質量%、酸価;10KOHmg/g)を得た。
【0078】
[実施例6]水性ウレタン樹脂組成物(X−6)の調製
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素還流管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、PC−1を500質量部、両末端ジアミン型反応性シリコーン(JNC株式会社製「サイラプレーンFM−3325」、数平均分子量:10,000、以下「両末端ジアミン型Si−1」と略記する。)125質量部、DMPA25質量部、メチルエチルケトン362質量部を加え、均一に混合した後、H
12MDIを165質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。次いで、得られたウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液にトリエチルアミン19質量部を加え、前記ウレタンプレポリマー中にカルボキシル基を中和した後、イオン交換水1972質量部を加え、次いで、IPDAを31質量部を加え反応させた。反応終了後、メチルエチルケトンを減圧下留去することによって、水性ウレタン樹脂組成物(X−6)(不揮発分;30質量%、酸価;12KOHmg/g)を得た。
【0079】
[実施例7]水性ウレタン樹脂組成物(X−7)の調製
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素還流管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量:2,000、以下「PTMG2000」と略記する。)500質量部、片末端ジオール型Si−2を167質量部、DMPAを23質量部、メチルエチルケトン400質量部を加え、均一に混合した後、IPDIを203質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。次いで、得られたウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液にトリエチルアミン18質量部を加え、前記ウレタンプレポリマー中にカルボキシル基を中和した後、イオン交換水2176質量部を加え、次いで、PZを39質量部加え反応させた。反応終了後、メチルエチルケトンを減圧下留去することによって、水性ウレタン樹脂組成物(X−7)(不揮発分;30質量%、酸価;11KOHmg/g)を得た。
【0080】
[比較例1]水性ウレタン樹脂組成物(X’−1)の調製
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素還流管を備えた4ツ口フラスコに、PC−1を500質量部、両末端ジオール型反応性シリコーン(信越化学工業株式会社製「KF−6002、数平均分子量:3,200、以下「両末端ジオール型Si’−1」と略記する。)125質量部、DMPAを25質量部、メチルエチルケトン360質量部を加え、均一に混合した後、H
12MDIを177質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。次いで、得られたウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液にトリエチルアミン19質量部を加え、前記ウレタンプレポリマー中にカルボキシル基を中和した後、イオン交換水1986質量部を加え、次いで、EDAを14質量部を加え反応させた。反応終了後、メチルエチルケトンを減圧下留去することによって、水系ポリウレタン樹脂組成物(X’−1)(不揮発分;30質量%、酸価;13KOHmg/g)を得た。
【0081】
[比較例2]水性ウレタン樹脂組成物(X’−2)の調製
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素還流管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、PC−3を500質量部、片末端ジオール型反応性シリコーン(JNC製「サイラプレーン FM−DA11」、数平均分子量:1,000、以下「片末端ジオール型Si’−1」と略記する。)88質量部、DMPAを26質量部、メチルエチルケトン343質量部を加え、均一に混合した後、H
12MDIを167質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。次いで、得られたウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液にトリエチルアミン20質量部を加え、前記ウレタンプレポリマー中にカルボキシル基を中和した後、イオン交換水1865質量部を加え、次いで、IPDAを18質量部を加え反応させた。反応終了後、メチルエチルケトンを減圧下留去することによって、水性ウレタン樹脂組成物(X’−2)(不揮発分;30質量%、酸価;14KOHmg/g)を得た。
【0082】
[ウレタン樹脂(A)の酸価の測定方法]
実施例及び比較例で得られた水性ウレタン樹脂組成物を乾燥し、乾燥固化した樹脂粒子の0.05g〜0.5gを、300mL三角フラスコに秤量し、次いで、テトラヒドロフランとイオン交換水との質量割合[テトラヒドロフラン/イオン交換水]が80/20の混合溶媒約80mLを加えそれらの混合液を得た。
次いで、前記混合液にフェノールフタレイン指示薬を混合した後、あらかじめ標定された0.1mol/Lの水酸化カリウム水溶液で滴定し、滴定に用いた水酸化カリウム水溶液の量から下記計算式(1)に従い、水性ウレタン樹脂(A)の酸価(mgKOH/g)を求めた。
計算式 A=(B×f×5.611)/S (1)
式中、Aは樹脂の固形分酸価(mgKOH/g)、Bは滴定に用いた0.1mol/L水酸化カリウム水溶液の量(mL)、fは0.1mol/L水酸化カリウム水溶液のファクター、Sは樹脂粒子の質量(g)、5.611は水酸化カリウムの式量(56.11/10)である。
【0083】
[合成皮革の製造方法]
実施例及び比較例で得られた水性ウレタン樹脂組成物100質量部、水分散性黒色顔料(DIC株式会社製「ダイラックHS−9530」)10質量部、会合型増粘剤(DIC株式会社製「ハイドラン アシスター T10」)1質量部を配合し、離型紙上に乾燥後の膜厚が30μmとなるように塗布し、70℃で2分間乾燥させ、表皮層を得た。
次いで、水性ウレタン接着剤(DIC株式会社製「ハイドランWLA−412」)を100質量部、会合型増粘剤(DIC株式会社製「ハイドラン アシスター T10」)1質量部、ポリイソシアネート架橋剤(DIC株式会社製「ハイドラン アシスター C5」)を9質量部配合し、前記表皮層上に乾燥後の膜厚が50μmとなるように塗布し、70℃で3分間乾燥させた。乾燥後、直ちにT/R起毛布を貼り合せ、120℃で2分間熱処理し、50℃で2日間熟成させてから離型紙を剥離して合成皮革を得た。
【0084】
[耐摩耗性の評価方法]
得られた合成皮革に対し、平面磨耗試験(JASO−M403−88B法、荷重;1kg、ストローク;140mm)を行い、合成皮革の表面が磨耗し基布が確認できるまでの回数を測定し、以下のように評価した。
「A」;30,000回以上
「B」;10,000回以上30,000回未満
「C」;10,000回未満
【0085】
[耐加水分解性の評価方法]
得られた合成皮革を70℃、湿度95%の湿熱条件下で5週間養生した後の外観変化を確認し、以下のように評価した。
「A」;外観に変化なし。
「B」;外観に艶の変化が生じた。
「C」;外観に艶の変化が生じ、かつ、べたつきが生じた。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
本発明である実施例1〜7は、優れた耐摩耗性、及び耐加水分解性を有することが分かった。
【0089】
一方、比較例1及び2は、数平均分子量が本発明で規定する範囲を下回る反応性シリコーンを用いた態様であるが、いずれも耐摩耗性が不十分であり、耐摩耗性、及び耐加水分解性を両立することができなかった。
本発明は、ポリオール(a1)と、数平均分子量が4,000以上であり、イソシアネート基と反応する官能基を有する反応性シリコーン(a2)と、ポリイソシアネート(a3)とを必須原料とした反応物であるウレタン樹脂(A)、及び、水性媒体(B)を含有することを特徴とする水性ウレタン樹脂組成物を提供するものである。また、本発明は、前記水性ウレタン樹脂組成物により形成された表皮層及び/又は表面処理層を有することを特徴とする合成皮革を提供するものである。本発明が解決しようとする課題は、耐摩耗性、及び耐加水分解性に優れる水性ウレタン樹脂組成物を提供することである。本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、合成皮革の表皮層や表面処理層として好適に使用することができる。