(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る繊維複合シートは、不織布の内部空隙に高分子弾性体を付与された繊維複合シートであって、高い耐摩耗性を有する。従って、例えば、高い耐摩耗性が要求される研磨パッド材、物品の表面を加飾する加飾シート材、等の用途に好ましく用いられる。本実施形態においては、このような繊維複合シートを用いた研磨パッド材について、代表例として詳しく説明する。
【0012】
本実施形態の繊維複合シートの一実施形態を
図1を参照しながら説明する。
図1に示す本実施形態の繊維複合シート10は、不織布1と、不織布1の内部空隙に付与された高分子弾性体2とを含み、0.5〜1.5mmの厚みを有する。不織布1は、見掛け密度0.5g/cm
3以上である、繊度0.5dtex以下の長繊維の極細繊維1aの繊維束1bの絡合体である。そして、研磨パッド材の研磨面になる繊維複合シート10の両面から50μmの厚み領域である表層部L
S及び表層部に連なる全厚に対する領域(両面から50μmの厚みを除いた厚み領域)である中層部L
mを含む。そして、繊維複合シート10は未充填の空隙Vを有し、表層部L
Sの空隙率をV
S、中層部L
mの空隙率をV
mとした場合に、V
S/V
m≦0.86である。また、研磨面となるその面は算術平均表面粗さ(Ra)が15μm以下で、JIS‐C硬度75〜90である表面を有する。
【0013】
本実施形態における不織布は、見掛け密度0.5g/cm
3以上であり、繊度0.5dtex以下の長繊維の極細繊維の繊維束の絡合体である。
【0014】
極細繊維の繊度は0.5dtex以下であり、好ましくは0.0001〜0.5dtex、さらに好ましくは0.001〜0.1dtexである。極細繊維の繊度が0.5dtexを超える場合には、研磨パッド材として用いた場合に表面が粗くなりすぎることにより研磨レートが低下し、また、表面のソフト感が失われて研磨時に凝集した砥粒がスクラッチを発生させやすくする。また、極細繊維の繊度が低すぎる場合には、研磨面近傍の極細繊維が分繊しにくくなり、砥粒スラリーの保持性が低下する傾向がある。
【0015】
極細繊維及びその繊維束は長繊維であり、具体的には、100mm以上、さらには、200mm以上であることが、極細繊維の繊維密度を高めることにより繊維複合シートの剛性を高めることができるとともに、研磨パッドとしては研磨時の繊維の抜けを抑制できる点から好ましい。極細繊維及びその繊維束の長さが短すぎる場合には繊維の抜けが発生しやすくなるとともに、繊維密度が高くなりにくくなり、高い剛性が得られない傾向がある。繊維長の上限は、特に限定されないが、例えば、後述するスパンボンド法により製造される不織布の場合には、物理的に切れていない限り、数m、数百m、数kmあるいはそれ以上であってもよい。
【0016】
不織布の見掛け密度は0.5g/cm
3以上であり、好ましくは0.55g/cm
3以上である。このような高い見かけ密度に調整することにより繊維密度の高い不織布が形成され、剛性の高い繊維複合シートが得られる。上限は特に限定されないが1.0g/cm
3以下であることが生産性に優れる点から好ましい。
【0017】
繊維複合シートの厚み方向の断面に存在する繊維束の断面積としては、平均断面積40μm
2以上の断面積を有する繊維束が、単位面積に観察される繊維束の合計束数に対して25%以上、さらには40%以上、とくには50%以上、ことには100%であることが好ましい。このような場合には、研磨パッド材として用いた場合に、シリコンウエハ用、半導体ウエハ用、半導体デバイス用の研磨パッド材として高い平坦化性能を実現することができる。
【0018】
また、繊維複合シートの厚み方向の断面に存在する繊維束の平均断面積としては、80μm
2以上、さらには、100μm
2以上、とくには、120μm
2以上であることが剛性の高い繊維複合シートが得られる点から好ましい。平均断面積が小さすぎる場合には繊維複合シートの剛性が低くなる傾向がある。
【0019】
さらに、繊維複合シートの厚み方向の断面に存在する繊維束の束密度としては、600束/mm
2以上、さらには1000束/mm
2以上であり、4000束/mm
2以下、さらには3000束/mm
2以下であることが好ましい。このような繊維束密度の場合には、研磨パッド材として用いた場合に研磨時に研磨パッド材の表面に表出した繊維束が分繊またはフィブリル化して極細繊維を形成することにより、砥粒スラリーの保持性が高くなるとともに、表面がソフトになって、スクラッチの発生が抑制されやすくなる。繊維束密度が低すぎる場合には、研磨パッド材表面に露出する極細繊維の繊維密度が低くなることにより研磨レートが低下したり、平坦化性能が低下したりする傾向がある。また繊維束密度が高すぎる場合には研磨パッド材表面が緻密になりすぎて砥粒スラリーの保持性が低下して研磨レートが低下する傾向がある。
【0020】
極細繊維を形成する樹脂成分の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),イソフタル酸変性PET,スルホイソフタル酸変性PET,ポリブチレンナフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリヘキサメチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネートアジペート,ポリヒドロキシブチレート−ポリヒドロキシバリレート共重合体,ポリ乳酸等の芳香族ポリエステルや脂肪族ポリエステル;テレフタル酸とノナンジオールとメチルオクタンジオール共重合ナイロン,ナイロン6,ナイロン66,ナイロン10,ナイロン11,ナイロン12等の脂肪族ナイロン;ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン類;エチレン単位を25〜70モル%含有する変性ポリビニルアルコール;ポリウレタン系エラストマー,ナイロン系エラストマー,ポリエステル系エラストマー等のエラストマーなどが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
これらの中では、ガラス転移温度(T
g)が50℃以上、さらには60℃以上で吸水率が4質量%以下、さらには2質量%以下である熱可塑性樹脂が、研磨パッド材として用いた場合に研磨の経時安定性に優れる点から特に好ましい。熱可塑性樹脂のT
gが50℃未満の場合には、剛性が不足して平坦化性能が低下し、また、研磨時に経時的に剛性が低下して研磨安定性や研磨均一性が低下する傾向がある。また、熱可塑性樹脂の吸水率が4質量%を超える場合には、研磨時に極細繊維が砥粒スラリー中の水分を徐々に吸収して剛性が経時的に低下することにより、経時的に平坦化性能や研磨レートや研磨均一性が低下する傾向がある。
【0022】
T
gが50℃以上で吸水率が4質量%以下である熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、PET(T
g77℃、吸水率1質量%)、イソフタル酸変性PET(T
g67〜77℃、吸水率1質量%)、スルホイソフタル酸変性PET(T
g67〜77℃、吸水率1〜4質量%)、ポリブチレンナフタレート(T
g85℃、吸水率1質量%)、ポリエチレンナフタレート(T
g124℃、吸水率1質量%)等から形成される芳香族ポリエステル系繊維;テレフタル酸とノナンジオールとメチルオクタンジオール共重合ナイロン(T
g125〜140℃、吸水率1〜4質量%)等から形成される半芳香族ポリアミド系樹脂等が挙げられる。また、PET,イソフタル酸変性PET,ポリブチレンナフタレート,ポリエチレンナフタレートは得られる繊維複合シートの剛性,耐水性,及び耐磨耗性にとくに優れる点から好ましい。またPET及びイソフタル酸変性PETは、後述する海島型複合繊維からなるウェブ絡合シートから極細繊維を形成する際に大幅に収縮することにより、繊維密度の高い不織布が得られるために研磨パッド材の剛性が高くなりやすく、さらに、研磨時の水分による経時変化も小さい点から最も好ましい。
【0023】
本実施形態の繊維複合シートにおいては、質量比率(不織布/高分子弾性体)が90/10〜55/45、さらには85/15〜65/35になるように、不織布の内部空隙に高分子弾性体が付与されていることが好ましい。不織布/高分子弾性体の質量比率がこのような範囲である場合には、繊維複合シートの剛性が高くなるとともに、研磨パッド材として用いる場合には表面に露出する極細繊維の密度を高めることにより、研磨安定性、研磨レート、及び、平坦化性能を高めることができる。
【0024】
また、本実施形態の繊維複合シートにおいては、高分子弾性体は繊維束を形成する長繊維の極細繊維を集束するように存在することが好ましい。ここで、長繊維の極細繊維が集束されているとは、繊維束内部に存在する長繊維の極細繊維の大部分が繊維束内部に存在する高分子弾性体により接着されて拘束されている状態を意味する。極細繊維が高分子弾性体に集束されていることにより、繊維複合シートの剛性が高くなる。極細繊維が集束されていない場合には、極細繊維が柔軟性を帯びるために、研磨パッド材として用いる場合に平坦化性能が低下する傾向がある。また、研磨時に繊維の抜けが多くなり、抜けた繊維に砥粒が凝集してスクラッチが発生しやすくなる。さらに、複数の繊維束同士は繊維束の外側に存在する高分子弾性体により結着されて塊(バルク)状に存在していることが好ましい。このように、繊維束同士が結着されることにより、形態安定性が向上して研磨安定性等が向上する。
【0025】
極細繊維を集束している高分子弾性体、及び、繊維束同士を結着している高分子弾性体は非多孔質状であることが好ましい。なお、非多孔質状とは、多孔質状、または、スポンジ状(以下、単に、多孔質状とも言う)の高分子弾性体が有するような独立気泡を実質的に有さない状態を意味する。具体的には、例えば、溶剤系ポリウレタンを凝固させて得られるような、独立気泡を多数有する高分子弾性体ではないことを意味する。集束または結着している高分子弾性体が非多孔質状である場合には、高い剛性が得られるために耐摩耗性により優れた繊維複合シートが得られる。また、研磨パッド材として用いる場合に研磨安定性が高くなり、また、摩耗しにくく、また、研磨時のスラリー屑やパッド屑が空隙に堆積しにくくなるために、高い研磨レートを長時間維持することができ、さらに、極細繊維に対する接着強度が高くなるために、繊維の抜けに起因する研磨時のスクラッチの発生を抑制することができる。
【0026】
高分子弾性体の具体例としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−アクリロニトリル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−オレフィン系樹脂、(メタ)アクリル酸系エステル−(水添)イソプレン系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−水添イソプレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン系樹脂、アクリロニトリルーブタジエンースチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、エチレン−オレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、及び、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ポリウレタン系樹脂が、極細繊維を集束したり、繊維束同士を結着したりするための接着性に優れるために繊維複合シートの硬度を高め、研磨パッド材として用いる場合に研磨時の経時的安定性に優れている点から好ましい。
【0027】
高分子弾性体としては、吸水率が0.5〜8質量%、さらには1〜6質量%である高分子弾性体が研磨パッド材として用いる場合に研磨時における経時安定性に優れる点から特に好ましい。高分子弾性体の吸水率が低すぎる場合には研磨時に研磨パッド材に対する砥粒スラリーの濡れ性が低下することにより、研磨レートが低下したり、研磨均一性や研磨安定性が低下したり、砥粒が凝集しやすくなってスクラッチが発生しやすくなる傾向がある。また、高分子弾性体の吸水率が高すぎる場合には、研磨時に研磨パッド材の剛性が経時的に低下して平坦化性能が低下することにより研磨レートや研磨均一性が変動しやすくなる。なお、高分子弾性体の吸水率とは、乾燥処理した高分子弾性体のフィルムを室温の水に浸漬して飽和膨潤させたときの吸水率である。また、2種以上の高分子弾性体を含有する場合には各高分子弾性体の吸水率に質量分率を乗じた値の和としても理論上算出される。
【0028】
このような吸水率を有する高分子弾性体は、高分子弾性体を構成する高分子の架橋度を調整したり、親水性の官能基を導入したりすること等により得ることができる。高分子弾性体においては、カルボキシル基、スルホン酸基、及び、炭素数3以下のポリアルキレングリコール基からなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性基を有することが、吸水率や親水性を調整することにより、研磨時の研磨パッド材の砥粒スラリーに対する濡れ性を向上させることができる点から好ましい。このように濡れ性を向上させることにより、研磨レート、研磨均一性、及び研磨安定性が向上する。このような親水性基は高分子弾性体を製造する際のモノマー成分として、親水性基を有する成分を共重合することにより、高分子弾性体に導入することができる。このような親水性基を有するモノマー成分の共重合割合としては、0.1〜20質量%、更には、0.5〜10質量%であることが、吸水による膨潤軟化を最小限に抑えつつ、吸水率や濡れ性を高めることができる点から好ましい。また、とくに、カルボキシル基、スルホン酸基、及び、炭素数3以下のポリアルキレングリコール基からなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性基を有するポリウレタン系樹脂が、研磨パッド材として用いる場合に、剛性、濡れ性、及び研磨時の経時的安定性が高い点から好ましい。
【0029】
さらに、高分子弾性体としては、150℃における貯蔵弾性率[E’(150℃、dry)]が0.1〜100MPa、さらには、1〜80MPaであることが好ましい。このような弾性率は、高分子弾性体に架橋構造を形成させることにより得ることができる。なお、高分子弾性体が親水性基を有する場合には、水で膨潤しやすく吸水率が高くなる傾向がある。このような場合には、架橋構造の度合いを調整することにより、吸水率も制御される。なお、2種以上の高分子弾性体を含有する場合には各高分子弾性体の[E’(150℃、dry)]に質量分率を乗じた値の和としても理論上算出される。
【0030】
このような本実施形態の繊維複合シート10は、
図1に示すように、両面側に、表面から50μmの厚み領域である表層部L
S及び表層部に連なる全厚に対する領域(両面から50μmの厚みを除いた厚み領域)である中層部L
mを有し、表層部L
Sの空隙率をV
S、中層部L
mの空隙率をV
mとした場合に、V
S/V
m≦0.86である。本実施形態の繊維複合シートにおいては、表面から50μmの厚み領域である表層部に高分子弾性体を高充填することにより、表層部の空隙を低減させて繊維束を強く拘束している。その結果、繊維複合シートの表面硬度を高くすることができる。空隙率V
Sと空隙率V
mの関係は、V
S/V
m≦0.86であり、V
S/V
m≦0.83、さらには、V
S/V
m≦0.80であることが好ましい。V
S/V
m>0.86の場合には、表層部が高分子弾性体で高充填されていないために、繊維束に対する補強が不充分になり、高い表面硬度が得られなくなる。
【0031】
表層部L
Sの空隙率V
S及び中層部L
mの空隙率V
mは、例えば、次のようにして求める。繊維複合シートの厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡で倍率30倍で撮影し、得られた画像から、厚み方向断面の両面から50μmの厚み領域である表層部の空隙率V
S及び表層部に連なる中層部の空隙率V
mをそれぞれ求める。具体的には、各領域それぞれの空隙率は、画像解析ソフトPopimaging(Digital being kids.Co製)を用い、動的閾値法でその領域の画像を二値化し、空隙部に内接円を描き、各領域において、描いた内接円面積の中で350μm
2未満のものをノイズとみなし除去し、残りの円の面積の合計を空隙量として算出する。そして、得られた空隙量を各領域の断面積で割った値を空隙率(V
S、V
m)とする。
【0032】
また、そのような表面は算術平均表面粗さ(Ra)は15μm以下であり、14μm以下、さらには13μmであることが好ましい。Raが15μmを超える場合には、表面の繊維束が高分子弾性体で充分に補強されなくなり、高い表面硬度が得られなくなる。
【0033】
さらに、その面のJIS−C硬度は、75〜95であり、76〜93、さらには77〜90であることが好ましい。JIS−C硬度が75未満の場合には研磨レートが低くなり、また、表面の耐摩耗性も低下する。また、JIS−C硬度が95を超える場合は研磨パッド材として用いる場合に研磨装置へセットしにくくなることがある。
【0034】
本実施形態の繊維複合シートの厚みは0.5〜1.5mm、好ましくは0.8〜1.4mmである。また、その見掛け密度は、0.5〜1.2g/cm
3、さらには、0.6〜1.2g/cm
3であることが、剛性に優れる点から好ましい。
【0035】
[繊維複合シートの製造方法]
次に、本実施形態の繊維複合シートをその製造方法の一例に沿って、さらに詳しく説明する。
【0036】
本実施形態の繊維複合シートは、例えば、繊度0.5dtex以下の長繊維の極細繊維を形成するための海島型複合繊維からなる繊維ウェブを製造する工程と、繊維ウェブを絡合処理することにより絡合繊維シートを得る工程と、絡合繊維シートを熱収縮処理することにより緻密化された絡合繊維シートを得る工程と、緻密化された絡合繊維シートに感熱ゲル化剤を含有する高分子弾性体水性液を付与した後、高分子弾性体を凝固させる工程と、海島型複合繊維の海成分を選択的に除去することにより極細繊維の繊維束の絡合体である不織布を形成し、さらに感熱ゲル化剤を水洗する工程と、不織布に高分子弾性体水性液をさらに付与することにより、少なくともその一面側において、その両面から125μmの厚み領域の空隙率V
a、両面から125μmの厚み領域に連なる全厚に対する領域(両面から125μmの厚みを除いた厚み領域)である領域の空隙率をV
bとした場合に、V
a/V
b≦0.9になるように調整する工程と、その表面を研削することにより、V
S/V
m≦0.86であり、且つ、算術平均表面粗さ(Ra)が15μm以下で、JIS‐C硬度75〜90である表面を形成する工程と、を備える製造方法により得ることができる。
【0037】
本実施形態の製造方法においては、はじめに、繊度0.5dtex以下の長繊維の極細
繊維を形成するための海島型複合繊維からなる繊維ウェブを製造する。
【0038】
海島型複合繊維とは、繊維断面において、マトリクスとなる海成分のポリマー中に、海成分とは異なる種類のドメインとなる島成分のポリマーが分散されており、後に海成分を除去することにより、島成分のポリマーを主体とする繊維束状の極細繊維を形成する繊維である。
【0039】
海島型複合繊維の繊維ウェブは、例えば、海成分の熱可塑性樹脂と島成分の熱可塑性樹脂とを溶融紡糸することにより複合化した後、スパンボンド法により、延伸後、ネット上に堆積させることにより得られる。このようなスパンボンド法により繊維ウェブを形成することにより、研磨パッド材として用いる場合に研磨時の繊維の抜けが少なく、繊維密度が高く、形態安定性が良好な長繊維の極細繊維を形成する海島型複合繊維からなる繊維ウェブが得られる。なお、必要に応じて堆積された繊維ウェブを部分的に圧着してもよい。このようにして得られる繊維ウェブの目付量は特に限定されないが、例えば、20〜500g/m
2の範囲であることが好ましい。
【0040】
海島型複合繊維の島成分を形成するための樹脂としては、上述した極細繊維を形成する樹脂成分が用いられる。また、島成分は各種添加剤を含有してもよい。添加材の具体例としては、例えば、触媒、着色防止剤、耐熱剤、難燃剤、滑剤、防汚剤、蛍光増白剤、艶消剤、着色剤、光沢改良剤、制電剤、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、防ダニ剤、無機微粒子等が挙げられる。
【0041】
一方、海島型複合繊維の海成分を形成するための樹脂としては、島成分との組み合わせにおいて、後に選択的に除去できる樹脂であれば、特に限定なく用いられる。このような海成分を形成するための樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂等の水溶性熱可塑性樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリエチレングリコール及び/又はスルホン酸アルカリ金属塩を共重合成分として含有する変性ポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体、スチレンエチレン共重合体、スチレンアクリル共重合体等が挙げられる。これらの中では、PVA系樹脂等の水溶性熱可塑性樹脂、特にエチレン変性PVAが島成分を構成する樹脂が熱収縮し易い点から好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
そして、次に、繊維ウェブを4〜100枚程度重ねて絡合させることによりウェブ絡合シートを形成する。ウェブ絡合シートは、ニードルパンチや高圧水流処理等を用いて繊維ウェブに絡合処理を行うことにより形成される。以下に、ニードルパンチによる絡合処理について詳しく説明する。
【0043】
はじめに、所定の目付になるように重ねられた長繊維ウェブの積重体に針折れ防止油剤、帯電防止油剤、絡合向上油剤などのシリコーン系油剤または鉱物油系油剤を付与する。その後、長繊維ウェブの積重体にニードルパンチを施すことにより繊維を三次元的に絡合させる絡合処理を行う。ニードルパンチ処理を行うことにより、繊維密度が高く、繊維の抜けを起こしにくいウェブ絡合シートが得られる。ウェブ絡合シートの目付は、目的とする厚みに応じて適宜選択されるが、具体的には、例えば、100〜1500g/m
2の範囲であることが取扱い性に優れる点から好ましい。
【0044】
次に、ウェブ絡合シートを熱収縮させることにより、ウェブ絡合シートの繊維密度および絡合度合を高める。熱収縮処理の具体例としては、例えば、ウェブ絡合シートを水蒸気に連続的に接触させる方法や、ウェブ絡合シートに水を付与した後、加熱エアーや赤外線などの電磁波によりウェブ絡合シートに付与した水を加熱する方法等が挙げられる。また、熱収縮処理により緻密化されたウェブ絡合シートをさらに緻密化するとともに、ウェブ絡合シートの形態を固定化したり、表面を平滑化したりすること等を目的として、必要に応じて、さらに熱プレス処理を行うことにより繊維密度を高めてもよい。
【0045】
熱収縮処理は、ウェブ絡合シートを面積収縮率が35%以上、さらには、40%以上になるように収縮させることが好ましい。なお、面積収縮率(%)は、
式:(熱収縮処理前のウェブ絡合シートの面積−熱収縮処理後のウェブ絡合シートの面積)/熱収縮処理前のウェブ絡合シートの面積×100
により計算される。なお、各面積は、ウェブ絡合シートの表面の面積と裏面の面積の平均面積を意味する。このように高い収縮率で収縮させることにより繊維密度が充分に高められる。面積収縮率の上限は特に限定されないが収縮の限度や処理効率の点から80%程度であることが好ましい。
【0046】
熱収縮処理前後におけるウェブ絡合シートの目付の変化としては、熱収縮処理後の目付が、熱収縮処理後前の目付に比べて、1.2倍(質量比)以上、さらには、1.5倍以上で、4倍以下、さらには3倍以下であることが好ましい。なお、熱収縮処理されたウェブ絡合シートは、海島型複合繊維の熱変形温度以上の温度で加熱ロールや加熱プレスすることにより、さらに繊維密度が高められてもよい。
【0047】
次に、熱収縮処理されたウェブ絡合シートに高分子弾性体を付与する。なお、本実施形態の繊維複合シートを得るためには、後述する海島型複合繊維の極細繊維化処理の前工程、及び後工程のそれぞれにおいて高分子弾性体を付与することが好ましい。詳しくは、熱収縮処理されたウェブ絡合シートの極細繊維化処理の前工程において高分子弾性体を付与することにより、海島型複合繊維を固定して拘束することにより極細繊維化処理の際にシートの形態を安定化させることができる。また、熱収縮処理されたウェブ絡合シートを極細繊維化処理した後にさらに高分子弾性体を付与することにより、海成分を除去することにより形成された繊維束内部の空隙にも高分子弾性体を充填することができるために、硬度のより高い繊維複合シートが得られる。
【0048】
熱収縮処理されたウェブ絡合シートに高分子弾性体を付与する方法としては、熱収縮処理されたウェブ絡合シートに高分子弾性体の樹脂液を含浸させた後、高分子弾性体を凝固させる方法が挙げられる。
【0049】
高分子弾性体の樹脂液としては、高分子弾性体の水性液を用いることが環境負荷が低い点から好ましい。高分子弾性体の水性液とは、高分子弾性体を形成する成分を水系媒体に溶解した水性溶液、又は、高分子弾性体を形成する成分を水系媒体に分散させた水性分散液である。なお、水性分散液には、懸濁分散液及びエマルジョンが含まれる。また、高濃度で粘度が低く含浸浸透性にも優れているために高充填しやすい点から水性分散液がとくに好ましい。高分子弾性体の水性分散液の固形分濃度は、15質量%以上、さらには、25質量%以上であることが、高分子弾性体を高充填しやすい点から好ましい。
【0050】
熱収縮処理されたウェブ絡合シートに高分子弾性体の水性液を含浸させる方法は特に限定されないが、例えば、ナイフコーター、バーコーター、又はロールコーターを用いて、または、ディッピングが挙げられる。
【0051】
なお、ウェブ絡合シートに高分子弾性体の水性分散液を含浸させる場合においては、表面から水性液が乾燥するにつれて内層の水性液が表層に移行して、高分子弾性体が表層に遍在する、所謂、マイグレーションという現象を生じる場合がある。このようなマイグレーションの発生は、水性分散液に感熱ゲル化性を有するマイグレーション防止剤を添加することにより抑制することが高充填するためには好ましい。感熱ゲル化剤としては、水溶性である、一価、または二価の無機塩類が後述する水洗処理で容易に除去できる点から好ましい。このような無機塩類の具体例としては、例えば、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、酸化亜鉛、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸鉛等が挙げられる。無機塩類の添加割合としては、例えば、高分子弾性体100質量部に対して0.5〜5質量部程度であることが好ましい。感熱ゲル化剤を含有する高分子弾性体の水性分散液を用いる場合、スチーム加熱することにより、表層からの急激な水分の蒸発を抑制しながら内部を加熱して高分子弾性体を感熱ゲル化させる。そして、感熱ゲル化された高分子弾性体を150℃の条件で乾燥することにより、高分子弾性体を厚み方向に均一に付与することができる。
【0052】
高分子弾性体としては、極細繊維に対する結着性が高い点から、水素結合性高分子弾性体が好ましい。水素結合性高分子弾性体とは、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等のように、水素結合により結晶化あるいは凝集する高分子からなる弾性体である。水素結合性高分子弾性体は、接着性が高く、繊維絡合体の形態保持性を向上させ、また、繊維の抜けを抑制する。
【0053】
以下に、高分子弾性体としてポリウレタン系樹脂からなる弾性体を用いる場合について、代表例として詳しく説明する。
【0054】
ポリウレタン系樹脂からなる弾性体としては、平均分子量200〜6000の高分子ポリオールと有機ポリイソシアネ−トと、鎖伸長剤とを、所定のモル比で反応させることにより得られる各種のポリウレタン系樹脂が挙げられる。
【0055】
高分子ポリオールの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,ポリテトラメチレングリコール,ポリ(メチルテトラメチレングリコール)等のポリエーテル系ポリオールおよびその共重合体;ポリブチレンアジペートジオール,ポリブチレンセバケートジオール,ポリヘキサメチレンアジペートジオール,ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)ジオール,ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンセバケート)ジオール,ポリカプロラクトンジオール等のポリエステル系ポリオールおよびその共重合体;ポリヘキサメチレンカーボネートジオール,ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンカーボネート)ジオール,ポリペンタメチレンカーボネートジオール,ポリテトラメチレンカーボネートジオール等のポリカーボネート系ポリオールおよびその共重合体;ポリエステルカーボネートポリオール等が挙げられる。また、必要に応じて、トリメチロールプロパン等の3官能アルコールやペンタエリスリトール等の4官能アルコールなどの多官能アルコール、又は、エチレングリコール,プロピレングリコール,1,4−ブタンジオール,1,6−ヘキサンジオール等の短鎖アルコールを併用してもよい。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、非晶性のポリカーボネート系ポリオール,脂環式ポリカーボネート系ポリオール,直鎖状ポリカーボネート系ポリオール,及び、これらのポリカーボネート系ポリオールとポリエーテル系ポリオール又はポリエステル系ポリオールとの混合物を用いることが、耐加水分解性や耐酸化性等の耐久性に優れた研磨パッド材が得られる点から好ましい。また、炭素数5以下、特には炭素数3以下のポリアルキレングリコール基を含有するポリウレタン系樹脂は水に対する濡れ性がとくに良好になる点から好ましい。
【0056】
有機ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート,ノルボルネンジイソシアネート,4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート等の無黄変型ジイソシアネート;2,4−トリレンジイソシアネート,2,6−トリレンジイソシアネート,4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート,キシリレンジイソシアネートポリウレタン等の芳香族ジイソシアネート,等が挙げられる。また、必要に応じて、3官能イソシアネートや4官能イソシアネートなどの多官能イソシアネートを併用してもよい。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートが、繊維に対する接着性が高く、また、硬度が高い研磨パッド材が得られる点から好ましい。
【0057】
鎖伸長剤の具体例としては、例えば、ヒドラジン,エチレンジアミン,プロピレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン,ノナメチレンジアミン,キシリレンジアミン,イソホロンジアミン,ピペラジンおよびその誘導体,アジピン酸ジヒドラジド,イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;ジエチレントリアミンなどのトリアミン類;トリエチレンテトラミンなどのテトラミン類;エチレングリコール,プロピレングリコール,1,4−ブタンジオール,1,6−ヘキサンジオール,1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン,1,4−シクロヘキサンジオールなどのジオール類;トリメチロールプロパンなどのトリオール類;ペンタエリスリトールなどのペンタオール類;アミノエチルアルコール,アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ヒドラジン、ピペラジン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミンおよびその誘導体、エチレントリアミンなどのトリアミンの中から2種以上組み合わせて用いることが、短時間で硬化反応が完了する点から好ましい。また、鎖伸長反応時に、鎖伸長剤とともに、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなどのモノアミン類;4−アミノブタン酸、6−アミノヘキサン酸などのカルボキシル基含有モノアミン化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのモノオール類を併用してもよい。
【0058】
また、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸などのカルボキシル基含有ジオール等を併用して、ポリウレタン系弾性体の骨格にカルボキシル基などのイオン性基を導入することにより、水に対する濡れ性をさらに向上させることができる。
【0059】
さらに、ポリウレタン系樹脂の吸水率や貯蔵弾性率を制御するために、ポリウレタンを形成するモノマー単位が有する官能基と反応し得る官能基を分子内に2個以上含有する架橋剤や、ポリイソシアネート系化合物、多官能ブロックイソシアネート系化合物等の自己架橋性の化合物を添加することにより、架橋構造を形成してもよい。
【0060】
モノマー単位の官能基と架橋剤の官能基との組み合わせとしては、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とシクロカーボネート基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボニル基とヒドラジン誘導体、ヒドラジド誘導体などが挙げられる。これらの中では、カルボキシル基を有するモノマー単位とオキサゾリン基、カルボジイミド基またはエポキシ基を有する架橋剤と組み合わせ、水酸基またはアミノ基を有するモノマー単位とブロックイソシアネート基を有する架橋剤との組み合わせ、およびカルボニル基を有するモノマー単位とヒドラジン誘導体またはヒドラジド誘導体との組み合わせが、架橋形成が容易であり、得られる繊維複合シートの剛性や耐磨耗性が優れる点から、特に好ましい。なお、架橋構造は、繊維絡合体にポリウレタン系樹脂を付与した後の熱処理工程において形成することが、高分子弾性体の水性液の安定性を維持する点から好ましい。これらの中でも、架橋性能や水性液のポットライフ性が優れ、また安全面でも問題のないカルボジイミド基および/またはオキサゾリン基が特に好ましい。カルボジイミド基を有する架橋剤としては、例えば日清紡績株式会社製「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」、「カルボジライトV−02」などの水分散カルボジイミド系化合物を挙げることができる。また、オキサゾリン基を有する架橋剤としては、例えば日本触媒株式会社製「エポクロスK−2010E」、「エポクロスK−2020E」、「エポクロスWS−500」などの水分散オキサゾリン系化合物を挙げることができる。架橋剤の配合量としては、ポリウレタン系樹脂に対して、架橋剤の有効成分が1〜20質量%、さらには1.5〜1質量%、とくには2〜10質量%であることが好ましい。
【0061】
また、極細繊維との接着性を高め繊維束の剛性を高める点から、ポリウレタン系樹脂中の高分子ポリオールの成分の含有率としては、65質量%以下、さらには、60質量%以下であることが好ましい。また、40質量%以上、さらには、45質量%以上であることが適度な弾性を付与することにより研磨パッド材として用いた場合にスクラッチの発生を抑制することができる点から好ましい。
【0062】
ポリウレタン系樹脂は、浸透剤、消泡剤、滑剤、撥水剤、撥油剤、増粘剤、増量剤、硬化促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、防黴剤、発泡剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物、染料、顔料、無機微粒子などをさらに含有してもよい。
【0063】
ポリウレタン系樹脂を水性分散液にする方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基などの親水性基を有する単量体を共重合成分として用いることにより、水性媒体に対する分散性をポリウレタン系樹脂に付与する方法、または、ポリウレタン系樹脂に界面活性剤を添加して、乳化又は懸濁させる方法が挙げられる。
【0064】
乳化又は懸濁に用いられる界面活性剤の具体例としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体などのノニオン性界面活性剤などが挙げられる。また、反応性を有する、いわゆる反応性界面活性剤を用いてもよい。また、界面活性剤の曇点を適宜選ぶことにより、ポリウレタン系樹脂に感熱ゲル化性を付与することもできる。ポリウレタン系樹脂の水性分散液の分散平均粒子径は特に限定されないが、例えば、0.01〜1μm、さらには、0.03〜0.5μmであることが好ましい。
【0065】
次に、高分子弾性体が付与された熱収縮処理されたウェブ絡合シート中の海島型複合繊維を極細繊維化処理することにより極細繊維の繊維束の絡合体である不織布を形成する。
【0066】
本工程は、熱収縮処理されたウェブ絡合シートを形成する海島型複合繊維を極細繊維化処理することにより極細繊維を形成する工程である。なお、海島型複合繊維から海成分を除去することにより極細繊維間に空隙が形成される。この空隙には、後述する高分子弾性体を再充填する工程において高分子弾性体が充填されることにより極細繊維が集束される。
【0067】
高分子弾性体が付与された熱収縮処理されたウェブ絡合シート中の海島型複合繊維は、水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液等で熱水処理することにより、海成分を形成する熱可塑性樹脂を溶解除去、または、分解除去することにより島成分の樹脂から形成された極細繊維が形成される。熱水処理の具体例としては、例えば、第1段階として、65〜90℃の熱水中に5〜300秒間浸漬した後、さらに、第2段階として、85〜100℃の熱水中で100〜600秒間処理するような方法が挙げられる。また、溶解効率を高めるために、必要に応じて、ロールでのニップ処理、高圧水流処理、超音波処理、シャワー処理、攪拌処理、揉み処理等を行ってもよい。
【0068】
なお、海島型複合繊維から海成分を溶解する際に、形成される極細繊維が大きく収縮する。この収縮により繊維密度がより緻密になるために繊維密度が高くなる。なお、高分子弾性体の水性液に感熱ゲル化剤を付与していた場合には、この工程において、感熱ゲル化剤も水洗除去される。
【0069】
次に、極細繊維から形成された繊維束内部に高分子弾性体をさらに充填することにより、極細繊維を集束するとともに、繊維束を結着させる。上述したような海島型複合繊維に極細繊維化処理を施した場合、形成される繊維束の内部に空隙が形成される。本工程においては、このような空隙に高分子弾性体を充填することにより、極細繊維を集束するとともに、繊維複合シートの空隙率を低下させる。なお、極細繊維が繊維束を形成しているために毛細管現象により高分子弾性体の水性液が含浸されやすくなり、極細繊維はより集束されやすくなる。高分子弾性体の水性液の含浸方法及び種類は、上述したものと同様の方法及び樹脂が用いられる。
【0070】
なお、高分子弾性体の再付与においては、両表面から125μmの厚み領域の空隙率V
a、両表面から125μmの厚み領域に連なる全厚に対する領域の空隙率をV
bとした場合に、V
a/V
b≦0.9になるように調整することが好ましい。このように調整することにより、V
S/V
m≦0.86になるような繊維複合シートが得られやすくなる。再付与する高分子弾性体の量は、厚みや極細繊維化処理する前の高分子弾性体の付与の量により適宜調整されるが、40〜120g/m
2程度であることが好ましい。再付与する高分子弾性体の量が少なすぎる場合には表層に存在する樹脂量が少なくなる傾向がある。また、再付与する高分子弾性体の量が多すぎる場合には、含浸可能な量を上回り、経済性が低下する傾向がある。なお、付与量の調整は表層に高分子弾性体を選択的に存在させるようにナイフコーター、バーコーター、又はロールコーターの条件を適宜調整する方法や、ディッピングを行って表層に偏在させるようにニップ条件を調整する方法等が挙げられる。
【0071】
このようにして、見掛け密度0.5g/cm
3以上であり、繊度0.5dtex以下の極細繊維の長繊維の繊維束の絡合体である不織布と、不織布の内部空隙に高分子弾性体を含浸付与した繊維複合シートを製造するための中間体シートが得られる。
【0072】
なお、このようにして得られた繊維複合シートを製造するための中間体シートは、これまでの製造工程で用いられた物質に由来するpH変化を生じる成分が含まれていることがある。このようなpH変化を生じる成分が残留した場合には研磨パッド材として用いる場合には研磨砥粒が凝集し研磨レートの低下、あるいはスクラッチという問題を引き起こすことがある。従って、中間体シートを水洗することにより、中間体シートからpH変化を生じる成分を除去することが好ましい。水洗方法の具体例としては、例えば、80℃以上の熱水中で水洗するような方法が挙げられる。また、溶解効率を高めるために必要に応じて、ロールでのニップ処理、高圧水流処理、超音波処理、シャワー処理、攪拌処理、揉み処理等を行ってもよい。このようにして水洗された中間体シート中に含有されるイオン量は、400μg/cm
3以下程度であることが好ましい。
【0073】
そして、このような中間体シートに対して以下に示すような仕上げ処理を施すことにより繊維複合シートが得られる。
【0074】
仕上げ処理としては、得られた中間体シートの表面から研削することにより表面の面出しを行う。研削はサンドペーパー、針布、ダイヤモンド等によって行われる。この場合、表層部の空隙率V
Sと中層部の空隙率V
mとの関係をV
S/V
m≦0.86に調整するために、研削量は、中間体シートの表面から50〜200μmの範囲で研削することが好ましい。研削量が多すぎる場合には、表層に存在する高分子弾性体が脱落しやすくなるために、極細繊維を集束して補強する効果が低下する傾向がある。また、研削量が少なすぎる場合には、算術平均表面粗さ(Ra)が15μm以下のような平滑な表面が得られにくくなる傾向がある。このような表面を形成するためには、♯60〜♯600、さらには♯80〜♯400、とくには♯100〜♯320のような細目のサンドペーパーを使用することが好ましい。
【0075】
このようにして繊維複合シートが製造される。そして、繊維複合シートを研磨パッド材として用いる場合には、必要に応じてさらに後加工処理等が施されて研磨パッドとして用いられる。
【0076】
後加工処理としては、逆シールのブラッシング処理、溝加工、熱プレス処理、積層処理等が挙げられる。逆シールのブラッシング処理とは、サンドペーパー、針布、ダイヤモンド等により繊維複合シートの表面に機械的な摩擦力や研磨力を与えて、集束された極細繊維を分繊する処理である。また、溝加工とは、砥粒スラリーの保持性や排出性を調整するために研磨面に、格子状、同心円状、渦巻き状等の溝や孔を形成する処理である。また、熱プレス処理とは、研磨パッド材に含まれる空隙を減少させたり、見掛け密度をさらに高めたりする処理である。熱プレス処理としては、極細繊維および高分子弾性体が分解しない温度から選ばれ、例えば160〜180℃に加熱された金属ロールを用い、線圧30〜100kg/cm条件でプレスするような条件が選ばれる。また、積層処理とは、繊維複合シートを、スポンジ、編物、織物、不織布、ゴム、弾性樹脂フィルム等の各種基材に貼り合せて積層化することにより剛性を調整する処理である。例えば、繊維複合シートを硬度の低い弾性体シートと積層することにより、平坦化性能をさらに向上させることができる。弾性フィルムや弾性スポンジ体の材質は、現在汎用的に使用されているポリウレタンを含浸した不織布(例えば、"Suba400"(ニッタ・ハース(株)製))の他、天然ゴム、ニトリルゴム、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴムなどのゴム;ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー;発泡プラスチック;ポリウレタンなどを採用することができる。また、繊維複合シートを含有する研磨層と該研磨層よりも硬度の低い弾性体層とが積層された研磨パッド材としても良い。それによって、被研磨材に対するローカル平坦化性能(局所的な平坦化性能)が向上する傾向がある。なお、積層処理された研磨パッド材は、研磨パッド材と弾性体層とが溶融接着等により直接接合しているものの他、接着剤や両面粘着テープ等により両層が接着されたものや、さらに、両層の間にさらに別の層が存在するものも含む。
【0077】
本実施形態の繊維複合シートを用いて得られた研磨パッド材は、ウエハ(シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ等)、液晶・表示部材(LED基板、ガラス基板)、ガラス製品、金属製品、プラスチック製品、セラミック製品、水晶、MEMS(マイクロ−エレクトロ−メカニカルシステムズ)、その他の基板(ハードディスク基板、金属基板、プラスチック基板、セラミック基板、光学基板、電子回路基板、電子回路マスク基板、多層配線基板、ハードディスク基板等)等の各種被研磨基材を研磨するためのCMP等に用いられる研磨パッドとして好ましく用いられる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0079】
はじめに、本実施例で用いた評価方法を以下にまとめて示す。
【0080】
〈表層部の空隙率V
S、中層部の空隙率V
mの測定及びV
S/V
mの算出〉
得られた繊維複合シートの断面を走査型電子顕微鏡で倍率30倍で観察し、写真を撮影した。得られた写真から、研磨パッド材の両面から50μmの厚み領域である表層部の空隙率V
S及び表層部に連なる全厚に対する領域(両面から50μmの厚みを除いた厚み領域)である中層部の空隙率V
mをそれぞれ求めた。具体的には、各領域それぞれの空隙率は、画像解析ソフトPopimaging(Digital being kids.Co製)を用い、動的閾値法でその領域の画像を二値化し、空隙部に内接円を描き、各領域において、描いた内接円面積の中で350μm
2未満のものをノイズとみなし除去し、残りの円の面積の合計を空隙量として算出した。そして、得られた空隙量を各領域の断面積で割った値を空隙率(V
S、V
m)とした。さらに、V
S/V
mを求めた。
【0081】
〈繊維複合シートの中間体の表層の空隙率Va、中層の空隙率V
bの測定及びVa/V
bの算出〉
高分子弾性体再付与後で研削前の繊維複合シート材の中間体の断面を走査型電子顕微鏡で倍率30倍で観察し、写真を撮影した。得られた写真から、両面から125μmの厚み領域で空隙率V
a及びその領域に連なる全厚に対する領域(両側の表面から125μmの厚みを除いた厚み領域)である中層部領域の空隙率V
bを上記「表層部の空隙率V
S、中層部の空隙率V
mの測定及びV
S/V
mの算出」と同様にしてそれぞれ求めた。さらに、V
a/V
bを求めた。
【0082】
〈見掛け密度〉
単位面積あたりの質量(g/cm
2)を厚さ(cm)で除した値を見掛け密度(g/cm
3)とし、任意の10箇所の値を算術平均して求めた。なお、厚さは、JISL1096に準じて荷重240gf/cm
2で測定した。
【0083】
〈表面粗さ測定〉
繊維複合シートの表面へ金を蒸着させた後、VertScan(株式会社 菱化システム)を用い、1cm×1cmの範囲の凹凸高さを測定し、算術平均表面粗さ(Ra)を求めた。
【0084】
〈表面硬度〉
JIS K 6301に準じて表面硬度を測定した。
【0085】
〈摩耗減量(テーバー摩耗)〉
JIS L1096に準じ、摩耗輪としてCS−10を用い、荷重500g、1000回の条件で測定し、測定前後の摩耗減量を測定した。
【0086】
[実施例1]
水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂(PVA;海成分)と変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ−ト(島成分)とを、海成分/島成分が25/75(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:25島/繊維)より吐出した。紡糸速度が3700m/minとなるようにエジェクター圧力を調整し、平均繊度3.0デシテックスの長繊維をネット上に捕集し、目付35g/m
2のスパンボンドシート(繊維ウェブ)を得た。
【0087】
得られた繊維ウェブを総目付が480g/m
2になるようにクロスラッピングにより12枚重ねて積重体を得、針折れ防止油剤をスプレーした。次に、バーブ数1個でニードル番手42番のニードル針、及びバーブ数6個でニードル番手42番のニードル針を用いて積重体を3075パンチ/cm
2でニードルパンチ処理して絡合させることによりウェブ絡合シートを得た。得られたウェブ絡合シートの目付量は540g/m
2、層間剥離力は8.8kg/2.5cmであった。また、ニードルパンチ処理による面積収縮率は32%であった。
【0088】
次に、得られたウェブ絡合シートを110℃、23.5%RHの条件で65秒間スチーム処理した。このときの面積収縮率は48%であった。そして、90〜110℃のオーブン中で乾燥させた後、さらに、115℃で熱プレスすることにより、目付986g/m
2、見掛け密度0.524g/cm
3、厚み1.88mmの熱収縮処理されたウェブ絡合シートを得た。
【0089】
次に、熱収縮処理されたウェブ絡合シートに、ポリウレタン弾性体のエマルジョン(固形分30%)をpick up60%で含浸させた。なお、ポリウレタン弾性体は、ポリカーボネート系無黄変樹脂である。さらにエマルジョンにポリウレタン弾性体 100質量部に対してカルボジイミド系架橋剤4.9質量部と感熱ゲル化剤として硫酸アンモニウム6.4部添加し、ポリウレタン弾性体の固形分が16%となるよう調整した。ポリウレタン弾性体は熱処理することにより架橋構造を形成する。そして、エマルジョンが含浸された熱収縮処理されたウェブ絡合シートを110℃、30%RH雰囲気下で乾燥処理し、さらに、150℃で乾燥処理した。このようにして、目付1054g/m
2、見掛け密度0.694g/cm
3、厚み1.52mmのシートを得た。
【0090】
次に、ポリウレタン弾性体が充填された熱収縮処理されたウェブ絡合シートを、ニップ処理、及び高圧水流処理しながら95℃の熱水中に10分間浸漬することによりPVA及び感熱ゲル化剤を溶解除去し、さらに、乾燥することにより、単繊維繊度0.09dtex、目付750g/m
2、見掛け密度0.529g/cm
3、厚み1.42mmである、ポリウレタン弾性体と極細繊維の長繊維の繊維束の絡合体である不織布との複合体を得た。
【0091】
次に、得られた複合体に、同じポリウレタン弾性体のエマルジョンを91g/m
2になるように再度含浸させた。その際、エマルジョンに、ポリウレタン弾性体 100質量部に対してカルボジイミド系架橋剤5.0質量部を添加し、ポリウレタン弾性体の固形分が20%となるよう調整した。次に、エマルジョンが含浸された複合体を110℃、30%RH雰囲気下で処理し、150℃で乾燥処理した中間体シートを得た。得られた中間体シートは、目付833g/m
2、見掛け密度0.573g/cm
3、厚み1.46mmであった。また、両面から125μmの厚み領域の空隙率をV
a、表層部に連なる全厚に対する領域(両側の表面から125μmの厚みを除いた厚み領域)である中層部領域の空隙率をV
bとした場合に、V
a/V
b=0.848であった。
【0092】
次に、♯240ペーパーと♯320ペーパーを用い、速度3.0m/min、回転数650rpmの条件で両面をそれぞれ150μmずつ研削することにより、目付715g/m
2、見掛け密度0.629g/cm
3、厚み1.14mmである繊維複合シートを得た。また、この繊維複合シートの両面から50μmの厚み領域である表層部の空隙率をV
S、表層部に連なる全厚に対する領域(両面から50μmの厚みを除いた厚み領域)である中層部の空隙率をV
mとした場合に、V
S/V
m=0.733であった。また、両面とも算術平均表面粗さ(Ra)は5.1μm、JIS−C硬度は86であった。また、この表面の摩耗減量は0mgであった。結果を表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
[実施例2]
ポリウレタン弾性体を再付与する量を91g/m
2に代えて、79g/m
2とした以外は実施例1と同様にして中間体シートを得た。得られた中間体シートは、目付820g/m
2、見掛け密度0.561g/cm
3、厚み1.46mmであった。また、両面から125μmの厚み領域の空隙率をV
a、表層部に連なる全厚に対する領域(両面から50μmの厚みを除いた厚み領域)である中層部の空隙率をV
bとした場合に、V
a/V
b=0.86であった。そして、実施例1と同様にして、中間体シートの両面をそれぞれ研削することにより、目付714g/m
2、見掛け密度0.627g/cm
3、厚み1.14mmである繊維複合シートを得た。この繊維複合シートの表層部の空隙率V
Sは27%、中層部の空隙率V
mは35.2%であり、V
S/V
m=0.767であった。また、算術平均表面粗さ(Ra)は4.9μm、JIS−C硬度は85であった。また、この表面の摩耗減量は0mgであった。結果を表1に示す。
【0095】
[実施例3]
実施例1で得られた中間体シートを♯240ペーパーと♯320ペーパーを用いて研削する代わりに、♯180ペーパーを用いて研削した以外は実施例1と同様にして目付685g/m
2、見掛け密度0.608g/cm
3、厚
み1.13mmである繊維複合シートを得た。この繊維複合シートの表層部の空隙率V
Sは29.2%、中層部の空隙率V
mは34.3%であり、V
S/V
m=0.851であった。また、算術平均表面粗さ(Ra)は9.7μm、JIS−C硬度は80であった。また、この表面の摩耗減量は0mgであった。結果を表1に示す。
【0096】
[比較例1]
ポリウレタン弾性体を再付与する量を91g/m
2に代えて、31g/m
2とした以外は実施例1と同様にして中間体シートを得た。得られた中間体シートは、目付849g/m
2、見掛け密度0.594g/cm
3、厚み1.43mmであった。また、両面から125μmの厚み領域の空隙率をV
a、表層部に連なる全厚に対する領域(両面から125μmの厚みを除いた厚み領域)である中層部の空隙率をV
bとした場合に、V
a/V
b=0.985であった。そして、実施例1と同様にして、中間体シートの両面をそれぞれ研削することにより、目付696g/m
2、見掛け密度0.605g/cm
3、厚み1.15mmである繊維複合シートを得た。この繊維複合シートの表層部の空隙率V
Sは31.1%、中層部の空隙率V
mは32.0%であり、V
S/V
m=0.972であった。また、JIS−C硬度は73であり、算術平均表面粗さ(Ra)は毛羽が長く荒れていたために測定できなかった。また、この表面の摩耗減量は73mgであった。結果を表1に示す。
【0097】
[比較例2]
実施例1で得られた中間体シートを♯240ペーパーと♯320ペーパーを用い、両面をそれぞれ150μmずつ研削する代わりに、両面をそれぞれ300μmずつ研削した以外は実施例1と同様にして目付511g/m
2、見掛け密度0.609g/cm
3、厚み0.84mmである繊維複合シートを得た。この繊維複合シートの表層部の空隙率V
Sは30.2%、中層部の空隙率V
mは34.0%であり、V
S/V
m=0.888であった。また、算術平均表面粗さ(Ra)は7.1μm、JIS−C硬度は81であった。また、この表面の摩耗減量は20mgであった。結果を表1に示す。
【0098】
[比較例3]
実施例2で得られた中間体シートを♯240ペーパーと♯320ペーパーを用いて研削する代わりに、♯60ペーパーを用いて研削した以外は実施例2と同様にして目付641g/m
2、見掛け密度0.557g/cm
3、厚み1.15mmである繊維複合シートを得た。この繊維複合シートの表層部の空隙率V
Sは30.4%、中層部の空隙率V
mは34.5%であり、V
S/V
m=0.881であった。また、算術平均表面粗さ(Ra)は18.4μm、JIS−C硬度は74であった。また、この表面の摩耗減量は6.3mgであった。結果を表1に示す。