(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪パターン微細化用被覆剤≫
本発明に係るパターン微細化用被覆剤(以下、被覆剤とも記す。)は、(A)水溶性ポリマーと、所定の構造の(B)含窒素化合物とを含む。パターン微細化用被覆剤は、通常、溶液の状態で使用されるため、(S)溶媒を含んでいてもよい。また、パターン微細化用被覆剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で、従来、パターン微細化用被覆剤に配合されていた種々の成分を含んでいてもよい。以下、パターン微細化用被覆剤が含む、必須又は任意の成分について説明する。
【0016】
<(A)水溶性ポリマー>
水溶性ポリマーの種類は、所望の膜厚の塗布膜を形成可能な濃度で溶媒に対して溶解可能であって、溶媒に溶解させた場合にゲル化しないものであれば特に限定されない。
【0017】
水溶性ポリマーの好適な例としては、一種以上のアクリル系単量体の重合体、一種以上のビニル系単量体の重合体、アクリル系単量体とビニル系単量体との共重合体、セルロース系樹脂、アミド系樹脂、及び水溶性ペプチドの中から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0018】
アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、及びアクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0019】
ビニル系単量体としては、例えば、N−ビニルピロリドン、ビニルイミダゾリジノン、N−ビニルイミダゾール、酢酸ビニル、及びアリルアミン等が挙げられる。
【0020】
ビニル系単量体の重合体、又はアクリル系単量体とビニル系単量体との共重合体が酢酸ビニル由来する構成単位を有する場合、かかる構成単位のエステル基を加水分解してビニルアルコール単位としてもよい。また、そのビニルアルコール単位の水酸基は、アセタール等で保護されてもよい。
【0021】
セルロース系樹脂としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロール、セルロールアセテートヘキサヒドロフタレート、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等が挙げられる。
【0022】
さらに、アミド系樹脂の中で水溶性のものも用いることができる。
【0023】
これら中でも、ビニル系樹脂が好ましく、特にはポリビニルピロリドンやポリビニルアルコールが好ましい。
【0024】
一種以上のアクリル系単量体の重合体、一種以上のビニル系単量体の重合体、アクリル系単量体とビニル系単量体との共重合体、セルロース系樹脂、及びアミド系樹脂の質量平均分子量は、500以上20000以下であることが好ましく、1000以上5000以下であることがより好ましい。
【0025】
水溶性ペプチドは、室温で水への溶解性が高く、低温でもゲル化しにくいペプチドであればよく、特に制限されない。水溶性ペプチドの質量平均分子量は10000以下であることが好ましく、5000以下がより好ましい。質量平均分子量が10000以下である場合、水への溶解性が高く、低温でもゲル化しにくいため、溶液の安定性が高くなる。なお、質量平均分子量の下限は500以上が好ましい。また、水溶性ペプチドは天然物由来であってもよく、合成物であってもよい。また、水溶性ペプチドの誘導体であってもよい。
【0026】
水溶性ペプチドとしては、例えば、コラーゲン由来の加水分解ペプチド、絹糸タンパク由来の加水分解ペプチド、大豆タンパク由来の加水分解ペプチド、小麦タンパク由来の加水分解ペプチド、コメタンパク由来の加水分解ペプチド、ゴマタンパク由来の加水分解ペプチド、エンドウタンパク由来の加水分解ペプチド、羊毛タンパク由来の加水分解ペプチド、カゼイン由来の加水分解ペプチド等が挙げられる。
【0027】
これらの水溶性ポリマーは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。水溶性塗布膜材料における、水溶性樹脂の使用量は特に限定されず、形成したい塗布膜の膜厚や、被覆剤の粘度を考慮して適宜定められる。被覆剤における水溶性樹脂の含有量は、パターン微細化用被覆剤の全質量を100質量%とする場合に、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。
【0028】
<(B)含窒素化合物>
被覆剤は、特定の構造の(B)含窒素化合物を含有する。(B)含窒素化合物は、窒素原子に結合する炭素数8以上のアルキル基を有し、当該アルキル基が結合している窒素原子1モルに対して、4モル以上のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドが付加した化合物である。(B)含窒素化合物に含まれる窒素原子の数は、(B)含窒素化合物が所定の構造である限り特に限定されないが、通常、1であるのが好ましい。
【0029】
上記の構造を有する(B)含窒素化合物は、オキシエチレン単位及びオキシプロピレン単位と、長鎖アルキル基とを有することにより界面活性剤的な性質も有する。このため、本発明に係る被覆剤を用いる場合、(B)含窒素化合物がレジストパターンの表面に良好に吸着されやすく、レジストパターンの表面に吸着された(B)含窒素化合物が、界面活性剤的な作用によってレジストパターンの表層のガラス転移点(Tg)を低下させると思われる。Tgが低下することにより、パターンはよりシュリンクしやすくなる。
【0030】
また、(B)含窒素化合物は、その塩基的な性質に基づいて、レジストパターンの表面に良好に吸着された際、脱保護が不十分で現像処理で溶解し切れなかった、レジストパターンの表面を一部溶解させると思われる。このため、本発明に係る被覆剤を用いてパターンを微細化すると、レジストパターンの表面が平滑化され、例えば、レジストパターンがホールパターンである場合には、ホールの真円性(ホールの形状のがたつきやゆがみが小さく、より円形に近いこと)が高まると考えられる。また、パターン表面の平滑化により、シュリンク前のCDばらつきが小さくなることにより、シュリンク後のCDユニフォミティも改善される。
【0031】
(B)含窒素化合物としては、下式(1)又は下式(2)で表される化合物が好ましい。
【化1】
(式(1)中、R
1は炭素数8以上のアルキル基であり、R
2は−(A−O)
q−R
5で表される基であり、R
3は水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は−(A−O)
r−R
5で表される基である。式(2)中、R
1及びR
2は式(1)と同様であり、R
3はアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は−(A−O)
r−R
5で表される基であり、R
4はアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は−(A−O)
s−R
5で表される基であり、X
−は1価のアニオンである。Aはエチレン基又はプロピレン基であり、R
5は水素原子又はアルキル基であり、qは正の数であり、r、及びsはそれぞれ0又は正の数であり、q+r+sは4以上である。)
【0032】
式(1)及び式(2)で表される化合物において、R
1としては炭素原子数8以上のアルキル基が好ましく、炭素原子数12以上のアルキル基がより好ましい。R
1としてのアルキル基の炭素原子数は20以下が好ましい。R
1としてのアルキル基の構造は特に限定されず、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0033】
R
1としてのアルキル基の好適な具体例としては、n−オクチル基、オクタン−2−イル基、オクタン−3−イル基、2−エチルヘキシル基、5−メチル−へプチル基、n−ノニル基、ノナン−2−イル基、ノナン−3−イル基、n−デシル基、イソデシル基、デカン−2−イル基、デカン−3−イル基、7,7−ジメチルオクチル基、n−ウンデシル基、ウンデカン−2−イル基、ウンデカン−3−イル基、n−ドデシル基、ドデカン−2−イル基、ドデカン−3−イル基、ドデカン−4−イル基、n−トリデシル基、トリデカン−2−イル基、n−テトラデシル基、テトラデカン−2−イル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、ヘキサデカン−2−イル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、オクタデカン−2−イル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、及びイコサン−2−イル基が挙げられる。
【0034】
式(1)及び式(2)で表される化合物が有する基である、−(A−O)
q−R
5、−(A−O)
r−R
5、及び−(A−O)
s−R
5について、q、r、及びsは、それぞれ、窒素原子に対するエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの平均付加数であって、整数でない場合がある。
【0035】
式(1)及び式(2)で表される化合物が有する基である、−(A−O)
q−R
5、−(A−O)
r−R
5、及び−(A−O)
s−R
5について、R
5は水素原子又はアルキル基であって、水素原子であるのが好ましい。R
5がアルキル基である場合の炭素原子数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。R
5がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、及びn−ヘキシル基が挙げられる。
【0036】
式(1)で表される化合物については、R
2が−(A−O)
q−Hで表される基であり、R
3が−(A−O)
r−Hで表される基であるのが好ましい。式(2)で表される化合物については、R
2が−(A−O)
q−Hで表される基であり、R
3が−(A−O)
r−Hで表される基であり、R
4が−(A−O)
s−Hで表される基であるのが好ましい。
【0037】
式(1)及び式(2)において、q+r+sの値は4以上であり、4以上25以下が好ましく、4以上20以下がより好ましい。(B)含窒素化合物として、q+r+sの値が上記の範囲内となるように、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドが窒素原子に付加している化合物を被覆剤に配合することで、レジストパターンの良好な微細化と、微細化されたパターンにおけるCDのばらつきの抑制とを両立できる。
【0038】
式(1)及び式(2)において、R
3又はR
4がアルキル基又はヒドロキシアルキル基である場合、アルキル基及びヒドロキシアルキル基の炭素原子数は特に限定されず、1〜8が好ましく、1〜6がより好ましい。R
3又はR
4がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル、及びn−オクチル基が挙げられる。R
3又はR
4がヒドロキシアルキル基である場合の具体例としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシ−n−プロピル基、4−ヒドロキシ−n−ブチル基、5−ヒドロキシ−n−ペンチル基、6−ヒドロキシ−n−ヘキシル基、7−ヒドロキシ−n−へプチル基、8−ヒドロキシ−n−オクチル基が挙げられる。
【0039】
式(2)において、X
−は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。X
−としては、水酸化物イオンや、塩化物イオン、臭化物イオン、沃化物イオンのようなハロゲン化物イオンが好ましく、水酸化物イオンがより好ましい。
【0040】
式(1)で表される化合物の好ましい例としては、以下のものが挙げられる。下式中、m及びnは正の数であり、m+nは4以上である。
【化2】
【0041】
式(2)で表される化合物の好ましい例としては、以下のものが挙げられる。下式中、m、n、及びlは正の数であり、m+n+lは4以上である。
【化3】
【0042】
以上説明した(B)含窒素化合物は、複数種を組み合わせて用いてもよい。被覆剤中の(B)含窒素化合物の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。被覆剤中の(B)含窒素化合物の含有量は、被覆剤の全液量に対して、0.001質量%以上1質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.8質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下が特に好ましい。
【0043】
<(S)溶媒>
被覆剤は、通常、以上説明した(A)水溶性ポリマーと、(B)含窒素化合物とを含有る水溶液として用いられる。被覆剤の固形分濃度は0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。
【0044】
なお、被覆剤は水溶液であるのが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、水の他に、アルコール系溶媒を含んでいてもよい。このようなアルコール系溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール等が挙げられる。これらのアルコール系溶媒は、水100質量部に対して30質量部を上限として用いられる。
【0045】
<(C)任意の添加剤>
パターン微細化用被覆剤は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、水溶性架橋剤、界面活性剤、水溶性フッ素化合物、アミド基含有モノマー、少なくとも酸素原子及び/又は窒素原子を有する複素環式化合物、少なくとも同一環内に2個以上の窒素原子を有する複素環式化合物、水溶性アミン化合物、非アミン系水溶性有機溶媒等の任意の添加剤を含んでいてもよい。以下これらの任意の添加剤について順に説明する。
【0046】
・水溶性架橋剤
水溶性架橋剤としては、少なくとも2個の水素原子がヒドロキシアルキル基及び/又はアルコキシアルキル基で置換された、アミノ基及び/又はイミノ基を有する含窒素化合物が好ましく用いられる。これら含窒素化合物としては、例えば、アミノ基の水素原子がメチロール基又はアルコシキメチル基、あるいはその両方で置換された、メラミン系誘導体、尿素系誘導体、グアナミン系誘導体、アセトグアナミン系誘導体、ベンゾグアナミン系誘導体、スクシニルアミド系誘導体や、イミノ基の水素原子が置換されたグリコールウリル系誘導体、エチレン尿素系誘導体等を挙げることができる。
【0047】
これら含窒素化合物の中でも、架橋反応性の点から、少なくとも2個の水素原子がメチロール基、又は炭素原子数1〜6の低級アルコキシメチル基、あるいはその両方で置換された、アミノ基及び/又はイミノ基を有する、ベンゾグアナミン系誘導体、グアナミン系誘導体、メラミン系誘導体等のトリアジン誘導体、グリコールウリル系誘導体、及び尿素系誘導体のうちの1種以上が好ましい。
【0048】
パターン微細化用被覆剤が水溶性架橋剤を含む場合、水溶性架橋剤の含有量は、パターン微細化用被覆剤の固形分の質量に対して、1〜35質量%であるのが好ましい。
【0049】
・界面活性剤
界面活性剤としては、(A)水溶性ポリマーに対して溶解性が高く、被覆剤に懸濁を発生しない等の特性が必要である。このような特性を満たす界面活性剤を用いることにより、特に被覆形成剤を塗布する際の気泡(マイクロフォーム)発生を抑えることができ、このマイクロフォーム発生と関係があるとされるディフェクトの発生をより効果的に防止することができる。上記の点から、N−アルキルピロリドン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩系界面活性剤、ポリオキシエチレンのリン酸エステル系界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のうちの1種以上が好ましく用いられる。
【0050】
上記N−アルキルピロリドン系界面活性剤としては、下式(C1)で表されるもの
が好ましい。
【化4】
【0051】
上記式(C1)中、R
c1は、炭素原子数6以上のアルキル基を示す。
【0052】
かかるN−アルキルピロリドン系界面活性剤として、具体的には、N−ヘキシル−2−ピロリドン、N−ヘプチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドン、N−ノニル−2−ピロリドン、N−デシル−2−ピロリドン、N−デシル−2−ピロリドン、N−ウンデシル−2−ピロリドン、N−ドデシル−2−ピロリドン、N−トリデシル−2−ピロリドン、N−テトラデシル−2−ピロリドン、N−ペンタデシル−2−ピロリドン、N−ヘキサデシル−2−ピロリドン、N−ヘプタデシル−2−ピロリドン、N−オクタデシル−2−ピロリドン等が挙げられる。中でも、N−オクチル−2−ピロリドン(「SURFADONE LP100」;ISP社製)が好ましく用いられる。
【0053】
上記第4級アンモニウム系界面活性剤としては、下式(C2)で表されるものが好ましい。
【化5】
【0054】
上記式(C2)中、R
c2、R
c3、R
c4、R
c5は、それぞれ独立に、アルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し(ただし、そのうちの少なくとも1つは炭素原子数6以上のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す)、Y
−は水酸化物イオン又はハロゲン化物イオンを示す。
【0055】
かかる第4級アンモニウム系界面活性剤として、具体的には、ドデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、トリデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ペンタデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘプタデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクタデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。中でも、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましく用いられる。
【0056】
上記ポリオキシエチレンのリン酸エステル系界面活性剤としては、下式(C3)で表されるものが好ましい。
【化6】
【0057】
上記式(C3)中、R
c6は、炭素原子数1〜10のアルキル基又はアルキルアリル基を示し、R
c7は、水素原子又は(CH
2CH
2O)R
c6(R
c6は上記で定義した通り)を示し、xは1〜20の整数を示す。
【0058】
かかるポリオキシエチレンのリン酸エステル系界面活性剤としては、具体的には「プライサーフA212E」、「プライサーフA210G」(以上、いずれも第一工業製薬株式会社製)等として市販されているものを好適に用いることができる。
【0059】
上記ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンのアルキルエーテル化物又はアルキルアミンオキシド化合物であることが好ましい。
【0060】
上記ポリオキシアルキレンのアルキルエーテル化物としては、下式(C4)又は(C5)で表される化合物が好ましく用いられる。
【化7】
【0061】
上記式(C4)、(C5)において、R
c8及びR
c9は、炭素原子数1〜22の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、水酸基を有するアルキル基、又はアルキルフェニル基を示す。A
0は、オキシアルキレン基であり、オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレン基の中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。yは整数である。
【0062】
アルキルアミンオキシド化合物としては、下式(C6)又は(C7)で表される化合物が好ましく用いられる。
【化8】
【0063】
上記式(C6)及び(C7)において、R
c10は、酸素原子で中断されていてもよい炭素原子数8〜20のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、p及びqは1〜5の整数を示す。
【0064】
上記式(6)、又は式(7)で表されるアルキルアミンオキシド化合物としては、オクチルジメチルアミンオキシド、ドデシルジメチルアミンオキシド、デシルジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド、セチルジメチルアミンオキシド、ステアリルジメチルアミンオキシド、イソヘキシルジエチルアミンオキシド、ノニルジエチルアミンオキシド、ラウリルジエチルアミンオキシド、イソペンタデシルメチルエチルアミンオキシド、ステアリルメチルプロピルアミンオキシド、ラウリルジ(ヒドロキシエチル)アミンオキシド、セチルジエタノールアミンオキシド、ステアリルジ(ヒドロキシエチル)アミンオキシド、ドデシルオキシエトキシエトキシエチルジ(メチル)アミンオキシド、ステアリルオキシエチルジ(メチル)アミンオキシド等が挙げられる。
【0065】
これらの界面活性剤の中でも、特にディフェクト低減の点からは、ノニオン性界面活性剤が好ましく用いられる。
【0066】
このような界面活性剤を添加する場合の添加量は、被覆剤の固形分中、1質量ppm〜10質量%が好ましく、100質量ppm〜2質量%がより好ましい。
【0067】
・水溶性フッ素化合物
水溶性フッ素化合物としては、(A)水溶性ポリマーに対し溶解性が高く、被覆剤に懸濁を発生しない等の特性が必要である。このような特性を満たす水溶性フッ素化合物を用いることにより、さらにレベリング性(被覆剤の広がり度合い)を向上させることができる。このレベリング性は、界面活性剤の過剰量添加による接触角の引き下げにより達成することも可能であるが、界面活性剤添加量を過剰にした場合、ある一定以上の塗布向上性が認められないばかりか、過剰量とすることにより、塗布した際に被膜上に気泡(マイクロフォーム)が発生し、ディフェクトの原因となり得るという問題がある。この水溶性フッ素化合物を配合することにより、そのような発泡を抑制しつつ、接触角を下げ、レベリング性を向上させることができる。
【0068】
かかる水溶性フッ素化合物としては、フルオロアルキルアルコール類、フルオロアルキルカルボン酸類等が好ましく用いられる。フルオロアルキルアルコール類としては、2−フルオロ−1−エタノール、2,2−ジフルオロ−1−エタノール、トリフルオロエタノール、テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロアミルアルコール等が挙げられる。フルオロアルキルカルボン酸類としては、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。ただし、これら例示に限定されるものではなく、水溶性を有するフッ素化物であって、上述の効果を奏するものであれば限定されない。特には、炭素原子数6以下のフルオロアルキルアルコール類が好ましく用いられる。中でも入手しやすさ等の点から、トリフルオロエタノールが特に好ましい。
【0069】
このような水溶性フッ素化合物を添加する場合の添加量は、被覆剤の固形分中、0.1〜30質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましい。
【0070】
・アミド基含有モノマー
アミド基含有モノマーとしては、特に限定されるものではないが、(A)水溶性ポリマーとの相溶性に優れ、被覆剤において懸濁を発生しない等の特性が必要である。
【0071】
かかるアミド基含有モノマーとしては、下式(C8)で表されるアミド化合物が好ましく用いられる。
【化9】
【0072】
上記式(C8)において、R
c11は、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示し、R
c12は、炭素原子数1〜5のアルキル基を示し、R
c13は、水素原子又はメチル基を示し、zは0〜5の整数を示す。上記においてアルキル基、ヒドロキシアルキル基は直鎖、分岐鎖のいずれも含む。
【0073】
上記式(C8)で表されるアミド基含有モノマーとしては、R
c11が水素原子、メチル基、又はエチル基であり、zが0である化合物がより好ましく用いられる。このようなアミド基含有モノマーとしては、具体的には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等が挙げられる。中でも、アクリルアミド、メタクリルアミドが特に好ましい。
【0074】
このようなアミド基含有モノマーを添加する場合の添加量は、被覆剤の固形分中、0.1〜30質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましい。
【0075】
・少なくとも酸素原子及び/又は窒素原子を有する複素環式化合物
被覆剤は、少なくとも酸素原子及び/又は窒素原子を有する複素環式化合物を含んでいてもよい。このような複素環式化合物としては、オキサゾリジン骨格を有する化合物、オキサゾリン骨格を有する化合物、オキサゾリドン骨格を有する化合物、及びオキサゾリジノン骨格を有する化合物の中から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0076】
上記オキサゾリジン骨格を有する化合物としては、下式(C9)で表されるオキサゾリンのほか、その置換体が挙げられる。
【化10】
【0077】
該置換体としては、上記式(C9)で表されるオキサゾリンの炭素原子あるいは窒素原子に結合する水素原子が、炭素原子数1〜6の置換若しくは未置換の低級アルキル基、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン基で置換された化合物が挙げられる。上記置換された低級アルキル基としては、ヒドロキシアルキル基、低級アルコキシアルキル基等が挙げられるが、これら例示に限定されるものではない。
【0078】
上記オキサゾリン骨格を有する化合物としては、下式(C9−1)で表される2−オキサゾリン、式(C9−2)で表される3−オキサゾリン、式(C9−3)で表される4−オキサゾリンのほか、それらの置換体が挙げられる。
【化11】
【0079】
該置換体としては、上記式(C9−1)〜(C9−3)で表されるオキサゾリン骨格を有する化合物の炭素原子あるいは窒素原子に結合する水素原子が、炭素原子数1〜6の置換若しくは未置換の低級アルキル基、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン基で置換された化合物が挙げられる。上記置換された低級アルキル基としては、ヒドロキシアルキル基、低級アルコキシアルキル基等が挙げられるが、これら例示に限定されるものではない。
【0080】
上記オキサゾリン骨格を有する化合物の中でも、下式(C9−1−A)で表される2−メチル−2−オキサゾリンが好ましく用いられる。
【化12】
【0081】
上記オキサゾリドン骨格を有する化合物としては、下式(C9−4)で表される5(4)−オキサゾロン、下式(C9−5)で表される5(2)−オキサゾロン、下式(C9−6)で表される4(5)−オキサゾロン、下式(C9−7)で表される2(5)−オキサゾロン、下式(C9−8)で表される2(3)−オキサゾロンの他、それらの置換体が挙げられる。
【化13】
【0082】
該置換体としては、上記式(C9−4)〜(C9−8)で表されるオキサゾリドン骨格を有する化合物の炭素原子あるいは窒素原子に結合する水素原子が、炭素原子数1〜6の置換若しくは未置換の低級アルキル基、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン基で置換された化合物が挙げられる。上記置換された低級アルキル基としては、ヒドロキシアルキル基、低級アルコキシアルキル基等が挙げられるが、これら例示に限定されるものではない。
【0083】
上記オキサゾリジノン骨格を有する化合物(又は2−オキサゾリドン骨格を有する化合物)としては、下式(C10)で表されるオキサゾリジノン(又は2−オキサゾリドン)のほか、その置換体が挙げられる。
【化14】
【0084】
該置換体としては、上記式(C10)で表されるオキサゾリジノン(又は2−オキサゾリドン)の炭素原子あるいは窒素原子に結合する水素原子が、炭素原子数1〜6の置換若しくは未置換の低級アルキル基、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン基で置換された化合物が挙げられる。上記置換された低級アルキル基としては、ヒドロキシアルキル基、(低級アルコキシ)アルキル基等が挙げられるが、これら例示に限定されるものではない。
【0085】
該オキサゾリジノン骨格を有する化合物の中でも、下式(10−1)で表される3−メチル−2−オキサゾリドンが好ましく用いられる。
【化15】
【0086】
このような少なくとも酸素原子及び/又は窒素原子を有する複素環式化合物を添加する場合の添加量は、上記(A)水溶性ポリマーに対し、1〜50質量%とするのが好ましく、より好ましくは3〜20質量%に調整することが好ましい。
【0087】
・少なくとも同一環内に2個以上の窒素原子を有する複素環式化合物
少なくとも同一環内に2個以上の窒素原子を有する複素環式化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、2−ピラゾリン、5−ピラゾロン、3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロン、2,3−ジメチル−1−フェニル−5−ピラゾロン、2,3−ジメチル−4−ジメチルアミノ−1−フェニル−5−ピラゾロン、ベンゾピラゾール等のピラゾール系化合物;イミダゾール、メチルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、4−(2−アミノエチル)イミダゾール、2−アミノ−3−(4−イミダゾリル)プロピオン酸等のイミダゾール系化合物;2−イミダゾリン、2,4,5−トリフェニル−2−イミダゾリン、2−(1−ナフチルメチル)−2−イミダゾリン等のイミダゾリン系化合物;イミダゾリジン、2−イミダゾリドン、2,4−イミダゾリジンジオン、1−メチル−2,4−イミダゾリジンジオン、5−メチル−2,4−イミダゾリジンジオン、5−ヒドロキシ−2,4−イミダゾリジンジオン−5−カルボン酸、5−ウレイド−2,4−イミダゾリジンジオン、2−イミノ−1−メチル−4−イミダゾリドン、2−チオキソ−4−イミダゾリドン等のイミダゾリジン系化合物;ベンゾイミダゾール、2−フェニルベンゾイミダゾール、2−ベンゾイミダゾリノン等のベンゾイミダゾール系化合物;1,2−ジアジン、1,3−ジアジン、1,4−ジアジン、2,5−ジメチルピラジン等のジアジン系化合物;2,4(1H,3H)ピリミジンジオン、5−メチルウラシル、5−エチル−5−フェニル−4,6−パーヒドロピリミジンジオン、2−チオキソ−4(1H,3H)−ピリミジノン、4−イミノ−2(1H,3H)−ピリミジン、2,4,6(1H,3H,5H)−ピリミジントリオン等のヒドロピリミジン系化合物;シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、ルミノール等のベンゾジアジン系化合物;ベンゾシノリン、フェナジン、5,10−ジヒドロフェナジン等のジベンゾジアジン系化合物;1H−1,2,3−トリアゾール、1H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール系化合物;ベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物;1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオール、2,4,6−トリメトキシ−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン−2−オール等のトリアジン系化合物等が挙げられるが、これら例示に限定されるものではない。
【0088】
中でも、取り扱いが容易であり、さらには入手が容易である等の点から、イミダゾール系化合物の単量体が好ましく用いられ、特にはイミダゾールが好ましく用いられる。
【0089】
このような少なくとも同一環内に2個以上の窒素原子を有する複素環式化合物を添加する場合の添加量は、(A)水溶性ポリマーに対し、1〜15質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。
【0090】
・水溶性アミン化合物
このような水溶性アミン化合物を被覆剤に配合することにより、さらに不純物発生防止、pH調整等が可能となる。
【0091】
かかる水溶性アミン化合物としては、(B)含窒素化合物に該当しない化合物であって、25℃の水溶液におけるpKa(酸解離定数)が7.5〜13のアミン類が挙げられる。具体的には、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、N−エチル−エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン等のポリアルキレンポリアミン類;2−エチル−ヘキシルアミン、ジオクチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、ヘプチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂肪族アミン類;ベンジルアミン、ジフェニルアミン等の芳香族アミン類;ピペラジン、N−メチル−ピペラジン、ヒドロキシエチルピペラジン等の環状アミン類等が挙げられる。中でも、沸点140℃以上(760mmHg下)のものが好ましく、例えばモノエタノールアミン、トリエタノールアミン等が好ましく用いられる。
【0092】
このような水溶性アミン化合物を添加する場合の添加量は、被覆形成剤の固形分中、0.1〜30質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましい。
好ましい。
【0093】
・非アミン系水溶性有機溶媒
非アミン系水溶性有機溶媒を被覆剤に配合する場合、微細化されたレジストパターンにおけるパターンの欠陥であるディフェクトの発生を抑制しやすい。
【0094】
かかる非アミン系水溶性有機溶媒は、水と混和性のある非アミン系有機溶媒であればよく、例えばジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン等のスルホン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシメチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン等のラクタム類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール等の多価アルコール類及びその誘導体が挙げられる。中でも、ディフェクト発生抑制等の点から多価アルコール類及びその誘導体が好ましく、特にはグリセリンが好ましく用いられる。非アミン系水溶性有機溶媒は1種又は2種以上を用いることができる。
【0095】
このような非アミン系水溶性有機溶媒を添加する場合の添加量は、(A)水溶性ポリマーに対し、0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
【0096】
以上説明した成分を、所望の比率で混合した後、均一に溶解させることで、本発明に係るパターン微細化用被覆剤を調製することができる。
【0097】
≪微細パターンの形成方法≫
以上説明した被覆剤を用いて微細パターンを形成する方法を、以下に説明する。微細パターンは、基板上のレジストパターンを前述の被覆剤からなる被膜で被覆した後に、加熱処理により被覆剤を熱収縮させてレジストパターンの間隔を狭小化させ、次いで、被膜を除去することで形成される。
【0098】
レジストパターンを有する基板の作製は、特に限定されるものでなく、半導体デバイス、液晶表示素子、磁気ヘッドあるいはマイクロレンズ等の製造において用いられる常法により行うことができる。例えば、シリコンウェーハ等の基板上に、化学増幅型等のホトレジスト用組成物を、スピンナー等で塗布、乾燥してホトレジスト層を形成した後、縮小投影露光装置等により、紫外線、deep−UV、エキシマレーザー光等の活性光線を、所望のマスクパターンを介して、真空中、あるいは所定の屈折率を有する液体を介して照射するか、あるいは電子線により描画した後、加熱し、次いでこれを現像液、例えば1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液等のアルカリ性水溶液等を用いて現像処理することによって、基板上にホトレジストパターンを形成することができる。
【0099】
なお、レジストパターンの材料となるホトレジスト用組成物としては、特に限定されるものではなく、i、g線用ホトレジスト組成物、KrF、ArF、F
2等のエキシマレーザー用ホトレジスト組成物、さらにはEB(電子線)用ホトレジスト組成物、EUV用ホトレジスト等、広く一般的に用いられるホトレジスト組成物を用いることができる。
【0100】
次いで、レジストパターンを有する基板上全面にわたって、被覆剤を塗布してレジストパターンを被覆剤からなる被膜で被覆する。なお、該被覆剤を塗布した後に、80〜100℃の温度で30〜90秒間、基板にプリベークを施してもよい。
【0101】
被覆方法は従来の熱フロープロセスにおいて通常行われていた方法に従って行うことができる。すなわち、例えばバーコーター法、ロールコーター法、スリットコーター法、スピンナーを用いた回転塗布等の公知の塗布手段により、上記被覆剤が基板上に塗布される。
【0102】
被膜形成後、加熱処理を行って、被覆剤からなる被膜を熱収縮させる。この被膜の収縮作用により、該被膜に接するレジストパターンが被膜の収縮相当分幅広・広大となり、レジストパターン同士が互いに近接した状態となってレジストパターン間の間隔が狭められる。
【0103】
加熱処理温度は、被覆剤からなる被膜の収縮を起し得る温度であって、パターンの微細化を行うに十分な温度であれば、特に限定されず、レジストパターンが熱流動を起こさない温度で加熱するのが好ましい。レジストパターンが熱流動を起こさない温度とは、被覆剤からなる被膜が形成されてなく、レジストパターンだけを形成した基板を加熱した場合、該レジストパターンに寸法変化(例えば、自発的流動による寸法変化等)を生じさせない温度をいう。このような温度での加熱処理により、プロファイルの良好な微細パターンの形成をより一層効果的に行うことができ、また特にウェーハ面内におけるデューティ(Duty)比、すなわちウェーハ面内におけるパターン間隔に対する依存性を小さくすることができる等の点において極めて効果的である。現在のホトリソグラフィ技術において用いられる種々のレジスト組成物の熱流動が起こり始める温度を考慮すると、好ましい加熱処理は通常、80〜180℃の温度範囲で、ただしホトレジストが熱流動を起こさない温度で、30〜90秒間行われる。
【0104】
また、被覆剤からなる被膜の厚さとしては、ホトレジストパターンの高さと同程度あるいはそれを覆う程度の高さが好ましい。
【0105】
加熱処理後、レジストパターンを有する基板上に残留する被覆形剤からなる被膜は、水系溶剤、好ましくは純水による10〜60秒間の洗浄により除去される。なお、水洗に先立ち、所望によりアルカリ水溶液(例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等)でリンス処理をしてもよい。本発明に係る被覆形成剤は、水での洗浄除去が容易で、且つ、基板及びレジストパターンから完全に除去することができる。
【0106】
以上の工程を経て、幅広・広大となったレジストパターンの間に画定された、微小化されたパターンを有する基板が得られる。なお、以上説明した工程は、レジストパターンが所望する程度に微細化されるまで、繰返して行われてもよい。
【0107】
以上説明する方法により、特定の(B)含窒素化合物を含有する前述の被覆剤を用いてレジストパターンを微細化することで、良好に微細化されており、且つ、CDのばらつきが抑制された微細パターンを形成できる、
【実施例】
【0108】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0109】
〔実施例1及び比較例1〜8〕
ポリビニルアルコール2質量部と、表1に記載の種類の含窒素化合物0.3質量部と、アニオン性界面活性剤(プライサーフA210G、第一工業製薬社製)0.02質量部とを、イオン交換蒸留水(97.68質量部)に溶解させて被覆剤を調製した。
【0110】
実施例1では、含窒素化合物として下式で表される化合物1(3級アミン化合物)を用いた。
【化16】
(上記式中、m及びnの和は平均7である。)
【0111】
比較例2〜9では、含窒素化合物として以下の比較化合物1〜8を用いた。
比較化合物1:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド
比較化合物2:N−メチルエタノールアミン
比較化合物3:トリエチルアミン
比較化合物4:ジエチレントリアミン
比較化合物5:2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール
比較化合物6:エタノールアミン
比較化合物7:テトラヒドロフラン−2−メタンアミン
比較化合物8:トリエタノールアミン
【0112】
(評価)
8インチシリコンウェーハ上に反射防止膜形成用塗布液(Brewer社製、ARC−29A)を塗布した後、205℃にて60秒間加熱処理して、膜厚85nmの反射防止膜を設けた。この反射防止膜上に、ArFレジスト(東京応化工業株式会社製、TARF−P6619)をスピンナーを用いて塗布した後、115℃で60秒間加熱処理して、膜厚150nmのレジスト膜を形成させた。このようにして形成されたレジスト膜に対して、露光装置(株式会社ニコン製、Nikon NSR−S308F)を用い、直径90nmコンタクトホール(CH)のハーフトーンマスクパターンを介して露光処理した後、115℃で60秒間加熱処理した。その後、2.38質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液を用いて現像処理して、ホールパターンを得た。
【0113】
ホールパターンを備える基板の表面に対して、各実施例又は比較例の被覆剤を、被膜の膜厚が50nmとなるように塗布して、ホールパターンの表面を被覆剤からなる被膜で被覆した。次いで、被覆剤で被覆されたホールパターンを、130℃で60秒間加熱処理し、該ホールパターンの微細化処理を行った。その後、23℃で純水を用いて被覆剤を除去した。このようにして形成された、微細化処理が施されたパターンについて、以下の評価を行った。
【0114】
未処理のパターンと、微細化処理が施されたパターンとを、上面より、1視野に16個のコンタクトホールが含まれるように測長SEM(走査型電子顕微鏡、商品名:CG4100、日立ハイテクノロジーズ製)で観察した。計6視野について、16個のコンタクトホールを含むSEM画像を取得した。取得されたSEM画像から、各ホールの直径に該当するCDと、微細化処理されたパターン(ホール)の収縮量と、ホールの直径の面内均一性の指標であるCDU(nm)と、ホールの真円性とを求めた。
【0115】
96個のホールのCDの平均値を、未処理パターン又は微細化処理されたパターンのCD値とした。パターンの収縮量は、未処理パターンのCD値から、微細化処理が施されたパターンのCD値を除して求めた。96個のホールのCDから、標準偏差(σ)の3倍値(3σ)を、CDU(パターン寸法の面内均一性)の値(nm)として求めた。
【0116】
ホールの真円性は、以下のようにして求めた。まず、各ホールの中心線からホールの外縁までの距離を、各ホールの中心から24方向について測定した。96ホールについて得られた、24方向の距離のデータから、標準偏差(σ)の3倍値(3σ)を、ホールの真円性の値(nm)として求めた。このようにして求められる3σの値が小さいほど、当該ホールの真円性が高いことを意味する。
【0117】
【表1】
【0118】
表1によれば、窒素原子に結合する炭素数8以上のアルキル基を有し、アルキル基が結合している窒素原子1モルに対して、4モル以上のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドが付加している含窒素化合物である化合物1を含む実施例1の被覆剤を用いてパターンを処理する場合、パターンが良好に微細化されるとともに、CDUが顕著に低下することが分かる。他方、比較例1〜8によれば、所定の構造に含まれる種々のアミンが含窒素化合物として配合された被覆剤を用いてパターンを処理しても、パターンを微細化させにくく、CDUも低下しないことが分かる。
【0119】
<露光量とCDとの関係、及びCDとCDUとの関係の確認>
37〜52mJ/cm
2の範囲で1mJ/cm
2ずつ露光量を変えることの他は、前述の方法と同様にしてホールパターンを形成した。各露光量で形成されたホールパターンに対して、それぞれ、実施例1、及び比較例1〜8の被覆剤を用いて、前述の方法と同様にして微細化処理を施した。被覆剤で処理されていないホールパターンのホールのCD及びCDUと、実施例1、及び比較例1〜8の被覆剤を用いて微細化されたホールパターンのホールのCD及びCDUとを、露光量毎に測定した。なお、被覆剤で処理されていない場合を参考例とする。
【0120】
参考例の、露光量と、ホールのCDとの関係、及び実施例1及び比較例1〜8の被覆剤を用いてホールパターンを処理した場合の、露光量と、ホールのCDとの関係を示すグラフを、
図1〜
図3に示す。
【0121】
また、参考例と、実施例1及び比較例1〜8の被覆剤を用いてホールパターンを処理した場合とについて、露光量毎に測定したCDとCDUの値を、CDを横軸としCDUを縦軸とする平面上にプロットした。参考例、実施例1、及び比較例1〜8についての、CDとCDUとの関係を示すグラフを、
図4〜
図6に示す。
【0122】
図1〜3によれば、比較例1〜8の被覆剤を用いて処理されたホールのCDは、微細化されていないホールのCDとほぼ同様の割合で、露光量の増加につれて大きくなることが分かる。他方、
図3によれば、実施例1の被覆剤を用いた処理されたホールのCDは、参考例のホールのCDよりも、露光量が増加しても大きくならないことが分かる。
【0123】
これは、上記の化合物1を含窒素化合物として含有する実施例1の被覆剤を用いてパターンを処理する場合、パターン形成時の露光量のばらつきにより生じる微細化前のパターンのCDのばらつきが、被覆剤を用いる微細化処理によって低減されることを意味する。
【0124】
図4〜
図6によれば、比較例1〜8の被覆剤を用いて処理されたホールパターンのCDUは、CDの大きさによらず、被覆剤で処理されていない参考例のホールパターンのCDUと殆ど変らないことが分かる。他方、
図6によれば、実施例1の被覆剤を用いて処理されたホールパターンのCDUは、CDの大きさによらず、被覆剤で処理されていない参考例のホールパターンのCDUよりも低いことが分かる。つまり、実施例1の被覆剤によれば、露光量のばらつきによって生じる微細化される前のパターンにおけるCDのばらつきが、被覆剤による処理によって低減される。
【0125】
〔実施例2及び3〕
含窒素化合物の使用量を実施例1の含窒素化合物の使用量の1/3の量に変更することの他は、実施例1と同様にして、実施例2の被覆剤を得た。含窒素化合物の使用量を実施例1の含窒素化合物の使用量の2/3の量に変更することの他は、実施例1と同様にして実施例3の被覆剤を得た。なお、実施例2及び実施例3において、イオン交換蒸留水の使用量を調整して、得られる被覆剤の量を100質量部とした。実施例2及び実施例3の被覆剤を用いて実施例1と同様にしてホールパターンの微細化を行い、微細化されたパターンを実施例1と同様に評価した。評価結果を表2に記す。
【0126】
【表2】
【0127】
表2によれば、被覆剤中の含窒素化合物の含有量を減らした場合でも、パターンが微細化されることが分かる。また、表2から、被覆剤中の含窒素化合物の含有量に関係なく、パターンにおけるCDのばらつきが低減され、ホールパターン中のホールの形状が真円に近づくことが分かる。
【0128】
〔実施例4〜6〕
含窒素化合物を、前述の化合物1(3級アミン化合物)から、化合物1よりもエチレンオキシドの付加数が多い下式の化合物2(3級アミン化合物)に変えることの他は、実施例1と同様にして、実施例4の被覆剤を得た。含窒素化合物の使用量を実施例4の含窒素化合物の量の1/3に変更することの他は、実施例4と同様にして、実施例5の被覆剤を得た。含窒素化合物の使用量を実施例4の含窒素化合物の量の2/3に変更することの他は、実施例4と同様にして、実施例6の被覆剤を得た。なお、実施例5及び実施例6において、イオン交換蒸留水の使用量を調整して、得られる被覆剤の量を100質量部とした。実施例4〜6の被覆剤を用いて実施例1と同様にしてホールパターンの微細化を行い、微細化されたパターンを実施例1と同様に評価した。評価結果を表3に記す。
【0129】
【化17】
(上記式中、m及びnの和は平均10である。)
【0130】
【表3】
【0131】
実施例1と、実施例4〜6との比較によれば、含窒素化合物として使用される3級アミン化合物における窒素原子へのエチレンオキシドの付加数が増加しても、パターンが微細化されることと、パターンにおけるCDのばらつきが低減され、ホールパターン中のホールの形状が真円に近づくことが分かる。
【0132】
〔実施例7〜9〕
含窒素化合物を、前述の化合物1(3級アミン化合物)から、化合物2よりもエチレンオキシドの付加数がさらに多い下式の化合物3(3級アミン化合物)に変えることの他は、実施例1と同様にして、実施例7の被覆剤を得た。含窒素化合物の使用量を実施例7の含窒素化合物の量の1/3に変更することの他は、実施例7と同様にして、実施例8の被覆剤を得た。含窒素化合物の使用量を実施例7の含窒素化合物の量の2/3に変更することの他は、実施例7と同様にして、実施例9の被覆剤を得た。なお、実施例8及び実施例9において、イオン交換蒸留水の使用量を調整して、得られる被覆剤の量を100質量部とした。実施例7〜9の被覆剤を用いて実施例1と同様にしてホールパターンの微細化を行い、微細化されたパターンを実施例1と同様に評価した。評価結果を表4に記す。
【0133】
【化18】
(上記式中、m及びnの和は平均20である。)
【0134】
【表4】
【0135】
実施例1及び4と、実施例7〜9との比較によれば、含窒素化合物として使用される3級アミン化合物における窒素原子へのエチレンオキシドの付加数が増加しても、パターンが微細化されることと、パターンにおけるCDのばらつきが低減され、ホールパターン中のホールの形状が真円に近づくことが分かる。さらに、実施例1及び実施例4と、実施例7との比較とから、含窒素化合物として使用される3級アミン化合物における窒素原子へのエチレンオキシドの付加数の増加にともなう、パターンの収縮量の増加傾向が分かる。
【0136】
〔実施例10〕
含窒素化合物を、前述の化合物1(3級アミン化合物)から、化合物1よりもエチレンオキシドの付加数が少ない下式の化合物4(3級アミン化合物)に変えることの他は、実施例2と同様にして、実施例10の被覆剤を得た。実施例10の被覆剤を用いて実施例1と同様にしてホールパターンの微細化を行い、微細化されたパターンを実施例1と同様に評価した。評価結果を表5に記す。
【0137】
【化19】
(上記式中、m及びnの和は平均4である。)
【0138】
【表5】
【0139】
表5によれば、所定の構造の含窒素化合物を含む被覆形成剤であれば、含窒素化合物における窒素原子1モルに対するエチレンオキシドの付加数が4モル(化合物4)であっても、7モル(化合物1)であっても、パターンを良好に微細化しつつ、CDのばらつきを低減し、ホールパターン中のホールの形状を真円に近づけられることが分かる。
【0140】
〔実施例11〜13、比較例9、及び比較例10〕
含窒素化合物を、前述の化合物1(3級アミン化合物)から、下式の化合物5(4級アンモニウム塩)に変えることの他は、実施例1と同様にして、実施例11の被覆剤を得た。含窒素化合物の使用量を実施例11の含窒素化合物の使用量の1/3の量に変更することの他は、実施例11と同様にして、実施例12の被覆剤を得た。含窒素化合物の使用量を実施例11の含窒素化合物の使用量の2/3の量に変更することの他は、実施例11と同様にして、実施例13の被覆剤を得た。
【0141】
【化20】
(上記式中、m、n、及びlの和は平均7である。)
【0142】
含窒素化合物を、前述の化合物1(3級アミン化合物)から、比較化合物9(セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)に変えることの他は、実施例1と同様にして比較例9の被覆剤を得た。含窒素化合物の使用量を比較例9の含窒素化合物の使用量の1/3の量に変更することの他は、比較例9と同様にして、比較例10の被覆剤を得た。含窒素化合物の使用量を比較例9の含窒素化合物の使用量の2/3の量に変更することの他は、比較例9と同様にして、比較例11の被覆剤を得た。なお、実施例12、実施例13、及び比較例10において、イオン交換蒸留水の使用量を調整して、得られる被覆剤の量を100質量部とした。
【0143】
実施例11〜13、及び比較例9〜11の被覆剤を用いて実施例1と同様にしてホールパターンの微細化を行い、微細化されたパターンを実施例1と同様に評価した。評価結果を表6に記す。
【0144】
【表6】
【0145】
実施例1と、実施例11との比較によれば、窒素原子に結合する所定の鎖長の長鎖アルキル基を有し、所定量のエチレンオキシドが窒素原子に付加している含窒素化合物を含む被覆剤を用いる場合、含窒素化合物がアミン化合物であっても、4級アンモニウム塩であっても、パターンを良好に微細化でき、パターンにおけるCDのばらつきを低減できることが分かる。他方、比較例9及び10によれば、窒素原子に結合する長鎖アルキル基を有していても、所定量のエチレンオキシドが窒素原子に付加していない4級アンモニウム塩を含窒素化合物として含む被覆剤を用いる場合、パターンの微細化と、パターンにおけるCDのばらつきの低減とを両立できないことが分かる。